IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タクマの特許一覧 ▶ 大原パラヂウム化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-脱臭装置 図1
  • 特開-脱臭装置 図2
  • 特開-脱臭装置 図3
  • 特開-脱臭装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171703
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20241205BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20241205BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20241205BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20241205BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241205BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20241205BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20241205BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01D53/38 110
B01D53/82 ZAB
B01D53/96
B01J20/26 A
B01J20/34 F
A61L9/014
F23G5/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088856
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(71)【出願人】
【識別番号】391034938
【氏名又は名称】大原パラヂウム化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】林 京平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 考太郎
(72)【発明者】
【氏名】脇 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上林 ▲祥▼晃
(72)【発明者】
【氏名】井手 洋和
【テーマコード(参考)】
3K065
4C180
4D002
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
3K065JA05
3K065JA19
4C180AA02
4C180BB11
4C180CC04
4C180CC12
4C180CC13
4C180CC15
4C180EB21X
4C180HH05
4C180JJ02
4D002AB02
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA70
4D002GA01
4D002GB11
4D002HA08
4D012BA01
4D012CA09
4D012CA12
4D012CB02
4D012CD01
4D012CE03
4D012CF08
4D012CG01
4D012CH10
4D012CK03
4G066AC11B
4G066BA07
4G066BA09
4G066BA22
4G066CA02
4G066DA02
4G066GA06
4G066GA16
(57)【要約】
【課題】吸着材を容易に再生可能な脱臭装置を提供する。
【解決手段】臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材51が配設された吸着部53に導入して臭気成分を吸着する脱臭装置50Aであって、吸着材51は、金属有機構造体(MOF)を含み、排熱を利用して加熱することにより再生される。排熱として、焼却炉3及び/又はボイラ4を備えた廃棄物処理施設1で発生した排熱が用いられる。また、吸着材51は、金属有機構造体を含み、焼却炉3及び/又はボイラ4を備えた施設で発生した排熱に由来する熱エネルギーを有する高温ガスを通流して加熱することにより再生されるものとしてもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材が配設された吸着部に導入して前記臭気成分を吸着する脱臭装置であって、
前記吸着材は、金属有機構造体を含み、排熱を利用して加熱することにより再生される脱臭装置。
【請求項2】
前記排熱として、焼却炉及び/又はボイラを備えた施設で発生した排熱が用いられる請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材が配設された吸着部に導入して前記臭気成分を吸着する脱臭装置であって、
前記吸着材は、金属有機構造体を含み、高温ガスを通流して加熱することにより再生される脱臭装置。
【請求項4】
臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材が配設された吸着部に導入して前記臭気成分を吸着する脱臭装置であって、
前記吸着材は、金属有機構造体を含み、焼却炉及び/又はボイラを備えた施設で発生した排熱に由来する熱エネルギーを有する高温ガスを通流して加熱することにより再生される脱臭装置。
【請求項5】
前記高温ガスとして、前記焼却炉から排出される排ガスとの熱交換により昇温された燃焼用空気及び/又は前記排ガスを除塵処理した除塵排ガスが用いられる請求項4に記載の脱臭装置。
【請求項6】
前記吸着材が再生される際に当該吸着材から放出された前記臭気成分を含んだ臭気成分含有ガスを前記焼却炉内に導入する臭気成分含有ガス導入管を備える請求項4に記載の脱臭装置。
【請求項7】
前記吸着材の再生は、前記有機金属構造体が吸着した前記臭気成分を放出することにより行われる請求項1~6の何れか一項に記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材が配設された吸着部に導入して臭気成分を吸着する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃棄物処理施設において、廃棄物ピットから臭気成分を含む悪臭ガスを導出し、導出した悪臭ガスを、活性炭を含む吸着材を備えた活性炭式脱臭装置に導入し、悪臭ガスに含まれる臭気成分を吸着材で吸着することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-249324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸着材による臭気成分の吸着処理量が一定以上となって吸着力が低下した場合には、新しい吸着材と交換するか、吸着材を再生処理する必要がある。新しい吸着材と交換する場合には、交換するたびに交換費用が必要になる。一方、吸着材を再生処理する場合には、吸着材を800℃以上の高温に加熱することによって、活性炭が吸着した臭気成分を放出させる必要があり、吸着材を800℃以上に加熱する熱源を廃棄物処理施設内で確保するのは難しく、再生処理を容易に行うことができない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、吸着材を容易に再生可能な脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る脱臭装置の特徴構成は、
臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材が配設された吸着部に導入して前記臭気成分を吸着する脱臭装置であって、
前記吸着材は、金属有機構造体を含み、排熱を利用して加熱することにより再生されることにある。
【0007】
本構成の脱臭装置によれば、吸着材は、金属有機構造体を含んでおり、熱源として容易に確保できる排熱を利用して吸着材を加熱することにより、吸着材を容易に再生することができる。
【0008】
本発明に係る脱臭装置において、
前記排熱として、焼却炉及び/又はボイラを備えた施設で発生した排熱が用いられることが好ましい。
【0009】
本構成の脱臭装置によれば、焼却炉及び/又はボイラを備えた施設で発生した排熱を有効利用することができる。
【0010】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る脱臭装置の特徴構成は、
臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材が配設された吸着部に導入して前記臭気成分を吸着する脱臭装置であって、
前記吸着材は、金属有機構造体を含み、高温ガスを通流して加熱することにより再生されることにある。
【0011】
本構成の脱臭装置によれば、吸着材は、金属有機構造体を含んでおり、高温ガスを吸着部に通流して吸着材を加熱することにより、吸着材を容易に再生することができる。
【0012】
さらに、上記課題を解決するための本発明に係る脱臭装置の特徴構成は、
臭気成分を含有する被処理ガスを、吸着材が配設された吸着部に導入して前記臭気成分を吸着する脱臭装置であって、
前記吸着材は、金属有機構造体を含み、焼却炉及び/又はボイラを備えた施設で発生した排熱に由来する熱エネルギーを有する高温ガスを通流して加熱することにより再生されることにある。
【0013】
本構成の脱臭装置によれば、吸着材は、金属有機構造体を含んでおり、焼却炉及び/又はボイラを備えた施設で発生した排熱に由来する熱エネルギーを有する高温ガスを吸着部に通流して吸着材を加熱することにより、吸着材を容易に再生することができる。
【0014】
本発明に係る脱臭装置において、
前記高温ガスとして、前記焼却炉から排出される排ガスとの熱交換により昇温された燃焼用空気及び/又は前記排ガスを除塵処理した除塵排ガスが用いられることが好ましい。
【0015】
本構成の脱臭装置によれば、高温ガスとして、焼却炉から排出される排ガスとの熱交換により昇温された燃焼用空気及び/又は排ガスを除塵処理した除塵排ガスが用いられるので、排ガスの熱エネルギーを有効利用して吸着材の再生処理を行うことができる。
【0016】
本発明に係る脱臭装置において、
前記吸着材が再生される際に当該吸着材から放出された前記臭気成分を含んだ臭気成分含有ガスを前記焼却炉内に導入する臭気成分含有ガス導入管を備えることが好ましい。
【0017】
本構成の脱臭装置によれば、吸着材が再生される際に当該吸着材から放出された臭気成分を含んだ臭気成分含有ガスが、臭気成分含有ガス導入管を介して焼却炉内に導入されるので、焼却炉内において臭気成分が熱分解されることになり、臭気成分を分解又は無臭化する処理を行うための臭気処理装置を別途設ける必要がないという利点がある。
【0018】
本発明に係る脱臭装置において、
前記吸着材の再生は、前記有機金属構造体が吸着した前記臭気成分を放出することにより行われることが好ましい。
【0019】
本構成の脱臭装置によれば、吸着材の再生は、有機金属構造体が吸着した臭気成分を放出することにより行われる。これにより、臭気成分を再度吸着可能な状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第一実施形態の脱臭装置を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、第二実施形態の脱臭装置を模式的に示すブロック図である。
図3図3は、廃棄物処理施設において第一実施形態の脱臭装置が適用された脱臭システムを模式的に示すブロック図である。
図4図4は、廃棄物処理施設において第二実施形態の脱臭装置が適用された脱臭システムを模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0022】
〔第一実施形態〕
図1は、第一実施形態の脱臭装置50Aを模式的に示すブロック図である。図1に示すように、脱臭装置50Aは、吸着材51が配設された吸着部53を有する装置本体55を備えている。装置本体55は、吸着部53を介してガスが通流可能に構成されている。
【0023】
装置本体55のガス流れ上流側には、被処理ガス導入管61が接続されている。被処理ガス導入管61のガス流れ上流側は、臭気成分を含有する被処理ガスの発生源(図示省略)、及び/又は複数の発生源から被処理ガスが集められた被処理ガス集合ゾーン(図示省略)に接続されている。被処理ガス導入管61の途中には、当該被処理ガス導入管61の管路を開閉するガス導入用ダンパ62が配設されている。
【0024】
装置本体55のガス流れ下流側には、処理後ガス導出管63が接続されている。処理後ガス導出管63の途中には、誘引送風機64が配設されるとともに、当該処理後ガス導出管63の管路を開閉するガス導出用ダンパ65が誘引送風機64のガス流れ下流側に位置するように配設されている。処理後ガス導出管63には、当該処理後ガス導出管63における誘引送風64とガス導出用ダンパ65とが位置する間の部分から分岐する形態で臭気成分含有ガス導入管66が配設されている。臭気成分含有ガス導入管66のガス流れ下流側は、臭気成分を分解又は無臭化する処理を行う臭気処理装置70に接続されている。臭気成分含有ガス導入管66の途中には、当該臭気成分含有ガス導入管66の管路を開閉する臭気成分含有ガス用ダンパ67が配設されている。
【0025】
<吸着材>
吸着材51は、吸着した臭気成分を放出可能な金属有機構造体を含んでいる。吸着材51としては、被処理ガスが通流可能で通流する際に臭気成分を吸着することができる構成であれば特に限定されるものではない。例えば、吸着材51は、ハニカム構造、穴あき構造、立体的なメッシュ構造等の担体の表面に金属有機構造体を担持させて構成されるものが好ましい。このような構成により、臭気成分の吸着効率を向上させることができる。臭気成分の吸着効率をより向上させる観点から、吸着材51は、担体として所定範囲の平均粒子径の粒状物を使用し、担体と金属有機構造体とを結合剤等を用いて粒状、球状、筒状、柱状、錐状、異形状等に成形したものを多数集合形成して構成されるものがより好ましい。
【0026】
<金属有機構造体>
金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)は、多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)とも呼ばれ、金属イオンと有機配位子との配位結合を利用して人工的に合成された多孔性材料である。金属イオンが有機配位子を架橋することによって、フレームワークが構築され、このフレームワーク内の空隙が臭気成分の分子を取り込む空間として機能する。金属有機構造体としては、吸着した臭気成分を放出可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、特開2019-88499号公報、特開2021-62322号公報、特開2022-9369号公報に開示されたものを用いることができる。
【0027】
<吸着処理>
以上に述べたように構成される脱臭装置50Aにおいては、ガス導入用ダンパ62を開状態とし、ガス導出用ダンパ65を開状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を閉状態として、誘引送風機64を作動させると、被処理ガスが被処理ガス導入管61を介して吸着部53に導入される。吸着部53に導入された被処理ガス中の臭気成分は、被処理ガスが吸着部53を通流する際に、金属有機構造体を含む吸着材51によって吸着される。吸着処理がなされた後の吸着処理後ガスは、誘引送風機64により、処理後ガス導出管路63を介して大気中に放出される。
【0028】
<再生処理>
吸着材51による臭気成分の吸着処理量が一定以上となって吸着力が低下した等の理由により吸着材51を再生する必要がある場合には、ガス導入用ダンパ62を閉状態とし、ガス導出用ダンパ65を閉状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を開状態として、排熱を利用して吸着材51を加熱する。これにより、臭気成分を再度吸着可能に吸着材51が再生される。ここで、排熱としては、金属有機構造体が吸着した臭気成分を放出し、且つ金属有機構造体の微細孔が消失しない程度に吸着材51を加熱することができればよく、その温度は、例えば、100~300℃であり、好ましくは150~200℃である。排熱の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、焼却炉及び/又はボイラを備えた廃棄物処理施設で発生した排熱や、廃棄物を乾燥処理等することによって固形燃料(RDF)を製造する廃棄物処理施設で発生した排熱、その他工場等で発生した排熱などが挙げられる。
【0029】
第一実施形態の脱臭装置50Aにおいて、吸着材51は、吸着した臭気成分を比較的低い温度(例えば、150℃程度)で放出可能な金属有機構造体を含んでおり、熱源として容易に確保できる排熱(例えば、200℃程度)を利用して吸着材51を加熱することにより、金属有機構造体が吸着した臭気成分を放出させることができるので、吸着材51を容易に再生することができる。
【0030】
なお、吸着材51が再生される際に当該吸着材51から放出された臭気成分を含んだ臭気成分含有ガスは、誘引送風機64により、処理後ガス導出管63及び臭気成分含有ガス導入管66を介して臭気処理装置70に導入される。そして、臭気処理装置70において、臭気成分を分解又は無臭化する処理が行われる。
【0031】
〔第二実施形態〕
図2は、第二実施形態の脱臭装置50Bを模式的に示すブロック図である。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略し、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明する。
【0032】
図2に示す脱臭装置50Bにおいて、被処理ガス導入管61には、当該被処理ガス導入管61におけるガス導入用ダンパ62と装置本体55とが位置する間の部分から分岐する形態で高温ガス供給管81が配設されている。高温ガス供給管81のガス流れ上流側は、金属有機構造体が吸着した臭気成分を放出させる温度(例えば、150℃程度)にまで吸着材51を加熱可能な高温ガスの供給源に接続されている。高温ガス供給管81の途中には、当該高温ガス供給管81の管路を開閉する高温ガス用ダンパ91が配設されている。
【0033】
<吸着処理>
以上に述べたように構成される脱臭装置50Bにおいては、ガス導入用ダンパ62を開状態とし、ガス導出用ダンパ65を開状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を閉状態とし、高温ガス用ダンパ91を閉状態として、誘引送風機64を作動させると、被処理ガスが被処理ガス導入管61を介して吸着部53に導入される。吸着部53に導入された被処理ガス中の臭気成分は、被処理ガスが吸着部53を通流する際に、金属有機構造体を含む吸着材51によって吸着される。吸着処理がなされた後の吸着処理後ガスは、誘引送風機64により、処理後ガス導出管63を介して大気中に放出される。
【0034】
<再生処理>
吸着材51による臭気成分の吸着処理量が一定以上となって吸着力が低下した等の理由により吸着材51を再生する必要がある場合には、ガス導入用ダンパ62を閉状態とし、ガス導出用ダンパ65を閉状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を開状態とし、高温ガス用ダンパ91を開状態として、高温ガスを高温ガス供給管81及び被処理ガス導入管61を介して吸着部53に通流して吸着材51を加熱する。これにより、臭気成分を再度吸着可能に吸着材51が再生される。ここで、高温ガスとしては、金属有機構造体が吸着した臭気成分を放出させる温度(例えば、150℃程度)にまで吸着材51を加熱することができればよく、特に限定されるものではないが、例えば、焼却炉及び/又はボイラを備えた廃棄物処理施設で発生した排熱や、廃棄物を乾燥処理等することによって固形燃料(RDF)を製造する廃棄物処理施設で発生した排熱、その他工場等で発生した排熱などに由来する熱エネルギーを有するガスが挙げられる。その他、ヒータ、火炎、スチーム、熱風等の熱源により、輻射、伝熱、対流等の加熱方法によって加熱されたガスをここでの高温ガスとして用いることもできる。
【0035】
第二実施形態の脱臭装置50Bにおいて、吸着材51は、吸着した臭気成分を比較的低い温度(例えば、150℃程度)で放出可能な金属有機構造体を含んでおり、比較的低温の熱源に由来する熱エネルギーを有する高温ガスであっても、吸着部53に通流して吸着材51を加熱することにより、金属有機構造体が吸着した臭気成分を放出させることができるので、吸着材51を容易に再生することができる。
【0036】
〔脱臭装置の具体的適用例(1)〕
図3は、廃棄物処理施設1において第一実施形態の脱臭装置50Aが適用された脱臭システム100Aを模式的に示すブロック図である。図3において、廃棄物処理施設1は、都市ごみ、下水汚泥、し尿汚泥等の廃棄物を貯留する廃棄物ピット2と、廃棄物ピット2から送り込まれる廃棄物を焼却処理するストーカ式の焼却炉3とを備えている。焼却炉3での廃棄物の燃焼に伴い発生した排ガスは、煙道(ダクト)を介して焼却炉3の外部へと送り出される。廃棄物処理施設1は、さらに、煙道における排ガス流れ上流側から下流側に向かって順に配設される、ボイラ4、エコノマイザ5、空気予熱器6、減温塔7、バグフィルタ8、誘引送風機9及び煙突10を備えている。
【0037】
焼却炉3から排出された排ガスは、誘引送風機9の誘引作用により、ボイラ4、エコノマイザ5、空気予熱器6、減温塔7及びバグフィルタ8に順に送り込まれる。
【0038】
ボイラ4は、排ガスとの熱交換によって回収した熱を利用して蒸気(水蒸気)を発生させる。エコノマイザ5は、ボイラ4に供給する水を排ガスの余熱を利用して加熱する。空気予熱器6は、焼却炉3に供給される燃焼空気(一次燃焼空気、二次燃焼空気)を、排ガスとの熱交換によって昇温する。減温塔7は、空気予熱器6からの排ガスを、バグフィルタ8での除塵処理に適した所定温度まで冷却する。バグフィルタ8は、排ガスに含まれる飛灰(ダスト)等を除去する。
【0039】
そして、飛灰等が除去された後の除塵排ガスは、誘引送風機9により煙突10を介して外部に排出される。なお、図示による詳細説明は省略するが、焼却炉3及びボイラ4を含む燃焼ボイラ設備において発生させた蒸気は、タービン発電機(図示省略)に供給されて発電に利用される。
【0040】
廃棄物処理施設1において、廃棄物ピット2は、一次燃焼空気供給管11を介して、焼却炉3の一次燃焼室に接続されるとともに、二次燃焼空気供給管12を介して、焼却炉3の二次燃焼室に接続されている。ここで、各空気供給管11,12は、空気予熱器6において排ガスと熱交換可能な形態で配設されている。一次燃焼空気供給管11における廃棄物ピット2と空気予熱器6とが位置する間の部分には、第一押込送風機13が配設されている。同様に、二次燃焼空気供給管12における廃棄物ピット2と空気予熱器6とが位置する間の部分には、第二押込送風機14が配設されている。そして、空気予熱器6と各押込送風機13,14との協働により、昇温された一次燃焼空気が焼却炉3の一次燃焼室に供給されるとともに、昇温された二次燃焼空気が焼却炉3の二次燃焼室に供給される。
【0041】
脱臭システム100Aにおいて、被処理ガス導入管61のガス流れ上流側は、廃棄物ピット2に接続されている。また、臭気成分含有ガス導入管66のガス流れ下流側は、焼却炉3に接続されている。
【0042】
一次燃焼空気供給管11には、当該一次燃焼空気供給管11における焼却炉3と空気予熱器6とが位置する間の部分から分岐する形態で第一高温ガス供給管81が脱臭装置50Aにおける吸着部53との間に配設されている。第一高温ガス供給管81の途中には、当該第一高温ガス供給管81の管路を開閉する第一高温ガス用ダンパ91が配設されている。
【0043】
二次燃焼空気供給管12には、当該二次燃焼空気供給管12における焼却炉3と空気予熱器6とが位置する間の部分から分岐する形態で第二高温ガス供給管82が脱臭装置50Aにおける吸着部53との間に配設されている。第二高温ガス供給管82の途中には、当該第二高温ガス供給管82の管路を開閉する第二高温ガス用ダンパ92が配設されている。
【0044】
バグフィルタ8と誘引送風機9とを接続するダクトには、当該ダクトから分岐する形態で第三高温ガス供給管83が脱臭装置50Aにおける吸着部53との間に配設されている。第三高温ガス供給管83の途中には、当該第三高温ガス供給管83の管路を開閉する第三高温ガス用ダンパ93が配設されている。
【0045】
脱臭装置50Aにおいて、装置本体55は、吸着部53を加熱可能に装着される伝熱ジャケット84をさらに備えている。伝熱ジャケット84には、第一高温ガス供給管81~第三高温ガス供給管83を介して供給される一次燃焼空気、二次燃焼空気及び除塵排ガスが導入・導出されるように第一高温ガス供給管81~第三高温ガス供給管83が接続されている。装置本体55においては、伝熱ジャケット84の内部を一次燃焼空気、二次燃焼空気及び除塵排ガスが通って出ていく間に、一次燃焼空気、二次燃焼空気及び除塵排ガスから伝熱ジャケット84を介して吸着部53に配設された吸着材51に熱が伝達され、吸着材51を加熱するように構成されている。
【0046】
吸着材51を加熱する手段としては、上記の伝熱ジャケット84を用いるものに限定されるものではない。例えば、吸着部53の周りに循環される熱媒体と、第一高温ガス供給管81~第三高温ガス供給管83を介して供給される一次燃焼空気、二次燃焼空気及び除塵排ガスとの間での熱交換によって吸着材51を加熱する構成の熱交換器を用いてもよい。
【0047】
<吸着処理>
以上に述べたように構成される脱臭システム100Aにおいては、廃棄物処理施設1が稼働している場合(焼却炉3が運転している場合)、脱臭装置50Aは運転が停止される。この場合、廃棄物ピット2内における臭気成分や空気等を含む悪臭ガスは、焼却炉3での燃焼用空気(一次燃焼空気、二次燃焼空気)として焼却炉3の炉内に供給され、臭気成分は熱分解される。一方、廃棄物処理施設1が定期点検などによって焼却炉3の運転が停止されている場合、脱臭装置50Aが運転される。この場合、ガス導入用ダンパ62を開状態とし、ガス導出用ダンパ65を開状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を閉状態とし、第一高温ガス用ダンパ91~第三高温ガス用ダンパ93を閉状態として、誘引送風機64を作動させると、誘引送風機64による誘引作用により、廃棄物ピット2内における臭気成分や空気等を含む悪臭ガスが被処理ガスとして被処理ガス導入管61を介して吸着部53に導入される。吸着部53に導入された悪臭ガス中の臭気成分は、悪臭ガスが吸着部53を通流する際に、金属有機構造体を含む吸着材51によって吸着される。吸着処理がなされた後の吸着処理後ガスは、誘引送風機64により、処理後ガス導出管63を介して大気中に放出される。
【0048】
<再生処理>
吸着材51による臭気成分の吸着処理量が一定以上となって吸着力が低下した等の理由により吸着材51を再生する必要がある場合には、廃棄物処理施設1の稼働再開後(焼却炉3の運転再開後)において、ガス導入用ダンパ62を閉状態とし、ガス導出用ダンパ65を閉状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を開状態とし、第一高温ガス用ダンパ91~第三高温ガス用ダンパ93の何れか一つ又は2つ以上を開状態とし、廃棄物処理施設1において発生した排熱に由来する熱エネルギーを有する一次燃焼用空気、二次燃焼用空気及び除塵排ガスの何れか一つ又は2つ以上を用いて吸着材51を加熱する。これにより、臭気成分を再度吸着可能に吸着材51が再生される。
【0049】
脱臭装置50Aにおいて、吸着材51は、吸着した臭気成分を比較的低い温度(例えば、150℃程度)で放出可能な金属有機構造体としてCu系多孔性配位高分子(Cu-PCP)を含んでおり、熱源として容易に確保できる排熱(バグフィルタ8の出口で排ガス温度が200℃程度)を利用して吸着材51を加熱することにより、金属有機構造体が吸着した臭気成分を放出させることができるので、吸着材51を容易に再生することができる。
【0050】
吸着材51が再生される際に当該吸着材51から放出された臭気成分を含んだ臭気成分含有ガスは、誘引送風機64により、処理後ガス導出管63及び臭気成分含有ガス導入管66を介して焼却炉3内に導入される。焼却炉3内に導入された臭気成分含有ガスに含まれる臭気成分は、熱分解される。従って、臭気成分を分解又は無臭化する処理を行うための臭気処理装置70(図1及び2を参照)を別途設ける必要がないという利点がある。
【0051】
〔脱臭装置の具体的適用例(2)〕
図4は、廃棄物処理施設1において第二実施形態の脱臭装置50Bが適用された脱臭システム100Bを模式的に示すブロック図である。脱臭システム100Bにおいて、脱臭システム100Aと同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、脱臭システム100Bに特有の部分を中心に説明することとする。
【0052】
脱臭システム100Bにおいて、一次燃焼空気供給管11には、当該一次燃焼空気供給管11における焼却炉3と空気予熱器6とが位置する間の部分から分岐する形態で第一高温ガス供給管81が被処理ガス導入管61との間に配設されている。二次燃焼空気供給管12には、当該二次燃焼空気供給管12における焼却炉3と空気予熱器6とが位置する間の部分から分岐する形態で第二高温ガス供給管82が被処理ガス導入管61との間に配設されている。バグフィルタ8と誘引送風機9とを接続するダクトには、当該ダクトから分岐する形態で第三高温ガス供給管83が被処理ガス導入管61との間に配設されている。なお、脱臭システム100Bにおける脱臭装置50Bにおいては、脱臭システム100Aにおける脱臭装置50Aにおいて設けられた伝熱ジャケット84は設けられていない。
【0053】
<吸着処理>
以上に述べたように構成される脱臭システム100Bにおいて、廃棄物処理施設1が定期点検などによって焼却炉3の運転が停止されている場合、ガス導入用ダンパ62を開状態とし、ガス導出用ダンパ65を開状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を閉状態とし、第一高温ガス用ダンパ91~第三高温ガス用ダンパ93を閉状態とし、誘引送風機64を作動させると、誘引送風機64による誘引作用により、廃棄物ピット2内における臭気成分や空気等を含む悪臭ガスが被処理ガス導入管61を介して吸着部53に導入される。吸着部53に導入された悪臭ガス中の臭気成分は、悪臭ガスが吸着部53を通流する際に、金属有機構造体を含む吸着材51によって吸着される。吸着処理がなされた後の吸着処理後ガスは、誘引送風機64により、処理後ガス導出管路63を介して大気中に放出される。
【0054】
<再生処理>
吸着材51による臭気成分の吸着処理量が一定以上となって吸着力が低下した等の理由により吸着材51を再生する必要がある場合には、廃棄物処理施設1の稼働再開後(焼却炉3の運転再開後)において、ガス導入用ダンパ62を閉状態とし、ガス導出用ダンパ65を閉状態とし、臭気成分含有ガス用ダンパ67を開状態とし、第一高温ガス用ダンパ91~第三高温ガス用ダンパ93の何れか一つ又は2つ以上を開状態として、廃棄物処理施設1において発生した排熱に由来する熱エネルギーを有する一次燃焼用空気、二次燃焼用空気及び除塵排ガスの何れか一つ又は2つ以上を、被処理ガス導入管61を介して吸着部53に通流して吸着材51を加熱する。これにより、臭気成分を再度吸着可能に吸着材51が再生される。
【0055】
脱臭装置50Bにおいて、吸着材51は、吸着した臭気成分を比較的低い温度で放出可能な金属有機構造体としてCu系多孔性配位高分子(Cu-PCP)を含んでおり、一次燃焼用空気、二次燃焼用空気及び除塵排ガスが比較的低温の熱源である排熱に由来する熱エネルギーを有するガスであっても、吸着部53に通流して吸着材51を加熱することにより、金属有機構造体が吸着した臭気成分を放出させることができるので、吸着材51を容易に再生することができる。
【0056】
以上、本発明の脱臭装置及びその具体的適用について、複数の実施形態及び複数の具体的適用例に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態及び上記具体的適用例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の脱臭装置は、例えば、火力発電施設、バイオマス発電施設等の発電施設、製鉄所、石油精製施設、水素製造施設等の生産施設、廃棄物焼却処理施設、廃棄物固形燃料(RDF)製造施設等の廃棄物処理施設などにおいて、臭気成分を吸着材で吸着し、施設で発した排熱を利用して吸着材を再生する用途に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 廃棄物処理施設
3 焼却炉
4 ボイラ
50A,50B 脱臭装置
51 吸着材
53 吸着部
66 臭気成分含有ガス導入管
図1
図2
図3
図4