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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171743
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/06 20220101AFI20241205BHJP
   H04L 41/0853 20220101ALI20241205BHJP
【FI】
H04L41/06
H04L41/0853
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088923
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】成田 圭佑
(57)【要約】
【課題】ユーザ側のネットワークの不調を検出できる情報処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】設定変更の実績を表す情報と、再起動の実績を表す情報とを少なくとも含む実績情報を記録する通信装置21に接続され、通信装置21から実績情報を取得して、所定時間内における当該実績情報を参照して、当該通信装置21が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する処理を行う情報処理装置1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定変更の実績を表す情報と、再起動の実績を表す情報とを少なくとも含む実績情報を記録する通信装置に接続され、
前記通信装置から前記実績情報を取得する取得手段と、
所定時間内における当該実績情報を参照して、当該通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する処理を行う推定手段と、
を含む情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理装置であって、
前記推定手段は、前記取得手段が取得した実績情報を参照し、当該設定変更と再起動との処理の回数をそれぞれカウントし、当該カウントした回数に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する情報処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の情報処理装置であって、
前記実績情報は、設定変更と再起動との処理の回数をそれぞれ含み、
前記推定手段は、設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を参照し、当該回数に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する情報処理装置。
【請求項4】
請求項2記載の情報処理装置であって、
前記推定手段は、前記カウントした、設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を重みづけ加算して得られた指標を所定のしきい値と比較し、当該比較の結果に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する情報処理装置。
【請求項5】
請求項3記載の情報処理装置であって、
前記推定手段は、前記設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を重みづけ加算して得られた指標を所定のしきい値と比較し、当該比較の結果に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する情報処理装置。
【請求項6】
請求項2または4記載の情報処理装置であって、
前記推定手段は、前記設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を、それぞれについて予め定めたしきい値と比較して、当該比較の結果に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記推定手段は、前記取得手段が前記通信装置から取得した実績情報を参照し、所定の期間に当該通信装置が記録した実績情報に係る所定の統計処理を行い、当該統計処理結果を用いて基準を決定し、前記取得手段が通信装置から取得した実績情報と前記決定した基準とを用いて、当該通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する情報処理装置。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5または7のいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であると推定した場合、所定の通知処理を行う情報処理装置。
【請求項9】
設定変更の実績を表す情報と、再起動の実績を表す情報とを少なくとも含む実績情報を記録する通信装置に接続されるコンピュータを、
前記通信装置から前記実績情報を取得する取得手段と、
所定時間内における当該実績情報を参照して、当該通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する処理を行う推定手段と、
として機能させるプログラム

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Wi-Fiルータなど、種々のネットワーク機器が家庭用にも普及しており、ユーザがこれらネットワーク機器によって構成されるネットワークを管理する機会も増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-150672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらネットワークの管理は一般に、ユーザにとって負担が大きく、ユーザ側のネットワークの不調を検知して、対応につなげることのできる手段が望まれている。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、Wi-Fiルータ等を含むユーザ側のネットワークの不調を検出できる情報処理装置及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【0006】
なお、起動時において正常に起動した場合、パケット通信方式による通信を開始し、起動時において通信装置の再起動が生じた場合、通信装置に異常が生じていることを通知するための通知情報を回線交換方式によって所定のサーバ装置に送信するという技術が特許文献1に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来例の問題点を解決する本発明の一態様は、情報処理装置であって、設定変更の実績を表す情報と、再起動の実績を表す情報とを少なくとも含む実績情報を記録する通信装置に接続され、前記通信装置から前記実績情報を取得する取得手段と、所定時間内における当該実績情報を参照して、当該通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する処理を行う推定手段と、を含むこととしたものである。
【0008】
本発明のこの態様によると、通信装置の再起動や設定変更の実績に応じてネットワークの不調を検出できる。
【0009】
またここで、前記推定手段は、前記取得手段が取得した実績情報を参照し、当該設定変更と再起動との処理の回数をそれぞれカウントし、当該カウントした回数に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定することとしてよい。
【0010】
この例によると、通信装置の再起動や設定変更の回数に応じてネットワークの不調を検出できる。
【0011】
さらにこのとき前記推定手段は、前記カウントした、設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を重みづけ加算して得られた指標を所定のしきい値と比較し、当該比較の結果に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定してもよい。
【0012】
また前記実績情報は、設定変更と再起動との処理の回数をそれぞれ含み、前記推定手段は、設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を参照し、当該回数に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定することとしてもよい。
【0013】
この例によると、通信装置の再起動や設定変更のそれぞれの回数に応じてネットワークの不調を検出できる。
【0014】
さらにこのときも前記推定手段は、前記参照した設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を重みづけ加算して得られた指標と所定のしきい値とを比較し、当該比較の結果に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定してもよい。
【0015】
さらに前記推定手段は、前記設定変更と再起動との処理のそれぞれの回数を、それぞれについて予め定めたしきい値と比較して、当該比較の結果に基づいて前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定してもよい。
【0016】
さらに前記推定手段は、前記取得手段が前記通信装置から取得した実績情報を参照し、所定の期間に当該通信装置が記録した実績情報に係る所定の統計処理を行い、当該統計処理結果を用いて基準を決定し、前記取得手段が通信装置から取得した実績情報と前記決定した基準とを用いて、当該通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定してもよい。
【0017】
この例によると、ネットワークが不調な状態であるか否かの推定の基準を統計的に決定できる。
【0018】
またこれらの例において、前記通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であると推定した場合、所定の通知処理を行うこととしてもよい。
【0019】
このようにすると、ネットワークが不調であると検出した場合に対応につなげることが可能となる。
【0020】
また本発明の別の態様は、プログラムであって、設定変更の実績を表す情報と、再起動の実績を表す情報とを少なくとも含む実績情報を記録する通信装置に接続されるコンピュータを、前記通信装置から前記実績情報を取得する取得手段と、所定時間内における当該実績情報を参照して、当該通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する処理を行う推定手段と、として機能させることとしたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、通信装置の再起動や設定変更の実績に応じてネットワークの不調を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置を含むシステムの例を表す構成ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る情報処理装置が利用する実績の情報の記録例を表す説明図である。
図3】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の例を表す機能ブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の動作例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る情報処理装置1を含む情報処理システムは、図1に例示するように、情報処理装置1と、複数の通信装置21と、複数の端末装置22とを含んで構成される。
【0024】
本実施の形態の一例では、通信装置21は、ユーザ側のネットワーク20に接続されたWi-Fiルータ等であり、無線にて端末装置22と通信可能に接続される。またこの通信装置21は、情報処理装置1とネットワークを介して通信可能に接続されるものとする。
【0025】
ここで情報処理装置1は、図1に例示されるように、制御部11,記憶部12,操作部13,表示部14,及び通信部15を含んで構成される。また通信装置21は、制御部211,記憶部212,及び通信部213を含んで構成される。さらに通信部213は、WAN(Wide Area Network)側インタフェース2131と、無線インタフェース2132とを含む。
【0026】
後に説明するように、この通信装置21は、設定変更の実績を表す情報と、再起動の実績を表す情報とを少なくとも含む実績情報を記録する。
【0027】
情報処理装置1の制御部11は、CPUなどのプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態の一例ではこの制御部11は、通信装置21から、当該通信装置21が記録した実績情報を取得し、所定の期間内における当該実績情報を参照して、当該通信装置が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する処理を行う。この制御部11の処理の具体的な内容については後に説明する。
【0028】
記憶部12は、メモリデバイスやディスクデバイス等を含む。この記憶部12は制御部11によって実行されるプログラムを保持し、また制御部11のワークメモリとしても動作する。ここで制御部11が実行するプログラムは、コンピュータ可読かつ非一時的な記録媒体に格納されて提供され、この記憶部12に格納されたものであってよい。
【0029】
また本実施の形態の一例では、この記憶部12には、ユーザを特定する情報(ユーザのメールアドレス等でよい)と、当該ユーザが所持(管理)する通信装置21を特定する情報(例えば通信装置21に固有なシリアルナンバなど)とを少なくとも関連付けたユーザデータベースが保持される。
【0030】
操作部13は、マウスやキーボード等であり、情報処理装置1の使用者の操作を受け入れて当該操作の内容を表す情報を制御部11に出力する。表示部14は、ディスプレイ等であり、制御部11から入力される指示に従って情報を、情報処理装置1の使用者に対して出力する。
【0031】
通信部15は、ネットワークインタフェース等であり、制御部11から入力される指示に従い、種々の情報を、ネットワークを介して接続される通信装置21等に対して送出し、また、種々の情報を、ネットワークを介して接続される通信装置21等から受信して取得し、制御部11に出力する。
【0032】
通信装置21の制御部211は、CPUなどのプログラム制御デバイスであり、記憶部212に格納されたプログラムに従って動作する。この制御部211は、通信装置21としての一般的動作を行うほか、通信装置21の再起動や設定変更等をユーザから受け入れるための処理を実行する。
【0033】
本実施の形態の一例では、この通信装置21は、Wi-Fiルータであり、制御部211は、後に説明する通信部213が備えるWAN側インタフェース2131を介して接続されるネットワーク(以下、区別のためWAN(Wide Area Network)と呼ぶ)上の情報処理装置1などのサーバ等と、無線インタフェース2132を介して接続される端末装置22との間の通信を仲介する。この処理は、一般的なWi-Fiルータとしての動作であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0034】
またこの制御部211は、ユーザに対して設定変更や再起動など、通信装置21自体の制御のためのインタフェースを提供する。具体的にこの制御部211は、ウェブサーバとして動作し、当該ウェブサーバが提供するウェブページ上で、
・SSID(Service Set Identifier)、
・使用するチャネル(自動選択の設定を含む)、
・暗号化方法(WPA,WPA2など)、
・暗号化のキー、
・MACアドレスのフィルタリング設定(通信可能な端末装置のMACアドレスのリストなど)、
・(5GHz帯での)DFS(動的周波数選択)、
その他の各種設定の変更を受け付ける。この例では制御部211は、当該ウェブページで受け付けた設定を用いて、Wi-Fiルータとしての動作を行うこととなる。
【0035】
さらに制御部211は、当該ウェブページなどを介して(あるいはハードウェアボタン等の押下などにより)再起動の指示を受け入れる。制御部211は、再起動の指示を受け入れると、通信装置21を再起動する。この再起動は、電源を切断してから再度電源を入れる動作に相当するもの(いわゆるコールドスタート)でもよいし、一部のパラメータを記憶した状態を維持しつつ初期化の処理を行うもの(いわゆるホットスタート)であってもよい。
【0036】
本実施の形態において制御部211は、さらに設定変更や再起動の指示があった場合に、それぞれの指示があった旨の記録を、履歴情報として記憶部212に格納する。一例としてこの履歴情報は、図2に例示するように、指示があった日時(T)と、指示の内容(C)とを関連付けて記録したものである。もっともこれは一例であり、この履歴情報は、単に予め定めた単位時間(例えば1時間)ごとの設定変更や再起動の回数を記録したものなど、所定の期間内に記録された設定変更や再起動の実績を表す情報(例えばそれらの回数)を得ることができればどのようなものであってもよい。
【0037】
またこの制御部211は、所定のタイミング(区別の必要があるときには送出タイミングと呼ぶ)ごとに、上記記録された設定変更や再起動の回数などの実績情報(未送出のもの)を、情報処理装置1に対して送出する。このタイミングは、例えば2時間ごとであってもよい。例えば制御部211は、所定のタイミングごとに、記録している設定変更の回数Naと再起動の回数Nrとをそれぞれカウントし、当該カウントして得た値Na,Nrを、予め定められたネットワークアドレスで特定される情報処理装置1へ送出する。このとき制御部211は、通信装置21を特定する情報を併せて送出してよい。そして制御部211は、送出した回数に係る設定変更や再起動の実績情報を記録から削除(あるいは再度、重複してカウントしないよう設定)する。
【0038】
記憶部212は、メモリデバイス等であり、制御部211によって実行されるプログラムを保持する。またこの記憶部212は、制御部211のワークメモリとしても機能し、制御部211から入力される指示に従って、履歴情報等を保持する。
【0039】
通信部213は、ネットワークインタフェースであり、例えばWAN側インタフェース2131と、無線インタフェース2132とを含んで構成される。WAN側インタフェース2131は、制御部211から入力される指示に従って、WAN上の情報処理装置1などのサーバ等との間で種々の情報を送受する。また無線インタフェース2132は、制御部211から入力される指示に従って、端末装置22との間で情報を送受する。
【0040】
次に、情報処理装置1の制御部11の動作について説明する。本実施の形態の一例では、この制御部11は、図3に例示するように、取得部111と、推定部112と、通知処理部113とを機能的に含む。
【0041】
取得部111は、通信装置21から、設定変更や再起動の回数などの実績情報と通信装置21を特定する情報とを受信し、当該実績情報と、通信装置21を特定する情報とを関連付けて記録する。
【0042】
推定部112は、各通信装置21から受信した、所定期間内における実績情報を集計し、当該集計の結果を参照して、各通信装置21が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定する処理を行う。
【0043】
具体的に本実施の形態の一例では、この推定部112は、ある通信装置21から所定の期間内に受信した実績情報に含まれる設定変更の回数Naと再起動の回数Nr(上記所定の期間内に複数回の実績情報が受信されている場合は、各実績情報に含まれる設定変更の回数の総和Naと、再起動の回数の総和Nr)を用いて、
(1)Na+Nrが予め定めたしきい値Nthを超える
といった条件が満足されるときに、当該通信装置21が接続されているネットワークが不調な状態であると推定する。
【0044】
また推定部112は、この条件に代えて、設定変更の回数Naと再起動の回数Nrとのそれぞれの値を用いて、
(2)Naが第1のしきい値Na_thを超え、かつ、Nrが第2のしきい値Nr_thを超える、
あるいは、
(3)Naが第1のしきい値Na_thを超えるか、またはNrが第2のしきい値Nr_thを超える
といった条件が満足されるときに、当該通信装置21が接続されているネットワークが不調な状態であると推定してもよい。さらに、この推定部112は、予め定めた重みの値α,βを用いて、設定変更の回数Naと再起動の回数Nrとの重みづけ加算により、基準値(本発明の指標に相当する)
S=αNa+βNr
を求め、
(4)この基準値Sが予め定めたしきい値Sthを超える
との条件が満足されるときに、当該通信装置21が接続されているネットワークが不調な状態であると推定することとしてもよい。もっとも、これら(1)から(4)の条件は一例であり、例えば条件(4)における基準値は重みづけ加算でなく、加重平均値などであってもよい。ここでα,βは、適宜実験等を通じて設定すればよい。例えば再起動を繰り返すほうが、設定変更の繰り返しよりもネットワークの不調に関わっている可能性が高いと考えられる場合、β>αとなるように設定すればよい。
【0045】
なお、これらの(1)から(4)の条件で用いられるしきい値Nth,Na_th,Nr_th,Sthや重みα,βなどのパラメータは、予め、例えば過去の事例や実験などに基づいて定められ、設定されてもよいし、情報処理装置1の管理者により人為的に設定されてもよい。
【0046】
通知処理部113は、推定部112が、「接続されているネットワークが不調な状態である」と推定した通信装置21を特定する情報に関連付けてユーザデータベースに登録されているユーザを特定する情報を取得し、情報処理装置1の管理者等に、当該取得したユーザを特定する情報と、当該「接続されているネットワークが不調な状態である」と推定した通信装置21を特定する情報とを通知する(この処理は本発明の通知処理の一例に相当する)。
【0047】
[動作]
本実施の形態の情報処理装置1を含むシステムの一態様は、以上の構成を備えており、この例に係るシステムは次のように動作する。以下の例で通信装置21は、Wi-Fiルータであるとし、各通信装置21の各ユーザは、通信装置21をWANに接続するとともに、SSID等の設定を行ったうえで、ユーザが所持する端末装置22を、通信装置21に、無線にて接続する。
【0048】
またユーザは、自らが所持(管理)する通信装置21を特定する情報と、ユーザを識別する情報(メールアドレスなどの連絡先を特定できる情報など)とを情報処理装置1の管理者に通知する。
【0049】
情報処理装置1の管理者は、当該通知を受けて、ユーザを識別する情報と、対応する通信装置21を特定する情報を関連付けて、ユーザデータベースに登録し、このユーザデータベースを、情報処理装置1からアクセス可能にしておく。
【0050】
各ユーザの管理する通信装置21は、それぞれ、一般的なWi-Fiルータとして動作する。また通信装置21は、ユーザからSSIDやチャネルなどの各種設定の変更を受け付けて、当該変更された設定でWi-Fiルータとしての動作を行う。またこの通信装置21は、ユーザからの指示により、通信装置21自身を再起動する。
【0051】
本実施の形態の例では、通信装置21は、設定変更や再起動を行ったときに、図2に例示したような態様で、その旨を表す実績の情報を記録する。
【0052】
さらに通信装置21は、所定の送出タイミングごと(例えば2時間ごとなど)に繰り返して、記録した実績の情報に係る実績情報を、情報処理装置1に対して送出する。例えばこの通信装置21は、前回実績情報に係る情報を送出した後に記録した実績の情報を参照し、設定変更の回数Naと再起動の回数Nrをカウントして、これらの回数の情報Na,Nr(実績情報)と、通信装置21自身を特定する情報とを送出する。
【0053】
一方、情報処理装置1は、通信装置21から実績情報(例えば当該通信装置21が行った設定変更の回数Naと再起動の回数Nrと)と、当該通信装置21を特定する情報とを受信すると、これらを関連付けて、蓄積して記録する。
【0054】
そして情報処理装置1は、所定の処理タイミングごと(予め定めた所定の期間ごと)に、次の図4に例示する処理(推定処理)を実行する。情報処理装置1は、前回の推定処理を開始したタイミング以降に記録した実績情報(未処理のもの)の一つを取り出し(S11)、当該実績情報に関連付けて記録されている、通信装置21を特定する情報を取得する(S12)。
【0055】
情報処理装置1は、ステップS12で取得した情報に関連付けて記録されている未処理の実績情報のすべてを読み出す(S13)。なお、情報処理装置1は、ここで読み出した実績情報を処理済みに設定する。次に情報処理装置1は、当該読み出した実績情報に含まれる設定変更の回数Naと再起動の回数Nr(複数の実績情報を読み出した場合は、各実績情報に含まれる設定変更の回数の総和Naと、再起動の回数の総和Nr)を用いて、Naが第1のしきい値Na_thを超え、かつ、Nrが第2のしきい値Nr_thを超えるとの条件を満足するか否かを調べる(所定の条件を満足するか:S14)。なお、ここでしきい値(第1、第2のしきい値)は予め、例えば過去の事例に基づいて定められ、設定されているものとする。
【0056】
情報処理装置1は、ステップS14で条件を満足すると判断したときには(S14:Yes)、ステップS12で取得した、通信装置21を特定する情報に関連付けてユーザデータベースに登録されているユーザを特定する情報を取得し、情報処理装置1の管理者等に、当該取得したユーザを特定する情報と、当該「接続されているネットワークが不調な状態である」と推定した通信装置21を特定する情報(ステップS12で取得した情報)とを通知する(S15)。
【0057】
そして情報処理装置1は、未処理の実績情報が記録されていれば、ステップS11に戻って処理を続ける。
【0058】
一方、情報処理装置1は、ステップS14で条件を満足しないと判断したときは(S14:No)、さらに未処理の実績情報が記録されていれば、ステップS11に戻って処理を続ける。
【0059】
本実施の形態によると、ネットワーク(通信装置21を設置した拠点におけるLAN側またはWAN側のいずれか)の不調により、ユーザが設定変更や再起動を繰り返している場合に、その実績の情報に基づいて、Wi-Fiルータ等を含むユーザ側のネットワークの不調を検出でき、またその不調を情報処理装置1の管理者に通知し、情報処理装置1の管理者がユーザに連絡を取ることが可能となる。
【0060】
[条件の設定]
また本実施の形態のある例では、情報処理装置1は、推定部112の処理として、各通信装置21から取得した実績情報(どの通信装置21から取得したかを問わない)を参照し、所定の集計期間(推定処理を行う期間とは異なってよい)に当該通信装置21が記録した実績情報に係る所定の統計処理を行い、当該統計処理結果を用いて基準を決定し、通信装置21から取得した実績情報とここで決定した基準とを用いて、通信装置21が接続されているネットワークが不調な状態であるか否かを推定することとしてもよい。
【0061】
具体的に情報処理装置1は、予め定めた集計期間(例えば24時間)ごとに、各通信装置21ごとに、当該通信装置21が記録し、情報処理装置1に送出した実績情報に含まれる設定変更の回数Naと、再起動の回数Nrの総計を求め、求めた設定変更の回数(の総計)Naと、再起動の回数(の総計)Nrとの、各通信装置21の平均μa,μr及び分散σa,σrを演算し、これらの回数が正規分布に従うと仮定した場合の、所定の信頼度に相当する回数を求める。例えば、平均μから2σだけ離れた値を、各回数と比較するしきい値:
Na_th=μa+2σa
Nr_th=μr+2σr
とする。
【0062】
この例は、それぞれの正規分布:
Na(μa,σ2a)、
Nr(μr,σ2r)、
において、危険率約5%で回数を検定した結果に相当する。
【0063】
なお、情報処理装置1は、ユーザ側のネットワークが不調な状態にあることを推定する条件として、
(1)Na+Nrが予め定めたしきい値Nthを超える
との条件を用いる場合は、このしきい値Nthを、上記Na_th,Nr_thを用いて、
Nth=Na_th+Nr_th
としてもよい。
【0064】
また情報処理装置1は、ユーザ側のネットワークが不調な状態にあることを推定する条件として、予め定めた重みの値α,βを用いて、設定変更の回数Naと再起動の回数Nrとの重みづけ加算により、基準値(本発明の指標に相当する)
S=αNa+βNr
を求め、
(4)この基準値Sが予め定めたしきい値Sthを超える
との条件を用いる場合、このしきい値Sthを、
Sth=α×Na_th+β×Nr_th
として求めてもよい。
【0065】
もっとも、ここでは各回数が正規分布に従うと仮定したが、これは一例であり、上記しきい値の決定はt分布等、他の確率分布を用いて行われてもよい。
【0066】
[変形例]
ここまでに説明した例では、通信装置21が自己の設定変更や再起動の実績の記録をもとに設定変更の回数及び再起動の回数を計数して、これらを実績情報として送出していた。しかしながら本実施の形態はこの例に限られず、通信装置21は、自己の設定変更や再起動の実績の記録(いわばログそのもの)を、情報処理装置1に対して、実績情報として送出してもよい。この例では、情報処理装置1が当該送信された実績情報としてのログを参照して、設定変更の回数及び再起動の回数を計数する。
【0067】
また実績情報は設定変更や再起動の実績に限られず、通信装置21の他の処理の実績を、設定変更や再起動の実績とともに、あるいはこれらの実績に代えて利用してもよい。この処理の例としては有線ポートの差し替えに伴う処理などが含まれてよいが、ユーザの指示あるいは操作に基づく処理であることが好適である。
【0068】
さらに設定変更の実績において、変更された設定の種類ごとにカウントを行ってもよい。例えばチャネルの設定変更の場合と、機器パスワードの設定変更の場合とをそれぞれ別々にカウントしてもよい。この場合、それぞれの種類のカウントに互いに異なる重みを乗じて加算し(あるいは加重平均し)て、設定変更の回数値とする。この例によると、チャネルを繰り返し変更している場合には、ネットワークの不調が強く関係していると考えられるのに対し、機器パスワードの設定変更はネットワークの不調との相関が不明であることに基づき、前者の重みを後者に比べて大きく設定する、などといった設定が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 情報処理装置、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 通信部、21 通信装置、22 端末装置、111 取得部、112 推定部、113 通知処理部、211 制御部、212 記憶部、213 通信部、2131 WAN側インタフェース、2132 無線インタフェース。

図1
図2
図3
図4