(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171700
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】制御システムおよび電力調整システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241205BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088853
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱分 智則
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066HB02
5G066HB04
5G066HB06
5G066HB08
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066JB10
(57)【要約】
【課題】蓄電装置に必要な設備容量の低減とリソースの動作効率の維持とを両立する。
【解決手段】制御システム30は、電力系統との間で電力を授受する蓄電装置と、電力系統との間で電力を授受する水素製造装置とを制御するシステムであって、電力要求値Rの時間変動のうち変化率または周波数が制限値Lを上回る変動成分を抑制することで水素製造装置に対する電力指令値Yを生成する制限部42と、蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて制限値Lを制御する制御部44とを具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との間で電力を授受する蓄電装置と、前記電力系統との間で電力を授受する第1リソースとを制御するシステムであって、
電力要求値の時間変動のうち変化率または周波数が制限値を上回る変動成分を抑制することで前記第1リソースに対する電力指令値を生成する制限部と、
前記蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて前記制限値を制御する制御部と
を具備する制御システム。
【請求項2】
前記制御情報は、前記蓄電装置の電力量を含み、
前記制御部は、前記蓄電装置の電力量と当該蓄電装置の電力量の上限値との差分、および、前記蓄電装置の電力量との当該蓄電装置の電力量の下限値との差分のうち小さい方に対して、前記制限値を単調減少させる
請求項1の制御システム。
【請求項3】
前記制御情報は、前記蓄電装置の充電電力または放電電力を含み、
前記制御部は、前記蓄電装置の充電電力と前記蓄電装置が充電可能な最大電力との差分、または、前記蓄電装置の放電電力と前記蓄電装置が放電可能な最大電力との差分に対して、前記制限値を単調減少させる
請求項1の制御システム。
【請求項4】
前記制御情報は、調整力の応答性に関する応答指標を含み、
前記制御部は、前記応答指標が示す応答性に対して前記制限値を単調増加させる
請求項1の制御システム。
【請求項5】
前記制御情報は、前記電力系統との間で電力を授受する発電設備の発電電力の変動に関する第1変動指標を含み、
前記制御部は、前記第1変動指標が示す変動に対して前記制限値を単調増加させる
請求項1の制御システム。
【請求項6】
前記制御情報は、前記電力系統との間で電力を授受する第2リソースの授受電力の変動に関する第2変動指標を含み、
前記制御部は、前記第2変動指標が示す変動に対して前記制限値を単調増加させる
請求項1の制御システム。
【請求項7】
前記蓄電装置および前記第1リソースが前記電力系統に接続される連系点における電力指令値の時間変動のうち周波数が所定値を下回る変動成分を抑制する抑制部と、
前記抑制部による処理後の成分を前記第1リソースに対する前記電力要求値に加算する加算部と
をさらに具備する請求項1の制御システム。
【請求項8】
電力系統との間で電力を授受する蓄電装置と、
前記電力系統との間で電力を授受する第1リソースと、
前記蓄電装置および前記第1リソースを制御する制御システムとを具備し、
前記制御システムは、
電力要求値の時間変動のうち変化率または周波数が制限値を上回る変動成分を抑制することで前記第1リソースに対する電力指令値を生成する制限部と、
前記蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて前記制限値を制御する制御部とを含む
電力調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力系統との間で電力を授受する設備を制御する技術に関する
【背景技術】
【0002】
例えば蓄電装置または水素製造装置等のリソースを制御するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、連系点電力を目標値に追従させながら計画に沿って水素を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば水素製造装置等のリソースは、電力指令値の急峻な変動に対して迅速に応答できず、結果的に動作効率が低下するという課題がある。以上の課題を解決するために、電力指令値の時間変動のうち変化率または周波数が所定の制限値を上回る変動成分を、応答性が高い蓄電装置に負担させることが想定される。しかし、制限値を適切な数値に設定することは実際には困難である。例えば制限値が小さい場合には蓄電装置による負担が過大となり、連系点電力を電力指令値に維持するために必要な蓄電装置の設備容量が増大する。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、蓄電装置に必要な設備容量の低減とリソースの動作効率の維持との両立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る制御システムは、電力系統との間で電力を授受する蓄電装置と、前記電力系統との間で電力を授受する第1リソースとを制御するシステムであって、電力要求値の時間変動のうち変化率または周波数が制限値を上回る変動成分を抑制することで前記第1リソースに対する電力指令値を生成する制限部と、前記蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて前記制限値を制御する制御部とを具備する。
【0006】
また、本開示のひとつの態様に係る電力調整システムは、電力系統との間で電力を授受する蓄電装置と、前記電力系統との間で電力を授受する第1リソースとを、前記蓄電装置および前記第1リソースを制御する制御システムとを具備し、前記制御システムは、電力要求値の時間変動のうち変化率または周波数が制限値を上回る変動成分を抑制することで前記第1リソースに対する電力指令値を生成する制限部と、前記蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて前記制限値を制御する制御部とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】電力調整システムの構成を例示するブロック図である。
【
図2】制御システムの構成を例示するブロック図である。
【
図3】制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
【
図5】電力量と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図7】充放電電力と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図8】応答指標と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図9】第4実施形態における電力調整システムのブロック図である。
【
図10】第4実施形態における制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
【
図11】第4実施形態における制御処理のフローチャートである。
【
図12】第5実施形態における電力調整システムのブロック図である。
【
図13】第5実施形態における制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
【
図14】第6実施形態における制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
【
図15】制御情報と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図16】制御情報と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図17】制御情報と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図18】制御情報と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図19】制御情報と逼迫度および制限値との関係を例示するグラフである。
【
図20】変形例における制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0009】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における電力調整システム100のブロック図である。第1実施形態の電力調整システム100は、電力系統10との間で電力(交流電力)を授受するシステムである。電力系統10は、例えば、火力発電所または原子力発電所等の発電設備(図示略)により生成された電力を、事業設備または一般家庭等の需要家に供給するための配電系統である。
【0010】
図1に例示される通り、電力調整システム100は、蓄電装置21と水素製造装置22と制御システム30とを具備する。制御システム30は、例えば専用線等の通信網(図示略)を介して蓄電装置21および水素製造装置22の各々と相互に通信可能である。
【0011】
蓄電装置21および水素製造装置22は、電力系統10との間で電力を授受するリソースであり、連系点11において電力系統10に接続される。「リソース」は、電力系統10に対する電力の供給と、電力系統10から供給される電力の消費との一方または双方を実行する電力設備である。
【0012】
蓄電装置21は、連系点11に対する電力の供給(放電)と連系点11からの電力の充電とを実行可能である。蓄電装置21は、蓄電池211と制御機器212とを具備する。蓄電池211は、充電および充電が可能な系統用蓄電池である。制御機器212は、蓄電池211の放電および充電を制御するPCS(Power Conditioning System)である。具体的には、制御機器212は、制御システム30から供給される電力指令値Xに応じて蓄電池211の充放電を制御する。
【0013】
水素製造装置22は、連系点11からの電力の消費により水素を製造する。水素製造装置22は、制御システム30から供給される電力指令値Yに応じて動作する。具体的には、水素製造装置22は、電力指令値Yに応じた電力を連系点11との間で授受する。
【0014】
水素製造装置22は、電力指令値Yの時間変動が急峻であるほど動作効率が低下する特性のリソースである。他方、蓄電装置21は、電力指令値Xの急峻な時間変動にも迅速に応答可能な特性のリソースである。なお、水素製造装置22は「第1リソース」の一例である。
【0015】
制御システム30は、蓄電装置21および水素製造装置22を制御するコンピュータシステムである。具体的には、制御システム30は、電力指令値Xを蓄電装置21に送信し、電力指令値Yを水素製造装置22に送信する。電力指令値Xおよび電力指令値Yは、電力値(kW)または電力量(kWh)の数値であり、所定の周期で制御システム30から送信される。制御システム30による制御のもとで蓄電装置21および水素製造装置22が動作する結果、電力系統10のうち連系点11における電力(以下「連系点電力」という)は変化する。概略的には、制御システム30は、連系点電力が電力指令値Zに維持されるように蓄電装置21および水素製造装置22を制御する。
【0016】
図2は、制御システム30の構成を例示するブロック図である。
図2に例示される通り、制御システム30は、制御装置31と記憶装置32と通信装置33とを具備する。なお、制御システム30は、単体の装置により実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。また、制御システム30の機能の一部または全部は、蓄電装置21または水素製造装置22に搭載されてもよい。
【0017】
制御装置31は、制御システム30の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置31が構成される。
【0018】
記憶装置32は、制御装置31が実行するプログラムと制御装置31が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置32は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置32が構成されてもよい。制御システム30に対して着脱される可搬型の記録媒体が、記憶装置32として利用されてもよい。
【0019】
第1実施形態の記憶装置32は、連系点電力に関する電力指令値Zの時系列を記憶する。具体的には、時間軸上の複数の時間帯の各々について電力指令値Zが記憶される。電力指令値Zは、例えば、火力発電所または原子力発電所等の発電設備について事前に策定された発電計画、および、電力需給を平衡させるためのデマンドレスポンス等に応じて設定される。外部装置により事前に生成された電力指令値Zが制御システム30に提供され、当該電力指令値Zが記憶装置32に記憶される。
【0020】
通信装置33は、外部装置との間で有線または無線により通信する。具体的には、通信装置33は、蓄電装置21および水素製造装置22の各々と通信する。なお、制御システム30とは別体の通信装置33が、制御システム30に有線または無線により接続されてもよい。
【0021】
通信装置33は、電力指令値Xを蓄電装置21に送信し、電力指令値Yを水素製造装置22に送信する。また、蓄電装置21は、当該蓄電装置21(蓄電池211)の電力量C1を制御システム30に送信する。電力量C1(kWh)は、例えば蓄電装置21の充電状態を表すSOC(State Of Charge)である。電力量C1は、蓄電装置21の逼迫状況に相関する制御情報Cの一例である。
【0022】
図3は、制御システム30の機能的な構成を例示するブロック図である。制御装置31は、記憶装置32に記憶されたプログラムを実行することで、蓄電装置21および水素製造装置22を制御するための複数の機能(生成部41,制限部42,演算部43,制御部44)を実現する。
【0023】
生成部41は、水素製造装置22に分配すべき電力の要求値(以下「電力要求値R」という)を生成する。具体的には、生成部41は、記憶装置32に記憶された電力指令値Zから電力要求値Rを生成する。例えば、基礎的な電力指令値Zのうち蓄電装置21の設備容量のもとでは蓄電装置21が負担できない成分が、水素製造装置22に対する電力要求値Rとして生成される。生成部41は、電力要求値Rを所定の周期で時系列に生成する。電力要求値Rの時間変動は、水素製造装置22の動作効率を低下させる急峻な変動成分を含み得る。
【0024】
制限部42は、電力要求値Rの時間変動のうち制限値Lを上回る変動成分を抑制することで電力指令値Yを生成する。制限部42が生成した電力指令値Yは、通信装置33により水素製造装置22に送信される。
【0025】
例えば、制限部42は、電力要求値Rの時間的な変化率を制限する変化率リミッタである。すなわち、制限部42は、電力要求値Rの時間変動のうち変化率が制限値Lを上回る変動成分を抑制する。したがって、電力指令値Yは、制限値Lを下回る変化率で電力要求値Rに追従する。すなわち、制限値Lは、電力指令値Yの変化率の上限値である。
【0026】
電力要求値Rの時間変動のうち周波数が制限値Lを上回る変動成分を抑制する低域通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)が、制限部42として利用されてもよい。すなわち、制限値Lは、低域通過フィルタの遮断周波数に相当する。以上の説明から理解される通り、制限部42は、電力要求値Rの時間変動のうち変化率または周波数が制限値Lを上回る変動成分を抑制する。
【0027】
演算部43は、電力指令値Zから電力指令値Yを減算することで蓄電装置21の電力指令値Xを生成する。演算部43が生成した電力指令値Xは、通信装置33により蓄電装置21に送信される。したがって、蓄電装置21が電力指令値Xに応じて動作し、水素製造装置22が電力指令値Yに応じて動作する結果、電力系統10の連系点電力は、電力指令値Zに維持される。
【0028】
ところで、制限値Lが大きいほど、電力指令値Zのうち急峻な変動成分が水素製造装置22の電力指令値Yに反映され易く、かつ、蓄電装置21の電力指令値Xに反映され難くなる。したがって、蓄電装置21において連系点電力を調整可能な余力が小さい状況(すなわち、蓄電装置21が逼迫した状況)では、蓄電装置21による電力の供給を優先するために、制限値Lを大きい数値に設定することが望ましい。
【0029】
他方、制限値Lが小さいほど、電力指令値Zのうち急峻な変動成分が蓄電装置21の電力指令値Xに反映され易く、かつ、水素製造装置22の電力指令値Yに反映され難くなる。したがって、蓄電装置21が連系点電力を調整可能な余力が大きい状況(すなわち、蓄電装置21が逼迫していない状況)では、水素製造装置22による動作効率の維持を優先するために、制限値Lを小さい数値に設定することが望ましい。
【0030】
以上の傾向を考慮して、第1実施形態の制御部44は、制限部42に適用される制限値Lを制御する。具体的には、制御部44は、蓄電装置21の逼迫状況に応じて制限値Lを制御する。前述の通り、通信装置33が蓄電装置21から受信する電力量C1は、蓄電装置21の逼迫状況に相関する情報である。そこで、第1実施形態の制御部44は、電力量C1に応じて制限値Lを制御する。
【0031】
図4は、制御部44の具体的な構成を例示するブロック図である。
図4に例示される通り、制御部44は、第1処理部441と第2処理部442とを含む。
【0032】
第1処理部441は、蓄電装置21の逼迫度Uを算定する。逼迫度Uは、蓄電装置21が連系点電力の調整に関して逼迫している度合を意味する。すなわち、逼迫度Uは、蓄電装置21が連系点電力を調整可能な余力の少なさの指標である。第1処理部441は、電力量C1に応じて逼迫度Uを算定する。
【0033】
図5は、電力量C1と逼迫度Uおよび制限値Lとの関係を例示するグラフである。
図5には、電力量C1の下限値Cminおよび上限値Cmaxが図示されている。下限値Cminは、蓄電装置21が完全に放電した状態(SOC=0%)を意味し、上限値Cmaxは、蓄電装置21が満充電である状態(SOC=100%)を意味する。また、
図5には、閾値TLおよび閾値THが図示されている。閾値TLおよび閾値THは、下限値Cminと上限値Cmaxとの間の数値である。閾値TLは閾値THを下回る(TL<TH)。具体的には、閾値TLは、下限値Cminと上限値Cmaxとの中央値を下回り、閾値THは、下限値Cminと上限値Cmaxとの中央値を上回る。
【0034】
図5に例示される通り、電力量C1が閾値TLを下回る範囲WL(Cmin≦C1<TL)は、蓄電装置21が放電可能な余力が小さい範囲(蓄電装置21が逼迫した状態)を意味する。電力量C1が範囲WL内にある場合、第1処理部441は、電力量C1が小さい(すなわち放電の余力が小さい)ほど、逼迫度Uを大きい数値に設定する。
【0035】
他方、電力量C1が閾値THを上回る範囲WH(TH≦C1≦Cmax)は、蓄電装置21が充電可能な余力が小さい範囲(蓄電装置21が逼迫した状態)を意味する。電力量C1が範囲WH内にある場合、第1処理部441は、電力量C1が大きい(すなわち充電の余力が小さい)ほど、逼迫度Uを大きい数値に設定する。
【0036】
また、閾値TLと閾値THとの間の範囲WM(TL≦C1<TH)は、蓄電装置21による放電および充電の余力が充分にある範囲を意味する。電力量C1が範囲WM内にある場合、第1処理部441は、逼迫度Uを、電力量C1に依存しない最小値に設定する。
【0037】
図4の第2処理部442は、第1処理部441が算定した逼迫度Uに応じて制限値Lを設定する。具体的には、第2処理部442は、逼迫度Uが大きいほど制限値Lを大きい数値に設定する。例えば、第2処理部442は、逼迫度Uに比例した数値を制限値Lとして算定する。したがって、
図5に例示される通り、電力量C1と逼迫度Uとの関係と同様の関係が、電力量C1と制限値Lとの間に成立する。
【0038】
すなわち、電力量C1が範囲WL内にある場合、制御部44は、電力量C1が小さいほど制限値Lを大きい数値に設定する。電力量C1が範囲WH内にある場合、制御部44は、電力量C1が大きいほど制限値Lを大きい数値に設定する。また、電力量C1が範囲WM内にある場合、制御部44は、制限値Lを所定値L1に設定する。
【0039】
図5には、差分DHと差分DLとが図示されている。差分DHは、蓄電装置21の電力量C1と上限値Cmaxとの差分の絶対値である。他方、差分DLは、蓄電装置21の電力量C1と下限値Cminとの差分の絶対値である。
図5から理解される通り、制御部44は、差分DHおよび差分DLのうち小さい方に対して制限値Lを単調減少させる。例えば、電力量C1が閾値TLである場合の制限値L1は、電力量C1が上限値Cmaxまたは下限値Cminである場合の制限値L2を下回る。
【0040】
図6は、制御装置31が実行する処理(以下「制御処理」という)のフローチャートである。所定の周期で制御処理が反復される。制御処理が開始されると、制御装置31(制御部44)は、現時点の電力量C1に応じて制限値Lを設定する(Sa1)。制御装置31(生成部41)は、電力指令値Zから電力要求値Rを生成する(Sa2)。
【0041】
制御装置31(制限部42)は、現時点を終点とする所定の期間における電力要求値Rの時間変動のうち、変化率または周波数が制限値Lを上回る変動成分を抑制することで電力指令値Yを生成する(Sa3)。制御装置31は、電力指令値Yを通信装置33から水素製造装置22に送信する(Sa4)。また、制御装置31(演算部43)は、電力指令値Zから電力指令値Yを減算することで電力指令値Xを生成する(Sa5)。制御装置31は、電力指令値Xを通信装置33から蓄電装置21に送信する(Sa6)。
【0042】
以上の説明の通り、第1実施形態においては、蓄電装置21の電力量C1に応じて制限値Lが制御される。電力量C1は、蓄電装置21の逼迫状況に相関する制御情報Cである。したがって、第1実施形態によれば、制限値Lが固定された構成と比較して、蓄電装置21に必要な設備容量の低減と水素製造装置22の動作効率の維持とを両立できる。
【0043】
例えば、電力量C1と上限値Cmaxとの差分DHおよび電力量C1と下限値Cminとの差分DLのうち小さい方は、蓄電装置21が連系点電力を調整可能な余力に相当する。連系点電力を調整可能な余力が蓄電装置21に充分にある場合(C1∈WM)には、制限値Lを減少させることで、水素製造装置22の動作効率を向上できる。他方、連系点電力を調整可能な余力が蓄電装置21に充分にない場合(C1∈WL,C1∈WH)には、制限値Lを増加させることで、蓄電装置21が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置21の電力が設備容量に到達することで連系点電力が不足する可能性を低減できる。
【0044】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0045】
第1実施形態においては、蓄電装置21から送信された電力量C1に応じて制限値Lが制御される。第2実施形態においては、第1実施形態における電力量C1が、蓄電装置21の充放電電力C2に置換される。充放電電力C2は、蓄電装置21の充電電力または放電電力の電力値(kW)である。充放電電力C2は、第1実施形態の電力量C1と同様に、蓄電装置21の逼迫状況に相関する制御情報Cである。なお、制御システム30の構成は第1実施形態と同様である。
【0046】
蓄電装置21は、当該蓄電装置21の充放電電力C2を制御システム30に送信する。制御システム30の通信装置33は、蓄電装置21が送信した充放電電力C2を受信する。なお、蓄電装置21に直前に送信された電力指令値Xが、充放電電力C2として利用されてもよい。
【0047】
図7は、充放電電力C2と逼迫度Uおよび制限値Lとの関係を例示するグラフである。
図7に例示される通り、例えば、充放電電力C2は、蓄電装置21が充電状態にある場合には正数に設定され、蓄電装置21が放電状態にある場合には負数に設定される。
【0048】
図7には、蓄電装置21が放電可能な最大電力Caと、蓄電装置21が充電可能な最大電力Cbとが図示されている。最大電力Caは、蓄電装置21における放電側の設備容量であり、最大電力Cbは、蓄電装置21における充電側の設備容量である。また、
図7には、閾値Taと閾値Tbとが図示されている。閾値Taは、放電可能な状態における特定の電力であり、閾値Tbは、充電可能な状態における特定の電力である。
【0049】
図7に例示される通り、放電可能な最大電力Caと閾値Taとの間の範囲Wa(Ca≦C2<Ta)は、蓄電装置21が放電可能な余力が小さい範囲(蓄電装置21が逼迫した状態)を意味する。充放電電力C2が範囲Wa内にある場合、第1処理部441は、充放電電力C2が最大電力Caに近い(すなわち放電の余力が小さい)ほど、逼迫度Uを大きい数値に設定する。
【0050】
また、充電可能な最大電力Cbと閾値Tbとの間の範囲Wb(Tb≦C2≦Cb)は、蓄電装置21が充電可能な余力が小さい範囲(蓄電装置21が逼迫した状態)を意味する。充放電電力C2が範囲Wb内にある場合、第1処理部441は、充放電電力C2が最大電力Cbに近い(すなわち放電の余力が小さい)ほど、逼迫度Uを大きい数値に設定する。
【0051】
他方、閾値TLと閾値THとの間の範囲WM(TL≦C2<TH)は、蓄電装置21による放電および充電の余力が充分にある範囲を意味する。充放電電力C2が範囲WM内にある場合、第1処理部441は、逼迫度Uを、充放電電力C2に依存しない最小値に設定する。
【0052】
第2処理部442は、第1実施形態と同様に、第1処理部441が算定した逼迫度Uに応じて制限値Lを設定する。具体的には、第2処理部442は、逼迫度Uに比例した数値を制限値Lとして算定する。したがって、充放電電力C2が範囲Wa内にある場合、制御部44は、充放電電力C2が放電側の最大電力Caに近いほど制限値Lを大きい数値に設定する。他方、充放電電力C2が範囲Wb内にある場合、制御部44は、充放電電力C2が充電側の最大電力Cbに近いほど制限値Lを大きい数値に設定する。また、充放電電力C2が範囲WM内にある場合、制御部44は、制限値Lを所定値L1に設定する。
【0053】
図7の差分Daは、蓄電装置21が放電状態にある場合の充放電電力C2(すなわち放電電力)と放電側の最大電力Caとの差分の絶対値である。また、
図7の差分Dbは、蓄電装置21が充電状態にある場合の充放電電力C2(すなわち充電電力)と充電側の最大電力Cbとの差分の絶対値である。
図7から理解される通り、制御部44は、放電時の差分Daまたは充電時の差分Dbに対して制限値Lを単調減少させる。制御処理の手順は第1実施形態と同様である。
【0054】
以上に説明した通り、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、制限値Lが固定された構成と比較して、蓄電装置21に必要な設備容量の低減と水素製造装置22の動作効率の維持とを両立できる。
【0055】
例えば、充放電電力C2(放電電力)と放電側の最大電力Caとの差分Da、および充放電電力C2(充電電力)と充電側の最大電力Cbとの差分Dbは、蓄電装置21が連系点電力を調整可能な余力に相当する。連系点電力を調整可能な余力が蓄電装置21に充分にある場合(C2∈WM)には、制限値Lを減少させることで、水素製造装置22の動作効率を向上できる。他方、連系点電力を調整可能な余力が蓄電装置21に充分にない場合(C2∈Wa,C2∈Wb)には、制限値Lを増加させることで、蓄電装置21が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置21の電力が設備容量に到達することで連系点電力が不足する可能性を低減できる。
【0056】
C:第3実施形態
第1実施形態および第2実施形態においては、蓄電装置21の状態に応じた制御情報C(電力量C1,充放電電力C2)に応じて制限値Lが制御される。第3実施形態においては、電力調整システム100が供給すべき調整力の応答性に関する指標(以下「応答指標C3」という)が、制限値Lの制御に適用される。調整力は、例えば需要と供給との関係に応じて動的に供出される電力であり、例えば需給調整市場において一般送配電事業者または特定卸供給事業者(アグリゲータ)との間で約定される。
【0057】
応答指標C3は、調整力が指令値に応じて変動する応答速度の指標である。応答指標C3が大きいほど、調整力に高速な応答が要求されることを意味する。例えば需給調整市場で約定されたΔkW約定量が、応答指標C3として例示される。応答指標C3が高いほど蓄電装置21が逼迫した状況になり易い。したがって、応答指標C3は、蓄電装置21の逼迫状況に相関する制御情報Cの一例である。
【0058】
なお、需給調整市場においては、約定対象の商品(例えば一次調整力または三次調整力(2)等)に応じて、要求される応答速度が相違する。したがって、応答指標C3は、ΔkW約定量に加え、商品毎に要求される応答速度も加味して総合的に算定されてもよい。
【0059】
例えば、調整力の商品の応動時間が時間長t以内に設定されている場合、ΔkW約定量を時間長tで除算した数値が、応答指標C3として設定されてよい。すなわち、応答指標C3は、単位時間当たりに追従しなければならない電力変化量の上限に相当する。応動時間は、指令値がゼロからΔkW約定量まで変化した場合に、調整力が指令値に追従するまでに必要な時間である。なお、複数の商品を複合約定している場合も同様に、複合約定のアセスメントに則って計算された、単位時間当たりに追従しなければならない電力変化量の上限が、応答指標C3として設定されてよい。
【0060】
第3実施形態の制御部44は、応答指標C3に応じて制限部42の制限値Lを制御する。
図8は、応答指標C3と逼迫度Uおよび制限値Lとの関係を例示するグラフである。
【0061】
第3実施形態の第1処理部441は、応答指標C3に応じて蓄電装置21の逼迫度Uを算定する。具体的には、応答指標C3が大きいほど逼迫度Uを大きい数値に設定する。例えば、第1処理部441は、応答指標C3に比例した数値を逼迫度Uとして算定する。
【0062】
第2処理部442は、第1実施形態と同様に、第1処理部441が算定した逼迫度Uに応じて制限値Lを設定する。例えば、制限値Lは逼迫度Uに比例する。以上の説明から理解される通り、第3実施形態の制御部44は、応答指標C3が示す応答性に対して制限値Lを単調増加させる。例えば、応答指標C3が数値c1である場合の制限値L1は、応答指標C3が数値c1を下回る数値c2である場合の制限値L2を上回る。
【0063】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、制限値Lが固定された構成と比較して、蓄電装置21に必要な設備容量の低減と水素製造装置22の動作効率の維持とを両立できる。例えば、調整力について要求される応答性が低い場合には、制限値Lを減少させることで、動作効率を維持した状態で水素製造装置22を動作させることが可能である。他方、調整力について要求される応答性が高い場合には、制限値Lを増加させることで、蓄電装置21が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置21の電力が設備容量に到達することで連系点電力が不足する可能性を低減できる。
【0064】
D:第4実施形態
図9は、第4実施形態における電力調整システム100のブロック図である。
図9に例示される通り、第4実施形態の電力調整システム100は、第1実施形態と同様の要素(蓄電装置21,水素製造装置22,制御システム30)に加えて発電設備24を具備する。発電設備24は、蓄電装置21および水素製造装置22とともに連系点11において電力系統10に接続される。
【0065】
発電設備24は、電力系統10との間で電力(交流電力)を授受するリソースである。具体的には、発電設備24は、例えば太陽光、風力、水力、地熱または太陽熱等の再生可能エネルギーを利用して発電する再生可能エネルギー発電装置である。したがって、発電設備24が発電する電力は、例えば天候等の各種の要因に応じて刻々と変動し得る。なお、発電設備24は、発電方式が相違する複数の発電機により構成されてもよい。
【0066】
発電設備24は、当該発電設備24が発電した電力(以下「発電電力P」という)を制御システム30に送信する。制御システム30の通信装置33は、発電設備24が送信した発電電力Pを受信する。発電電力Pは、発電設備24から電力系統10に供給される電力値(kW)であり、発電設備24から電力系統10に向かう逆潮方向を正数として設定される。なお、発電電力Pは、発電設備24による実際の発電の実績値のほか、天候等の各種の要因に応じた予測値でもよい。
【0067】
図10は、制御システム30の機能的な構成を例示するブロック図である。
図10に例示される通り、制御装置31は、第1実施形態と同様の要素(生成部41,制限部42,演算部43,制御部44)に加えて、演算部45および設定部46として機能する。
【0068】
演算部45は、記憶装置32に記憶された電力指令値Zから発電電力Pを減算することで電力指令値Zaを生成する。演算部43は、演算部45が生成した電力指令値Zaから電力指令値Yを減算することで蓄電装置21の電力指令値Xを生成する。また、生成部41は、演算部45が生成した電力指令値Zaから電力要求値Rを生成する。第4実施形態の生成部41が電力指令値Zaから電力要求値Rを生成する動作は、第1実施形態の生成部41が電力指令値Zから電力要求値Rを生成する動作と同様である。
【0069】
設定部46は、変動指標C4を算定する。変動指標C4は、発電設備24の発電電力Pの変動に関する指標である。具体的には、発電電力Pが変動し易い状態では変動指標C4は大きい数値に設定される。発電電力Pが大きいほど、例えば天候等の要因に応じて発電電力Pは大きく変動し易い。以上の傾向を考慮して、設定部46は、発電電力Pを変動指標C4として設定する。設定部46による変動指標C4の設定は、所定の周期で反復される。なお、変動指標C4は「第1変動指標」の一例である。
【0070】
発電設備24の発電電力Pが変動した場合、当該変動に起因した連系点電力の変動(例えば過不足)が低減されるように、蓄電装置21は充電または放電を実行する。発電電力Pが急激に変動した場合、蓄電装置21は、連系点電力の変動に追従するように急激に動作する必要があり、逼迫した状態になり易いという傾向がある。したがって、変動指標C4は、蓄電装置21の逼迫状況に相関する制御情報Cの一例である。
【0071】
なお、設定部46が変動指標C4を設定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、設定部46は、直前の所定期間(以下「解析期間」という)における発電電力Pの散布度を変動指標C4として算定してもよい。発電電力Pの散布度は、解析期間内の複数の発電電力Pの散らばりを表す統計値である。例えば、解析期間内の複数の発電電力Pの標準偏差、分散または範囲(最大値と最小値との差分)が、変動指標C4として算定される。また、設定部46は、発電電力Pの時間変動のうち変化率または周波数が所定値を上回る変動成分の合計値を、変動指標C4として算定してもよい。
【0072】
第4実施形態の制御部44は、変動指標C4に応じて制限部42の制限値Lを制御する。変動指標C4と逼迫度Uおよび制限値Lとの関係は、以下の説明の通り、第3実施形態における応答指標C3と逼迫度Uおよび制限値Lとの関係(
図8)と同様である。
【0073】
第4実施形態の第1処理部441は、変動指標C4に応じて蓄電装置21の逼迫度Uを算定する。具体的には、変動指標C4が大きいほど逼迫度Uを大きい数値に設定する。例えば、第1処理部441は、変動指標C4に比例した数値を逼迫度Uとして算定する。
【0074】
第2処理部442は、第1実施形態と同様に、第1処理部441が算定した逼迫度Uに応じて制限値Lを設定する。例えば、制限値Lは逼迫度Uに比例する。以上の説明から理解される通り、第4実施形態の制御部44は、変動指標C4が示す変動に対して制限値Lを単調増加させる。例えば、変動指標C4が数値c1である場合の制限値L1は、変動指標C4が数値c1を下回る数値c2である場合の制限値L2を上回る。
【0075】
図11は、第4実施形態における制御処理のフローチャートである。所定の周期で制御処理が反復される。制御処理が開始されると、制御装置31(設定部46)は、発電電力Pに応じて変動指標C4を算定する(Sb1)。制御装置31(制御部44)は、変動指標C4に応じて制限値Lを設定する(Sb2)。
【0076】
制御装置31(演算部45)は、電力指令値Zから発電電力Pを減算することで電力指令値Zaを生成する(Sb3)。制御装置31(生成部41)は、電力指令値Zaから電力要求値Rを生成する(Sb4)。
【0077】
制御装置31(制限部42)は、現時点を終点とする所定の期間における電力要求値Rの時間変動のうち、制限値Lを上回る変動成分を抑制することで電力指令値Yを生成する(Sb5)。制御装置31は、電力指令値Yを通信装置33から水素製造装置22に送信する(Sb6)。また、制御装置31(演算部43)は、電力指令値Zaから電力指令値Yを減算することで電力指令値Xを生成する(Sb7)。制御装置31は、電力指令値Xを通信装置33から蓄電装置21に送信する(Sb8)。
【0078】
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、制限値Lが固定された構成と比較して、蓄電装置21に必要な設備容量の低減と水素製造装置22の動作効率の維持とを両立できる。例えば、発電設備24における発電電力Pの変動の可能性が低い場合には、制限値Lを減少させることで、動作効率を維持した状態で水素製造装置22を動作させることが可能である。他方、発電設備24における発電電力Pの変動の可能性が高い場合には、制限値Lを増加させることで、蓄電装置21が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置21の電力が設備容量に到達することで連系点電力が不足する可能性を低減できる。
【0079】
E:第5実施形態
図12は、第5実施形態における電力調整システム100のブロック図である。
図12に例示される通り、第5実施形態の電力調整システム100は、第1実施形態と同様の要素(蓄電装置21,水素製造装置22,制御システム30)に加えて電力設備25を具備する。電力設備25は、蓄電装置21および水素製造装置22とともに連系点11において電力系統10に接続される。
【0080】
電力設備25は、電力系統10との間で電力(交流電力)を授受するリソースである。具体的には、電力設備25は、例えば一般消費者または事業者等の需要家が使用する電気設備である。例えば、事業者が運営する工場等の事業所または電気自動車用の充電ステーション等の設備が、電力設備25として例示される。電力設備25が電力系統10との間で授受する電力は、電力設備25の稼働状況または天候等の各種の要因に応じて刻々と変動し得る。また、電力設備25の運営者は、電力調整システム100の運営者とは相違する。したがって、電力設備25は、電力調整システム100による動作の制御が困難なリソースである。なお、電力設備25は、複数の電気設備により構成されてもよい。電力設備25は「第2リソース」の一例である。
【0081】
電力設備25は、当該電力設備25が電力系統10との間で授受する電力(以下「授受電力Q」という)を制御システム30に送信する。授受電力Qは、電力設備25と電力系統10との間で授受される電力値(kW)であり、電力設備25から電力系統10に向かう逆潮方向を正数として設定される。なお、授受電力Qは、電力設備25による実際の発電の実績値のほか、天候等の各種の要因に応じた予測値でもよい。
【0082】
図13は、制御システム30の機能的な構成を例示するブロック図である。
図13に例示される通り、制御装置31は、第4実施形態と同様の要素(生成部41,制限部42,演算部43,制御部44,演算部45,設定部46)として機能する。
【0083】
演算部45は、記憶装置32に記憶された電力指令値Zから授受電力Qを減算することで電力指令値Zaを生成する。演算部43が電力指令値Zaから電力指令値Yを減算することで電力指令値Xを生成する動作、および、生成部41が電力指令値Zaから電力要求値Rを生成する動作は、第4実施形態と同様である。
【0084】
第5実施形態の設定部46は、変動指標C5を算定する。変動指標C5は、電力設備25の授受電力Qの変動に関する指標である。具体的には、授受電力Qが変動し易い状態では変動指標C5は大きい数値に設定される。授受電力Qが大きいほど、種々の要因に応じて授受電力Qは大きく変動し易い。以上の傾向を考慮して、設定部46は、授受電力Qを変動指標C5として設定する。なお、変動指標C5は「第2変動指標」の一例である。
【0085】
発電設備24の授受電力Qが急激に変動した場合、蓄電装置21は、連系点電力の変動に追従するように急激に動作する必要があり、逼迫した状態になり易いという傾向がある。したがって、変動指標C5は、変動指標C4と同様に、蓄電装置21の逼迫状況に相関する制御情報Cの一例である。
【0086】
なお、設定部46が変動指標C5を設定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、変動指標C4と同様に、設定部46は、解析期間における授受電力Qの散布度(例えば標準偏差、分散または範囲)を変動指標C5として算定してもよい。また、設定部46は、授受電力Qの時間変動のうち変化率または周波数が所定値を上回る変動成分の合計値を、変動指標C5として算定してもよい。
【0087】
第5実施形態の制御部44は、変動指標C5に応じて制限部42の制限値Lを制御する。変動指標C5と逼迫度Uおよび制限値Lとの関係は、以下の説明の通り、第3実施形態における応答指標C3と逼迫度Uおよび制限値Lとの関係(
図8)と同様である。
【0088】
具体的には、第5実施形態の制御部44は、変動指標C5が示す変動に対して制限値Lを単調増加させる。例えば、変動指標C5が数値c1である場合の制限値L1は、変動指標C5が数値c1を下回る数値c2である場合の制限値L2を上回る。第5実施形態における制御処理の手順は第4実施形態(
図11)と同様である。
【0089】
第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、制限値Lが固定された構成と比較して、蓄電装置21に必要な設備容量の低減と水素製造装置22の動作効率の維持とを両立できる。例えば、電力設備25における授受電力Qの変動の可能性が低い場合には、制限値Lを減少させることで、動作効率を維持した状態で水素製造装置22を動作させることが可能である。他方、電力設備25における授受電力Qの変動の可能性が高い場合には、制限値Lを増加させることで、蓄電装置21が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置21の電力が設備容量に到達することで連系点電力が不足する可能性を低減できる。
【0090】
なお、第4実施形態の発電設備24は、第5実施形態の電力設備25の一例としても把握される。すなわち、第4実施形態における発電電力Pは、第5実施形態における授受電力Qの一例とも解釈できる。したがって、第4実施形態は、第5実施形態の一例としても位置付けられる。第4実施形態の発電設備24は「第2リソース」の一例である。
【0091】
F:第6実施形態
図14は、第6実施形態における制御システム30の機能的な構成を例示するブロック図である。
図14に例示される通り、第6実施形態の制御装置31は、第1実施形態と同様の要素(生成部41,制限部42,演算部43,制御部44)に加えて、抑制部47および演算部48として機能する。
【0092】
第6実施形態の生成部41は、稼動計画値Vから電力要求値Raを生成する。稼動計画値Vは、水素製造装置22について事前に策定された稼動計画において指定された数値である。例えば水素製造装置22が生成すべき水素量の計画に沿って稼動計画値Vの時系列が設定される。電力要求値Raは、前述の電力要求値Rと同様に、水素製造装置22に分配すべき電力の要求値である。電力要求値Raは所定の周期で時系列に生成される。
【0093】
抑制部47は、電力指令値Zの時間変動のうち周波数が所定値Fを下回る変動成分を抑制することで補助指令値Gを生成する。すなわち、補助指令値Gは、電力指令値Zの時間変動のうち周波数が所定値Fを上回る急峻な変動成分である。例えば遮断周波数が所定値Fに設定された高域通過フィルタ(HPF:High Pass Filter)が抑制部47として利用される。所定値Fは、例えば制限部42の制限値Lを下回る数値に設定される。
【0094】
演算部48は、抑制部47による処理後の補助指令値Gを電力要求値Raに加算することで水素製造装置22の電力要求値Rを生成する。電力要求値Raと補助指令値Gとの加算が所定の周期で反復されることで、電力要求値Rの時系列が生成される。
【0095】
制御システム30の他の要素の構成および動作は第1実施形態と同様である。例えば、制限部42は、電力要求値Rの時間変動のうち制限値Lを上回る変動成分を抑制し、制御部44は、蓄電装置21の電力量C1に応じて制限値Lを制御する。したがって、第6実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0096】
第6実施形態においては、電力指令値Zの時間変動のうち周波数が所定値Fを上回る変動成分(補助指令値G)が、水素製造装置22の電力要求値Rに選択的に反映される。すなわち、電力指令値Zの時間変動のうち抑制部47および制限部42の双方を通過した変動成分(電力指令値Y)が水素製造装置22により負担される。以上の構成によれば、補助指令値Gを考慮しない形態と比較して、蓄電装置21が負担すべき電力が低減される。したがって、蓄電装置21の電力が設備容量に到達することで連系点電力が不足する可能性を低減できる。
【0097】
他方、電力要求値Rに反映される補助指令値Gは、電力指令値Zの時間変動のうち所定値Fを上回る変動成分であるから、長期的にみれば、補助指令値Gに起因して水素製造装置22と電力系統10との間で授受される電力量は充分に小さい。例えば、補助指令値Gが反映された電力指令値Yにより水素製造装置22が電力系統10との間で授受する電力は、補助指令値Gの加算前の電力要求値Raにより水素製造装置22が電力系統10との間で授受すべき電力と実質的に一致する。すなわち、電力指令値Zの時間変動のうち一部の変動成分を実際には水素製造装置22が負担するにも関わらず、実質的には水素製造装置22を稼働計画(稼動計画値V)に沿って稼動することが可能である。以上の説明の通り、第6実施形態によれば、水素製造装置22を稼働計画に沿って稼働させながら、蓄電装置21が負担すべき電力を低減できる。
【0098】
なお、以上の説明においては、第1実施形態を基礎とした形態を例示したが、第6実施形態の構成は、第2実施形態から第5実施形態にも同様に適用される。すなわち、
図14の抑制部47および演算部48は、第2実施形態から第5実施形態にも同様に追加されてよい。
【0099】
G:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。なお、以下の説明においては、電力量C1、充放電電力C2、応答指標C3、変動指標C4および変動指標C5を、蓄電装置21の逼迫状況に相関する制御情報Cとして包括的に記載する。
【0100】
(1)制御情報Cと逼迫度Uまたは制限値Lとの関係は、前述の各形態における例示に限定されない。
【0101】
図15から
図17は、制御情報C(例えば電力量C1または充放電電力C2)と逼迫度Uまたは制限値Lとの関係に関する変形例である。
図15に例示される通り、逼迫度Uおよび制限値Lは、範囲WL内または範囲WH内において制御情報Cに対して段階的に変化してもよい。
図16に例示される通り、逼迫度Uおよび制限値Lは、範囲WL内または範囲WH内において制御情報Cに対して曲線的に変化してもよい。また、
図17に例示される通り、逼迫度Uおよび制限値Lが制御情報Cに対して変化しない範囲WMは、省略されてもよい。
【0102】
図18および
図19は、制御情報C(例えば応答指標C3、変動指標C4または変動指標C5)と逼迫度Uまたは制限値Lとの関係に関する変形例である。
図18に例示される通り、逼迫度Uおよび制限値Lは、制御情報Cに対して段階的に変化してもよい。また、
図19に例示される通り、逼迫度Uおよび制限値Lは、制御情報Cに対して曲線的に変化してもよい。
【0103】
図15または
図18の例示から理解される通り、本願において、変数Aに対して変数Bが「単調減少」する状態は、変数Aの任意の増加に対して変数Bが減少する狭義単調減少のほか、変数Aの増加に対して変数Bが変化しない範囲があり得る広義単調減少(単調非増加)を含む。同様に、変数Aに対して変数Bが「単調増加」する状態は、変数Aの任意の増加に対して変数Bが増加する狭義単調増加のほか、変数Aの増加に対して変数Bが変化しない範囲があり得る広義単調増加(単調非減少)を含む。
【0104】
なお、以上の説明における変数Aは、例えば第1実施形態における差分DHまたは差分DL、第2実施形態における差分Daまたは差分Db、第3実施形態における応答指標C3、第4実施形態における変動指標C4、または第5実施形態における変動指標C5である。また、変数Bは、例えば前述の各形態における逼迫度Uまたは制限値Lである。
【0105】
(2)前述の各形態においては、制限部42の制限値Lが逼迫度Uに比例する形態を例示したが、制限値Lと逼迫度Uとの関係は、以上の例示に限定されない。例えば、制限値Lが逼迫度Uに対して段階的に変化する形態、または制限値Lが逼迫度Uに対して曲線的に変化する形態も想定される。すなわち、制御部44は、逼迫度Uを変数とする任意の関数により制限値Lを算定する。また、制御部44は、逼迫度Uの各数値と制限値Lの各数値とを相互に対応付けるデータテーブルを利用して、逼迫度Uの特定の数値に対応する制限値Lを決定してもよい。なお、逼迫度Uと制限値Lとの間の関係について線形性の有無は不問である。
【0106】
(3)前述の各形態においては、第1処理部441が制御情報Cに応じて蓄電装置21の逼迫度Uを算定し、第2処理部442が逼迫度Uに応じて制限値Lを算定する形態を例示したが、制御情報Cに応じて制限値Lを設定する過程において、逼迫度Uが算定される必要は必ずしもない。例えば、制御部44は、制御情報Cを変数として制限値Lを表現する任意の関数に制御情報Cを適用することで、逼迫度Uを算定することなく制限値Lを直接的に算定してもよい。また、制御部44は、制御情報Cの各数値と制限値Lの各数値とを相互に対応付けるデータテーブルを利用して、制御情報Cの特定の数値に対応する制限値Lを決定してもよい。以上の説明から理解される通り、制御部44は、制御情報Cに応じて制限値Lを制御する要素として包括的に表現され、
図4に例示した第1処理部441および第2処理部442の区別は省略されてよい。
【0107】
(4)前述の各形態においては、制御部44が制御情報Cに応じて制限値Lを制御する形態を例示したが、制限値Lは、制御情報C以外の要素に依存してもよい。例えば、制限値Lは、所定の範囲(以下「許容範囲」という)内の数値に制限されてもよい。具体的には、制御情報Cに対応する暫定的な制限値Lが許容範囲の上限値を上回る場合、制御部44は、許容範囲の上限値を確定的な制限値Lとして設定する。また、制御情報Cに対応する暫定的な制限値Lが許容範囲の下限値を下回る場合、制御部44は、許容範囲の下限値を確定的な制限値Lとして設定する。
【0108】
(5)第1実施形態においては、電力指令値Zから電力指令値Yを減算することで蓄電装置21の電力指令値Xを生成する形態を例示したが(
図3)、電力指令値Xを生成するための構成および方法は以上の例示に限定されない。
【0109】
例えば、
図20に例示される通り、演算部43は、水素製造装置22に関する測定値Mを電力指令値Zから減算することで、蓄電装置21の電力指令値Xを生成してもよい(Sa5)。測定値Mは、水素製造装置22が連系点11との間で授受した電力の実測値であり、例えば通信装置33が水素製造装置22から受信する。
図20の構成によれば、例えば動作遅延または応答性不足等に起因して水素製造装置22が電力指令値Yに応じた動作を完全には実行できない場合でも、電力系統10の連系点電力を電力指令値Zに維持できる。
【0110】
なお、
図20においては第1実施形態の構成を想定したが、第2実施形態から第6実施形態においても同様に、水素製造装置22の測定値Mに応じて蓄電装置21の電力指令値Xが生成されてよい。例えば、第4実施形態(
図10)および第5実施形態(
図13)の演算部43は、演算部45が生成した電力指令値Zaから水素製造装置22の測定値Mを減算することで、蓄電装置21の電力指令値Xを生成してもよい(Sb7)。第6実施形態(
図14)の演算部43も同様に、電力指令値Zから測定値Mを減算することで電力指令値Xを生成してよい。
【0111】
(6)制御情報Cは、蓄電装置21の逼迫状況に相関する2種類以上の情報を含んでもよい。例えば、電力量C1、充放電電力C2、応答指標C3、変動指標C4および変動指標C5から選択された2種類以上の情報を、制御情報Cが含んでもよい。また、例えば以上に説明した2種類以上の情報の加重和が、制御情報Cとして利用されてもよい。
【0112】
(7)前述の形態に係る制御システム30の機能は、前述の通り、制御装置31を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置32に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0113】
H:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0114】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る制御システムは、電力系統との間で電力を授受する蓄電装置と、前記電力系統との間で電力を授受する第1リソースとを制御するシステムであって、電力要求値の時間変動のうち変化率または周波数が制限値を上回る変動成分を抑制することで前記第1リソースに対する電力指令値を生成する制限部と、前記蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて前記制限値を制御する制御部とを具備する。以上の態様においては、蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて、電力指令値の生成に適用される制限値が制御される。したがって、制限値が固定された構成と比較して、蓄電装置に必要な設備容量の低減と第1リソースの動作効率の維持とを両立できる。
【0115】
態様1の具体例(態様2)において、前記制御情報は、前記蓄電装置の電力量を含み、前記制御部は、前記蓄電装置の電力量と当該蓄電装置の電力量の上限値との差分、および、前記蓄電装置の電力量との当該蓄電装置の電力量の下限値との差分のうち小さい方に対して、前記制限値を単調減少させる。以上の態様において、蓄電装置の電力量と上限値との差分および電力量と下限値との差分のうち小さい方は、蓄電装置が連系点の電力を調整可能な余力に相当する。連系点の電力を調整可能な余力が蓄電装置に充分にある場合には、制限値を減少させることで、第1リソースの動作効率を向上できる。他方、連系点の電力を調整可能な余力が蓄電装置に充分にない場合には、制限値を増加させることで、蓄電装置が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置の電力が設備容量に到達することで連系点の電力が不足する可能性を低減できる。
【0116】
態様1または態様2の具体例(態様3)において、前記制御情報は、前記蓄電装置の充電電力または放電電力を含み、前記制御部は、前記蓄電装置の充電電力と前記蓄電装置が充電可能な最大電力との差分、または、前記蓄電装置の放電電力と前記蓄電装置が放電可能な最大電力との差分に対して、前記制限値を単調減少させる。以上の態様において、蓄電装置の充電電力と蓄電装置が充電可能な最大電力との差分、または、蓄電装置の放電電力と蓄電装置が放電可能な最大電力との差分は、蓄電装置が連系点の電力を調整可能な余力に相当する。連系点の電力を調整可能な余力が蓄電装置に充分にある場合には、制限部の制限値を減少させることで、第1リソースの動作効率を向上できる。他方、連系点の電力を調整可能な余力が蓄電装置に充分にない場合には、制限値を増加させることで、蓄電装置が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置の電力が設備容量に到達することで連系点の電力が不足する可能性を低減できる。
【0117】
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、前記制御情報は、調整力の応答性に関する応答指標を含み、前記制御部は、前記応答指標が示す応答性に対して前記制限値を単調増加させる。以上の態様において、調整力について要求される応答性が低い場合には、制限値を減少させることで、動作効率を維持した状態で第1リソースを動作させることが可能である。他方、調整力について要求される応答性が高い場合には、制限値を増加させることで、蓄電装置が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置の電力が設備容量に到達することで連系点の電力が不足する可能性を低減できる。
【0118】
態様1から態様4の何れかの具体例(態様5)において、前記制御情報は、前記電力系統との間で電力を授受する発電設備の発電電力の変動に関する第1変動指標を含み、前記制御部は、前記第1変動指標が示す変動に対して前記制限値を単調増加させる。以上の態様において、発電設備における発電電力の変動の可能性が低い場合には、制限値を減少させることで、動作効率を維持した状態で第1リソースを動作させることが可能である。他方、発電設備における発電電力の変動の可能性が高い場合には、制限値を増加させることで、蓄電装置が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置の電力が設備容量に到達することで連系点の電力が不足する可能性を低減できる。
【0119】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様6)において、前記制御情報は、前記電力系統との間で電力を授受する第2リソースの授受電力の変動に関する第2変動指標を含み、前記制御部は、前記第2変動指標が示す変動に対して前記制限値を単調増加させる。以上の態様において、第2リソースにおける授受電力の変動の可能性が低い場合には、制限値を減少させることで、動作効率を維持した状態で第1リソースを動作させることが可能である。他方、第2リソースにおける授受電力の変動の可能性が高い場合には、制限値を増加させることで、蓄電装置が負担すべき電力が低減される。すなわち、蓄電装置の電力が設備容量に到達することで連系点の電力が不足する可能性を低減できる。
【0120】
態様1から態様6の何れかの具体例(態様7)において、前記蓄電装置および前記第1リソースが前記電力系統に接続される連系点における電力指令値の時間変動のうち周波数が所定値を下回る変動成分を抑制する抑制部と、前記抑制部による処理後の成分を前記第1リソースに対する前記電力要求値に加算する加算部とをさらに具備する。
【0121】
以上の態様においては、連系点における電力指令値の時間変動のうち周波数が所定値を上回る変動成分が、第1リソースの電力要求値に選択的に反映される。すなわち、電力指令値の時間変動のうち抑制部および制限部の双方を通過した変動成分(電力指令値)が、第1リソースにより負担される。以上の構成によれば、補助指令値を考慮しない形態と比較して、蓄電装置が負担すべき電力が低減される。したがって、蓄電装置の電力が設備容量に到達することで連系点電力が不足する可能性を低減できる
【0122】
また、電力要求値に反映される補助指令値は、電力指令値の時間変動のうち所定値を上回る変動成分であるから、長期的にみれば、補助指令値に起因して第1リソースと電力系統との間で授受される電力量は充分に小さい。例えば、補助指令値が反映された電力指令値により第1リソースが電力系統との間で授受する電力は、補助指令値の加算前の電力要求値により第1リソースが電力系統との間で授受すべき電力と実質的に一致する。すなわち、電力指令値の時間変動のうち一部の変動成分を実際には第1リソースが負担するにも関わらず、実質的には第1リソースを稼働計画に沿って稼動することが可能である。以上の説明の通り、第1リソースを稼働計画に沿って稼働させながら、蓄電装置が負担すべき電力を低減できる
【0123】
本開示のひとつの態様(態様8)に係る電力調整システムは、電力系統との間で電力を授受する蓄電装置と、前記電力系統との間で電力を授受する第1リソースとを、前記蓄電装置および前記第1リソースを制御する制御システムとを具備し、前記制御システムは、電力要求値の時間変動のうち変化率または周波数が制限値を上回る変動成分を抑制することで前記第1リソースに対する電力指令値を生成する制限部と、前記蓄電装置の逼迫状況に相関する制御情報に応じて前記制限値を制御する制御部とを含む。
【符号の説明】
【0124】
100…電力調整システム、10…電力系統、11…連系点、21…蓄電装置、211…蓄電池、212…制御機器、22…水素製造装置、24…発電設備、25…電力設備、31…制御装置、32…記憶装置、33…通信装置、41…生成部、42…制限部、43…演算部、44…制御部、45…演算部、46…設定部、47…抑制部、48…演算部、441…第1処理部、442…第2処理部。