(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171741
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シリンダライナ
(51)【国際特許分類】
F02F 1/16 20060101AFI20241205BHJP
F16J 10/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F02F1/16 A
F16J10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088919
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真亮
【テーマコード(参考)】
3G024
3J044
【Fターム(参考)】
3G024AA22
3G024AA27
3G024AA31
3G024FA08
3G024GA02
3G024GA16
3G024HA02
3G024HA03
3G024HA05
3G024HA07
3G024HA10
3G024HA15
3J044AA14
3J044BA02
3J044BA03
3J044BA04
3J044BB18
3J044BB37
3J044BC13
3J044CB24
3J044CC02
3J044CC05
3J044DA09
(57)【要約】
【課題】トップリングの浮きや、トップリングの合口隙間が拡がることを抑制でき、燃焼ガス抜け、及び、ブローアップ(オイル上がり)を抑制することが可能なシリンダライナを提供する。
【解決手段】シリンダライナ12は、その内周面に、かつ、少なくとも、ピストン10が上死点に位置しているときにピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲に、下死点側から上死点側にかけてシリンダライナ12の内径を徐々に縮径するように形成されたテーパ部121を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダブロックに設けられ、ピストンを往復動自在に収容する略円筒状のシリンダライナにおいて、
内周面に、かつ、少なくとも、前記ピストンが上死点に位置しているときに該ピストンのトップリングと対向し得る範囲に、下死点側から上死点側にかけて前記シリンダライナの内径を徐々に縮径するように形成されたテーパ部を備えることを特徴とするシリンダライナ。
【請求項2】
前記テーパ部は、前記シリンダライナの内周面に径方向に積層された複数の層から構成され、
前記複数の層を構成する各層のうち、前記シリンダライナから遠い層は、前記シリンダライナに近い層、及び、前記トップリングよりも柔らかい素材から形成されることを特徴とする請求項1に記載のシリンダライナ。
【請求項3】
前記テーパ部の径方向の厚みは、前記トップリングの合口隙間の寸法に基づいて設定されることを特徴とする請求項2に記載のシリンダライナ。
【請求項4】
前記テーパ部は、燃焼終了時期に前記ピストンのトップリングと対向し得る範囲から、前記ピストンが上死点に位置しているときに該ピストンのトップリングと対向し得る範囲にかけて形成されることを特徴とする請求項3に記載のシリンダライナ。
【請求項5】
前記テーパ部は、前記シリンダライナの上端まで延びるように形成されることを特徴とする請求項4に記載のシリンダライナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダブロックに設けられ、ピストンを往復動自在に収容するシリンダライナに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンでは、混合気の燃焼圧によりピストンが押し下げられると、ピストンの往復直線運動がコネクティングロッドを介して回転運動に変換され、クランクシャフトがメインジャーナルの中心軸を回転中心として回転する。
【0003】
ところで、従来から、シリンダとピストンとの気密性を保ちつつ、ピストンを滑らかに往復動させるため、エンジンのシリンダブロックには、ピストンを往復動自在に収容する円筒状のシリンダライナが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ピストンには、シリンダライナとピストンとの間の気密を保ち、燃焼室で発生する高圧の燃焼ガスをシールするピストンリング(トップリング)が装着されている。特に、トップリングは、高温高圧の燃焼ガスをシールする機能や、オイル上がりを抑制する機能等を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、混合気の燃焼時にトップリング(シール面)がシリンダライナから浮いたり、トップリングの合口隙間が拡がったりすると、燃焼室からクランクケース側へ高温高圧の燃焼ガスが抜け、ブローバイガスが増加するおそれがある。また、モータリング時など燃焼室が負圧になっているときにトップリング(シール面)が浮いたり、合口隙間が拡がったりすると、クランクケースから燃焼室側へブローアップ(オイル上がり)を生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、トップリングの浮きや、トップリングの合口隙間が拡がることを抑制でき、燃焼ガス抜け、及び、ブローアップ(オイル上がり)を抑制することが可能なシリンダライナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るシリンダライナは、エンジンのシリンダブロックに設けられ、ピストンを往復動自在に収容する略円筒状のシリンダライナにおいて、内周面に、かつ、少なくとも、ピストンが上死点に位置しているときに該ピストンのトップリングと対向し得る範囲に、下死点側から上死点側にかけてシリンダライナの内径を徐々に縮径するように形成されたテーパ部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るシリンダライナによれば、内周面に、かつ、少なくとも、ピストンが上死点に位置しているときに該ピストンのトップリングと対向し得る範囲(すなわち、トップリング溝と対向する範囲)に、下死点側から上死点側にかけてシリンダライナの内径を徐々に縮径するように形成されたテーパ部を備えている。そのため、ピストン(トップリング)が上死点(TDC)に位置するときに、トップリングがテーパ部に乗り上げることにより、トップリングをテーパ部によって縮径し、トップリングの合口隙間を縮小する(詰める)こと、及び、トップリングの浮きを防止し、シリンダライナとトップリングとの接触面積を拡大することができる。それ故、シリンダライナとトップリングとの間のシール性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トップリングの浮きや、トップリングの合口隙間が拡がることを抑制でき、燃焼ガス抜け、及び、ブローアップ(オイル上がり)を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るシリンダライナが組み込まれたエンジン(シリンダブロック)を示す水平断面図である。
【
図2】実施形態に係るシリンダライナに往復動自在に収容されるピストンに装着されたピストンリングを示す断面図である。
【
図3】実施形態に係るシリンダライナの要部(テーパ部)の構成を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係るシリンダライナを構成するテーパ部が形成される範囲(領域)を示す断面図である。
【
図5】実施形態に係るシリンダライナ及びトップリング(のみ)を軸方向から(下死点側から)見た図である((a)はピストン(トップリング)が下死点に位置する場合を示し、(b)はピストン(トップリング)が上死点に位置する場合を示す)。
【
図6】実施形態に係るシリンダライナの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
まず、
図1~
図5を併せて用いて、実施形態に係るシリンダライナ12の構成について説明する。
図1は、シリンダライナ12が組み込まれたエンジン1(シリンダブロック11)を示す水平断面図である。
図2は、シリンダライナ12に往復動自在に収容されるピストン10に装着されたピストンリング104を示す断面図である。
図3は、シリンダライナ12の要部(テーパ部121)の構成を示す断面図である。
図4は、シリンダライナ12を構成するテーパ部121が形成される範囲(領域)を示す断面図である。
図5は、シリンダライナ12及びトップリング1041(のみ)を軸方向から(下死点側から)見た図である。なお、(a)はピストン10(トップリング1041)が下死点に位置する場合を示し、(b)は、ピストン10(トップリング1041)が上死点に位置する場合を示す。
【0014】
エンジン1は、どのような形式のものでもよいが、例えば水平対向型の4気筒エンジンである。エンジン1のシリンダブロック11には、シリンダとピストン10との気密性を保ちつつ、ピストン10を滑らかに往復動させるため、略円筒状のシリンダライナ12が設けられている。シリンダライナ12は、例えば、鋳鉄等からなり、シリンダブロック11に鋳込まれるか、又は圧入される。各シリンダライナ12には、ピストン10が往復動自在に収容されている。なお、シリンダライナ12の詳細については後述する。
【0015】
エンジン1では、ピストン10がシリンダライナ12内を往復運動して吸気、圧縮、膨張、排気の4行程を繰り返して行うことにより、空気と燃料の混合気を燃焼させて駆動力を得る。
【0016】
各ピストン10には、コネクティングロッド13の一端が回転自在に接続されている。コネクティングロッド13の他端は、クランクアームのクランクピンに回転自在に取り付けられている。エンジン1では、コネクティングロッド13により、ピストン10の往復直線運動が回転運動に変換され、クランクシャフト14が回転する。
【0017】
ピストン10は、例えば、アルミニウム合金等からなり、略円筒形状に形成されている。
図2に示されるように、ピストン10外周面のピストンランド101(トップランド1011、セカンドランド1012、サードランド1013)には、軸方向に沿って例えば3列の円環状のピストンリング溝103が形成されている。すなわち、ピストントップ(冠面)102側から、トップリング溝1031、セカンドリング溝1032、オイルリング溝1033が形成されている。
【0018】
各ピストンリング溝103には、ピストンリング104が装着されている。より具体的には、トップリング溝1031には、シリンダ内壁とピストン10との間の気密を保ち、燃焼室で発生する高圧の燃焼ガスをシールする(漏れを防ぐ)トップリング(コンプレッションリング)1041が装着されている。
【0019】
セカンドリング溝1032には、トップリング1041と同様に、燃焼室からのガス漏れ防止などの機能を有するセカンドリング(コンプレッションリング)1042が装着されている。また、オイルリング溝1033には、余分なエンジンオイルの掻き落としや燃焼室へのエンジンオイルの浸入防止などの機能を有するオイルリング1043が装着されている。
【0020】
特に、シリンダライナ12は、トップリング1041の浮きや、トップリング1041の合口隙間が拡がることを抑制し、燃焼ガス抜け、及び、ブローアップ(オイル上がり)を抑制する機能を有している。
【0021】
そのため、
図3に示されるように、シリンダライナ12の内周面には、少なくとも、ピストン10が上死点(TDC)に位置しているときに該ピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲(すなわち、トップリング溝1031と対向する範囲)に、下死点側から上死点側にかけて(軸方向に)シリンダライナ12の内径を徐々に縮径するように形成されたテーパ部121が設けられている。なお、
図3に示した例では、ピストン10が上死点に位置しているときにトップリング1041と対向し得る範囲に加えて、シリンダライナ12の上端までテーパ部121を形成した(詳細は後述する)。
【0022】
ただし、より広い範囲(上死点位置から燃焼終了時位置までの間)においてシール性を高めるため、
図4に示されるように、テーパ部121は、燃焼終了時期(タイミング)(燃焼終了時期がばらつく場合には最も遅い燃焼終了時期)にピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲(トップリング溝1031と対向する範囲)から、ピストン10が上死点(TDC)に位置しているときに、ピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲にかけて形成されることが好ましい。
【0023】
又は、テーパ部121は、エンジン1の点火時期(タイミング)(最も進角されたときの点火時期)にピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲(トップリング溝1031と対向する範囲)から、ピストン10が上死点(TDC)に位置しているときに、ピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲にかけて形成されてもよい。
【0024】
また、クレビスボリュームの低減による未燃損失の低減(熱効率、エミッションの改善)を図るとともに、テーパ部121の強度を高めるため、テーパ部121は、シリンダライナ12の上端(トップデッキ)まで延びるように形成されることが好ましい(
図3、
図4参照)。
【0025】
ここで、テーパ部121の径方向の厚み及びテーパ角(トップリング1041がテーパ部121に乗り上げたときの乗り上げ高さ)は、トップリング1041の合口隙間の寸法に基づいて設定される。すなわち、テーパ部121の径方向の厚み及びテーパ角は、
図5(b)に示されるように、トップリング1041の合口が底づきしない程度に合口を詰めてトップリング1041を縮径することができる寸法に設定される。
【0026】
よって、トップリング1041がテーパ部121に乗り上げることにより縮径して合口が底づきし、トップリング1041がそれ以上縮径できなくなる寸法が、ピストン10が上死点に位置しているときにトップリング1041と対向し得る範囲におけるテーパ部121の径方向の厚みの上限(最大厚)となる。なお、ピストン10が上死点に位置しているときにトップリング1041と対向し得る範囲よりも上側(シリンダライナ12の上端側)は、ピストン10の外周面とシリンダライナ12の内周面との間隔がテーパ部121の径方向の厚みの上限(最大厚)となる(
図4参照)。
【0027】
ここで、例えば、トップリング1041とシリンダライナ12との間は数百μmであり、トップリング1041の合口隙間が0.2~0.3mmの場合に、テーパ部121の径方向の厚みは数μ~数十μmとすることが好ましい。なお、組付け等を考慮すると、上記寸法は冷間時の寸法で規定することが好ましい。
【0028】
特に、テーパ部121は、シリンダライナ12の内周面に径方向に積層された複数の層(
図3に示した例では6つの層)から構成される。
【0029】
また、エンジン1が稼働されて、トップリング1041がテーパ部121に接触することにより、テーパ部121が摩耗して変形し、テーパ部121(テーパ面)の形状を、トップリング1041の先端部の形状(断面形状)にフィッティングさせるため、そして、よりシール性を高めるため、複数の層を構成する各層のうち、シリンダライナ12から遠い層は、シリンダライナ12に近い層、及び、トップリング1041よりも柔らかい素材から形成される。
【0030】
すなわち、シリンダライナ12と接する層には、トップリング1041の素材(材質)に近いより硬い素材(例えば、鋼材、ステンレス、鉄系合金など)が用いられ、シリンダライナ12から離れるにしたがって(表面に近づくにつれて)摩耗・変形しやすい柔らかい素材(例えば、アルミ合金、銅系合金、フッ素などの樹脂材)が用いられる。
【0031】
ここで、トップリング1041の素材(材質)としては、例えば、鋳鉄、スチール(ステンレス鋼、シリコンクロム鋼、炭素鋼)等が用いられる。また、リング摺動面に硬質クロムメッキ、窒化処理(窒化マルテンサイト系ステンレス)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング等の表面改質が施されたものが用いられる。
【0032】
シリンダライナ12側の層には、トップリング1041の表面と同等以上の硬さ(HBW)を有する素材(材質)、例えば、鋳鉄、スチール(ステンレス鋼、シリコンクロム鋼、炭素鋼)や、リング摺動面に硬質クロムメッキ、窒化処理(窒化マルテンサイト系ステンレス)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング等の表面改質が施されたものが用いられる。
【0033】
一方、ピストン10側の層には、トップリング1041の表面よりも硬さ(HBW)が低い(すなわち柔らかい)素材(材質)、例えば、鋳鉄、鉄合金系、アルミ、アルミ合金系、銅、銅合金系、フッ素樹脂、他樹脂系素材等が用いられる。なお、最表面には、機能性材料、セラミックスや樹脂材、触媒材料等をコーティングしてもよい。なお、各層の素材は、2種類以上であれば、何種類に分けてもよい。
【0034】
テーパ部121の各層の形成(加工方法)には、例えば、素材の選択性が広い電子ビーム蒸着(電子ビーム方式)などを用いることができる。そして、各層(薄膜)毎に蒸着領域をずらす(変化させる)ことでテーパ形状が形成される。
【0035】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、シリンダライナ12の内周面に、かつ、少なくとも、ピストン10が上死点(TDC)に位置しているときにピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲(トップリング溝1031と対向する範囲)に、下死点側から上死点側にかけてシリンダライナ12の内径を徐々に縮径するように形成されたテーパ部121を備えている。そのため、ピストン10(トップリング1041)が上死点(TDC)に位置するときに、トップリング1041がテーパ部121に乗り上げることにより、トップリング1041をテーパ部121によって縮径し、トップリング1041の合口隙間を縮小する(詰める)こと、及び、トップリング1041の浮きを防止し、シリンダライナ12とトップリング1041との接触面積を拡大することができる。それ故、シリンダライナ12とトップリング1041との間のシール性(特に、上死点におけるシール性)をより高めることができる(
図5(b)及び
図6参照)。
【0036】
その結果、本実施形態によれば、トップリング1041の浮きや、トップリング1041の合口隙間が拡がることを抑制でき、燃焼ガス抜け、及び、ブローアップ(オイル上がり)を抑制することが可能となる。
【0037】
本実施形態によれば、テーパ部121が、シリンダライナ12の内周面に径方向に積層された複数の層(
図3の例では6つの層)から構成され、複数の層を構成する各層のうち、シリンダライナ12から遠い層は、シリンダライナ12に近い層、及び、トップリング1041よりも柔らかい素材から形成される。そのため、エンジン1が稼働されて、トップリング1041がテーパ部121に接触することにより、テーパ部121(特に柔らかい素材からなる表面側の層)が摩耗して変形し、テーパ部121(テーパ面)の形状を、トップリング1041の先端部の形状(断面形状)にフィッティングすることができる。よって、上死点付近での乗り上げ高さを確保しつつ、上死点付近でのシール性をより高めることができる。
【0038】
本実施形態によれば、テーパ部121の径方向の厚み及びテーパ角が、トップリング1041の合口隙間の寸法に基づいて設定される。そのため、ピストン10(トップリング1041)が上死点に位置するときにトップリング1041の合口が底づきしない程度に該合口を詰めてトップリング1041を縮径することができる。
【0039】
本実施形態によれば、テーパ部121が、燃焼終了時期(タイミング)にピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲(トップリング溝1031と対向する範囲)から、ピストン10が上死点(TDC)に位置しているときに、ピストン10のトップリング1041と対向し得る範囲にかけて形成される。そのため、より広い範囲(上死点位置から燃焼終了時位置までの間)においてシール性を高めることができる。
【0040】
本実施形態によれば、テーパ部121が、シリンダライナ12の上端(トップデッキ)まで延びるように形成される。そのため、クレビスボリュームの低減による未燃損失の低減(熱効率、エミッションの改善)を図るとともに、テーパ部121の強度を高めることができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ピストン10を水平対向型の4気筒エンジン1に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、どのような型式のエンジンにも適用することができる、例えば、直列型の4気筒エンジンやV型の6気筒エンジンなどにも適用することができる。また、ガソリンエンジンの他、ディーゼルエンジン等にも適用することができる。さらに、エンジンブロックそのものにシリンダライナの性質を持たせたライナレスエンジンにも適用することができる。
【0042】
また、テーパ部121の形状は、上記実施形態に限られることなく、例えば、断面が台形等であってもよい。また、テーパ部121を構成する層の数は6層に限られることなく、要件等に応じて任意に設定することができる。
【0043】
さらに、上記実施形態で示した寸法、素材(材料)、その他具体的な数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であり、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。特に、テーパ部121を構成する各層の素材は、2種類以上であればよく、要件等に応じて任意に選択することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 エンジン
10 ピストン
101 ピストンランド
1011 トップランド
1012 セカンドランド
1013 サードランド
102 ピストントップ(冠面)
103 ピストンリング溝
1031 トップリング溝
1032 セカンドリング溝
1033 オイルリング溝
104 ピストンリング
1041 トップリング
1042 セカンドリング
1043 オイルリング
11 シリンダブロック
12 シリンダライナ
121 テーパ部
13 コネクティングロッド(コンロッド)
14 クランクシャフト