(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017174
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エージェント制御方法及びエージェント制御装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/16 20060101AFI20240201BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240201BHJP
G10L 13/10 20130101ALI20240201BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240201BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G06F3/16 690
G01C21/26 C
G10L13/10 114
G10L13/10 111F
G10L13/10 111A
G10L13/10 111C
G06F3/16 610
G06F3/16 620
G06F3/16 650
G06F3/16 670
G06F3/01 510
B60R11/02 C
B60R11/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119648
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂田 美友紀
(72)【発明者】
【氏名】高松 敦
(72)【発明者】
【氏名】柳 拓良
(72)【発明者】
【氏名】小野 沙織
【テーマコード(参考)】
2F129
3D020
5E555
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129CC03
2F129EE43
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3D020BE03
5E555AA76
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5E555BB24
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5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザが置かれた環境に応じて、違和感のない態様でエージェント機器に情報を提供させることが技術を提供する。
【解決手段】エージェント制御方法は、車両に搭乗しているユーザに対して出力する情報を、出力情報として決定することと(S3)、ユーザが置かれている環境を示すユーザ環境情報を取得することと(S1)、ユーザ環境情報に基づいて、のどかさの程度を示すのどかさ値を演算することと(S4)、のどかさ値に基づいて出力時の表現態様を決定し、決定した表現態様で出力情報を出力するように、出力装置であるエージェント機器(3)の動作を制御すること(S5)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭乗しているユーザに対して出力する情報を、出力情報として決定することと、
前記ユーザが置かれている環境を示すユーザ環境情報を取得することと、
前記ユーザ環境情報に基づいて、のどかさの程度を示すのどかさ値を演算することと、
前記のどかさ値に基づいて出力動作の表現態様を決定し、前記決定した表現態様で前記出力情報を出力するように、出力装置であるエージェント機器の動作を制御することと、を備える、
エージェント制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記ユーザ環境情報は、前記車両の周囲の状況を示す情報、気候に関する情報、及び日時に関する情報からなる群から選択される少なくとも一つを含む、
制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の制御方法であって、
前記車両の周囲の状況を示す情報は、前記車両の周囲の他車両に関する情報、前記車両の周囲の建物に関する情報、前記車両が走行している道路に関する情報、及び前記車両の周囲の環境の色合いに関する情報からなる群から選択される少なくとも一つを含む、
制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の制御方法であって、
前記エージェント機器は、音声により前記出力情報を出力するように構成された音声出力装置を有し、
前記表現態様は、発音の速さ、音声の長さ、音声の高低、及び音声の抑揚からなる群から選択される少なくとも一つに関する態様である、
制御方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の制御方法であって、
前記エージェント機器は、視覚により知覚されるキャラクター動作を伴って前記出力情報を出力するように構成されており、
前記表現態様は、キャラクター動作の速さ、キャラクター動作の長さ、及びキャラクター動作のバリエーションの数からなる群から選択される少なくとも一つに関する態様である、
制御方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の制御方法であって、
前記のどかさ値を演算することは、前記ユーザ環境情報が下記(1)~(13)からなる群から選択される少なくとも一種の条件を示す場合に、よりのどかであることを示す値となるように前記のどかさ値を演算する、
制御方法。
(1)周囲の車両数が少ない
(2)周囲の車両の速度が遅い
(3)周囲の車両との車間が広い
(4)周囲の建物数が少ない
(5)周囲の建物が低い
(6)道路の幅が広い
(7)路面の凹凸が少ない
(8)整備された路面である
(9)車線変更の頻度が少ない
(10)天気が良好である
(11)休日である
(12)時刻が昼に近い
(13)周囲環境の色合いが自然色に近い
【請求項7】
請求項1又は2に記載の制御方法であって、
前記エージェント機器の動作を制御することは、前記のどかさ値がよりのどかであることを示す値である場合に、下記(1)~(7)からなる群から選択される少なくとも一種の条件に合うように、前記表現態様を決定することを含む、
制御方法。
(1)前記エージェント機器が前記出力情報を音声により出力する場合における発音の速さが遅い
(2)前記エージェント機器が前記出力情報を音声により出力する場合における音声の長さが長い
(3)前記エージェント機器が前記出力情報を音声により出力する場合における音声が高い
(4)前記エージェント機器が前記出力情報を音声により出力する場合における音声の抑揚が大きい
(5)前記エージェント機器がキャラクター動作を伴って前記出力情報を出力する場合において、キャラクター動作が遅い
(6)前記エージェント機器が複数のキャラクター動作を伴って前記出力情報を出力する場合において、キャラクター動作間の間隔が長い
(7)前記エージェント機器が複数のキャラクター動作を伴って前記出力情報を出力する場合において、キャラクター動作のバリエーション数が多い
【請求項8】
請求項1又は2に記載の制御方法であって、
更に、
前記車両の車室内の状態を示す車内情報を取得することと、
前記車内情報に基づいて、前記エージェント機器に対して前記ユーザから呼びかけがあったか否かを判定することと、を備え、
前記出力情報として決定することは、前記呼びかけがあった場合に、前記呼びかけに対する応答となる情報を前記出力情報として決定することを含む、
制御方法。
【請求項9】
車両に搭乗しているユーザに対してエージェント機器を介して出力するべき情報を、出力情報として決定する、出力情報決定部と、
前記ユーザが置かれている環境を示すユーザ環境情報を取得する、環境情報取得部と、
前記ユーザ環境情報に基づいて、のどかさの程度を示すのどかさ値を算出する、のどかさ演算部と、
前記のどかさ値に基づいて出力動作の表現態様を決定し、前記決定した表現態様で前記出力情報を出力するように前記エージェント機器の動作を制御する、エージェント制御部と、を備える、
エージェント制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エージェント制御方法及びエージェント制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、乗車しているユーザに対して様々な情報を提供するエージェント機器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2020-162003号公報)には、車両に搭載され、ユーザの発話に応じて、音声による応答を含むサービスを提供する車載エージェント機能部と、車載通信装置を介して車載エージェント機能部をネットワークに接続させる車載通信部と、汎用端末を介して車載エージェント機能部をネットワークに接続させる端末通信部と、車載エージェント機能部がネットワークに接続される状態を、車載通信部を介して実現する第1接続状態と、端末通信部を介して実現する第2接続状態と、から選択する、エージェント装置が記載されている。また、特許文献1には、乗員がパーソナルプロファイルに登録された乗員であることが特定されている場合に、乗員の名前を呼んだり、乗員の話し方に似せた話し方にした応答文を生成してもよいことが記載されている(段落0064)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗車しているユーザが置かれている環境は、様々である。エージェント機器が、ユーザが置かれた環境に関係なく画一的な態様で情報を出力する場合、ユーザにとって違和感となる可能性がある。例えば、風景を楽しみながらのんびりとした道を走行していた場合に、ユーザからの問いかけに対するエージェント機器の返答スピードが速いと、違和感につながる。同様に、運転負荷が多い都会を走行しているのにもかかわらず、ユーザからの問いかけに対するエージェント機器の返答スピードが遅いと、違和感につながり、その結果、苛立ちにつながる場合もある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ユーザが置かれた環境に対して違和感のない態様でエージェント機器に情報を提供させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るエージェント制御方法は、車両に搭乗しているユーザに対して出力する情報を、出力情報として決定することと、ユーザが置かれている環境を示すユーザ環境情報を取得することと、ユーザ環境情報に基づいて、のどかさの程度を示すのどかさ値を演算することと、のどかさ値に基づいて出力時の表現態様を決定し、決定した表現態様で出力情報を出力するように、出力装置であるエージェント機器の動作を制御することと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザが置かれた環境に対して違和感のない態様でエージェント機器に情報を提供させることができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るエージェントシステムを概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、のどかさ演算部の演算内容の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、演算設定情報DBに格納された情報の一例を示す概念図である。
【
図4】
図4は、表現態様DBに格納された情報の一例を示す概念図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るエージェント制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエージェントシステム1を概略的に示すブロック図である。
【0012】
エージェントシステム1は、エージェント機器3と、エージェント制御装置2と、情報取得装置15とを有している。これらは、ユーザが搭乗する車両に搭載されており、互いに通信可能となるように接続されている。
【0013】
エージェント機器3は、ユーザに対して情報を出力する出力装置である。エージェント機器3の動作は、エージェント制御装置2によって制御される。エージェント制御装置2は、ユーザに対して出力するべき情報を出力情報として決定し、決定した出力情報を出力するように、エージェント機器3の動作を制御する。情報取得装置15は、エージェント制御装置2がその機能を発揮するにあたり必要とする情報を取得する装置である。
【0014】
ここで、エージェント制御装置2は、情報取得装置15を介して、ユーザが置かれている環境を示すユーザ環境情報を取得する。そして、ユーザ環境情報に基づいて、のどかさの程度を示すのどかさ値を演算する。のどかさ値とは、例えば、車両に搭乗しているユーザが、車両の周囲及び自身が置かれている環境から感じる落ち着きの程度を推定し、数値で表現したものである。更に、エージェント制御装置2は、のどかさ値に基づいて、出力動作の表現態様を決定する。そして、決定した表現態様で出力情報を出力するように、エージェント機器3を制御する。すなわち、本実施形態によれば、エージェント機器3が情報を出力する際の表現態様が、ユーザが置かれている環境に応じて制御される。ユーザが置かれた環境に応じた表現態様が使用されるから、ユーザにとって違和感のない態様でエージェント機器3に情報を提供させることができる。
【0015】
以下に、エージェントシステム1における各部の構成について詳述する。
【0016】
エージェント機器3は、ユーザに対して情報を出力する機能を有していればよい。例えば、エージェント機器3として、スピーカー(音声出力装置)を有しており、音声により情報を出力するように構成された装置を用いることができる。
【0017】
また、エージェント機器3は、視覚により知覚されるキャラクター動作を伴って情報を出力するように構成されていてもよい。このようなエージェント機器3として、例えば、車両のダッシュボード上に設置され、外観が変化し得るように構成された小型のロボットを用いることができる。そのようなロボットが、出力情報を音声により出力するとともに、その外観を変化させることにより、視覚により知覚されるキャラクター動作を伴って出力情報を出力することができる。
【0018】
あるいは、エージェント機器3として、キャラクターが表示される表示画面を備える装置を用いることもできる。エージェント機器3は、音声により出力情報を出力すると同時に、表示画面に表示されるキャラクターの形を変化させることにより、視覚により知覚されるキャラクター動作を伴って情報を出力することができる。そのような表示画面を有するエージェント機器3としては、特に限定されるものではないが、例えば、表示装置を有するカーナビゲーションシステム、及び、表示画面を有する携帯端末(スマートフォン、タブレット端末等)等を挙げることができる。
【0019】
情報取得装置15は、エージェント制御装置2によって使用される情報を取得するために設けられている。情報取得装置15は、エージェント制御装置2が必要とする情報を取得できる装置であればよく、特に限定されない。例えば、情報取得装置15として、車内カメラ、車外カメラ、センサ類(測距センサ、ハンドルの操舵角センサ等)、外部のサーバ等と通信するための通信装置、及び音声入力装置などを挙げることができる。
【0020】
続いて、エージェント制御装置2について説明する。
【0021】
エージェント制御装置2は、既述のように、エージェント機器3の動作を制御する装置である。エージェント制御装置2は、具体的には、演算装置(CPU等)、記憶装置(ROMおよびRAM等)及び入出力装置等を備えるコンピュータにより実現される。
【0022】
図1に示されるように、エージェント制御装置2は、車内情報取得部4、判定部5、出力情報決定部6、エージェント制御部7、のどかさ演算部8、環境情報取得部9、及び設定更新部10を備えている。これらは、演算装置が記憶装置に格納された制御プログラムを実行することにより、実現される。
【0023】
また、エージェント制御装置2には、制御プログラムにより参照される情報を予め記憶したデータベースとして、呼びかけ情報DB11、応答情報DB12、表現態様DB13、及び演算設定情報DB14が設けられている。なお、これらのデータベースは、必ずしもエージェント制御装置2内に格納されている必要はなく、外部のサーバ等に記憶されていてもよい。この場合、制御プログラムは、通信装置を介して外部のサーバにアクセスすることにより、これらデータベースに記録された情報を参照することができる。
【0024】
車内情報取得部4は、車内情報として、ユーザが搭乗している車両の車室内の情報を取得するように構成されている。車内情報取得部4は、情報取得装置15を介して、車内情報を取得する。例えば、車内情報取得部4は、車内の音声データや、車内の撮影データを、車内情報として取得する。
【0025】
判定部5は、車内情報に基づいて、エージェント機器3に対するユーザからの呼びかけがあったか否かを判定するように構成されている。具体的には、判定部5は、車内情報取得部4から車内情報を取得すると、呼びかけ情報DB11を参照する。呼びかけ情報DB11には、予め、ユーザからの呼びかけを特定するための情報が記憶されている。例えば、呼びかけ情報DB11には、「近くのレストランは?」等の情報が、ユーザからの呼びかけに該当する情報として記憶されている。判定部5は、呼びかけ情報DB11を参照することにより、車内情報にユーザからの呼びかけが含まれているか否かを判定する。呼びかけが含まれている場合、判定部5は、受け取った車内情報とともに、呼びかけが含まれている旨を出力情報決定部6に通知する。
【0026】
出力情報決定部6は、ユーザに対して提供する情報を出力情報として決定するように構成されている。出力情報決定部6は、判定部5から呼びかけが含まれている旨の通知を受け取ると、応答情報DB12を参照する。応答情報DB12には、予め、ユーザからの呼びかけに対する応答の候補となる情報が格納されている。出力情報決定部6は、ユーザからの呼びかけに対する応答となる情報を応答情報DB12から取得し、出力情報として決定する。例えば、ユーザからの呼びかけが「近くのレストランは?」というものであった場合、出力情報決定部6は、情報取得装置15を介して車両の現在位置を示す情報を取得するとともに、応答情報DB12に格納された地図情報を参照し、車両の近くに存在するレストランを特定する。そして、特定したレストランを示す情報を、出力情報として決定する。出力情報決定部6は、決定した出力情報を、エージェント制御部7に通知する。
【0027】
環境情報取得部9は、ユーザが置かれている環境を示す情報を、ユーザ環境情報として取得するように構成されている。ユーザ環境情報は、情報取得装置15を介して取得される。
【0028】
ユーザ環境情報は、ユーザが感じるのどかさに影響を与え得る情報である。ユーザ環境情報として、例えば、(1)車両の周囲の状況を示す情報、(2)天気に関する情報、及び(3)日時に関する情報からなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。これらの詳細について以下に説明する。
【0029】
(1)車両の周囲の状況を示す情報
ユーザが乗車している車両(以下、自車両という場合がある)の周囲の状況は、のどかさに影響を与え得る。例えば、自車両の周囲の状況を示す情報として、(1-1)自車両の周囲に存在する他の車両(以下、他車両という場合がある)に関する情報、(1-2)自車両の周囲の建物に関する情報、(1-3)自車両が走行している道路に関する情報、及び(1-4)自車両の周囲の環境の色合いに関する情報、からなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。以下に、各情報の詳細について説明する。
【0030】
(1-1)他車両に関する情報
例えば、他車両の数が少ない場合には、のどかな環境であると感じられやすい。従って、他車両に関する情報の一例として、自車両から所定距離内に存在する他車両の数を示す情報を挙げることができる。
【0031】
あるいは、他車両の速度が遅い場合は、のどかな環境であると感じられやすい。従って、他車両に関する情報の一例として、自車両から所定距離内に存在する他車両の速度を示す情報を挙げることもできる。なお、所定距離内に他車両が複数存在する場合については、例えば平均値等を用いればよい。
【0032】
あるいは、自車両と他車両との間の車間距離が広い場合は、のどかな環境である感じられやすい。従って、他車両に関する情報の一例として、自車両と、所定距離内に存在する他車両との間の車間距離を示す情報を挙げることもできる。車間距離についても、他車両が複数存在する場合については、平均値等を用いることができる。
【0033】
上述の「他車両に関する情報」は、例えば、車外カメラを情報取得装置15として使用し、車外カメラから得られた画像データを解析することにより、得ることができる。あるいは、自車両から他車両までの距離を測定する測距センサ等を情報取得装置15として用いることにより、「他車両に関する情報」を得ることもできる。
【0034】
(1-2)周囲の建物に関する情報
自車両の周囲に存在する建物は、のどかさに影響を及ぼし得る。例えば、周囲に存在する建物の数が少ない場合には、のどかな環境であるといえる。従って、周囲の建物に関する情報の一例として、建物の数を示す情報を挙げることができる。
【0035】
あるいは、周囲の建物の属性(建物の高さ、商業施設であるか、住宅施設であるか、農業施設であるか、など)も、のどかさに影響を与え得る。例えば、高層ビルなどの高い建物が密集している場合よりも、周囲の建物の高さが低い場合の方が、のどかな環境であると感じられやすい。従って、周囲の建物に関する情報の一例として、周囲の建物の属性を示す情報を挙げることもできる。
【0036】
これらの「周囲の建物に関する情報」は、例えば、情報取得装置15を介して、車両の現在位置を示す情報と、地図情報とを取得することにより、得ることができる。あるいは、情報取得装置15としてカメラを使用し、カメラから得られた画像データを解析することにより、車両の周囲の建物に関する情報を取得することも可能である。
【0037】
(1-3)車両が走行している道路に関する情報
車両が走行している道路の状態は、のどかさに影響を与え得る。例えば、車両が走行している道路の路面が整備された路面である場合、のどかな環境であるといえる。従って、路面が整備されているか否かを示す情報を、「車両が走行している道路に関する情報」として挙げることができる。
【0038】
あるいは、車両が走行している道路の路面の凹凸が少なければ、のどかな環境であるといえる。従って、路面の凹凸に関する情報を、「車両が走行している道路に関する情報」の一例として挙げることもできる。
【0039】
あるいは、車両が走行している道路の幅が広い場合も、のどかな環境であるといえる。従って、道路の幅を示す情報を、「車両が走行している道路に関する情報」の一例として挙げることもできる。
【0040】
あるいは、車両が走行している道路が、車線変更の頻度が少ない道路である場合には、のどかな環境であるといえる。従って、車線変更の頻度などの走行ルートに関する情報を、「車両が走行している道路に関する情報」として用いることもできる。
【0041】
「車両が走行している道路に関する情報」は、例えば、情報取得装置15としてカメラを用い、道路の画像を解析することにより、取得することができる。あるいは、情報取得装置15を介して、自車の位置を示す情報と、道路の幅や整備状態等を含む情報を記述した地図情報とを取得し、これらの情報に基づいて、「車両が走行している道路に関する情報」を得ることもできる。車線変更の頻度については、例えば、情報取得装置15としてハンドルの操舵角センサを用いることにより、得ることができる。すなわち、操舵角センサから所定期間内におけるハンドルの操舵角データを取得し、取得したデータに基づき、所定期間内に車線変更が何回行われたかを求めることにより、車線変更の頻度を示す情報を得ることができる。
【0042】
(1-4)車両の周囲の環境の色合い
車両の周囲の環境の色合いも、のどかさに影響を与え得る。周囲の環境が自然色(例えば緑色)に近い色合いを有していれば、のどかな環境であると感じられやすい。従って、車両の周囲の環境の色合いに関する情報を、ユーザ環境情報として用いることもできる。
【0043】
周囲の環境の色合いに関する情報は、例えば、情報取得装置15として車外カメラを用い、車外の景色を撮影した画像データを取得し、取得したデータを解析することにより、取得することができる。
【0044】
(2)気候に関する情報
例えば天気が良好(晴天)であれば、のどかな環境であると感じられやすい。従って、天気などの気候に関する情報を、ユーザ環境情報として用いることもできる。
【0045】
気候に関する情報は、例えば、情報取得装置15を介して、自車の位置を示す情報と、天気予報情報とを取得することにより、得ることができる。天気予報情報は、例えば、情報取得装置15として通信装置を用い、外部のサーバにアクセスすることにより、得ることができる。
【0046】
(3)日時に関する情報
例えば、休日は、平日に比べて、のどかな環境である感じられやすい。従って、ユーザにとって休日であるか平日であるのかを示す情報を、ユーザ環境情報として用いることができる。ユーザにとって休日であるか平日であるのかを示す情報は、例えば、現在の日時を示す情報と、ユーザにとっての休日を特定するイベントカレンダー情報とに基づいて、得ることができる。現在の日時を示す情報は、情報取得装置15により取得することができる。イベントカレンダー情報は、例えば、情報取得装置15として通信装置を用い、予めユーザによってイベントカレンダー情報が記憶された他の端末にアクセスすることにより、取得することができる。
【0047】
あるいは、昼は夜に比べてのどかな環境であるといえる。従って、情報取得装置15を介して時刻情報を取得し、これをユーザ環境情報として用いることもできる。
【0048】
続いて、のどかさ演算部8について説明する。
【0049】
のどかさ演算部8は、環境情報取得部9からユーザ環境情報を取得し、ユーザ環境情報に基づいて、のどかさの程度を示すのどかさ値を演算するように構成されている。具体的には、のどかさ演算部8は、ユーザ環境情報から、のどかさ値を演算するための変数を取得する。そして、取得した変数を用い、予め定められたアルゴリズムに従って、のどかさ値を算出する。なお、のどかさ値は、のどかであるほど値が大きくなるように計算されてもよいし、逆に、のどかであるほど値が小さくなるように計算されてもよい。算出されたのどかさ値は、エージェント制御部7に通知される。
【0050】
なお、ユーザ環境情報が数値を示す情報(例えば、周囲の他車両の数、等)を含む場合には、その数値自体を、のどかさ値を計算するための変数として用いることができる。一方、ユーザ環境情報が、非数値情報(例えば、天気等)を含む場合には、予めエージェント制御装置2にその非数値情報の内容と変数との対応関係を設定しておき、この対応関係を参照することにより、非数値情報を変数に変換することができる。
【0051】
図2は、のどかさ演算部8の演算内容の好適な一例を概念的に示す図である。のどかさ演算部8は、好ましくは、ユーザ環境情報が下記(1)~(13)からなる群から選択される少なくとも一種の条件を示す場合に、のどかさの程度が大きいことを示す値となるように、のどかさ値を演算する。
(1)周囲の他車両の数が少ない
(2)周囲の他車両の速度が遅い
(3)自車両と他車両との間の車間距離が広い
(4)周囲の建物数が少ない
(5)周囲の建物が低い
(6)道路の幅が広い
(7)路面の凹凸が少ない
(8)整備された路面である
(9)車線変更の頻度が少ない
(10)天気が良好である
(11)休日である
(12)時刻が昼に近い
(13)周囲の環境の色合いが自然色に近い
【0052】
なお、のどかさ演算部8は、ユーザ環境情報が、複数の項目(他車両の数、他車両の車速、路面の凹凸、天気、など)についての情報を含んでいる場合には、予め設定された重み付け係数を用いることにより、のどかさ値を算出することができる。具体的には、のどかさ演算部8は、演算設定情報DB14を参照する。
図3は、演算設定情報DB14に格納された情報の一例を示す概念図である。演算設定情報DB14には、ユーザ環境情報に含まれる各項目と、重み付け係数との対応関係が記述されている。重み付け係数は、各項目がのどかさ値の演算結果に与える影響(寄与度)を反映した係数である。例えば、重み付け係数が大きければ、その項目がのどかさ値の演算結果に与える寄与が大きくなる。のどかさ演算部8は、演算設定情報DB14に格納された重み付け係数を用いて、複数の項目に関するユーザ環境情報から、のどかさ値を演算する。
【0053】
続いて、エージェント制御部7について説明する。エージェント制御部7には、既述のように、出力情報決定部6から出力情報が通知される。また、のどかさ演算部8からは、のどかさ値がエージェント制御部7に通知される。エージェント制御部7は、のどかさ値に基づき、エージェント機器3が出力情報を出力する際の表現態様を決定する。そして、決定した表現態様で出力情報を出力するように、エージェント機器3の動作を制御する。
【0054】
具体的には、エージェント制御部7は、のどかさ値を取得すると、表現態様DB13を参照する。
図4は、表現態様DB13に格納された情報の一例を示す概念図である。表現態様DB13には、のどかさ値と、表現態様との対応関係が記述されている。この表現態様DB13を参照することにより、エージェント制御部7は、のどかさ値に応じた表現態様を決定する。
【0055】
決定される表現態様としては、例えば、音声出力動作に関する表現態様が挙げられる。そのような表現態様として、例えば、発音の速さ、音声の長さ、音声の高低、及び音声の抑揚からなる群から選択される少なくとも一つに関する表現態様が挙げられる。あるいは、エージェント機器3が、視覚により知覚されるキャラクター動作を伴って出力情報を出力するように構成されている場合には、表現態様として、キャラクター動作に関する態様が決定されてもよい。そのようなキャラクター動作に関する表現態様として、例えば、キャラクター動作の速さ、キャラクター動作の間隔、及びキャラクター動作のバリエーションの数からなる群から選択される少なくとも一つに関する表現態様を挙げることができる。
【0056】
以下に、上述した表現態様の各具体例と、のどかさ値との関係について、詳述する。
【0057】
(1)発音の速さに関する表現態様
のどかな環境では、発話が遅い方が、環境に調和した動作であると感じられやすい。従って、表現態様DB13には、よりのどかである場合に、発音の速さが遅くなるように、対応関係が設定されている。なお、ここでいう発音の速さに関する表現態様としては、例えば、ユーザからの呼びかけを受け付けてからエージェント機器3が音声を発するまでの時間(すなわち、エージェント機器3の反応の速さ)、及び、発音自体の速度(単位時間当たりに発音される音の数)などが挙げられる。
【0058】
(2)音声の長さに関する表現態様
のどかな環境では、発話が長い方が、環境に調和した動作であると感じられやすい。そこで、表現態様DB13には、よりのどかである場合に、音声が長くなるように、対応関係が設定されている。例えば、出力情報に複数の文が含まれている場合には、文と文との間の発話の間隔を調整することにより、音声の長さを調節することができる。あるいは、文の途中もしくは文と文との間に間投詞(あるいは雑談)等を挿入することにより、音声の長さを調節することができる。すなわち、音声の長さに関する表現態様として、文と文との発音間隔、及び間投詞(あるいは雑談)の有無等が設定されていてもよい。
【0059】
(3)音声の高低に関する表現態様
のどかな環境では、発せられる音声が高い方が、環境に調和していると感じられやすい。そこで、表現態様DB13には、よりのどかである場合に、音声が高くなるように(周波数が高くなるように)、対応関係が設定されている。
【0060】
(4)音声の抑揚に関する表現態様
のどかな環境では、発せられる音声の抑揚が大きいほど、環境に調和していると感じられやすい。そこで、表現態様DB13には、よりのどかである場合に、より抑揚のある音声が出力されるように、対応関係が設定されている。音声の抑揚は、例えば、音量、音の高低、及び発話速度等に関して設定されていてもよい。
【0061】
(5)キャラクター動作の速さに関する表現態様
のどかな環境では、キャラクター動作が遅い方が、環境に調和した動作であると感じられやすい。そこで、表現態様DB13においては、のどかであるほど、キャラクター動作が遅くなるように、対応関係が設定されている。キャラクター動作の速さに関する表現態様は、更に、キャラクター動作の速度、キャラクター動作の加速度、及びキャラクター動作のジャーク等に関して設定されていてもよい。
【0062】
(6)キャラクター動作の間隔に関する表現態様
エージェント機器3が複数のキャラクター動作を伴って出力情報を出力する場合、キャラクター動作同士の間隔が長い方が、のどかな環境に調和した動作であると感じられやすい。そこで、表現態様DB13においては、のどかであるほど、キャラクター動作同士の間隔が長くなるように、対応関係が設定されている。
【0063】
(7)キャラクター動作のバリエーション数に関する表現態様
エージェント機器3が複数のキャラクター動作を伴って出力情報を出力する場合、キャラクター動作のバリエーション数が多い方が、のどかな環境に調和した動作であると感じられやすい。そこで、表現態様DB13においては、のどかであるほど、キャラクター動作のバリエーション数が多くなるように、対応関係が設定されている。
【0064】
なお、上述の表現態様の具体例はあくまで一例であり、その他の表現態様が設定されていてもよい。
【0065】
続いて、
図1に戻り、設定更新部10について説明する。設定更新部10は、必要に応じて、演算設定情報DB14に格納された情報を更新するように構成されている。具体的には、設定更新部10は、エージェント機器3が出力情報を出力した後、情報取得装置15及び車内情報取得部4を介して、車内情報を取得する。そして、車内情報に基づき、ユーザが違和感を持ったか否かを判定する。例えば、設定更新部10は、車内情報として、ユーザの表情を撮像したデータを取得する。そして、画像認識を行うことにより、ユーザが違和感を持ったか否かを判定する。ユーザが違和感を持ったと判定した場合、設定更新部10は、演算設定情報DB14の内容を更新する。例えば、重み付け係数があらかじめ定められた値よりも大きい項目(のどかさ値の演算結果に対する寄与度が大きい項目)について、のどかさ値の演算に対する寄与度が小さくなるように、重み付け係数を更新する。あるいは、重み付け係数があらかじめ定められた値よりも小さい項目について、のどかさ値の演算に対する寄与度が大きくなるように、重み付け係数を更新する。これにより、次回以降、のどかさ値の演算結果が、ユーザが感じるのどかさをより反映した値になりやすくなり、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが感じるのどかさに対してより調和しやすくなる。
【0066】
以上が、エージェントシステム1の構成についての説明である。続いて、本実施形態に係るエージェント制御方法について説明する。
図5は、本実施形態に係るエージェント制御方法を示すフローチャートである。
【0067】
[ステップS1:車内情報及びユーザ環境情報の取得]
まず、車内情報取得部4が、情報取得装置15を介して、車内情報を取得する。車内情報は、判定部5に通知される。また、環境情報取得部9が、情報取得装置15を介して、ユーザ環境情報を取得する。ユーザ環境情報は、のどかさ演算部8に送られる。
【0068】
[ステップS2:呼びかけの有無の判定]
車内情報を取得した判定部5は、呼びかけ情報DB11を参照し、車内情報にユーザからの呼びかけが含まれているか否かを判定する。判定部5は、ユーザからの呼びかけが含まれていると判定した場合、車内情報とともに判定結果を出力情報決定部6に通知する。
【0069】
[ステップS3:出力情報の決定]
判定部5からの通知を受け取った出力情報決定部6は、応答情報DB12を参照して、車内情報に含まれるユーザからの呼びかけに対する応答となる情報を、出力情報として決定する。決定された出力情報は、エージェント制御部7に通知される。
【0070】
[ステップS4:のどかさ値の演算]
一方、ステップS1においてユーザ環境情報を取得したのどかさ演算部8は、ユーザ環境情報に基づいて、演算設定情報DB14を参照しつつ、のどかさ値8を演算する。演算結果であるのどかさ値8は、エージェント制御部7に通知される。
【0071】
[ステップS5:エージェント機器3の制御]
エージェント制御部7は、のどかさ値を取得すると、表現態様DB13を参照し、のどかさ値に応じた表現態様を決定する。そして、エージェント制御部7は、決定した表現態様で出力情報を出力するように、エージェント機器3の動作を制御する。これにより、出力情報が、ユーザが置かれた環境ののどかさに応じた表現態様で、出力される。ユーザが置かれた環境に応じた表現で出力情報が出力されるから、ユーザが、エージェント機器3の動作に違和感を持ち難くなる。
【0072】
[ステップS6:違和感の判定]
エージェント機器3により出力情報が出力されると、車内情報取得部4が再び車内情報を取得する。この際、車内情報として、ユーザの表情などを示す画像データなどが取得される。車内情報は、車内情報取得部4から設定更新部10に送られる。設定更新部10は、車内情報に基づき、ユーザが違和感を持っているか否かを判定する。
【0073】
[ステップS7:演算設定情報の更新]
ステップS6において違和感を持っていると判定した場合、設定更新部10は、演算設定情報DB14の内容を更新する。
【0074】
以上が、エージェント制御方法についての説明である。なお、上述の各ステップにおける各動作順番は、矛盾の無い範囲内で変更することもできる。例えば、ユーザ環境情報の取得は、ステップS1ではなく、ステップS2以降において実施されてもよい。すなわち、ステップS2においてユーザからの呼びかけが「有り」と判定された後に、ユーザ環境情報が取得されてもよい。
【0075】
以上、本実施形態について説明した。上述の通り、本実施形態によれば、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが置かれた環境に対応した表現になるように、制御される。従って、ユーザが置かれた環境に応じて、違和感のない態様でエージェント機器3に情報を提供させることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、出力情報決定部6が、ユーザからの呼びかけに対する応答となる情報を、出力情報として決定する場合について説明した。すなわち、エージェント機器3が、ユーザからの呼びかけに応じて情報を出力する場合について説明した。しかしながら、エージェント機器3によって出力される出力情報は、必ずしも、ユーザからの呼びかけに対する応答でなくてもよい。例えば、出力情報決定部6は、予め設定された条件が成立した場合に、出力情報を決定するように構成されていてもよい。例えば、出力情報決定部6は、外部のサーバから渋滞情報を取得するように構成されており、渋滞情報を取得した場合に、取得した渋滞情報をユーザに対して出力するべき出力情報として決定してもよい。あるいは、出力情報決定部6は、ガソリン量を示すセンサからガソリンの残量を示す情報を取得し、ガソリン残量が所定の値を下回ったと判定した場合に、ガソリンの残量が少ない旨を示す情報を、出力情報として決定するように構成されていてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、エージェント制御部7が、ユーザが置かれた環境を示すユーザ環境情報に基づき、エージェント機器3を制御する場合について説明した。ただし、エージェント制御部7は、ユーザ環境情報に加えて、他の情報をも利用して、エージェント機器3の動作を制御してもよい。例えば、エージェント制御部7は、情報取得装置15を介してユーザの表情等のユーザ自身の状態を示す情報を取得し、ユーザ自身の状態に応じた振る舞いとなるように、エージェント機器3の出力動作を制御してもよい。
【0078】
以下に、本実施形態における構成と作用効果について、代表的なものについて要約する。
【0079】
本実施形態に係るエージェント制御方法は、車両に搭乗しているユーザに対して出力する情報を、出力情報として決定することと、ユーザが置かれている環境を示すユーザ環境情報を取得することと、ユーザ環境情報に基づいて、のどかさの程度を示すのどかさ値を演算することと、のどかさ値に基づいて出力時の表現態様を決定し、決定した表現態様で出力情報を出力するように、出力装置であるエージェント機器3の動作を制御することとを備えている。この方法によれば、ユーザが置かれている環境ののどかさの程度に応じた表現態様で、エージェント機器3が情報を出力する。従って、違和感のない態様で、ユーザに対して情報を提供することができる。
【0080】
好ましい一態様において、ユーザ環境情報は、車両の周囲の状況を示す情報、気候に関する情報、及び日時に関する情報からなる群から選択される少なくとも一つを含む。これらの情報をユーザ環境情報として用いることにより、のどかさ値として、ユーザが感じるのどかさをより反映した値が算出される。従って、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが置かれた環境に調和した動作になりやすくなる。
【0081】
より好ましい一態様において、車両の周囲の状況を示す情報は、車両の周囲の他車両に関する情報、車両の周囲の建物に関する情報、車両が走行している道路に関する情報、及び車両の周囲の環境の色合いに関する情報からなる群から選択される少なくとも一つを含む。これらの情報をユーザ環境情報として用いることにより、のどかさ値として、ユーザが感じるのどかさをより反映した値が算出される。その結果、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが置かれた環境に調和していると感じられやすくなる。
【0082】
好ましい一態様において、エージェント機器3は、音声により出力情報を出力するように構成された音声出力装置を有している。そして、エージェント機器3の出力動作の表現態様として、発音の速さ、音声の長さ、音声の高低、及び音声の抑揚からなる群から選択される少なくとも一つに関する態様が決定される。これらの表現態様は、のどかさに対して調和しているか否かという点において、ユーザにより意識されやすい。従って、これらの表現態様が制御されることによって、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが置かれた環境に調和していると感じられやすくなる。
【0083】
好ましい一態様において、エージェント機器3は、視覚により知覚されるキャラクター動作を伴って出力情報を出力するように構成されている。そして、エージェント機器3の出力動作の表現態様として、キャラクター動作の速さ、キャラクター動作の長さ、及びキャラクター動作のバリエーションの数からなる群から選択される少なくとも一つに関する態様が決定される。これらの表現態様は、環境ののどかさに対して調和しているか否かという点において、ユーザにより意識されやすい。従って、これらの表現態様が制御されることによって、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが置かれた環境に調和していると感じられやすくなる。
【0084】
好ましい一態様において、のどかさ演算部8は、ユーザ環境情報が下記(1)~(13)からなる群から選択される少なくとも一種の条件を示す場合に、よりのどかであることを示す値となるように、のどかさ値を演算する。
(1)周囲の他車両の数が少ない
(2)周囲の他車両の速度が遅い
(3)自車両と他車両との間の車間距離が広い
(4)周囲の建物数が少ない
(5)周囲の建物が低い
(6)道路の幅が広い
(7)路面の凹凸が少ない
(8)整備された路面である
(9)車線変更の頻度が少ない
(10)天気が良好である
(11)休日である
(12)時刻が昼に近い
(13)周囲環境の色合いが自然色に近い
【0085】
上記(1)~(13)の条件の際に、よりのどかであることを示す値となるようにのどかさ値を演算することにより、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが置かれた環境に調和した動作であると感じられやすくなる。
【0086】
好ましい一態様において、エージェント制御部7は、のどかさ値がよりのどかであることを示す値である場合に、下記(1)~(7)からなる群から選択される少なくとも一種の条件に合うように、エージェント機器3の出力動作の表現態様を決定する。
(1)エージェント機器が出力情報を音声により出力する場合における発音の速さが遅い
(2)エージェント機器が出力情報を音声により出力する場合における音声の長さが長い
(3)エージェント機器が出力情報を音声により出力する場合における音声が高い
(4)エージェント機器が力情報を音声により出力する場合における音声の抑揚が大きい
(5)エージェント機器がキャラクター動作を伴って出力情報を出力する場合において、キャラクター動作が遅い
(6)エージェント機器が複数のキャラクター動作を伴って出力情報を出力する場合において、キャラクター動作間の間隔が長い
(7)エージェント機器が複数のキャラクター動作を伴って出力情報を出力する場合において、キャラクター動作のバリエーション数が多い
【0087】
よりのどかである場合に、上記(1)~(7)の条件でエージェント機器3の出力動作が制御されることにより、エージェント機器3の出力動作が、ユーザが置かれた環境に対して調和していると感じられやすくなる。
【0088】
好ましい一態様において、エージェント制御方法は、更に、車両の車室内の状態を示す車内情報を取得することと、車内情報に基づいて、エージェント機器に対してユーザから呼びかけがあったか否かを判定することと、を備える。出力情報として決定することは、呼びかけがあった場合に、呼びかけに対する応答となる情報を出力情報として決定することを含む。このような構成によれば、ユーザの呼びかけに対するエージェント機器3の応答動作が、周囲の環境ののどかさに応じた表現態様になるように制御される。ユーザの呼びかけに対して応答する際のエージェント機器3の表現は、のどかさに調和しているか否かという点において、ユーザにより意識されやすい。従って、呼びかけに対するエージェント機器3の応答動作が、のどかさに応じた表現態様になるように制御されることで、違和感がより生じにくくなる。
【符号の説明】
【0089】
1・・・エージェントシステム、2・・・エージェント制御装置、3・・・エージェント機器、4・・・車内情報取得部、5・・・判定部、6・・・出力情報決定部、7・・・エージェント制御部、8・・・のどかさ演算部、9・・・環境情報取得部、10・・・設定更新部、11・・・呼びかけ情報DB、12・・・応答情報DB、13・・・表現態様DB、14・・・演算設定情報DB、15・・・情報取得装置