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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171684
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】制御システムおよび電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088833
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱分 智則
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KA06
(57)【要約】
【課題】連系点電力の要求を許容範囲内で充足しながらリソースの電力を計画値に近付ける。
【解決手段】制御システム20は、電力系統との間で電力の授受が可能なリソースを制御するシステムであり、リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成する情報生成部31と、電力系統における連系点電力の要求と情報生成部31が生成した過不足情報とに応じてリソースに対する指令値を生成する指令値生成部32とを具備する。指令値生成部32は、過不足情報が電力の不足を表す場合、連系点電力の要求の許容範囲内で連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように指令値を生成し、過不足情報が電力の過剰を表す場合、連系点電力の要求の許容範囲内で連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように指令値を生成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との間で電力の授受が可能なリソースを制御するシステムであって、
前記リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成する情報生成部と、
前記電力系統における連系点電力の要求と前記情報生成部が生成した過不足情報とに応じて前記リソースに対する指令値を生成する指令値生成部とを具備し、
前記指令値生成部は、
前記過不足情報が電力の不足を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように前記指令値を生成し、
前記過不足情報が電力の過剰を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように前記指令値を生成する
制御システム。
【請求項2】
前記過不足情報は、前記リソースにおける電力の過不足量を表し、
前記指令値生成部は、
基準範囲を設定する範囲設定部と、
前記過不足量が前記基準範囲内にある場合に通常出力モードを選択し、前記過不足量が前記基準範囲に対して不足側の範囲内にある場合に電力不足モードを選択し、前記過不足量が前記基準範囲に対して過剰側の範囲内にある場合に電力過剰モードを選択する動作モード選択部と、
前記動作モード選択部が選択した動作モードに応じて前記指令値を生成する制御処理部とを含み、
前記制御処理部は、
前記通常出力モードにおいて、前記許容範囲内の基準値に応じて前記指令値を生成し、
前記電力不足モードにおいて、前記連系点電力の瞬時値が、前記許容範囲内において前記基準値と比較して受電方向に増加するように、前記指令値を生成し、
前記電力過剰モードにおいて、前記連系点電力の瞬時値が、前記許容範囲内において前記基準値と比較して受電方向に減少するように、前記指令値を生成する
請求項1の制御システム。
【請求項3】
前記範囲設定部は、前記基準範囲の範囲幅を経時的に変化させる
請求項2の制御システム。
【請求項4】
前記範囲設定部は、時間軸上の目標時点に向けて前記基準範囲を経時的に縮小する
請求項3の制御システム。
【請求項5】
前記範囲設定部は、前記基準範囲の上限値を含む第1不感帯と、前記基準範囲の下限値を含む第2不感帯とを設定し、
前記動作モード選択部は、前記過不足量が前記第1不感帯内または前記第2不感帯内の数値である場合には動作モードを変更しない
請求項2の制御システム。
【請求項6】
前記範囲設定部は、前記第1不感帯および前記第2不感帯の各々の範囲幅を経時的に変化させる
請求項5の制御システム。
【請求項7】
前記範囲設定部は、前記第1不感帯および前記第2不感帯の各々を、時間軸上の目標時点に向けて経時的に縮小する
請求項6の制御システム。
【請求項8】
前記範囲設定部は、待機期間を設定し、
前記動作モード選択部は、
前記基準範囲と前記基準範囲の不足側の範囲と前記基準範囲の過剰側の範囲とを含む複数の範囲のうち第1範囲から第2範囲に前記過不足量が変化する時点から、前記待機期間が経過するまで、前記過不足量が前記第2範囲内に維持された場合に、前記第2範囲に対応する動作モードを選択する
請求項2の制御システム。
【請求項9】
前記範囲設定部は、前記待機期間の時間長を経時的に変化させる
請求項8の制御システム。
【請求項10】
前記範囲設定部は、前記待機期間を経時的に短縮する
請求項9の制御システム。
【請求項11】
前記指令値生成部は、前記指令値の経時的な変動を抑制する変動抑制部を含む
請求項1の制御システム。
【請求項12】
前記指令値生成部は、逐次的に指示される補助要求に応じて前記指令値を制御する
請求項1の制御システム。
【請求項13】
電力系統との間で電力の授受が可能なリソースと、
前記リソースを制御する制御システムとを具備する電力システムであって、
前記制御システムは、
前記リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成する情報生成部と、
前記電力系統における連系点電力の要求と前記情報生成部が生成した過不足情報とに応じて前記リソースに対する指令値を生成する指令値生成部とを具備し、
前記指令値生成部は、
前記過不足情報が電力の不足を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように前記指令値を生成し、
前記過不足情報が電力の過剰を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように前記指令値を生成する
電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力系統との間で電力を授受する電力設備(以下「リソース」という)を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば蓄電システムまたは水素製造装置等のリソースを制御するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、連系点電力を目標値に追従させながら計画に沿って水素を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-225273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、連系点電力を目標値に充分に近似させながらリソースの電力を計画値に高精度に近付けることは、実際には容易ではない。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、連系点電力の要求を許容範囲内で充足しながらリソースの電力を計画値に近付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る制御システムは、電力系統との間で電力の授受が可能なリソースを制御するシステムであって、前記リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成する情報生成部と、前記電力系統における連系点電力の要求と前記情報生成部が生成した過不足情報とに応じて前記リソースに対する指令値を生成する指令値生成部とを具備し、前記指令値生成部は、前記過不足情報が電力の不足を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように前記指令値を生成し、前記過不足情報が電力の過剰を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように前記指令値を生成する。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る電力システムは、電力系統との間で電力の授受が可能なリソースと、前記リソースを制御する制御システムとを具備する電力システムであって、前記制御システムは、前記リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成する情報生成部と、前記電力系統における連系点電力の要求と前記情報生成部が生成した過不足情報とに応じて前記リソースに対する指令値を生成する指令値生成部とを具備し、前記指令値生成部は、前記過不足情報が電力の不足を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように前記指令値を生成し、前記過不足情報が電力の過剰を表す場合、前記連系点電力の要求の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように前記指令値を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における電力システムの構成を例示するブロック図である。
図2】リソースの一例である蓄電システムのブロック図である。
図3】リソースの他例である水素製造装置のブロック図である。
図4】制御システムのブロック図である。
図5】制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図6】指令値生成部のブロック図である。
図7】指令値生成部の動作の説明図である。
図8】制御処理のフローチャートである。
図9】第2実施形態における範囲設定部の動作の説明図である。
図10】第3実施形態における指令値生成部の動作の説明図である。
図11】第3実施形態における指令値生成部の動作の説明図である。
図12】第4実施形態における範囲設定部の動作の説明図である。
図13】第5実施形態における指令値生成部の動作の説明図である。
図14】第5実施形態における指令値生成部の動作の説明図である。
図15】第6実施形態における指令値生成部の動作の説明図である。
図16】第7実施形態における指令値生成部のブロック図である。
図17】第7実施形態における指令値生成部の動作の説明図である。
図18】第7実施形態における指令値生成部のブロック図である。
図19】変形例における範囲設定部の動作の説明図である。
図20】変形例における範囲設定部の動作の説明図である。
図21】変形例における範囲設定部の動作の説明図である。
図22】変形例における範囲設定部の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0009】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における電力システム100のブロック図である。第1実施形態の電力システム100は、電力系統200との間で交流電力を授受するシステムである。電力系統200は、発電設備(図示略)により生成された電力を事業設備または一般家庭等の需要家に供給するための配電系統である。
【0010】
図1に例示される通り、電力システム100は、リソース10と制御システム20とを具備する。リソース10と制御システム20とは、例えば専用線等の通信網(図示略)を介して相互に通信可能である。
【0011】
リソース10は、電力系統200との間で電力の授受が可能な設備であり、連系点300において電力系統200に接続される。リソース10は、電力の供給および消費の一方または双方が可能な電力設備である。
【0012】
図2は、リソース10の一例である蓄電システム11の構成図である。図2に例示された蓄電システム11は、蓄電池111と制御機器112とを具備する。蓄電池111は、連系点300に対する電力の供給(放電)と連系点300からの電力を利用した充電とを実行可能である。制御機器112は、蓄電池111の放電および充電を制御するPCS(Power Conditioning System)である。
【0013】
図3は、リソース10の他例である水素製造装置12の構成図である。図3に例示された水素製造装置12は、水素発生器121と水素タンク122とを具備する。水素発生器121は、連系点300からの電力の消費により水素を生成する。水素タンク122は、水素発生器121が発生した水素を貯留する。なお、以上の例示のほか、電力を生成する燃料電池または太陽光システム等の発電装置も、リソース10として例示される。
【0014】
図1の制御システム20は、リソース10を制御するためのコンピュータシステムである。具体的には、制御システム20は、電力の指令値Cをリソース10に送信する。指令値Cに応じてリソース10が動作する結果、電力系統200のうち連系点300における電力(以下「連系点電力」という)は変化する。概略的には、制御システム20は、連系点電力について設定される要求が充足され、かつ、リソース10について事前に設定された計画が達成に近付くように、指令値Cを設定する。
【0015】
図4は、制御システム20の構成を例示するブロック図である。図4に例示される通り、制御システム20は、制御装置21と記憶装置22と通信装置23とを具備する。なお、制御システム20は、単体の装置により実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。また、制御システム20の機能の一部または全部は、リソース10に搭載されてもよい。
【0016】
制御装置21は、制御システム20の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置21が構成される。
【0017】
記憶装置22は、制御装置21が実行するプログラムと制御装置21が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置22は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置22が構成されてもよい。制御システム20に対して着脱される可搬型の記録媒体が、記憶装置22として利用されてもよい。第1実施形態の記憶装置22は、連系点電力に関する要求(以下「連系点要求R」という)とリソース10の計画値Xとを記憶する。
【0018】
連系点要求Rは、例えば、発電設備について事前に設定された発電計画、および、電力需給を平衡させるためのデマンドレスポンス等に応じて設定される。外部装置により事前に生成された連系点要求Rが制御システム20に提供され、当該連系点要求Rが記憶装置22に記憶される。具体的には、連系点要求Rは、連系点電力の目標値の時系列を含む。すなわち、連系点要求Rは、時間軸上の時点の各々について目標値を指定する。目標値は、連系点電力の目標となる電力である。
【0019】
計画値Xは、リソース10の動作に関して事前に計画された数値である。具体的には、蓄電システム11による充電量または放電量、水素製造装置12による水素の製造量、発電装置の発電量等が、計画値Xとして記憶装置22に記憶される。具体的には、計画値Xの時系列(すなわち計画値Xの経時的な変化)が記憶装置22に記憶される。例えば、外部装置により事前に生成された計画値Xが制御システム20に提供され、当該計画値Xが記憶装置22に記憶される。なお、制御システム20が利用者からの指示に応じて計画値Xを生成してもよい。
【0020】
図4の通信装置23は、外部装置との間で有線または無線により通信する。具体的には、通信装置23はリソース10と通信する。なお、制御システム20とは別体の通信装置23が、制御システム20に有線または無線により接続されてもよい。
【0021】
第1実施形態のリソース10は、実績値Yを制御システム20に送信(フィードバック)する。実績値Yは、リソース10の動作に関する実際の数値である。具体的には、蓄電システム11による実際の充電量または放電量、水素製造装置12による水素の実際の製造量、発電装置の実際の発電量等が、実績値Yとして制御システム20に提供される。実績値Yは、例えば所定の周期でリソース10から制御システム20に送信される。通信装置23は、リソース10から送信された実績値Yを受信する。
【0022】
また、通信装置23は、指令値Cをリソース10に送信する。指令値Cは、電力値(kW)または電力量(kWh)の数値である。指令値Cは、所定の周期で制御システム20からリソース10に送信される。リソース10は、制御システム20から受信した指令値Cに応じて動作する。
【0023】
図5は、制御システム20の機能的な構成を例示するブロック図である。制御装置21は、記憶装置22に記憶されたプログラムを実行することで、リソース10を制御するための複数の機能(情報生成部31,指令値生成部32および指令値送信部33)を実現する。
【0024】
情報生成部31は、リソース10における電力の計画値Xと実績値Yとの相違に応じた過不足情報を生成する。すなわち、過不足情報は、記憶装置22に記憶された計画値Xと通信装置23がリソース10から受信した実績値Yとの相違に応じた情報である。第1実施形態の過不足情報は、リソース10における電力の過不足量Dである。過不足量Dは、計画値Xを達成するためにリソース10が必要とする電力値(kW)である。情報生成部31は、過不足量Dを所定の周期で反復的に生成する。すなわち、過不足量Dの時系列が生成される。
【0025】
例えば、計画の単位となる30分の期間(以下「単位期間」という)のうち既に10分が経過した時点において、連系点要求Rが指定する連系点電力の目標値が1000kWである状況を想定する。計画値X(消費電力)は、単位期間の30分が経過する時点において500kWhであるところ、当該単位期間の10分の経過の時点における実績値Yが100kWhであると仮定する。
【0026】
リソース10の計画を達成するためには、単位期間のうち残りの20分において不足分の400kWhが電力系統200から供給される必要がある。他方、連系点電力は1000kWであるから、単位期間の残りの20分でリソース10が受電できる電力量は、333kWh(=1000kW×20分/60分)である。したがって、リソース10の電力の不足分は66kWh(=400kWh-333kWh)である。単位期間の終了までに不足分を解消するために必要な電力(すなわち過不足量D)は、200kW(=66kWh/(20分/60分))である。以上の例示の通り、情報生成部31は、計画値Xおよび実績値Yと連系点要求Rとに応じて過不足量D(過不足情報)を算定する。
【0027】
図5の指令値生成部32は、記憶装置22に記憶された連系点要求Rと情報生成部31が生成した過不足量Dとに応じて指令値Cを生成する。具体的には、指令値生成部32は、連系点要求Rが充足される範囲内で過不足量Dが低減されるように指令値Cを生成する。指令値送信部33は、指令値生成部32が生成した指令値Cを通信装置23からリソース10に送信する。
【0028】
[指令値生成部32]
図6は、指令値生成部32の具体的な構成を例示するブロック図である。また、図7は、指令値生成部32の動作の説明図である。図6に例示される通り、第1実施形態の指令値生成部32は、範囲設定部321と動作モード選択部322と制御処理部323とを含む。
【0029】
範囲設定部321は、図7の基準範囲Qを設定する。基準範囲Qは、過不足量Dの数値域に含まれる範囲である。具体的には、基準範囲Qは、上限値qHと下限値qLとの間の範囲である(qH>qL)。図7には、基準範囲Qの範囲幅Wqが図示されている。範囲幅Wqは、上限値qHと下限値qLとの差分値(Wq=qH-qL)である。第1実施形態における範囲幅Wqは一定である。図7に例示される通り、過不足量Dに関する正方向は、リソース10における電力の過剰を意味し、負方向は電力の不足を意味する。
【0030】
基準範囲Qに対して負側に位置する範囲は、リソース10における電力の不足を意味する範囲(以下「不足範囲QL」という)である。不足範囲QLは、下限値qLを下回る範囲であり、実績値Yが計画値Xに対して不足していることを意味する。他方、基準範囲Qに対して正側に位置する範囲は、リソース10における電力の過剰を意味する範囲(以下「過剰範囲QH」という)である。過剰範囲QHは、上限値qHを上回る範囲であり、実績値Yが計画値Xに対して過剰であることを意味する。不足範囲QLは「不足側の範囲」の一例であり、過剰範囲QHは「過剰側の範囲」の一例である。
【0031】
図6の動作モード選択部322は、過不足量Dに応じて複数の動作モード(通常出力モード,電力不足モードおよび電力過剰モード)の何れかを選択する。電力不足モードは、リソース10の電力が不足している場合に好適な動作モードであり、電力過剰モードは、リソース10の電力が過剰である場合に好適な動作モードである。通常出力モードは、リソース10の電力が不足および過剰の何れにも該当しない場合に好適な動作モードである。
【0032】
図7に例示される通り、第1実施形態の動作モード選択部322は、過不足量Dが基準範囲Q内にある場合に通常出力モードを選択する。また、動作モード選択部322は、過不足量Dが不足範囲QL内にある場合に電力不足モードを選択し、過不足量Dが過剰範囲QH内にある場合に電力過剰モードを選択する。
【0033】
図7には、連系点要求Rのもとで連系点電力に許容される範囲(以下「許容範囲P」という)が図示されている。図7の縦軸は、制御システム20からリソース10に送信される指令値Cを意味し、連系点電力の瞬時値に相当する。具体的には、図7における縦軸の正方向は、電力系統200からリソース10に供給される電力(受電方向)の増加を意味する。他方、縦軸の負方向は、電力系統200からリソース10に供給される電力(受電方向)の減少を意味する。
【0034】
許容範囲Pは、連系点要求Rが表す目標値を含む範囲である。具体的には、許容範囲Pは、上限値pHと下限値pLとの間の範囲である。上限値pHは、目標値を上回る数値に設定される。例えば、上限値pHは、目標値に対して+10%の数値に設定される。他方、下限値pLは、目標値を下回る数値に設定される。例えば、下限値pLは、目標値に対して-10%の数値に設定される。すなわち、目標値に対して±10%の範囲が許容範囲Pとして設定される。前述の通り、連系点要求Rが指定する目標値は経時的に変化する。したがって、上限値pHおよび下限値pLは、連系点要求Rの目標値に連動して経時的に変化する。
【0035】
図7には、許容範囲P内の複数の数値(基準値Cref,候補値CH,候補値CL)が図示されている。候補値CHは、許容範囲P内において上限値pHに近似する数値である。したがって、候補値CHは上限値pHに連動して経時的に変化する。具体的には、候補値CHは、基本的には許容範囲Pの上限値pHを余裕量mHだけ下回る数値(CH=pH-mH)に設定される。ただし、上限値pHの不連続な変化に対して候補値CHは連続的に変化する。
【0036】
他方、候補値CLは、許容範囲P内において下限値pLに近似する数値である。したがって、候補値CLは下限値pLに連動して経時的に変化する。具体的には、候補値CLは、基本的には許容範囲Pの下限値pLを余裕量mLだけ上回る数値(CL=pL+mL)に設定される。ただし、下限値pLの不連続な変化に対して候補値CLは連続的に変化する。
【0037】
基準値Crefは、候補値CHと候補値CLとの間の数値であり、連系点要求Rが指定する連系点電力の目標値に相当する。以上の説明から理解される通り、候補値CHは、基準値Crefと上限値pHとの間の範囲内において基準値Crefよりも上限値pHに近い数値であり、候補値CLは、基準値Crefと下限値pLとの間の範囲内において基準値Crefよりも下限値pLに近い数値である。
【0038】
図6の制御処理部323は、電力系統200における連系点要求R(許容範囲P)と動作モード選択部322が選択した動作モードとに応じて指令値Cを生成する。図7に例示される通り、制御処理部323は、通常出力モードにおいて、許容範囲P内の基準値Crefを指令値Cとして設定する。
【0039】
また、制御処理部323は、電力不足モードにおいて、許容範囲P内の候補値CHを指令値Cとして設定する。すなわち、制御処理部323は、連系点電力の瞬時値が、許容範囲P内において基準値Crefと比較して受電方向に増加するように、指令値Cを生成する。すなわち、電力不足モードにおいては、連系点電力が許容範囲P内に維持された状態で、電力系統200からリソース10に対する電力の供給が増加するように、指令値Cが生成される。以上の説明の通り、指令値生成部32は、過不足量Dが電力の不足を表す場合(電力不足モード)に、連系点要求Rの許容範囲P内で連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように指令値Cを生成する。
【0040】
他方、制御処理部323は、電力過剰モードにおいて、許容範囲P内の候補値CLを指令値Cとして設定する。すなわち、制御処理部323は、連系点電力の瞬時値が、許容範囲P内において基準値Crefと比較して受電方向に減少するように、指令値Cを生成する。すなわち、電力過剰モードにおいては、連系点電力が許容範囲P内に維持された状態で、電力系統200からリソース10に対する電力の供給が減少するように、指令値Cが生成される。以上の説明の通り、指令値生成部32は、過不足量Dが電力の過剰を表す場合(電力過剰モード)に、連系点要求Rの許容範囲P内で連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように指令値Cを生成する。
【0041】
図8は、制御装置21が実行する処理(以下「制御処理」という)のフローチャートである。図8の制御処理は、所定の周期で反復される。制御処理は「制御方法」の一例である。
【0042】
制御処理が開始されると、制御装置21(情報生成部31)は、記憶装置22に記憶された計画値Xとリソース10から受信した実績値Yとの相違に応じた過不足量Dを生成する(S1)。制御装置21(指令値生成部32)は、記憶装置22に記憶された連系点要求Rと情報生成部31が生成した過不足量Dとに応じて指令値Cを生成する(S2)。制御装置21(指令値送信)は、指令値Cを通信装置23からリソース10に送信する(S3)。
【0043】
指令値Cの生成(S2)において、制御装置21(範囲設定部321)は、基準範囲Qを設定する(S21)。また、制御装置21(動作モード選択部322)は、過不足量Dと基準範囲Qとの関係に応じて複数の動作モードの何れかを選択する(S22)。制御装置21(制御処理部323)は、連系点要求Rと動作モードとに応じて指令値Cを生成する(S23)。
【0044】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、過不足量Dが電力の不足を表す場合に、連系点電力の許容範囲P内で瞬時値を受電方向に増加させるように指令値Cが生成され、過不足量Dが電力の過剰を表す場合には、連系点電力の許容範囲P内で瞬時値を受電方向に減少させるように指令値Cが生成される。したがって、連系点要求Rを許容範囲P内で充足しながらリソース10の電力を計画値Xに近付けることが可能である。
【0045】
第1実施形態においては特に、過不足量Dが基準範囲Q内にある場合(通常出力モード)に許容範囲P内の基準値Crefが指令値Cとして生成される。したがって、許容範囲Pの上限値pHに近似する候補値CHと許容範囲Pの下限値pLに近似する候補値CLとの何れかが択一的に指令値Cとして生成される形態と比較して、連系点電力が許容範囲Pから逸脱する可能性を低減できる。
【0046】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0047】
図9は、第2実施形態における範囲設定部321の動作の説明図である。前述の通り、第1実施形態においては、基準範囲Qの範囲幅Wqが固定された形態を例示した。第2実施形態の範囲設定部321は、図9に例示される通り、基準範囲Qの範囲幅Wqを経時的に変化させる。具体的には、範囲設定部321は、時間軸上の目標時点Tに向けて基準範囲Qを経時的に縮小する。目標時点Tは、実績値Yを計画値Xに到達させるべき時点として計画値Xとともに記憶装置22に記憶される。
【0048】
具体的には、範囲設定部321は、目標時点Tにおいて基準値q0に到達するように基準範囲Qの上限値qHおよび下限値qLを経時的に変化させる。具体的には、上限値qHは、時間の経過とともに所定の勾配で直線的に減少する。他方、下限値qLは、時間の経過とともに所定の勾配で直線的に増加する。上限値qHの勾配の絶対値と下限値qLの勾配の絶対値とは相等しい。以上のように上限値qHおよび下限値qLが変化する結果、基準範囲Qは時間の経過とともに連続的に縮小する。
【0049】
基準範囲Qの設定以外の構成および動作は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0050】
ところで、基準範囲Qが広いほど、リソース10の電力が不足または過剰と判定される可能性が低いから、リソース10の電力の実績値Yが計画値Xに追従し難くなる。他方、基準範囲Qが狭いほど、リソース10の電力が不足または過剰と判定される可能性が高いから、リソース10の電力の実績値Yが計画値Xに追従し易くなる。すなわち、計画値Xに対する実績値Yの追従の度合は、基準範囲Qの範囲幅Wqに依存する。第2実施形態においては、基準範囲Qの範囲幅Wqが経時的に変化するから、リソース10の電力の実績値Yを計画値Xに追従させる度合を制御できる。第2実施形態においては特に、目標時点Tに向けて基準範囲Qが経時的に縮小するから、目標時点Tにおいてリソース10の電力の実績値Yが計画値Xに到達するように指令値Cを生成できる。
【0051】
C:第3実施形態
図10は、第3実施形態における指令値生成部32の動作の説明図である。第1実施形態と同様に、第3実施形態における基準範囲Qの範囲幅Wqは一定である。
【0052】
第3実施形態の範囲設定部321は、基準範囲Qについて第1不感帯Aおよび第2不感帯Bを設定する。第1不感帯Aは、基準範囲Qの上限値qHを含む範囲である。具体的には、第1不感帯Aは、上限値aHと下限値aLとの間の範囲幅Wa(Wa=aH-aL)にわたる範囲である。上限値aHは、例えば基準範囲Qの上限値qHに所定値を加算した数値、または1を上回る所定値を上限値qHに乗算した数値である。他方、下限値aLは、例えば基準範囲Qの上限値qHから所定値を減算した数値、または1を下回る所定値を上限値qHに乗算した数値である。なお、上限値aHまたは下限値aLは、基準範囲Qの上限値qHと一致してもよい。
【0053】
同様に、第2不感帯Bは、基準範囲Qの下限値qLを含む範囲である。具体的には、第2不感帯Bは、上限値bHと下限値bLとの間の範囲幅Wb(Wb=bH-bL)にわたる範囲である。基準値q0を0とした場合、上限値bHは、例えば基準範囲Qの下限値qLに所定値を加算した数値、または1を下回る正数を下限値qL(負数)に乗算した数値である。他方、下限値bLは、例えば基準範囲Qの下限値qLから所定値を減算した数値、または1を上回る所定値を下限値qL(負数)に乗算した数値である。なお、上限値bHまたは下限値bLは、基準範囲Qの下限値qLと一致してもよい。
【0054】
範囲幅Waおよび範囲幅Wbの各々は所定値に固定される。第3実施形態においては、範囲幅Waと範囲幅Wbとが相等しい場合を例示するが、範囲幅Waと範囲幅Wbとは相違してもよい。
【0055】
第3実施形態の動作モード選択部322は、過不足量Dが第1不感帯A内または第2不感帯B内の数値である場合には動作モードを変更しない。第3実施形態における動作モード選択部322の動作を以下に例示する。
【0056】
図10に例示される通り、過不足量Dが、第2不感帯Bの下限値bLを下回る数値から基準値q0まで経時的に増加する場合を想定する。過不足量Dが下限値bLを下回る状態では、電力不足モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが下限値bLを通過する時点t1では動作モードを電力不足モードに維持し、過不足量Dが上限値bHを通過した時点t2で動作モードを電力不足モードから通常出力モードに変更する。過不足量Dが上限値bHに到達することなく下限値bLを下回る数値に減少した場合、動作モードは電力不足モードに維持される。
【0057】
図10に例示される通り、過不足量Dが、基準値q0から上限値aHを上回る数値まで経時的に増加する場合を想定する。過不足量Dが基準値q0にある状態では、通常出力モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが下限値aLを通過する時点t3では動作モードを通常出力モードに維持し、過不足量Dが上限値aHを通過する時点t4で動作モードを通常出力モードから電力過剰モードに変更する。過不足量Dが上限値aHに到達することなく下限値aLを下回る数値に減少した場合、動作モードは通常出力モードに維持される。
【0058】
図11に例示される通り、過不足量Dが、第1不感帯Aの上限値aHを上回る数値から基準値q0まで経時的に減少する場合を想定する。過不足量Dが上限値aHを上回る状態では、電力過剰モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが上限値aHを通過する時点t1では動作モードを電力過剰モードに維持し、過不足量Dが下限値aLを通過した時点t2で動作モードを電力過剰モードから通常出力モードに変更する。過不足量Dが下限値aLに到達することなく上限値aHを上回る数値に増加した場合、動作モードは電力過剰モードに維持される。
【0059】
図11に例示される通り、過不足量Dが、基準値q0から下限値bLを下回る数値まで経時的に減少する場合を想定する。過不足量Dが基準値q0にある状態では、通常出力モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが上限値bHを通過する時点t3では動作モードを通常出力モードに維持し、過不足量Dが下限値bLを通過した時点t4で動作モードを通常出力モードから電力不足モードに変更する。過不足量Dが下限値bLに到達することなく上限値bHを上回る数値に増加した場合、動作モードは通常出力モードに維持される。
【0060】
制御処理部323が連系点要求Rと動作モードとに応じて指令値Cを生成する動作は、第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0061】
また、第3実施形態においては、過不足量Dが第1不感帯A内または第2不感帯B内の数値である場合には動作モードが変更されないから、過不足量Dの変動に起因して動作モードが過度に頻繁に変更されることが抑制される。したがって、第1不感帯Aおよび第2不感帯Bが設定されない形態と比較して、連系点電力を安定的に制御できる。
【0062】
D:第4実施形態
図12は、第4実施形態における指令値生成部32の動作の説明図である。第2実施形態と同様に、第4実施形態においては、基準範囲Qの範囲幅Wqが経時的に変化する。具体的には、基準範囲Qは目標時点Tに向けて経時的に縮小する。
【0063】
第4実施形態の範囲設定部321は、基準範囲Qについて第1不感帯Aおよび第2不感帯Bを設定する。第3実施形態と同様に、第1不感帯Aは、基準範囲Qの上限値qHを含む範囲であり、第2不感帯Bは、基準範囲Qの下限値qLを含む範囲である。前述の通り、基準範囲Qは経時的に縮小する。したがって、図12に例示される通り、第1不感帯Aの上限値aHおよび下限値aLは、基準範囲Qの上限値qHとともに経時的に減少する。第2不感帯Bの上限値bHおよび下限値bLは、基準範囲Qの下限値qLとともに経時的に増加する。
【0064】
第4実施形態の範囲設定部321は、第1不感帯Aの範囲幅Waと第2不感帯Bの範囲幅Wbとを経時的に変化させる。具体的には、範囲設定部321は、第1不感帯Aおよび第2不感帯Bの各々を、時間軸上の目標時点Tに向けて経時的に縮小する。目標時点Tは、第2実施形態と同様に、計画値Xとともに記憶装置22に記憶される。
【0065】
範囲設定部321は、目標時点Tにおいて基準値q0に到達するように第1不感帯Aの上限値aHおよび下限値aLを経時的に減少させる。したがって、第1不感帯Aは時間の経過とともに連続的に縮小し、範囲幅Waは目標時点Tにおいて0に到達する。同様に、範囲設定部321は、目標時点Tにおいて基準値q0に到達するように第2不感帯Bの上限値bHおよび下限値bLを経時的に増加させる。したがって、第2不感帯Bは時間の経過とともに連続的に縮小し、範囲幅Wbは目標時点Tにおいて0に到達する。
【0066】
動作モード選択部322の動作は第3実施形態と同様である。すなわち、動作モード選択部322は、過不足量Dが第1不感帯A内または第2不感帯B内の数値である場合には動作モードを変更しない。したがって、第4実施形態においても第3実施形態と同様の効果が実現される。また、制御処理部323が連系点要求Rと動作モードとに応じて指令値Cを生成する動作は、第1実施形態と同様である。したがって、第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0067】
ところで、第1不感帯Aまたは第2不感帯Bが広いほど、動作モードの変更の頻度が減少するから、リソース10の電力の実績値Yが計画値Xに追従し難くなる。他方、第1不感帯Aまたは第2不感帯Bが狭いほど、動作モードの変更の頻度が増加するから、リソース10の電力の実績値Yが計画値Xに追従し易くなる。すなわち、計画値Xに対する実績値Yの追従の度合は、第1不感帯Aの範囲幅Waまたは第2不感帯Bの範囲幅Wbに依存する。第4実施形態においては、第1不感帯Aの範囲幅Waおよび第2不感帯Bの範囲幅Wbが経時的に変化するから、リソース10の電力の実績値Yを計画値Xに追従させる度合を制御できる。第4実施形態においては特に、目標時点Tに向けて第1不感帯Aおよび第2不感帯Bが経時的に縮小するから、目標時点Tにおいてリソース10の電力の実績値Yが計画値Xに到達するように指令値Cを生成できる。
【0068】
E:第5実施形態
図13は、第5実施形態における指令値生成部32の動作の説明図である。第1実施形態と同様に、第5実施形態における基準範囲Qの範囲幅Wqは一定である。また、第5実施形態において第1不感帯Aおよび第2不感帯Bは設定されない。
【0069】
図13に例示される通り、第5実施形態の動作モード選択部322は、過不足量Dが基準範囲Qの上限値pHまたは下限値qLを通過した時点から所定長の期間(以下「待機期間M」という)が経過した時点において動作モードを変更する。すなわち、過不足量Dが上限値pHまたは下限値qLを通過した時点では動作モードは変更されない。以上の説明から理解される通り、待機期間Mは、動作モードの変更を待機する期間である。範囲設定部321は、基準範囲Qとともに待機期間Mの時間長を設定する。例えば、待機期間Mの時間長は記憶装置22に事前に記憶された所定値である。範囲設定部321は、記憶装置22から待機期間Mの時間長を取得する。
【0070】
図13に例示される通り、過不足量Dが不足範囲QLから下限値qLを通過して基準範囲Qに遷移する場合を想定する。過不足量Dが不足範囲QL内にある状態では、電力不足モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが基準範囲Qに変化した時点t1から待機期間Mが経過するまで、過不足量Dが基準範囲Q内に継続的に維持された場合に、動作モードを電力不足モードから通常出力モードに変更する。待機期間Mの経過前に過不足量Dが不足範囲QLに変化した場合、動作モード選択部322は、動作モードを変更せずに電力不足モードに維持する。
【0071】
図13に例示される通り、過不足量Dが基準範囲Qから上限値qHを通過して過剰範囲QHに遷移する場合を想定する。過不足量Dが基準範囲Q内にある状態では、通常出力モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが過剰範囲QHに変化した時点t2から待機期間Mが経過するまで、過不足量Dが過剰範囲QH内に継続的に維持された場合に、動作モードを通常出力モードから電力過剰モードに変更する。待機期間Mの経過前に過不足量Dが基準範囲Qに変化した場合、動作モード選択部322は、動作モードを変更せずに通常出力モードに維持する。
【0072】
図14に例示される通り、過不足量Dが過剰範囲QHから上限値qHを通過して基準範囲Qに遷移する場合を想定する。過不足量Dが過剰範囲QH内にある状態では、電力過剰モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが基準範囲Qに変化した時点t3から待機期間Mが経過するまで、過不足量Dが基準範囲Q内に継続的に維持された場合に、動作モードを電力過剰モードから通常出力モードに変更する。待機期間Mの経過前に過不足量Dが過剰範囲QHに変化した場合、動作モード選択部322は、動作モードを変更せずに電力過剰モードに維持する。
【0073】
図14に例示される通り、過不足量Dが基準範囲Qから下限値qLを通過して不足範囲QLに遷移する場合を想定する。過不足量Dが基準範囲Q内にある状態では、通常出力モードが選択されている。動作モード選択部322は、過不足量Dが不足範囲QLに変化した時点t4から待機期間Mが経過するまで、過不足量Dが不足範囲QL内に継続的に維持された場合に、動作モードを通常出力モードから電力不足モードに変更する。待機期間Mの経過前に過不足量Dが基準範囲Qに変化した場合、動作モード選択部322は、動作モードを変更せずに通常出力モードに維持する。
【0074】
いま、基準範囲Qと不足範囲QLと過剰範囲QHとの複数の範囲のうちの1個の範囲(以下「第1範囲」という)から他の範囲(以下「第2範囲」という)に過不足量Dが変化した場合を想定する。図13および図14の例示から理解される通り、動作モード選択部322は、過不足量Dが第1範囲から第2範囲に変化する時点t(t1~t4)から、待機期間Mが経過するまで、過不足量Dが第2範囲内に維持された場合に、第2範囲に対応する動作モードを選択する。他方、待機期間Mの経過前に過不足量Dが第1範囲に変化した場合、第1範囲に対応する動作モードが維持される。
【0075】
制御処理部323が連系点要求Rと動作モードとに応じて指令値Cを生成する動作は、第1実施形態と同様である。したがって、第5実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0076】
以上の説明の通り、第5実施形態においては、過不足量Dが基準範囲Qの上限値qHまたは下限値qLを通過してから待機期間Mが経過するまでは動作モードが変更されない。すなわち、過不足量Dの変動に起因して動作モードが過度に頻繁に変更されることが抑制される。したがって、待機期間Mが設定されない形態と比較して、連系点電力を安定的に制御できる。
【0077】
F:第6実施形態
図15は、第6実施形態における指令値生成部32の動作の説明図である。第5実施形態においては、待機期間Mの時間長が固定された形態を例示した。第6実施形態の範囲設定部321は、待機期間Mの時間長を経時的に変化させる。具体的には、図15に例示される通り、範囲設定部321は、待機期間Mを経時的に短縮する。例えば、待機期間Mの時間長は時間の経過とともに所定の勾配で直線的に減少する。待機期間Mに応じた動作モードの選択は第5実施形態と同様である。したがって、第6実施形態においても第5実施形態と同様の効果が実現される。
【0078】
待機期間Mが長いほど、動作モードの変更の頻度が減少するから、リソース10の電力の実績値Yが計画値Xに追従し難くなる。他方、待機期間Mが短いほど、動作モードの変更の頻度が増加するから、リソース10の電力の実績値Yが計画値Xに追従し易くなる。すなわち、計画値Xに対する実績値Yの追従の度合は、待機期間Mの時間長に依存する。第6実施形態においては、待機期間Mの時間長が経時的に変化するから、リソース10の電力の実績値Yを計画値Xに追従させる度合を制御できる。第6実施形態においては特に、待機期間Mが経時的に短縮されるから、時間の経過とともにリソース10の電力が計画値Xに近付くように指令値Cを生成できる。
【0079】
G:第7実施形態
図16は、第7実施形態における指令値生成部32のブロック図である。図16に例示される通り、第7実施形態の指令値生成部32は、第1処理部41と変動抑制部42とを具備する。第1処理部41は、第1実施形態における指令値生成部32と同様の構成および処理により、初期的な指令値C1を生成する。指令値C1は、第1実施形態における指令値Cに相当する。
【0080】
変動抑制部42は、指令値C1の経時的な変動を抑制することで指令値Cを生成する。図17に破線で例示される通り、第1処理部41が生成する指令値C1は、動作モードの変更の時点において瞬間的に変動する。変動抑制部42による処理後の指令値Cは、指令値C1の瞬間的な変動が抑制された軌跡に沿って経時的に変動する。
【0081】
例えば、指令値C1の急峻な変動を抑制するローパスフィルタが変動抑制部42として利用される。また、指令値C1の変化率を所定の範囲に制限する変化率リミッタが変動抑制部42として利用されてもよい。変動抑制部42による処理後の指令値Cが指令値送信部33からリソース10に送信される。第7実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0082】
ところで、動作モードの変更の時点において指令値Cが瞬間的に変動すると、連系点電力の品質(例えば電力の安定性)が低下する場合がある。第7実施形態においては、変動抑制部42により指令値Cの経時的な変動が抑制される。したがって、指令値Cの変動に起因した連系点電力の品質の低下を抑制できる。
【0083】
なお、以上の説明においては、第1実施形態の指令値生成部32を図16の第1処理部41として例示したが、第2実施形態から第6実施形態の指令値生成部32が第7実施形態の第1処理部41として採用されてもよい。
【0084】
H:第8実施形態
図18は、第8実施形態における指令値生成部32のブロック図である。図18に例示される通り、第8実施形態の指令値生成部32は、第7実施形態の要素(第1処理部41および変動抑制部42)に加えて第2処理部43を具備する。変動抑制部42による処理後の指令値Cが、図18においては便宜的に符号C2で図示されている。
【0085】
第2処理部43には補助要求Gが指示される。補助要求Gは、連系点電力の制御に並行して実時間的に発生する電力要求である。例えば、通信装置23は、電力事業者が運用する外部装置から補助要求Gを受信する。
【0086】
補助要求Gは、例えば、電力系統200における系統周波数を一定に維持するためのガバナフリー制御により逐次的に発生する指令である。補助要求Gは、連系点要求Rに反映されていない電力要求とも表現される。他方、連系点要求Rは、補助要求G以外の電力要求と表現されてもよい。また、補助要求Gは、連系点要求Rと比較して高速な応答が必要となる電力要求とも表現される。
【0087】
第2処理部43は、変動抑制部42による処理後の指令値C2を補助要求Gに応じて調整することで指令値Cを生成する。例えば、第2処理部43は、補助要求Gにより指定される電力値(kW)または電力量(kWh)を指令値C2に加算することで最終的な指令値Cを生成する。ただし、第2処理部43が実行する具体的な処理は、以上の例示に限定されない。以上の説明から理解される通り、第8実施形態の指令値生成部32は、逐次的に指示される補助要求Gに応じて指令値Cを制御する。
【0088】
第8実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第8実施形態においては、過不足量Dと連系点要求Rとに加えて逐次的な補助要求Gが指令値Cに反映される。したがって、連系点要求Rのような基本的な要求だけでなく、例えばガバナフリー制御による要求等の逐次的な要求にも適切に対応することが可能である。
【0089】
なお、以上の説明においては、第1実施形態の指令値生成部32を図18の第1処理部41として例示したが、第2実施形態から第6実施形態の指令値生成部32が第8実施形態の第1処理部41として採用されてもよい。なお、第8実施形態において変動抑制部42は省略されてもよい。また、第2処理部43の後段に変動抑制部42が設置されてもよい。
【0090】
I:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0091】
(1)基準範囲Qの範囲幅Wqを経時的に変化させる方法は、第2実施形態(図9)の例示に限定されない。例えば、第2実施形態においては基準範囲Qの範囲幅Wqを連続的に減少させたが、図19に例示される通り、範囲設定部321は、基準範囲Qの範囲幅Wqを段階的に変化させてもよい。すなわち、基準範囲Qの上限値qHまたは下限値qLは、時間軸上に離散的に設定された時点毎に不連続に変化してもよい。
【0092】
また、図20に例示される通り、範囲設定部321は、基準範囲Qの上限値qHの変化率と下限値qLの変化率とを相違させてもよい。図21に例示される通り、範囲設定部321は、基準範囲Qの上限値qHを所定値に維持しながら下限値qLを経時的に変化させても良い。同様に、範囲設定部321は、基準範囲Qの下限値qLを所定値に維持しながら上限値qHを経時的に変化させてもよい。また、第2実施形態においては上限値qHおよび下限値qLを直線的に変化させたが、範囲設定部321は、上限値qHおよび下限値qLを曲線的に変化させてもよい。
【0093】
第2実施形態においては基準範囲Qの範囲幅Wqが経時的に減少する形態を例示したが、基準範囲Qの範囲幅Wqは経時的に増加してもよい。すなわち、範囲設定部321は、基準範囲Qを経時的に拡大してもよい。
【0094】
(2)第1不感帯Aの範囲幅Waおよび第2不感帯Bの範囲幅Wbを経時的に変化させる方法は、第5実施形態(図12)の例示に限定されない。例えば、第5実施形態においては範囲幅Waおよび範囲幅Wbを連続的に減少させたが、図22に例示される通り、範囲設定部321は、第1不感帯Aの範囲幅Waおよび第2不感帯Bの範囲幅Wbを段階的に変化させてもよい。すなわち、範囲幅Waおよび範囲幅Wbは、時間軸上に離散的に設定された時間毎に不連続に変化してもよい。
【0095】
また、第5実施形態においては範囲幅Waおよび範囲幅Wbを直線的に変化させたが、範囲設定部321は、範囲幅Waおよび範囲幅Wbを曲線的に変化させてもよい。範囲設定部321は、第1不感帯Aまたは第2不感帯Bを経時的に拡大してもよい。
【0096】
(3)待機期間Mの時間長を経時的に変化させる方法は、第6実施形態(図15)の例示に限定されない。例えば、第6実施形態においては待機期間Mの時間長を直線的に変化させたが、範囲設定部321は、待機期間Mの時間長を段階的または曲線的に変化させてもよい。また、範囲設定部321は、待機期間Mの時間長を経時的に増加させてもよい。
【0097】
(4)前述の各形態においては、電力過剰モードおよび電力不足モードに加えて通常出力モードを含む複数の動作モードの何れかを動作モード選択部322が選択したが、通常出力モードは選択候補から省略されてもよい。例えば、動作モード選択部322は、過不足量Dが所定の閾値を下回る場合には電力不足モードを選択し、過不足量Dが当該閾値を上回る場合には電力過剰モードを選択してもよい。過不足量Dが閾値に一致する場合には、電力不足モードおよび電力過剰モードの何れが選択されてもよい。
【0098】
以上のように電力過剰モードおよび電力不足モードの何れかが選択される形態においては、過不足量Dの算定は省略されてよい。例えば、情報生成部31は、リソース10の電力の不足/過剰を2値的に表す過不足情報を生成してもよい。具体的には、情報生成部31は、実績値Yが計画値Xを上回る場合には、電力の過剰を表す過不足情報を生成し、実績値Yが計画値Xを下回る場合には、電力の不足を表す過不足情報を生成する。以上の説明から理解される通り、過不足情報は、リソース10における電力の計画値Xと実績値Yとの相違(すなわち電力の過不足)に応じた情報として包括的に表現される。
【0099】
(5)前述の各形態においては1個のリソース10を便宜的に例示したが、制御システム20は、電力系統200の1個の連系点300に共通に接続された複数のリソース10を制御してもよい。情報生成部31は、計画値Xおよび実績値Yをリソース10毎に個別に取得し、複数のリソース10にわたる計画値Xの合計値と実績値Yの合計値とから過不足情報(例えば過不足量D)を生成する。以上のように複数のリソース10の計画値Xおよび実績値Yから過不足情報を生成する点以外の構成および動作は、前述の各形態と同様である。
【0100】
(6)前述の各形態においては1個の連系点要求Rを便宜的に例示したが、指令値生成部32は、例えば相異なる電力市場に対応する複数の連系点要求Rに応じて指令値Cを生成してもよい。例えば、指令値生成部32は、複数の連系点要求Rにわたる目標値の合計値を全体的な目標値として指令値Cを生成する。
【0101】
なお、複数の連系点要求Rのなかには、例えば需給調整市場で取引される調整力のように電力の目標値が事前に確定されないものが想定される。以上のように未確定の連系点要求Rについては、連系点電力の目標値が所定の処理により推定されてもよい。例えば、公知の各種の時系列解析または人工知能技術により、制御装置21が目標値を予測してもよい。第8実施形態の補助要求Gについても同様に、連系点電力の目標値を所定の処理により推定してもよい。
【0102】
(7)前述の各形態に係る制御システム20の機能は、前述の通り、制御装置21を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置22に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0103】
J:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0104】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る制御システムは、電力系統との間で電力の授受が可能なリソースを制御するシステムであって、前記リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成する情報生成部と、前記電力系統における連系点電力の要件と前記情報生成部が生成した過不足情報とに応じて前記リソースに対する指令値を生成する指令値生成部とを具備し、前記指令値生成部は、前記過不足情報が電力の不足を表す場合、前記連系点電力の要件の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように前記指令値を生成し、前記過不足情報が電力の過剰を表す場合、前記連系点電力の要件の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように前記指令値を生成する。以上の態様においては、過不足情報が電力の不足を表す場合には、連系点電力の許容範囲内で瞬時値を受電方向に増加させるように指令値が生成され、過不足情報が電力の過剰を表す場合には、連系点電力の許容範囲内で瞬時値を受電方向に減少させるように指令値が生成される。したがって、連系点電力の要件を許容範囲内で充足しながらリソースの電力を計画値に近付けることが可能である。
【0105】
態様1の具体例(態様2)において、前記過不足情報は、前記リソースにおける電力の過不足量を表し、前記指令値生成部は、基準範囲を設定する範囲設定部と、前記過不足量が前記基準範囲内にある場合に通常出力モードを選択し、前記過不足量が前記基準範囲に対して不足側の範囲内にある場合に電力不足モードを選択し、前記過不足量が前記基準範囲に対して過剰側の範囲内にある場合に電力過剰モードを選択する動作モード選択部と、前記動作モード選択部が選択した動作モードに応じて前記指令値を生成する制御処理部とを含み、前記制御処理部は、前記通常出力モードにおいて、前記許容範囲内の基準値に応じて前記指令値を生成し、前記電力不足モードにおいて、前記連系点電力の瞬時値が、前記許容範囲内において前記基準値と比較して受電方向に増加するように、前記指令値を生成し、前記電力過剰モードにおいて、前記連系点電力の瞬時値が、前記許容範囲内において前記基準値と比較して受電方向に減少するように、前記指令値を生成する。以上の態様においては、過不足量が基準範囲内にある場合(通常出力モード)に許容範囲内の基準値に応じて指令値が生成される。したがって、許容範囲の上限値に近似する指令値と許容範囲の下限値に近似する指令値との何れかが生成される形態と比較して、連系点電力が許容範囲から逸脱する可能性を低減できる。
【0106】
態様2の具体例(態様3)において、前記範囲設定部は、前記基準範囲の範囲幅を経時的に変化させる。基準範囲が広いほど、リソースの電力が不足または過剰と判定される可能性が低いから、リソースの電力の実績値が計画値に追従し難くなる。他方、基準範囲が狭いほど、リソースの電力が不足または過剰と判定される可能性が高いから、リソースの電力の実績値が計画値に追従し易くなる。すなわち、計画値に対する実績値の追従の度合は、基準範囲の範囲幅に依存する。したがって、基準範囲の範囲幅を経時的に変化させる形態によれば、リソースの電力の実績値を計画値に追従させる度合を制御できる。
【0107】
態様3の具体例(態様4)において、前記範囲設定部は、時間軸上の目標時点に向けて前記基準範囲を経時的に縮小する。以上の態様によれば、時間軸上の目標時点においてリソースの電力が計画値に到達するように指令値を生成できる。
【0108】
態様2から態様4の何れかの具体例(態様5)において、前記範囲設定部は、前記基準範囲の上限値を含む第1不感帯と、前記基準範囲の下限値を含む第2不感帯とを設定し、前記動作モード選択部は、前記過不足量が前記第1不感帯内または前記第2不感帯内の数値である場合には動作モードを変更しない。以上の態様においては、過不足量が第1不感帯内または第2不感帯内の数値である場合には動作モードが変更されないから、過不足量の変動に起因して動作モードが過度に頻繁に変更されることが抑制される。したがって、第1不感帯および第2不感帯が設定されない形態と比較して、連系点電力を安定的に制御できる。
【0109】
態様5の具体例(態様6)において、前記範囲設定部は、前記第1不感帯および前記第2不感帯の各々の範囲幅を経時的に変化させる。第1不感帯または第2不感帯が広いほど、動作モードの変更の頻度が減少するから、リソースの電力の実績値が計画値に追従し難くなる。他方、第1不感帯または第2不感帯が狭いほど、動作モードの変更の頻度が増加するから、リソースの電力の実績値が計画値に追従し易くなる。すなわち、計画値に対する実績値の追従の度合は、第1不感帯または第2不感帯の範囲幅に依存する。したがって、第1不感帯および第2不感帯の範囲幅を経時的に変化させる形態によれば、リソースの電力の実績値を計画値に追従させる度合を制御できる。
【0110】
態様6の具体例(態様7)において、前記範囲設定部は、前記第1不感帯および前記第2不感帯の各々を、時間軸上の目標時点に向けて経時的に縮小する。以上の態様によれば、時間軸上の目標時点においてリソースの電力が計画値に到達するように指令値を生成できる。
【0111】
態様2の具体例(態様8)において、前記範囲設定部は、待機期間を設定し、前記動作モード選択部は、前記基準範囲と前記基準範囲の不足側の範囲と前記基準範囲の過剰側の範囲とを含む複数の範囲のうち第1範囲から第2範囲に前記過不足量が変化する時点から、前記待機期間が経過するまで、前記過不足量が前記第2範囲内に維持された場合に、前記第2範囲に対応する動作モードを選択する。以上の態様においては、過不足量が基準範囲の上限値または下限値を通過してから待機期間が経過するまでは動作モードが変更されない。すなわち、過不足量の変動に起因して動作モードが過度に頻繁に変更されることが抑制される。したがって、待機期間が設定されない形態と比較して、連系点電力を安定的に制御できる。
【0112】
態様8の具体例(態様9)において、前記範囲設定部は、前記待機期間の時間長を経時的に変化させる。待機期間が長いほど、動作モードの変更の頻度が減少するから、リソースの電力の実績値が計画値に追従し難くなる。他方、待機期間が短いほど、動作モードの変更の頻度が増加するから、リソースの電力の実績値が計画値に追従し易くなる。すなわち、計画値に対する実績値の追従の度合は、待機期間の時間長に依存する。したがって、待機期間の時間長を経時的に変化させる形態によれば、リソースの電力の実績値を計画値に追従させる度合を制御できる。
【0113】
態様9の具体例(態様10)において、前記範囲設定部は、前記待機期間を経時的に短縮する。以上の態様によれば、時間の経過とともにリソースの電力が計画値に近付くように指令値を生成できる。
【0114】
態様2から態様10の何れかの具体例(態様11)において、前記指令値生成部は、前記指令値の経時的な変動を抑制する変動抑制部を含む。動作モードの変更の時点で指令値が瞬間的に変動すると、連系点電力の品質(例えば電力の安定性)が低下する場合がある。変動抑制部を具備する形態によれば、指令値の経時的な変動が抑制されるから、指令値の変動に起因した連系点電力の品質の低下を抑制できる。
【0115】
態様1から態様11の何れかの具体例(態様12)において、前記指令値生成部は、逐次的に指示される補助要求に応じて前記指令値を制御する。以上の態様においては、過不足情報と連系点電力の要求とに加えて逐次的な補助要求が指令値に反映される。したがって、例えばガバナフリー制御による要求等の逐次的な要求にも適切に対応することが可能である。
【0116】
本開示のひとつの態様(態様13)に係る電力システムは、電力系統との間で電力の授受が可能なリソースと、前記リソースを制御する制御システムとを具備する電力システムであって、前記制御システムは、前記リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成する情報生成部と、前記電力系統における連系点電力の要件と前記情報生成部が生成した過不足情報とに応じて前記リソースに対する指令値を生成する指令値生成部とを具備し、前記指令値生成部は、前記過不足情報が電力の不足を表す場合、前記連系点電力の要件の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように前記指令値を生成し、前記過不足情報が電力の過剰を表す場合、前記連系点電力の要件の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように前記指令値を生成する。
【0117】
本開示のひとつの態様に係る制御方法は、電力系統との間で電力の授受が可能なリソースを制御する方法であって、前記リソースにおける電力の計画値と実績値との相違に応じた過不足情報を生成し、前記電力系統における連系点電力の要件と前記生成した過不足情報とに応じて前記リソースに対する指令値を生成し、前記指令値の生成においては、前記過不足情報が電力の不足を表す場合、前記連系点電力の要件の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に増加させるように前記指令値を生成し、前記過不足情報が電力の過剰を表す場合、前記連系点電力の要件の許容範囲内で前記連系点電力の瞬時値を受電方向に減少させるように前記指令値を生成する。
【符号の説明】
【0118】
100…電力システム、200…電力系統、300…連系点、10…リソース、11…蓄電システム、111…蓄電池、112…制御機器、12…水素製造装置、121…水素発生器、122…水素タンク、20…制御システム、21…制御装置、22…記憶装置、23…通信装置、31…情報生成部、32…指令値生成部、321…範囲設定部、322…動作モード選択部、323…制御処理部、33…指令値送信部、41…第1処理部、42…変動抑制部、43…第2処理部。
図1
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