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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171724
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】スプリングユニット
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/12 20060101AFI20241205BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16F1/12 N
B21D37/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088886
(22)【出願日】2023-05-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000175582
【氏名又は名称】三協オイルレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100126147
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 成年
(72)【発明者】
【氏名】三島 啓雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛章
【テーマコード(参考)】
3J059
4E050
【Fターム(参考)】
3J059AE01
3J059BA01
3J059BB01
3J059BD01
3J059CA01
3J059CB02
3J059DA46
3J059GA50
4E050DA03
4E050DA07
4E050DA09
(57)【要約】
【課題】 動作安定性が向上したスプリングユニットを提供する。
【解決手段】 金型への固定部と、固定部に固定されたシャフトと、シャフトが挿入され、固定部に当接した一端部と、他端部と、を有し、シャフトの軸方向に伸縮する、コイルばねと、コイルばねの他端部の端面に当接した当接部と、コイルばねの他端部の外周側面に当接して、軸方向以外の動きを規制する規制部と、シャフトが挿入され、当接部を貫通した貫通穴と、を有するワッシャーと、を有し、ワッシャーの貫通穴の直径は、コイルばねの内径より大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型への固定部と、
前記固定部に一端を固定されたシャフトと、
前記シャフトが挿入され、前記固定部に当接した一端部と、他端部と、を有し、前記シャフトの軸方向に伸縮する、コイルばねと、
前記コイルばねの他端部の端面に当接した当接部と、前記コイルばねの他端部の外周側面に当接して、前記軸方向以外の動きを規制するための規制部と、前記シャフトが挿入され、前記当接部を貫通した貫通穴と、を有するワッシャーと、
を有し、
前記ワッシャーの貫通穴の直径は、前記コイルばねの内径より大きい、
スプリングユニット。
【請求項2】
前記ワッシャーの規制部の高さは、前記コイルばねの座巻部の長さ以下である、請求項1に記載のスプリングユニット。
【請求項3】
前記ワッシャーの規制部は、前記当接部に設けられたくぼみの内壁である、請求項1のスプリングユニット。
【請求項4】
前記ワッシャーの規制部は、前記当接部に設けられたボルト、又は、ピンである、請求項1に記載のスプリングユニット。
【請求項5】
前記ワッシャーの本体形状は、楕円板状、又は、直方体状である請求項1に記載のスプリングユニット。
【請求項6】
前記シャフトは、表面に固体潤滑剤を含む樹脂コーティング層を有する、請求項1に記載のスプリングユニット。
【請求項7】
前記固体潤滑剤は、二硫化モリブデンである、請求項6に記載のスプリングユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリングユニットは、プレス加工機の金型に装着され、被加工物に対して孔あけや切断をする際、加工具を支持して加工方向に移動するスライドカムを加工前の初期位置に戻すため等の用途に用いられている。
【0003】
特許文献1には、復帰機構をカムスライドに対して設置できて復帰力をカムスライドに付与でき、部品点数の削減を図り得るカム装置が記載されている。しかしながら、特許文献1では、スプリングユニットのシャフトとワッシャー間の接触を避けることが出来無い。
【0004】
特許文献2には、動作時におけるコイルばねのロッドへの接触を回避できて、摩耗粉、切削粉の発生をなくし得るカム装置が記載されている。しかしながら、特許文献2では、スプリングユニットのシャフトとワッシャー間の接触を避けることが出来無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-314149号公報
【特許文献2】特開2010-279987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シャフトとワッシャーが接触した状態で摺動すると、ワッシャーにスラスト荷重が発生した際にワッシャーが偏摩耗する問題が生じていた。本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、ワッシャーの偏摩耗を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスプリングユニットは、金型への固定部と、固定部に固定されたシャフトと、シャフトが挿入され、固定部に当接した一端部と、他端部と、を有し、シャフトの軸方向に伸縮する、コイルばねと、コイルばねの他端部の端面に当接した当接部と、コイルばねの他端部の外周側面に当接して、軸方向以外の動きを規制する規制部と、シャフトが挿入され、当接部を貫通した貫通穴と、を有するワッシャーと、を有し、ワッシャーの貫通穴の直径は、コイルばねの内径より大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワッシャーの偏摩耗を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のスプリングユニットの図である。
図2】実施形態のワッシャーの図である。
図3】ワッシャーとシャフト、コイルばねのクリアランスを示した図である。
図4】評価試験装置の図である。
図5】実施形態のワッシャーの他の例の図である。
図6】実施形態のワッシャーの更に他の例の図である。
図7】実施形態のワッシャーの更に他の例の図である。
図8】実施形態のスプリングユニットの他の例の図である。
図9】実施形態のスプリングユニットの更に他の例の図である。
図10】一般的なカムスライダの戻し構造を示す図である。
図11】従来品のスプリングユニットの図である。
図12】ワッシャーの初期状態の写真と、偏摩耗が発生した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態を、図に示す例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこの実施形態に限定されない。
【0011】
(構造)
図1は、実施形態のスプリングユニット1の図である。図1に示すように、スプリングユニット1は、ブロック2,コイルばね3,シャフト4,ワッシャー5,及び、アングル6を有する。
【0012】
ブロック2は、長方体状の部材である。ブロック2は、金型(下型D)に固定される。ブロック2は、金型取付面2a,貫通穴2b,及び、座繰り穴2cを有する。ブロック2は、金型取付面2aに対して鉛直方向の第1面に貫通穴2bを有する。ブロック2は、金型取付面2a及びプレス加工方向Aに対して平行とした第2面に座繰り穴2cを有する。ブロック2は、座繰り穴2cにボルトを挿入し金型(下型D)に固定される。ブロック2の貫通穴2bに、シャフト4の突起部4aを挿入する。これにより、ブロック2は、シャフト4をプレス加工方向Aに対して平行に支える。ブロック2は、シャフト4の突起部4aを貫通穴2bに圧入して、シャフト4を固定するが、溶接等により固定してもよいし、ねじ止めしてもよい。
【0013】
コイルばね3は、内径部3aと外径部3bと両端に座巻部3cを有する。コイルばね3は、弾性力によりカムスライダ(不図示)を押し戻す。コイルばね3の内径部3aに、シャフト4を挿入する。コイルばね3の内径部3aの直径dciは、ワッシャー5の貫通穴の直径dwより小さい。
【0014】
コイルばね3の内径部3aの表面に二硫化モリブデン、もしくは、ポリテトラフルオロエチレン及び黒鉛のうち少なくとも一つを含む、エポキシ樹脂、もしくは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂もしくは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂をコーティングしてもよい。コイルばね3の座巻部3cとは、コイルばね3の端面からばねとして見掛け上作用しない部分までを指す。座巻部3cは、コイルばね3の両端各1巻とする。この場合、座巻部3cの長さは、コイルばね3の1巻の長さとなる。コイルばねの種類によって、座巻数は異なる(例えば、0.5巻、2巻など)。座巻部3cは、コイルばねの両端を伸長、もしく圧縮方向に対し鉛直に切断し端部を平面にする。座巻部3の両端を平面にすることでコイルばねに圧縮荷重がかかった場合に、平面でない場合と比較してより荷重を受ける事ができ、コイルばね3を取付けた時の安定性を向上させる。
【0015】
シャフト4は、円柱状の部材である。シャフト4は、突起部4a、外周面4b、ねじ穴4c、第1端面4d、及び、第2端面4fを有する。突起部4aをブロック2の貫通穴2bに挿入し、第2端面4fをアングル6の第1端面6cに接触させ、アングル6にボルトにより固定することで、シャフト4は、プレス加工方向Aに対して平行に金型に固定される。
【0016】
シャフト4の軸線Cは、プレス加工方向Aに対して平行である。外周面4bは、軸線Cを中心とした円筒面である。外周面4bに二硫化モリブデン、もしくは、ポリテトラフルオロエチレン及び黒鉛のうち少なくとも一つを含む、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、もしくは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂をコーティングしてもよい。
【0017】
図2は、実施形態のワッシャーの図である。図2に示すように、ワッシャー5は、円筒状の部材である。ワッシャー5は、コイルばね3の圧縮及び伸長を支持する。ワッシャー5は、外周面5a、第1端面5b、第2端面5c、円筒状のくぼみ部5d,くぼみ部5dの受容面5e、くぼみ5dの内周面5f、及び、貫通穴5gを有する。
【0018】
ワッシャー5の第1端面5bは、円筒状のくぼみ5dを有する。くぼみ部5dは、底部である受容面5e(当接部)と、壁部である内周面5f(規制部)を有する。受容面5eと第1端面5bの距離(すなわち規制部の高さ)を、コイルばね3の座巻部3cの長さ以下(すなわち、規制部の高さは、コイルばねの座巻部の長さ以下)である。これにより、コイルばねの圧縮、伸長時にばねとして作用する部分が圧縮、伸長しても、座巻部は、ばねとして見掛け上作用しないため、内周面5fの摩耗を抑えることができる。受容面5eと貫通穴5gとの軸線は同心である。受容面5eは、コイルばね3の一端部を支持する。内周面5fは、コイルばね3の座巻部3cの外径部3bと所定のクリアランスを有して対向し、ばねの圧縮、伸長時(伸縮時)に当接することにより、シャフト4の軸線Cに対する、ワッシャー5のプレス加工方向Aに対する鉛直方向への動きを規制する。なお、この所定のクリアランスは、組み立て時に、コイルばね3の一端を内周面5fに挿入するためのものであって、クリアランスは0に近いことが好ましい。
【0019】
貫通穴5gは、第1端面5b及び第2端面5cを貫通する穴である。貫通穴5gの直径dwは、シャフト4の直径dsより大きい。貫通穴5gの直径dwは、コイルばね3の内径の直径dciより大きい。ワッシャー5は、貫通穴5gに挿入したシャフト4の軸線Cに平行に前後(図1中のA、B方向)に動作する。
【0020】
図1に示すように、アングル6は、L字形状の部材である。アングル6は、貫通穴6a、6bを有する。貫通穴6aは、下型Dへの固定用の貫通穴である。貫通穴6bは、シャフト4の固定用の貫通穴である。
【0021】
部品点数を増加することなく、ワッシャーとシャフトの摩耗を抑制するために、実施形態のスプリングユニット1は、ワッシャー5の貫通穴5gとシャフト4とが接触しない構造を有する。
【0022】
スプリングユニット1に使用するコイルばね3は、金属のワイヤーを巻いた形状を有する。コイルばねの形状の変形時に、コイルばねは、圧縮、伸長方向以外の別方向へと変形する性質がある。
【0023】
コイルばねの別方向への変形した荷重が、ワッシャーの貫通穴とシャフトの外周面の接触におけるスラスト荷重となる。スラスト荷重がかかった状態で周期的に摺動すると、ワッシャーの(貫通穴の)内周面にフレッチング摩耗を生じる場合がある。ワッシャーの貫通穴の内周面に樹脂コートした軸受を用いる場合でも、同じようにスラスト荷重によって偏摩耗が生じる場合がある。
【0024】
図11は、従来品を示す図である。ワッシャー5は、コイルばね3とシャフト4の接触を回避するためのブッシュ7を有する。ブッシュ7がない場合には、ワッシャー5の内径にグリース留め溝または固体潤滑剤収容溝を設ける。このように、従来品は、シャフト4とワッシャー5の接触を前提としている。しかしながら、ブッシュ7がある場合には、部品点数が増加する。一方、ブッシュ7がない場合には、グリースや固体潤滑剤の潤滑膜が消失すると、ワッシャーが偏摩耗することがある。
【0025】
図12は、従来品に組み付けたワッシャーの画像である。(a)がワッシャーの初期状態、(b)が偏摩耗が発生した後のワッシャーを示す。ワッシャーの貫通穴の形状が、初期状態の円から偏摩耗により楕円になっている。
【0026】
実施形態のスプリングユニット1は、コイルばね3が別方向に変形してもワッシャーの貫通穴5gがシャフト4に接触しないための、ワッシャー5とシャフト4、及び、シャフト4とコイルばね3のクリアランスの関係を有する。
【0027】
図3は、実施形態のワッシャー5とシャフト4、及び、シャフト4とコイルばね3のクリアランスの関係を示した図である。ワッシャー5の貫通穴5gの直径dwはコイルばね3の内径部3aの直径dciより大きい。これにより、コイルばね3の内径部3aの直径dciとシャフト4の外周部4bの直径dsとの差は、ワッシャー5の貫通穴5gの直径dwとシャフト4の外周部4bの直径dsとの差より小さい(すなわち、ワッシャー5の貫通穴5gの直径dwは、コイルばね3の内径dciより大きい)。
【0028】
スプリングユニット1のプレス方向A及び戻し方向Bへの動作時には、コイルばね3の内径部3aがシャフト4の外周面4bに接触し、コイルばね3の軸線Cに対する鉛直方向の移動を制限する。
【0029】
コイルばね3の軸線Cに対する鉛直方向の移動が制限されるため、ワッシャー5は、ワッシャー5の内周面5fにより、ワッシャー5の軸線Cに対する鉛直方向の移動も制限される。
【0030】
ワッシャー5の貫通穴5gの直径dwはコイルばね3の内径部3aの直径dciより大きいため、ワッシャー5の貫通穴5gがシャフト4の外周面4bに接触することなく、プレス加工方向A及び戻し方向Bの動作を行う。
【0031】
ワッシャー5とシャフト4との接触をなくした場合には、コイルばね3の内径部3aの一部とシャフト4が接触する場合があり、その場合の対策として、シャフト4の表面に固体潤滑剤を含む樹脂をコーティングしてもよい。シャフト4の表面にグリースなど粘度の高い潤滑油を付着させてもよい。
【0032】
(評価例)
図4は、評価試験の模式図である。以下、実施形態のスプリングユニットの評価例について説明する。なお、本発明はこの評価例に限定されるものではない。
【0033】
測定条件と使用装置は以下である。
使用装置:試験専用治具を3台製作。内訳は1台目ばね径50mm 2台目ばね径40mm 3台目ばね径40mm
装置時間:ストローク時間0.18~0.22sec
時間条件:クランクプレス機ラムストローク1100mm,SPM20,吊カム加工角0~50°下置カム加工角0~30°で使用されると想定し算出
打回数:100万回
【0034】
表1に、評価試験の結果を示す。実施例1は実施形態のスプリングユニット(コーティングなし)、実施例2は実施形態のスプリングユニットのシャフト表面に二硫化モリブデンを10%含むエポキシ樹脂をスプレーコーティングしたスプリングユニット、比較例3は従来品のワッシャーとシャフトが接触する構造のスプリングユニットである。
【0035】
実施例1のワッシャーの内径は変化なし、シャフトの外形はφ0.09mm小さくなっていた。実施例2のワッシャーの内径は変化なし、シャフトの外形はφ0.02mm小さくなっていた。比較例3のワッシャーの内径はφ0.71mm拡大して楕円になっており、シャフトの外形はφ0.09mm小さくなっていた。よって、実施例のスプリングユニットの効果が証明された。
【0036】
【表1】
【0037】
図5は、実施形態の他の例の図である。図5に示すように、ワッシャー5は、楕円形状の部材(楕円板)である。ワッシャー5は、コイルばね3の圧縮及び伸長を支持する。ワッシャー5は、外周面5a、第1端面5b、第2端面5c、円筒状のくぼみ部5d,くぼみ部5dの受容面5e、くぼみ5dの内周面5f、及び、貫通穴5gを有する。
【0038】
ワッシャー5の第1端面5bは、円筒状のくぼみ5dを有する。くぼみ部5dは、底部である受容面5e(当接部)と、壁部である内周面5f(規制部)を有する。受容面5eと第1端面5bの距離(すなわち規制部の高さ)は、コイルばね3の座巻部3cの長さ以下(すなわち、規制部の高さは、コイルばねの座巻部の長さ以下)である。受容面5eと貫通穴5gとの軸線は同心である。受容面5eは、コイルばね3の一端部を支持する。内周面5fは、コイルばね3の座巻部3cの外径部3bと所定のクリアランスを有して対向して、シャフト4の軸線Cに対するワッシャー5の鉛直方向への動きを規制する。なお、この所定のクリアランスは、組み立て時に、コイルばね3の一端を内周面5fに挿入するためのものであって、クリアランスは0に近いことが好ましい。
【0039】
貫通穴5gは、第1端面5b及び第2端面5cを貫通する穴である。貫通穴5gの直径dwは、シャフト4の直径dsより大きい。貫通穴5gの直径dwは、コイルばね3の内径の直径dciより大きい。ワッシャー5は、貫通穴5gに挿入したシャフト4の軸線Cに対し水平方向に前後に動作する。
【0040】
ワッシャー5は、楕円形状の部材のため、ワッシャー5をシャフト4に組付けると自重により、シャフト4の軸線Cに対し鉛直方向の下方向へ移動する。これにより、楕円形状のワッシャー5は、シャフト4の軸線Cに対する鉛直方向への動きを、円筒状と比較してより制限する。
【0041】
図6は、実施形態の他の例の図である。図6に示すように、ワッシャー5は、長方形状の部材(直方体)である。ワッシャー5は、コイルばね3の圧縮及び伸長を支持する。ワッシャー5は、外周面5a、第1端面5b、第2端面5c、円筒状のくぼみ部5d,くぼみ部5dの受容面5e、くぼみ5dの内周面5f、及び、貫通穴5gを有する。
【0042】
ワッシャー5の第1端面5bは、円筒状のくぼみ5dを有する。くぼみ部5dは、底部である受容面5e(当接部)と、壁部である内周面5f(規制部)を有する。受容面5eと第1端面5bの距離(すなわち規制部の高さ)は、コイルばね3の座巻部3cの長さ以下(すなわち、規制部の高さは、コイルばねの座巻部の長さ以下)である。受容面5eと貫通穴5gとの軸線は同心である。受容面5eは、コイルばね3の一端部を支持する。内周面5fは、コイルばね3の外径部3bと所定のクリアランスを有して対向して、シャフト4の軸線Cに対するワッシャー5の鉛直方向への動きを規制できる。なお、この所定のクリアランスは、組み立て時に、コイルばね3の一端を内周面5fに挿入するためのものであって、クリアランスは0に近いことが好ましい。
【0043】
貫通穴5gは、第1端面5b及び第2端面5cを貫通する穴である。貫通穴5gの直径dwは、シャフト4の直径dsより大きい。貫通穴5gの直径dwは、コイルばね3の内径の直径dciより大きい。ワッシャー5は、貫通穴5gに挿入したシャフト4の軸線Cに対し水平方向に前後に動作する。
【0044】
ワッシャー5は長方形状の部材のため、ワッシャー5をシャフト4に組付けると自重によりワッシャー5はシャフト4の軸線Cに対し鉛直方向の下方向へ移動する。これによりワッシャー5はシャフト4の軸線Cに対する鉛直方向への動きを、円筒状と比較してより制限する。
【0045】
ワッシャー5は長方形状の部材のため、取り外して平面に置く場合、第1端面5b及び第2端面5c、外周面5aのいずれの面でも平面同士の接触となるため、円筒状もしくは楕円状と比較して、ワッシャー5が転がり移動することがない。
【0046】
図7は、実施形態の他の例の図である。図7に示すように、ワッシャー5は、円筒状の部材である。ワッシャー5は、コイルばね3の圧縮及び伸長を支持する。ワッシャー5は、外周面5a、第1端面5b、第2端面5c、貫通穴5g、ボルト、またはノックピン5hを有する。
【0047】
ワッシャー5の第1端面5b(当接部)は、コイルばね3の一端部を支持する。貫通穴5gは、第1端面5b及び第2端面5cを貫通する穴である。貫通穴5gの直径dwは、シャフト4の直径dsより大きい。貫通穴5gの直径dwは、コイルばね3の内径の直径dciより大きい。ワッシャー5は、貫通穴5gに挿入したシャフト4の軸線Cに対し水平方向に前後に動作する。
【0048】
ワッシャー5は、第1端面5b(当接部)に、ボルトまたはノックピン5h(規制部)を複数組付ける。ボルトまたはノックピン5h(規制部)とコイルばね3の外径部3bの接触により、ワッシャー5はシャフト4の軸線Cに対する鉛直方向への動きを規制する。ボルトまたはノックピン5h(規制部)の突出した高さは、コイルばね3の座巻部3cの長さ以下(すなわち、規制部の高さは、コイルばねの座巻部の長さ以下)である。ボルトまたはノックピン5hは、コイルばね3の座巻部3cの外径部3bと所定のクリアランスを有して対向し、シャフト4の軸線Cに対する、ワッシャー5のプレス加工方向Aに対する鉛直方向への動きを規制する。なお、この所定のクリアランスは、組み立て時に、コイルばね3の一端をノックピン5h間に挿入するためのものであって、クリアランスは0に近いことが好ましい。
【0049】
図8は、実施形態の他の例の図である。なお、図1と共通する部分については、説明を省略する。図8に示すように、スプリングユニット1は、コイルばね3,シャフト4,ワッシャー5,アングル6を有する。
【0050】
上型もしくは下型7に取付面7aを設ける。取付面7aには、シャフト4の第1端面4d、及びコイルばねの座巻部3cが接触する。取付面7aには圧入して固定するための固定穴、もしくは、ねじ部7bを設ける。圧入して固定するための固定穴、もしくはねじ部7bにシャフト4の突起部4aを組付け、シャフト4をプレス方向Aに対して平行に金型に固定する。
【0051】
上型もしくは下型7の取付面7aおよび圧入して固定するための固定穴、もしくは、ねじ部7bを設けることでブロック2が不要となり、部品点数の削減とコストの削減につながる。(すなわち、ブロック2等の固定部は金型と別体であってもよいし、一体であってもよい。)
【0052】
図9は、実施形態の他の例の図である。なお、図1と共通する部分については、説明を省略する。図9に示すように、スプリングユニット1は、コイルばね3,シャフト4,ワッシャー5を有する。
【0053】
シャフト4は、円筒状の部材である。シャフト4は、突起部4a、外周面4b、ねじ穴4c、第1端面4d、つば部4fを有する。つば部4fは外周面4bに対し鉛直方向に設けた第2端面4gと、第2端面4gに対して水平方向に設けた第3端面4iと、第2端面4gと第3端面4iをつなぐ外周面4hからなる。
【0054】
ワッシャー5は、円筒状の部材である。ワッシャー5は、コイルばね3の圧縮及び伸長を支持する。ワッシャー5は、外周面5a、第1端面5b、第2端面5c、円筒状のくぼみ部5d,くぼみ部5dの受容面5e、くぼみ5dの内周面5f、及び、貫通穴5gを有する。
【0055】
シャフト4につば部4fを設けることで、ワッシャー5がシャフト4の軸線Cに対し水平方向に前後に動作する際、つば部4fの第1端面4gとワッシャー5の第2端面5cが接触するため、つば部4fがワッシャー5の抜け止めとして機能し、アングル6が不要となり、部品点数の削減とコストの削減につながる。
【0056】
(適用例)
図10は、一般的なカムスライダの戻し構造を示す図である。ピアス加工方向A及び戻し方向Bに移動可能なカムスライダ1は、前面にパンチ等の工具が取り付けられる取付面2,後方部に傾斜面3を有する。カムドライバ4の下降方向Cへの移動により、カムドライバ4の傾斜面5とカムスライダ1の傾斜面3が接触し、カムドライバ4の更なる下降方向Cへの移動によりカムスライダ1はピアス加工方向Aに移動する。ワークへのピアス加工後は、カムドライバ4の上昇方向Dへの移動により、カムスライダ1は戻し方向Bに移動する。
【0057】
スプリングユニットは、カムスライダ1の戻し方向Bへの移動に使用される。カムスライダ1がピアス加工向Aに移動する際は、カムスライダ1の下部に設けたカムスライダ二股部6がワッシャー7に接触し、ワッシャー7をピアス加工方向Aに移動してコイルばね8を圧縮する。カムスライダ1のワークへのピアス加工後は、コイルばね8はカムドライバ4の上昇方向Dへの移動に伴い伸長し、戻し方向Bへの弾性伸長力をカムスライダ1の二股部6を介してカムスライダ1に伝達し、カムスライダ1を初期位置に復帰する。
【0058】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1:スプリングユニット、2:ブロック、3:コイルばね、4:シャフト、5:ワッシャー、6:アングル
図1
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図12