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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171679
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】配線基板、及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/16 20060101AFI20241205BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241205BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05K1/16 D
H05K1/02 J
H05K3/46 C
H05K3/46 E
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088828
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 優樹
【テーマコード(参考)】
4E351
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351AA03
4E351AA04
4E351AA06
4E351AA13
4E351BB03
4E351BB09
4E351BB10
4E351BB22
4E351BB24
4E351BB26
4E351BB27
4E351BB33
4E351BB49
4E351CC03
4E351CC07
4E351DD04
4E351DD11
4E351DD17
4E351GG09
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB15
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC16
5E316CC21
5E316CC32
5E316DD07
5E316DD12
5E316DD17
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316DD47
5E316DD48
5E316EE32
5E316EE33
5E316FF04
5E316FF07
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG23
5E316GG28
5E316HH01
5E316JJ14
5E338AA03
5E338AA16
5E338AA18
5E338BB14
5E338BB25
5E338BB75
5E338CC10
5E338CD05
5E338EE11
5E338EE22
5E338EE24
(57)【要約】
【課題】 電気特性を向上させることが可能な配線基板を提供する。
【解決手段】 配線基板は、基板11と、キャパシタ100と、配線部101とを含む。キャパシタ100は、基板11の第1面上に設けられた下部電極14と、下部電極14上に設けられた誘電体層15と、誘電体層15上に設けられた上部電極16とを有する。下部電極14は、第1導電性厚膜12Aと、第1導電性厚膜12A上に設けられ、第1導電性厚膜12Aより厚さが薄い第1導電性薄膜13Aとを含む。配線部101は、基板11の第1面上に設けられ、第2導電性厚膜12Bと、第2導電性厚膜12B上に設けられた第2導電性薄膜13Bとを含む。第1導電性厚膜12Aと第2導電性厚膜12Bとは、連続層かつ同一材料で構成される。第1導電性薄膜13Aと第2導電性薄膜13Bとは、連続層かつ同一材料で構成される。第2導電性薄膜13Bの厚さは、第1導電性薄膜13Aの厚さより薄い。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する基板と、
前記基板の前記第1面上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層上に設けられた上部電極とを有し、前記下部電極は、第1導電性厚膜と、前記第1導電性厚膜上に設けられ、前記第1導電性厚膜より厚さが薄い第1導電性薄膜とを含む、キャパシタと、
前記基板の前記第1面上に設けられ、第2導電性厚膜と、前記第2導電性厚膜上に設けられた第2導電性薄膜とを含む配線部と、
を具備し、
前記第1導電性厚膜と前記第2導電性厚膜とは、連続層かつ同一材料で構成され、
前記第1導電性薄膜と前記第2導電性薄膜とは、連続層かつ同一材料で構成され、
前記第2導電性薄膜の厚さは、前記第1導電性薄膜の厚さより薄く、
前記第1導電性薄膜の導電率は、前記第1導電性厚膜の導電率の2%以上50%以下である
配線基板。
【請求項2】
前記第1及び第2導電性厚膜の上面の粗さは、前記第1及び第2導電性厚膜の側面の粗さよりも小さい
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1導電性薄膜の厚さは、100nm未満である
請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第2導電性薄膜の厚さは、100nm未満である
請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1導電性薄膜の熱膨張率は、前記誘電体層の熱膨張率よりも小さく、前記第1導電性厚膜の熱膨張率よりも小さい
請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第1導電性薄膜と前記第2導電性薄膜との膜厚差が生じる位置は、前記誘電体層の端部の位置と同じである
請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記基板の前記第2面上に設けられた導電層と、
前記基板を貫通する貫通孔内に設けられた貫通孔内導電層と、
をさらに具備し、
前記貫通孔内導電層は、前記配線部と前記導電層とを接続するように構成される
請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
基板上に部分的に、第1レジスト層を形成する工程と、
前記基板のうち前記第1レジスト層で覆われていない部分に、導電性厚膜を形成する工程と、
前記第1レジスト層及び前記導電性厚膜上に、前記導電性厚膜より厚さが薄い導電性薄膜を形成する工程と、
リフトオフプロセスにより、前記第1レジスト層と、前記第1レジスト層上に形成された前記導電性薄膜とを除去する工程と、
前記導電性薄膜上に、誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層上に部分的に、上部電極を形成する工程と、
前記上部電極と、前記誘電体層の一部とを覆う第2レジスト層を形成する工程と、
前記誘電体層のうち前記第2レジスト層で覆われていない部分をエッチングするとともに、前記導電性薄膜の一部をエッチングする工程と、
を具備する配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化及び小型化に伴って、半導体装置を構成する配線基板の高密度化の要求が高まっている。その中で、回路配線の微細化に合わせて、抵抗、キャパシタ、及びインダクタなどの受動素子も更なる小型化が求められている。更なる小型化要求は非常に高いレベルで求められており、これら受動素子の小型化と基板表面への高密度実装のみでは限界がある。そこでこのような問題を解決すべく、実装基板に受動素子を内蔵化する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の方法では、受動素子を印刷や真空成膜法などで形成することで多層基板内に内蔵するため、電子機器の小型化が可能となる。
【0003】
また、配線付の基板上にMIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタが形成される場合がある。MIMキャパシタは、導電層によって絶縁層を挟んだ構造を有する。その構造に起因した応力の発生により、キャパシタの信頼性が低下する場合がある。特許文献2では、MIMキャパシタの端部構造が提案されている。特許文献2の構造においては、応力が緩和できたとしても、電子部品としての電気特性が劣化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-151114号公報
【特許文献2】特許第6725095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気特性を向上させることが可能な配線基板、及び配線基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様によると、絶縁性を有する第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する基板と、前記基板の前記第1面上に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層上に設けられた上部電極とを有し、前記下部電極は、第1導電性厚膜と、前記第1導電性厚膜上に設けられ、前記第1導電性厚膜より厚さが薄い第1導電性薄膜とを含む、キャパシタと、前記基板の前記第1面上に設けられ、第2導電性厚膜と、前記第2導電性厚膜上に設けられた第2導電性薄膜とを含む配線部とを具備し、前記第1導電性厚膜と前記第2導電性厚膜とは、連続層かつ同一材料で構成され、前記第1導電性薄膜と前記第2導電性薄膜とは、連続層かつ同一材料で構成され、前記第2導電性薄膜の厚さは、前記第1導電性薄膜の厚さより薄く、前記第1導電性薄膜の導電率は、前記第1導電性厚膜の導電率の2%以上50%以下である、配線基板が提供される。
【0007】
本発明の第2態様によると、前記第1及び第2導電性厚膜の上面の粗さは、前記第1及び第2導電性厚膜の側面の粗さよりも小さい、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0008】
本発明の第3態様によると、前記第1導電性薄膜の厚さは、100nm未満である、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0009】
本発明の第4態様によると、前記第2導電性薄膜の厚さは、100nm未満である、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0010】
本発明の第5態様によると、前記第1導電性薄膜の熱膨張率は、前記誘電体層の熱膨張率よりも小さく、前記第1導電性厚膜の熱膨張率よりも小さい、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0011】
本発明の第6態様によると、前記第1導電性薄膜と前記第2導電性薄膜との膜厚差が生じる位置は、前記誘電体層の端部の位置と同じである、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0012】
本発明の第7態様によると、前記基板の前記第2面上に設けられた導電層と、前記基板を貫通する貫通孔内に設けられた貫通孔内導電層とをさらに具備し、前記貫通孔内導電層は、前記配線部と前記導電層とを接続するように構成される、第1態様に係る配線基板が提供される。
【0013】
本発明の第8態様によると、基板上に部分的に、第1レジスト層を形成する工程と、前記基板のうち前記第1レジスト層で覆われていない部分に、導電性厚膜を形成する工程と、前記第1レジスト層及び前記導電性厚膜上に、前記導電性厚膜より厚さが薄い導電性薄膜を形成する工程と、リフトオフプロセスにより、前記第1レジスト層と、前記第1レジスト層上に形成された前記導電性薄膜とを除去する工程と、前記導電性薄膜上に、誘電体層を形成する工程と、前記誘電体層上に部分的に、上部電極を形成する工程と、前記上部電極と、前記誘電体層の一部とを覆う第2レジスト層を形成する工程と、前記誘電体層のうち前記第2レジスト層で覆われていない部分をエッチングするとともに、前記導電性薄膜の一部をエッチングする工程とを具備する配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気特性を向上させることが可能な配線基板、及び配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板を示す概略平面図である。
図2図2は、図1に示したA-A´線に沿った配線基板を示す断面図である。
図3図3は、配線基板に含まれるキャパシタを示す断面図である。
図4図4は、第1変形例に係る導電性薄膜の形状を説明する断面図である。
図5図5は、第2変形例に係る導電性薄膜の形状を説明する断面図である。
図6図6は、第3変形例に係る導電性薄膜の形状を説明する断面図である。
図7図7は、第4変形例に係る導電性薄膜の形状を説明する断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図9図9は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図10図10は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図11図11は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図12図12は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図13図13は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図14図14は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図15図15は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図16A図16Aは、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図16B図16Bは、図16Aに示したC部の拡大図である。
図17A図17Aは、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図17B図17Bは、図17Aに示したC部の拡大図である。
図18A図18Aは、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図18B図18Bは、図18Aに示したC部の拡大図である。
図19図19は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図20図20は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図21図21は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図22図22は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図23図23は、配線基板の製造方法を説明する断面図である。
図24図24は、比較例1に係るフィルタ部品を示す断面図である。
図25図25は、比較例4に係るフィルタ部品を示す断面図である。
図26図26は、試験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
なお、以下の説明において、構造間の位置関係を規定するときに、「上」または「下」は、一方の構造の直上または直下に他の構造が配置される場合に限らず、構造間においてさらに他の構造を介在する場合を含む。
【0018】
また、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。なお、「上面」、「下面」については、「第1面」、「第2面」と称することもある。
【0019】
また、「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚みの部分を意味する。さらに、面の一部及び側面を合わせて「端部」ということがある。
【0020】
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。「下方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直下方の方向を意味する。
【0021】
また、「平面形状」、「平面視」とは、上方から面又は層を視認した場合の形状を意味する。さらに、「断面形状」、「断面視」とは、板状部材又は層を特定の方向で切断した場合の水平方向から視認した場合の形状を意味する。
【0022】
[1] 配線基板10の構成
本明細書において、配線基板は、基板と、この基板上に設けられかつ絶縁層及び導電層を含む積層体とを含む構造を意味する。基板上に設けられる積層体には、配線部、及び電子部品(キャパシタを含む)が含まれる。配線基板は、例えば、配線のデザインルールが互いに異なる集積回路(IC)チップ及びプリント配線基板のように、端子間距離が異なる部品を中継するインターポーザとして利用可能である。
【0023】
本発明の一実施形態に係る配線基板は、絶縁層を、金属等を含む導電層で挟み込んだMIM構造を備える。以下、MIM構造は、誘電体層である絶縁層を上部電極と下部電極とで挟んだキャパシタであるものとして説明する。以下に説明するキャパシタを含む配線基板によれば、従来のキャパシタを含む配線基板よりも電気特性を向上することができる。以下、このようなキャパシタを含む配線基板の構造について、具体的に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板10を示す概略平面図である。図2は、図1に示したA-A´線に沿った配線基板10を示す断面図である。図3は、配線基板10に含まれるキャパシタ100を示す断面図(図1に示したB-B´線に沿った断面図)である。図1において、X方向は、配線基板10のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、配線基板10の水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向である。
【0025】
配線基板10は、基板11を備える。基板11は、第1面11aと、第1面11aの反対側の第2面11bとを有する。基板11は、絶縁性の表面を有する基板であり、本実施形態では、例えば、無アルカリガラスである。基板11は、ガラス以外の無機絶縁材料、有機材料、又は半導体基板であってもよいが、絶縁材料であることが好ましく、少なくとも表面に絶縁性を有している。本実施形態では、基板11の第1面11a及び第2面11bは、絶縁性を有している。
【0026】
基板11の厚さは、50μm以上700μm以下であることが好ましく、一例として、100μmである。また、基板11の第1面11aの表面粗さ(算術平均粗さRa)は、基板11の第1面11a上に形成される導電層及び第2面11b上に形成される導電層において高周波信号に対し伝送損失が生じるのを防ぐ観点から、小さいことが好ましく、50nm以下であり、0.1nm以上30nm以下であることが好ましい。ここでの算術平均粗さRaは、JIS規格「JIS B 0601:2001」の定義に従う。以下、本明細書において、表面粗さは、算術平均粗さRaに対応する。
【0027】
配線基板10は、キャパシタ100、及び配線部101を備える。配線部101の一部は、キャパシタ100に接続される。図1には、基板11の第1面11aに設けられたキャパシタ100、及び配線部101を示している。配線部101は、インダクタ102、103、及び配線104を含む。インダクタ102は、ロの字形状を有するインダクタの一例である。インダクタ102は、Z方向にらせん状に形成されるインダクタの一部である。インダクタ103は、X方向にらせん状に形成されるインダクタの一例である。配線104は、直線状の配線の一例である。
【0028】
基板11の第1面11a上には、キャパシタ100が設けられる。キャパシタ100は、MIMキャパシタとも呼ばれる。キャパシタ100は、この順に積層された下部電極14、誘電体層15、及び上部電極16を備える。下部電極14は、この順に積層された導電性厚膜12A、及び導電性薄膜13Aを含む。
【0029】
基板11の第1面11a上には、配線部101が設けられる。配線部101は、この順に積層された導電性厚膜12B、及び導電性薄膜13Bを含む。
【0030】
キャパシタ100の導電性厚膜12Aと、配線部101の導電性厚膜12Bとは、連続層かつ同一材料で構成される。導電性厚膜12Aと導電性厚膜12Bとを纏めて導電性厚膜12と称する。導電性厚膜12に関する説明は、導電性厚膜12Aと導電性厚膜12Bとに共通する。キャパシタ100の導電性薄膜13Aと、配線部101の導電性薄膜13Bとは、連続層かつ同一材料で構成される。導電性薄膜13Aと導電性薄膜13Bとを纏めて導電性薄膜13と称する。導電性薄膜13に関する説明は、導電性薄膜13Aと導電性薄膜13Bとに共通する。
【0031】
基板11の第1面11a上には、下部電極14が設けられる。下部電極14は、基板11の第1面11aに直接配置されていてもよいし、導電性または絶縁性の層を少なくとも1層を介して基板11の第1面11aに配置されていてもよい。例えば、基板11の第1面11aに絶縁性樹脂を配置することにより、導電性厚膜12Aと基板11との熱膨張率(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)の差により発生する応力を緩和することができる。絶縁性樹脂としては、エポキシ、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びポリアミドなどが挙げられる。
【0032】
下部電極14は、シード層121として、膜質の異なる、若しくは膜種の異なる導電層を含んでいてもよい。シード層121は、基板11の第1面11a上に設けられる。シード層121は、導電性厚膜12を電解めっきで形成するときの電極として機能する導電層である。シード層121は、一例として、銅(Cu)で構成されるが、クロム(Cr)、又はチタン(Ti)などの他の膜であってもよいし、これらを含む複数の膜で形成してもよい。シード層121の厚さは、20nm以上800nm以下であることが好ましく、一例として、300nmである。シード層121は、例えば、無電解めっき法、又はスパッタ法などにより形成される。
【0033】
導電性厚膜12と基板11の第1面11aとの間には、さらに別の層が配置されていてもよい。例えば、シード層121が基板11から剥がれにくくするための密着層が配置されていてもよい。密着層としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)が挙げられる。酸化亜鉛を含む密着層は、例えば、ゾルゲル法によって形成される。他には貫通孔形成時に用いるエッチングストップ層が形成されていてもよい。エッチングストップ層としては、スパッタ法にて形成したクロム(Cr)などが挙げられる。
【0034】
導電性厚膜12は、シード層121を給電に用い、電解めっき法により形成される。導電性厚膜12は、一例として、銅(Cu)で構成されるが、他の導電性を有する材料の膜であってもよいし、これらを含む複数の膜で形成してもよい。導電性厚膜12の厚さは、0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、一例として、8μmである。なお、導電性厚膜12は、スパッタ法により形成されたCu層や電解Cu箔を、エッチングにてパターニングして形成してもよい。
【0035】
導電性厚膜12の上面の粗さは、その側面の粗さよりも小さく設定される。厚さ方向は、比較的配線間距離が短く、面内方向は、比較的配線間距離が長い。比較的配線間距離の短い上面の粗さを小さくすることで、配線の伝送特性ばらつき、及び配線部101の一部として形成されるインダクタのインダクタンス値のばらつきを抑制することができる。また、比較的配線間距離の長い側面の粗さを粗くすることで、絶縁層との密着性を得ることができ、繰り返し熱負荷後の密着性ばらつきを抑制することができる。例えば、導電性厚膜12上に導電性薄膜13を形成し、露出した導電性厚膜12の側面のみをエッチングすることで、導電性厚膜12の上面と側面とで粗さの差を得ることができる。導電性厚膜12の上面の粗さは、50nm以下であり、0.1nm以上30nm以下であることが好ましい。導電性厚膜12の側面の粗さは、50nm以上であり、60nm以上400nm以下であることが好ましい。
【0036】
下部電極14は、導電性薄膜13Aを含む。配線部101は、導電性薄膜13Bを含む。キャパシタ100における導電性薄膜13Aの厚さT1は、配線部101における導電性薄膜13Bの厚さT2よりも厚い。導電性薄膜13は、例えば、電解めっき法、又はスパッタ法などにより形成される。キャパシタ100における導電性薄膜13Aを相対的に厚く形成することで、応力緩和効果を有し、熱変動によるキャパシタ特性の変動を小さくすることができる。配線部101における導電性薄膜13Bを相対的に薄く形成することで、配線部101の上面を平滑にすることができる。これにより、配線部101の伝送特性ばらつき、及び配線部101の一部として形成されるインダクタのインダクタンス値のばらつきを抑制することができる。
【0037】
導電性薄膜13の導電率は、導電性厚膜12の導電率の2%以上50%以下であることが好ましい。導電性薄膜13の導電率を小さくすることで、導電性薄膜13中に流れる信号を抑制することができる。これにより、伝送特性の劣化を抑制することができる。なお、本実施形態では、導電性薄膜13として、導電率が3%となるチタン(Ti)を用いているが、これに限定されるものではない。
【0038】
キャパシタ100における導電性薄膜13Aの厚さは、10nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上100nm未満であることがより好ましい。導電性薄膜13Aの厚さを100nm未満にすることで、導電性薄膜13A中に流れる信号を抑制することができる。これにより、キャパシタ特性を向上させることができる。
【0039】
配線部101における導電性薄膜13Bの厚さは、10nm以上100nm未満であることが好ましい。導電性薄膜13Bの厚さを薄くすることで、導電性薄膜13B中に流れる信号を抑制することができる。導電性薄膜13Bの厚さを10nm以上にすることで、導電性薄膜13Bを連続層で構成することができる。なお、本実施形態では、配線部101における導電性薄膜13Bの厚さを30nmとしているが、これに限定されるものではない。
【0040】
導電性薄膜13の膜厚差が生じる位置と誘電体層15の端部の位置とを同じにすることで、誘電体層15の端部にかかる応力を緩和することができる。これにより、熱負荷等によるキャパシタの損傷、及びキャパシタ特性の変動を抑制することができる。導電性薄膜13Aと導電性薄膜13Bとの膜厚差は、10nm以上500nm以下が好ましく、30nm以上100nm以下がより好ましい。
【0041】
導電性薄膜13のCTEは、誘電体層15のCTEよりも小さく、導電性厚膜12よりも小さいことが好ましい。これにより、熱変動時の誘電体層15への応力を抑制することができ、温度変化によるキャパシタ特性の変動を小さくすることができる。なお、導電性薄膜13は、合金膜であってもよいし、多層膜であってもよい。
【0042】
下部電極14上には、誘電体層15が設けられる。誘電体層15の面積は、下部電極14の面積と同じに設定される。誘電体層15は、例えば、窒化シリコン(SiN)で構成される。誘電体層15は、酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化タンタル(TaO)、酸化アルミニウム(AlO)、窒化アルミニウム(AlN)、及び酸化ハフニウム(HfO)などの無機材料であってもよいし、これらを含む複数の膜で形成してもよい。誘電体層15の比誘電率は、キャパシタ100の周囲に存在する絶縁層(例えば、絶縁層23)の比誘電率よりも高いことが好ましい。誘電体層15の比誘電率は、2.0以上9.0以下であり、より好ましくは3.0以上8.0以下である。誘電体層15の厚さは、50nm以上1500nm以下であることが好ましく、一例として、800nmである。誘電体層15は、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
【0043】
誘電体層15上には、上部電極16が設けられる。上部電極16の面積は、誘電体層15の面積より小さく設定される。上部電極16は、シード層161を含んでいてもよい。シード層161は、誘電体層15上に設けられる。
【0044】
シード層161は、上部電極16を電解めっきで形成するときの電極として機能する導電層である。シード層161は、本実施形態では、銅(Cu)で構成されるが、クロム(Cr)、又はチタン(Ti)などの他の膜であってもよいし、これらを含む複数の膜で形成してもよい。シード層161の厚さは、20nm以上400nm以下であることが好ましく、一例として、300nmである。シード層161は、例えば、無電解めっき法、又はスパッタ法などで形成される。
【0045】
上部電極16は、シード層161を給電に用い、電解めっき法により形成される。上部電極16は、本実施形態では、銅(Cu)で構成されるが、他の導電性を有する材料の膜であってもよいし、これらを含む複数の膜で形成してもよい。上部電極16の厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、一例として、5μmである。上部電極16は、スパッタ法により形成されたCu層や電解Cu箔を、エッチングにてパターニングして形成してもよい。
【0046】
基板11は、第1面11aと第2面11bとの間を貫通する貫通孔20を有する。貫通孔20内には、貫通孔内導電層21が設けられる。貫通孔内導電層21は、基板11を貫通する貫通電極である。下部電極14は、貫通孔内導電層21を介して、基板11の第2面11bに配置された導電層22に電気的に接続される。本実施形態では、貫通孔内導電層21は、下部電極14から連続的に延びている。貫通孔内導電層21は、貫通孔20の側面から順に外周部分211及び内周部分212を含む。外周部分211は、シード層121に連続して構成される。内周部分212は、導電性厚膜12に連続して構成される。外周部分211と貫通孔20の側面との間には、前述した密着層のような別の層がさらに配置されていてもよい。
【0047】
貫通孔20の開口幅は、40μm以上110μm以下であることが好ましく、一例として、80μmである。貫通孔20の開口幅とは、第1面11aと第2面11bとの間において、これらの面に平行な貫通孔20の断面が形成する図形を規定し、当該図形の外縁の任意の2点間の最大距離をいう。外縁が形成する図形が円である場合、開口幅とは、円の直径をいう。
【0048】
貫通孔20は、例えば、開口幅が第1面11aから第2面11bにかけて徐々に大きくなる円錐台である。貫通孔20は、極小値を有してもよいし、極大値を有してもよいし、極小値及び極大値を有してもよい。貫通孔20は、開口幅が第1面11aから第2面11bにかけて徐々に小さくなっていてもよい。貫通孔20は、円柱であってもよい。
【0049】
貫通孔20は、基板11に対して、エッチング加工、レーザ加工、レーザ加工とエッチング加工との組合せによる加工、サンドブラスト加工、放電加工、又はドリル加工などを行うことにより形成される。貫通孔内導電層21は、貫通孔20の側面に沿って導電材料が配置された形状に限らず、貫通孔20内に導電材料が充填された形状であってもよい。図2に示すように、導電性厚膜12、貫通孔内導電層21の内周部分212、及び導電層22は、少なくとも一部において、互いに一体となり電気的に接続されていてもよい。さらに、下部電極14、貫通孔内導電層21、及び導電層22のうち、少なくとも2つの導電層が同じ材料で形成されていてもよい。
【0050】
基板11の第2面11b上には、導電層22が設けられる。導電層22は、基板11の第2面11b側にシード層221を含んでいてもよい。シード層221は、貫通孔内導電層21の外周部分211に連続して構成される。導電層22は、貫通孔内導電層21の内周部分212に連続して構成される。
【0051】
シード層221と基板11の第2面11bとの間には、前述した密着層のような別の層がさらに配置されていてもよい。また、導電性厚膜12と導電層22とは、同じ材料で形成され、実質的に同じ厚さであってもよい。この場合には、導電性厚膜12と導電層22とが電気的に接続されたときに、互いの接続部において抵抗値に差が生じにくくなり、信号の伝送損失を軽減することができる。
【0052】
基板11の第1面11a側には、キャパシタ100及び配線部101を覆うように、絶縁層23が設けられる。絶縁層23は、例えば、有機材料である樹脂を含む層で構成される。絶縁層23は、上部電極16に対応する位置に、ビアホール24を有する。ビアホール24内には、導電材料で構成された接続部25が設けられる。
【0053】
絶縁層23上には、導電層26が設けられる。導電層26は、接続部25を介して、ビアホール24の底部に配置された導電層(上部電極16を含む)と電気的に接続される。
【0054】
基板11の第2面11b側には、導電層22を覆うように、絶縁層27が設けられる。絶縁層27は、例えば、有機材料である樹脂を含む層で構成される。絶縁層27は、導電層22に対応する位置に、ビアホール28を有する。ビアホール28内には、導電材料で構成された接続部29が設けられる。
【0055】
絶縁層27上には、導電層30が設けられる。導電層30は、接続部29を介して、ビアホール28の底部に配置された導電層22と電気的に接続される。以上のようにして、本実施形態に係る配線基板10が構成される。
【0056】
[2] 導電性薄膜13の膜厚差が生じる部分の形状
次に、導電性薄膜13の膜厚差が生じる部分の形状について説明する。
【0057】
図3に示すように、誘電体層15の端部と、導電性薄膜13の膜厚差が生じる位置(導電性薄膜13Aと導電性薄膜13Bとの境界部分)とは同じである。換言すると、誘電体層15の端部と、導電性薄膜13の膜厚差の生じる部分とは面一である。この構成によれば、誘電体層15の端部への応力緩和効果が得られる。
【0058】
図4は、第1変形例に係る導電性薄膜13の形状を説明する断面図である。第1変形例では、導電性薄膜13は、膜厚差が生じる部分において、ふくらみを持った傾斜部を有する。換言すると、導電性薄膜13は、誘電体層15の端部の位置から水平方向に突出するように、曲線状かつ凸形状を有する傾斜部を有する。
【0059】
図5は、第2変形例に係る導電性薄膜13の形状を説明する断面図である。第2変形例では、導電性薄膜13は、膜厚差が生じる部分において、誘電体層15の端部から十分に離れた位置まで延びるように、ふくらみを持った傾斜部を有する。
【0060】
図6は、第3変形例に係る導電性薄膜13の形状を説明する断面図である。第3変形例では、導電性薄膜13は、膜厚差が生じる部分において、誘電体層15の端部から離れた位置から膜厚が減少するように形成された傾斜部を有する。
【0061】
図7は、第4変形例に係る導電性薄膜13の形状を説明する断面図である。第4変形例では、導電性薄膜13は、膜厚差が生じる部分において、曲線状かつ凹形状を有する傾斜部を有する。
【0062】
[3] 半導体装置40の構成
次に、配線基板10を備えた半導体装置40の構成について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る半導体装置40を示す断面図である。半導体装置40は、本実施形態に係る配線基板10、半導体チップ41、及び回路基板43を備える。配線基板10は、インターポーザとして用いられる。回路基板43は、例えば、マザーボードで構成される。
【0063】
配線基板10に含まれる基板11の第1面11a側には、半導体チップ41が配置される。配線基板10は、導電層26、及びはんだボール42を介して、半導体チップ41に電気的に接続される。
【0064】
配線基板10に含まれる基板11の第2面11b側には、回路基板43が配置される。配線基板10は、導電層30、及びはんだボール44を介して、回路基板43に電気的に接続される。
【0065】
本実施形態の半導体装置40によれば、回路基板43、配線基板10、及び半導体チップ41を互いに電気的に接続するとともに、これらを積層することが可能である。また、狭端子ピッチの半導体チップ41を大型の回路基板43へ実装することが可能である。
【0066】
なお、基板11の第1面11a側に回路基板43を配置してもよいし、基板11の第2面11b側に半導体チップ41を配置してもよい。また、配線基板10に半導体チップ41のみが実装された半導体装置としてもよいし、回路基板43に配線基板10のみが実装された半導体装置としてもよい。
【0067】
[4] 配線基板10の製造方法
次に、配線基板10の製造方法について説明する。図9乃至図23は、本発明の一実施形態に係る配線基板10の製造方法を説明する断面図である。図9乃至図23はいずれも、図2に対応する部分の断面形状を示している。
【0068】
<第1工程>
基板11としてガラス基板11が用いられる。図9に示すように、ガラス基板11の第2面11bに、接着層51を介して支持体50を準備する。ガラス基板11に支持体50を貼り合わせる工程には、例えば、ラミネータ、真空加圧プレス、又は減圧貼り合わせ機などを使用することができる。
【0069】
接着層51は、ガラス基板11に支持体50を仮固定するための接着層である。接着層51としては、樹脂、又は支持体50に形成された官能基が用いられる。樹脂としては、UV光等の光を吸収して発熱、昇華、又は変質することにより剥離可能となる樹脂、若しくは熱によって発泡することにより剥離可能となる樹脂などが挙げられる。接着層51は、例えば、ガラス基板11の第2面11b上に形成された官能基である。接着層51として用いられる官能基としては、例えば、水酸基(ヒドロキシル基)が挙げられる。
【0070】
図9では、説明の便宜上、接着層51を、厚さを有する層として図示している。接着層51として第2面11b上に形成された官能基が用いられる場合、接着層51の厚さは、ガラス基板11及び支持体50と比較して無視できるほど小さい。このため、接着層51は、ガラス基板11と支持体50との間の界面と表現することもできる。この場合、支持体50は、ガラス基板11と直接貼り合わされていると表現することもできる。
【0071】
支持体50は、第1支持体であり、薄板状の搬送基板である。接着性の観点から、支持体50は、ガラス基板11と同一の材料で構成されることが好ましい。すなわち、ガラス基板11が無アルカリガラスである場合、支持体50も無アルカリガラスであることが好ましい。支持体50の厚さは、ガラス基板11の厚さに応じて適宜設定される。支持体50の厚さは、ガラス基板11の搬送性を鑑み、300μm以上1500μm以下であることが好ましい。
【0072】
一例によれば、貼り合わせられたガラス基板11、接着層51、及び支持体50を含む積層体として、日本電気硝子社製「Glass On Glass(GOG)」を使用することができる。この場合、支持体50はガラスであり、接着層51は水酸基(ヒドロキシル基)及び複数の官能基を含む。
【0073】
次に、ガラス基板11にレーザ光を照射し、ガラス基板11に1つ以上の改質部52を形成する。レーザ光の照射方向は、第1面11aから第2面11bへ向かう方向でもよいし、第2面11bから第1面11aへ向かう方向でもよい。改質部52は、例えば、レーザ照射によって加熱されることにより、レーザ光未照射部との間で結晶性等に相違を生じた部分である。改質部52は、ガラス基板11に形成される予定の貫通孔に対応した位置に形成される。改質部52は、例えば、第1面11a及び第2面11bと交差する方向に延びる。図9に示すように、第1面11aから第2面11bに向けてレーザ光が照射される場合、改質部52は、接着層51及び支持体50まで到達するように形成してもよい。
【0074】
<第2工程>
次に、図10に示すように、無電解めっき法、又はスパッタ法により、ガラス基板11の第1面11a上に、シード層121を形成する。前述したように、シード層121を形成する前に密着層を形成してもよい。本実施形態では、スパッタ法により、クロム(Cr)及び銅(Cu)を形成した。Cr層は、エッチングストップ層として機能する。
【0075】
<第3工程>
次に、図11に示すように、シード層121の一部上に、レジスト層53を形成する。次に、電解めっき法により、シード層121のうちレジスト層53で覆われていない部分に、導電性厚膜12を形成する。本実施形態では、導電性厚膜12として、銅(Cu)を形成した。なお、シード層121を形成しない場合、レジスト層53及び導電性厚膜12は、ガラス基板11上に形成される。
【0076】
<第4工程>
次に、図12に示すように、スパッタ法により、導電性厚膜12及びレジスト層53上に、導電性薄膜13を形成する。本実施形態では、導電性薄膜13として、導電率がCuの3%となりCTEが8ppm/℃となるチタン(Ti)を、被処理基板の全面に形成した。
【0077】
導電性薄膜13の導電率は、導電性厚膜12の2%以上50%以下であることが好ましい。導電性薄膜13のCTEは、誘電体層15のCTEよりも小さく、導電性厚膜12のCTEよりも小さいことが好ましい。合金膜の形成、又は多層膜の形成によって、導電率及びCTEを満たす膜を成膜してもよい。導電性薄膜13を形成する他の方法としては、電解めっき法、及び無電解めっき法などが挙げられる。
【0078】
<第5工程>
次に、図13に示すように、リフトオフプロセスにより、レジスト層53を剥離除去するとともに、不要な部分の導電性薄膜を除去する。これにより、導電性厚膜12上に、導電性薄膜13が形成される。この時、レジスト層を微細に粉砕して剥離する機能を有したウエット系の剥離方式、及び剥離液を用いることが好ましい。この剥離方式によれば、レジスト層、及び導電性薄膜の残留が少なく、簡易に所望のパターンを形成できる。本実施形態では、アミン系の剥離液を用いた。
【0079】
<第6工程>
次に、図14に示すように、導電性薄膜13及びシード層121上に、誘電体層15を形成する。本実施形態では、誘電体層15としては、化学蒸着(CVD)法を用いて、窒化シリコン(SiN)の層を800nm形成した。
【0080】
<第7工程>
次に、図15に示すように、誘電体層15上に、上部電極16を形成する。まず、スパッタ法により、誘電体層15上にシード層161を形成する。次に、フォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、電界めっき法により上部電極16を形成する。次に、レジストを除去し、不要なシード層をエッチングする。これにより、誘電体層15上に、シード層161及び上部電極16が形成される。
【0081】
<第8工程>
次に、誘電体層15のパターニング、及び導電性薄膜13の膜厚差を形成する。図16A図17A、及び図18Aは、第8工程を説明する断面図である。図16B図17B、及び図18Bはそれぞれ、図16A図17A、及び図18Aに示したC部の拡大図である。
【0082】
まず、図16A及び図16Bに示すように、誘電体層15の形成予定領域を覆うレジスト層54を形成する。次に、図17A及び図17Bに示すように、ドライエッチングにより、誘電体層15のうちレジスト層54で覆われていない部分をエッチングするとともに、導電性薄膜13の一部をエッチングする。これにより、導電性薄膜13に膜厚差を形成する。すなわち、導電性薄膜13は、誘電体層15で覆われた部分と、誘電体層15で覆われていない部分とで膜厚差が生じるように構成される。
【0083】
なお、ドライエッチングのガス種、ガス量、温度、及び真空度、並びにレジスト層54の密着性を制御することにより、図4図5、及び図7に示した導電性薄膜13の形状を形成することができる。また、誘電体層15を部分的に除去した後に、再度レジスト層を形成し、導電性薄膜13を別途エッチングすることで、図6に示した膜厚差が生じる位置と誘電体層15の端部の位置とが異なる形状を形成することができる。
【0084】
誘電体層15のエッチングに用いるガスと導電性薄膜13に膜厚差を形成するガスとは、異なっていてもよいし、同じであってもよい。誘電体層15がSiN、導電性薄膜13がTiである場合は、CFを主としたガスを用いることで一括での加工が可能となる。
【0085】
次に、図18A及び図18Bに示すように、レジスト層54を剥離除去する。このようにして、誘電体層15のパターニング、及び導電性薄膜13の膜厚差を形成することができる。
【0086】
<第9工程>
次に、図19に示すように、ウエットエッチングにより、シード層121の不要な部分をエッチングする。この時、導電性薄膜13がエッチングされず、かつシード層121がエッチングされるエッチング液を用いることが好ましい。本実施形態では、シード層121をCrとCuとの積層構造としており、導電性薄膜13をTiとしているため、硫酸-過酸化水素系のエッチング液を用い、Cuをまずエッチングし、フェリシアン化カリウム系のエッチング液でCrをエッチングすることで、導電性薄膜13を侵すことなく不要なシード層121を除去できる。
【0087】
また、Cuをエッチングする際に導電性厚膜12の側面がエッチングされることで、導電性厚膜12の側面に所望の粗さを形成することができる。また、導電性薄膜13で覆われている導電性厚膜12の上面は、平滑な面を得ることができる。このとき、導電性厚膜12の側面の粗さは60nm、上面の粗さは30nmであった。
【0088】
<第10工程>
次に、図20に示すように、キャパシタ100及び配線部101上に、絶縁層23を形成する。絶縁層23として液状樹脂を用いる場合、絶縁層23は、スピンコート法により形成される。絶縁層23としてフィルム状樹脂を用いる場合、絶縁層23は、真空ラミネータを用いて真空下で加熱及び加圧することにより形成される。一例によれば、絶縁層23として、味の素ファインテクノ社製の絶縁樹脂フィルムである「ABF-GXT31(32.5μm厚)」を、ガラス基板11にラミネートし、これをプリキュアする。
【0089】
次に、ガラス基板11及び絶縁層23を含む被処理基板を、支持体55に支持させる。ここでは、上記被処理基板の絶縁層23が支持体55と向き合うようにして、上記被処理基板と支持体55とを接着層56を介して貼り合わせる。
【0090】
接着層56としては、樹脂、又は支持体55に形成された官能基が用いられる。樹脂としては、UV光等の光を吸収して発熱、昇華、又は変質することにより剥離可能となる樹脂、若しくは熱によって発泡することにより剥離可能となる樹脂などが挙げられる。接着層56は、接着層51と異なる材料で構成されることが好ましい。一例によれば、接着層56として、日東電工社製「リバアルファ(登録商標)」が使用される。
【0091】
支持体55は、第2支持体であり、薄板状の搬送基板である。支持体55は、ガラス基板11と同一の材料で構成されることが好ましい。すなわち、ガラス基板11が無アルカリガラスである場合、支持体55も無アルカリガラスであることが好ましい。支持体55の厚さは、ガラス基板11の厚さに応じて適宜設定して構わない。支持体55の厚さは、ガラス基板11の搬送性を鑑み、300μm以上1500μm以下であることが好ましい。
【0092】
<第11工程>
次に、図21に示すように、ガラス基板11から接着層51及び支持体50を分離させる。ガラス基板11から接着層51及び支持体50を分離する際、接着層51に使用した材料に応じて、UV光の照射、加熱処理、及び物理剥離等から適宜剥離方式が選択される。接着層51及び支持体50の剥離処理後に、ガラス基板11に接着層51の残差が生じる場合、プラズマ洗浄、超音波洗浄、水洗浄、又はアルコールを使用した溶剤洗浄などを行ってもよい。
【0093】
次に、接着層51及び支持体50を分離させたガラス基板11の第2面11bを、弗化水素を含んだエッチング液でエッチングする。これにより、ガラス基板11に貫通孔20を形成する。ガラス基板11のうち改質部52は、他の部分と比較して、エッチングレートが高い。よって、当該エッチング処理によって、ガラス基板11に貫通孔20を形成できる。
【0094】
当該エッチング処理によるエッチング量は、ガラス基板11の厚さに応じて、適宜設定される。例えば、エッチング処理前のガラス基板11の厚さが200μmである場合、ガラス基板11のエッチング量は、50μm以上175μm以下であることが好ましい。これにより、エッチング処理後のガラス基板11の厚さは、25μm以上150μm以下の範囲内とすることができる。
【0095】
弗化水素を含んだエッチング液は、例えば、弗化水素水溶液である。エッチング液は、硝酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選ばれる1種類以上の無機酸をさらに含んでいてもよい。
【0096】
エッチング液の弗化水素濃度は、例えば1.0質量%以上6.0質量%以下であり、好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下である。無機酸濃度は、例えば1.0質量%以上20.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以上16.0質量%以下である。各成分の濃度を上記範囲内に設定したエッチング液を使用して、1.0μm/min以下のエッチングレートでエッチング処理を行うことが好ましい。エッチング処理の際のエッチング液の温度は、10℃以上40℃以下であることが好ましい。
【0097】
<第12工程>
次に、図22に示すように、ガラス基板11の第2面11b面上及び貫通孔20内に、例えばスパッタ法又は無電解めっき法により、シード層(図示せず)を形成する。次に、フォトレジストを用いたパターン露光及び現像、電解銅めっき、シード層の露出部のエッチングを経て、導電層22及び貫通孔内導電層21を形成する。
【0098】
次に、導電層22上に、絶縁層27を形成する。絶縁層27は、絶縁層23と同じ工程で形成される。
【0099】
<第13工程>
次に、図23に示すように、ガラス基板11から接着層56及び支持体55を分離させる。ガラス基板11から接着層56及び支持体55を分離する際、接着層56に使用した材料に応じて、UV光の照射、加熱処理、及び物理剥離等から適宜剥離方式を選択する。接着層56及び支持体55の剥離処理後に、ガラス基板11に接着層56の残差が生じる場合、プラズマ洗浄、超音波洗浄、水洗浄、又はアルコールを使用した溶剤洗浄などを行ってもよい。
【0100】
次に、レーザ加工により、絶縁層23にビアホール24を形成する。次に、デスミア処理、スパッタ法、又は無電解めっき法により、絶縁層23上及びビアホール24内にシード層(図示せず)を形成する。次に、フォトレジストを用いたパターン露光及び現像、電解銅めっき、シード層の露出部のエッチングを経て、接続部25、及び導電層26を形成する。
【0101】
次に、レーザ加工により、絶縁層27にビアホール28を形成する。次に、デスミア処理、スパッタ法、又は無電解めっき法により、絶縁層27上及びビアホール28内にシード層(図示せず)を形成する。次に、フォトレジストを用いたパターン露光及び現像、電解銅めっき、シード層の露出部のエッチングを経て、接続部29、及び導電層30を形成する。以上のようにして、本実施形態に係る配線基板10が製造される。
【0102】
[5] 実施例
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
【0103】
(実施例)
実施例として、本実施形態に示したMIMキャパシタ、配線部、及び配線によって形成されたインダクタを有する電子部品の一例としてフィルタ部品を製造した。キャパシタにおける導電性薄膜の厚さは100nmとし、インダクタを含む配線部の導電性薄膜の厚さは30nmとした。実施例に係るフィルタ部品について、ネットワークアナライザを用いてS21透過特性を測定し、通過帯域における挿入損失を評価した。また、温度サイクル負荷後の挿入損失を評価した。温度サイクル負荷の条件は「-55℃⇔125℃ 500サイクル」とした。
【0104】
(比較例1)
比較例1として、図24に示すように、導電性薄膜が膜厚差を有さず、導電性薄膜の厚さが300nmであるフィルタ部品を製造した。導電性薄膜以外は、実施例において製造したものと同様のフィルタ部品を製造した。比較例1に係るフィルタ部品についても、実施例と同様の方法により、挿入損失を評価した。
【0105】
(比較例2)
比較例2として、図24と同様に、導電性薄膜が膜厚差を有さず、導電性薄膜の厚さが5nmであるフィルタ部品を製造した。導電性薄膜以外は、実施例において製造したものと同様のフィルタ部品を製造した。比較例2に係るフィルタ部品についても、実施例と同様の方法により、挿入損失を評価した。
【0106】
(比較例3)
比較例3として、導電率がCuの60%となり、CTEが25ppmとなるアルミニウム(Al)を導電性薄膜として用いたフィルタ部品を製造した。導電性薄膜の膜種以外は、実施例において製造したものと同様のフィルタ部品を製造した。比較例3に係るフィルタ部品についても、実施例と同様の方法により、挿入損失を評価した。
【0107】
(比較例4)
比較例4として、図25に示すように、導電性薄膜のないフィルタ部品を製造した。導電性薄膜以外は、実施例において製造したものと同様のフィルタ部品を製造した。比較例4に係るフィルタ部品についても、実施例と同様の方法により、挿入損失を評価した。
【0108】
(結果)
図26は、試験結果を説明する図である。判定は、初期、温度サイクル後それぞれについて行い、基準を満たすものを“○”、基準を満たさないが損失の比較的小さいものを“△”、基準を満たさず損失の大きいものを“×”とした。初期挿入損失、温度サイクル後挿入損失の判定結果から、両方が“○”であるものを電気特性総合判定“○”とし、それ以外を“×”とした。
【0109】
実施例は、比較例1~4に比べて、初期、温度サイクル後ともに通過帯域での損失が小さく、電気特性に優れたフィルタ部品を製造できた。
【0110】
[6] 実施形態の効果
本実施形態では、キャパシタ100における導電性薄膜13Aと配線部101における導電性薄膜13Bとに膜厚差を設けている。また、キャパシタ100における導電性薄膜13Aを相対的に厚く形成している。よって、導電性厚膜12Aと誘電体層15との熱膨張率の違いに起因して導電性厚膜12Aから誘電体層15にかかる応力を緩和できる。これにより、誘電体層15が下部電極14から剥離したり、誘電体層15にクラックが発生したりするのを抑制できる。ひいては、キャパシタ100の電気特性を向上させることができる。
【0111】
また、導電性薄膜13は、誘電体層15の端部の位置に膜厚差が生じるように構成される。このため、誘電体層15の端部にかかる応力を緩和することができる。これにより、熱負荷等によるキャパシタ100の損傷、及びキャパシタ特性の変動を抑制することができる。
【0112】
また、配線部101における導電性薄膜13Bを相対的に薄く形成している。よって、配線部101の上面を平滑にすることができる。これにより、配線部101の伝送特性ばらつき、及び配線部101の一部として形成されるインダクタのインダクタンス値のばらつきを抑制することができる。
【0113】
また、導電性薄膜13の厚さを導電性厚膜12の厚さより薄くしている。さらに、導電性薄膜13の導電率を導電性厚膜12の導電率より小さくしている。よって、導電性薄膜13中に流れる信号を抑制することができる。すなわち、信号の大部分は、導電率が高い導電性厚膜12を流れる。これにより、伝送特性の劣化を抑制することができる。
【0114】
また、導電性厚膜12の上面の粗さは、側面の粗さよりも小さく設定される。導電性厚膜12の上面の粗さを小さくすることで、配線の伝送特性ばらつき、及び配線部101の一部として形成されるインダクタのインダクタンス値のばらつきを抑制することができる。また、導電性厚膜12の側面の粗さを粗くすることで、絶縁層との密着性を得ることができる。これにより、繰り返し熱負荷後における導電性厚膜12と絶縁層との密着性ばらつきを抑制することができる。
【0115】
また、本実施形態によれば、キャパシタ100及び配線部101を含む配線基板10の電気特性を向上させることができる。
【0116】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0117】
10…配線基板、11…基板、12…導電性厚膜、13…導電性薄膜、14…下部電極、15…誘電体層、16…上部電極、20…貫通孔、21…貫通孔内導電層、22…導電層、23…絶縁層、24…ビアホール、25…接続部、26…導電層、27…絶縁層、28…ビアホール、29…接続部、30…導電層、40…半導体装置、41…半導体チップ、42…はんだボール、43…回路基板、44…はんだボール、50…支持体、51…接着層、52…改質部、53…レジスト層、54…レジスト層、55…支持体、56…接着層、100…キャパシタ、101…配線部、102…インダクタ、103…インダクタ、104…配線、121…シード層、161…シード層、211…外周部分、212…内周部分、221…シード層。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
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図11
図12
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図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
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図23
図24
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図26