(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171754
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20241205BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E02F9/24 Z
B60R11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088949
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】段口 将志
(72)【発明者】
【氏名】三木 貴弘
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BB07
3D020BC13
3D020BD03
(57)【要約】
【課題】機体の周囲を撮影する複数のカメラを備えた構成において、作業中のカメラの破損を防止すること。
【解決手段】 掘削作業機1は、左右一対の走行部5,5を備えた下部走行体20Aと、下部走行体20Aの上方に旋回自在に支持された上部旋回体20Bと、上部旋回体20Bに配置された複数のカメラ61,62,63を備えており、上部旋回体20Bが旋回しているときに、複数のカメラ61,62,63のうちの少なくとも1つは、平面視において走行部5と重なる位置にある。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行部を備えた下部走行体と、前記下部走行体の上方に旋回自在に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体に配置された複数のカメラを備える作業機械であって、
前記上部旋回体の旋回による全ての回動位置で、前記複数のカメラのうちの少なくとも1つは、平面視において前記走行部と重なる位置にある作業機械。
【請求項2】
前記複数のカメラは、それぞれ前記上部旋回体の外装を構成する外装部材の外側に向けて設けられている、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記外装部材には、前記上部旋回体の後端部に配置されるカウンタウエイトを含み、
前記複数のカメラのうちの1つは、前記上部旋回体の後方を撮影する後方カメラであり、
前記後方カメラは、前記カウンタウエイトよりも上方にあり、前記上部旋回体が所定の角度旋回したときに、上下方向において、前記カウンタウエイトを挟んで前記左右一対の走行部の一方と重なる位置となる、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記カウンタウエイトは、前記カウンタウエイト上方の後部外装部材より突出して取り付けられ、
前記後方カメラは、平面視において、前記カウンタウエイトの後端縁と前記後部外装部材の外面部との間に配置される、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
運転部を収容するキャビンには、透過面を有し、上下方向を回動軸として開閉する扉部が設けられ、
前記複数のカメラのうちの1つは、前記扉部の後方であって、前記扉部が外装部材を覆う最大回動位置まで回動したときに、側面視において、前記透過面と重なる位置に配置されている、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記外装部材には、前記上部旋回体の内部に設けられた機器を配置する機関室と外部とを連通する通気部が設けられ、
前記通気部の上部に、前記機関室の上部開口を開閉自在に覆うカバー部材が設けられ、
前記複数のカメラのうちの1つは、前記通気部の前方の位置に前記カバー部材に隣接して配置されている、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項7】
前記複数のカメラは、後方に配置された第1カメラと、左側方に配置された第2カメラと、右側方に配置された第3カメラを含み、
前記第1カメラ、前記第2カメラおよび前記第3カメラは、平面視において前記上部旋回体の後部が描く旋回軌跡に沿って配置されている、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば掘削作業機等の作業機械には、左右一対のクローラ式の走行部を有する下部走行体と、下部走行体に旋回可能に接続された上部旋回体と、上部旋回体の旋回フレームに俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されたものがある。上部旋回体の旋回フレームには、運転席が設けられオペレータが作業装置等の操作を行うために乗り込むキャビンと、エンジンを含む各種機器類が配置され、各種機器類は外装カバーにより覆われている。
【0003】
また、このような作業機械では、機体の周囲に存在する障害物をキャビン内のオペレータに認識させるために、複数のカメラを配置し、キャビン内の表示装置に撮影画像を表示するものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、上部旋回体の後方を撮影する複数のカメラを備えた作業機械が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された作業機械では、盗難、或いは、いたずら防止の観点から、複数のカメラのそれぞれが、外装カバーに対して、格納可能に設けられている。一方で、安全に対する注意喚起の観点から、上部旋回体の旋回動作を伴う掘削作業等の作業中には、カメラ本体を外装カバーから突出させて撮影を行う必要がある。そうすると、特許文献1に開示された作業機械は、上部旋回体の後部端が旋回時に描く軌跡を考慮して、機体と障害物との間に距離を設けて機体を作業位置に配置しても、上部旋回体を左右何れかに略90度旋回させたときに、上部旋回体の後部端からさらに突出したカメラが障害物に衝突して破損する問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、機体の周囲を撮影する複数のカメラを備えた構成において、作業中のカメラの破損を防止することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業機械は、左右一対の走行部を備えた下部走行体と、前記下部走行体の上方に旋回自在に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体に配置された複数のカメラを備える作業機械であって、前記上部旋回体の旋回による全ての回動位置で、前記複数のカメラのうちの少なくとも1つは、平面視において前記走行部と重なる位置にあるものである。
【0009】
本発明の他の態様に係る作業機械は、前記作業機械において、前記複数のカメラは、それぞれ前記上部旋回体の外装を構成する外装部材の外側に向けて設けられている、ものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る作業機械は、前記作業機械において、前記外装部材には、前記上部旋回体の後端部に配置されるカウンタウエイトを含み、前記複数のカメラのうちの1つは、前記上部旋回体の後方を撮影する後方カメラであり、前記後方カメラは、前記カウンタウエイトよりも上方にあり、前記上部旋回体が所定の角度旋回したときに、上下方向において、前記カウンタウエイトを挟んで前記左右一対の走行部の一方と重なる位置となる、ものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る作業機械は、前記作業機械において、前記カウンタウエイトは、前記カウンタウエイト上方の後部外装部材より突出して取り付けられ、前記後方カメラは、平面視において、前記カウンタウエイトの後端縁と前記後部外装部材の外面部との間に配置される、ものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る作業機械は、前記作業機械おいて、運転部を収容するキャビンには、透過面を有し、上下方向を回動軸として開閉する扉部が設けられ、前記複数のカメラのうちの1つは、前記扉部の後方であって、前記扉部が外装部材を覆う最大回動位置まで回動したときに、側面視において、前記透過面と重なる位置に配置されている、ものである。
【0013】
本発明の他の態様に係る作業機械は、前記作業機械において、前記外装部材には、前記上部旋回体の内部に設けられた機器を配置する機関室と外部とを連通する通気部が設けられ、前記通気部の上部に、前記機関室の上部開口を開閉自在に覆うカバー部材が設けられ、前記複数のカメラのうちの1つは、前記通気部の前方の位置に前記カバー部材に隣接して配置されている、ものである。
【0014】
本発明の他の態様に係る作業機械は、前記作業機械において、前記複数のカメラは、後方に配置された第1カメラと、左側方に配置された第2カメラと、右側方に配置された第3カメラを含み、前記第1カメラ、前記第2カメラおよび前記第3カメラは、平面視において前記上部旋回体の後部が描く旋回軌跡に沿って配置されている、ものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業機械の機体の周囲を撮影する複数のカメラを備えた構成において、作業中のカメラの破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の右側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の背面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の上部旋回体を略90度右旋回させた平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る掘削作業機のキャビンの扉を開放した状態を示す左側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るカメラの取付構造を説明する斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るカメラの取付構造を説明する側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るカメラの取付構造を説明する斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るカメラの取付構造を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、機体の周囲を撮影する複数のカメラを備えた構成において、カメラの配置を工夫することにより、特に作業中のカメラの破損防止を図るものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の実施の形態では、本発明に係る作業機械として、旋回作業車である掘削作業機(ショベル)を例にとって説明する。ただし、本発明に係る作業機械は、掘削作業機に限らず、例えば、クレーン作業機等の他の作業機械にも広く適用可能である。
【0019】
本実施形態に係る掘削作業機1の構成について、図面を用いて説明する。なお、以下では、特に方向視を定めない限り、掘削作業機1の運転席に着座したオペレータの位置を基準に、「前側」、「後側」、「左右側」、「平面側」又は「上側」、「底面側」又は「下側」と称する。
【0020】
図1は、本発明に係る掘削作業機1の左側面図、
図2は、背面図、
図3は左側面図、
図4は平面図、
図5は、上部旋回体20Bの向きを
図4に示す向きから略90度右旋回させた状態の平面図である。
図6は、上部旋回体20Bの左側面図である。なお、
図6においては、キャビン10の扉部21を開放した状態を示し、キャビン10内の運転席および操作部の図示を省略している。
【0021】
図1から
図5に示すように、掘削作業機1は、自走可能な走行車体(機体)2と、走行車体2に取り付けられた作業機としての掘削装置3および排土装置4とを備える。走行車体2は、走行部5を備えた下部走行体20Aと、下部走行体20Aの上部に旋回可能に設けられた上部旋回体20Bとから構成される。排土装置4は下部走行体20A側に取付けられている。また、掘削装置3は上部旋回体20B側に取付けられている。
【0022】
下部走行体20Aは、左右一対のクローラ式の走行部5,5と、左右の走行部5,5間に介設された基台としての機体フレーム6を有する。
【0023】
走行部5は、機体フレーム6に支持されたスプロケット、アイドラおよび複数のローラに履帯を巻回した構成を有する。走行部5は、その後端部に、駆動輪である駆動スプロケット5aを有する。
【0024】
機体フレーム6の前側には、排土装置4が取り付けられている。排土装置4は、下部走行体20Aに対して上下回動可能に設けられている。排土装置4は、左右一対のアーム43と、左右一対のアーム43の先端に設けられた排土板であるブレード41とを備える。これらの構成を含む排土装置4は、
図4に示すように、全体として略左右対称に構成されている。
【0025】
左右のアーム43は、左右の走行部5,5間において前後方向に延伸して設けられている。左右のアーム43は、その基端部を機体フレーム6の前部に設けられたアーム支持ブラケット42に対して左右方向を回動軸方向として支持されている。そして、左右のアーム43は、ブレードシリンダ44の伸縮によって上下回動する。つまり、ブレードシリンダ44が伸縮することにより、左右のアーム43を介してブレード41が上下回動する。
【0026】
上部旋回体20Bは、走行部5に対して旋回可能に搭載された旋回フレーム7を有する。旋回フレーム7は、旋回ベアリング8を介して機体フレーム6に接続され、旋回モータ(図示せず)の駆動により、機体フレーム6に対して上下方向を軸方向とする旋回軸C(
図4及び
図5参照)回りに左右いずれの方向にも旋回可能に設けられている。
【0027】
旋回フレーム7は、平面視略円形状の形状を有し、上部旋回体20Bの基台となる構成である。旋回フレーム7の底板71(
図6参照)の前側には、支持ブラケット28が設けられている。支持ブラケット28の基端は、底板71に溶接等により固定されている。支持ブラケット28は、掘削装置3を前後方向に回動自在に支持するスイングブラケット27を支持するものである。
【0028】
掘削装置3は、その基部側の部分を構成するブーム32と、ブーム32の先端側に連結されたアーム33と、アーム33の先端部に取り付けられたバケット34とを有する。また、掘削装置3は、ブーム32を回動動作させるブームシリンダ35と、アーム33を回動動作させるアームシリンダ36と、バケット34を回動動作させるバケットシリンダ37とを有する。
【0029】
ブーム32の基端部は、スイングブラケット27により支持されている。スイングブラケット27は、左右方向に揺動自在に支持ブラケット28に支持されている。より具体的には、スイングブラケット27は、旋回フレーム7に突設された支持ブラケット28に、上下方向を回動軸方向とする連結軸を介して支持されている。
【0030】
スイングブラケット27は、左右方向を回動軸方向としてブーム32の基端を回動可能に支持するブーム支持部と、ブームシリンダ35の下端を支持するブームシリンダ支持部と、スイングシリンダ38のロッドの先端を連結するスイングシリンダ連結部を有する。スイングシリンダ38の動作により連結軸回りにスイングブラケット27が回動することにより、掘削装置3が左右方向に揺動する。
【0031】
ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37およびスイングシリンダ38は、いずれも油圧ポンプ(図示せず)が吐出する圧油によって動作する複動式の油圧シリンダである。各油圧シリンダには、油圧供給用および油圧排出用の油圧配管がそれぞれ接続される。また、掘削装置3において、バケット34は、作業用アタッチメントとして着脱可能に装着されており、作業内容に応じてバケット34に替えて挟み機(フォーク)または破砕機(ブレーカ)等の他のアタッチメントが装着される。
【0032】
旋回フレーム7には、オペレータが走行部5および作業機を運転・操作する運転部を収容したキャビン10と、エンジン、バッテリ、エンジン用の燃料タンクおよび油圧シリンダ用の作動油タンクを収容する機関室11が設けられている。機関室11は、キャビン10の右側から後方にかけて旋回フレーム7上に設けられている。
【0033】
旋回フレーム7は、上部旋回体20Bの外形を形成する外装部材を有する。外装部材は、旋回フレーム7上の機器を配置した空間を囲む部材であり、上部旋回体20Bの後端に設けられるカウンタウエイト9、旋回フレーム7の左前側に配置されたキャビン10の左サイドパネル55(
図1参照)、上部旋回体20Bの右側から後方にかけて設けられた外装カバー(
図3参照)を含む。
【0034】
カウンタウエイト9は、掘削装置3との重量バランスをとるためのものである。カウンタウエイト9は、リアカバー13の下方において機関室11の後方を覆うように、例えば、旋回フレーム7の底板71に立設されたステー(図示せず)に取り付けられている。カウンタウエイト9は、旋回により掘削装置3が左右のいずれの方向を向く場合においても、
図4および
図5に示すように、平面視において、左右一対の走行部5,5の幅内に収まるように上部旋回体20Bに設けられている。
【0035】
外装カバーは、旋回フレーム7の形状および旋回フレーム7上の構成の配置に応じて、形状および大きさの異なる複数の部材により構成されている。すなわち、外装カバーは、カウンタウエイト9の上側であって機関室11の後方を覆うリアカバー13と、旋回フレーム7の右側となる機関室11の右側面を覆う右カバー14と、機関室11の右側下部を覆う右下カバー15と、機関室11の右側前方を覆う右前カバー16と、機関室11の左側後方を覆う左後カバー19とを含んで構成されている。
【0036】
右カバー14には、外装部材により囲まれた空間である機関室11を外部と連通する通気部80が設けられている。通気部80には、機関室11内に外気を通すための複数の通気口が設けられている。通気部80をなす複数の通気口は、右カバー14の後部において、右側面視で右カバー14の後部の外形に沿うとともに略矩形状に沿った形態をなすように配置形成されている(
図3参照)。例えば、機関室11内に設けられたファンの動作により、複数の通気口を通して機関室11内に冷却用の外気が取り込まれ、機関室11内のラジエータやオイルクーラ等が冷却される。
【0037】
また、旋回フレーム7の右側となる機関室11の上方は、開閉可能に設けられた右上カバー12により覆われている。
【0038】
キャビン10は略箱型の形状を有し、キャビン10内には、運転席が設けられている。運転席の周辺には、走行部5を走行させるための走行レバー、旋回フレーム7の旋回、作業機の操作を行うための複数の操作ペダル、作業操作レバー、および、表示装置を含む操作パネル部等が設けられている。表示装置には、後述する複数のカメラ61,62,63により撮影された撮影画像が表示される。また、キャビン10の左側面には、オペレータの搭乗口となる扉部21が設けられている。なお、キャビン10の床下の機器を配置する空間は、左下カバー17およびフロントカバー18により覆われている。
【0039】
キャビン10は、フレーム51と、ガラス等の透明部材から成る複数の窓部52a,52b,52c、52d,52eを有する。キャビン10の前面には窓部52aが、右側面上部には窓部52bが、背面には窓部52cがそれぞれフレーム51に支持されて配置されている。また、キャビン10のルーフ22の前方側には、窓部52dが設けられている。フレーム51の左側面の前後方向の中間部には支柱53が立設されている、当該支柱53に扉部21が上下方向を回動軸として、外開き式に設けられている。言い換えると、扉部21は、後方側端縁を上下一対のヒンジ部54a,54bを介して、支柱53に前後方向に回動可能に取り付けられている。
【0040】
キャビン10の左側面の支柱53より後方側の下側は鋼板等により構成された左サイドパネル55により覆われている。また、左サイドパネル55の上方側は、窓部52eとなっている。運転席に着座したオペレータは、窓部52eから目視で機体の左方向を視認可能となっている。また、左サイドパネル55には、開放された扉部21を左サイドパネル55側に固定するための係合受部49と、機体の左方向から斜め後方を撮影する左方カメラ62が設けられている。
【0041】
扉部21は、外周フレーム56と、外周フレーム56により囲まれた領域を上下に区画する中間フレーム57を有する。中間フレーム57の上側に窓部58a、中間フレーム57の下側に窓部58bがそれぞれ設けられている。また、窓部58bの下方の外周フレーム56には、オペレータが扉部21を開閉するときに操作するハンドル部59が設けられている。
【0042】
扉部21の上側の窓部58aは、中間フレーム57上にスライド開閉可能に設けられた2枚のガラス板から成る。また、下側の窓部58bは、中間フレーム57を外側から覆うように1枚のガラス板から成る。下側の窓部58bにおいては、外周フレーム56および中間フレーム57にガラス板が支持されている。下側の窓部58bの外面側の中間フレーム57と重なる位置であって、扉部21の前後方向の長さの中間位置には、扉部21を開放したときに、扉部21をキャビン10の左後方の左サイドパネル55に保持して固定するための係合部48が設けられている。係合部48が、左サイドパネル55に設けた係合受部49に係合することにより、
図6に示すように、扉部21が開放された状態でキャビン10の左側面に保持される。係合部48および係合受部49は、扉部21を開いた状態で保持するいわゆるドアキャッチであり、ロック機構を構成している。扉部21は、係合部48および係合受部49により保持された状態で、左サイドパネル55および窓部52eにより構成されたキャビン10の左後側の壁部に沿って、平面視で後側を前側に対して左右内側(左側)に位置させるように傾斜した状態となる。なお、係合部48に対する係合受部49の配置は、扉部21の大きさ、あるいは、機体の大きさによって適宜変更される。
【0043】
以上のような構成を備えた掘削作業機1においては、キャビン10に搭乗したオペレータにより走行レバーおよび/または作業操作レバー等が適宜操作されることで、所望の動作・作業が行われる。例えば、走行レバーの操作により、走行部5の前後直進走行または左右旋回走行が行われ、作業操作レバーの操作により、掘削装置3による掘削作業、あるいは、排土装置4による排土作業および/または整地作業が行われる。
【0044】
本実施形態に係る掘削作業機1において、上部旋回体20Bに設けたカメラの取付構造および配置についてさらに説明する。
【0045】
掘削作業機1は、機体の周囲を撮影するための3つのカメラ61,62,63を備える。これら3つのカメラ61,62,63は、掘削作業機1の後方を撮影する後方カメラ(第1カメラ)61と、左方を撮影する左方カメラ(第2カメラ)62と、右方を撮影する右方カメラ(第3カメラ)63である。後方カメラ61、左方カメラ62および右方カメラ63は、CCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子を含んで構成されたデジタルカメラであり、所定のフレームレートで動画撮影を行うものである。各カメラ61,62,63が撮影した動画は、キャビン10内の表示装置に表示される。なお、本発明に係るカメラの構成は特に限定されるものではなく、例えば測距センサの一種であるステレオカメラ等であってもよい。
【0046】
後方カメラ61は、カウンタウエイト9の上側に設けられた後部外装部材であるリアカバー13に設けられている。リアカバー13は、機関室11の後部を覆うボンネットであり、リアカバー13の前側に設けられた軸支部により左右方向を回動軸方向として上下に開閉可能に設けられている。後方カメラ61は、平面視で車幅内に収まっているカウンタウエイト9に対して、
図6に示すように、その最外端(
図6に一点鎖線で示す垂直線L1)より内側に配置されている。つまり、後方カメラ61は、平面視において、カウンタウエイト9の後端縁とリアカバー13の外面部13aとの間に配置される。
【0047】
図7および
図8を参照して、後方カメラ61の構成および取付構造について説明する。
【0048】
後方カメラ61は、カメラ本体64と、カメラ本体64を揺動可能に支持する支持部材67と、カメラ本体64と支持部材67とを収容するケーシング72とを備える。
【0049】
カメラ本体64は、略直方体状の形状を有し、直方体の一端面にレンズを配置したレンズ部65が設けられ、レンズ部65と対向する直方体の他端面側から信号ケーブル66を延出した構成を有する。
【0050】
支持部材67は、板金を断面視略U字状に形成したものであり、U字の腕部分となる各支持側板部67a,67bの端部を下向きに、U字の底となる部分を上板部67cとして、ケーシング72内に配置されている。各支持側板部67a,67bの端部を傾斜した端縁とすることにより、上板部67cをカメラ本体64の傾斜角に対応するように傾斜させて設けている。また、各支持側板部67a,67bには、略直方体状のカメラ本体64をレンズ配置面(レンズ部65)が外側に向くように傾斜させて支持するために、ボルト69a,69bを螺挿可能なネジ孔(図示せず)が設けられている。
【0051】
ケーシング72は、互いに離間してリアカバー13から後方に突出させて設けられた一対の側板部73a,73bと、板金を一対の側板部の外形状に沿って曲げ加工して形成した前カバー部74を有する。
【0052】
ケーシング72の一対の側板部73a,73bは、側面視で略台形状の形状を有し、台形の底辺部を基端として、基端側がリアカバー13に固定されている。一対の側板部73a,73bのそれぞれには、ボルト69a,69bのカメラ本体64に対する締め付けを調整するための工具を挿入可能な孔部75a,75bが設けられている。
【0053】
ケーシング72の前カバー部74は、下板部74aと、下板部74aから斜め上方に立ち上がり斜め下方に向けてカメラ本体64のレンズ用の開口部78が設けられたレンズ開口板部74bと、レンズ開口板部74bからリアカバー13側に向けて斜め上方に傾斜する傾斜板部74cとから成る。カメラ本体64は、開口部78を介してレンズ部65に光像を取り込むように配置される。
【0054】
前カバー部74の上下の端部、すなわち下板部74a側の端部と傾斜板部74c側の端部とには、リアカバー13側に設けられた長孔(図示せず)と嵌まり合う嵌合部76が設けられており、前カバー部74は、嵌合部76を介してリアカバー13に固定される。
【0055】
前カバー部74における下板部74aとレンズ開口板部74bの内壁側には、
図8に示すように、支持部材67の支持側板部67a,67bの端縁が溶接等により固定されている。カメラ本体64を開口部78の開口に対してレンズ部65が合うように傾斜させて、支持部材67の一対の支持側板部67a,67b間に配置する。しかる後、各支持側板部67a,67bのネジ孔にボルト69aを螺挿して、ボルト69aの先端をカメラ本体64の側面の中央付近に当接させる。このとき、支持側板部67a側から螺挿されたボルト69aと、支持側板部67a側から螺挿されたボルト69aが同軸上に配置され、カメラ本体64が一対のボルト69aにより揺動可能に挟持されることになる。さらに、各支持側板部67a,67bのネジ孔にボルト69bを螺挿して、その先端をカメラ本体64の側面の中央より信号ケーブル66の突出側に近い位置に当接させる。このとき、支持側板部67a側から螺挿されたボルト69bと、支持側板部67a側から螺挿されたボルト69bが同軸上に配置され、カメラ本体64が一対のボルト69bにより挟持される。これにより、カメラ本体64の傾きが固定される。すなわち、カメラ本体64は、支持部材67に支持されるとともに、ボルト69aおよびボルト69bを介してレンズ部65の向きを調整および固定される。
【0056】
このような構成の後方カメラ61をリアカバー13に取り付ける際には、ケーシング72の側板部73a,73bをリアカバー13に固定し、前カバー部74をリアカバー13に対して嵌め合わせる。これにより、支持部材67を介して前カバー部74と一体化されたカメラ本体64が、リアカバー13に取り付けられる。リアカバー13には、旋回フレーム7の内部と連通する孔部79(
図8参照)が設けられており、カメラ本体64から延出された信号ケーブル66を当該孔部79に挿通している。なお、信号ケーブル66は、キャビン10に設けられた制御装置(図示せず)に接続されている。
【0057】
前カバー部74をリアカバー13に取り付けると、ケーシング72内にカメラ本体64が収容された状態となる。すなわち、カメラ本体64がケーシング72により覆われることにより、外部からの物理的衝撃等からカメラ本体64が保護されることになる。
【0058】
また、ケーシング72の前カバー部74において、下板部74aは、レンズ開口板部74bと傾斜板部74cとの角部74dより奥側かつ下側に位置し、開口部78は斜め下方向きに開口されている。つまり開口部78は、
図8に示すように、ケーシング72において最も外側に位置することになる角部74dよりも内側(奥側)に形成されることになる。支持部材67に、レンズ部65が角部74dを通る垂直線L2よりも外側に飛び出さないようにカメラ本体64を支持させることにより、上部旋回体20Bを旋回させたときに、角部74dよりも外側に存在する障害物にカメラ本体64が直接衝突することが防止される。
【0059】
また、側板部73a,73bの孔部75aから工具を用いてボルト69a,69bの締め付けを緩めることにより、カメラ本体64が揺動可能となり、カメラ本体64におけるレンズの向き(視野方向)を調整することが可能となる。レンズの向きは、レンズ開口板部74bの開口部78の上下方向の長さに相当する範囲において変更可能である。これにより、上下の撮影方向の調整を行うことが可能となる。
【0060】
なお、右方カメラ63は、後方カメラ61と同様の構成を有するため、取付構造等の詳細な説明は省略する。右方カメラ63は、レンズ部65を外側に向けた状態で、右カバー14に固定されている。右カバー14における右方カメラ63の取付位置は、通気部80よりも上方の右上カバー12の近傍の位置である(
図2および
図3参照)。右上カバー12は、キャビン10側に開閉軸を設けて、上部旋回体20Bの右側面において、右カバー14と離間可能に開閉するように構成されている。このため、右方カメラ63は、通気部80の複数の通気口を塞がない位置であって、右上カバー12の開閉の妨げとならない位置に固定される。
【0061】
また、右方カメラ63は、通気部80の前方の位置に設けられている。つまり、
図3に示すように、右方カメラ63は、前後方向について、通気部80の前端位置FLよりも前方の位置に配置されている。通気部80の前端位置FLは、通気部80をなす複数の通気口のうち、前端に位置して上下方向に延伸した通気口81の前側の縁部の位置である。
【0062】
次に、左方カメラ62の構成について説明する。
図9は、左方カメラ62の斜視図であり、
図10はその側面図である。
【0063】
左方カメラ62は、後方カメラ61と同様のカメラ本体64と、カメラ本体64を揺動可能に支持する支持部材87と、カメラ本体64のレンズ部65側を保持するとともにキャビン10の左サイドパネル55に取付可能に構成された保護カバー部92とを備える。
【0064】
支持部材87は、所定形状の板金を曲げ加工して形成したものであり、断面視略U字状のカメラ支持部88と、固定部86とから成る。
【0065】
固定部85は、扉部21の後方となる左サイドパネル55よりも内側に配置されたキャビン10のインナーパネル91(
図10参照)にカメラ本体64を固定するためのものである。固定部86は、インナーパネル91の取付面に平行な平坦面を有するとともに、ボルト99を挿通可能な孔部86aを有する。
【0066】
カメラ支持部88は、U字の腕部分となる各支持側板部88a,88bの端部を下向きに、U字の底となる部分を上板部88cとして固定部86よりも外側に突出して設けられている。このとき、上板部88cは、カメラ本体64の傾斜角に対応するように傾斜させて設けられる。また、各支持側板部88a,88bには、カメラ本体64をレンズ配置面が外側に向くように傾斜させて支持するために、ボルト89a,89bを螺挿可能なネジ孔(図示せず)が設けられている。
【0067】
保護カバー部94は、所定の厚みの略正方形状の板状ラバー材を、矩形凸状に成形したものであり、板状部93と、側面視で略三角形状の保護カバー部94から成る。板状部93の外周に溝部93aが形成されており、
図10に示すように、扉部21の左サイドパネル55に設けられた取付孔97の内縁に溝部93aが嵌合するようになっている。保護カバー部94の外側斜め下方を向く面には、カメラ本体64のレンズ用の開口部98が設けられている。また、この開口部98は、横幅方向よりも縦方向の長さが長い略矩形状を有し、横幅をカメラ本体64の横幅に相当する幅とすることで、カメラ本体64のレンズ部65側を側方から挟み込んで保持するカメラ先端保持部としても機能する。
【0068】
このような構成の左方カメラ62を左サイドパネル55に取り付ける際には、先ず支持部材87にカメラ本体64を支持させる。支持部材87へのカメラ本体64の取付は、後方カメラ61のときと同様の手順により行う。すなわち、カメラ本体64をカメラ支持部88の一対の支持側板部88a,88b間に配置し、一対のボルト89aおよび一対のボルト89bによりカメラ本体64を挟持させることにより行う。
【0069】
支持部材87は、固定部86を介してインナーパネル91の所定の位置にボルト99を介したネジ締結により固定される。支持部材87をインナーパネル91に固定した状態では、カメラ本体64のレンズ部65側が、左サイドパネル55の取付孔97から外側に突出して配置される(
図10参照)。したがって、保護カバー部94は、この取付孔97を塞ぐように左サイドパネル55に取り付けられる。なお、カメラ本体64の上下方向の向きは、開口部98の縦方向の長さの範囲において変更可能となっている。
【0070】
カメラ本体64のレンズ部65は、
図10に示すように、保護カバー部94において最も外側に位置することになる角部94a(側面視において三角形状の頂点)よりも内側(奥側)に配置されている。すなわち、カメラ本体64は、レンズ部65が角部94aを通る垂直線L3から外側に飛び出さないように開口部98に保持されている。これにより、
図6に示すように扉部21を最大回動位置まで回動させて開放して左サイドパネル55側に固定する際には、角部94aが扉部21の下側の窓部58bに当接する。保護カバー部94をラバー材により形成することで、衝突時の衝撃が保護カバー部94により吸収され、窓部58bのガラスが破損することがない。また、カメラ本体64は角部94aよりも奥側に位置することから、カメラ本体64が直接的に窓部58bのガラスと衝突することも防止される。これにより、左方カメラ62の損傷が抑止される。なお、オペレータが扉部21を開放した状態で掘削作業機1を操作する場合でも、窓部58bはガラス板から成る透過面であることから、左方カメラ62による撮影に影響を及ぼすことはない。
【0071】
掘削作業機1により掘削作業を行うときには、掘削位置で掘削装置3を動作させてバケット34に土砂等を収容し、バケット34を所定の高さ位置に水平保持して上部旋回体20Bを旋回させて、バケット34を排土位置に移動させて排土を行う。上部旋回体20Bを旋回させたときには、上部旋回体20Bの後部端は、
図4に二点鎖線で示すように、平面視において、旋回フレーム7の旋回軸Cを中心とする円Pの軌跡を描く。本実施形態に係る上部旋回体20Bは、後部の大部分の平面視外形が円Pに沿う円弧状となるように構成されている。
【0072】
上部旋回体20Bに設けられた後方カメラ61、左方カメラ62および右方カメラ63は、上部旋回体20Bの後部端が描く旋回軌跡、すなわち円Pの円周に沿って配置されている。後方カメラ61、左方カメラ62および右方カメラ63は、平面視において旋回軸Cを中心とした共通の円Pと重なるように(円Pの線上に位置するように)配置されている。後方カメラ61、左方カメラ62および右方カメラ63においては、それぞれレンズ部65を外側に向けて支持されたカメラ本体64により機体の周囲を撮影可能である。このようなカメラ配置により、キャビン10に搭乗したオペレータの目視が困難な機体の左方から後方および右方、すなわち旋回軸Cよりも後方位置の少なくとも略180度の範囲においては、3つのカメラによる撮影映像により視野範囲が確保され、オペレータに映像情報を提供することが可能となる。これにより、オペレータの安全確認作業を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の掘削作業機1のカメラ配置では、上部旋回体20Bを旋回させていないときには、
図4に示すように、平面視において左方カメラ62が左側の走行部5と重なる位置となり、右方カメラ63が右側の走行部5と重なる位置となる。すなわち、左方カメラ62と右方カメラ63の2つのカメラが、一対の走行部5,5の左右端の幅内に位置することになる。また、上部旋回体20Bを所定の角度(例えば、右90度)旋回させたときには、
図5に示すように、平面視において後方カメラ61が左側の走行部5とカウンタウエイト9を挟んで重なる位置となる。すなわち、上部旋回体20Bの旋回による回動位置に関わらず3つのカメラ61,62,63のうちの少なくとも1つは、平面視において走行部5と重なる位置となる。このように、上部旋回体20Bの非旋回時、旋回時のいずれにおいても、左右一対の走行部5,5の平面視の外形による矩形領域からカメラの一部または全部が外側に出ることがないため、作業中のカメラの破損が抑止される。
【0074】
以上のような構成を備えた本実施形態の掘削作業機1は、次のような構成を備えていると言える。すなわち、掘削作業機1は、左右一対の走行部5,5を備えた下部走行体20Aと、下部走行体20Aの上方に旋回自在に支持された上部旋回体20Bと、上部旋回体20Bに配置された複数のカメラ61,62,63を備えている。そして、掘削作業機1は、上部旋回体20Bが旋回動作しているときしていないときに関わらず、上部旋回体の旋回による全ての回動位置で、複数のカメラ61,62,63のうちの少なくとも1つは、平面視において走行部5と重なる位置にあるものである。
【0075】
本実施形態に係る掘削作業機1によれば、複数のカメラ61,62,63のうちの少なくとも1つは、上部旋回体20Bの旋回時に、一対の走行部5,5の左右端の幅内にある。例えば、
図4に示すように掘削装置3が前方に位置する状態で、左側の走行部5の側端を壁もしくは塀等の障害物に近い位置で機体を前進させたときには、左方カメラ62は、一対の走行部5,5の左右端の幅内にある。このため、左方カメラ62は障害物に衝突することがない。障害物と機体の位置が左右反転した場合の右方カメラ63についても同様である。また、機体左側に壁もしくは塀等の障害物がある状態で、
図5に示すように上部旋回体20Bを右旋回させた場合に、旋回動作によって障害物に近づく後方カメラ61は、一対の走行部5,5の左右端の幅内にあることから、後方カメラ61が障害物に衝突することがない。すなわち、上部旋回体20Bの旋回の範囲内の全ての位置で、複数のカメラ61,62,63のうちの少なくとも1つは、平面視において走行部5,5と重なる位置にある。このようなカメラ配置により、作業中のカメラの破損を防止することができる。したがって、作業中にカメラの破損により映像情報を失うことも防止でき、より安全に作業を行うことが可能となる。
【0076】
また、掘削作業機1においては、複数のカメラ61,62,63が、それぞれ上部旋回体20Bの外装を構成する外装部材(リアカバー13、右カバー14、キャビン10の左サイドパネル55)の外側に向けて設けられている。このような構成によれば、上部旋回体20Bの内部に設けられた作動油タンクやエンジン等の熱源となる構成からカメラを離すことができるので、カメラに対する熱の影響を低減することができ、カメラについて良好な動作性を確保することができる。特にエンジンや作動油タンク等を収容した機関室11の外側の壁部をなすリアカバー13および右カバー14に対して設けられた後方カメラ61および右方カメラ63については、外装部材の外側の壁面に取り付けられることで、作動油タンクやエンジン等から生じる熱の影響を効果的に抑制することができる。また、所定の方向の機体の周囲の映像をカメラにより取得することができる。したがって、作業時の安全性がより向上する。
【0077】
また、複数のカメラ61,62,63は、それぞれ外装部材(リアカバー13、右カバー14、キャビン10の左サイドパネル55)の外側の壁面に外側に向けて装着されている。なお、複数のカメラ61,62,63は、カメラ本体64を外装部材よりも内側に配置した外装部材を支持するインナーフレームもしくは構造補強のためのステーに支持させ、外装部材に設けた窓部からカメラのレンズ部65を覗かせるような配置により、各カメラを外装部材の外側に向けて設けるようにしてもよい。
【0078】
また、外装部材には、上部旋回体20Bの後端部に配置されるカウンタウエイト9を含み、複数のカメラのうちの1つは、カウンタウエイト9の上方となる後部(リアカバー13)に設けられた後方カメラ61(第1カメラ)であり、後方カメラ61は、上部旋回体20Bが所定の角度旋回したときに、上下方向において、カウンタウエイト9を挟んで左右一対の走行部5,5の一方と重なる位置となる(
図5参照)。したがって、左右一対の走行部5,5の一方の側端に近い位置に壁もしくは塀等の障害物がある場合でも、旋回作業時に後方カメラ61が障害物に衝突することがない。
【0079】
また、掘削作業機1は、カウンタウエイト9は、後部外装部材(リアカバー13)より突出して取り付けられ、後方カメラ61は、平面視において、カウンタウエイト9の後端縁と後部外装部材(リアカバー13)の外面部との間に配置される。このため、左右一対の走行部5,5の一方の側端に近い位置に壁もしくは塀等の障害物があり、走行部5よりも上の位置で当該壁もしくは塀が僅かに突出して旋回時の障害となる場合には、旋回時に後方カメラ61よりも高い強度を持つカウンタウエイト9が先に障害物に衝突することになる。このような場合には、オペレータが機体の位置を動かすなどの衝突回避策を講ずることができ、後方カメラ61に直接的に障害物が衝突することが防止される。つまり、後方カメラ61が破損することをより防止することができる。
【0080】
また、掘削作業機1では、運転部を収容するキャビン10には、透過面(窓部58a,58b)を有し、上下方向を回動軸として開閉する扉部21が設けられ、複数のカメラのうちの1つ(左方カメラ62)は、扉部21の後方であって、扉部21が外装部材(左サイドパネル55,リアカバー13)を覆う最大回動位置まで回動したときに、側面視において、透過面(窓部58a,58b)と重なる位置に配置されている。このため、キャビン10の扉部21を開放して扉部21がカメラの設置位置を覆った状態(
図6参照)でオペレータが掘削作業機1を操作して作業を行う場合においても、窓部58bを介して左方カメラ62の視界を確保することができるので、窓部58bを介して左方カメラ62は機体の左側から斜め後方にかけての周囲の映像を取得することができる。したがって、オペレータは安全に作業を行うことができる。
【0081】
また、掘削作業機1では、外装部材がキャビン10の一部を構成する側部外装部材(左サイドパネル55)を含み、左方カメラ62(第2カメラ)を側部外装部材(左サイドパネル55)に設けている。扉部21が開放されて左サイドパネル55を覆う状態となっても、窓部58bにより左方カメラ62の撮像視野が遮られることがない。なお、目標方向の撮影視野を確保できる位置であれば、左サイドパネル55のようなキャビン10を構成する部材以外の部材にカメラを設置してもよい。
【0082】
また、キャビン10の扉部21の後方であって左サイドパネル55の上方にもガラス面で構成される窓部52eが設けられていることから、オペレータは、カメラが取得した映像からだけでなく、窓部52e越しに目視によっても、機体の左方向の周囲の状況を容易に確認することができる。
【0083】
外装部材(右カバー14)には、上部旋回体20Bの内部に設けられた機器を配置する機関室11と外部とを連通する通気部80が設けられ、通気部80の上部に、機関室11の上部開口を開閉自在に覆うカバー部材(右上カバー12)が設けられ、複数のカメラのうちの1つは、通気部80の前方にカバー部材(右上カバー12)に隣接して配置された第3カメラ(右方カメラ63)である。このような右方カメラ63の配置によれば、旋回フレーム7においてオペレータが搭乗するキャビン10の位置から遠く、キャビン10側からは死角となる機体の右方向の周囲の状況を、オペレータが、右方カメラ63が取得した映像により把握することが可能となる。
【0084】
また、掘削作業機1では、複数のカメラに、後方に配置された第1カメラ(後方カメラ61)と、左側方に配置された第2カメラ(左方カメラ62)と、右側方に配置された第3カメラ(右方カメラ63)を含み、第1カメラ(後方カメラ61)、第2カメラ(左方カメラ62)および第3カメラ(右方カメラ63)は、平面視において上部旋回体20Bの後部が描く旋回軌跡に沿って配置されている。言い換えると、旋回フレーム7のカウンタウエイト9の後端が描く旋回軌跡の内側に、旋回軌跡に沿って配置されている。このようなカメラ配置では、複数のカメラが旋回中心から略等距離に配置することになるため、機体の周囲の障害物等の物体との距離を測りやすい映像をオペレータに提供することができる。なお、複数のカメラが取得した映像は、キャビン10内の表示装置に表示されるが、表示態様としては、複数のカメラに対して、複数の表示装置による個別表示、単一の表示装置の画面分割によるそれぞれ対応する映像の表示、あるいは、旋回中心から右斜め前方から後方を含んで左斜め前方までに及ぶ約240度を視野範囲とするパノラマ映像を画像処理装置により合成して表示装置に表示、などの態様を採用することができる。
【0085】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る作業機械は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0086】
なお、本発明は、以下の態様をとることができる。
(1)
左右一対の走行部を備えた下部走行体と、前記下部走行体の上方に旋回自在に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体に配置された複数のカメラを備える作業機械であって、
前記上部旋回体の旋回による全ての回動位置で、前記複数のカメラのうちの少なくとも1つは、平面視において前記走行部と重なる位置にある作業機械。
(2)
前記複数のカメラは、それぞれ前記上部旋回体の外装を構成する外装部材の外側に向けて設けられている、
前記(1)に記載の作業機械。
(3)
前記外装部材には、前記上部旋回体の後端部に配置されるカウンタウエイトを含み、
前記複数のカメラのうちの1つは、前記上部旋回体の後方を撮影する後方カメラであり、
前記後方カメラは、前記カウンタウエイトよりも上方にあり、前記上部旋回体が所定の角度旋回したときに、上下方向において、前記カウンタウエイトを挟んで前記左右一対の走行部の一方と重なる位置となる、
前記(2)に記載の作業機械。
(4)
前記カウンタウエイトは、前記カウンタウエイト上方の後部外装部材より突出して取り付けられ、
前記後方カメラは、平面視において、前記カウンタウエイトの後端縁と前記後部外装部材の外面部との間に配置される、
前記(3)に記載の作業機械。
(5)
運転部を収容するキャビンには、透過面を有し、上下方向を回動軸として開閉する扉部が設けられ、
前記複数のカメラのうちの1つは、前記扉部の後方であって、前記扉部が外装部材を覆う最大回動位置まで回動したときに、側面視において、前記透過面と重なる位置に配置されている、
前記(1)から前記(4)の何れか1つに記載の作業機械。
(6)
前記外装部材には、前記上部旋回体の内部に設けられた機器を配置する機関室と外部とを連通する通気部が設けられ、
前記通気部の上部に、前記機関室の上部開口を開閉自在に覆うカバー部材が設けられ、
前記複数のカメラのうちの1つは、前記通気部の前方の位置に前記カバー部材に隣接して配置されている、
請求項2に記載の作業機械。
前記(2)から(5)の何れか1つに記載の作業機械。
(7)
前記複数のカメラは、後方に配置された第1カメラと、左側方に配置された第2カメラと、右側方に配置された第3カメラを含み、
前記第1カメラ、前記第2カメラおよび前記第3カメラは、平面視において前記上部旋回体の後部が描く旋回軌跡に沿って配置されている、
前記(1)または(2)に記載の作業機械。
【符号の説明】
【0087】
1 掘削作業機(作業機械)
2 走行車体
5 走行部
7 旋回フレーム
10 キャビン
11 機関室
12 右上カバー(カバー部材)
13 リアカバー(後部外装部材)
14 右カバー(外装部材)
15 右下カバー(外装部材)
16 右前カバー(外装部材)
20A 下部走行体
20B 上部旋回体
21 扉部
22 ルーフ
27 スイングブラケット
28 支持ブラケット
32 ブーム
35 ブームシリンダ
47 回転支軸
48 回転支軸
51 フレーム
52 窓部
53 支柱
55 左サイドパネル(側部外装部材)
56 外周フレーム
57 中間フレーム
58 窓部(透過面)
61 後方カメラ(第1カメラ)
62 左方カメラ(第2カメラ)
63 右方カメラ(第3カメラ)
64 カメラ本体
65 レンズ部
66 信号ケーブル
67 支持部材
71 底板
72 ケーシング
80 通気部
94 保護カバー部
P 円(旋回軌跡)