(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171760
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】クロスヘッド、および押出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 48/34 20190101AFI20241205BHJP
B29C 48/154 20190101ALI20241205BHJP
B29C 48/156 20190101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C48/34
B29C48/154
B29C48/156
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088959
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AD15
4F207AH35
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB18
4F207KK12
4F207KL58
4F207KL65
4F207KL83
(57)【要約】
【課題】シースの径が不均一になることを抑制することができる押出成形機用クロスヘッド、および当該クロスヘッドを有する押出成形機を提供すること。
【解決手段】通信ケーブル(1)のシース(3)を成形するための押出成形機用のクロスヘッド(11a)であって、第1導体を被覆する第1シースを成形するための第1押出成形口(31a)と、第2導体を被覆する第2シースを成形するための第2押出成形口(32a)とを含むダイス(20a)と、前記クロスヘッド(11a)内に成形材料(4)を供給するための成形材料供給口(41a)と、を有し、前記ダイス(20a)を正面視したときに、前記第1押出成形口(31a)と前記第2押出成形口(32a)とが並ぶ第1方向と、前記成形材料供給口(41a)から前記クロスヘッド(11a)内への前記成形材料(4)の供給方向である第2方向とは交差することを特徴とする、クロスヘッド(11a)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ケーブルのシースを成形するための押出成形機用のクロスヘッドであって、
第1導体を被覆する第1シースを成形するための第1押出成形口と、第2導体を被覆する第2シースを成形するための第2押出成形口とを含むダイスと、
前記クロスヘッド内に成形材料を供給するための成形材料供給口と、
を有し、
前記ダイスを正面視したときに、前記第1押出成形口と前記第2押出成形口とが並ぶ第1方向と、前記成形材料供給口から前記クロスヘッド内への前記成形材料の供給方向である第2方向とは交差することを特徴とする、クロスヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のクロスヘッドであって、
前記ダイスを正面視したときに、前記第1方向と、前記第2方向とは略垂直に交差することを特徴とする、クロスヘッド。
【請求項3】
請求項1に記載のクロスヘッドであって、
前記第1押出成形口と、前記第2押出成形口とは同一形状であることを特徴とする、クロスヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載のクロスヘッドであって、
前記第1押出成形口と、前記第2押出成形口とは連通していることを特徴とする、クロスヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載のクロスヘッドであって、
前記ダイスに対して配置されたニップルをさらに有することを特徴とする、請求項1に記載のクロスヘッド。
【請求項6】
通信ケーブルのシースを成形するための押出成形機であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載のクロスヘッドを有することを特徴とする、押出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスヘッド、および押出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aは、通信ケーブル1の一例の横断面図を示す。
図1Aに示されるような通信ケーブル1は、被覆対象線2がシース3によって被覆されてなる構造が架橋部3aを介して複数並んでおり、メガネのようにみえるためメガネ型ケーブルとも呼ばれる。たとえば、特許文献1は、このようなメガネ型ケーブルの一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の様な通信ケーブル1は、押出し成形によって製造される。
図1Bは、通信ケーブル1が押出成形機10によって、押出し成形されている態様を示す斜視図である。押出成形機10では、シース3を成形するための成形材料と、被覆対象線2とがダイス20の押出成形口30から押し出される。これにより、被覆対象線2がシース3によって被覆された通信ケーブル1が製造される。
【0005】
図2Aは、押出成形機10の平面図を示し、
図2Bは、正面図を示す。
図2Aおよび
図2Bにおいて、矢印はシース3を成形するための成形材料4の流れの概略を示している。
図2Aに示されるように、成形材料4は、まず、成形材料供給部40から流れて、次に、ダイス20に向かって流れる。
図2Aからわかるように、成形材料4が供給されてくる方向と、成形品(シース3)が押し出される方向とは交差している。そのため、押出成形機10におけるこのような構成をクロスヘッド11という。
図2Bは、このような押出成形機10におけるクロスヘッド11を正面視したときの成形材料4の流れを概略的に示している。
図2Bに示されるように、このようなクロスヘッド11において、成形材料4は、成形材料供給部40から流れてきて、ダイス20(被覆対象線2)に対して上方向と下方向とに分岐して流れ、成形材料供給部40と反対側で合流する。合流した後に、成形材料4は、被覆対象線2を取り囲みつつダイス20に向かって流れる。
【0006】
ここで、成形材料供給部40に近い側の第1押出成形口31の成形材料4の圧力は比較的低くなり、遠い側の第2押出成形口32の成形材料4の圧力は比較的高くなりやすい。また、並んだ2つの押出成形口30を有するダイス20では、成形材料4の流れが複雑になると推測される。そのため、均一な径(外径)のシース3の成形ができないことがある。
【0007】
本発明の目的は、シースの径が不均一になることを抑制することができる押出成形機用クロスヘッド、および当該クロスヘッドを有する押出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
通信ケーブルのシースを成形するための押出成形機用のクロスヘッドであって、
第1導体を被覆する第1シースを成形するための第1押出成形口と、第2導体を被覆する第2シースを成形するための第2押出成形口とを含むダイスと、
前記クロスヘッド内に成形材料を供給するための成形材料供給口と、
を有し、
前記ダイスを正面視したときに、前記第1押出成形口と前記第2押出成形口とが並ぶ第1方向と、前記成形材料供給口から前記クロスヘッド内への前記成形材料の供給方向である第2方向とは交差することを特徴とする、クロスヘッドが提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
通信ケーブルのシースを成形するための押出成形機であって、
上記のクロスヘッドを有することを特徴とする、押出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シースの径が不均一になることを抑制することができる押出成形機用クロスヘッド、および当該クロスヘッドを有する押出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、通信用ケーブルの横断面図であり、
図1Bは、通信用ケーブルが押出し成形されている態様を示す斜視図である。
【
図3】
図3Aは、本発明の実施の形態に係る押出成形機の平面図であり、
図3Bは、正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0013】
[押出成形機]
図3Aは、本発明の実施の形態に係る押出成形機10aの平面図を示し、
図3Bは、正面図を示す。
図3A、Bにおいて、矢印はシース3を成形するための成形材料4の流れの概略を示している。
図3Aに示されるように、成形材料4は、まず、成形材料供給部40aから流れて、次に、ダイス20aに向かって流れる。
図3Aからわかるように、成形材料4が供給されてくる方向と、成形品が押し出される方向とは交差している。すなわち、本発明の実施の形態に係る押出成形機10aは、クロスヘッド11aを有する。
図3Bは、このようなクロスヘッド11aを正面視したときの、クロスヘッド11a内における成形材料4の流れを概略的に示している。
図3Bに示されるように、このようなクロスヘッド11aにおいて、成形材料4は、成形材料供給部40aから流れてきて、ダイス20a(被覆対象線2)に対して上方向と下方向とに分岐して流れ、成形材料供給部40aと反対側で合流する。合流した後に、成形材料4は、被覆対象線2を取り囲みつつダイス20aに向かって流れる。
【0014】
ここで、上記の様に、成形材料供給部40aに近い側の押出成形口30a(第1押出成形口31a)における成形材料4の圧力は比較的低くなり、遠い側の押出成形口30a(第2押出成形口32a)における成形材料4の圧力は比較的高くなりやすい。しかし、本実施の形態においては、2つの押出成形口30a(第1押出成形口31aおよび第2押出成形口32a)の配置は、第1押出成形口31aと第2押出成形口32aとが並ぶ方向を第1方向とし、成形材料4の供給方向を第2方向としたときに、第1方向と第2方向とは交差するように配置されている。そのため、押出成形口30aにおける成形材料4の圧力の差が小さくなる(
図3Bと
図2Bとを比較参照)。また、このように第1押出成形口31aと第2押出成形口32aとを配置すると、ダイス20aでの成形材料4の流れが複雑になることが抑制されると推定される。これらにより、押出成形されるシース3の径が不均一になることが抑制される。なお、このことについては、実験結果を示しつつ後ほど詳述する。
【0015】
本実施の形態に係る押出成形機10aで製造されるケーブルは通信ケーブル1であればよい。
図1Aに示されるように通信ケーブル1では、シース3によって被覆されてなる複数の構造が架橋部3aを介して繋がっている。本実施の形態において、通信ケーブル1は2本のLANケーブルが繋がったものである。LANケーブルにおいて、被覆対象線2は、ツイストペア線であり、ツイストペア線においては、導体2aと導体2aを被覆する絶縁体2bとを有する単線2cがよりあわされている。本実施の形態において、ツイストペア線の数は4本であり、4本のツイストペア線が1つのシース3によって被覆されてなる2つの構造が架橋部3aを介して繋がっている。このように製造された通信ケーブル1では、2本のLANケーブルが架橋部3aを介して繋がっているが、使用時には架橋部3aを割くようにして、2本の別々のLANケーブルとなる。
【0016】
成形材料4は、成形されシース3として導体2aを被覆することができれば特に制限されない。本実施の形態において成形材料4は絶縁性を有する材料である。成形材料4の例には、熱可塑性樹脂などが含まれる。本実施の形態において、成形材料4はポリ塩化ビニルである。
【0017】
[押出成形機の各構成]
図3A、Bに示されるように、押出成形機10aは、クロスヘッド11aと、成形材料供給部40aと、を有する。
図4Aは
図3Bの部分拡大図(ダイス20aの正面図)であり、
図4Bは、
図4AのB-B線の断面図を示す。
以下、これらの各構成について説明する。
【0018】
(クロスヘッド)
クロスヘッド11aは、ダイス20a、成形材料供給口41aと、ハウジング50aとを有する。本実施の形態では、
図4A、Bに示されるように、クロスヘッド11aは、ダイス20aに対向するように配置されたニップル60aをさらに有している。
【0019】
ダイス20aは、第1押出成形口31aおよび第2押出成形口32aを有し、成形材料4は、これらから押し出されることで、導体2aを有する被覆対象線2の周りに成形されたシース3となる。ダイス20aを正面視した場合において、第1押出成形口31aと第2押出成形口32aとが並ぶ方向を第1方向とし、成形材料供給部40aによる成形材料4の供給方向(成形材料供給口41aからクロスヘッド11a内への成形材料の供給方向)を第2方向としたときに、第1方向が第2方向と交差するようにダイス20aは配置される。このように配置されることで、第1押出成形口31aおよび第2押出成形口32aへの成形材料4の流れが不均一になることが抑制される。成形材料4の流れが不均一になることを抑制するという観点からは、第1方向と第2方向との角度は垂直に近いほど好ましい。本実施の形態においては、第1方向と第2方向とは略垂直に交差している。
また、本実施の形態において、第1押出成形口31aおよび第2押出成形口32aは、正面視したときに円形であり、同一形状である。本実施の形態において、第1押出成形口31aと第2押出成形口32aとは、第3押出成形口33aを介して連通している。第3押出成形口33aは上述の架橋部3aを成形するためのものである。本実施の形態において、第3押出成形口33aを正面視したときの形状は矩形である。ダイス20aは、成形材料4を押出し成形することができる程度の強度を有する材料で構成されていることが好ましい。本実施において、ダイス20aは金属製である。
【0020】
成形材料供給口41aは、成形材料供給部40aからの成形材料4の入口である。上述のとおり、クロスヘッド11aにおいて、成形材料供給口41aから成形材料4が供給される方向と、ダイス20aから成形材料4が押し出される方向とは交差している。本実施の形態において、2つの方向は略垂直に交差している。
【0021】
ハウジング50aは、成形材料供給口41aとダイス20aとの間に配置され、成形材料供給口41aからダイス20aへ至る成形材料4の通り道をニップル60aと共に構成する。ハウジング50aとニップル60aとの間には略円筒状の成形材料4の通り道が形成される。成形材料供給口41aはこの筒状の通り道に連通している。この筒状の通り道は徐々に径が小さくなり、最後はダイス20aの押出成形口30aに繋がる。
【0022】
(成形材料供給部)
成形材料供給部40aは、成形材料4を、成形材料供給口41aを介してクロスヘッド11a内に供給することができれば特に制限されない。本実施の形態において、成形材料供給部40aは、加熱されるシリンダと、シリンダ内で回転するスクリューとを有し、スクリューが回転することで成形材料4を溶融させつつ圧力をかけてクロスヘッド11a内に供給することができる。
【0023】
(ニップル)
図4Bに示されるように、ニップル60aは、ダイス20aに対向して配置され、ダイス20aとニップル60aとの間は、成形材料4の通り道となる。ニップル60aは、導体2aを有する複数の被覆対象線2が通る通路となる貫通孔61a、62aを有する。貫通孔61a、62aの出口は、それぞれ、第1押出成形口31a、第2押出成形口32aに対向するように配置される。これにより、2本の貫通孔61a、62aを通ってきた複数の被覆対象線2の周りにシース3が成形されて、通信ケーブル1が製造される。本実施の形態において、ニップル60aは、略三角錐台の形状であり、2本の貫通孔61a、62aが、三角錐の底部から頂部に延在している。
【0024】
[実験]
表1は、
図2に示される比較例の押出成形機10によって成形されたシース3の径と、
図3に示される本発明の実施の形態に係る押出成形機10aによって成形されたシース3の径の結果を示す。
表1において、最小径、および最大径は、第1押出成形口、第2押出成形口のそれぞれで成形されたシース3における最小の径、および最大径である。
単純平均は、最大径と、最小径とを足して2で割って求めた平均であり、単純標準偏差は、この単純平均に基づいて求めた標準偏差である。
全体平均は、第1押出成形口で成形されたシースの最小径と最大径、および第2押出成形口で成形されたシースの最小径と最大径を足して4で割って求めた平均であり、全体標準偏差は、この全体平均に基づいて求めた標準偏差である。
【0025】
【0026】
表1からわかるように、比較例では、第1押出成形口31で成形されたシースの径の単純標準偏差は小さいものの、第2押出成形口32で成形されたシースの径の単純標準偏差は大きく、第2押出成形口32aによるシース3の径が不均一になっていた。
これに対して、実施例では、第1押出成形口31aで成形されたシースの径の単純標準偏差も、第2押出成形口32aで成形されたシースの径の単純標準偏差も小さく、シースの径が不均一になることが抑制されていた。
また、実施例の全体標準偏差は比較例の全体標準偏差より小さく、シース3の径が不均一になることが抑制されていた。
これは、実施例では、第1押出成形口31aと第2押出成形口32aとが並ぶ第1方向と、供給材料が供給される第2方向とが交差するように配置されているため、第1押出成形口31aおよび第2押出成形口32aへの成形材料4の流れがより均一になるためと推測される。
【0027】
(効果)
本実施の形態に係る押出成形機10aは、ダイス20aを正面視したときに、第1押出成形口31aと第2押出成形口32aとが並ぶ第1方向と、成形材料4の供給方向である第2方向とは交差する。これにより、シース3の径が不均一になることが抑制される。また、本実施の形態においては、シース3の径が不均一になることが抑制されるだけではなく、成形されるシース3の厚さが第1押出成形口31aと第2押出成形口32aとで不均一になることも抑制されるという効果もみられた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の実施の形態に係る押出成形機10aは、導体2aを含む被覆対象線2がシース3に被覆されてなる構造を複数有する通信ケーブル1の製造に有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 通信ケーブル
2 被覆対象線
2a 導体
2b 絶縁体
2c 単線
3 シース
3a 架橋部
4 成形材料
10、10a 押出成形機
11、11a クロスヘッド
20、20a ダイス
30、30a 押出成形口
31、31a 第1押出成形口
32、32a 第2押出成形口
33a 第3押出成形口
40、40a 成形材料供給部
41a 成形材料供給口
50a ハウジング
60a ニップル
61a、62a 貫通孔