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  • 特開-空調システム、及び蓄冷方法 図1
  • 特開-空調システム、及び蓄冷方法 図2
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  • 特開-空調システム、及び蓄冷方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171729
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】空調システム、及び蓄冷方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/875 20180101AFI20241205BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20241205BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F24F11/875
F24F11/74
F24F5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088895
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 聡宏
(72)【発明者】
【氏名】長田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】成田 政杜
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌芳
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB09
3L260BA04
3L260BA45
3L260FB60
3L260FC07
3L260FC08
(57)【要約】
【課題】多くの建物で運用可能であり、効果的に蓄冷を実施することができる空調システムを提供すること。
【解決手段】空調システムは、部屋の室内と床下空間を連通する、床部材に形成された開口部と、前記開口部に配置されたファンと、を有する複数の給排気部材と、前記床下空間を挟んで前記床部材と対向するスラブと、前記部屋の室内と外部とを仕切る壁部に配置され、外気を前記部屋の室内に流入可能な通気部と、前記ファンの動作を制御する制御部と、を備え、前記通気部から外気を前記部屋の室内に流入可能な状態で前記ファンを前記制御部が制御し、前記通気部の近傍に位置する前記開口部を介して前記通気部から流入した外気を前記床下空間に供給し、前記スラブを冷却する、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の室内と床下空間を連通する、床部材に形成された開口部と、前記開口部に配置されたファンと、を有する複数の給排気部材と、
前記床下空間を挟んで前記床部材と対向するスラブと、
前記部屋の室内と外部とを仕切る壁部に配置され、外気を前記部屋の室内に流入可能な通気部と、
前記ファンの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記通気部から外気を前記部屋の室内に流入可能な状態で前記ファンを前記制御部が制御し、前記通気部の近傍に位置する前記開口部を介して前記通気部から流入した外気を前記床下空間に供給し、前記スラブを冷却する、
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記通気部から外気を前記部屋の室内に流入可能な状態で前記ファンを前記制御部が制御し、前記通気部の近傍に位置する前記開口部を介して前記通気部から流入した外気を前記床下空間に供給するとともに、前記通気部の遠方に位置する前記開口部を介して前記床下空間の空気を前記部屋の室内に流入させて、前記スラブを冷却する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記ファンを制御し、夜間の冷涼な外気を前記床下空間に供給し、前記スラブを冷却する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記通気部は、開閉可能な窓である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の空調システム。
【請求項5】
部屋の室内と床下空間を連通する、床部材に形成された開口部と、前記開口部に配置されたファンと、を有する複数の給排気部材と、
前記床下空間を挟んで前記床部材と対向するスラブと、
前記部屋の室内と外部とを仕切る壁部に配置され、外気を前記部屋の室内に流入可能な通気部と、
を備える建物の蓄冷方法であって、
前記通気部から外気を前記部屋の室内に流入可能な状態とし、
前記通気部の近傍に位置する前記開口部を介して前記通気部から流入した外気を前記床下空間に供給し、
前記スラブを冷却する、
ことを特徴とする蓄冷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム、及び蓄冷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の空調システムは、省エネルギーに運用することが求められている。空調システムを省エネルギーに運用する技術として、夜間の冷涼な空気を室内に取り込み蓄冷するナイトパージという技術がある。ナイトパージでは、熱容量の大きい場所に冷涼な空気を導くことにより、効果的な運用を図ることができる。夏期や中間期などの冷房需要がある時期では、ナイトパージを実施することにより、早朝時の空調立ち上げ時や昼間の空調運転時にエネルギーの消費量を低減することができる。
【0003】
特許文献1には、外壁から天井裏を換気する複数の換気扇とシャッターとを有する換気システムが記載されている。この換気システムでは、風向や温度などの気象データに基づいて、適切なタイミングで室内に冷涼な空気を取り込む。
【0004】
特許文献2には、セントラル空調方式と吹抜空間とを活用してナイトパージを実施する空調システムが記載されている。この空調システムでは、吹抜部の最上部に開口を設けることにより、煙突効果によって排気ファン動力の低減を図りつつ、室内に冷涼な空気を取り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/054244号
【特許文献2】特開2017-172886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、外壁にガラリなどの開口部を設ける必要があり、運用可能な建物が制限されるという課題があった。同様に、特許文献2の技術では、煙突効果が機能する規模の吹抜空間が必要であり、運用可能な建物が制限されるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、多くの建物で運用可能であり、効果的に蓄冷を実施することができる空調システム、及び蓄冷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空調システムは、部屋の室内と床下空間を連通する、床部材に形成された開口部と、前記開口部に配置されたファンと、を有する複数の給排気部材と、前記床下空間を挟んで前記床部材と対向するスラブと、前記部屋の室内と外部とを仕切る壁部に配置され、外気を前記部屋の室内に流入可能な通気部と、前記ファンの動作を制御する制御部と、を備え、前記通気部から外気を前記部屋の室内に流入可能な状態で前記ファンを前記制御部が制御し、前記通気部の近傍に位置する前記開口部を介して前記通気部から流入した外気を前記床下空間に供給し、前記スラブを冷却する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る空調システムは、前記制御部は、前記通気部から外気を前記部屋の室内に流入可能な状態で前記ファンを前記制御部が制御し、前記通気部の近傍に位置する前記開口部を介して前記通気部から流入した外気を前記床下空間に供給するとともに、前記通気部の遠方に位置する前記開口部を介して前記床下空間の空気を前記部屋の室内に流入させて、前記スラブを冷却する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る空調システムは、前記制御部は、前記ファンを制御し、夜間の冷涼な外気を前記床下空間に供給し、前記スラブを冷却する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る空調システムは、前記通気部は、開閉可能な窓である、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る蓄冷方法は、部屋の室内と床下空間を連通する、床部材に形成された開口部と、前記開口部に配置されたファンと、を有する複数の給排気部材と、前記床下空間を挟んで前記床部材と対向するスラブと、前記部屋の室内と外部とを仕切る壁部に配置され、外気を前記部屋の室内に流入可能な通気部と、を備える建物の蓄冷方法であって、前記通気部から外気を前記部屋の室内に流入可能な状態とし、前記通気部の近傍に位置する前記開口部を介して前記通気部から流入した外気を前記床下空間に供給し、前記スラブを冷却する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多くの建物で運用可能であり、効果的に蓄冷を実施することができる空調システム、及び蓄冷方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る空調システムの模式図である。
図2図2は、図1に示す空調システムのファン付き給排気部材の別の側面図である。
図3図3は、実施例におけるファンの稼働状況を表す図である。
図4図4は、室内温度の推移を表す図である。
図5図5は、スラブ表面の熱流束の推移を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明に係る空調システム、及び蓄冷方法の実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。本発明は、空調システム、及び蓄冷方法一般に適用することができる。
【0016】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
(実施の形態)
〔空調システムの構成〕
図1に示すように、空調システム50は、室105においてフリーアクセスフロアになっている部屋100内の空調を行うために設けられている。室105は、建物の上下方向のスラブ211、212の間に形成されている。スラブ212は、床下空間130を挟んで床部材112と対向する。即ち、室105の下方には、二重床が設けられている。部屋100に面する床部材112には、部屋100の室105内と床下空間130を連通する開口部としてパーソナル吹出口140が形成されている。パーソナル吹出口140は、部屋100内における使用者の活動エリアに対応する位置に互いに間隔を空けて設けられている。
【0018】
部屋100の室105内と外部とは、壁部115で仕切られている。室105の下部には、床部材112が設けられている。壁部115には、外気を部屋100の室105内に流入可能な通気部として窓125が配置されている。窓125は、開閉可能であり、窓125を開けた状態では、外気が流入可能となり、窓125を閉めた状態では、外気の流入が遮断される。
【0019】
パーソナル吹出口140には、ファン付き給排気部材(給排気部材)150が設けられている。図2に示すように、ファン付き給排気部材150は、ケーシング152と、パーソナル吹出口140に配置されたファン160と、ファン用シャッター162と、を有する。ケーシング152は、床部材112に形成されたパーソナル吹出口140に嵌められ、ビス153等で床部材112に固定されている。
【0020】
ケーシング152の上部には、蓋部材154が設けられている。蓋部材154の少なくとも上下方向でケーシング152と重なる部分には、上下方向に蓋部材154を貫通する通風孔156が形成されている。
【0021】
ケーシング152の下部は、ファン160の平面視での直径等に合わせて、上部よりも縮径している。ただし、ケーシング152の下部が上部よりも縮径していない構成であってもよい。ケーシング152の下部は、ビス159等でケーシング152の上部に固定されている。ファン160の中心軸部は、ケーシング152の底面に固定されている。ファン160の羽根部は、中心軸部から径方向に拡がっている。即ち、ファン160は、ケーシング152の底面の下方に配置されている。ケーシング152の下部の側壁及び底壁には、貫通孔163が形成されている。ファン160は、例えば平面視での直径9cm程の小口径ファンであってもよいが、特に限定されない。ファン160は、電気ケーブル等によって部屋100内の電源に接続されている。
【0022】
ファン用シャッター162は、ファン160の上方に、例えば床部材112に沿って互いに間隔をあけて配置された複数のフィン168からなる。複数のフィン168は、ファン160が設けられているケーシング152の下部に対して開閉可能である。複数のフィン168は開閉時に回動するので、フィン168が上下方向に対してなす角度によってファン160から上方に吹き出す空気のうちケーシング152の上部及びケーシング152の上部から通風孔156を通って部屋100に供給される空気の量が調節される。複数のフィン168の開閉によって、ケーシング152の下部内の空間とファン用シャッター162よりも上方の空間とが連通するか、遮断されるかが変わる。ファン160の停止時にファン用シャッター162が閉じていることによって、床下空間130から部屋100への空気漏れが生じない。そのため、空調システム50における蓄熱性が高まる。ファン付き給排気部材150が複数のフィン168を備える構成では、複数のフィン168が風向調整機能を有するので、通風孔156がフィン168の鉛直方向に沿って形成されている。このことによって、ファン160から吹き出す空気の指向性が高められる。
【0023】
ファン付き給排気部材150のファン160は、正回転状態と逆回転状態の何れの回転状態であっても作動可能に構成されている。なお、何れの回転状態においてもファン用シャッター162は開いた状態になっている。ファン160の正回転時には、床下空間130内の空気がファン160に吸引され、パーソナル吹出口140から部屋100内に供給される。一方、ファン160の逆回転時には、部屋100内の空気がパーソナル吹出口140を通ってファン160に吸引され、床下空間130内に供給される。逆回転状態のファン160は、正回転状態のファン160の回転方向とは平面視で逆の方向に回転する。
【0024】
ファン付き給排気部材150は、各種信号線によって、渡り配線で通信ネットワークに接続されている。ファン160のモーター部分は、ケーブルによって、制御部250に接続されている。制御部250は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等で構成されている。制御部250は、ファン付き給排気部材150のファン160の動作を制御する。
【0025】
以上説明した空調システム50によれば、多くの建物で運用可能であり、効果的に蓄冷を実施することができる。具体的には、空調システム50は、外壁にガラリなどの開口部を設ける必要がなく、煙突効果が機能する規模の吹抜空間も必要とせず、窓125を有する建物であれば運用可能であるため、多くの建物で運用することができる。
【0026】
〔蓄冷方法〕
空調システム50の夜間における蓄冷運転では、窓125を開けた状態でファン160を制御部250が制御し、窓125の近傍に位置するパーソナル吹出口140(例えば、図1の最も右側に位置するパーソナル吹出口140)を介して窓125から流入した夜間の冷涼な外気を床下空間130に供給するとともに、窓125の遠方に位置するパーソナル吹出口140(例えば、図1の最も左側に位置するパーソナル吹出口140)を介して床下空間130の空気を部屋100の室105内に流入させて、スラブ212を冷却する。制御部250は、窓125の近傍に位置するファン160を逆回転させてパーソナル吹出口140を介して窓125から流入した夜間の冷涼な外気を床下空間130に供給するとともに、窓125の遠方に位置するファン160を正回転させてパーソナル吹出口140を介して床下空間130の空気を部屋100の室105内に流入させて、スラブ212を冷却する。なお、窓125を開けるだけでなく、機械的な外気冷房により、通気部が外部の冷涼な空気を部屋100の室105内に流入可能な状態としてもよい。即ち、通気部は、エアコン等の機械的冷房装置であってもよい。
【0027】
空調システム50の昼間における空調運転では、AHU(Air Handling Unit)110から供給された空気が床下空間130に到達し、パーソナル吹出口140から部屋100に供給される。部屋100内に供給された空気は、天井部材及び天井部材とスラブ211との間に設けられた天井裏空間を通じてAHU110によって適宜処理される。
【0028】
空調システム50では、蓄冷運転によって、安価な夜間電力を利用して夜間に熱容量が大きいスラブ212に蓄冷し、昼間の空調運転時にスラブ212からの放熱分だけ熱負荷及び電力にかかるコストを削減できる。また、昼間の熱負荷の低減によって、空調機122の熱源容量を削減し、電気使用に関するコストを削減できる。さらに、床部材112からの放射効果により、空調運転時における快適性が向上する。
【0029】
なお、空調システム50の夜間における蓄冷運転では窓125を開けた状態でファン160を制御部250が制御し、窓125の近傍に位置するパーソナル吹出口140を介して窓125から流入した夜間の冷涼な外気を床下空間130に供給するのみでもよく、この場合にも、スラブ212を冷却することができる。
【0030】
また、ファン160は、正逆回転可能なものではなく、単一方向にのみ回転可能なものであってもよい。この場合、窓125の近傍にパーソナル吹出口140を介して窓125から流入した夜間の冷涼な外気を床下空間130に供給するファン160を配置すればよい。さらに、窓125の遠方にパーソナル吹出口140を介して床下空間130の空気を部屋100の室105内に流入させるファン160を配置してもよい。
【0031】
〔実施例〕
実施例として、空調システム50を用いた蓄冷方法を検証した結果を説明する。実際の建物を用いて、空調システム50が備える複数のファン160を夜間(夜11時30分から翌朝4時30まで)に稼働し、スラブ212に蓄冷することができたか否かを検証した。検証時の平均外気温は7.6℃、平均屋外風速は1.6m/sであった。
【0032】
図3は、実施例におけるファンの稼働状況を表す図である。空調システム50において、部屋100の下方及び上方の全ての窓125を開放し、図3にハッチングにより示すように、下方の窓125の近傍に位置するファン付き給排気部材150のファン160(図3の斜線のハッチング)を逆回転させるとともに、下方の窓125の遠方に位置するファン付き給排気部材150のファン160(図3のドットのハッチング)を正回転させる。なお、下方の窓125からの距離が中間距離に位置するファン付き給排気部材150のファン160(図3のハッチングのなし)は回転させていない。そして、下方の窓125から遠い順に3000mm間隔の計測点A1~A4において、スラブ212の表面温度、スラブ212の表面の熱流束、スラブ212から上方に125mmの計測点(床下空間130内)、床部材112から1100mmの計測点(部屋100内)において温度を計測した。
【0033】
図4は、室内温度の推移を表す図である。ドットのハッチングで示す0:00~4:30が窓125を開放し、ファン付き給排気部材150のファン160を稼働させた時間である。図4の線L1は計測点A3におけるスラブ212の表面の温度、線L2は計測点A3におけるスラブ212から上方に125mmの位置の温度、線L3は計測点A4におけるスラブ212の表面の温度、線L4は計測点A3における床部材112から1100mmの位置の温度、線L5は計測点A4における床部材112から1100mmの位置の温度、線L6は計測点A4におけるスラブ212から上方に125mmの位置の温度をそれぞれ示している。室内の温度は全ての計測点A1~A4において低下し、冷涼な外気が室105内に適切に取り込まれたことが示された。特に、計測点A4においては、線L6に示す床下空間130の温度だけでなく、線L4に示すスラブ212の表面の温度も十分に低下した。すなわち、熱容量が大きいスラブ212に蓄冷できていることが実証された。
【0034】
また、これらの計測をファン付き給排気部材150のファン160をランダムに逆回転させた場合、及び全てのファン付き給排気部材150のファン160を回転させない場合においても実施し、本実施例との比較を行ったが、本実施例において各計測点A1~A4の温度が最も低いことが示され、本実施例により効率的な蓄冷ができたことが示された。
【0035】
図5は、スラブ表面の熱流束の推移を表す図である。ドットのハッチングで示す0:00~4:30が窓125を開放し、ファン付き給排気部材150のファン160を稼働させた時間である。図5の線L11~L14は、それぞれ計測点A1~A4のスラブ212の熱流束を表す。熱流束は、スラブ212から床下空間130への熱流を正として表しており、この値が大きいほど蓄冷量が大きいことを示す。線L11~L14により、全ての計測点において、スラブ212から床下空間130に放熱していることが示され、特に計測点A4では放熱量が大きいことが示された。
【0036】
また、これらの計測をファン付き給排気部材150のファン160をランダムに逆回転させた場合においても実施し、本実施例との比較を行ったが、計測点A1~A3では本実施例により約2倍の蓄冷量が示され、計測点A4では3.5倍の蓄冷量が示された。
【0037】
また、窓125を開放時において、スラブ212の表面熱流束をスラブ212の表面の温度と床下空間130の温度の差で除した平均熱伝達率を算出した。この平均熱伝達率は、床下空間130にどれだけ効率的に冷涼な空気が導入でき、スラブ212の表面の対流を促進できているかを示す総合的な評価指標となる。計測点A4において、平均熱伝達率は、12.09[W/mK]であり、ファン160をランダムに逆回転させた場合の約3倍の値となった。計測点A1~A3においても、平均熱伝達率は、ファン160をランダムに逆回転させた場合の約2倍の値となった。ファン160の稼働率は、ファン160をランダムに逆回転させた場合の方が14%多いため、本実施例において効率的な蓄冷ができたことが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る空調システム、及び蓄冷方法は、建物の空調システム等に有用であり、特に、夜間に蓄冷する空調システム、及び蓄冷方法に適している。
【符号の説明】
【0039】
50 空調システム
130 床下空間
140 パーソナル吹出口
150 ファン付き給排気部材(給排気部材)
160 ファン
図1
図2
図3
図4
図5