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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171683
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】包装材料及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/28 20060101AFI20241205BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241205BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65D65/28
B65D65/40 D
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088832
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤口 玲実
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
【Fターム(参考)】
3E064AA08
3E064BA17
3E064BA24
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064GA02
3E064HM01
3E064HN05
3E064HP02
3E086AA23
3E086AC07
3E086AC12
3E086AC13
3E086AD01
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB51
(57)【要約】
【課題】包装袋の製造過程において破断しにくく且つ包装袋となった後において十分な易開封性を発現可能な包装材料を提供する。
【解決手段】開封誘導線を有する包装袋の製造に用いられる包装材料であって、樹脂基材層と、ガスバリア層と、シーラント層とをこの順序で備える多層構造を有し、樹脂基材層を貫通している複数のハーフカット部で構成された破線状の開封誘導線が当該包装材料に形成されており、破線状の開封誘導線が以下に示す条件1及び条件2を満たす、包装材料。
(条件1)0.5mm≦a≦1.5mm
(条件2)1≦a/b≦2
[条件1,2において、aは隣接する二つのハーフカット部の間の距離を示し、bはハーフカット部の長さを示す。]
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開封誘導線を有する包装袋の製造に用いられる包装材料であって、
樹脂基材層と、
ガスバリア層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える多層構造を有し、
前記樹脂基材層を貫通している複数のハーフカット部で構成された破線状の開封誘導線が当該包装材料に形成されており、
前記破線状の開封誘導線が以下に示す条件1及び条件2を満たす、包装材料。
(条件1)0.5mm≦a≦1.5mm
(条件2)1≦a/b≦2
[前記条件1,2において、aは隣接する二つの前記ハーフカット部の間の距離を示し、bは前記ハーフカット部の長さを示す。]
【請求項2】
前記開封誘導線と直交する方向に張力が加わるようにして測定される引張破断強度が70N/100mmより大きい、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記樹脂基材層は厚さが5~30μmのポリエステル系樹脂フィルムで構成されている、請求項1に記載の包装材料。
【請求項4】
前記ガスバリア層は厚さが3~20μmのアルミニウム箔で構成されている、請求項1に記載の包装材料。
【請求項5】
前記シーラント層は厚さが20~40μのポリオレフィン系樹脂フィルムで構成されている、請求項1に記載の包装材料。
【請求項6】
前記包装袋は、当該包装材料の両側端部の内面同士が熱接着されて形成される背貼りシール部を有する筒状部と、前記筒状部の下端を封止する下シール部と、前記筒状部の上端をシールする上シール部とを備え、前記背貼りシール部は前記包装袋の前記下シール部から前記上シール部にまで延びている、請求項1に記載の包装材料。
【請求項7】
包装材料の両側端部の内面同士が熱接着されて形成される背貼りシール部を有する筒状部と、
前記筒状部の下端を封止する下シール部と、
前記筒状部の上端をシールする上シール部と、
を備える包装袋であって、
前記背貼りシール部は当該包装袋の前記下シール部から前記上シール部にまで延びており、
前記包装材料が請求項1~6のいずれか一項に記載の包装材料であり、
前記開封誘導線が前記筒状部の周方向に形成されている、包装袋。
【請求項8】
前記背貼りシール部にノッチが形成されていない、請求項7に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は包装材料及びこれを用いて作製される包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
帽子切りタイプと称される包装袋が知られている。このタイプの包装袋は、矩形の包装材料で構成された筒状部と、筒状部の下端を封止する下シール部と、筒状部の上端をシールする上シール部と、筒状部に設けられた背貼りシール部とを備える。背貼りシール部は、包装材料の両側端部の内面同士が熱接着されて形成されるものであり、包装袋の背面の中央部に位置し、下シール部から上シール部にまで延びている。包装袋は運搬時及び保管時には内容物を密封している状態を維持すること(密封性)が求められ、他方、使用者が開封する時には指の力で容易に開封できること(易開封性)が求められる。
【0003】
包装袋に易開封性を付与するため、包装袋に開封誘導線を形成することが知られている。特許文献1は、ポリエステルフィルム、第1のアンカーコート層、ポリオレフィン系介在層、アルミニウム箔、第2のアンカーコート層及びポリオレフィン系シーラント層をこの順に備える包装材料のうち、ポリエステルフィルムを貫通する開封誘導線を炭酸ガスレーザーによって形成することを開示している。特許文献2は開封誘導線に加え、誘導要素と称される特定の形状を有する脆弱部を背貼りシール部と筒状部の境界を跨ぐように形成することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6586783号公報
【特許文献2】特許第6686595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、開封誘導線が予め形成された包装材料から包装袋をロールtoロール方式で製造する過程において、低い頻度ではあるものの開封誘導線が形成された箇所で包装材料が破断する現象に遭遇した。この現象が発生すると包装袋の製造を一時的に停止せざるを得ず、生産性の低下を招来する。
【0006】
本開示は上記課題を解決すべくなされたものであり、包装袋の製造過程において破断しにくく且つ包装袋となった後において十分な易開封性を発現可能な包装材料を提供する。また、本開示は十分な易開封性を有する包装袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は開封誘導線を有する包装袋の製造に用いられる包装材料に関する。この包装材料は、樹脂基材層と、ガスバリア層と、シーラント層とをこの順序で備える多層構造を有し、樹脂基材層を貫通している複数のハーフカット部で構成された破線状の開封誘導線が当該包装材料に形成されており、破線状の開封誘導線が以下に示す条件1及び条件2を満たす。
(条件1)0.5mm≦a≦1.5mm
(条件2)1≦a/b≦2
[条件1,2において、aは隣接する二つのハーフカット部の間の距離を示し、bはハーフカット部の長さを示す。]
【0008】
本発明者らの検討によると、幅の広い包装材料の原反を幅の狭い包装材料に切断(スリット)する過程で包装材料の破断が生じる傾向にある。これは包装材料に引張応力を加えた状態で包装材料をスリットするためと推察される。上記包装材料によれば、条件1及び条件2の両方を満たすことで、包装袋の製造過程において破断を抑制できるとともに、包装袋となった後において十分な易開封性を発現可能である。
【0009】
条件1は隣接する二つのハーフカット部の間の距離(以下、場合により「非カット部の長さ」という。)が0.5~1.5mmであることを特定するものである。非カット部の長さが0.5mm未満であると包装袋の製造過程において包装材料が破断しやすく、他方、1.5mmを超えると包装袋となった後において易開封性が不十分となりやすい。条件2はハーフカット部の長さbに対する非カット部の長さaの比(a/b)が1~2であることを特定するものである。すなわち、非カット部は、ハーフカット部と同じ長さであるか、ハーフカット部よりも長いことを意味し、その長さはハーフカット部の長さの二倍までとすべきことを意味する。換言すれば、ハーフカット部は、非カット部と同じ長さであるか、非カット部よりも短いことを意味し、その長さは非カット部の長さの1/2までとすべきことを意味する。なお、特許文献1の段落[0050]には「開封誘導線2は破線状であり、そのカット部は8mm、ニック部(非カット部)は0.5mmである」と記載されている。この記載から算出されるa/bの値は0.0625(=0.5/8)である。
【0010】
上記包装材料は、開封誘導線と直交する方向に張力が加わるようにして測定される引張破断強度が70N/100mmより大きいことが好ましい。この値が70N/100mm以下であると70N/100mmよりも大きい場合と比較して包装袋の製造過程において包装材料に破断が生じやすい。
【0011】
本開示の一側面は包装袋に関する。この包装袋は、本開示に係る上記包装材料の両側端部の内面同士が熱接着されて形成される背貼りシール部を有する筒状部と、筒状部の下端を封止する下シール部と、筒状部の上端をシールする上シール部とを備え、背貼りシール部は当該包装袋の下シール部から上シール部にまで延びており、開封誘導線が筒状部の周方向に形成されている。この包装袋は本開示に係る上記包装材料で構成されているため、十分な易開封性を有する。
【0012】
上記包装袋は背貼りシール部にノッチが形成されていない構成としてもよい。背貼りシール部が形成されている面は、従来、包装袋の背面となることが多いため、背貼りシール部にノッチが形成されていても使用者がノッチを見つけにくい傾向にある。これに対し、背貼りシール部にノッチを形成する代わりに、包装袋を正面から見て包装袋の側部であって開封誘導線が形成されている位置に開封の始点であることを示す印刷を施すことで使用者が容易に開封の始点を見つけることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、包装袋の製造過程において破断しにくく且つ包装袋となった後において十分な易開封性を発現可能な包装材料が提供される。また、本開示によれば十分な易開封性を有する包装袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は本開示に係る包装袋の一実施形態を模式的に示す正面図であり、図1(b)は開封誘導線を拡大して示す部分拡大図である。
図2図2図1(a)に示す包装袋の背面図である。
図3図3は本開示に係る包装材料の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図4図4は本開示に係る包装材料の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されない。
【0016】
<包装袋>
図1(a)は本実施形態に係る包装袋を模式的に示す正面図であり、図1(b)は開封誘導線を拡大して示す部分拡大図である。図2図1(a)に示す包装袋の背面図である。これらの図に示す包装袋20は、ピロー袋と称されるものである。包装袋20は、矩形の包装材料10で構成された筒状部11と、筒状部11の下端を封止する下シール部12と、筒状部11の上端をシールする上シール部13とを備える。筒状部11は背貼りシール部14を有する。背貼りシール部14は、包装材料10の両側端部の内面同士が熱接着されることによって形成されるものである。背貼りシール部14は包装袋20の背面20aの中央部に位置し、下シール部12から上シール部13にまで延びている。
【0017】
図1(a)及び図1(b)に示すように、包装袋20の上シール部13の下方に破線状の開封誘導線15が筒状部11の周方向に形成されている。他方、図1(b)に示すように、背貼りシール部14にはノッチが形成されていない。本実施形態に係る包装袋20は、正面から見て包装袋20の側部であって開封誘導線15が形成されている位置15sを始点として開封されることが想定されている。開封の始点は、例えば、包装袋20の表面に印刷を施すことによって使用者に明示することができる。
【0018】
図1(b)に示すように、破線状の開封誘導線15は所定の間隔をあけて配置された複数のハーフカット部15bによって構成されている。開封誘導線15は以下に示す条件1及び条件2を満たしている。条件1,2において、aは隣接する二つのハーフカット部15bの間の距離を示す。以下、隣接する二つのハーフカット部15bの間の領域を「非カット部15a」という。bはハーフカット部15bの長さを示す(図1(b)参照)。
(条件1)0.5mm≦a≦1.5mm
(条件2)1≦a/b≦2
【0019】
非カット部15aの長さaが0.5mm未満であると0.5mm以上の場合と比較して包装袋20の製造過程においてロール状の包装材料が途中で破断しやすく、他方、1.5mmを超えると1.5mm以下の場合と比較して包装袋20の易開封性が不十分となりやすい。非カット部15aの長さの下限値は、破断強度の観点から、好ましくは0.6mmであり、より好ましくは0.8mmである。非カット部15aの長さの上限値は、開封性の観点から、好ましくは1.4mmであり、より好ましくは1.2mmである。
【0020】
ハーフカット部の長さbに対する非カット部の長さaの比(a/b)が1未満であると1以上の場合と比較して包装袋20の製造過程においてロール状の包装材料が途中で破断しやすく、他方、2を超えると2以下の場合と比較して包装袋20の易開封性が不十分となりやすい。この値の下限値は、破断強度の観点から、好ましくは1.1であり、より好ましくは1.3である。この値の上限値は、開封性の観点から、好ましくは1.9であり、より好ましくは1.7である。
【0021】
条件1,2の範囲を考慮すると、ハーフカット部15bの長さbは0.25~1.5mmである。ハーフカット部15bの長さbが0.25mm未満であると0.25mm以上の場合と比較して包装袋20の易開封性が不十分となりやすく、他方、1.5mmを超えると1.5mm以下の場合と比較して包装袋20の製造過程においてロール状の包装材料が途中で破断しやすい。ハーフカット部15bの長さの上限値は、破断強度の観点から、好ましくは1.5mmであり、より好ましくは1.0mmである。ハーフカット部15bの長さの下限値は、開封性の観点から、好ましくは0.25mmであり、より好ましくは0.75mmである。
【0022】
開封誘導線15と直交する方向に張力が加わるようにして測定される包装材料10の引張破断強度は70N/100mmより大きいことが好ましく、好ましくは72N/100mmであり、より好ましくは75N/100mm以上である。この値が70N/100mmより大きいことで、包装袋20の製造過程においてロール状の包装材料が途中で破断することを十分に抑制できる。なお、包装袋20の易開封性の観点から、この値の上限値は、例えば、90N/100mmである。
【0023】
<包装材料>
図3を参照しながら、本実施形態に係る包装材料10の層構成について説明する。同図に示すとおり、包装材料10は、外側から内側に向けて、樹脂基材層1、第1のアンカーコート層2a、中間層3、ガスバリア層5、第2のアンカーコート層2b、シーラント層7がこの順序で積層されている。包装材料10の厚さは、例えば、60~105μmであり、加工速度の観点から、好ましくは65~105μmである。以下、各層について説明する。
【0024】
(樹脂基材層)
樹脂基材層1は包装材料10の強度を維持するためのものである。かかる観点から、樹脂基材層1として、例えば、二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムを使用することが好ましい。このような高強度のフィルムは、包装材料10を引裂く際の障害となり得る。このため、開封誘導線15を構成するハーフカット部15bは樹脂基材層1を貫通するように形成されている。ハーフカット部15bは、樹脂基材層1にその他の層を積層した後、例えば、樹脂基材層1に向けて炭酸ガスレーザーを照射することによって形成することができる。樹脂基材層1として二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム(例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)を使用する場合、当該フィルムの厚さは好ましくは5~30μmであり、より好ましくは10~20μmである。
【0025】
(第1のアンカーコート層)
第1のアンカーコート層2aは樹脂基材層1と中間層3とを高強度で接着している。高湿度環境下においても両者を強固に接着できる観点から、第1のアンカーコート層2aとしてポリウレタン系アンカーコート剤を使用することが好ましい。樹脂基材層1上にこのポリウレタン系アンカーコート剤を塗布して第1のアンカーコート層2aを形成した後、第1のアンカーコート層2aの表面に中間層3を構成する樹脂組成物を溶融押出しコーティングして中間層3を形成することが好ましい。ハーフカット部15bは第1のアンカーコート層2aも貫通している。炭酸ガスレーザーの照射することによってハーフカット部15bを形成することを想定すると、第1のアンカーコート層2aを構成する材料として炭酸ガスレーザーの吸収性が高いものを使用することが好ましい。
【0026】
(中間層)
中間層3は、ガスバリア層5を保護する役割を果たすものであり、ハーフカット部15bにおいてガスバリア層5が露出することを防止する。したがって、ハーフカット部15bは中間層3を貫通していない。すなわち、ハーフカット部15bは、中間層3の表面にまで至っているものの、中間層3はカットされていない。炭酸ガスレーザーの照射することによってハーフカット部15bを形成することを想定すると、中間層3を構成する樹脂は炭酸ガスレーザーの吸収性が低いものが好ましく、かかる樹脂としてポリエチレン樹脂が挙げられる。
【0027】
(ガスバリア層)
ガスバリア層5は包装材料10にガスバリア性を付与するものである。ガスバリア層5として、例えば、アルミニウム箔を使用することが好ましい。ガスバリア層5としてアルミニウム箔を用いた場合、包装材料10に遮光性を付与することができる。例えば、中間層3を構成するポリエチレン樹脂が溶融している間にアルミニウム箔を圧着することにより、中間層3に対してアルミニウム箔を強固に接着させることができる。ガスバリア層5としてアルミニウム箔を使用する場合、アルミニウム箔の厚さは好ましくは3~20μmであり、より好ましくは5~15μmである。
【0028】
(第2のアンカーコート層)
第2のアンカーコート層2bはガスバリア層5とシーラント層7とを高強度で接着している。両者を強固に接着することにより、包装袋20の開封時のシーラント層7の伸びを抑制できる観点から、第2のアンカーコート層2bとしてポリブタジエン系アンカーコート剤を使用することが好ましい。第2のアンカーコート層2bを形成した後、第2のアンカーコート層2bの表面にシーラント層7を構成する樹脂組成物を溶融押出しコーティングすることにより、第2のアンカーコート層2bに対してシーラント層7を強固に接着させることができる。
【0029】
(シーラント層)
シーラント層7は、包装材料10を使用して包装袋20を製造する際、最内面を構成する。シーラント層7が有するヒートシール性により、下シール部12、上シール部13及び背貼りシール部14が形成される。シーラント層7としてポリオレフィン系樹脂フィルムを使用する場合、当該フィルムの厚さは好ましくは15~50μmであり、より好ましくは20~40μmである。ポリオレフィン系樹脂フィルムの具体例として低密度ポリエチレン樹脂フィルムが挙げられる。低密度ポリエチレン樹脂の密度は0.910g/cm以上0.930g/cm未満である。
【0030】
図4に示すように、シーラント層は二層構造を有するものであってもよい。同図に示すシーラント層8は、第1のシーラント層8aと第2のシーラント層8bとによって構成されている。例えば、第2のアンカーコート層2bの表面に溶融押出しコーティングによって第1のシーラント層8aを形成した後、第1のシーラント層8aが溶融している間にポリオレフィン系シーラントフィルムを圧着することによって第2のシーラント層8bを形成してもよい。
【0031】
<包装袋の製造方法>
包装袋20は、幅広のロール状の包装材料を使用し、この原反を巻き出して走行させながら以下の工程を順次実施することで製造される。まず、包装材料10と同様の層構成を有するロール状の包装材料を準備する。ロール状の包装材料に対して複数の開封誘導線15を連続的に形成する。複数の開封誘導線15が形成されたロール状の包装材料を走行方向に沿って切断し、包装袋20のサイズに適した幅の包装材料を得る。得られたロール状の包装材料を丸め、背貼りシール部14を形成する。その後、走行方向に直交する方向に下シール部12を形成するともにそれぞれの包装袋に断裁する。得られた包装袋に内容物を収容した後、上シール部13を形成することにより、内容物が密閉された包装袋20が得られる。
【0032】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態においてはピロー袋と称される包装袋について説明したが、本開示に係る包装材料を用いてガゼット袋を製造してもよい。上記実施形態においては、樹脂基材層1、ガスバリア層5及びシーラント層7の他に、第1のアンカーコート層2a、中間層3及び第2のアンカーコート層2bを備える包装材料について説明したが、樹脂基材層1、ガスバリア層5及びシーラント層7を例えば接着剤で貼り合わせることによって包装材料を得てもよい。上記実施形態においては、ハーフカット部15bの形成方法として、炭酸ガスレーザーによる加工を例示したが、例えば、刃、型板又は針を用いた機械加工を採用してもよい。また、背貼りシール部14の引裂き性向上の観点から、背貼りシール部14と筒状部11の境界を跨ぐように脆弱部を形成してもよい。かかる脆弱部はハーフカット部15bと同様の方法で形成すればよい。
【0033】
本開示は以下の事項に関する。
[1]開封誘導線を有する包装袋の製造に用いられる包装材料であって、
樹脂基材層と、
ガスバリア層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える多層構造を有し、
前記樹脂基材層を貫通している複数のハーフカット部で構成された破線状の開封誘導線が当該包装材料に形成されており、
前記破線状の開封誘導線が以下に示す条件1及び条件2を満たす、包装材料。
(条件1)0.5mm≦a≦1.5mm
(条件2)1≦a/b≦2
[前記条件1,2において、aは隣接する二つの前記ハーフカット部の間の距離を示し、bは前記ハーフカット部の長さを示す。]
[2]前記開封誘導線と直交する方向に張力が加わるようにして測定される引張破断強度が70N/100mmより大きい、[1]に記載の包装材料。
[3]前記樹脂基材層は厚さが5~30μmのポリエステル系樹脂フィルムで構成されている、[1]又は[2]に記載の包装材料。
[4]前記ガスバリア層は厚さが3~20μmのアルミニウム箔で構成されている、[1]~[3]のいずれか一つに記載の包装材料。
[5]前記シーラント層は厚さが20~40μのポリオレフィン系樹脂フィルムで構成されている、[1]~[4]のいずれか1つに記載の包装材料。
[6]前記包装袋は、当該包装材料の両側端部の内面同士が熱接着されて形成される背貼りシール部を有する筒状部と、前記筒状部の下端を封止する下シール部と、前記筒状部の上端をシールする上シール部とを備え、前記背貼りシール部は前記包装袋の前記下シール部から前記上シール部にまで延びている、[1]~[5]のいずれか一つに記載の包装材料。
[7]包装材料の両側端部の内面同士が熱接着されて形成される背貼りシール部を有する筒状部と、
前記筒状部の下端を封止する下シール部と、
前記筒状部の上端をシールする上シール部と、
を備える包装袋であって、
前記背貼りシール部は当該包装袋の前記下シール部から前記上シール部にまで延びており、
前記包装材料が[1]~[6]のいずれか一つに記載の包装材料であり、
前記開封誘導線が前記筒状部の周方向に形成されている、包装袋。
[8]前記背貼りシール部にノッチが形成されていない、[7]に記載の包装袋。
【実施例0034】
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
図4に示す層構成を有する包装材料を作製するため、以下の材料を準備した。
・樹脂基材層:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)
・第1のアンカーコート層:ポリウレタン系アンカーコート剤
・中間層:ポリエチレン樹脂
・ガスバリア層:アルミニウム箔(厚さ9μm)
・第2のアンカーコート層:ポリブタジエン系アンカーコート剤
・第1のシーラント層:ポリエチレン樹脂
・第2のシーラント層:低密度ポリエチレン樹脂フィルム(厚さ30μm)
【0036】
まず、以下の工程を経て上記層構成を有する積層体を作製した。樹脂基材層としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」という。)の片面に印刷を施し、この印刷面にポリウレタン系アンカーコート剤を塗布して第1のアンカーコート層を形成した。次に、第1のアンカーコート層の上にポリエチレン樹脂を溶融押出しコーティングして中間層(厚さ15μm)を積層し、この中間層が溶融状態のうちにアルミニウム箔を圧着して積層した。アルミニウム箔の表面にポリブタジエン系アンカーコート剤を塗布して第2のアンカーコート層を形成した。第2のアンカーコート層の表面にポリエチレン樹脂を溶融押出しコーティングして第1のシーラント層(厚さ20μm)を形成し、この第1のシーラント層が溶融状態のうちに、第2のシーラント層としての低密度ポリエチレン樹脂フィルムを圧着した。
【0037】
上記工程を経て得られた積層体に対し、その外面側(樹脂基材層側)から炭酸ガスレーザーを照射して破線状の開封誘導線を形成した。レーザー加工条件は以下のとおりとした。これにより本例に係る包装材料を得た。
・二つのハーフカット部の間の距離(非カット部の長さ):1.0mm
・ハーフカット部の長さ:1.0mm
・スキャンスピード:4000mm/秒
・出力:26.5W
【0038】
(実施例2)
非カット部の長さを1.0mmとする代わりに1.5mmとし且つハーフカット部の長さを1.0mmとする代わりに1.5mmとしたことの他は実施例1と同様にして本例に係る包装材料を得た。
【0039】
(実施例3)
ハーフカット部の長さを1.0mmとする代わりに0.5mmとしたことの他は実施例1と同様にして本例に係る包装材料を得た。
【0040】
(実施例4)
非カット部の長さを1.0mmとする代わりに1.5mmとしたことの他は実施例1と同様にして本例に係る包装材料を得た。
【0041】
(実施例5)
非カット部の長さを1.0mmとする代わりに1.5mmとし且つハーフカット部の長さを1.0mmとする代わりに0.75mmとしたことの他は実施例1と同様にして本例に係る包装材料を得た。
【0042】
(比較例1)
ハーフカット部の長さを1.0mmとする代わりに2.0mmとしたことの他は実施例1と同様にして本例に係る包装材料を得た。
【0043】
(比較例2)
非カット部の長さを1.0mmとする代わりに1.5mmとし且つハーフカット部の長さを1.0mmとする代わりに3.0mmとしたことの他は実施例1と同様にして本例に係る包装材料を得た。
【0044】
(比較例3)
破線状の開封誘導線を形成する代わりに、直線状のハーフカット部で構成される開封誘導線(非カット部なし)を形成したことの他は実施例1と同様にして本例に係る包装材料を得た。
【0045】
<引張破断強度の測定>
実施例及び比較例に係る包装材料の引張破断強度を以下のようにして測定した。すなわち、JIS K7127:1999(ISO 527-3:1995)の「プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」及びJIS K7161-1:2014(ISO 527-1:2012)の「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」に記載の方法に準拠して包装材料の引張破断強度を測定した。なお、開封誘導線と直交する方向に張力を加えた。測定の具体的な条件は以下のとおりとした。
・標線間距離:50mm
・試験速度:100mm/分
・試験片:100mm幅
【0046】
表1及び表2に結果を示す。なお、表中の引張破断強度の値は3つの試験片からそれぞれ得られた測定値の平均値である。本発明者らの検討によると、引張弾性強度が70N/100mmより大きければ、包装袋の製造過程における包装材料の破断を高度に抑制できる。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
実施例及び比較例に係る包装材料から包装袋を作製し、開封性を確認した結果、いずれの包装袋も容易且つ安定的に開封することが可能であった。なお、非カット部の長さが2.0mm又は2.5mmである破線状の開封誘導線を有する包装袋を別途作製し、開封性について評価した結果、非カット部の長さが2.0mm又は2.5mmである場合、開封誘導線に沿って包装体を開封できない場合があった。
【符号の説明】
【0050】
1…樹脂基材層、3…中間層、5…ガスバリア層、7,8…シーラント層、10…包装材料、11…筒状部、12…下シール部、13…上シール部、14…背貼りシール部、15…開封誘導線、15a…非カット部、15b…ハーフカット部、20…包装袋
図1
図2
図3
図4