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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171752
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】荷重センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088947
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥志
(72)【発明者】
【氏名】矢口 剛規
(72)【発明者】
【氏名】錦見 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 大介
(72)【発明者】
【氏名】中山 徹也
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB06
(57)【要約】
【課題】荷重が付与される表面のタック性を抑制することが可能な荷重センサを提供する。
【解決手段】荷重センサ1は、被検知物から荷重を受ける側の表面に凹凸形状30cを有する第1ベース部材30と、第1ベース部材30よりタック性が低い弾性体34と、前記表面に対して反対側から第1ベース部材30に重ねられる第2ベース部材50と、第1ベース部材30と第2ベース部材50との間に配置され、荷重を検知するための素子部と、を備える。弾性体34は、第1ベース部材30表面の凹凸形状30cを残しつつ、凹凸形状30cを被覆する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知物から荷重を受ける側の表面に凹凸形状を有する第1ベース部材と、
前記第1ベース部材よりタック性が低く、前記凹凸形状を残しつつ前記凹凸形状を被覆する弾性体と、
前記表面に対して反対側から前記第1ベース部材に重ねられる第2ベース部材と、
前記第1ベース部材と前記第2ベース部材との間に配置され、荷重を検知するための素子部と、を備える、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記弾性体の弾性率は、前記第1ベース部材の弾性率以下である、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記第1ベース部材は、ゴム材料からなっており、
前記弾性体は、樹脂材料からなっている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
弾性率が異なる複数種類の前記弾性体が、前記第1ベース部材の前記表面に分布して配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の荷重センサにおいて、
前記素子部に対応する領域に前記第1ベース部材より弾性率が高い前記弾性体が配置され、前記素子部に対応しない領域には弾性率が前記第1ベース部材以下の前記弾性体が配置される、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記弾性体は、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材とを跨ぐように前記荷重センサの側面をさらに被覆する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
複数の前記素子部が配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の荷重センサにおいて、
前記素子部は、
前記第1ベース部材の裏面に形成された導電弾性体と、
前記導電弾性体に重ねられる導体線と、
前記導電弾性体と前記導体線との間に介在する誘電体と、を備える、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の荷重センサにおいて、
前記誘電体は、前記導体線の表面を被覆するように設置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重を検出する荷重センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HMI(Human Machine Interface)として、キーボードやゲームコントローラーなど様々な機器に荷重センサが用いられている。
【0003】
このような荷重センサは、たとえば、弾性を有するシート状のベース部材と、ベース部材の裏面に形成された導電弾性体と、導電弾性体に重ねて配置され、表面が誘電体で被覆された複数の導体線と、を備える。複数の導体線は、それぞれ、糸でベース部材に接続される。このような構成の荷重センサが、たとえば、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/075356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような荷重センサでは、荷重に応じてベース部材が弾性変形しやすいように、柔らかいゴム材料でベース部材が構成される。これにより、荷重の検出感度を高めることができる。
【0006】
その反面、ベース部材がゴム材料により構成されると、ゴム材料のタック性が問題となることがある。
【0007】
たとえば、上記の荷重センサが商品の陳列台に設置される場合、商品の載置面であるベース部材の表面に、商品を円滑に載せ卸しできることが要求される。しかし、ベース部材がゴム材料であると、ゴム材料のタック性によって、ベース部材の表面を商品が滑りにくい。このため、商品の載せ卸しの際に、商品の載置面であるベース部材の表面に商品の底が引っ掛かってしまい、円滑な商品の載せ卸しに支障が生じ得る。
【0008】
加えて、商品を荷重センサから取り外す際に、ゴム材料のタック性によってベース部材の表面と商品の底とが粘着し、ベース部材が上方に僅かに引っ張られてしまう。これにより、荷重センサの出力に乱れが生じ、商品の取り外しを円滑に検出できないことが起こり得る。
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、荷重が付与される表面のタック性を抑制することが可能な荷重センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主たる態様に係る荷重センサは、被検知物から荷重を受ける側の表面に凹凸形状を有する第1ベース部材と、前記第1ベース部材よりタック性が低く、前記凹凸形状を残しつつ前記凹凸形状を被覆する弾性体と、前記表面に対して反対側から前記第1ベース部材に重ねられる第2ベース部材と、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材との間に配置され、荷重を検知するための素子部と、を備える。
【0011】
本態様に係る荷重センサによれば、被検知物から荷重を受ける側の第1ベース部材の表面がタック性の低い弾性体により覆われるため、この表面のタック性を抑制できる。また、この表面に凹凸形状が残っているため、表面に被検知物が載せられた場合に、表面と被検知物との間の接触面積が小さくなる。これにより、表面のタック性をさらに抑制できる。他方、凹凸形状を被覆する部材が弾性体であるため、第1ベース部材は、弾性体とともに、荷重の付与に応じて弾性変形する。よって、素子部に付与された荷重を良好に検出できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、荷重が付与される表面のタック性を抑制することが可能な荷重センサを提供することができる。
【0013】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る、ワイヤおよび回路基板の構成を模式的に示す上面図である。
図2図2は、実施形態に係る、ワイヤおよび回路基板の構成を模式的に示す上面図である。
図3図3は、実施形態に係る、第1構造体の構成を模式的に示す下面図である。
図4図4は、実施形態に係る、第2構造体の構成を模式的に示す下面図である。
図5図5は、実施形態に係る、第3構造体の構成を模式的に示す下面図である。
図6図6は、実施形態に係る、荷重センサの構成を模式的に示す下面図である。
図7図7は、実施形態に係る、荷重センサの内部の構成を模式的に示す上面図である。
図8図8は、実施形態に係る、荷重センサの構成を模式的に示す上面図である。
図9図9(a)および図9(b)は、実施形態に係る、ワイヤと導電弾性体の交差位置でX-Z平面に平行な面で切断したときの、交差位置近傍の断面を模式的に示す図である。
図10図10は、実施形態に係る、第1ベース部材の形成方法を模式的に示す図である。
図11図11(a)~図11(c)は、実施形態に係る、第1ベース部材に弾性体と、配線および導電弾性体とを形成する工程を模式的に示す図である。
図12図12(a)は、実施形態に係る、第1ベース部材の表面に形成された凹凸形状を正面から撮像した写真であり、図12(b)は、実施形態に係る、凹凸形状の高さの分布を画像解析した解析結果を示す図である。
図13図13(a)は、実施形態に係る、凹凸形状の表面に形成された弾性体を正面から撮像した写真であり、図13(b)は、実施形態に係る、弾性体の高さの分布を画像解析した解析結果を示す図である。
図14図14は、変更例1に係る、荷重センサの表面の構成を示す図である。
図15図15は、変更例1に係る、荷重センサの構成を示す断面図である。
図16図16は、変更例2に係る、荷重センサの構成を示す断面図である。
図17図17は、その他の変更例に係る、荷重センサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る荷重センサは、付与された荷重に応じて処理を行う管理システムや電子機器の荷重センサに適用可能である。
【0016】
管理システムとしては、たとえば、在庫管理システム、ドライバーモニタリングシステム、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムなどが挙げられる。
【0017】
在庫管理システムでは、たとえば、在庫棚に設けられた荷重センサにより、積載された在庫の荷重が検出され、在庫棚に存在する商品の種類と商品の数とが検出される。これにより、店舗、工場、倉庫などにおいて、効率よく在庫を管理できるとともに省人化を実現できる。また、冷蔵庫内に設けられた荷重センサにより、冷蔵庫内の食品の荷重が検出され、冷蔵庫内の食品の種類と食品の数や量とが検出される。これにより、冷蔵庫内の食品を用いた献立を自動的に提案できる。
【0018】
ドライバーモニタリングシステムでは、たとえば、操舵装置に設けられた荷重センサにより、ドライバーの操舵装置に対する荷重分布(たとえば、把持力、把持位置、踏力)がモニタリングされる。また、車載シートに設けられた荷重センサにより、着座状態におけるドライバーの車載シートに対する荷重分布(たとえば、重心位置)がモニタリングされる。これにより、ドライバーの運転状態(眠気や心理状態など)をフィードバックすることができる。
【0019】
コーチング管理システムでは、たとえば、シューズの底に設けられた荷重センサにより、足裏の荷重分布がモニタリングされる。これにより、適正な歩行状態や走行状態へ矯正または誘導することができる。
【0020】
セキュリティー管理システムでは、たとえば、床に設けられた荷重センサにより、人が通過する際に、荷重分布が検出され、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどが検出される。これにより、これらの検出情報をデータと照合することにより、通過した人物を特定することが可能となる。
【0021】
介護・育児管理システムでは、たとえば、寝具や便座に設けられた荷重センサにより、人体の寝具および便座に対する荷重分布がモニタリングされる。これにより、寝具や便座の位置において、人がどのような行動を取ろうとしているかを推定し、転倒や転落を防止することができる。
【0022】
電子機器としては、たとえば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー、PCキーボード、ゲームコントローラー、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、タッチパネル、電子ペン、ペンライト、光る衣服、楽器などが挙げられる。電子機器では、ユーザからの入力を受け付ける入力部に荷重センサが設けられる。
【0023】
以下の実施形態における荷重センサは、上記のような管理システムや電子機器の荷重センサにおいて典型的に設けられる静電容量型荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。また、以下の実施形態における荷重センサは、検出回路に接続され、荷重センサおよび検出回路により、荷重検出装置が構成される。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。また、各図には第1方向および第2方向が付記されている。第1方向はY軸方向に平行であり、第2方向はX軸方向に平行である。
【0025】
図1図6を参照して、荷重センサ1の各部の構成とともに、荷重センサ1の組み立てについて説明する。
【0026】
図1および図2は、ワイヤ10および回路基板20の構成を模式的に示す上面図である。図1および図2は、各部を上から(Z軸負方向に)見た図である。
【0027】
図1に示すように、1個のワイヤ10は、回路基板20と反対側の端部10aにおいて逆向きに折り曲げられている。ワイヤ10は、図9(a)、(b)で後述する導体線11と、導体線11を被覆する誘電体12とにより構成される。
【0028】
図2に示すように、回路基板20は、平面視において、長辺がX軸方向に延びた長方形形状を有している。回路基板20は、Z軸正側の面に、11個の電極21と、11個の電極22と、2個のコネクタ23と、を備える。
【0029】
11個の電極21は、回路基板20のY軸正側の端部付近において、X軸方向に並んでいる。11個の電極22は、回路基板20のX軸正側およびY軸負側の端部付近において、X軸方向に並んでいる。各電極22は、接合位置P1において、図3で後述する配線パターン33のパッド33aに重ねられる。2個のコネクタ23は、回路基板20のX軸負側およびY軸負側の端部付近において、X軸方向に並んでいる。一方のコネクタ23は、11個の電極21とそれぞれ繋がる端子を備え、他方のコネクタ23は、11個の電極22とそれぞれ繋がる端子を備える。
【0030】
回路基板20には、回路基板20をZ軸方向に貫通する、22個の孔24と、24個の孔25とが形成されている。孔24は、X軸方向に並ぶとともに、電極22内に設けられている。1つの電極22内には、2個の孔24が設けられている。12個の孔25は、電極22とコネクタ23との間において、X軸方向に並んでいる。他の12個の孔25は、コネクタ23のY軸正側において、X軸方向に並んでいる。
【0031】
組み立て時には、各ワイヤ10を図1に示すように配置するために、各ワイヤ10の形状に沿った溝を有するジグ(図示せず)が用いられる。各ワイヤ10がジグの溝に沿って配置されることにより、各ワイヤ10は、図1に示すように、Y軸方向に延びX軸方向に所定間隔で配置される。そして、ジグに保持された各ワイヤ10の下面に回路基板20が位置付けられる。このとき、隣り合う2個のワイヤ10が1つの電極21上を通るように、22個のワイヤ10が配置される。電極21に重なる位置のワイヤ10から、ワイヤ10に形成された誘電体12が除去され、ワイヤ10内の導体線11が、半田により電極21に固定される。その後、図2に示すように、電極21のY軸負側に位置する各ワイヤ10の端部が、除去される。
【0032】
図3は、第1構造体1aの構成を模式的に示す下面図である。図3は、第1構造体1aを下から(Z軸正方向に)見た図である。
【0033】
第1構造体1aは、第1ベース部材30と、11個の配線31と、11個の導電弾性体32と、11個の配線パターン33と、を備える。
【0034】
第1ベース部材30は、弾性を有する平板状の部材である。第1ベース部材30は、平面視において矩形の形状を有する。第1ベース部材30の厚みは一定である。第1ベース部材30の厚みが小さい場合、第1ベース部材30は、シート部材またはフィルム部材と呼ばれることもある。
【0035】
第1ベース部材30は、絶縁性を有し、非導電性のゴム材料や非導電性の樹脂材料により構成される。第1ベース部材30は、たとえば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)により構成される。第1ベース部材30が、他の合成ゴムまたは天然ゴムにより構成されてもよい。第1ベース部材30の裏面(Z軸負側の面)は、回路基板20および第2ベース部材50(図6参照)に対向する対向面30aである。第1ベース部材30のX軸負側およびY軸負側の端部には、切欠き30bが形成されている。
【0036】
11個の配線31は、X軸方向に延びるように、第1ベース部材30の対向面30aに形成される。配線31は、導電弾性体32よりも低抵抗の材料により構成されている。配線31は、弾性を有する導電性の部材であり、配線31の厚みは、導電弾性体32の厚みよりも小さい。各配線31のY軸方向の幅およびZ軸方向の厚みは、互いに同じである。
【0037】
導電弾性体32は、配線31を覆い、かつ、X軸方向に延びるように、第1ベース部材30の対向面30aに形成される。導電弾性体32は、Y軸方向における導電弾性体32の中間位置に配線31が位置づけられ、導電弾性体32のX軸方向の両端が配線31のX軸方向の両端の内側に位置するように、対向面30aに形成される。各導電弾性体32のY軸方向の幅、X軸方向の長さおよびZ軸方向の厚みは、互いに同じである。各導電弾性体32は、X軸方向に長い帯状の形状を有し、所定の隙間をもってY軸方向に並んでいる。すなわち、導電弾性体32の長辺はX軸に平行であり、導電弾性体32の並び方向はY軸に平行である。
【0038】
導電弾性体32は、弾性を有する導電性の部材である。配線31と、当該配線31を覆うように形成された導電弾性体32とは、電気的に繋がった状態である。配線31および導電弾性体32は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0039】
配線31および導電弾性体32は、第1ベース部材30の対向面30aに対して、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、およびグラビアオフセット印刷などの印刷工法により形成される。導電弾性体32は、配線31が形成された後で、配線31に重なるようにして形成される。これらの印刷工法によれば、第1ベース部材30の対向面30aに0.001mm~0.5mm程度の厚みで、配線31および導電弾性体32を形成することが可能となる。ただし、配線31および導電弾性体32の形成方法は、印刷工法に限られるものではない。
【0040】
第1ベース部材30には、第1領域R1および第2領域R2が存在する。第1領域R1は、第1ベース部材30のY軸方向の端部の、後述する第2ベース部材50が重ならない領域である。第1領域R1は、最もY軸負側に位置する導電弾性体32よりもY軸負側に位置する第1ベース部材30の端部の領域である。第2領域R2は、導電弾性体32のX軸方向の一方の端部に続く領域である。具体的には、第2領域R2は、各導電弾性体32のX軸正側の端部よりもX軸正側に位置する第1ベース部材30の端部の領域である。
【0041】
11個の配線パターン33は、それぞれ、11個の配線31のX軸正側の端部に接続されている。各配線パターン33は、第1ベース部材30の対向面30aに配置され、第2領域R2から第1領域R1へと引き回されている。各配線パターン33のY軸負側の端部には、パッド33aが形成されている。パッド33aは、第1領域R1のX軸正側およびY軸負側の端部付近において、X軸方向に並んでいる。パッド33aの大きさは、電極22(図2参照)と同じであり、回路基板20が第1ベース部材30に重ねられたときに、パッド33aと電極22が対向する。
【0042】
図4は、第2構造体1bの構成を模式的に示す下面図である。図4は、第2構造体1bを下から(Z軸正方向に)見た図である。
【0043】
図3の第1構造体1aのZ軸負側の面(第1ベース部材30の対向面30a)に、回路基板20のZ軸正側の面が対向するように、図2のワイヤ10および回路基板20が表裏反転されて載置される。これにより、図4に示すように、第1ベース部材30の第1領域R1が、回路基板20によって覆われ、第2構造体1bが構成される。このとき、ワイヤ10は、ワイヤ10を保持するジグによりY軸方向に直線的に延びた状態となっており、第1ベース部材30は、X軸方向およびY軸方向において、弛みなく延びた状態となるよう、このジグに対して保持される。
【0044】
図5は、第3構造体1cの構成を模式的に示す下面図である。
【0045】
ジグにより各ワイヤ10が保持され、かつ、第1ベース部材30が伸ばされた状態で、図5に示すように、図4の第2構造体1bに対して、接続部材41~44が留められる。接続部材41~44は、たとえば糸である。この糸は、化学繊維、天然繊維、またはそれらの混合繊維などにより構成される。接続部材41~44は、それぞれ、縫い留めの対象物のZ軸正側に配置される上糸と、当該対象物のZ軸負側に配置される下糸とが縫い合わされることにより形成される。
【0046】
接続部材41は、端部10aにおいてワイヤ10をY軸方向に跨ぐように、ワイヤ10を第1ベース部材30に縫い留める。接続部材42は、Y軸方向に隣り合う2つの導電弾性体32の間において、第1ベース部材30のX軸正側の端部からX軸負側の端部まで縫い列が延びるように、ワイヤ10と第1ベース部材30とを縫い留める。接続部材42の上糸と下糸は、第2領域R2の配線パターン33の領域を避けて縫い合わされる。
【0047】
接続部材43は、孔24を介して、回路基板20と第1ベース部材30とを縫い留める。このとき、1つの接続部材43は、1つの電極22(図2参照)の位置に形成された2つの孔24を介して、回路基板20と第1ベース部材30とを縫い留める。これにより、回路基板20側のパッド33a(図3参照)と、第1ベース部材30側の電極22とが電気的に接続される。接続部材43は、導電性を有する糸でもよく、導電性を有しない糸でもよい。ただし、接続部材43が導電性を有する方が、パッド33aと電極22とを確実に電気的に接続できる。接続部材43が導電性を有しない糸である場合、1つの接続部材43が、全ての接合位置P1の孔24を介して、回路基板20と第1ベース部材30とを縫い留めてもよい。
【0048】
接続部材44は、孔25を介して、回路基板20と第1ベース部材30とを縫い留める。このとき、1つの接続部材44は、隣り合う2つの孔25を介して、回路基板20と第1ベース部材30とを縫い留める。なお、1つの接続部材44が、孔24のX軸正方向に並ぶ12個の孔25を連続的に縫い留め、他の1つの接続部材44が、孔24よりもY軸正側に位置する12個の孔25を連続的に縫い留めてもよい。
【0049】
こうして、図5に示すように、第2構造体1bに接続部材41~44が設置され、第3構造体1cが構成される。
【0050】
図6は、荷重センサ1の構成を模式的に示す下面図である。図6は、荷重センサ1を下から(Z軸正方向に)見た図である。
【0051】
荷重センサ1は、図5に示した第3構造体1cと、第2ベース部材50と、接続部材51と、を備える。
【0052】
第2ベース部材50は、弾性を有する平板状の部材である。第2ベース部材50は、平面視において矩形の形状を有する。第2ベース部材50の厚みは一定である。第2ベース部材50の厚みが小さい場合、第2ベース部材50は、シート部材またはフィルム部材と呼ばれることもある。第2ベース部材50のX軸方向の長さは、第1ベース部材30のX軸方向の長さと同じである。第2ベース部材50のY軸方向の長さは、第1ベース部材30のうち第1領域R1を除く領域、すなわち、回路基板20が重ならない第1ベース部材30の領域のY軸方向の長さと同じである。
【0053】
第2ベース部材50は、絶縁性を有し、たとえば、非導電性の樹脂材料や非導電性のゴム材料により構成される。第2ベース部材50は、たとえば、上述した第1ベース部材30に用いることができる材料により構成される。第2ベース部材50は、弾性変形しにくい硬質の材料からなってもよい。
【0054】
接続部材51は、たとえば糸である。この糸は、接続部材41~44と同様、化学繊維、天然繊維、またはそれらの混合繊維などにより構成される。接続部材51は、第1ベース部材30のZ軸正側に配置される糸と、第2ベース部材50のZ軸負側に配置される糸とが縫い合わされることにより形成される。
【0055】
図5に示す第3構造体1cが完成した後、ワイヤ10および第1ベース部材30を保持するジグが取り外される。そして、回路基板20が重ならない第1ベース部材30の領域に対して、Z軸負側から対向面30aに対向するように第2ベース部材50が重ねられる。この状態で、各ワイヤ10は、第1ベース部材30と第2ベース部材50との間に配置される。その後、第2ベース部材50の外周付近において、第1ベース部材30と第2ベース部材50とが、接続部材51により縫い留められる。こうして、荷重センサ1が完成する。
【0056】
図7は、荷重センサ1の内部の構成を模式的に示す上面図である。図7は、荷重センサ1を上から(Z軸負方向に)見た図である。図7では、便宜上、回路基板20および第1ベース部材30が透過状態とされ、回路基板20および第1ベース部材30の下側(Z軸負側)に位置する荷重センサ1の各部が図示されている。
【0057】
第1ベース部材30の対向面30a(下面)に設置された11個のパッド33aは、それぞれ、回路基板20の11個の電極22に対向し、接続部材43が回路基板20と第1ベース部材30とを縫い留めることにより、互いに接触して電気的に接続された状態となっている。
【0058】
図8は、荷重センサ1の構成を模式的に示す上面図である。図8は、図7とは異なり、荷重センサ1の上面の構成のみが示されている。図8には、それぞれ個別に荷重を検知するための複数の素子部A1が示されている。
【0059】
第1ベース部材30のZ軸正側の面(上面)には、接続部材41~44、51の上糸が配置されている。回路基板20上の2つのコネクタ23は、第1ベース部材30の切欠き30bを介して、Z軸正方向(上方)に開放されている。
【0060】
荷重センサ1は、第1ベース部材30がZ軸正側に向けられ、第2ベース部材50がZ軸負側に向けられた状態で使用される。この場合、第1ベース部材30の上面は、荷重が付与される面となり、第2ベース部材50の下面は、設置面に設置される。
【0061】
荷重センサ1には、平面視において、マトリクス状に並んだ複数の素子部A1が形成される。図8の荷重センサ1には、X軸方向およびY軸方向に並んだ計121個の素子部A1が形成される。1つの素子部A1は、1つの導電弾性体32と、当該導電弾性体32の下方に配置された2個のワイヤ10との交点を含む領域に相当する。すなわち、1つの素子部A1は、当該交点付近における、第1ベース部材30、配線31、導電弾性体32、ワイヤ10および第2ベース部材50を含む。
【0062】
荷重センサ1の下面(第2ベース部材50の下面)が所定の設置面に設置され、素子部A1を構成する荷重センサ1の上面(第1ベース部材30の上面)に荷重が付与されると、導電弾性体32とワイヤ10とが形成する静電容量が変化し、当該静電容量に基づいて荷重が検出される。
【0063】
図9(a)、(b)は、ワイヤ10と導電弾性体32の交差位置でX-Z平面に平行な面で切断したときの、交差位置近傍の断面を模式的に示す図である。
【0064】
図9(a)、(b)に示すように、ワイヤ10は、導体線11と、導体線11に形成された誘電体12と、により構成される。誘電体12は、導体線11の外周に形成されており、導体線11の表面を全周に亘って被覆している。
【0065】
導体線11は、導電性を有し、線状の形状を有する部材である。導体線11は、たとえば、導電性の金属材料により構成される。この他、導体線11は、ガラスからなる芯線およびその表面に形成された導電層により構成されてもよく、樹脂からなる芯線およびその表面に形成された導電層などにより構成されてもよい。導体線11は、導電性の金属材料からなる線材が撚られた撚線であってもよい。誘電体12は、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。
【0066】
導体線11の直径は、たとえば、0.01mm以上1.5mm以下であり、あるいは、0.05mm以上0.8mm以下でもよい。このような導体線11の構成は、導体線11の強度と抵抗の観点から好ましい。誘電体12の厚みは、5nm以上100μm以下が好ましく、センサ感度等の設計により適宜選択することができる。
【0067】
図9(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、図9(b)は、荷重が加えられている状態を示している。図9(a)、(b)では、第2ベース部材50のZ軸負側の下面が設置面に設置されている。
【0068】
図9(a)に示すように、荷重が加えられていない場合、導電弾性体32とワイヤ10との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、図9(b)に示すように、第1ベース部材30の上面に対して下方向に荷重が加えられると、ワイヤ10によって、導電弾性体32が変形する。このとき、ワイヤ10は、導電弾性体32に包まれるように導電弾性体32に近付けられ、ワイヤ10と導電弾性体32との間の接触面積が増加する。これにより、導体線11と導電弾性体32との間の静電容量が変化する。そして、この静電容量の変化を反映した電位が検出回路において測定されることにより、荷重が算出される。
【0069】
ところで、上記構成の荷重センサ1では、上記のように、柔らかいゴム材料で第1ベース部材30が構成され得る。これにより、荷重の検出感度を高めることができる。しかし、その反面、第1ベース部材30がゴム材料により構成されると、ゴム材料のタック性が問題となることがある。
【0070】
たとえば、上記の荷重センサ1が商品の陳列台に設置される場合、商品の載置面である第1ベース部材30の表面に、商品を円滑に載せ卸しできることが要求される。しかし、第1ベース部材30がゴム材料であると、ゴム材料のタック性によって、ベース部材の表面を商品が滑りにくい。このため、商品の載せ卸しの際に、商品の載置面である第1ベース部材30の表面に商品の底が引っ掛かってしまい、円滑な商品の載せ卸しに支障が生じ得る。
【0071】
加えて、商品を荷重センサ1から取り外す際に、ゴム材料のタック性によって第1ベース部材30の表面と商品の底とが粘着し、第1ベース部材30が上方に僅かに引っ張られてしまう。これにより、荷重センサ1の出力に乱れが生じ、商品の取り外しを円滑に検出できないことが起こり得る。
【0072】
このような問題を解消するため、本実施形態では、図9(a)、(b)に模式的に示すように、被検知物から荷重を受ける側の第1ベース部材30の表面(Z軸正側の面)に凹凸形状30cが形成され、この凹凸形状30cが弾性体34によって被覆される。ここで、弾性体34は、図9(a)、(b)に示すように、凹凸形状30cを残しつつ凹凸形状30cを被覆する。すなわち、凹凸形状30cが弾性体34で被覆された状態において、弾性体34の上面は平面とはなっておらず、凹凸形状30cが反映された、凹凸形状30cと同様の凹凸が残った状態となっている。
【0073】
弾性体34は、第1ベース部材30よりタック性が低い材料からなっている。弾性体34は、弾性を有する(柔らかい)樹脂材料(たとえば、ポリウレタン)により構成され得る。弾性体34の永久圧縮歪みは、第1ベース部材30より小さい。
【0074】
素子部A1に荷重が付与された際に、弾性体34が第1ベース部材30の弾性変形に支障を与えないように、弾性体34の弾性率は、第1ベース部材30の弾性率以下であることが好ましく、さらには、第1ベース部材30の弾性率より小さいことが好ましい。
【0075】
このように、被検知物から荷重を受ける側の第1ベース部材30の表面をタック性の低い弾性体34で覆うことにより、表面のタック性を抑制できる。また、この表面に凹凸形状が残っているため、表面に被検知物が載せられた場合に、表面と被検知物との接触面積が小さくなる。これにより、表面のタック性がさらに抑制される。
【0076】
以下に、凹凸形状30cおよび弾性体34の形成方法について説明する。
【0077】
図10は、第1ベース部材30の形成方法を模式的に示す図である。
【0078】
ここでは、第1ベース部材30がカレンダー成型により形成される。第1ベース部材30を構成する材料M1が、2つのライナー材L1、L2に挟まれた状態で、円柱状のローラRL1、RL2の間に通される。ローラRL1、RL2は互いに逆方向に回転される。これにより、材料M1および2つのライナー材L1、L2は、ローラRL1、RL2間の隙間を取って後方に押し出される。このとき、材料M1は、所定の厚みに圧縮される。
【0079】
さらに、材料M1および2つのライナー材L1、L2は、円柱状のローラRL2、RL3の間に通される。ローラRL3は、ローラRL2の回転方向と反対方向に回転される。これにより、材料M1および2つのライナー材L1、L2は、ローラRL2、RL3間の隙間を取って前方に押し出される。このとき、材料M1は、さらに、所定の厚みに圧縮される。その後、材料M1および2つのライナー材L1、L2は、前後方向に垂直な方向と、前後方向にそれぞれ所定の幅で切断され、さらに、2つのライナー材L1、L2が剥がされる。これにより、第1ベース部材30が形成される。
【0080】
ここで、ライナー材L1は、材料M1に密着する表面に凹凸形状を有する。ライナー材L1として、たとえば布が用いられる。これにより、ライナー材L1表面の凹凸形状が、第1ベース部材30の表面に転写され、この表面に凹凸形状30cが形成される。他方、材料M1に密着するライナー材L2の表面には、凹凸形状がない。ライナー材L2として、たとえば紙が用いられる。このため、第1ベース部材30の裏面には凹凸形状が形成されない。
【0081】
なお、第2ベース部材50も同様の工法で形成され得る。この場合、第2ベース部材50の表面および裏面には凹凸形状が形成されないため、第2ベース部材50を上下に挟むライナー材には、紙等の凹凸形状を有しないものが用いられる。
【0082】
図11(a)~(c)は、第1ベース部材30に弾性体34と、配線31および導電弾性体32とを形成する工程を模式的に示す図である。図11(a)~(c)には、図9(a)と同様の位置で荷重センサ1を切断したときの断面図が示されている。
【0083】
図11(a)には、図10の形成方法で形成された第1ベース部材30が示されている。上記のように、第1ベース部材30の表面には、ライナー材L1の凹凸形状が転写された凹凸形状30cが形成されている。上記のようにライナー材L1として布が用いられる場合、凹凸形状30cの形成可能な最小の高さH1(振幅)は、0.03mm程度である。したがって、凹凸形状30cの高さH1は、0.03mm以上、0.5mm以下の範囲とされ得る。
【0084】
図11(b)に示すように、凹凸形状30cの表面に弾性体34の材料が所定厚みで塗布されて、弾性体34が形成される。弾性体34の塗布は、スクリーン印刷、ディップ塗工またはスプレー塗布によって行われ得る。弾性体34は、第1ベース部材30側の凹凸形状30cを残しつつ凹凸形状30cを被覆するように形成される。すなわち、凹凸形状30cが弾性体34で被覆された状態において、弾性体34の表面には、凹凸形状30cと同様の凹凸が残った状態となっている。上記のように、弾性体34は、第1ベース部材30よりもタック性が低い材料からなっている。
【0085】
こうして弾性体34が形成された後、図11(c)に示すように、第1ベース部材30の裏面に配線31および導電弾性体32がスクリーン印刷によって形成される。このとき同時に、配線パターン33のパッド33a(図3参照)が形成される。これにより、第1ベース部材30に対する形成工程が完了する。
【0086】
図12(a)は、図10の形成工程により第1ベース部材30の表面に形成された凹凸形状30cを正面から撮像した写真であり、図12(b)は、この凹凸形状30cの高さの分布を画像解析した解析結果を示す図である。
【0087】
図12(b)には、実際には、高さが高いほど赤に近づき、高さが低いほど青に近づくスケールで色が付されている。図12(a)、(b)に示すように、凹凸形状30cは、布であるライナー材L1の凹凸が転写された形状となっている。すなわち、布を形成する糸の編み込みに応じた凹凸および模様が、凹凸形状30cに転写されている。
【0088】
図13(a)は、図11(b)の形成工程により凹凸形状30cの表面に形成された弾性体34を正面から撮像した写真であり、図13(b)は、この弾性体34の高さの分布を画像解析した解析結果を示す図である。
【0089】
図13(b)には、実際には、高さが高いほど赤に近づき、高さが低いほど青に近づくスケールで色が付されている。図13(a)、(b)に示すように、弾性体34の表面には、凹凸形状30cと同様に起伏する凹凸が表れている。すなわち、弾性体34の表面には、凹凸形状30cと同様のパターンで、山の部分と谷の部分とが生じている。山の部分のピッチは、たとえば、250μm程度である。ただし、これは一例であって、山の部分のピッチは、たとえば、図10の形成工程において用いられるライナー材L1(たとえば布)の凹凸形状のピッチによって調整され得る。
【0090】
このように、弾性体34の表面に山の部分が分布することにより、弾性体34の表面に載せられた被検知物の底と弾性体34との接触が概ね点接触となりやすく、両者の間の接触面積が低下する。これにより、荷重が付与される面である弾性体34の表面のタック性が減少する。加えて、弾性体34が、第1ベース部材30よりもタック性の低い材料で形成されているため、弾性体34の表面のタック性がさらに減少する。このように、本実施形態の構成によれば、荷重が付与される面である弾性体34の表面のタック性を顕著に減少させることができる。
【0091】
<実施形態の効果>
上記実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0092】
図9(a)、(b)および図11(b)に示したように、被検知物から荷重を受ける側の第1ベース部材30の表面がタック性の低い弾性体34により覆われているため、この表面のタック性を抑制できる。また、図13(b)に示したように、この表面に凹凸形状が残っているため、表面に被検知物が載せられた場合に、表面と被検知物との接触面積が小さくなる。これにより、表面のタック性をさらに抑制できる。他方、凹凸形状30cを被覆する部材が弾性体34であるため、第1ベース部材30は、弾性体34とともに、荷重の付与に応じて弾性変形する。よって、素子部A1に付与された荷重を良好に検出できる。
【0093】
上記のように、弾性体34の弾性率は、第1ベース部材30の弾性率以下であることが好ましく、第1ベース部材30の弾性率より小さいことがさらに好ましい。これにより、素子部A1に荷重が付与された際に、弾性体34が第1ベース部材30の弾性変形に支障を与えにくくなる。よって、荷重の検出感度を高く維持できる。
【0094】
上記のように、第1ベース部材30は、ゴム材料からなっており、弾性体34は、樹脂材料からなっていることが好ましい。これにより、第1ベース部材30におけるゴム材料の柔らかさを活かしつつ、樹脂材料の弾性体34によって表面のタック性を減少させることができる。
【0095】
図8に示したように、荷重センサ1には、複数の素子部A1が配置されている。これにより、荷重センサ1に付与された荷重の分布を測定できる。
【0096】
図8および図9(a)、(b)を参照して説明したように、素子部A1は、第1ベース部材30の裏面に形成された導電弾性体32と、導電弾性体32に重ねられる導体線11と、導電弾性体32と導体線11との間に介在する誘電体12と、を備える。これにより、荷重付与により導体線11と導電弾性体32との間の静電容量が変化する。よって、この静電容量を検出することで、素子部A1に付与された荷重を取得できる。
【0097】
図9(a)、(b)に示したように、誘電体12は、導体線11の表面を被覆するように設置されている。これにより、導体線11と導電弾性体32との間に誘電体12を円滑に配置できる。
【0098】
<変更例1>
上記実施形態では、第1ベース部材30の表面に、同一材料からなる弾性体34が一様に形成された。これに対し、変更例1では、弾性率が異なる複数種類の弾性体34が、第1ベース部材30の表面に分布して配置される。
【0099】
図14は、変更例1に係る、荷重センサ1の表面の構成を示す図である。図15は、変更例1に係る、荷重センサ1の構成を示す断面図である。図15には、図9(a)と同様の位置で荷重センサ1を切断したときの断面図が示されている。
【0100】
図14および図15の構成では、素子部A1に対応する領域に、第1ベース部材30より弾性率が高い弾性体34aが配置され、素子部A1に対応しない領域には、弾性率が第1ベース部材30以下の弾性体34bが配置されている。第1ベース部材30の表面に対する弾性体34a、34bの塗布は、適宜、マスクを用いながら、スクリーン印刷またはスプレー塗布により行われ得る。
【0101】
この構成では、弾性体34aの弾性率が高いため、1つの素子部A1の領域に偏荷重がかかっても、当該素子部A1中の2つのワイヤ10に荷重が分配されて付与される。このため、付与された荷重を精度良く検出できる。
【0102】
たとえば、上記実施形態の構成では、第1ベース部材30の表面に柔らかい弾性体34が一様に形成されている。このため、1つの素子部A1に含まれる2つのワイヤ10のうち、一方のワイヤ10の直上位置に荷重が付与された場合、一方のワイヤ10には導電弾性体32が押し付けられるが、他方のワイヤ10の位置では、一方のワイヤ10への押し付けの反動により、導電弾性体32が他方のワイヤ10から離れやすくなる。これにより、この素子部A1における荷重の検出精度が低下することが起こり得る。
【0103】
これに対し、変更例1の構成では、素子部A1の領域に配置された弾性体34aが硬いため、上記のように一方のワイヤ10の直上位置に荷重が付与された場合も、弾性体34aの全体が下方に押し込まれる。このため、2つのワイヤ10の両方に対して導電弾性体32が押し付けられる。よって、素子部A1に付与された荷重を精度良く検出できる。
【0104】
なお、弾性率が異なる複数種類の弾性体34を、第1ベース部材30の表面に分布して配置する方法は、図14および図15に示した方法に限られない。
【0105】
たとえば、素子部A1に対応する領域に、第1ベース部材30より弾性率が高い弾性体34aが配置され、素子部A1の周囲の領域には、弾性率が第1ベース部材30以下の弾性体34bが配置され、それ以外の領域には、第1ベース部材30より弾性率が高い弾性体が配置されてもよい。このように、弾性率が異なる3種類以上の弾性体が、第1ベース部材30の表面に分布して配置されてもよい。
【0106】
あるいは、全ての素子部A1がマトリクス状に配置された領域には、弾性率が第1ベース部材30以下の弾性体が配置され、それ以外の領域には、第1ベース部材30より弾性率が高い弾性体が配置されてもよい。これにより、第1ベース部材30の外周部分の機械的強度を高めることができる。
【0107】
<変更例2>
上記実施形態では、第1ベース部材30の表面(Z軸正側の面)のみに弾性体34が塗布されたが、荷重センサ1のその他の面にも弾性体34が塗布されてもよい。たとえば、図16(a)に示すように、第1ベース部材30の表面(Z軸正側の面)とともに、荷重センサ1の側面(たとえば、X軸正負の側面、Y軸正の側面)にも、弾性体34が塗布されてもよい。すなわち、弾性体34は、第1ベース部材30と第2ベース部材50とを跨ぐように荷重センサ1の側面をさらに被覆してもよい。
【0108】
この構成によれば、図16(a)に示すように、第1ベース部材30と第2ベース部材50との間の隙間が、側面付近において弾性体34により塞がれる。これにより、この側面の隙間から水分が荷重センサ1の内部に入り込むことを防ぐことができる。よって、荷重センサ1の信頼性を高めることができる。
【0109】
なお、図16(b)に示すように、第2ベース部材50の下面に弾性体34がさらに塗布されてもよい。この場合、図11(b)の工程が省略され、図8のように荷重センサ1の組立が完了した後、回路基板20を除いた荷重センサ1の範囲に対して、弾性体34を塗布するためのディップ塗工が施される。これにより、第1ベース部材30の上面、荷重センサ1の3つの側面および第2ベース部材50の下面に同時に弾性体34が塗布される。この方法により、弾性体34の塗布工程を簡略化することができる。
【0110】
<その他の変更例>
上記実施形態および変更例では、配線31および導電弾性体32は、第1ベース部材30の対向面30aに配置されたが、これに限らず、第2ベース部材50の対向面(Z軸正側の面)にさらに配置されてもよい。この場合、たとえば、第1ベース部材30側の構成と同様、第2ベース部材50に配置された配線31から配線パターン33が引き出され、この配線パターン33のパッド33aが、回路基板20の下面側に配置された電極に、接続部材を介して接続される。
【0111】
また、第1ベース部材30の形成方法は、図10に示した方法に限られるものではなく、荷重が付与される表面に凹凸形状を形成可能な限りにおいて、他の工法が用いられてもよい。
【0112】
上記実施形態では、荷重センサ1の下面(Z軸負側の面)は、第2ベース部材50の下面と、回路基板20の下面とにより構成されたが、上記荷重センサ1の下面に、当該下面を覆うようにシート状の保護部材が配置されてもよい。
【0113】
上記実施形態および変更例1、2において、接続部材41~44、51は、糸に限らず、両面テープ、接着剤、カシメ部材などにより構成されてもよい。
【0114】
上記実施形態および変更例1、2では、導体線11の全周を被覆するように誘電体12が設置されたが、導体線11の表面のうち、少なくとも、荷重に応じて接触面積が変化する範囲のみを被覆するように、誘電体12が配置されてもよい。また、誘電体12は、厚み方向において1種類の材料により構成されたが、厚み方向において2種類以上の材料が積層された構造を有してもよい。
【0115】
上記実施形態および変更例1、2では、導体線11の表面に誘電体12が配置されたが、誘電体12は、他の形態により、導体線11と導電弾性体32との間に配置されてもよい。たとえば、図17に示すように、誘電体12が、導電弾性体32の表面に配置されてもよい。この場合、誘電体12は、荷重に応じて導体線11との接触面積が変化するよう、弾性変形可能な材料により構成される。たとえば、誘電体12は、導電弾性体32と同様の弾性率を有する材料により構成される。
【0116】
また、素子部の構成は、上記実施形態および変更例1、2の構成に限られるものではない。付与された荷重を検知可能な構成であれば、素子部が他の構成であってもよい。
【0117】
たとえば、素子部が、半球状の凸部(導電弾性体)と、凸部に重なる平板状の電極と、凸部と電極との間に介在する誘電体とを備える構成であってもよい。この場合、誘電体は、たとえば、電極の表面(凸部に対向する面)を被覆するように配置される。付与された荷重に応じて凸部が圧縮され、凸部と誘電体との接触面積が変化する。こうして、凸部(導電弾性体)と電極との間の静電容量が荷重に応じて変化する。
【0118】
上記実施形態および変更例では、1つの素子部A1に配置されるワイヤ10の数は2個であったが、これに限らない。また、1つの素子部A1に配置される導電弾性体32の数は1個であったが、これに限らない。
【0119】
上記実施形態および変更例では、荷重センサ1に配置されるワイヤ10の数は22個であったが、これに限らない。荷重センサ1に配置される導電弾性体32の数は11個であったが、これに限らず、たとえば1個でもよい。この場合、導電弾性体32から引き出される配線パターン33も1個となり、接合位置P1も1つになる。
【0120】
上記実施形態および変更例では、X軸方向における素子部A1の数は11個であったが、これに限らず、たとえば1個でもよい。また、Y軸方向における素子部A1の数は11個であったが、これに限らず、たとえば1個でもよい。
【0121】
上記実施形態および変更例では、配線31および導電弾性体32は、X軸方向(第2方向)に延びていたが、X軸方向に対して非平行な方向に延びてもよい。たとえば、配線31および導電弾性体32と、ワイヤ10とが、互いに斜め方向に交差してもよい。
【0122】
上記実施形態および変更例では、第1ベース部材30の対向面30aと導電弾性体32との間に、配線31が配置されたが、配線31は省略されてもよい。この場合、導電弾性体32のX軸正側の端部から、配線パターン33が引き出される。また、ワイヤ10と第1ベース部材30との接続形態は、上記実施形態および変更例1、2に限定されるものではなく、他の接続形態であってもよい。
【0123】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0124】
<付記>
以上の実施形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0125】
(技術1)
被検知物から荷重を受ける側の表面に凹凸形状を有する第1ベース部材と、
前記第1ベース部材よりタック性が低く、前記凹凸形状を残しつつ前記凹凸形状を被覆する弾性体と、
前記表面に対して反対側から前記第1ベース部材に重ねられる第2ベース部材と、
前記第1ベース部材と前記第2ベース部材との間に配置され、荷重を検知するための素子部と、を備える、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0126】
この技術によれば、被検知物から荷重を受ける側の第1ベース部材の表面がタック性の低い弾性体により覆われるため、この表面のタック性を抑制できる。また、この表面に凹凸形状が残っているため、表面に被検知物が載せられた場合に、表面と被検知物との接触面積が小さくなる。これにより、表面のタック性をさらに抑制できる。他方、凹凸形状を被覆する部材が弾性体であるため、第1ベース部材は、弾性体とともに、荷重の付与に応じて弾性変形する。よって、素子部に付与された荷重を良好に検出できる。
【0127】
(技術2)
技術1に記載の荷重センサにおいて、
前記弾性体の弾性率は、前記第1ベース部材の弾性率以下である、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0128】
この技術によれば、素子部に荷重が付与された際に、弾性体が第1ベース部材の弾性変形に支障を与えにくくなる。よって、荷重の検出感度を高く維持できる。
【0129】
(技術3)
技術1または2に記載の荷重センサにおいて、
前記第1ベース部材は、ゴム材料からなっており、
前記弾性体は、樹脂材料からなっている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0130】
この技術によれば、第1ベース部材におけるゴム材料の柔らかさを活かしつつ、樹脂材料の弾性体によって表面のタック性を減少させることができる。
【0131】
(技術4)
技術1ないし3の何れか一つに記載の荷重センサにおいて、
弾性率が異なる複数種類の前記弾性体が、前記第1ベース部材の前記表面に分布して配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0132】
この技術によれば、荷重センサの性能向上等を考慮しつつ、弾性率が異なる複数種類の弾性体を第1ベース部材の表面に分布して配置できる。
【0133】
(技術5)
技術4に記載の荷重センサにおいて、
前記素子部に対応する領域に前記第1ベース部材より弾性率が高い前記弾性体が配置され、前記素子部に対応しない領域には弾性率が前記第1ベース部材以下の前記弾性体が配置される、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0134】
この技術によれば、素子部の領域に配置された弾性体が硬いため、素子部に偏荷重が付与された場合も、弾性体の全体が下方に押し込まれる。このため、素子部に付与された荷重を精度良く検出できる。
【0135】
(技術6)
技術1ないし5の何れか一つに記載の荷重センサにおいて、
前記弾性体は、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材とを跨ぐように前記荷重センサの側面をさらに被覆する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0136】
この技術によれば、第1ベース部材と第2ベース部材との間の隙間が、側面付近において塞がれる。これにより、側面の隙間から水分が荷重センサの内部に入り込むことを防ぐことができる。よって、荷重センサの信頼性を高めることができる。
【0137】
(技術7)
技術1ないし6の何れか一つに記載の荷重センサにおいて、
複数の前記素子部が配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0138】
この技術によれば、荷重センサに付与された荷重の分布を測定できる。
【0139】
(技術8)
技術1ないし7の何れか一つに記載の荷重センサにおいて、
前記素子部は、
前記第1ベース部材の裏面に形成された導電弾性体と、
前記導電弾性体に重ねられる導体線と、
前記導電弾性体と前記導体線との間に介在する誘電体と、を備える、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0140】
この技術によれば、荷重付与により導体線と導電弾性体との間の静電容量が変化する。よって、この静電容量を検出することで、素子部に付与された荷重を取得できる。
【0141】
(技術9)
技術8に記載の荷重センサにおいて、
前記誘電体は、前記導体線の表面を被覆するように設置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【0142】
この技術によれば、導体線の表面を誘電体で被覆するだけで、導電弾性体と導体線との間に誘電体を配置できる。
【符号の説明】
【0143】
1 荷重センサ
11 導体線
12 誘電体
30 第1ベース部材
32 導電弾性体
34、34a、34b 弾性体
50 第2ベース部材
A1 素子部
図1
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