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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171738
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】差圧伝送器
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/02 20060101AFI20241205BHJP
   G01L 19/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01L13/02 B
G01L19/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088913
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲也
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE40
2F055FF21
2F055GG15
(57)【要約】
【課題】シリコンダイアフラムを過大圧から保護しつつ、計測誤差の減少、装置の小型化、および装置の軽量化を図ることができる差圧伝送器を得ること。
【解決手段】差圧伝送器1は、第1の面41aと第1の面41aの裏面となる第2の面41bとを有するシリコンダイアフラム41が中央に形成されたシリコンセンサチップ4と、第1の面41aとの間に第1の空間21aを形成してシリコンセンサチップ4を第1の面41a側から支持する台座3と、シリコンセンサチップ4と台座3とが収容された収容空間21が形成された収容体2と、を備える。収容空間21には、第2の面41bと対向する当接面25cが形成されており、当接面25cは、シリコンダイアフラム41が第2の面41b側に凸となる変形をした場合に第2の面41bに当接する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面の裏面となる第2の面とを有するシリコンダイアフラムが中央部に形成されたシリコンセンサチップと、
前記第1の面との間に第1の空間を形成して前記シリコンセンサチップを前記第1の面側から支持するとともに、前記第1の空間に連通する連通路が形成された台座と、
前記シリコンセンサチップと前記台座とが収容された収容空間が形成された収容体と、を備え、
前記収容空間は、前記シリコンセンサチップおよび前記台座によって前記第1の空間と、前記第2の面との間に形成された第2の空間と、に区画されており、
前記収容体には、前記連通路につながる第1の通路と、前記第2の空間につながる第2の通路と、が形成されており、
前記収容空間には、前記第2の面と対向する当接面が形成されており、
前記当接面は、前記シリコンダイアフラムが前記第2の面側に凸となる変形をした場合に前記第2の面に当接する差圧伝送器。
【請求項2】
前記収容体には、前記第2の空間の裏側に形成され、前記第2の通路に連通された第3の空間が設けられた、
請求項1に記載の差圧伝送器。
【請求項3】
前記第2の空間と前記第3の空間の間の壁は、外周に沿って形成された薄肉部と、前記薄肉部に囲まれて前記薄肉部よりも前記第2の面に向けて突出した肉厚部と、を有し、
前記当接面は前記肉厚部に形成されている
請求項2に記載の差圧伝送器。
【請求項4】
前記収容空間の壁面のうち前記第2の面と対向する壁面には前記第2の面に向けて突出する突出部が形成され、
前記当接面は前記突出部に形成されている請求項1に記載の差圧伝送器。
【請求項5】
前記第1の面には、前記台座に向けて突出する突起が形成されている請求項1に記載の差圧伝送器。
【請求項6】
前記第1の通路の壁面の一部は、前記収容体の外部からの圧力が印加される第1の受圧ダイアフラムであり、
前記第2の通路の壁面の一部は、前記収容体の外部からの圧力が印加される第2の受圧ダイアフラムである請求項1に記載の差圧伝送器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧伝送器に関する。
【背景技術】
【0002】
収容体の内部に形成された収容空間に、シリコンダイアフラムが中央部に形成されたシリコンセンサチップが設けられた差圧伝送器がある。シリコンダイアフラムは、第1の面と、第1の面の裏面である第2の面とを有している。収容体の内部に形成された収容空間は、第1の面に接する第1の空間と、第2の面に接する第2の空間とに区画されている。
【0003】
収容体には、第1の受圧ダイアフラムと第2の受圧ダイアフラムの2つの受圧ダイアフラムが形成されている。収容体には、第1の受圧ダイアフラムと第1の空間との間を結ぶ通路と、第2の受圧ダイアフラムと第2の空間とを結ぶ通路とが形成されている。第1の空間、第2の空間、および通路にはオイルが封入されている。第1の受圧ダイアフラムに加えられた圧力が第1の通路を介してシリコンダイアフラムの第1の面に伝えられる。第2の受圧ダイアフラムに加えられた圧力が第2の通路を介してシリコンダイアフラムの第2の面に伝えられる。第1の面と第2の面に加えられた圧力の差によるシリコンダイアフラムに発生する歪に基づいて差圧が計測される。
【0004】
第1の受圧ダイアフラムまたは第2の受圧ダイアフラムに過大な圧力(過大圧)が加えられると、シリコンダイアフラムが破壊されたり、シリコンセンサチップを固定する固定部が破壊されたりしてしまうといった問題が生じる。
【0005】
そこで、第1の通路と第2の通路との間にダイアフラム(センターダイアフラム)を形成し、過大圧からシリコンダイアフラムを保護する差圧伝送器が特許文献1に開示されている。過大圧が加わったときにセンターダイアフラムが変形することで、シリコンダイアフラムに過大圧が加わることが防がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-194343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通路間にダイアフラムを形成することで、通路の容積が大きくなり、封入されるオイルの体積も大きくなる。封入されるオイルの体積が大きくなると、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因として受圧ダイアフラムに変形が生じてヒステリシスとなる。このような温度変動に起因するヒステリシスが第1の受圧ダイアフラムと第2の受圧ダイアフラムとで異なることで、差圧伝送器に計測誤差が生じる場合がある。
【0008】
このような誤差を減らすためには、受圧ダイアフラムの径を大きくする必要があるが、受圧ダイアフラムの径を大きくすると差圧伝送器が大型化し、重量も増してしまう。
【0009】
本発明は、シリコンダイアフラムを過大圧から保護しつつ、計測誤差の減少、装置の小型化、および装置の軽量化を図ることができる差圧伝送器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る差圧伝送器は、第1の面と第1の面の裏面となる第2の面とを有するシリコンダイアフラムが中央部に形成されたシリコンセンサチップと、第1の面との間に第1の空間を形成してシリコンセンサチップを第1の面側から支持するとともに、第1の空間に連通する連通路が形成された台座と、シリコンセンサチップと台座とが収容された収容空間が形成された収容体と、を備え、収容空間は、シリコンセンサチップおよび台座によって第1の空間と、第2の面との間に形成された第2の空間と、に区画されており、収容体には、連通路につながる第1の通路と、第2の空間につながる第2の通路と、が形成されており、収容空間には、第2の面と対向する当接面が形成されており、当接面は、シリコンダイアフラムが第2の面側に凸となる変形をした場合に第2の面に当接する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリコンダイアフラムを過大圧から保護しつつ、計測誤差の減少、装置の小型化、および装置の軽量化を図ることができる差圧伝送器を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る差圧伝送器の断面図である。
図2図1に示すA部分を拡大した部分拡大断面図である。
図3図1に示したA部分を拡大した部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
図4図1に示したA部分を拡大した部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
図5】実施形態1の第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図である。
図6】第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
図7】第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
図8】実施形態1の第2の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図である。
図9】第2の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
図10】第2の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
図11】実施形態1の第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図である。
図12】第3の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
図13】第3の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る差圧伝送器を、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0014】
〔実施形態1〕
〔差圧伝送器の構成〕
図1は、実施形態1に係る差圧伝送器の断面図である。差圧伝送器1は、収容体2と、台座3と、シリコンセンサチップ4と、ハーメチックシール端子5を備える。
【0015】
収容体2は、内部に収容空間21が形成されている。収容空間21には、台座3とシリコンセンサチップ4とが収容される。収容空間21は、第1の空間21aと第2の空間21bと有する。
【0016】
収容体2には、第1の空間21aに連通する第1の通路22aと第2の通路22bとが形成されている。第1の通路22aの壁面の一部は、収容体2の外側面の一部を構成するとともに、収容体2の外部からの圧力が印加される第1の受圧ダイアフラム23aとなっている。第2の通路22bの壁面の一部は、収容体2の外側面の一部を構成するとともに、収容体2の外部からの圧力が印加される第2の受圧ダイアフラム23bとなっている。
【0017】
図2は、図1に示すA部分を拡大した部分拡大断面図である。台座3は、収容空間21の内壁21cに接合部24を介して固定されている。台座3は、例えばガラスで形成されている。接合部24は、台座3を収容空間21に固定させる接着剤であり、例えば低融点ガラスである。台座3には、第1の空間21aと第1の通路22aとを連通させる連通路31が形成されている。すなわち、第1の空間21aと第1の通路22aとは台座3に形成された連通路31を介して連通されている。
【0018】
シリコンセンサチップ4は台座3に固定されている。シリコンセンサチップ4の中央部には薄肉部であるシリコンダイアフラム41が形成されている。シリコンダイアフラム41は、第1の面41aと第2の面41bとを有する。これにより、シリコンダイアフラム41と台座3との間に第1の空間21aが形成される。シリコンダイアフラム41の第2の面41b側にある空間が第2の空間21bとなる。このように、収容空間21は、台座3とシリコンセンサチップ4とによって第1の空間21aと第2の空間21bとに区画されている。シリコンダイアフラム41の第1の面41aには、凸部(突出部)43が形成されている。凸部43の第1の面41aからの高さは、シリコンセンサチップ4の台座3への固定面からの高さよりも低くなっている。これにより、凸部43の頂点と台座3との間には隙間が形成される。
【0019】
シリコンダイアフラム41は、第1の面41a側に凸となる変形をしたり、第2の面41b側に凸となる変形をしたりすると電気信号を発する。シリコンダイアフラム41から発せられる電気信号は発生する歪に応じて変化する。
【0020】
ハーメチックシール端子5は、ボンディングワイヤ6を介してシリコンセンサチップ4に電気的に接続されている。シリコンダイアフラム41から発せられた電気信号は、ハーメチックシール端子5を介して差圧伝送器1の外部に送信される。
【0021】
収容体2には、第2の空間の裏側に第3の空間26が形成されている。第3の空間26は、第2の通路22bに連通されている。第1の通路22aと第2の通路22bの間の壁は、可動壁25となっている。可動壁25は、外周に沿って形成された薄肉部25aと、薄肉部25aに囲まれた厚肉部25bとを有する。厚肉部25bの厚さは、薄肉部25aの厚さよりも厚くなっている。厚肉部25bは、薄肉部25aよりもシリコンダイアフラム41側に突出している。厚肉部25bのうちシリコンダイアフラム41側を向く面が、第2の面41bと対向する当接面25cとなる。
【0022】
可動壁25は、厚肉部25bの周囲が薄肉部25aに囲まれた構造となっている。これにより、第2の空間21b内の圧力と第3の空間26内の圧力との差によって薄肉部25aが変形する。これにより、可動壁25全体では第2の空間21bまたは第3の空間26に凸となるように変形する。
【0023】
より具体的には、第3の空間26内の圧力のほうが第2の空間21b内の圧力よりも高い場合には、可動壁25は第2の空間21bに凸となるように変形する。第2の空間21b内の圧力のほうが第3の空間26内の圧力よりも高い場合には、可動壁25は第3の空間26に凸となるように変形する。
【0024】
なお、第2の空間21bは、第2の通路22bと連通しているので、第2の受圧ダイアフラム23bに加わる圧力によって第2の空間21b内の圧力は変化する。また、第3の空間26は、第1の通路22aと連通しているので、第1の受圧ダイアフラム23aに加わる圧力によって第3の空間26内の圧力は変化する。また、第3の空間26は、第1の通路22aを介して第1の空間21aと連通しているので、第1の空間21a内の圧力と第3の空間26内の圧力とは等しくなる。
【0025】
第1の空間21a、第2の空間21b、第3の空間26、第1の通路22a、および第2の通路22bにはオイルが充填されている。
【0026】
〔差圧伝送器の動作と効果〕
次に、差圧伝送器1の動作について説明する。差圧伝送器1は、配管内を流れる流体の流量の測定などに用いられる。例えば、配管内に設けられたオリフィスの上流側の圧力が第2の受圧ダイアフラム23bに加えられ、下流側の圧力が第1の受圧ダイアフラム23aに加えられる。第1の受圧ダイアフラム23aに加えられる圧力と、第2の受圧ダイアフラム23bに加えられる圧力との差によって、シリコンダイアフラム41が変形する。シリコンダイアフラム41からは発生した歪に応じた電気信号が発せられる。この電気信号は、ハーメチックシール端子5を介して図示を省略した処理装置に送信され、処理装置において演算処理が行われて差圧が算出される。また、算出された差圧に基づいて、配管内を流れる流体の流量が算出される。
【0027】
第1の受圧ダイアフラム23aまたは第2の受圧ダイアフラム23bに何らかの理由により過大な圧力が加わる場合がある。過大な圧力が加わると、シリコンダイアフラム41が破壊されたり、シリコンセンサチップ4が台座からはがれたりして、差圧伝送器1の故障となってしまう。
【0028】
実施形態1に係る差圧伝送器1では、可動壁25および凸部43が過大圧からの保護機構として機能する。
【0029】
図3は、図1に示したA部分を拡大した部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。第1の受圧ダイアフラム23aに過大圧が加わることで、第1の通路22aと連通する第3の空間26内の圧力が上昇する。
【0030】
第1の受圧ダイアフラム23aに加わる過大圧によって第1の空間21a内の圧力が上昇し、シリコンダイアフラム41に第2の面41bが凸となるように変形させる力が加わる。
【0031】
また、第3の空間26内の圧力も上昇することで、図3に示すように可動壁25が第2の空間21bに凸となるように変形する。
【0032】
しかし、可動壁25が変形することで、厚肉部25bに形成された当接面25cが第2の面41bに近づいている。これにより、第2の面41bが当接面25cに当接して、それ以上のシリコンダイアフラム41の変形が抑えられ、破壊から保護される。
【0033】
また、過大圧によって第1の空間21a内の圧力が上昇したときに、シリコンダイアフラム41の第2の面41bが当接面25cに当接するので、シリコンセンサチップ4が台座3からはがれてしまうことを防止できる。
【0034】
図4は、図1に示したA部分を拡大した部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。第2の受圧ダイアフラム23bに過大圧が加わることで、第2の通路22bと連通する第2の空間21b内の圧力が上昇する。
【0035】
第2の空間21b内の圧力が上昇することで、シリコンダイアフラム41に第1の面41aが凸となるように変形させる力が加わる。しかし、シリコンダイアフラム41がある程度変形すると第1の面41aに形成された凸部43が台座3に当接し、それ以上の変形は生じない。したがって、第2の受圧ダイアフラム23bに過大圧が加わった場合にも、シリコンダイアフラム41の過度の変形が防がれ、破壊から保護される。
【0036】
上述したように、実施形態1に係る差圧伝送器1では、第1の受圧ダイアフラム23aまたは第2の受圧ダイアフラム23bに加わる過大圧の影響を、第2の面41bと当接面25cとの当接または凸部43と台座3との当接により抑制している。したがって、従来のように第1の受圧ダイアフラム23aまたは第2の受圧ダイアフラム23bに加わる過大圧を吸収するために第1の通路22aと第2の通路22bとの間にダイアフラム(センターダイアフラム)を形成する必要がなく、収容体2の内部のオイルが収容される空間を小さくできる。すなわち、収容体2の内部に封入されるオイルの体積を小さくすることができる。
【0037】
封入されるオイルの体積が大きくなると、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因として第1の受圧ダイアフラム23aまたは第2の受圧ダイアフラム23bに変形が生じてヒステリシスとなる。このような温度変動に起因するヒステリシスが第1の受圧ダイアフラム23aと第2の受圧ダイアフラム23bとで異なることで、計測誤差が生じる場合がある。
【0038】
実施形態1の係る差圧伝送器1では、封入されるオイルの体積を小さくできるため、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因とした計測誤差を小さくすることできる。
【0039】
また、収容体2の内部のオイルが収容される空間を小さくできるので、差圧伝送器1の小型化および軽量化を図ることができる。
【0040】
〔第1の変形例に係る差圧伝送器の構成〕
図5は、実施形態1の第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図である。第1の変形例に係る差圧伝送器1では、第3の空間26が設けられておらず、可動壁25が形成されていない。収容空間21の壁面のうちシリコンダイアフラム41の第2の面41bと対向する壁面には、第2の面41bに向けて突出する突出部21eが形成されている。第1の変形例では、突出部21eのうち第2の面41bと対向する面が当接面21dとなる。
【0041】
〔第1の変形例にかかる差圧伝送器の動作と効果〕
図6は、第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
【0042】
第1の受圧ダイアフラム23aに加わる過大圧によって第1の空間21a内の圧力が上昇し、シリコンダイアフラム41が第2の面41bに凸となるように変形する。シリコンダイアフラム41がある程度変形すると、第2の面41bが当接面21dに当接して、それ以上のシリコンダイアフラム41の変形が抑えられる。
【0043】
これにより、シリコンダイアフラム41の過度の変形が防がれ、破壊から保護される。また、シリコンセンサチップ4が台座3からはがれてしまうことを防止できる。
【0044】
図7は、第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。第2の受圧ダイアフラム23bに過大圧が加わることで、第2の空間21b内の圧力が上昇する。
【0045】
第2の空間21b内の圧力が上昇することで、シリコンダイアフラム41に第1の面41aが凸となるように変形する。シリコンダイアフラム41がある程度変形すると第1の面41aに形成された凸部43が台座3に当接し、それ以上の変形は生じない。したがって、シリコンダイアフラム41の過度の変形が防がれ、破壊から保護される。
【0046】
また、第1の変形例に係る差圧伝送器1でも、従来のように第1の受圧ダイアフラム23aまたは第2の受圧ダイアフラム23bに加わる過大圧を吸収するために第1の通路22aと第2の通路22bとの間にダイアフラムを形成する必要がない。そのため、収容体2の内部に封入されるオイルの体積を小さくして、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因とする計測誤差が生じることを防ぐことができる。
【0047】
なお、第1の変形例に係る差圧伝送器1では可動壁25cが形成されておらず、過大圧が加わった際に当接面21dは第2の面41bに向けて移動しない。そのため、図1から図4の示したように可動壁25に当接面25cを設けた場合に比べて、第1の変形例における当接面21dは第2の面41bとの距離が小さく設定される。また、第3の空間26が設けられないことから、収容体2に封入されるオイルの体積をより小さくすることができる。これにより、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因とする計測誤差をより小さくすることができる。また、差圧伝送器1のより一層の小型化および軽量化を図ることができる。
【0048】
一方、図1から図4の示した例よりも第2の面41bが当接面21dに当接したときシリコンダイアフラム41の変形量が大きくなり、第1の受圧ダイアフラム23aに過大圧が加わったときの耐圧性能が低下する可能性がある。したがって、第1の受圧ダイアフラム23aに過大圧が加わったときの耐圧性能の低下が問題とならないような条件であれば、第1の変形例に係る差圧伝送器1の構成を採用することができる。
【0049】
〔第2の変形例に係る差圧伝送器の構成〕
図8は、実施形態1の第2の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図である。第2の変形例に係る差圧伝送器1では、第3の空間26が設けられており、可動壁25も形成されているが、厚肉部25bが形成されていない。したがって、可動壁25のうちシリコンダイアフラム41の第2の面41bと対向する面の全体が当接面25cとなる。
【0050】
〔第2の変形例にかかる差圧伝送器の動作と効果〕
図9は、第2の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
【0051】
第1の受圧ダイアフラム23aに加わる過大圧によって第1の空間21a内の圧力が上昇し、第2の面41bが凸となるようにシリコンダイアフラム41が変形する。
【0052】
また、第1の受圧ダイアフラム23aに過大圧が加わると、第3の空間26内の圧力も上昇することで、図9に示すように可動壁25が第2の空間21bに凸となるように変形する。
【0053】
しかし、可動壁25が変形することで、当接面25cが第2の面41bに近づいている。これにより、第2の面41bが当接面25cに当接して、それ以上のシリコンダイアフラム41の変形が抑えられる。
【0054】
これにより、シリコンダイアフラム41の過度の変形が防がれ、破壊から保護される。また、シリコンセンサチップ4が台座3からはがれてしまうことを防止できる。
【0055】
図10は、第2の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。第2の受圧ダイアフラム23bに過大圧が加わることで、第2の空間21b内の圧力が上昇する。
【0056】
第2の空間21b内の圧力が上昇することで、シリコンダイアフラム41に第1の面41aが凸となるように変形する。シリコンダイアフラム41がある程度変形すると第1の面41aに形成された凸部43が台座3に当接し、それ以上の変形は生じない。したがって、シリコンダイアフラム41の過度の変形が防がれ、破壊から保護される。
【0057】
また、第2の変形例に係る差圧伝送器1でも、従来のように第1の受圧ダイアフラム23aまたは第2の受圧ダイアフラム23bに加わる過大圧を吸収するために第1の通路22aと第2の通路22bとの間にダイアフラムを形成する必要がない。そのため、収容体2の内部に封入されるオイルの体積を小さくして、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因とする計測誤差を小さくすることができる。
【0058】
〔第3の変形例に係る差圧伝送器の構成〕
図11は、実施形態1の第1の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図である。第3の変形例に係る差圧伝送器1では、第3の空間26が設けられておらず、可動壁25が形成されていない。また、収容空間21の壁面のうちシリコンダイアフラム41の第2の面41bと対向する壁面は平坦面となっている。第3の変形例では、収容空間21の壁面のうちシリコンダイアフラム41の第2の面41bと対向する壁面全体が当接面21dとなる。
【0059】
〔第3の変形例にかかる差圧伝送器の動作と効果〕
図12は、第3の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第1の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。
【0060】
第1の受圧ダイアフラム23aに加わる過大圧によって第1の空間21a内の圧力が上昇し、シリコンダイアフラム41が第2の面41bに凸となるように変形する。シリコンダイアフラム41がある程度変形すると、第2の面41bが当接面21dに当接して、それ以上のシリコンダイアフラム41の変形が抑えられる。
【0061】
これにより、シリコンダイアフラム41の過度の変形が防がれ、破壊から保護される。また、シリコンセンサチップ4が台座3からはがれてしまうことを防止できる。
【0062】
図13は、第3の変形例に係る差圧伝送器の部分拡大断面図であって、第2の受圧ダイアフラムに過大圧が加わった状態を示す図である。第2の受圧ダイアフラム23bに過大圧が加わることで、第2の空間21b内の圧力が上昇する。
【0063】
第2の空間21b内の圧力が上昇することで、シリコンダイアフラム41が第1の面41aが凸となるように変形する。シリコンダイアフラム41がある程度変形すると第1の面41aに形成された凸部43が台座3に当接し、それ以上の変形は生じない。したがって、シリコンダイアフラム41の過度の変形が防がれ、破壊から保護される。
【0064】
また、第3の変形例に係る差圧伝送器1でも、従来のように第1の受圧ダイアフラム23aまたは第2の受圧ダイアフラム23bに加わる過大圧を吸収するために第1の通路22aと第2の通路22bとの間にダイアフラムを形成する必要がない。そのため、収容体2の内部に封入されるオイルの体積を小さくして、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因とする計測誤差をより小さくすることができる。
【0065】
なお、第3の変形例に係る差圧伝送器1では可動壁25cが形成されておらず、過大圧が加わった際に当接面21dは第2の面41bに向けて移動しない。そのため、図1から図4に示したように可動壁25に当接面25cを設けた場合に比べて、第3の変形例における当接面21dは第2の面41bとの距離が小さく設定される。また、第3の空間26が設けられないことから、収容体2に封入されるオイルの体積をより小さくすることができる。これにより、温度変化によるオイルの膨脹・収縮を原因とする計測誤差をより小さくすることができる。また、差圧伝送器1のより一層の小型化および軽量化を図ることができる。
【0066】
一方、図1から図4の示した例よりも第2の面41bが当接面21dに当接したときシリコンダイアフラム41の変形量が大きくなり、第1の受圧ダイアフラム23aに過大圧が加わったときの耐圧性能が低下する可能性がある。したがって、第1の受圧ダイアフラム23aに過大圧が加わったときの耐圧性能の低下が問題とならないような条件であれば、第3の変形例に係る差圧伝送器1の構成を採用することができる。
【0067】
〔その他〕
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0068】
(1)第1の面と前記第1の面の裏面となる第2の面とを有するシリコンダイアフラムが中央部に形成されたシリコンセンサチップと、前記第1の面との間に第1の空間を形成して前記シリコンセンサチップを前記第1の面側から支持するとともに、前記第1の空間に連通する連通路が形成された台座と、前記シリコンセンサチップと前記台座とが収容された収容空間が形成された収容体と、を備え、前記収容空間は、前記シリコンセンサチップおよび前記台座によって前記第1の空間と、前記第2の面との間に形成された第2の空間と、に区画されており、前記収容体には、前記連通路につながる第1の通路と、前記第2の空間につながる第2の通路と、が形成されており、前記収容空間には、前記第2の面と対向する当接面が形成されており、前記当接面は、前記シリコンダイアフラムが前記第2の面側に凸となる変形をした場合に前記第2の面に当接する差圧伝送器。
【0069】
(2)前記収容体には、前記第2の空間の裏側に形成され、前記第2の通路に連通された第3の空間が設けられた、(1)に記載の差圧伝送器。
【0070】
(3)前記第2の空間と前記第3の空間の間の壁は、外周に沿って形成された薄肉部と、前記薄肉部に囲まれて前記薄肉部よりも前記第2の面に向けて突出した肉厚部と、を有し、前記当接面は前記肉厚部に形成されている(2)に記載の差圧伝送器。
【0071】
(4)前記収容空間の壁面のうち前記第2の面と対向する壁面には前記第2の面に向けて突出する突出部が形成され、前記当接面は前記突出部に形成されている(1)に記載の差圧伝送器。
【0072】
(5)前記第1の面には、前記台座に向けて突出する突起が形成されている(1)~(4)のいずれか1つに記載の差圧伝送器。
【0073】
(6)前記第1の通路の壁面の一部は、前記収容体の外部からの圧力に応じて変形する第1の受圧ダイアフラムであり、前記第2の通路の壁面の一部は、前記収容体の外部からの圧力に応じて変形する第2の受圧ダイアフラムである(1)~(5)のいずれか1つに記載の差圧伝送器。
【符号の説明】
【0074】
1 差圧伝送器
2 収容体
3 台座
4 シリコンセンサチップ
5 ハーメチックシール端子
6 ボンディングワイヤ
21 収容空間
21a 第1の空間
21b 第2の空間
21c 内壁
21d 対向面
21e 突出部
22a 第1の通路
22b 第2の通路
23a 第1の受圧ダイアフラム
23b 第2の受圧ダイアフラム
25 可動壁
25a 薄肉部
25b 厚肉部
25c 当接面
26 第3の空間
31 連通路
41 シリコンダイアフラム
41a 第1の面
41b 第2の面
43 凸部(突出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13