(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017169
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】高周波送受信装置
(51)【国際特許分類】
H03G 11/02 20060101AFI20240201BHJP
H04B 1/18 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H03G11/02
H04B1/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119638
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 真臣
【テーマコード(参考)】
5J030
5K062
【Fターム(参考)】
5J030CB11
5J030CC05
5K062AA01
5K062AB15
5K062AC01
5K062AD04
5K062AD08
5K062AF01
5K062BE01
(57)【要約】
【課題】大電力入力かつ広帯域に対応した高周波リミッタ回路を備えた高周波送受信装置を提供する。
【解決手段】実施形態の高周波送受信装置は、フィルタ3から出力された第1信号を抑圧する高周波リミッタ回路1を備える。高周波リミッタ回路1は、第1信号が入力される入力端子RFINと、入力端子に信号ラインを介して接続された出力端子RFOUTと、信号ライン上のノードN4に第1端が接続され、第2端が基準電圧端GNDに接続された第1の複数のダイオード回路と、信号ライン上のノードN2に第1端が接続され、第2端が基準電圧端GNDに接続された第2の複数のダイオード回路と、ノードN4とノードN2との間の信号ライン上のノードN3に第1端が接続され、第2端が基準電圧端GNDに接続されたインダクタ31とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号におけるある周波数帯域の第1信号を通過させるフィルタと、
前記フィルタから出力された前記第1信号を抑圧する高周波リミッタ回路と、
前記高周波リミッタ回路から出力された信号を増幅する低雑音増幅器と、
を具備し、
前記高周波リミッタ回路は、
前記第1信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に信号ラインを介して接続された出力端子と、
前記信号ライン上の第1ノードに第1端が接続され、第2端が基準電圧端に接続された第1の複数のダイオード回路と、
前記信号ライン上の第2ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第2の複数のダイオード回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間の前記信号ライン上の第3ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第1インダクタと、
を備える高周波送受信装置。
【請求項2】
前記第1ノードと前記第3ノードとの間の前記信号ラインに直列に接続された第2インダクタをさらに備える請求項1に記載の高周波送受信装置。
【請求項3】
前記第2ノードと前記出力端子との間の前記信号ラインに直列に接続された第3インダクタと、
前記第3インダクタと前記出力端子との間の前記信号ライン上の第4ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第3の複数のダイオードと、
をさらに備える請求項1または2に記載の高周波送受信装置。
【請求項4】
前記第2の複数のダイオード回路は、
第1ダイオードと第2ダイオードを有し、
前記第1ダイオードのアノードと、前記第2ダイオードのカソードとが前記第2ノードに接続され、
前記第1ダイオードのカソードと、前記第2ダイオードのアノードとが前記基準電圧端に接続され、
前記第1の複数のダイオード回路は、
複数のダイオードが順方向に直列に接続された第1ダイオード列と、複数のダイオードが逆方向に直列に接続された第2ダイオード列とを有し、
前記第1ダイオード列の一端のダイオードのアノードと、前記第2ダイオード列の一端のダイオードのカソードとが前記第1ノードに接続され、
前記第1ダイオード列の他端のダイオードのカソードと、前記第2ダイオード列の他端のダイオードのアノードとが前記基準電圧端に接続される、
請求項1に記載の高周波送受信装置。
【請求項5】
前記第1ダイオード列はN(Nは1より大きい整数)個のダイオードを有し、前記N個のダイオードが順方向に直列に接続され、
前記第2ダイオード列はN個のダイオードを有し、前記N個のダイオードが逆方向に直列に接続され、
前記第1の複数のダイオード回路は、前記第1ダイオード列と前記第2ダイオード列とを含む第1ダイオード組をM(MはN以下の整数)個有し、
前記第1ノードと前記基準電圧端との間に、前記第1ダイオード組がM個並列に接続される、
請求項4に記載の高周波送受信装置。
【請求項6】
前記入力端子と前記第1ノードとの間の前記信号ライン上の第5ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第4の複数のダイオード回路と、
前記第5ノードと前記第1ノードとの間の前記信号ラインに直列に接続された第4インダクタと、
をさらに備え、
前記第4の複数のダイオード回路は、第3ダイオード列と第4ダイオード列とを含む第2ダイオード組をK(KはL以下の整数)個有し、
前記第3ダイオード列はL(Lは1より大きい整数)個のダイオードを有し、前記L個のダイオードが順方向に直列に接続され、
前記第4ダイオード列はL個のダイオードを有し、前記L個のダイオードが逆方向に直列に接続され、
前記第3ダイオード列の一端のダイオードのアノードと、前記第4ダイオード列の一端のダイオードのカソードとが第5ノードに接続され、
前記第3ダイオード列の他端のダイオードのカソードと、前記第4ダイオード列の他端のダイオードのアノードとが前記基準電圧端に接続され、
前記第5ノードと前記基準電圧端との間に、前記第2ダイオード組がK個並列に接続される、
請求項5に記載の高周波送受信装置。
【請求項7】
前記第4インダクタと前記第1ノードとの間の前記信号ライン上の第6ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第5インダクタ、
をさらに備える請求項6に記載の高周波送受信装置。
【請求項8】
前記入力端子と前記出力端子との間の前記信号ラインに接続されたインピーダンス変換回路、
をさらに備える請求項1に記載の高周波送受信装置。
【請求項9】
高周波信号におけるある周波数帯域の第1信号を通過させるフィルタと、
前記フィルタから出力された前記第1信号を抑圧する高周波リミッタ回路と、
前記高周波リミッタ回路から出力された信号を増幅する低雑音増幅器と、
を具備し、
前記高周波リミッタ回路は、
前記第1信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に信号ラインを介して接続された出力端子と、
前記信号ライン上の第1ノードに第1端が接続され、第2端が基準電圧端に接続された第1の複数のダイオード回路と、
前記信号ライン上の第2ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第2の複数のダイオード回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間の前記信号ライン上の第3ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第1マイクロストリップラインと、
を備える高周波送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーダー送受信システム等の高周波送受信装置は、高周波リミッタ回路(抑圧回路)を備えている。高周波リミッタ回路は、高周波信号の送信時にアンテナからの反射電力が受信端に現れるなどにより、受信機および受信機の低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)が破壊されるのを防ぐために用いられる。
【0003】
高周波リミッタ回路においては、リミット動作が可能な周波数範囲が狭く、広帯域で使用可能な送受信装置において過電力入力を保護したいときに使用できない場合がある。
【0004】
さらに、高出力の高周波送受信装置においては、出力電力の抑圧量が不十分である場合も多く、抑圧量を増加させるためにダイオードを多段に縦続接続した構成を有する。このように、より大電力入力に対応可能な構成にすると、入力反射損はさらに悪化し、使用可能な周波数はさらに狭くなる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】APPLICATION NOTE “PIN Limiter Diodes in Receiver Protectors”, Skyworks Solutions, Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大電力入力かつ広帯域に対応した高周波リミッタ回路を備えた高周波送受信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の高周波送受信装置は、高周波信号におけるある周波数帯域の第1信号を通過させるフィルタと、前記フィルタから出力された前記第1信号を抑圧する高周波リミッタ回路と、前記高周波リミッタ回路から出力された信号を増幅する低雑音増幅器とを具備する。前記高周波リミッタ回路は、前記第1信号が入力される入力端子と、前記入力端子に信号ラインを介して接続された出力端子と、前記信号ライン上の第1ノードに第1端が接続され、第2端が基準電圧端に接続された第1の複数のダイオード回路と、前記信号ライン上の第2ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第2の複数のダイオード回路と、前記第1ノードと前記第2ノードとの間の前記信号ライン上の第3ノードに第1端が接続され、第2端が前記基準電圧端に接続された第1インダクタとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る高周波リミッタ回路を含む高周波送受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
【
図3】第1実施形態に係る高周波リミッタ回路の高周波特性を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る高周波リミッタ回路の出力電力の抑圧特性を示す図である。
【
図5】比較例の高周波リミッタ回路の構成を示す図である。
【
図6】比較例の高周波リミッタ回路の高周波特性を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る高周波リミッタ回路におけるインダクタの接続による効果を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
【
図9】第2実施形態に係る高周波リミッタ回路の高周波特性を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
【
図11】第4実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
【
図12】第4実施形態に係る高周波リミッタ回路の高周波特性を示す図である。
【
図13】第4実施形態に係る高周波リミッタ回路の出力電力の抑圧特性を示す図である。
【
図14】変形例の高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
【
図15】他の変形例の高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、以下に示す実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、及び配置等を下記のものに特定するものではない。
【0010】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る高周波リミッタ回路について説明する。高周波リミッタ回路は、例えば、レーダー送受信システムなどの高周波送受信装置に用いられる。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る高周波リミッタ回路を含む高周波送受信装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、高周波送受信装置は、高周波リミッタ回路1、アンテナ2、フィルタ3、サーキュレータ4、低雑音増幅器(LNA)5、無線周波数集積回路(RFIC:Radio frequency Integrated Circuit)6、及びパワーアンプ(PA:Power Amplifier)7を備える。
【0012】
アンテナ2は、高周波信号を送信あるいは受信する。フィルタ3は、所定の周波数帯域の信号を通過させ、それ以外の不要な周波数帯域の信号をカットする。サーキュレータ4は、高周波信号の送信時あるいは受信時に、送信側回路あるいは受信側回路とフィルタ3との接続を切り換える。
【0013】
高周波リミッタ回路1の入力端子RFINは、入力段(あるいは、前段)のサーキュレータ4に接続され、高周波リミッタ回路1の出力端子RFOUTは出力段(あるいは、後段)の低雑音増幅器5に接続される。高周波リミッタ回路1は、高周波信号の送信時にアンテナ2からの反射電力を抑圧して、反射電力により低雑音増幅器5が破壊されるのを防ぐ。高周波リミッタ回路1は、また高周波信号の受信時にフィルタ3からの入力電力を抑圧して、入力電力により低雑音増幅器5が破壊されるのを防ぐ。
【0014】
低雑音増幅器5は、高周波リミッタ回路1を通過した信号を増幅し、増幅した信号をRFIC6に出力する。
【0015】
RFIC6は、低雑音増幅器5から受け取った信号を処理し、例えば画像あるいは音声などとして出力する。RFIC6は、所定の信号をパワーアンプ7に出力する。
【0016】
パワーアンプ7は、RFIC6から受け取った信号を増幅し、増幅した信号をサーキュレータ4及びフィルタ3を介してアンテナ2に出力する。
【0017】
1.1 高周波リミッタ回路の構成
次に、第1実施形態に係る高周波リミッタ回路1の構成について説明する。
図2は、第1実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
図2に示すように、高周波リミッタ回路1は、ダイオードユニット10、11及び12、インダクタ20、21及び31、入力端子RFIN、並びに出力端子RFOUTを備える。ダイオードユニット10、11、及び12の詳細については後述する。
【0018】
以下に、高周波リミッタ回路1における回路素子の接続関係を説明する。入力端子RFINと出力端子RFOUTとの間に、信号ライン(あるいは、伝送線路)が接続される。入力端子RFINと出力端子RFOUT間の信号ラインには、インダクタ20及び21が直列に接続される。すなわち、入力端子RFINにインダクタ21の第1端が接続され、インダクタ21の第2端にインダクタ20の第1端が接続される。さらに、インダクタ20の第2端に出力端子RFOUTが接続される。以降、出力端子RFOUTとインダクタ20との間のノードをN1と称し、インダクタ20とインダクタ21との間のノードをインダクタ20側からそれぞれN2、N3と称する。さらに、インダクタ21と入力端子RFINとの間のノードをN4と称する。
【0019】
入力端子RFINとインダクタ21との間のノードN4には、ダイオードユニット12が接続される。言い換えると、入力端子RFINの出力段(あるいは、後段)には、接地されたダイオードユニット12が接続される。すなわち、ダイオードユニット12の第1端がノードN4に接続され、ダイオードユニット12の第2端が接地電位端(あるいは、基準電圧端)GNDに接続される。接地電位端GNDには、接地電位(あるいは、基準電圧)、例えば0Vが供給される。
【0020】
インダクタ21とインダクタ20との間のノードN3には、インダクタ31が接続される。言い換えると、インダクタ21の出力段には、接地されたシャントインダクタ31が接続される。すなわち、インダクタ31の第1端がノードN3に接続され、インダクタ31の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0021】
ノードN3とインダクタ20との間のノードN2には、ダイオードユニット11が接続される。言い換えると、インダクタ21のノードN3を介した出力段には、接地されたダイオードユニット11が接続される。すなわち、ダイオードユニット11の第1端がノードN2に接続され、ダイオードユニット11の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0022】
インダクタ20と出力端子RFOUTとの間のノードN1には、ダイオードユニット10が接続される。言い換えると、インダクタ20の出力段には、接地されたダイオードユニット10が接続される。すなわち、ダイオードユニット10の第1端がノードN1に接続され、ダイオードユニット10の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0023】
以下に、高周波リミッタ回路1における回路素子について詳述する。
【0024】
ダイオードユニット10は、ダイオードa1及びb1を含む。ダイオードa1のアノードは、ダイオードb1のカソードに接続される。ダイオードa1のカソードは、ダイオードb1のアノードに接続される。このように、異なる2つのダイオードa1及びb1のアノードとカソードとが互いに接続されることを、アンチパラレル接続と称し、アンチパラレル接続された複数のダイオードa1及びb1を、アンチパラレルダイオードと称する。また、ダイオードユニット10の順方向電圧はVfで表される。このため、ダイオードユニット10のしきい値電圧は、電圧Vfである。
【0025】
ダイオードユニット(あるいは、アンチパラレルダイオード)10におけるダイオードa1のアノードとダイオードb1のカソードは、ノードN1に接続される。すなわち、ダイオードユニット10の第1端は、ノードN1に接続される。さらに、ダイオードa1のカソードとダイオードb1のアノードは、接地電位端GNDに接続される。すなわち、ダイオードユニット10の第2端は、接地電位端GNDに接続される。
【0026】
ダイオードユニット11は、ダイオードユニット10と同様に、ダイオードa1及びb1を含む。ダイオードa1とダイオードb1は、アンチパラレル接続されている。すなわち、ダイオードa1のアノードは、ダイオードb1のカソードに接続される。ダイオードa1のカソードは、ダイオードb1のアノードに接続される。また、ダイオードユニット11の順方向電圧は、ダイオードユニット10と同様に、Vfで表される。このため、ダイオードユニット11のしきい値電圧は、電圧Vfである。
【0027】
ダイオードユニット(あるいは、アンチパラレルダイオード)11におけるダイオードa1のアノードとダイオードb1のカソードは、ノードN2に接続される。すなわち、ダイオードユニット11の第1端は、ノードN2に接続される。さらに、ダイオードa1のカソードとダイオードb1のアノードは、接地電位端GNDに接続される。すなわち、ダイオードユニット11の第2端は、接地電位端GNDに接続される。
【0028】
ダイオードユニット12は、複数のダイオードの組c1、c2、…、cM(Mは1以上の整数)を含む。ダイオードの組c1~cMの各々は、ダイオードa1、a2、…、aN、及びダイオードb1、b2、…、bN(Nは1より大きい整数)を含む。組cMのダイオードa1~aNは、各々が順方向に直列に接続される。組cMのダイオードb1~bNは、各々が逆方向に直列に接続される。ここで、Nは1より大きい整数であり、MはN以下の整数である。すなわち、N > 1かつM ≦ Nが成り立つ。
【0029】
直列接続されたダイオードa1~aNにおけるダイオードa1のアノードは、直列接続されたダイオードb1~bNにおけるダイオードb1のカソードに接続される。ダイオードa1~aNにおけるダイオードaNのカソードは、ダイオードb1~bNにおけるダイオードbNのアノードに接続される。このように、異なる2つの直列接続されたダイオード列のアノードとカソードとが互いに接続されることを、アンチパラレル接続と称し、アンチパラレル接続された複数のダイオード列を、アンチパラレルダイオードと称する。以降、ダイオードの組c1、c2、…、cMを、アンチパラレルダイオードc1、c2、…、cMとも称し、アンチパラレルダイオードc1~cMを含むダイオードユニット12を、アンチパラレルダイオード12とも称する。
【0030】
アンチパラレルダイオードc1~cMにおけるダイオードa1のアノードとダイオードb1のカソードは、ノードN4に接続される。すなわち、ダイオードユニット12の第1端は、ノードN4に接続される。さらに、アンチパラレルダイオードc1~cMにおけるダイオードaNのカソードとダイオードbNのアノードは、接地電位端GNDに接続される。すなわち、ダイオードユニット12の第2端は、接地電位端GNDに接続される。また、ダイオードa1~aNの各々、あるいはダイオードb1~bNの各々の順方向電圧がVfであるため、ダイオードユニット12は、“N×Vf”のしきい値電圧を有する。
【0031】
ダイオードユニット(あるいは、アンチパラレルダイオード)12は、つまり以下のような構成を持つ。
図2に示すように、ノードN4(あるいは、信号ライン)と接地電位端GNDとの間にダイオードが順方向にN段接続されて、ダイオードa1~aNが構成される。ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが逆方向にN段接続されて、ダイオードb1~bNが構成される。ダイオードa1~aNとダイオードb1~bNとがアンチパラレル接続されて、アンチパラレルダイオード(ダイオードの組c1~cMの各々に相当)が構成される。そして、これらアンチパラレルダイオードが、ノードN4と接地電位端GNDとの間にM個並列に接続される。これにより、アンチパラレルダイオードc1~cMを含むダイオードユニット12が構成される。
【0032】
また、インダクタ20及び21の各々は、例えば、誘導性のマイクロストリップラインであってもよい。同様に、インダクタ31は、例えば、誘導性のマイクロストリップラインであってもよい。
【0033】
1.2 高周波リミッタ回路の動作
次に、第1実施形態に係る高周波リミッタ回路1の動作について説明する。
【0034】
入力端子RFINに高周波信号が入力され、高周波信号における入力電力Pinが増加するにつれて、しきい値電圧がVfであるダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)10及び11がオンする。すると、入力端子RFINから信号ラインに流れ込む入力電力Pinの電流がダイオードユニット10及び11を介して接地電位端GNDに流れる。これにより、ダイオードユニット10及び11によるリミット動作が開始される。
【0035】
さらに入力電力Pinが上昇し、入力電力Pinの電圧が“N×Vf”に達すると、ダイオードユニット12がオンする。すると、入力端子RFINから信号ラインに流れ込む入力電力Pinの電流が、さらにダイオードユニット12を介して接地電位端GNDに流れる。これにより、ダイオードユニット12によるリミット動作が開始されて、リミット動作がより強化される。
【0036】
このようなダイオードユニット10、11、及び12によるリミット動作によって、入力電力Pinの電圧振幅は、ダイオードユニット12の接続点(ノードN4)よりダイオードユニット11の接続点(ノードN2)及びダイオードユニット10の接続点(ノードN1)において小さくなる。ダイオードユニット11の接続点及びダイオードユニット10の接続点における電圧振幅はほぼ同じである。すなわち、入力電力Pinの電圧振幅は、入力端子RFIN、ノードN4、N2、N1、及び出力端子RFOUTの順で徐々に小さくなる。
【0037】
以下に、第1実施形態に係る高周波リミッタ回路1の高周波特性及び抑圧特性について説明する。
【0038】
図3は、第1実施形態に係る高周波リミッタ回路の高周波特性を示す図である。
図3に示す特性は、高周波リミッタ回路1におけるSパラメータ(Scattering parameters)である。Sパラメータは、高周波リミッタ回路1における通過特性(あるいは、伝送特性)及び反射特性を表すパラメータである。入力端子RFINをポート1とし、出力端子RFOUTをポート2とする。これらのポート番号を用いて、SパラメータをS11、S21と表す。S11は、入力側の反射特性、すなわち、入力端子RFIN(ポート1)に入力された高周波信号の反射特性を表す。S21は、入力側から出力側への通過特性、すなわち、入力された高周波信号の入力端子RFIN(ポート1)から出力端子RFOUT(ポート2)への通過特性を表す。
【0039】
図3に示すように、入力反射特性S11は、周波数6~13.8GHzの広帯域において、例えば-20dB以下になっている。よって、高周波リミッタ回路1は良好な反射特性を有している。なお、-20dB以下であることは指標の一例であり、例えば-10dB以下を指標としてもよい。
【0040】
図3に示した周波数において、支配的な共振周波数fc2は、インダクタ21のインダクタンス値L21と、ダイオードユニット12のシャント容量値C12とで構成され、以下の式(1)で表される。
【0041】
【0042】
式(1)で表される共振周波数fc2は、周波数12GHzより少し高い周波数にある。
【0043】
インダクタ31のインダクタンス値L31は、ダイオードユニット11の容量値C11と共振し、その共振周波数fc1は以下の式(2)で表される。
【0044】
【0045】
式(2)で表される共振周波数fc1は、周波数7GHzあたりにある。
【0046】
第1実施形態では、共振周波数fc2に対して共振周波数fc1が追加される。これにより、
図3に示すように、広帯域において良好な反射特性が実現できる。また、通過特性S21は、
図3に示すように、良好な通過特性を維持している。例えば、周波数7GHzにおける通過特性S21は-0.412dBであり、周波数12GHzにおける通過特性S21は-0.763dBである。
【0047】
図4は、第1実施形態に係る高周波リミッタ回路の出力電力の抑圧特性を示す図である。入力電力Pinに対して、
図4に示すように、出力電力Poutが抑圧される。例えば、入力電力Pinが40dBmのとき、出力電力Poutが14.524dBmとなり、十分な抑圧レベルを維持している。
【0048】
1.3 第1実施形態の効果
第1実施形態によれば、大電力入力かつ広帯域に対応した高周波リミッタ回路を備えた高周波送受信装置を提供できる。
【0049】
以下に、第1実施形態の効果について説明する。先に比較例の特性について述べ、続いて第1実施形態の効果について述べる。
【0050】
図5に、比較例の高周波リミッタ回路の構成を示す。比較例は、ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)10、11、及び12、並びにインダクタ20及び21を含む。
図6に、比較例の高周波リミッタ回路の高周波特性を示す。
図6に示すように、比較例では、入力反射特性S11が-20dB以下である帯域は、約10~12.5GHzであり、狭帯域である。これに対して、第1実施形態では、
図4に示したように、入力反射特性S11は、周波数6~13.8GHzの広帯域において、例えば-20dB以下になっている。よって、第1実施形態の高周波リミッタ回路1は、広帯域において良好な反射特性を実現できる。
【0051】
また、第1実施形態の構成では、入力端子RFINと出力端子RFOUT間に直列にインダクタ21が接続され、インダクタ21の出力段にシャントインダクタ31が接続される。比較例ではローパスフィルタ型の回路構成を持つのに対して、第1実施形態ではシャントインダクタ31を挿入することにより、ハイパスフィルタの特性を加えることができる。
【0052】
図7に、高周波リミッタ回路におけるインダクタ21及び31の接続による効果を示す。インダクタ31を設けず、インダクタ21を設けた場合の入力反射特性S11をAで示し、インダクタ21を設けず、インダクタ31を設けた場合の入力反射特性S11をBで示す。さらに、インダクタ21及び31の両方を設けた場合の入力反射特性S11をCで示す。
図7からわかるように、インダクタ21のみを設けた場合の特性Aでは、周波数帯域が広帯域であるが高域で入力反射損が悪化する。インダクタ31のみを設けた場合の特性Bでは、周波数帯域が狭帯域となってしまう。これらに対して、インダクタ21及び31の両方を設けた場合の特性Cでは、特性Aと特性Bとを合せたような特性となり、広帯域で入力反射損が改善している。
【0053】
また、第1実施形態の構成では、出力段においてダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)10及び11を並列に接続し、リミット動作時におけるダイオードユニット10及び11のそれぞれの電流量i10及びi11が、i11>i10となるように適切に設定される。なお、例えば、出力電力Poutの必要な抑圧量に応じて、抑圧量を少なくできる場合、ダイオードユニット10及びインダクタ20を削除してもよい。
【0054】
以上により、第1実施形態の高周波リミッタ回路によれば、高周波信号の大電力入力に対応でき、さらに目標とする使用周波数帯域7~12GHzに対し、比較例では約10~12.5GHzであったが、第1実施形態では約6~13.8GHzであり、広帯域に対応できる。
【0055】
2.第2実施形態
以下に、第2実施形態に係る高周波リミッタ回路について説明する。第2実施形態では、第1実施形態よりもさらに大電力の入力に対応した高周波リミッタ回路の例を示す。レーダー送受信システムなどの高周波送受信装置への第2実施形態の適用例は、
図1に示した構成と同様であるため、記載を省略する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について主に説明する。説明しない構成及び動作は第1実施形態と同様である。
【0056】
2.1 高周波リミッタ回路の構成
次に、第2実施形態に係る高周波リミッタ回路1の構成について説明する。
図8は、第2実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
図8に示すように、高周波リミッタ回路1は、ダイオードユニット10、11、12、及び13、インダクタ20、21、22、及び31、入力端子RFIN、並びに出力端子RFOUTを備える。ダイオードユニット10、11、及び12については第1実施形態と同様である。ダイオードユニット13の詳細については後述する。
【0057】
以下に、高周波リミッタ回路1における回路素子の接続関係を説明する。入力端子RFINと出力端子RFOUTとの間の信号ラインには、インダクタ20、21、及び22が直列に接続される。すなわち、入力端子RFINにインダクタ22の第1端が接続され、インダクタ22の第2端にインダクタ21の第1端が接続される。インダクタ21の第2端にインダクタ20の第1端が接続され、インダクタ20の第2端に出力端子RFOUTが接続される。以降、インダクタ21とインダクタ22との間のノードをインダクタ21側からそれぞれN4、N5と称する。さらに、インダクタ22と入力端子RFINとの間のノードをN6と称する。
【0058】
入力端子RFINとインダクタ22との間のノードN6には、ダイオードユニット13が接続される。言い換えると、入力端子RFINの出力段には、接地されたダイオードユニット13が接続される。すなわち、ダイオードユニット13の第1端がノードN6に接続され、ダイオードユニット13の第2端が接地電位端GNDに接続される。接地電位端GNDには、接地電位、例えば0Vが供給される。
【0059】
インダクタ22とインダクタ21との間のノードN5には、インダクタ32が接続される。言い換えると、インダクタ22の出力段には、接地されたシャントインダクタ32が接続される。すなわち、インダクタ32の第1端がノードN5に接続され、インダクタ32の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0060】
ノードN5とインダクタ21との間のノードN4には、ダイオードユニット12が接続される。言い換えると、インダクタ22のノードN5を介した出力段には、接地されたダイオードユニット12が接続される。すなわち、ダイオードユニット12の第1端がノードN4に接続され、ダイオードユニット12の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0061】
インダクタ21とインダクタ20との間のノードN3には、インダクタ31が接続される。言い換えると、インダクタ21の出力段には、接地されたシャントインダクタ31が接続される。すなわち、インダクタ31の第1端がノードN3に接続され、インダクタ31の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0062】
ノードN3とインダクタ20との間のノードN2には、ダイオードユニット11が接続される。言い換えると、インダクタ21のノードN3を介した出力段には、接地されたダイオードユニット11が接続される。すなわち、ダイオードユニット11の第1端がノードN2に接続され、ダイオードユニット11の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0063】
インダクタ20と出力端子RFOUTとの間のノードN1には、ダイオードユニット10が接続される。言い換えると、インダクタ20の出力段には、接地されたダイオードユニット10が接続される。すなわち、ダイオードユニット10の第1端がノードN1に接続され、ダイオードユニット10の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0064】
以下に、高周波リミッタ回路1における回路素子について詳述する。
【0065】
ダイオードユニット10、11、及び12は、第1実施形態にて記載した構成と同様である。
【0066】
ダイオードユニット13は、複数のダイオードの組c1、c2、…、cK(Kは1以上の整数)を含む。ダイオードの組c1~cKの各々は、ダイオードa1、a2、…、aL、及びダイオードb1、b2、…、bL(Lは1より大きい整数)を含む。組cKのダイオードa1~aLは、各々が順方向に直列に接続される。組cKのダイオードb1~bLは、各々が逆方向に直列に接続される。ここで、Lは1より大きい整数であり、KはL以下の整数、LはN以上の整数である。すなわち、L > 1かつK ≦ LかつL ≧ Nが成り立つ。
【0067】
直列接続されたダイオードa1~aLとダイオードb1~bLは、アンチパラレル接続されている。すなわち、ダイオードa1~aLにおけるダイオードa1のアノードは、ダイオードb1~bLにおけるダイオードb1のカソードに接続される。ダイオードa1~aLにおけるダイオードaLのカソードは、ダイオードb1~bLにおけるダイオードbLのアノードに接続される。
【0068】
アンチパラレルダイオードc1~cKにおけるダイオードa1のアノードとダイオードb1のカソードは、ノードN6に接続される。すなわち、ダイオードユニット13の第1端は、ノードN6に接続される。さらに、アンチパラレルダイオードc1~cKにおけるダイオードaLのカソードとダイオードbLのアノードは、接地電位端GNDに接続される。すなわち、ダイオードユニット13の第2端は、接地電位端GNDに接続される。また、ダイオードa1~aLの各々、あるいはダイオードb1~bLの各々の順方向電圧がVfであるため、ダイオードユニット13は、“L×Vf”のしきい値電圧を有する。
【0069】
ダイオードユニット(あるいは、アンチパラレルダイオード)13は、つまり以下のような構成を持つ。
図8に示すように、ノードN6(あるいは、信号ライン)と接地電位端GNDとの間にダイオードが順方向にL段接続されて、ダイオードa1~aLが構成される。ノードN6と接地電位端GNDとの間にダイオードが逆方向にL段接続されて、ダイオードb1~bLが構成される。ダイオードa1~aLとダイオードb1~bLとがアンチパラレル接続されて、アンチパラレルダイオード(ダイオードの組c1~cKの各々に相当)が構成される。そして、これらアンチパラレルダイオードが、ノードN6と接地電位端GNDとの間にK個並列に接続される。これにより、アンチパラレルダイオードc1~cKを含むダイオードユニット13が構成される。
【0070】
また、インダクタ20~22、31、及び32の各々は、例えば、誘導性のマイクロストリップラインであってもよい。
【0071】
2.2 高周波リミッタ回路の動作
次に、第2実施形態に係る高周波リミッタ回路1の動作について説明する。
【0072】
第1実施形態と同様に、入力端子RFINに高周波信号が入力され、高周波信号における入力電力Pinが増加するにつれて、ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)10及び11がオンする。すると、入力端子RFINから信号ラインに流れ込む入力電力Pinの電流がダイオードユニット10及び11を介して接地電位端GNDに流れる。これにより、ダイオードユニット10及び11によるリミット動作が開始される。
【0073】
さらに入力電力Pinが上昇し、入力電力Pinの電圧が“N×Vf”に達すると、ダイオードユニット12がオンする。すると、入力端子RFINから信号ラインに流れ込む入力電力Pinの電流が、さらにダイオードユニット12を介して接地電位端GNDに流れる。これにより、ダイオードユニット12によるリミット動作が開始される。
【0074】
さらに入力電力Pinが上昇し、入力電力Pinの電圧が“L×Vf”に達すると、ダイオードユニット13がオンする。すると、入力端子RFINから信号ラインに流れ込む入力電力Pinの電流が、さらにダイオードユニット13を介して接地電位端GNDに流れる。これにより、ダイオードユニット12によるリミット動作が開始されて、リミット動作がより強化される。
【0075】
このようなダイオードユニット10、11、12、及び13によるリミット動作によって、入力電力Pinの電圧振幅は、ダイオードユニット13の接続点(ノードN6)よりダイオードユニット12の接続点(ノードN4)において小さくなる。さらに、ダイオードユニット12の接続点よりダイオードユニット11の接続点(ノードN2)及びダイオードユニット10の接続点(ノードN1)において小さくなる。ダイオードユニット11の接続点及びダイオードユニット10の接続点における電圧振幅はほぼ同じである。すなわち、入力電力Pinの電圧振幅は、入力端子RFIN、ノードN6、N4、N2、N1、及び出力端子RFOUTの順で徐々に小さくなる。
【0076】
以下に、第2実施形態に係る高周波リミッタ回路1の高周波特性について説明する。
【0077】
図9は、第2実施形態に係る高周波リミッタ回路の高周波特性を示す図である。
図9に示すように、入力反射特性S11は、周波数6.7~13.5GHzの広帯域において、例えば-20dB以下になっている。よって、高周波リミッタ回路1は良好な反射特性を有している。また、通過特性S21は、
図9に示すように、良好な通過特性を維持している。例えば、周波数7GHzにおける通過特性S21は-0.564dBであり、周波数12GHzにおける通過特性S21は-0.941dBである。
【0078】
2.3 第2実施形態の効果
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、大電力入力かつ広帯域に対応した高周波リミッタ回路を備えた高周波送受信装置を提供できる。
【0079】
第2実施形態の構成では、ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)13を備えることにより、第1実施形態よりも大電力の入力に対応することができる。
【0080】
また、第2実施形態の構成では、出力段においてダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)10及び11を並列に接続したが、出力電力Poutの必要な抑圧量に応じて、抑圧量を少なくできる場合、ダイオードユニット10及びインダクタ20を削除してもよい。
【0081】
以上説明したように、第2実施形態の高周波リミッタ回路によれば、高周波信号の大電力入力に対応でき、さらに目標とする使用周波数帯域7~12GHzに対し、周波数帯域6.7~13.5GHzで使用可能であり、広帯域に対応できる。
【0082】
3.第3実施形態
以下に、第3実施形態に係る高周波リミッタ回路について説明する。第3実施形態では、第2実施形態よりもさらに大電力入力への対応が可能で、かつさらなる広帯域動作が可能な高周波リミッタ回路の例を示す。レーダー送受信システムなどの高周波送受信装置への第3実施形態の適用例は、
図1に示した構成と同様であるため、記載を省略する。第3実施形態では、第1実施形態と異なる点について主に説明する。説明しない構成及び動作は第1実施形態と同様である。
【0083】
3.1 高周波リミッタ回路の構成
次に、第3実施形態に係る高周波リミッタ回路1の構成について説明する。
図10は、第3実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
図10に示すように、高周波リミッタ回路1は、ダイオードユニット10及び11、インダクタ20、リミットセルLC_1、LC_2、…、LC_J-1、LC_J(Jは1以上の整数)、入力端子RFIN、並びに出力端子RFOUTを備える。ダイオードユニット10及び11、インダクタ20については第1実施形態と同様である。リミットセルLC_1~LC_Jの詳細については後述する。
【0084】
以下に、高周波リミッタ回路1における回路素子の接続関係を説明する。入力端子RFINと出力端子RFOUTとの間の信号ラインには、インダクタ20、及びリミットセルLC_1~LC_Jが直列に接続される。すなわち、入力端子RFINにリミットセルLC_J、LC_J-1、…、LC_2、LC_1が順に接続される。リミットセルLC_1にインダクタ20の第1端が接続され、インダクタ20の第2端に出力端子RFOUTが接続される。
【0085】
以下に、高周波リミッタ回路1における回路素子について詳述する。
【0086】
ダイオードユニット10及び11は、第1実施形態にて記載した構成と同様である。
【0087】
リミットセルLC_1は、ダイオードユニット12_1、並びにインダクタ21及び31を備える。ダイオードユニット12_1が接続されたノードN4とインダクタ20との間に、インダクタ21が直列に接続される。さらに、インダクタ21の出力段であるノードN3にインダクタ31が接続される。言い換えると、インダクタ21の出力段には、接地されたシャントインダクタ31が接続される。すなわち、インダクタ31の第1端がノードN3に接続され、インダクタ31の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0088】
ダイオードユニット12_1は、第1実施形態にて記載したダイオードユニット12と同様である。すなわち、ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが順方向にN段接続されて、ダイオードa1~aNが構成される。ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが逆方向にN段接続されて、ダイオードb1~bNが構成される。ダイオードa1~aNとダイオードb1~bNとがアンチパラレル接続されて、アンチパラレルダイオード(ダイオードの組c1~cMの各々に相当)が構成される。そして、これらアンチパラレルダイオードが、ノードN4と接地電位端GNDとの間にM個並列に接続される。これにより、アンチパラレルダイオードc1~cMを含むダイオードユニット12_1が構成される。ここで、Nは1より大きい整数であり、MはN以下の整数である。
【0089】
リミットセルLC_2は、リミットセルLC_1の入力段に接続される。リミットセルLC_2は、ダイオードユニット12_2、並びにインダクタ21及び31を備える。ダイオードユニット12_2が接続されたノードN4とリミットセルLC_1との間に、インダクタ21が直列に接続される。さらに、インダクタ21の出力段であるノードN3にインダクタ31が接続される。すなわち、インダクタ31の第1端がノードN3に接続され、インダクタ31の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0090】
ダイオードユニット12_2は、以下の構成を有する。ダイオードユニット12_2のアンチパラレルダイオードにおけるダイオードの接続段数は、ダイオードユニット12_1におけるダイオードの接続段数(即ち、N段)より多いか、または同数である。すなわち、ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが順方向にN段以上接続される。また、ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが逆方向にN段以上接続される。順方向に接続されたダイオードと、逆方向に接続されたダイオードとがアンチパラレル接続されて、複数のアンチパラレルダイオードが構成される。そして、これらアンチパラレルダイオードが、ノードN4と接地電位端GNDとの間に、M個以上並列に接続される。これにより、ダイオードユニット12_2が構成される。
【0091】
以下に、リミットセルLC_J及びLC_J-1を用いてリミットセルの構成を説明する。入力端子RFINの出力段にリミットセルLC_Jが接続される。リミットセルLC_Jの出力段にリミットセルLC_J-1が接続され、さらに、リミットセルLC_J-1の出力段にリミットセルLC_J-2(不図示)が接続される。
【0092】
リミットセルLC_J-1は、ダイオードユニット12_J-1、並びにインダクタ21及び31を備える。ダイオードユニット12_J-1が接続されたノードN4とリミットセルLC_J-2との間に、インダクタ21が直列に接続される。さらに、インダクタ21の出力段であるノードN3にインダクタ31が接続される。すなわち、インダクタ31の第1端がノードN3に接続され、インダクタ31の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0093】
ダイオードユニット12_J-1は、以下の構成を有する。ダイオードユニット12_J-1のアンチパラレルダイオードにおけるダイオードの接続段数は、ダイオードユニット12_J-2におけるダイオードの接続段数(例えば、N段)より多いか、または同数である。すなわち、ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが順方向に、例えばN段以上接続される。また、ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが逆方向に、例えばN段以上接続される。順方向に接続されたダイオードと、逆方向に接続されたダイオードとがアンチパラレル接続されて、複数のアンチパラレルダイオードが構成される。そして、これらアンチパラレルダイオードが、ノードN4と接地電位端GNDとの間に、M個以上並列に接続される。これにより、ダイオードユニット12_J-1が構成される。ここで、Nは1より大きい整数であり、MはN以下の整数である。
【0094】
リミットセルLC_Jは、ダイオードユニット12_J、並びにインダクタ21及び31を備える。ダイオードユニット12_Jが接続されたノードN4とリミットセルLC_J-1との間に、インダクタ21が直列に接続される。さらに、インダクタ21の出力段であるノードN3にインダクタ31が接続される。すなわち、インダクタ31の第1端がノードN3に接続され、インダクタ31の第2端が接地電位端GNDに接続される。
【0095】
ダイオードユニット12_Jは、以下の構成を有する。ダイオードユニット12_Jのアンチパラレルダイオードにおけるダイオードの接続段数は、ダイオードユニット12_J-1におけるダイオードの接続段数(例えば、N段)より多いか、または同数である。すなわち、ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが順方向に、例えばN段以上接続される。また、ノードN4と接地電位端GNDとの間にダイオードが逆方向に、例えばN段以上接続される。順方向に接続されたダイオードと、逆方向に接続されたダイオードとがアンチパラレル接続されて、複数のアンチパラレルダイオードが構成される。そして、これらアンチパラレルダイオードが、ノードN4と接地電位端GNDとの間に、M個以上並列に接続される。これにより、ダイオードユニット12_Jが構成される。
【0096】
なお、リミットセルLC_Jが含むインダクタ31は、必ずしも全てのリミットセルに設けなくてもよい。少なくとも一部のリミットセル、あるいはリミットセルLC_1~LC_Jのインダクタ21の出力段と接地電位端GNDとの間にインダクタ31が接続される。
【0097】
3.2 高周波リミッタ回路の動作
次に、第3実施形態に係る高周波リミッタ回路1の動作について説明する。第3実施形態の高周波リミッタ回路は、変数Jが1のとき、第1実施形態に対応し、変数Jが2のとき、第2実施形態に対応する。さらに、第3実施形態は、変数Jが3以上のとき、第2実施形態の高周波リミッタ回路に対してリミットセルLC_Jが追加された構成を有する。第3実施形態では、追加されたリミットセルLC_Jによってもリミット動作(あるいは、抑圧動作)が行われ、リミット動作がより強化される。
【0098】
3.3 第3実施形態の効果
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、大電力入力かつ広帯域に対応した高周波リミッタ回路を備えた高周波送受信装置を提供できる。さらに、第3実施形態の構成では、第2実施形態よりも大電力の入力に対応可能で、かつさらなる広帯域動作が可能な高周波リミッタ回路を実現できる。
【0099】
4.第4実施形態
以下に、第4実施形態に係る高周波リミッタ回路について説明する。第4実施形態では、第2実施形態の高周波リミット回路において、入力端子RFINの後段にインピーダンス変換回路を挿入した例を示す。レーダー送受信システムなどの高周波送受信装置への第2実施形態の適用例は、
図1に示した構成と同様であるため、記載を省略する。
【0100】
4.1 高周波リミッタ回路の構成
次に、第4実施形態に係る高周波リミッタ回路1の構成について説明する。
図11は、第4実施形態に係る高周波リミッタ回路の構成を示す回路図である。
図11に示すように、高周波リミッタ回路1は、ダイオードユニット10、11、12、及び13、インダクタ20、21、22、及び31、インピーダンス変換回路40、入力端子RFIN、並びに出力端子RFOUTを備える。
【0101】
第4実施形態の高周波リミッタ回路1では、入力端子RFINの出力段にインピーダンス変換回路40が設けられる。すなわち、入力端子RFINと、ダイオードユニット13が接続されたノードN6との間にインピーダンス変換回路40が接続される。インピーダンス変換回路40は、例えば、抵抗あるいは抵抗成分を含むマイクロストリップラインである。第4実施形態のその他の回路構成は第1実施形態と同様である。
【0102】
4.2 高周波リミッタ回路の動作
次に、第4実施形態に係る高周波リミッタ回路1の動作について説明する。
【0103】
第4実施形態では、入力端子RFINの出力段にインピーダンス変換回路40を接続することにより、入力端子RFINの反射特性を調整している。高周波信号の入力電力Pinが増加していくと、ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)がオンすることにより、リミット動作時におけるインピーダンスは低下していく。その際、インピーダンスが低下すると定在波比(VSWR:voltage standing wave ratio)が大きくなり、反射特性が悪化してしまう。
【0104】
そこで、入力端子RFINの出力段にインピーダンス変換回路40を接続することにより、インピーダンスが必要以上に低くなるのを抑える。これにより、定在波比が大きくなるのを抑制し、反射特性の悪化を低減している。第4実施形態のその他の動作は第1実施形態と同様である。
【0105】
以下に、第4実施形態に係る高周波リミッタ回路1の高周波特性及び抑圧特性について説明する。
【0106】
図12は、第4実施形態に係る高周波リミッタ回路の高周波特性を示す図である。
図12に示すように、入力反射特性S11は、周波数6.8~13.6GHzの広帯域において、例えば-20dB以下になっている。よって、高周波リミッタ回路1は、広帯域において良好な反射特性を有している。また、通過特性S21は、
図12に示すように、良好な通過特性を維持している。例えば、周波数7GHzにおける通過特性S21は-0.925dBであり、周波数12GHzにおける通過特性S21は-1.498dBである。
【0107】
図13は、第4実施形態に係る高周波リミッタ回路の出力電力の抑圧特性を示す図である。入力電力Pinに対して、
図13に示すように、出力電力Poutが抑圧される。例えば、入力電力Pinが40dBmのとき、出力電力Poutが10.775dBmとなる。第4実施形態では、
図4に示した特性と比べて、より大きな抑圧レベルを維持している。
【0108】
4.3 第4実施形態の効果
第4実施形態によれば、第2実施形態と同様に、大電力入力かつ広帯域に対応した高周波リミッタ回路を備えた高周波送受信装置を提供できる。
【0109】
さらに、第4実施形態の構成では、前述したように、インピーダンス変換回路40を接続することにより、入力電力Pinの増加に伴って入力端子RFINにおける入力インピーダンスが必要以上に低くなるのを抑える。これにより、広帯域において良好な反射特性を維持でき、入力電力Pinの増加時に生じる大電力入力の反射損も抑えることができる。
【0110】
5.その他変形例等
第4実施形態では、
図8に示した高周波リミッタ回路に対して入力端子RFINの出力段にインピーダンス変換回路40を接続した例を示したが、
図2及び
図10に示した高周波リミッタ回路に対しても、同様に入力端子RFINの出力段にインピーダンス変換回路40を接続してもよい。
図14及び
図15に、
図2及び
図10の高周波リミッタ回路にインピーダンス変換回路40を接続した例をそれぞれ示す。
【0111】
図14及び
図15に示す高周波リミッタ回路においても、インピーダンス変換回路40を接続することにより、入力端子RFINにおける入力インピーダンスが必要以上に低くなるのを抑えることができる。これにより、広帯域において良好な反射特性を維持でき、入力電力Pinの増加時に生じる大電力入力の反射損も抑えることができる。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0113】
1…高周波リミッタ回路、2…アンテナ、3…フィルタ、4…サーキュレータ、5…低雑音増幅器、7…パワーアンプ、10…ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)、11…ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)、12…ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)、13…ダイオードユニット(アンチパラレルダイオード)、20~22…インダクタ、31…インダクタ、32…インダクタ、40…インピーダンス変換回路、N1~N6…ノード、S11…入力反射特性、S21…通過特性、a1~aL…ダイオード、a1~aN…ダイオード、b1~bL…ダイオード、b1~bN…ダイオード。