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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171676
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電力調整システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20241205BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20241205BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241205BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088818
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱分 智則
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB12
5G064DA01
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB07
5G066HB08
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】応答性が異なる複数のリソースが電力系統に連系されている場合に、各種調整力等により変動する連系点電力指令値に応じて各リソースの電力指令値を生成し、連系点電力をその指令値に追従させる電力調整システムを提供する。
【解決手段】リソースAとこれより応答速度が速いリソースBとを備え、電力系統40との連系点41の電力が連系点電力指令値に追従するように各リソースA,Bの電力を調整する電力調整システムにおいて、連系点電力指令値は、リソースAでは即応できない変化速度の調整力等の第1電力指令値Pを含み、リソースBには、連系点電力指令値とリソースAの電力指令値Pまたは電力実測値との差である電力指令値Pを与え、第1電力指令値Pが所定範囲で採り得る全ての値に対してリソースBが応答し得るように、リソースAの電力指令値Pをリミッタ33またはリミッタ35により制限して与える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との間で交流電力の授受の何れかまたは両方が可能なリソースAと、前記電力系統との間で交流電力の授受の何れかまたは両方が可能であって前記リソースAよりも応答速度が速いリソースBと、を備え、前記電力系統と前記リソースA及び前記リソースBとの連系点における電力が連系点電力指令値に追従するように前記リソースA及び前記リソースBの電力を調整する電力調整システムにおいて、
前記連系点電力指令値は、前記リソースAでは即応できない変化速度の第1電力指令値を含み、
前記リソースBには、前記連系点電力指令値と、前記リソースAの電力指令値または電力実測値と、の差である電力指令値を与え、
前記第1電力指令値が所定の範囲で採り得る全ての値に対して前記リソースBが応答できるように、前記リソースAの電力指令値を制限して前記リソースAに与えることを特徴とする電力調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載した電力調整システムにおいて、
前記リソースAの電力指令値を、下限値が(P+P1max-PBPCSmax)近傍の値である下限値リミッタにより制限して前記リソースAに与えることを特徴とする電力調整システム(ここで、Pは前記第2電力指令値、P1maxは前記第1電力指令値の最大値、PBPCSmaxは連系点からリソースBに電力が流入する方向のリソースBの定格容量)。
【請求項3】
請求項1に記載した電力調整システムにおいて、
前記リソースAの電力指令値を、上限値が(P+P1min-PBPCSmin)近傍の値である上限値リミッタにより制限して前記リソースAに与えることを特徴とする電力調整システム(ここで、Pは前記第2電力指令値、P1minは前記第1電力指令値の最小値、PBPCSminはリソースBから連系点に電力が流出する方向のリソースBの定格容量)。
【請求項4】
請求項1に記載した電力調整システムにおいて、
前記リソースBが蓄電装置であることを特徴とする電力調整システム。
【請求項5】
請求項4に記載した電力調整システムにおいて、
前記リソースAの電力指令値を、前記蓄電装置のSOCが規定値以上であるときに、下限値が(P+P1max)近傍の値である下限値リミッタにより制限して前記リソースAに与えることを特徴とする電力調整システム(ここで、Pは前記第2電力指令値、P1maxは前記第1電力指令値の最大値)。
【請求項6】
請求項4に記載した電力調整システムにおいて、
前記リソースAの電力指令値を、前記蓄電装置のSOCが規定値未満であるときに、上限値が(P+P1min)近傍の値である上限値リミッタにより制限して前記リソースAに与えることを特徴とする電力調整システム(ここで、Pは前記第2電力指令値、P1minは前記第1電力指令値の最小値)。
【請求項7】
請求項5に記載した電力調整システムにおいて、
前記蓄電装置のSOCの規定値は、
前記リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を維持させつつ、前記消費電力を0から、前記第1電力指令値の最大値と、前記蓄電装置の現在の電力指令値から前記第1電力指令値を差し引いた値と、の和まで増加させた時の電力量をWdecとし、制御上で前記蓄電装置の充電電力量の上限値をWBmaxとした時に、(WBmax-Wdec)に相当する値であることを特徴とする電力調整システム。
【請求項8】
請求項6に記載した電力調整システムにおいて、
前記蓄電装置のSOCの規定値は、
前記リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を維持させつつ、前記消費電力を0から、前記第1電力指令値の最小値と、前記蓄電装置の現在の電力指令値から前記第1電力指令値を差し引いた値と、の和まで減少させた時の電力量をWincとし、制御上で前記蓄電装置の充電電力量の下限値をWBminとした時に、(WBmin+Winc)に相当する値であることを特徴とする電力調整システム。
【請求項9】
請求項5に記載した電力調整システムにおいて、
前記蓄電装置のSOCの規定値は、
前記リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を維持させつつ、前記消費電力を0から前記蓄電装置の現在の充電電力指令値まで増加させた時の電力量をWincとし、制御上で前記蓄電装置の電力量の下限値をWBminとした時に、(WBmin+Winc)に相当する値であることを特徴とする電力調整システム。
【請求項10】
請求項6に記載した電力調整システムにおいて、
前記蓄電装置のSOCの規定値は、
前記リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を維持させつつ、前記消費電力を0から前記蓄電装置の現在の放電電力指令値まで減少させた時の電力量をWdecとし、制御上で前記蓄電装置の電力量の上限値をWBmaxとした時に、(WBmax-Wdec)に相当する値であることを特徴とする電力調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリソースが連系されている電力系統において、電力需給市場や調整力市場における経済性を考慮しながら、所定の連系点電力計画値のもとで各リソースの最適な電力指令値を決定する電力調整システムに関する。ここで、上記リソースには、電力系統との間で交流電力を授受可能であって各種の物質やエネルギーを生産する装置・回路・手段・設備が含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風力発電設備が連系された電力系統において、風力発電設備の出力に応じて変動する連系点電力をその目標値に追従させるように、電力調整器(電力変換器)及び蓄電池を用いた水素製造器への供給電力と風力発電設備の出力との配分を管理し、または、製造した水素が供給される燃料電池の電力系統への注入出力を管理するようにした電力供給システム及びその制御方法が開示されている。
また、特許文献1には、風力発電設備の出力と連系点電力の目標値との過不足に応じて、水素製造器への供給電力の目標値、または燃料電池から電力系統への注入出力の目標値を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-225273号公報([0010],[0011]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、連系点電力が小刻みに変動する場合の対策としては、発電設備がガバナフリー制御を行うことが知られている。このガバナフリー制御では、連系点の周波数の変動に応じて発電設備の出力をほぼリアルタイムで変化させる必要があり、特許文献1に記載されているようなシステムでは、連系点電力の指令値にガバナフリー制御用の出力を重畳させた指令値に対して、蓄電池や水素製造器等の複数のリソースが分担して連系点に出力することが求められる。この場合、ガバナフリー制御用の出力は不定期かつ急激に変化することがあるため、システム全体として上記出力変化分の容量を常に確保しておく必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1には、目標値に対して即応性の低い水素製造器等のリソースを有する電力調整システムにおいて、どのようにして連系点の電力指令値に追従させるかについて明確には開示されていない。
【0006】
そこで、本発明の解決課題は、応答性が異なる複数のリソースが電力系統に連系されている場合において、各種の調整力等により変動する連系点の電力指令値に応じて各リソースの電力指令値を適切に生成することにより、連系点の電力をその指令値に正確に追従させるようにした電力調整システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、電力系統との間で交流電力の授受の何れかまたは両方が可能なリソースAと、前記電力系統との間で交流電力の授受の何れかまたは両方が可能であって前記リソースAよりも応答速度が速いリソースBと、を備え、前記電力系統と前記リソースA及び前記リソースBとの連系点における電力が連系点電力指令値に追従するように前記リソースA及び前記リソースBの電力を調整する電力調整システムにおいて、
前記連系点電力指令値は、前記リソースAでは即応できない変化速度の第1電力指令値を含み、
前記リソースBには、前記連系点電力指令値と、前記リソースAの電力指令値または電力実測値と、の差である電力指令値を与え、
前記第1電力指令値が所定の範囲で採り得る全ての値に対して前記リソースBが応答できるように、前記リソースAの電力指令値を制限して前記リソースAに与えるものである。
ここで、前記第1電力指令値には、例えば、電力需給調整市場の一次調整力、ガバナフリー制御や速いデマンドレスポンスを行う場合の調整力等を含んでいても良い。
【0008】
リソースAの電力指令値を制限する方法としては、リソースAの電力指令値を、下限値が(P+P1max-PBPCSmax)近傍の値である下限値リミッタにより制限し(ここで、Pは第2電力指令値、P1maxは第1電力指令値の最大値、PBPCSmaxは連系点からリソースBに電力が流入する方向のリソースBの定格容量)、あるいは、上限値が(P+P1min-PBPCSmin)近傍の値である上限値リミッタにより制限すると良い(ここで、P1minは第1電力指令値の最小値、PBPCSminはリソースBから連系点に電力が流出する方向のリソースBの定格容量)。
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、電力に関する符号は、連系点からリソースAまたはBに電力が流入する方向を正としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、応答性が異なるリソースA,Bに対して適切な電力指令値を生成し、リソースA,Bを各電力指令値に従って動作させることにより、電力系統と各リソースとの間で所定の電力を授受して連系点の電力を指令値通りに制御することができる。
また、ガバナフリー制御等により連系点の電力指令値が変動する場合でも、応答性の高いリソースBが即応できるようにリソースAの電力指令値を制限してリソースBの電力指令値を生成することで、リソースBが余裕を持って動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電力調整システムの全体構成図である。
図2】本発明の第1実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施例におけるリソースBの電力指令値Pの採り得る範囲を示した図である。
図4】本発明の第2実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
図5】本発明の第3実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
図6】本発明の第3実施例におけるリソースBの電力指令値Pの採り得る範囲を示した図である。
図7】本発明の第4実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
図8】本発明の第5実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
図9】第4実施例において、第1電力指令値が最大値である場合にリソースAに肩代わりさせる電力量の説明図である。
図10】第5実施例において、第1電力指令値が最小値である場合にリソースAに肩代わりさせる電力量の説明図である。
図11】本発明の第6実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電力調整システムの全体構成図である。図1において、リソースAとリソースBとは並列に接続され、その並列接続点は連系点41を介して交流の電力系統40に接続されている。
【0012】
リソースAは、電力系統40との間で電力の授受の何れか、または、その両方を行う機能を備えた各種の装置・回路・手段・設備であり、例えば、電力系統40から電力が供給されて種々のパラメータ(気体・液体等の物質や熱・電力等のエネルギー)を生産する気体発生装置(水素製造装置,オゾン発生装置等)、発電装置(燃料電池,バイオマス発電装置等)、加熱装置(電気炉,焼却炉等)である。
リソースBも、電力系統40との間で電力の授受の何れか、または、その両方を行う機能を備え、リソースAよりも指令値に対する応答性が高い(応答速度が速い)各種の装置・回路・手段・設備である。このリソースBは、例えば、図示するようにPCS(Power Conditioning System)11の動作により蓄電池12を充放電させて連系点41とPCS11との間で交流電力を授受する蓄電装置である。
【0013】
コントローラ30は、CPU等の演算装置、入出力装置、記憶装置、通信インターフェイス等を備えた情報処理装置である。
このコントローラ30は、例えばEMS(Energy Management System)等の上位または外部の制御装置から受信した連系点41の電力指令値(後述する第1電力指令値及び第2電力指令値を含む)、あるいは、オペレータにより入力される連系点41の電力指令値を含む計画指令と、電力系統40の系統周波数と、連系点電力のフィードバック値及びリソースA,Bからのフィードバック値等に基づいて、リソースA,Bに対する電力指令値(連系点41からリソースA,Bに向かう電力の供給方向を正方向とする)を含む運転指令を作成してリソースA,Bをそれぞれ運転させることにより、連系点41の電力をその電力指令値に追従させる。
なお、コントローラ30の具体的構成・機能については、後述する。
【0014】
ここで、連系点41の電力指令値は、第1電力指令値と第2電力指令値とからなる。
第1電力指令値は、第1調整力の指令値であり、ここでは連系点41からリソースに向かう電力の供給方向を正方向とする。なお、第1調整力は、リソースAでは対応できず、リソースBのみが即応可能な変化速度(周波数成分)の調整力を含むことができ、例えば、応答時間が10秒以内である調整力(電力需給調整市場の一次調整力、ガバナフリー制御や速いデマンドレスポンスを行う場合の調整力等)を含むことができる。
【0015】
第2電力指令値は、前述した如く連系点41の電力指令値から第1電力指令値を除いたものであるが、この第2電力指令値には第1調整力以外の第2調整力の指令値のほか、第1調整力の指令値を含んでいても良い。ここで、第2調整力は、リソースAでもリソースBでも対応可能な変化速度の調整力を含み、例えば、応答時間が5分以内~45分である調整力(電力需給調整市場の二次調整力、遅いデマンドレスポンスを行う場合の調整力等)を含んでいても良い。
【0016】
この実施形態では、例えばガバナフリー制御を行う場合、第1電力指令値(第1調整力の指令値)が所定範囲内でいかなる値に変化しても対応可能な余裕をリソースBに持たせるように、リソースAの電力指令値を制限する。ここで、リソースBの電力指令値は、第2電力指令値(連系点41の電力指令値と第1電力指令値との差)と、制限後のリソースAの電力指令値または実測値と、の差として与える。
上記のようにリソースA,Bの電力指令値を設定することにより、リソースAの電力指令値が制限される分だけリソースBの電力指令値に余裕が生じ、第1電力指令値が急激かつ頻繁に変化しても、リソースAより即応性の高いリソースBがその電力指令値に基づいて余裕をもって運転することができ、ガバナフリー制御等を支障なく実行することができる。
【0017】
次に、上記コントローラ30の機能を具体化した本発明の実施例を説明する。
図2は、本発明の第1実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
【0018】
図2において、第1電力指令値Pの最大値P1maxと、連系点41からリソースBに電力が流入する方向のリソースBの定格容量PBPCSmaxと、の偏差が加減算手段31aにより求められ、この偏差が加減算手段31bに入力されている。ここで、上記P1maxは、例えばガバナフリー制御を行う場合の出力契約容量であり、ガバナフリー制御を行わない場合には0とする。
一方、第2電力指令値P(連系点41の電力指令値と第1電力指令値Pとの差)がリソースAの電力指令値生成手段32に入力され、この生成手段32により生成されたリソースAの電力指令値が下限値リミッタ33に入力されている。
【0019】
また、前記加減算手段31aの出力は加減算手段31bにより第2電力指令値Pと加算され、その出力が下限値リミッタ33の下限値に設定されている。この下限値リミッタ33の出力は、ローパスフィルタ34を介してリソースAの電力指令値Pとなる。ローパスフィルタ34は、下限値リミッタ33の下限値の変動により電力指令値Pが急激に変化するのを防ぐためのものであり、ローパスフィルタ34に代えて変化率リミッタを用いても良い。
ローパスフィルタ34から出力されるリソースAの電力指令値Pは、加減算手段31cに入力されて第2電力指令値Pと加減算され、この加減算手段31cの出力と第1電力指令値Pとが加減算手段31dにより加算されてリソースBの電力指令値Pが算出される。
【0020】
電力指令値P,Pは、図1に示したリソースA,Bに対する運転指令の一部としてそれぞれ与えられ、これらの電力指令値P,Pに従ってリソースA,Bを動作させることにより、連系点41の電力をその指令値に維持するようにリソースA,Bと電力系統40との間で電力の授受が行われる。
【0021】
上記構成において、下限値リミッタ33の下限値を(P+P1max-PBPCSmax)とする理由、つまり、電力指令値PをP>(P+P1max-PBPCSmax)とする理由は、以下の通りである。
電力指令値Pが(P+P1max-PBPCSmax)より大きくなるということは、図2におけるC点の信号が(PBPCSmax-P1max)より小さいことを意味する。すなわち、どれだけ正方向(リソースBが蓄電装置である場合に、リソースBを充電する方向)に大きな第1電力指令値Pが連系点41の電力指令値に重畳したとしても、最終的なリソースBの電力指令値Pが最大出力容量PBPCSmaxを超えることはない。
【0022】
このため、リソースBには最大出力容量PBPCSmaxによる制約を受けることなく電力指令値Pが設定され、言い換えれば、ガバナフリー制御等により第1電力指令値P(第1調整力)が正方向に急激に大きくなった場合でも、リソースBは最大出力容量PBPCSmaxによる制約を受けない電力指令値Pに応じた電力を消費(リソースBが蓄電装置であれば、充電)することで、第1電力指令値Pに正確に追従した制御を実行することができる。
なお、下限値リミッタ33の下限値は(P+P1max-PBPCSmax)そのものである必要はなく、(P+P1max-PBPCSmax)の近傍の値であっても良い。
【0023】
図3は、電力指令値Pが採り得る範囲を示したものであり、電力指令値Pは、常にC点の信号範囲とP1maxとの和になって定格容量PBPCSmaxを超えることがない。つまり、C点の信号値が最大であってPが最大値P1maxまで変動したとしても、リソースBは定格容量に達するまでP1maxの余裕があるため、PがPBPCSmaxを超えない状態でリソースBを動作させることができる。
【0024】
次に、図4は本発明の第2実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
図2に示した第1実施例のように、リソースAの電力指令値Pを下限値によって制限する技術は、図4の第2実施例についても適用可能である。なお、図4においては、下限値リミッタ33の下限値を設定するための構成(図2における加減算手段31a,31b)の図示を省略してある。
【0025】
この第2実施例では、第1電力指令値Pと第2電力指令値Pとを加減算手段31eにより加算し、その加算値Pに基づいてリソースA,Bの電力指令値P,Pを求めている。
リソースBの電力指令値Pは、前記定格容量PBPCSmax未満でなくてはならないから、数式1が成り立つ。
[数式1]
<PBPCSmax
一方、図4から、数式2が成り立つ。
[数式2]
=P-P
【0026】
ここで、第1電力指令値Pに対する応答に必要なリソースBの余裕について考えると、数式1を最も逸脱しやすい状況としては、第1電力指令値Pが瞬時にその最大値P1maxまで増加する場合がある。この時のリソースBの電力指令値をP´とすると、P´は数式3によって表すことができる。
[数式3]
´=P+P1max-P=P-P+P1max-P
リソースBは数式3のP´に応答できる必要があるため、このP´を数式1のPに代入すると、数式4が得られる。
[数式4]
-P+P1max-P<PBPCSmax
第2実施例では、数式4を満たすようなリミッタによってリソースAの電力指令値Pを制限する必要があるため、数式4をPで解くと数式5が得られる。
[数式5]
>P+P1max-P-PBPCSmax
図4から、数式6が成り立ち、この数式6を数式5に代入すると数式7が得られる。
[数式6]
=P-P
[数式7]
>P+P1max-PBPCSmax
すなわち、数式7は、第1実施例と同様に、電力指令値Pを下限値(P+P1max-PBPCSmax)より大きい値に制限することを意味している。
【0027】
次に、図5は、本発明の第3実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
図2の第1実施例との相違点を中心に説明すると、図5の第3実施例では、第1電力指令値Pの最小値P1minと、リソースBから連系点41に電力が流出する方向のリソースBの定格容量PBPCSminと、の偏差が加減算手段31aにより求められ、この偏差が加減算手段31bに入力されている。
一方、リソースAの電力指令値生成手段32により生成されたリソースAの電力指令値が上限値リミッタ35に入力され、その上限値は、加減算手段31aの出力と第2電力指令値Pとの和である(P+P1min-PBPCSmin)に設定される。ここで、電力指令値PをP<(P+P1min-PBPCSmin)とする理由は以下の通りである。
【0028】
電力指令値Pが(P+P1min-PBPCSmin)より小さくなるということは、図5におけるC点の信号が(PBPCSmin-P1min)より大きいことを意味する。すなわち、どれだけ負方向(リソースBが蓄電装置である場合に、リソースBを放電させる方向)に大きな第1電力指令値Pが連系点41の電力指令値に重畳したとしても、最終的なリソースBの電力指令値Pが定格容量PBPCSminを下回ることはない。
【0029】
このため、リソースBには前記定格容量PBPCSminによる制約を受けることなく電力指令値Pが設定され、言い換えれば、ガバナフリー制御等により第1電力指令値P(第1調整力)が負方向に急激に大きくなった場合でも、リソースBは前記定格容量PBPCSminによる制約を受けない電力指令値Pに応じた電力を放電することで、第1電力指令値Pに正確に追従した制御を実行することができる。
【0030】
図6は、リソースBの電力指令値Pが採り得る範囲を示したものであり、電力指令値Pは、常にC点の信号範囲とP1minとの和になって前記定格容量PBPCSminを下回ることがない。つまり、C点の信号値が最小であってPが最小値P1minまで変動したとしても、リソースBは定格容量に達するまでP1minの余裕があるため、PがPBPCSminを下回らない状態でリソースBを動作させることができる。
この実施例において、上限値リミッタ35の上限値は(P+P1min-PBPCSmin)そのものである必要はなく、(P+P1min-PBPCSmin)の近傍の値であっても良い。
【0031】
なお、この第3実施例では、加減算手段31dにより、第1電力指令値Pと加減算手段31cの出力とを加算してリソースBの電力指令値Pを求めているが、図4の第2実施例と同様に、第1電力指令値Pと第2電力指令値Pとを加減算手段31eにより加算し、その加算値Pに基づいてリソースA,Bの電力指令値P,Pを求めても良い。この点は、以下の第4実施例~第6実施例についても同様である。
【0032】
次に、図7は本発明の第4実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図であり、リソースBが蓄電装置である場合の実施例である。
図7において、第1電力指令値Pの最大値P1maxと第2電力指令値Pとを加減算手段31fにより加算し、その加算結果である(P1max+P)と「0」とを切替手段36により切り替えるように構成されている。切替手段36は、リソースBとしての蓄電装置のSOCが規定値(上限値)以上である場合に加減算手段31fの出力側に切り替わり、規定値未満である場合に「0」側に切り替わるものであり、切替手段36の出力が下限値リミッタ33に下限値として入力されている。
上述した下限値の設定経路以外の構成については、図2の第1実施例と基本的に同一である。
【0033】
図7において、蓄電装置のSOCが規定値(上限値)以上である場合、リソースAの電力指令値Pは(P1max+P)より大きくなり、このことは、C点の信号が-P1maxより小さくなることを意味している。すなわち、正方向にどれだけ大きな第1電力指令値Pが連系点41の電力指令値に重畳したとしても、最終的なリソースB(蓄電装置)の電力指令値Pは負の値となり、言い換えれば蓄電装置のPCS11に対して蓄電池12を放電させる電力指令値が出力される。
【0034】
なお、図1に関して記載したように、この明細書においてリソースA,Bに対する電力指令値は、連系点41からリソースA,Bに向かう電力の供給方向を正方向としているため、リソースB(蓄電装置)の電力指令値Pが負の場合には蓄電池12を放電させる動作となる。
【0035】
これにより、蓄電装置のSOCは規定値未満に低下するため、ガバナフリー制御等により第1電力指令値P(第1調整力)が正方向に急激に大きくなった場合でも、蓄電装置は蓄電池12の容量による制約を受けずに電力指令値Pに応じた電力を放電することで、第1電力指令値Pに正確に追従した制御を実行することができる。
【0036】
ここで、蓄電装置を放電させるために下限値リミッタ33の下限値を(P1max+P)とする理由は以下の通りである。
第1電力指令値Pがどのような値になっても蓄電装置を放電させるためには、数式8が条件となる。
[数式8]
<0
図7におけるC点の電力をPとすると、図7から以下の数式9,数式10が成り立つ。
[数式9]
=P+P
[数式10]
=P-P
【0037】
数式8~数式10をPについて解くと、数式11が得られる。
[数式11]
>P+P
ここで、PはP1min~P1maxの値を採り得るが、Pが上記範囲内のどのような値であっても数式11を満たす必要がある。
そこで、数式11の右辺が最大になる条件を考えると、P=P1maxとなり、数式12を得ることができる。
[数式12]
>P1max+P
すなわち、図7において、蓄電装置のSOCが規定値以上であるときに下限値リミッタ33の下限値を(P1max+P)とすることにより、Pの大きさに関わらず蓄電装置を放電させることができる。
【0038】
次に、図8は本発明の第5実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図であり、この実施例もリソースBが蓄電装置である場合のものである。
図7の第4実施例との相違点を中心に説明すると、図8において、第1電力指令値Pの最小値P1minと第2電力指令値Pとを加減算手段31fにより加算し、その加算結果である(P1min+P)と「0」とを切替手段36により切り替える。
切替手段36は、リソースBとしての蓄電装置のSOCが規定値(下限値)未満である場合に加減算手段31fの出力側に切り替わり、規定値以上である場合に「0」側に切り替わるものであり、切替手段36の出力が上限値リミッタ35に上限値として入力されている。
【0039】
図8において、蓄電装置のSOCが規定値(下限値)未満である場合、リソースAの電力指令値Pは(P1min+P)より小さくなり、このことは、C点の信号が-P1minより大きくなることを意味している。すなわち、どれだけ負方向に大きな第1電力指令値Pが連系点41の電力指令値に重畳したとしても、最終的なリソースB(蓄電装置)の電力指令値Pは正の値となり、言い換えれば蓄電装置のPCS11に対して蓄電池12を充電させる電力指令値が出力される。
これにより、蓄電装置のSOCは規定値(下限値)以上に増加するため、ガバナフリー制御等により第1電力指令値P(第1調整力)が負方向に急激に大きくなった場合でも、蓄電装置は蓄電池12の容量による制約を受けずに電力指令値Pに応じた電力を充電することで、第1電力指令値Pに正確に追従した制御を実行することができる。
【0040】
ここで、蓄電装置を充電させるために上限値リミッタ35の上限値を(P1min+P)とする理由は以下の通りである。
第1電力指令値Pがどのような値になっても蓄電装置を充電させるためには、数式13が条件となる。
[数式13]
>0
図8におけるC点の電力をPとすると、図8から以下の数式14,数式15が成り立つ。
[数式14]
=P+P
[数式15]
=P-P
【0041】
数式13~数式15をPについて解くと、数式16が得られる。
[数式16]
<P+P
ここで、PはP1min~P1maxの値を採り得るが、Pが上記範囲内のどのような値であっても数式16を満たす必要がある。
そこで、数式16の右辺が最小になる条件を考えると、P=P1minとなり、数式17を得ることができる。
[数式17]
<P1min+P
すなわち、図8において、蓄電装置のSOCが規定値未満であるときに上限値リミッタ35の上限値を(P1min+P)とすることにより、Pの大きさに関わらず蓄電装置を充電させることができる。
【0042】
なお、図7に示した第4実施例において、蓄電装置のSOCの規定値(上限値)とは、リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を維持させつつ、前記消費電力を0から、第1電力指令値Pの最大値P1maxと、蓄電装置の現在の電力指令値Pから第1電力指令値Pを差し引いた値と、の和であるPdecまで、増加させた時の電力量をWdecとし、制御上で蓄電装置の充電電力量の上限値をWBmaxと定めた時に、(WBmax-Wdec)によって表される電力量に相当する値以下の値とすることが望ましい。
【0043】
例えば、リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を、現在の消費電力に関わらずa[kW/s](一定値)とすると、上記のWdec図9に示す三角形の面積となり、Wdec=Pdec /2aとなる。ここで、Pdecは、蓄電装置の現在の電力指令値Pに対して仮に第1電力指令値Pが充電方向に最大値P1maxとなった場合の蓄電装置の電力指令値である。従って、Wdecは、第1電力指令値Pが充電方向に最大値P1maxとなった場合において、現在の蓄電装置の充電電力をリソースAに肩代わりさせて放電状態にもって行くまでに、蓄電装置に充電されてしまう電力量であると言える。
【0044】
前述した第4実施例では、蓄電装置のSOCが規定値(上限値)に達したら放電させるようにしているが、下限値リミッタ33の出力側にローパスフィルタ34を設ける場合には蓄電装置が放電するまでにタイムラグがあるため、蓄電装置のSOCが規定値を超過する恐れがある。
そこで、第4実施例における蓄電装置のSOCの規定値(上限値)を上記のように(WBmax-Wdec)に相当する値以下の値とすることにより、蓄電装置のSOCが上限値に近づいた際に、蓄電装置に対する電力指令値(充電電力指令値)をリソースAの消費電力に肩代わりさせながら蓄電装置のSOCが上限値を超過するのを防止することができる。
なお、前述したPdecは、蓄電装置の現在の電力指令値以上の値であっても良い。
【0045】
同様に、図8に示した第5実施例において、蓄電装置のSOCの規定値(下限値)とは、リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を維持させつつ、前記消費電力を0から、第1電力指令値Pの最小値P1minと、蓄電装置の現在の電力指令値Pから第1電力指令値Pを差し引いた値と、の和であるPincまで、減少させた時の電力量をWincとし、制御上で蓄電装置の充電電力量の下限値をWBminと定めた時に、(WBmin+Winc)によって表される電力量に相当する値以上の値とすることが望ましい。
【0046】
例えば、リソースAが応答可能な消費電力の変化率の最大値を、現在の消費電力に関わらずb[kW/s](一定値)とすると、Winc図10に示す三角形の面積となり、Winc=Pinc /2bとなる。
第5実施例における蓄電装置のSOCの規定値(下限値)を上記のように(WBmin+Winc)に相当する値以上の値とすることにより、蓄電装置のSOCが下限値に近づいた際に、蓄電装置に対する電力指令値(放電指令値)をリソースAに消費電力を減らす形で肩代わりさせながら蓄電装置のSOCが下限値を下回るのを防止することができる。
なお、前述したPincは、蓄電装置の現在の電力指令値以下の値であっても良い。
【0047】
次に、図11は本発明の第6実施例に係るコントローラの主要部を示すブロック図である。
この実施例では、加減算手段31cにより第2電力指令値PからリソースAの電力指令値Pを減算し、その結果を加減算手段31dに入力して第1電力指令値Pと加算することにより、リソースBの電力指令値Pを求めている。
これにより、第1電力指令値PはリソースBの電力指令値Pのみに含まれるため、リソースBの即応性によって第1電力指令値Pを迅速に連系点電力に反映させることができる。
【符号の説明】
【0048】
A,B:リソース
11:PCS
12:蓄電池
30:コントローラ
31a,31b,31c,31d,31e,31f:加減算手段
32:リソースAの電力指令値生成手段
33:下限値リミッタ
34:ローパスフィルタ
35:上限値リミッタ
36:切替手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11