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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171706
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02G3/04 081
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088859
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 岳秀
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD05
(57)【要約】
【課題】電線の振動による端子の摩耗をより抑制できる端子付き電線を提供する。
【解決手段】導体および絶縁層を有する電線と、前記電線の二つの端部のうち少なくとも一方の端部に取り付けられた端子と、前記電線の外周に取り付けられたカバー部材と、を備え、前記電線の全長L1に対する前記カバー部材の長さL2の比率L2/L1が0.5以上である、端子付き電線。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体および絶縁層を有する電線と、
前記電線の二つの端部のうち少なくとも一方の端部に取り付けられた端子と、
前記電線の外周に取り付けられたカバー部材と、を備え、
前記電線の全長L1に対する前記カバー部材の長さL2の比率L2/L1が0.5以上である、
端子付き電線。
【請求項2】
前記比率L2/L1が0.8以下である、請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記電線の固有振動数f1に対する前記電線と前記カバー部材とからなる組物の固有振動数f2の比率f2/f1が1.8以上であり、
前記固有振動数f1は、前記電線の質量M1および前記電線の剛性K1で表される√(K1/M1)であり、
前記固有振動数f2は、前記組物の質量M2および前記組物の剛性K2で表される√(K2/M2)である、請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記カバー部材の線膨張係数が8×10-5/K以下である、請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記カバー部材の構成材料がアルミニウムまたはアルミニウム合金である、請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記カバー部材は、
前記電線との間に空間を構成するパイプ状の本体部と、
前記本体部の両端部を前記電線に固定する固定部と、を備える、請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記電線の全長を二等分する中間位置に対して対称となるように配置されている、請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項8】
前記導体の断面積が30mm以上である、請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二つの機器の間の電気配線に利用される端子付き電線が開示されている。端子付き電線は、導体の外周を絶縁体で被覆した電線の両端に端子が取り付けられている。端子付き電線の各端子が機器に備わる端子に接続された状態で電線が振動すると、共振によって端子同士の接続箇所を節とした定在波をなして電線が振動する。この電線の振動により、端子同士の接続箇所に荷重が加わり、各端子が摩耗するおそれがある。
【0003】
特許文献1に開示される端子付き電線は、電線の外周に取り付けられた剛性変調部を備える。剛性変調部は、電線の長手方向に沿った単位長さあたりの剛性が他の部位と異なるように構成されている。剛性変調部を備える端子付き電線では、剛性変調部に節を有した状態で電線が振動し、共振時の電線の振幅が低減され、端子同士の接続箇所に加えられる荷重が低減される。剛性変調部は、絶縁体の一部を除去したり、絶縁体の外周に別の絶縁体層をさらに取り付けたり、電線の他の部位と絶縁体の肉厚を異ならせて押出成形したりすることで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-203520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁体の一部を除去して剛性変調部を構成すると、電線の絶縁性の低下を招くおそれがある。絶縁体の外周に別の絶縁層をさらに取り付けて剛性変調部を構成すると、剛性変調部が重りとなって作用する場合がある。剛性変調部が重りとなると、共振時の電線の振幅が増幅され、端子同士の接続箇所に大きな荷重が加えられるおそれがある。電線の他の部位と絶縁体の肉厚を異ならせて押出成形して剛性変調部を構成する場合、押出成形の調整が煩雑であり生産性に劣る。
【0006】
本開示の目的の一つは、電線の振動による端子の摩耗をより抑制できる端子付き電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の端子付き電線は、導体および絶縁層を有する電線と、前記電線の二つの端部のうち少なくとも一方の端部に取り付けられた端子と、前記電線の外周に取り付けられたカバー部材と、を備え、前記電線の全長L1に対する前記カバー部材の長さL2の比率L2/L1が0.5以上である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の端子付き電線は、電線の振動による端子の摩耗をより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1の端子付き電線の構成を示す概略図である。
図2図2は、図1のII-II断面図である。
図3図3は、実施形態2の端子付き電線の断面図である。
図4図4は、端子付き電線における端子に加わる荷重の測定方法の説明図である。
図5図5は、端子付き電線における端子に加わる荷重と振動の周波数との関係を示すグラフである。
図6図6は、端子付き電線における端子に加わる荷重のピークとカバー部材の長さとの関係を示すグラフである。
図7図7は、端子付き電線における電線とカバー部材とからなる組物の固有振動数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の実施形態に係る端子付き電線は、導体および絶縁層を有する電線と、前記電線の二つの端部のうち少なくとも一方の端部に取り付けられた端子と、前記電線の外周に取り付けられたカバー部材と、を備え、前記電線の全長L1に対する前記カバー部材の長さL2の比率L2/L1が0.5以上である。
【0012】
上記カバー部材を有する端子付き電線は、電線の振動による端子の摩耗をより抑制できる。上記比率L2/L1が0.5以上であると、カバー部材が重りとして作用することなく、共振時の電線の振幅を低減する機能を発揮する。共振時の電線の振幅が低減されると、端子付き電線の端子と機器に備わる端子との接続箇所に加えられる荷重が低減される。上記荷重が低減されると、上記接続箇所での各端子の摩耗が抑制される。
【0013】
上記カバー部材を有する端子付き電線では、電線の軸に沿った途中で絶縁層が除去されず、電線の絶縁性が低下しない。上記カバー部材を有する端子付き電線では、絶縁層の厚さを一定にすることができ、導体の外周に絶縁層を押出成形する際の調整が容易である。
【0014】
(2)上記(1)に記載の端子付き電線において、前記比率L2/L1が0.8以下であってもよい。
【0015】
上記比率L2/L1が0.8以下であると、電線とカバー部材とからなる組物の可撓性が低下し難い。曲げ易い端子付き電線は配線し易い。
【0016】
(3)上記(1)または上記(2)に記載の端子付き電線において、前記電線の固有振動数f1に対する前記電線と前記カバー部材とからなる組物の固有振動数f2の比率f2/f1が1.8以上であってもよい。前記固有振動数f1は、前記電線の質量M1および前記電線の剛性K1で表される√(K1/M1)である。前記固有振動数f2は、前記組物の質量M2および前記組物の剛性K2で表される√(K2/M2)である。
【0017】
電線が共振する際の固有振動数は、電線とカバー部材とからなる組物の剛性に大きく依存する。上記比率f2/f1が1.8以上であると、上記組物の剛性が高く、共振時の電線の振幅が低減され易い。
【0018】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の端子付き電線において、前記カバー部材の線膨張係数が8×10-5/K以下であってもよい。
【0019】
カバー部材の線膨張係数が8×10-5/K以下であると、電線が使用時に発熱したとしても、カバー部材が電線の発熱でも変形し難い。カバー部材が変形し難いことで、端子付き電線の使用時であっても、電線とカバー部材とからなる組物の剛性が変化し難い。カバー部材が変形し難いことで、カバー部材は共振時の電線の振幅を低減する機能を良好に発揮できる。
【0020】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかに記載の端子付き電線において、前記カバー部材の構成材料がアルミニウムまたはアルミニウム合金であってもよい。
【0021】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるカバー部材は、熱伝導率が高く放熱性に優れる。このようなカバー部材は電線の発熱でも変形し難く、電線とカバー部材とからなる組物の剛性が変化し難い。カバー部材が変形し難いことで、端子付き電線の使用時であっても、共振時の電線の振幅を低減する機能を良好に発揮できる。
【0022】
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかに記載の端子付き電線において、前記カバー部材は、前記電線との間に空間を構成するパイプ状の本体部と、前記本体部の両端部を前記電線に固定する固定部と、を備えてもよい。
【0023】
カバー部材がパイプ状の本体部を備えることで、電線の外周にカバー部材を取り付け易い。カバー部材が固定部を備えることで、カバー部材が電線の所定箇所に位置決めされる。
【0024】
(7)上記(1)から上記(6)のいずれかに記載の端子付き電線において、前記カバー部材は、前記電線の全長を二等分する中間位置に対して対称となるように配置されていてもよい。
【0025】
カバー部材が電線の中間位置に対して対称となるように配置されていると、共振時の電線の振幅が低減され易い。
【0026】
(8)上記(1)から上記(7)のいずれかに記載の端子付き電線において、前記導体の断面積が30mm以上であってもよい。
【0027】
導体の断面積が大きいほど、端子付き電線の端子と機器に備わる端子との接続箇所に加えられる荷重が大きくなる。上記カバー部材を有する端子付き電線であれば、導体の断面積が30mm以上であっても、共振時の電線の振幅を大きく低減でき、上記接続箇所に加えられる荷重を低減することができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<実施形態1>
図1および図2を参照して、実施形態1の端子付き電線1を説明する。端子付き電線1は、電線2と端子3とカバー部材4とを備える。カバー部材4は、電線2の外周に取り付けられている。実施形態1の端子付き電線1の特徴の一つは、カバー部材4が所定の長さを有する点にある。
【0030】
≪電線≫
電線2は、図2に示すように、導体21と絶縁層22とを有する。
【0031】
導体21は、導電性に優れる金属からなる線材で構成されている。上記金属は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金である。導体21は、1本の線材からなる単線であってもよいし、2本以上の線材が撚り合わされた撚線であってもよいし、複数の撚線がさらに撚り合わされた撚線であってもよい。導体21は、撚線を圧縮成形した圧縮導体であってもよい。撚線からなる導体21は、同じ断面積を有する単線からなる導体21よりも曲げ易い。
【0032】
導体21の断面形状は、例えば円形である。導体21の断面形状は、導体21を導体21の軸と直交する方向に切断した断面の形状である。導体21が撚線からなる場合、導体21の断面形状は、撚線を包括した輪郭線の形状である。
【0033】
本例の導体21は、2本以上の線材が撚り合わされた複数の撚線がさらに撚り合わされた撚線からなる。図2に示す導体21は、分かり易いように、撚線を包括した輪郭線で示されている。
【0034】
導体21の断面積は、用途に応じて適宜選択できる。導体21の断面積は、導体21を導体21の軸と直交する方向に切断した断面の面積である。導体21の断面積は、例えば30mm以上である。導体21の断面積は、50mm以上、または70mm以上であってもよい。導体21の断面積が大きいほど、大電流を流すことができる。導体21の断面積が大きいほど、電線2の振動に伴う後述する端子同士の接続箇所に加えられる荷重が大きくなる。導体21の断面積が大きいほど、後述するカバー部材4によって上記荷重を低減する効果が顕著に発揮される。導体21の断面積は、例えば30mm以上95mm以下、50mm以上95mm以下、または70mm以上95mm以下である。
【0035】
絶縁層22は、導体21の外周に設けられた被覆である。絶縁層22は、絶縁被覆電線の絶縁被覆として通常用いられる絶縁性有機高分子組成物で構成されている。絶縁性有機高分子組成物は、絶縁性有機高分子に必要に応じて各種の添加剤を配合したものからなる。絶縁性有機高分子は、例えば、絶縁性樹脂または絶縁性ゴムである。絶縁性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、または塩化ビニル樹脂(PVC)である。絶縁性ゴムは、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレン-プロピレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、またはイソプレンゴムである。絶縁性有機高分子は、上記に列記した樹脂およびゴムから選択される1種で構成されてもよいし、2種以上が組み合わされて構成されてもよい。絶縁性有機高分子に必要に応じて配合される添加剤は、例えば、難燃剤、架橋剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、銅害防止剤、または顔料である。
【0036】
絶縁層22の厚さは、所定の絶縁特性を満たす範囲で適宜選択される。絶縁層22の厚さは、例えば、電線2の軸に沿った途中で除去されることなく、電線2の軸に沿って一定である。電線2の二つの端部のうち少なくとも一方の端部では、絶縁層22が剥離されて導体21の一部が露出されている。本例では、電線2の両端部において、絶縁層22が剥離されて導体21の一部が露出されている。
【0037】
≪端子≫
端子3は、図1に示すように、電線2の二つの端部のうち少なくとも一方の端部において露出された導体21に取り付けられている。本例では、電線2の各端部において露出された導体21にそれぞれ端子3が取り付けられている。端子3は、図示しないハウジング内に収容されている。電線2の端末において、ハウジング内に端子3が収容されたものがコネクタである。このコネクタは、機器7に設けられた図示しないコネクタに嵌め合わされる。機器7に設けられたコネクタも、ハウジング内に端子が収容されている。コネクタ同士が嵌め合わされることにより、端子付き電線1の端子3と機器7に備わる図示しない端子とが接続される。機器7は、例えば車載機器である。車載機器は、例えばインバータである。
【0038】
図1に示すように、二つの機器7,7の間に端子付き電線1が配線された状態では、端子付き電線1の端子3と機器7に備わる図示しない端子との接続箇所が、端子付き電線1における固定端となる。この状態で電線2が振動すると、共振によって上記固定端を節とした定在波をなして電線2が振動する。この際、電線2は、略正弦波状にたわんで振動し、電線2の中央部に大きな振幅A2を有する。図1では、正弦波の一例を二点鎖線で示している。電線2が共振すると、上記接続箇所に荷重が加わる。
【0039】
≪カバー部材≫
カバー部材4は、電線2の外周に取り付けられ、振動による電線2の共振時の振幅A2を低減する機能を有する。
【0040】
〔長さ〕
電線2の全長L1に対するカバー部材4の長さL2の比率L2/L1は、図1に示すように、0.5以上である。電線2の全長L1は、電線2における端子3との接続箇所間の長さである。電線2の端部は、端子3の内部に配置される部分を有する。電線2の全長L1には、電線2のうち端子3の内部に配置される部分の長さは含まれない。カバー部材4の長さL2は、カバー部材4の二つの端部間の長さである。本例では、カバー部材4の長さL2は、図1に示す本体部41の長さと二つの固定部42の各長さとの合計長さである。上記比率L2/L1が0.5以上であると、カバー部材4が重りとして作用することなく、共振時の電線2の振幅A2を低減する機能を発揮する。共振時の電線2の振幅A2が低減されると、端子付き電線1の端子3と機器7に備わる図示しない端子との接続箇所に加えられる荷重が低減される。上記荷重が低減されると、上記接続箇所での各端子3の摩耗が抑制される。上記比率L2/L1が大きいほど、共振時の電線2の振幅A2を低減し易い。上記比率L2/L1は、0.55以上、0.6以上、0.65以上、または0.7以上であってもよい。
【0041】
上記比率L2/L1は、例えば0.8以下である。上記比率L2/L1が0.8以下であると、電線2とカバー部材4とからなる組物の可撓性が低下し難い。曲げ易い端子付き電線1は配線し易い。上記比率L2/L1は、0.75以下であってもよい。
【0042】
上記比率L2/L1は、0.5以上0.8以下、0.5以上0.75以下、0.55以上0.75以下、0.6以上0.75以下、0.65以上0.75以下、または0.7以上0.75以下であってもよい。
【0043】
〔材質〕
カバー部材4は、例えば、電線2の固有振動数f1に対する電線2とカバー部材4とからなる組物の固有振動数f2の比率f2/f1が1.8以上となるように構成されている。電線2の固有振動数f1は、電線2の質量M1および電線2の剛性K1で表される√(K1/M1)で求められる。式√(K1/M1)は、剛性K1を質量M1で除した値の二乗根である。剛性K1は、電線2を三点曲げ試験することで求められる。上記組物の固有振動数f2は、組物の質量M2および組物の剛性K2で表される√(K2/M2)で求められる。式√(K2/M2)は、剛性K2を質量M2で除した値の二乗根である。質量M2は、電線2の質量とカバー部材4の質量との合計質量である。剛性K2は、上記組物を三点曲げ試験することで求められる。質量M1および質量M2の単位はkg(キログラム)である。剛性K1および剛性K2の単位はN/m(ニュートン/メートル)である。固有振動数f1および固有振動数f2の単位はHz(ヘルツ)である。
【0044】
電線2が共振する際の固有振動数は、上記組物の剛性に大きく依存する。上記比率f2/f1が1.8以上であると、上記組物の剛性が高く、共振時の電線2の振幅A2が低減され易い。カバー部材4は、例えば、上記比率f2/f1が1.8以上を満たす質量および剛性を有する。
【0045】
上記比率f2/f1が大きいほど、共振時の電線2の振幅A2を低減し易い。上記比率f2/f1は、2.0以上、2.5以上、2.8以上、3.0以上、または3.5以上であってもよい。上記比率f2/f1は、例えば5.0以下である。上記比率f2/f1が5.0以下であると、上記組物の可撓性が低下し難い。曲げ易い端子付き電線1は配線し易い。上記比率f2/f1は、4.7以下であってもよい。
【0046】
上記比率f2/f1は、1.8以上5.0以下、1.8以上4.7以下、2.0以上4.7以下、2.5以上4.7以下、2.8以上4.7以下、3.0以上4.7以下、または3.5以上4.7以下であってもよい。
【0047】
カバー部材4の線膨張係数は、例えば8×10-5/K以下である。電線2は、使用時に発熱し得る。カバー部材4の線膨張係数が8×10-5/K以下であると、電線2が使用時に発熱したとしても、カバー部材4が電線2の発熱でも変形し難い。カバー部材4が変形し難いことで、端子付き電線1の使用時であっても、電線2とカバー部材4とからなる組物の剛性が変化し難い。カバー部材4が変形し難いことで、カバー部材4は共振時の電線2の振幅A2を低減する機能を良好に発揮できる。カバー部材4の線膨張係数は、7×10-5/K以下、5×10-5/K以下、または3×10-5/K以下である。
【0048】
カバー部材4の構成材料は、例えば、金属または樹脂である。金属は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるカバー部材4は、熱伝導率が高く放熱性に優れる。このようなカバー部材4は電線2の発熱でも変形し難く、電線2とカバー部材4とからなる組物の剛性が変化し難い。カバー部材4が変形し難いことで、端子付き電線1の使用時であっても、共振時の電線2の振幅A2を低減する機能を良好に発揮できる。アルミニウム合金の添加元素は、例えばマンガン、ケイ素、鉄、銅、または亜鉛である。添加元素は、例えば上記元素群の1種以上を含む。樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)である。PVCからなるカバー部材4は、電線2の発熱の影響を受け難く、端子付き電線1の使用時であっても、共振時の電線2の振幅A2を低減する機能を発揮できる。
【0049】
〔形状〕
カバー部材4は、例えば、パイプで構成されている。パイプで構成されたカバー部材4は、電線2の外周へ取り付け易い。本例のカバー部材4は、図1に示すように、本体部41と固定部42とを備える。本体部41は、電線2との間に空間43(図2)を構成するパイプである。本体部41の内径は、例えば電線2の外径に対して1割大きい。本体部41と電線2との間に空間43があると、本体部41が電線2の発熱の影響を受け難く、端子付き電線1の使用時であっても、共振時の電線2の振幅A2を低減する機能を発揮し易い。固定部42は、本体部41の各端部に設けられており、本体部41の両端部を電線2に固定する部材である。カバー部材4が固定部42を備えることで、本体部41が電線2との間に空間43を構成するパイプであっても、カバー部材4を電線2の所定箇所に位置決めすることができる。固定部42は、例えば、テープ材を電線2と本体部41との境界およびその近傍に巻き付けることで構成される。
【0050】
本体部41と固定部42とは、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。本体部41および固定部42の双方が金属で構成されていてもよい。本体部41が金属で構成され、固定部42が樹脂で構成されていてもよい。
【0051】
空間43には、図示しない放熱材が充填されていてもよい。空間43に放熱材が充填されていると、電線2が使用時に発熱した際、放熱材によってカバー部材4の外部に放熱することができる。放熱材は、例えば放熱ジェル、または発泡性の放熱シートである。空間43はなくてもよい。言い換えると、本体部41の内周面と電線2の外周面とが接触していてもよい。この場合、本体部41は、樋状の分割片を組み合わせてパイプとした構成を有してもよい。本体部41は、断面形状がC字状となるように軸周りの一部が切り欠かれた構成を有してもよい。本体部41の内周面と電線2の外周面とが接触することで、本体部41が電線2の所定箇所に位置決めされるのであれば、固定部42はなくてもよい。
【0052】
パイプで構成されたカバー部材4の厚さは、例えば、1mm以上2mm以下である。パイプで構成されたカバー部材4の厚さが1mm以上であれば、カバー部材4の剛性が確保され易く、共振時の電線2の振幅A2が低減され易い。パイプで構成されたカバー部材4の厚さが2mm以下であれば、電線2とカバー部材4とからなる組物の可撓性が低下し難い。曲げ易い端子付き電線1は配線し易い。パイプで構成されたカバー部材4の厚さは、1.5mm以上2mm以下であってもよい。
【0053】
〔配置箇所〕
カバー部材4は、例えば、電線2の全長L1を二等分する中間位置に対して対称となるように配置されている。上述したように、電線2は、端子付き電線1の端子3と機器7に備わる図示しない端子との接続箇所を節として、略正弦波状にたわんで振動し、電線2の中央部に大きな振幅A2を有する。カバー部材4が電線2の中間位置に対して対称となるように配置されていると、共振時の電線2の振幅A2が低減され易い。カバー部材4は、電線2の中間位置を含んでいれば、電線2の二つの端部のいずれかに寄って配置されていてもよい。
【0054】
<実施形態2>
図3を参照して、実施形態2の端子付き電線を説明する。実施形態2の端子付き電線は、実施形態1の端子付き電線1に対して、カバー部材4の形状が異なる。実施形態2の端子付き電線は、カバー部材4の形状を除いて実施形態1の端子付き電線1と同じ構成を備える。図3は、図2と同じ位置における電線2およびカバー部材4を示す断面図である。
【0055】
本例のカバー部材4は、テープ材45で構成されている。テープ材45は、電線2の外周に巻き付けられている。テープ材45は、例えば、電線2の外周に多層に巻き付けられている。テープ材45の巻き方は、突き合わせ巻きまたは重ね巻きである。突き合わせ巻きでは、隣り合うターンの側縁同士が突き合わされた状態でテープ材45が巻き付けられる。重ね巻きでは、隣り合うターン同士が部分的に重なるようにテープ材45が巻き付けられる。重ね巻きは、例えばハーフラップ巻きである。ハーフラップ巻きでは、隣り合うターン同士がテープ材45の幅の略半分が重なるようにテープ材45が巻き付けられる。
【0056】
テープ材45で構成されたカバー部材4の長さL2は、上述した比率L2/L1が0.5以上を満たす。テープ材45で構成されたカバー部材4は、例えば、上述した固有振動数√(K/M)が1.8以上を満たすように構成されている。
【0057】
テープ材45の構成材料は、例えば、金属または樹脂である。テープ材45が多層に巻き付けられている場合、全ての層が同じ構成材料であってもよいし、異なる構成材料の層を含んでいてもよい。
【0058】
テープ材45で構成されたカバー部材4の厚さは、例えば、0.1mm以上0.3mm以下である。テープ材45で構成されたカバー部材4の厚さが0.1mm以上であれば、カバー部材4の剛性が確保され易く、共振時の電線2の振幅A2が低減され易い。テープ材45で構成されたカバー部材4の厚さが0.3mm以下であれば、電線2とカバー部材4とからなる組物の可撓性が低下し難い。曲げ易い端子付き電線1は配線し易い。テープ材45で構成されたカバー部材4の厚さは、0.1mm以上0.2mm以下、または0.13mm以上0.2mm以下であってもよい。
【0059】
<その他>
実施形態1の端子付き電線1および実施形態2の端子付き電線は、図1で示すように単独で用いられてもよいし、図示しないものの複数本の電線2が束ねられたまたは撚り合わされたワイヤーハーネスを構成する電線として用いられてもよい。ワイヤーハーネスの場合、カバー部材4は、複数本の電線2を束ねた外周に取り付けられる。ワイヤーハーネスの場合、カバー部材4は、複数本の電線2の束全体の共振時の振幅A2を低減する。
【0060】
[試験例]
電線の外周にカバー部材が取り付けられた端子付き電線を二つの機器の間に配線し、電線を振動させたときに、端子付き電線の端子と機器に備わる端子との接続箇所に加えられる荷重を調べた。
【0061】
<試験例1>
試験例1では、端子付き電線のカバー部材の長さが異なる複数の試験体を作製し、カバー部材の長さと上記接続箇所に加えられる荷重との関係を調べた。
【0062】
≪試験体≫
カバー部材を備えない試験体1-10、および互いに長さが異なるカバー部材を備える試験体1-1から試験体1-5を作製した。試験体1-1から試験体1-5および試験体1-10の電線および端子は同じ構成を有する。試験体1-1から試験体1-5のカバー部材は、長さを除いて同じ構成を有する。
【0063】
電線は、導体と絶縁層とを有する。導体は、直径0.32mmの線材が19本撚り合わされた撚線がさらに32本撚り合わされた撚線で構成されている。導体の断面積は約50mmである。導体の材質は銅である。絶縁層の材質はシリコーンである。この電線の両端部では、絶縁層が剥離されて導体の一部が露出されている。この露出された導体に端子が取り付けられている。
【0064】
カバー部材は、パイプ状の本体部とテープ材を巻き付けて構成された固定部とを備える。カバー部材は、図2に示すカバー部材4に相当する。本体部の材質はA3003のアルミニウム合金である。本体部の内径は、電線の外径に対して1割大きい。本体部と電線との間には空間が設けられている。本体部の厚さは1.5mmである。固定部は、テープ材を電線と本体部との境界およびその近傍に巻き付けることで構成されている。テープ材の材質はPVCである。カバー部材の長さは、本体部の長さと二つの固定部の各長さとの合計長さである。カバー部材は、電線の全長を二等分する中間位置に対して対称となるように配置されている。
【0065】
試験体1-1から試験体1-5は、カバー部材の長さL2が異なる。つまり、試験体1-1から試験体1-5は、電線の全長L1に対するカバー部材の長さL2の比率L2/L1が異なる。試験体1-1の比率L2/L1は0.250である。試験体1-2の比率L2/L1は0.375である。試験体1-3の比率L2/L1は0.500である。試験体1-4の比率L2/L1は0.625である。試験体1-5の比率L2/L1は0.750である。試験体1-1から試験体1-5は、順にカバー部材の長さL2が長くなる。
【0066】
≪端子同士の接続箇所に加わる荷重≫
試験体1-1から試験体1-5および試験体1-10の端子付き電線をそれぞれ二つの機器の間に配線し、端子付き電線の端子と機器に備わる端子とを接続した。端子付き電線の端子と機器に備わる端子との接続箇所に加えられる荷重を測定するにあたり、図4に示すように、土台81と二つの支持体82とを用意した。図4に示す端子付き電線1は、図1に示す端子付き電線1に相当する。二つの支持体82は、土台81上に間隔をあけて配置されている。各支持体82は、図1に示す機器7を模擬した部材であり、端子付き電線1の端子3に嵌め合わされる図示しない端子を有する。二つの支持体82の間隔は、端子付き電線1の電線2が略水平を保つように設定されている。端子付き電線1は、土台81に非接触である。土台81は、上下に振動できるように構成されている。本例の土台81は、図示しない加振機の上に載置されており、加振機によって上下に振動自在である。二つの支持体82は、土台81の振動に伴って上下に振動する。電線2も、土台81の振動に伴って上下に振動する。電線2が振動しているときに上記接続箇所に加わる荷重を荷重計9で測定した。
【0067】
図5は、試験体1-1から試験体1-5および試験体1-10について、周波数と上記接続箇所に加わる荷重との関係を示す。図5では、上記接続箇所に加わる荷重は、試験体1-10の荷重のピークを1として、そのピークに対する相対値で示されている。図5では、横軸が周波数であり、縦軸が荷重の相対値である。図5では、試験体1-10が実線、試験体1-1が破線、試験体1-2が点線、試験体1-3が二点鎖線、試験体1-4が一点鎖線、試験体1-5が太い点線で示されている。
【0068】
図6は、試験体1-1から試験体1-5および試験体1-10について、比率L2/L1と上記接続箇所に加わる荷重のピークとの関係を示す。図6では、上記接続箇所に加わる荷重のピークは、試験体1-10の荷重のピークを1として、そのピークに対する相対値で示されている。図6では、横軸が比率L2/L1であり、縦軸が荷重のピークの相対値である。横軸は、試験体名で示されている。横軸は、左から右に向かって比率L2/L1が大きくなっている。
【0069】
図5および図6に示されるように、試験体1-3、試験体1-4、および試験体1-5の荷重のピークは、試験体1-10よりも低い。言い換えると、カバー部材を備える試験体1-1から試験体1-5のうち、比率L2/L1が0.5以上である試験体1-3、試験体1-4、および試験体1-5は、カバー部材を備えない試験体1-10に比較して、荷重のピークが低減されている。
【0070】
図5に示されるように、試験体1-3、試験体1-4、および試験体1-5の荷重のピークは、試験体1-10よりも高い周波数にシフトしている。試験体1-3、試験体1-4、および試験体1-5では、比率L2/L1が0.5以上であることで、電線とカバー部材とからなる組物の剛性が上がり、共振時の電線の振幅が低減されたと考えられる。この振幅の低減により、高い周波数にシフトしたと考えられる。
【0071】
図5および図6に示されるように、比率L2/L1が0.5以上であることで、共振時の電線の振幅が低減され、上記接続箇所に加わる荷重が低減される。比率L2/L1が大きいほど、共振時の電線の振幅の低減率が大きく、上記接続箇所に加わる荷重の低減率が大きくなる。なお、比率L2/L1が0.8以下であれば、電線とカバー部材とからなる組物の可撓性が低下し難く、端子付き電線を配線し易いと期待できる。
【0072】
図5および図6に示されるように、試験体1-1の荷重のピークは、試験体1-10よりも高い。試験体1-1は、カバー部材を備えるものの、比率L2/L1が小さ過ぎる。そのため、試験体1-1では、カバー部材が重りとなって作用し、共振時の電線の振幅が増幅され、上記接続箇所に大きな荷重が加えられたと考えられる。試験体1-2は、カバー部材を備えるものの、比率L2/L1が小さい。そのため、試験体1-2では、カバー部材が共振時の電線の振幅を低減する機能を発揮しなかったと考えられる。
【0073】
<試験例2>
試験例1で用いた試験体1-1から試験体1-5の各々において、電線の固有振動数f1に対する電線とカバー部材とからなる組物の固有振動数f2の比率f2/f1を求めた。また、試験例2では、カバー部材の構成が異なる試験体2-1から試験体2-5および試験体3-1から試験体3-5も作製し、試験体1-1から試験体1-5の上記比率f2/f1と比較した。
【0074】
≪試験体≫
試験体1-1から試験体1-5、試験体2-1から試験体2-5、および試験体3-1から試験体3-5の各電線および端子は、同じ構成を有する。試験体1-1から試験体1-5、試験体2-1から試験体2-5、および試験体3-1から試験体3-5は、カバー部材の構成が異なる。試験体1-1から試験体1-5は、試験例1と同じである。
【0075】
試験体2-1から試験体2-5のカバー部材は、テープ材で構成されている。テープ材は、電線の外周に巻き付けられている。カバー部材は、図3に示すカバー部材4に相当する。テープ材の材質は塩化ビニル樹脂(PVC)である。テープ材は、電線の外周に2層となるようにハーフラップ巻きされている。テープ材の厚さは0.13mmである。テープ材で構成されたカバー部材の厚さは、0.26mmである。テープ材は、電線の全長を二等分する中間位置に対して対称となるように巻き付けられている。つまり、カバー部材は、電線の全長を二等分する中間位置に対して対称となるように配置されている。
【0076】
試験体2-1から試験体2-5のカバー部材は、長さを除いて同じ構成を有する。試験体2-1から試験体2-5は、カバー部材の長さL2が異なる。つまり、試験体2-1から試験体2-5は、電線の全長L1に対するカバー部材の長さL2の比率L2/L1が異なる。試験体2-1の比率L2/L1は0.250である。試験体2-2の比率L2/L1は0.375である。試験体2-3の比率L2/L1は0.500である。試験体2-4の比率L2/L1は0.625である。試験体2-5の比率L2/L1は0.750である。試験体2-1から試験体2-5は、順にカバー部材の長さL2が長くなる。
【0077】
試験体3-1から試験体3-5のカバー部材は、コルゲートチューブで構成されている。コルゲートチューブの材質はポリプロピレン樹脂(PP)である。コルゲートチューブの厚さは0.27mmである。コルゲートチューブからなるカバー部材は、電線の全長を二等分する中間位置に対して対称となるように配置されている。
【0078】
試験体3-1から試験体3-5のカバー部材は、長さを除いて同じ構成を有する。試験体3-1から試験体3-5は、カバー部材の長さL2が異なる。つまり、試験体3-1から試験体3-5は、電線の全長L1に対するカバー部材の長さL2の比率L2/L1が異なる。試験体3-1の比率L2/L1は0.250である。試験体3-2の比率L2/L1は0.375である。試験体3-3の比率L2/L1は0.500である。試験体3-4の比率L2/L1は0.625である。試験体3-5の比率L2/L1は0.750である。試験体3-1から試験体3-5は、順にカバー部材の長さL2が長くなる。
【0079】
≪固有振動数の比率f2/f1≫
電線の固有振動数f1は、試験例1で用いた試験体1-10から求めた。電線の固有振動数f1は、電線の質量M1、および電線の剛性K1を用いて、√(K1/M1)で求められる。質量M1の単位はkg(キログラム)である。剛性K1は、電線を三点曲げ試験することで求められる。剛性K1の単位はN/m(ニュートン/メートル)である。
【0080】
試験体1-1から試験体1-5、試験体2-1から試験体2-5、および試験体3-1から試験体3-5の各端子付き電線における電線とカバー部材とからなる組物の固有振動数f2を求めた。固有振動数f2は、上記組物の質量M2、および上記組物の剛性K2を用いて、√(K2/M2)で求められる。質量M2は、電線の質量とカバー部材の質量との合計質量である。質量M2の単位はkg(キログラム)である。剛性K2は、組物を三点曲げ試験することで求められる。剛性K2の単位はN/m(ニュートン/メートル)である。
【0081】
図7は、試験体1-1から試験体1-5、試験体2-1から試験体2-5、および試験体3-1から試験体3-5について、固有振動数f1に対する固有振動数f2の比率f2/f1を示した棒グラフである。図7では、横軸は試験体名で示されており、縦軸は上記比率f2/f1である。
【0082】
図7に示されるように、上記比率f2/f1は、試験体1-1では1.1、試験体1-2では1.2、試験体1-3では1.8、試験体1-4では2.9、試験体1-5では4.7であった。試験例1において、試験体1-3、試験体1-4、および試験体1-5では、端子付き電線の端子と機器に備わる端子との接続箇所に加えられる荷重が低減された。そうであれば、上記比率f2/f1が1.8以上を満たすようにカバー部材を構成すればよいと考えられる。
【0083】
図7に示されるように、上記比率f2/f1は、試験体2-1では1.4、試験体2-2では1.6、試験体2-3では1.8、試験体2-4では2.0、試験体2-5では2.2であった。この結果から、テープ材でカバー部材を構成しても、上記比率f2/f1が1.8以上を満たせば、上記接続箇所に加えられる荷重が低減されると考えられる。
【0084】
図7に示されるように、上記比率f2/f1は、試験体3-1から試験体3-5のいずれも約1.0であった。試験体3-1から試験体3-5では、カバー部材がPPからなるコルゲートチューブで構成されているため、電線と一緒に振動したと考えられる。
【符号の説明】
【0085】
1 端子付き電線
2 電線
21 導体
22 絶縁層
3 端子
4 カバー部材
41 本体部
42 固定部
43 空間
45 テープ材
7 機器
81 土台
82 支持体
9 荷重計
L1 電線の全長
L2 カバー部材の長さ
A2 振幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7