(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171732
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】対象組立部材抽出装置および対象組立部材抽出方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01L21/60 321Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088899
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】田井 悠
(57)【要約】
【課題】抽出すべき抽出対象組立部材以外の部材(部品)の影響を受けることなく、導電性ワイヤのみを抽出することが可能な対象組立部材抽出装置及び対象組立部材抽出方法を提供する。
【解決手段】元の高さ情報取得手段と、位置決め手段と、高さ抽出領域設定手段と、復元手段と、残り高さ情報取得手段と、抽出手段とを備える。元の高さ情報取得手段は電子デバイス全体の画像から全体の元の高さ情報画像を得る。位置決め手段は他の組立部材の位置決めを行う。高さ抽出領域設定手段は他の組立部材の高さ抽出領域を設定する。復元手段は高さ抽出領域に基づいて他の組立部材全体の高さ情報画像を求める。残り高さ情報取得手段は元の高さ情報画像から復元画像を引いて残った高さ情報画像を得る。抽出手段は残り高さ情報画像から抽出対象組立部材のみを抽出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス組立体の部材である抽出対象組立部材を他の組立部材から抽出する対象組立部材抽出装置であって、
前記抽出対象組立部材を含む電子デバイス組立体の画像から全体の元の高さ情報画像を得る元の高さ情報取得手段と、
前記他の組立部材の位置決めを行う位置決め手段と、
前記他の組立部材における高さ抽出領域を設定する高さ抽出領域設定手段と、
前記他の組立部材に隣接する補間領域を設定する補間領域設定手段と、
前記他の組立部材に隣接する補間領域の高さ情報画像を求める領域高さ補間手段と、
前記抽出領域設定手段に設定した高さ抽出領域に基づいて求めた他の組立部材の高さ情報画像、及び領域高さ補間手段で求めた補間領域に高さ情報画像からなる復元画像を求める復元手段と、
前記元の高さ情報取得手段にて得られた、他の組立部材を含む元の高さ情報画像から復元手段にて得られた復元画像の高さ情報画像を引いて残った高さ情報画像を得る残り高さ情報取得手段と、
前記残り高さ情報取得手段にて取得した残り高さ情報画像から前記抽出対象組立部材のみを抽出する抽出手段とを備えたことを特徴とする対象組立部材抽出装置。
【請求項2】
他の組立部材の領域及び高さ抽出領域を補正する補正手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の対象組立部材抽出装置。
【請求項3】
前記位置決め手段による位置決めは、全焦点画像又は距離画像を用いることを特徴とする請求項1に記載の対象組立部材抽出装置。
【請求項4】
前記元の高さ情報取得手段による元の高さ情報画像の取得は距離画像を用いることを特徴とする請求項1に記載の対象組立部材抽出装置。
【請求項5】
前記抽出対象組立部材毎に抽出することを特徴とする請求項1に記載の対象組立部材抽出装置。
【請求項6】
複数の前記抽出対象組立部材を一度に抽出することを特徴とする請求項1に記載の対象組立部材抽出装置。
【請求項7】
前記抽出対象組立部材は、導電性部材としての導電性ワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の対象組立部材抽出装置。
【請求項8】
前記他の組立部材は、フレーム、チップ、及びリードの少なくとも一つ以上の部材であることを特徴とする請求項1に記載の対象組立部材抽出装置。
【請求項9】
電子デバイス組立体の部材である抽出対象組立部材を他の組立部材から抽出する対象組立部材抽出方法であって、
前記抽出対象組立部材を含む電子デバイス組立体の画像から全体の元の高さ情報画像を得る元の高さ情報取得工程と、
前記他の組立部材の位置決めを行う位置決め工程と、
前記他の組立部材における高さ抽出領域を設定する高さ抽出領域設定工程と、
前記他の組立部材に隣接する補間領域を設定する補間領域設定工程と、
前記他の組立部材に隣接する補間領域の高さ情報画像を求める領域高さ補間工程と、
前記抽出領域設定工程に設定した高さ抽出領域に基づいて求めた前記他の組立部材の高さ情報画像、及び領域高さ補間工程で求めた補間領域に高さ情報画像からなる復元画像を求める復元工程と、
前記元の高さ情報取得工程にて得られた、前記他の組立部材を含む元の高さ情報画像から復元工程にて得られた復元画像の高さ情報画像を引いて残った高さ情報画像を得る残り高さ情報取得工程と、
前記残り高さ情報取得工程にて取得した残り高さ情報画像から前記抽出対象組立部材のみを抽出する抽出工程とを備えたことを特徴とする対象組立部材抽出方法。
【請求項10】
抽出対象組立部材を複数有し、かつ、補間領域が交差する場合、いずれの他の組立部材の領域の高さ復元画像に設定するかの選択を可能としたことを特徴とする請求項9に記載の対象組立部材抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象組立部材抽出装置および対象組立部材抽出方法に関し、特に、電子デバイス組立体の部材である抽出対象部材を他の組立部材から抽出する対象組立部材抽出装置および対象組立部材抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の電子デバイス組立体(以下、単に電子デバイスと呼ぶ場合がある)の製造工程(ワイヤボンディング工程を含む工程)において、ワイヤボンディング後には、ワイヤに形状品質検査を行う必要がある。ここで、形状品質検査には、例えば、ワイヤの高さや曲がり検査、さらには、ワイヤ間の間隔検査等がある。
【0003】
このワイヤの形状品質検査には、通常、ワイヤの画像を取得することによる外観検査(観察)を行う。この検査を安定して行うためには、画像からワイヤの領域を正しく認識をする必要がある。このため、従来には、ワイヤの領域を認識する方法が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
特許文献1に記載のものは、まず、ワイヤ及び接続面(ワイヤがボンディングされた接続面)の全焦点画像と距離画像を作成する。次に、全焦点画像から接続面領域を特定し、距離画像の高さ情報から、ワイヤ領域と、ワイヤ以外の領域とを分離する。そして、距離画像におけるワイヤ領域を全焦点画像に対応させて、全焦点画像におけるワイヤ領域を特定する。これによって、全焦点画像のワイヤ領域のうち、検出対象となるワイヤの、一方の接続面領域と他方の接続面領域とを繋ぐワイヤ領域を抽出するものである。
【0005】
特許文献1では、ワイヤ1本につき始点と終点の2つの領域を設定する必要があり、ワイヤの本数が多い場合、その設定に時間を要することになり、さらには、ワイヤの抽出も1本1本行う必要があり、全体の抽出時間も大となる。このため、生産性に劣る検査となっている。
【0006】
そこで、特許文献2に記載のように、導電性ワイヤが複数あっても、全導電性ワイヤを一度に抽出することができる導電性ワイヤ抽出装置および導電性ワイヤ抽出方法が提案された。
【0007】
この特許文献2に記載のものは、元の高さ情報取得手段と、位置決め手段と、高さ抽出領域設定手段と、復元手段と、残り高さ情報取得手段と、抽出手段とを備える。元の高さ情報取得手段は電子デバイス全体の画像から全体の元の高さ情報を得る。位置決め手段は導電性ワイヤ被接続部位の位置決めを行う。高さ抽出領域設定手段は導電性ワイヤ被接続部位の高さ抽出領域を設定する。復元手段は高さ抽出領域に基づいて導電性ワイヤ被接続部位全体の高さ情報画像を求める。残り高さ情報取得手段は元の高さ情報から復元画像を引いて残った高さ情報を得る。抽出手段は残り高さ情報から前記導電性ワイヤのみを抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-157720号公報
【特許文献2】特開2022-72964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2では、ワイヤの下方に異物が存在した場合、ワイヤに異物等で構成されるノイズが含まれることになり、正確なワイヤ抽出が行えない場合ある。これは、ノイズのようなランダムな不定形の画像(距離画像)の断面プロファイルを考慮していないため生じることになる。
【0010】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、異物に影響を受けることなく安定して抽出対象組立体(例えば、導電性ワイヤ等の導電性部材)を抽出することができる対象組立部材抽出装置および対象組立部材抽出方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象組立部材抽出装置は、電子デバイス組立体の部材である抽出対象組立部材を他の組立部材から抽出する対象組立部材抽出装置であって、前記抽出対象組立部材を含む電子デバイス組立体の画像から全体の元の高さ情報画像を得る元の高さ情報取得手段と、前記他の組立部材の位置決めを行う位置決め手段と、前記他の組立部材における高さ抽出領域を設定する高さ抽出領域設定手段と、前記他の組立部材に隣接する補間領域を設定する補間領域設定手段と、前記他の組立部材に隣接する補間領域の高さ情報画像を求める領域高さ補間手段と、前記抽出領域設定手段に設定した高さ抽出領域に基づいて求めた他の組立部材の高さ情報画像、及び領域高さ補間手段で求めた補間領域に高さ情報画像からなる復元画像を求める復元手段と、前記元の高さ情報取得手段にて得られた、他の組立部材を含む元の高さ情報画像から復元手段にて得られた復元画像の高さ情報画像を引いて残った高さ情報画像を得る残り高さ情報取得手段と、前記残り高さ情報取得手段にて取得した残り高さ情報画像から前記抽出対象組立部材のみを抽出する抽出手段とを備えたものである。
【0012】
本発明の対象組立部材抽出装置によれば、元の高さ情報取得手段によって、抽出対象組立部材を含む電子デバイス組立体全体の画像から全体の元の高さ情報画像を得ることができる。位置決め手段によって他の組立部材の位置決めを行うことができる。また、高さ抽出領域設定手段にて、他の組立部材の高さ抽出領域を設定することができる。補間領域設定手段にて他の組立部材に隣接する補間領域を設定することができ、領域高さ補間手段にて、補間領域の高さ情報画像を求めることができる。復元手段にて、抽出領域設定手段に設定した高さ抽出領域に基づいて求めた他の組立部材の高さ情報画像、及び領域高さ補間手段で求めた補間領域に高さ情報画像からなる復元画像を求めることができる。残り高さ情報取得手段にて、元の高さ情報取得手段にて得られた元の高さ情報画像から、復元手段にて得られた復元画像を引いて、残った高さ情報画像を得ることができ、抽出手段にて、残り高さ情報画像から前記抽出対象組立部材のみを抽出することができる。この構成によれば、残り高さ情報画像には、異物(正規の他の組立部材以外の他の物)が存在していても、異物の画像のデータが含まれないものとできる。
【0013】
このため、本発明の対象組立部材抽出装置では、電子デバイス組立に異物等が存在していない場合、抽出対象組立部材が複数あっても、全抽出対象組立部材を一度に抽出することができ、各導抽出対象組立部材対して画像処理(1本1本の画像処理)を行う必要がない。また、異物等が存在している場合であっても、異物の画像のデータを省くことができ、異物等が存在していない場合と同様抽出対象組立部材の抽出が可能である。すなわち、抽出対象組立部材以外の部品の情報のみで抽出対象組立部材を抽出できるので、抽出対象組立部材の数に依存することなく、抽出対象組立部材候補が得られ、得られた導電性ワイヤ候補から二値化等で、安定して抽出対象組立部材を抽出できる。このため、抽出対象組立部材が導電性ワイヤある場合、ボンディング接続後に撮影した画像の処理で、導電性ワイヤの抽出が可能である。このため、ボンディング接続前の画像の撮影やその処理の必要がない。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、電子デバイス組立体に異物等が存在しても存在していなくても、抽出対象組立部材が複数あっても、全抽出対象組立部材を一度に抽出することができ、各抽出対象組立部材に対して画像処理(1本1本の画像処理)を行う必要がない。このため、抽出対象組立部材抽出のための設定時間及び設定後の抽出動作時間を短くでき、生産性に優れた装置及び方法となる。しかも、抽出すべき抽出対象組立部材以外の部材(部品)の影響を受けることなく、抽出対象組立部材のみを抽出することが可能となる。このため、抽出対象組立部材の形状品質を安定して正確に検出することができる。また、抽出対象組立部材がボンディング接続前の画像の撮影やその処理の必要がないので、装置全体の構成の簡略化及び処理時間の短縮化(作業性の向上)を図ることができ、しかも抽出の高精度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の対象組立部材抽出装置である導電性ワイヤ抽出装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明の対象組立部材抽出方法である導電性ワイヤ抽出方法の工程図である。
【
図3】半導体装置である電子デバイス組立体の簡略平面図である。
【
図4】半導体装置である電子デバイス組立体の簡略側面図である。
【
図5】フレームの高さ情報画像を得る工程を示し、(a)はフレーム位置決めを示す簡略図であり、(b)はフレームの高さ情報画像の平面図であり、(b)はフレームの高さ情報画像の側面図である。
【
図6】チップの高さ情報画像を得る工程を示し、(a)はチップ位置決めを示す簡略図であり、(b)はチップの高さ情報画像の平面図であり、(b)はチップの高さ情報画像の側面図である。
【
図7】リードの高さ情報画像を得る工程を示し、(a)はリード位置決めを示す簡略図であり、(b)はリードの高さ情報画像の平面図であり、(b)はリードの高さ情報画像の側面図である。
【
図8】補間領域の補間領域画像を示し、(a)は簡略平面図であり、(b)は簡略側面図である。
【
図9】ワイヤ抽出工程を示し、(a)は元の高さ情報画像の簡略図であり、(b)は復元画像を示す簡略図であり、(c)は抽出されたワイヤ示す簡略図である。
【
図10】ワイヤ領域候補からワイヤを抽出する工程を示し、(a)はワイヤ領域候補を示す距離画像図であり、(b)はワイヤ情報画像図である。
【
図11】ワイヤを抽出し、ワイヤ以外の領域高を0とした場合の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を
図1~
図11に基づいて説明する。
【0017】
本発明に係る対象組立部材抽出装置は、電子デバイス組立体の部材である抽出対象組立部材を他の組立部材から抽出するものであり、
図1は、対象組立部材抽出装置としての導電性ワイヤ抽出装置を示している。この導電性ワイヤ抽出装置は、抽出対象組立部材であって、導電性部材としてのとしての導電性ワイヤ4(
図3等参照)によりボンディング接続されている電子デバイス組立体(以下、単に、電子デバイスと呼ぶ場合がある)において導電性ワイヤ4を導電性ワイヤ被接続部位(他の組立部材)から抽出するものである。ここで、電子デバイスとは、半導体装置を備えた一定の機能を奏する機器一般をいい、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。なお、電子デバイスは、一般には、半導体、電子ディスプレイ、一般電子部品の3種類に分けられ、半導体は論理回路(ロジック)、記憶回路(メモリー)、アナログ回路、ディスクリートに分けられる。電子ディスプレイは、液晶デバイス、有機EL等である。一般電子部品は、コンデンサー、プリント回路、コネクター、センサ、インダクター、スイッチ、電源等である。また、導電性部材には、導電性ワイヤ4以外に導電性クリップ等がある。
【0018】
図3と
図4は、電子デバイス組立体を示し、この電子デバイス組立体は、フレーム(土台)1と、この土台1上のチップ2およびリード3(3A,3B)を備えている。そして、チップ2およびリード3(3A,3B)とは、複数の導電性ワイヤ4にて接続されている。このため、この実施形態では、導電性ワイヤ4を、抽出対象組立部材と呼び、チップ2およびリード3等を他の組立部材(抽出対象外の組立部材)と呼ぶことができる。以下の説明では、抽出対象組立部材として導電性ワイヤ4を使用し、他の組立部材にチップ2およびリード3を使用する。
【0019】
図1は本発明に係る対象組立部材抽出装置である導電性ワイヤ抽出装置の全体構成を示すブロック図である。この導電性ワイヤ抽出装置は、元の高さ情報取得手段10と、位置決め手段11と、高さ抽出領域設定手段12と、補正手段13と、補間領域設定手段14と、領域高さ補間手段15と、復元手段16と、残り高さ情報取得手段17と、抽出手段18とを備える。
【0020】
元の高さ情報取得手段10は、導電性ワイヤ4を含む電子デバイス全体の画像から全体(土台1も含む)の元の高さ情報画像を得るものである。位置決め手段11は、導電性ワイヤ被接続部位の位置決めを行うものである。高さ抽出領域設定手段12は、導電性ワイヤ被接続部位の高さ抽出領域を設定するものである。補正手段13は導電性ワイヤ被接続部位の領域及びその領域の高さ抽出領域を補正するものである。補間領域設定手段14は導電性ワイヤ被接続部位間を接続する補間領域を設定するものである。領域高さ補間手段15は導電性ワイヤ被接続部位間を接続する補間領域の高さ情報画像を求めるものである。復元手段16は、抽出領域設定手段12に設定した高さ抽出領域に基づいて求めた導電性ワイヤ被接続部位の高さ情報画像、及び領域高さ補間手段15で求めた補間領域に高さ情報画像からなる復元画像を求めるものである。残り高さ情報取得手段17は、元の高さ情報取得手段10にて得られた元の高さ情報画像から復元手段16にて得られた復元画像を引いて残った高さ情報画像を得るものである。抽出手段18は、残り高さ情報取得手段17にて取得した残り高さ情報画像から導電性ワイヤ4のみを抽出するものである。
【0021】
元の高さ情報取得手段10は、電子デバイス全体を撮像する撮像手段(例えば、CCDカメラやCMOSカメラ等で構成される手段)と、距離画像作成手段と全焦点画像作成手段とを備える。ここで、距離画像とは、画像ごとにフォーカス度合が最大となった時点の相対距離情報を輝度で表現した画像である。このため、距離画像作成手段は、撮像手段による撮像と同時に画像ごとにフォーカス度合が最大となった時点の相対距離情報を記憶し、撮像手段から撮像物体までの距離画像を作成する。
【0022】
全焦点画像とは、焦点の異なる複数の画像から、画素ごとにフォーカス度合を評価し、フォーカスが合っている局所画像の組み合わせで再構成されて全ての画素でフォーカスが合っている画像である。すなわち、全焦点画像とは、撮像系と物体との距離を連続的に変化させて(カメラをZ方向にスキャンさせて)、焦点の異なる画像を複数枚撮影し、局所領域ごとにフォーカスを評価し、フォーカスの合っている局所画像の組み合わせで再構成したものである。これにより、全焦点画像は、全てのピクセルにおいてフォーカスがあっている。このため、撮像手段を構成するカメラを少なくともZ方向(鉛直方向)に駆動させる駆動機構が必要となる。なお、この駆動機構としては、カメラのZ方向の駆動に加え、XY方向の水平面内の駆動を可能とするものであってもよい。駆動機構としては、例えば、XYZステージ等で構成できる。また、この元の高さ情報画像は、土台1および導電性ワイヤ被接続部位の情報画像である。
【0023】
位置決め手段11は、この撮像手段と、全焦点画像作成手段とで構成できる。位置決め手段11は、全焦点画像において、予め設定された目印(導電性ワイヤ被接続部位と離れた位置に存在する模様や物体等)を用いて位置合わせを行うものであって、目印と導電性ワイヤ被接続部位(例えば、フレーム1)の領域との相対位置関係が基準モデルと一致され、全焦点画像において、目印との相対位置が記憶されたモデルのものと一致する場所を特定するものである。あるいは、位置決め手段11は、この撮像手段と、距離画像作成手段とで構成し、距離画像において、予め設定された目印を用いて位置合わせを行ってもよい。
【0024】
高さ抽出領域設定手段12は、導電性ワイヤ被接続部位(例えば、フレーム1)の領域において、任意の位置を高さ抽出領域31(
図5(a)参照)に設定するものである。補正手段13は導電性ワイヤ被接続部位の領域及びその領域の高さ抽出領域を補正するものである。
【0025】
補間領域設定手段14は、
図3に示す電子デバイスにおいて、例えば、リード3Aと、チップ2とを接続する導電性ワイヤ4を抽出する場合に、リード3Aとチップ2との間を補間するものである。すなわち、製品としては、リード3Aとチップ2との間の土台1には突部(異物5)を有さないものであれば、撮像手段にて撮像した場合、導電性ワイヤ4の下方には、なにも映り出さないものであるが、このリード3Aとチップ2との間に、異物5等があれば、この異物5を映し出すことになる。このため、ワイヤ画像にノイズが含まれることになる。そこで、補間領域とは、この場合、リード3Aとチップ2との間の領域をいう。
【0026】
領域高さ補間手段15は、補間領域設定手段14にて設定した導電性ワイヤ被接続部位間を接続する(抽出対象組立部材に隣接する)の補間領域の高さ情報画像43(
図8(a)参照)を求めるものである。復元手段16は、抽出領域設定手段12に設定した高さ抽出領域に基づいて求めた導電性ワイヤ被接続部位の高さ情報画像、及び領域高さ補間手段15で求めた補間領域に高さ情報画像からなる復元画像を求めるものである。ここで、補間領域の高さ情報画像43とは、導電性ワイヤ被接続部位間を接続する導電性ワイヤ4の下部に異物を有していても有さなくても、導電性ワイヤ被接続部位を接続する部位の画像であり、後述するように、復元画像の一部を構成するものである。抽出対象組立部材に隣接には、導電性ワイヤ被接続部位間が複数の領域がある場合も含むものである。
【0027】
残り高さ情報取得手段17は、元の高さ情報取得手段10にて得られた元の高さ情報画像から復元手段16にて得られた復元画像を引いて残った高さ情報を得るものであって、導電性ワイヤであるワイヤ4の高さ情報を得ることができる。また、抽出手段18は、ワイヤ4の高さ情報画像からワイヤ4のみを抽出することができる。
【0028】
ところで、前記各手段10、11、12、13、14、15、16,17,18及び撮像手段を構成するカメラを駆動する駆動機構等の制御は図示省略のコンピュータで行うことができる。コンピュータは、基本的には、入力機能を備えた入力手段と、出力機能を備えた出力手段と、記憶機能を備えた記憶手段と、演算機能を備えた演算手段と、制御機能を備えた制御手段にて構成される。入力機能は、外部からの情報を、コンピュータに読み取るためのものであって、読み込まれたデータやプログラムは、コンピュータシステムに適した形式の信号に変換される。出力機能は、演算結果や保存されているデータなどを外部に表示するものである。記憶手段は、プログラムやデータ、処理結果などを記憶して保存するものである。演算機能は、データをプログラムの命令に随って、計算や比較して処理するものである。制御機能は、プログラムの命令を解読し、各手段に指示を出すものであり、この制御機能はコンピュータの全手段の統括をする。入力手段には、キーボード、マウス、タブレット、マイク、ジョイスティック、スキャナ、キャプチャーボード等がある。また、出力手段には、モニタ、スピーカー、プリンタ等がある。記憶手段には、メモリ、ハードディスク、CD・CD-R,PD・MO等がある。演算手段には、CPU等があり、制御手段には、CPUやマザーボード等がある。
【0029】
前記のように構成された導電性ワイヤ抽出装置は、
図2に示すような工程を行うことができる。すなわち、元の高さ情報取得工程20と、位置決め工程21と、高さ抽出領域設定工程22と、補正工程23と、補間領域設定工程24と、領域高さ補間工程25と、復元工程26と、残り高さ情報取得工程27と、抽出工程28とを備えたものである。
【0030】
次に、各工程を具体的に説明する。この場合、
図3及び
図4に示すように、フレーム1と、チップ2と、リード3(3A,3B)とを備え、チップ2とリード3(3A,3B)がワイヤ4にて接続されたもの(電子デバイス)の複数のワイヤ4のみを抽出する場合を説明する。このため、導電性ワイヤ被接続部位として、前記したように、フレーム1と、チップ2と、及びリード3(3A,3B)がある。また、一のリード3Aとチップ2との間に正規製品には存在しない異物5が存在している。
【0031】
まず、この電子デバイスの全焦点画像及び距離画像を取得する。次に、
図5(a)に示すように、フレーム1の位置決めを行って、フレーム領域30を決定する。そして、フレーム領域30における高さ抽出領域31(31A,31B)を設定する。この場合、フレーム領域30及び高さ抽出領域31(31A,31B)の位置補正が必要であれば、補正手段13を用いて補正する。この補正工程としては、予め設定された目印を用いるものであって、全焦点画像あるいは距離画像において、目印とフレーム領域30及び高さ抽出領域31との相対位置関係が基準モデルと一致するように補正するものである。その後は、高さ抽出領域に基づいてフレーム1の高さ及び傾きを求め、
図5(b)(c)に示すようにフレーム(土台)1の全体の高さ情報画像40を復元する。
【0032】
次に、
図6(a)に示すように、チップ2の位置決めを行って、チップ領域32を決定する。そして、チップ領域32における高さ抽出領域33(33A,33B)を設定する。この場合、チップ領域32及び高さ抽出領域33(33A,33B)の位置補正が必要であれば、補正手段13を用いて補正する。その後は、高さ抽出領域に基づいてチップ2の高さ及び傾きを求め、
図6(b)(c)に示すようにチップ2の全体の高さ情報画像41を復元する。
【0033】
さらに、
図7(a)に示すように、リード3(3A,3B)の位置決めを行って、リード領域34を決定する。そして、リード領域34における高さ抽出領域35(35A,35B)を設定する。この場合、リード領域34及び高さ抽出領域35(35A,35B)の位置補正が必要であれば、補正手段13を用いて補正する。その後は、高さ抽出領域に基づいてリード3の高さ及び傾きを求め、
図7(b)(c)に示すようにリード3の全体の高さ情報画像42を復元する(得る)。
【0034】
この場合、リード3Aとチップ2との間に異物5が存在するので、
図8(a)に示すように、このリード3Aとチップ2との間を接続する補間領域6を設定し、この補間領域6の補間領域6の高さ情報画像43を求める。補間領域6内で、異物の画像が映し出された場合、導電性ワイヤの抽出時にノイズとなる。しかしながら、導電性被接続部位間の導通性ワイヤ4に接続では、導電性ワイヤ4は、導電性被接続部位よりも高位となり、このワイヤ4より下位の異物を無視することになる。
【0035】
これによって、
図7(c)に示す、チップ2の全体の高さ情報画像41と、リード3の全体の高さ情報画像42とに補間領域6の高さ情報画像43を加えた復元画像45(
図8(b)参照)を求める。
【0036】
その後は、
図9(a)に示すように、元の全体の高さ情報画像44から、
図9(b)に示すフレーム1の高さ情報画像40、チップ2の高さ情報画像41、及びリード3の高さ情報画像42、補間領域6の高さ情報画像43を引く(削除する)ことによって、
図9(c)に示すようなワイヤ候補領域画像46を算出する。すなわち、元の全体の高さ情報画像44から、復元画像45を引くことによって、候補領域画像46を算出することができる。
【0037】
ワイヤ候補領域画像46は、具体的には、
図10(a)のようなな画像となり、このような画像からは、二値化処理を行って、
図10(b)に示すよう導電性ワイヤ4を抽出することができる。すなわち、導電性ワイヤ4のみが表示される画像を得ることができる。この場合、
図10(b)に示すように導電性ワイヤ4のみが表示される画像を電子デバイスの全体の全焦点画像や距離画像にマッピングすることができる。
【0038】
本発明の導電性ワイヤ抽出装置によれば、元の高さ情報取得手段10によって、導電性ワイヤ4を含む電子デバイス全体の画像から全体の元の高さ情報画像を得ることができる。位置決め手段11によって導電性ワイヤ被接続部位の位置決めを行うことができる。また、高さ抽出領域設定手段12にて、導電性ワイヤ被接続部位の高さ抽出領域を設定することができる。補間領域設定手段14にて導電性ワイヤ被接続部位間を接続する補間領域を設定することができ、領域高さ補間手段15にて、補間領域6の高さ情報画像43を求めることができる。復元手段16にて、抽出領域設定手段12に設定した高さ抽出領域41に基づいて求めた導電性ワイヤ被接続部位の高さ情報画像41、及び領域高さ補間手段で求めた補間領域に高さ情報画像43からなる復元画像45を求めることができる。残り高さ情報取得手段17にて、元の高さ情報取得手段10にて得られた元の高さ情報から、復元手段16にて得られた復元画像45を引いて、残った高さ情報を得ることができ、抽出手段18にて、残り高さ情報画像から導電性ワイヤ4のみを抽出することができる。この構成によれば、残り高さ情報画像には、土台に異物(正規な導電性ワイヤ被接続部位以外の他の物)5が存在していても、異物の画像のデータが含まれないものとできる。
【0039】
本発明では、土台1に異物等が存在しても存在していなくても、導電性ワイヤ4が複数あっても、全導電性ワイヤ4を一度に抽出することができ、各導電性ワイヤ4に対して画像処理(1本1本の画像処理)を行う必要がない。また、土台1に異物5等が存在している場合であっても、異物5の画像のデータを省くことができ、土台1に異物等が存在していない場合と同様導電性ワイヤ4の抽出が可能である。このため、導電性ワイヤ抽出のための設定時間及び設定後の抽出動作時間を短くでき、生産性に優れた装置及び方法となる。しかも、抽出すべき導電性ワイヤ以外の部材(部品)の影響を受けることなく、導電性ワイヤ4のみを抽出することが可能となる。このため、導電性ワイヤ4の形状品質を安定して正確に検出することができる。また、ボンディング接続前の画像の撮影やその処理の必要がないので、装置全体の構成の簡略化及び処理時間の短縮化(作業性の向上)を図ることができ、しかも抽出の高精度化を図ることができる。
【0040】
導電性ワイヤ被接続部位の領域及び高さ抽出領域を補正する補正手段13を備えたものが好ましい。このように、補正手段13を備えたものでは、導電性ワイヤ被接続部位の影響を受けることなく、導電性ワイヤ4のみを安定して高精度に抽出することができる。
【0041】
位置決め手段11による位置決めには、全焦点画像又は距離画像を用いることができる。ここで、全焦点画像とは、焦点の異なる複数の画像から、画素ことにフォーカス度合を評価し、フォーカスが合っている局所画像の組み合わせで再構成されて全ての画素でフォーカスが合っている画像である。また、距離画像とは、画素ごとにフォーカス度合が最大となった時点の相対距離情報を輝度で表現した画像である。
【0042】
元の高さ情報取得手段10による元の高さ情報画像は、距離画像を用いて取得することができる。
【0043】
導電性ワイヤ被接続部位は、チップ2、及びリード3の少なくとも一以上の部材であったりする。すなわち、一般的な半導体装置等の電子デバイスの製造工程において、導電性ワイヤを安定して抽出することができる。
【0044】
ところで、
図11(a)に示すように、土台1上に、一つのチップ2と3つのリード3(3c、3d、3e)を有す電子デバイスであって、チップ2とリード3Dとが導電性ワイヤ4(4A)にて接続され、リード3Cとリード3Eとが導電性ワイヤ4(4B)にて接続されている場合、導電性ワイヤ4(4A)と導電性ワイヤ4(4B)とはクロスすることになる。
【0045】
このような場合、各ワイヤ4A、4B毎に抽出することになる。すなわち、ワイヤ4Aを抽出する際には、
図11(b)に、チップ2とリード3Dとの間に補間領域6を設定する。そして、チップ2の高さ情報画像41、リード3の高さ情報画像41、およびこの補間領域の高さ情報画像43を求めることによって、復元画像45を求める。そして、元の全体の高さ情報画像44からこの復元画像45を引くことによって、導電性ワイヤ4Aを抽出することができる。
【0046】
また、ワイヤ4Bを抽出する際には、
図11(c)に、リード3Cとリード3Eとの間に補間領域6を設定する。そして、リード3の高さ情報画像41、およびこの補間領域の高さ情報画像43を求めることによって、復元画像45を求める。そして、元の全体の高さ情報画像44からこの復元画像45を引くことによって、導電性ワイヤ4Aを抽出することができる。
【0047】
このように、導電性ワイヤ4がクロスしていても、各導電性ワイヤ4を安定して抽出することができ、高精度の抽出が可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、導電性ワイヤ被接続部位の各高さ抽出領域の範囲としては任意である。電子デバイス組立体として、
図3と
図4に示すように、フレーム1と、チップ2と、リード3を有するものにおいて、導電性ワイヤ4としてチップ同士の接続、リード同士の接続、又はチップ2とリード3とを接続するものであってもよい。なお、電子デバイスとして、フレーム1とチップ2とリード3を有するものに限るものではない。また、電子デバイス組立体として、実施形態では、元の高さ情報画像に土台(フレーム)1を含みものであったが、このような土台1を含まないものであってもよい。また、土台1を含む場合、実施形態では、土台1の上面が平坦面で構成されたものであったが、平坦面に限るものではない。なお、土台1のデータを用いない場合でも、補間領域を用いることで、適切なしきい値(高さ)で物体を抽出することができる。
【0049】
実施形態では、補間領域を導電性ワイヤ被接続部位間としていため、導電性ワイヤ被接続部位は少なくとも2つ必要としていたが、被接続部位間に限定されるものではなく、導電性ワイヤ被接続部位である他の組立部材としては、少なくとも1つあればよい。
【0050】
全焦点画像や距離画像としては、モノクロであってもカラーであってもよく、さらには、2次元であても、3次元であってもよい。導電性ワイヤ4として、導電性ワイヤ4の場合、抽出しようとする数には限定されない。また、撮像手段にて撮像する場合、前記実施形態では、撮像手段であるカメラ側を駆動(移動)させていたが、カメラ側を停止させて、電子デバイス側を駆動するようにして、カメラ側および電子デバイス側を駆動するようにしてもよい。
【0051】
なお、抽出対象組立部材として、半導体チップであってもよく、また、導電性部材に限らず、ガラス、プラスチック、セラミック等の非導電性部材であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 チップ
3、3A、3B、3C、3D 3Eリード
4、4A、4B導電性ワイヤ
5 異物
6 補間領域
10 情報取得手段
11 位置決め手段
12 高さ抽出領域設定手段
13 補正手段
14 補間領域設定手段
15 領域高さ補間手段
16 復元手段
17 情報取得手段
18 抽出手段
20 情報取得工程
22 抽出領域設定工程
23 補正工程
24 補間領域設定工程
25 領域高さ補間工程
26 復元工程
27 情報取得工程
28 抽出工程
31、33、35 高さ抽出領域