(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171761
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法
(51)【国際特許分類】
F26B 17/32 20060101AFI20241205BHJP
F26B 3/24 20060101ALI20241205BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F26B17/32 E
F26B3/24
F26B25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088960
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳身
(72)【発明者】
【氏名】八木 翼
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 拓音
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA06
3L113AB05
3L113AC05
3L113AC16
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC58
3L113AC68
3L113AC73
3L113AC76
3L113AC80
3L113BA01
3L113BA02
3L113BA36
3L113BA37
3L113CA02
3L113CA03
3L113CB40
3L113DA01
(57)【要約】
【課題】 被処理物の見かけ密度が変動したときであっても、安定した効率の良い運転を実現することのできる、新規な横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法の開発を技術課題とした。
【解決手段】本体シェル10内に伝熱部材が具えられ、この伝熱部材を、その内部に加熱用媒体を流すとともに回転させ、前記本体シェル10内に被処理物Mを投入し、この被処理物Mを本体シェル10内に滞留させつつ前記伝熱部材に接触させて被処理物Mの乾燥品Dを得る装置において、前記本体シェル10内に位置する被処理物Mの滞留品全重量W
ITR を測定し、この滞留品全重量W
ITR を用いて、本体シェル10からの乾燥品排出速度F3または本体シェル10への被処理物投入速度F1の何れか一方または双方を最適化することを特徴として成る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体シェル内に伝熱部材が具えられ、この伝熱部材を、その内部に加熱用媒体を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る装置において、
前記本体シェル内に位置する被処理物の滞留品全重量WITR を測定し、
この滞留品全重量WITR を用いて、
本体シェルからの乾燥品排出速度F3または本体シェルへの被処理物投入速度F1の何れか一方または双方を最適化することを特徴とする横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項2】
前記本体シェルから排出された乾燥品の乾燥品見かけ密度ρ 3、
前記本体シェル内に位置する被処理物の滞留品全重量WITR 、
本体シェル容積V
から成る下式〔数1〕により本体シェル内に滞留している被処理物の滞留率Hを算出し、
この滞留率Hと、滞留率目標値Hs、滞留下限Hlまたは滞留上限Hhとの偏差に応じて
本体シェルからの乾燥品排出速度F3を調節することを特徴とする請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
〔数1〕
H=WITR /(ρ 3×V)×100
【請求項3】
前記本体シェル内への被処理物投入速度F1は、
本体シェルへ投入される前の被処理物水分w1、
本体シェルから排出された乾燥品水分w3、
本体シェル内における被処理物の滞留時間設定値T0、
前記滞留品全重量WITR
から成る下式〔数2〕により算出されたものであることを特徴とする請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
〔数2〕
F1 =(WITR /T0)×(100-w3) / (100 -w1)
【請求項4】
前記本体シェル内における前記伝熱部材を回転させる駆動装置に流れる電流測定値Iと電流設定値I0との偏差、
及び、
前記乾燥品水分w3と乾燥品水分設定値w30との偏差に基づき、
滞留率目標値Hsを変更することを特徴とする請求項3記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の連転方法。
【請求項5】
前記滞留率H、被処理物投入速度F1、乾燥品排出速度F3は
運転前に定めておいた基準乾燥排気ガス温度t0、
運転時における乾燥排気ガス温度t、
および係数a、b、cからなる変数
に基づいて変更することができることを特徴とする請求項4記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の連転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は泥状・ケーク状・粉粒状等の材料の乾燥に好適な横型連続伝導伝熱式乾燥機に関するものであって、特に下水等の脱水汚泥のように性状変動が激しい被処理物を良好に乾燥処理することのできる横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、環境保全の取り組みが盛んになってきており、企業等にあっては、生ごみ、食品加工残渣等の一般廃棄物や、下水汚泥等を乾燥・濃縮して、減量・腐敗防止を図ったうえで再資源化や処分を行っている。
【0003】
このような汚泥等の乾燥に供される装置の一つとして、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′がある。この装置は例えば
図9に示すように、本体シェル10′内に多管式加熱管11′が具えられ、この多管式加熱管11′を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、このものに被処理物Mを接触させて水分を蒸発させる装置である(例えば特許文献1参照)。
そして投入口101′から本体シェル10′内に供給された被処理物Mは、リフタ117′によって掻き上げられ、乾燥が進行しながら溢出口102′側に移動するものであり、乾燥品Dとなった状態で溢出口102′からシュート12′を経由して外部に排出されることとなる。
【0004】
このような横型連続伝導伝熱式乾燥機1′の運転に際しては、本体シェル10′の容積の50%程度の被処理物M(乾燥の進んだ)を種材として本体シェル10′内に滞留させ、新たに投入された被処理物Mの含水率を低下させることにより、効率的な乾燥処理が行われることとなる。
【0005】
このため本体シェル10′内における被処理物Mの滞留率を把握するとともに調節することが求められるが、ダストの付着等の問題によりレベル計を設置することによる直接的な計測は困難であったため、例えば以下のような間接的な手法が採られていた。
すなわち横型連続伝導伝熱式乾燥機1′においては、多管式加熱管11′の負荷に応じて、その駆動源であるモータの電流値が変動するため、この電流値を測定することにより、予め作成された検量線(滞留率-電流値曲線)に基づいて本体シェル10′内の被処理物Mの滞留率が求められるものである。
そしてエアシリンダ109′による堰板108′の開閉時間を変化させることにより乾燥品Dの排出量をコントロールし、本体シェル10′内の滞留率を調整することが行われている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら前記検量線(滞留率-電流値曲線)は、被処理物Mの性状に応じて異なる特性を示すものであるため、運転中に投入口101′に投入される被処理物Mの性状が変化したときには、電流値から求められる滞留率が正確なものではなくなってしまう。このためオペレータが被処理物Mの性状変化に気が付かなかったときには、滞留率を見誤ってしまうこととなる。
以上のような従来手法によると、食品工場等で発生する廃棄物等のように、性状変化が微小である被処理物Mを扱う場合には問題はなかったが、下水等の脱水汚泥のように性状(特に乾燥品の見かけ密度)の変動が激しい被処理物Mを扱う場合には、制御がいわば的外れなものとなり、本体シェル10′内の被処理物Mの滞留率が過剰となって胴詰まり状態を生じさせたり、乾燥不足や過乾燥等の乾燥不良等を引き起こしてしまうことがあった。また著しい場合には、自動運転を続行するのが困難になってしまっていた。
因みに前記下水の脱水汚泥は、採取個所によって性状が大きく異なるものであり、更に同じ採取個所のものであっても採取時期(例えば昼と夜、夏と冬)によっては性状が大きく異なってくるものであるため、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′内での乾燥状況を把握しにくいものの一つである。
【0007】
このような問題を解決すべく、本出願人は横型連続伝導伝熱式乾燥機1′から排出された乾燥品Dの見かけ密度を測定し、この測定値を判断ファクターとして、シェル本体10′内において処理途中の被処理物Mの量を、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′が効率的に稼働される量にすることにより、性状変動が激しい被処理物Mであっても、その乾燥処理を好適に行うことのできる、新規な横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法を案出し、既に特許権を得ている(特許文献2参照)。
【0008】
この発明によれば、本体シェル10′から排出された乾燥品Dの見かけ密度に応じて本体シェル10′内の滞留率を調節するため、被処理物Mの物性の変化により乾燥品Dの見かけ密度が変化しても、本体シェル10′内での被処理物Mによる胴詰りや、乾燥品Dの乾燥不足、あるいは過乾燥を引き起こすことなく安定した運転が行えるものである。
また多管式加熱管11′を回転させるモータに流れる電流値と、乾燥品Dの見かけ密度に対応した加熱管駆動電流設定値とを比較して、堰板108′の開閉時間を変更するため、本体シェル10′内での被処理物Mの滞留率を一定に保つ運転を行うことができ、特に被処理物Mと多管式加熱管11′との間での伝熱効率の良い滞留率を維持することにより、水分変動の少ない乾燥品Dを得るとともに、効率的な運転を行うことができるものである。
【0009】
しかしながら上記発明は、投入される被処理物Mの滞留品見かけ密度、すなわち本体シェル10′内の滞留品見かけ密度が一定であるとの仮定の下、多管式加熱管を駆動するモータの電流値で、滞留品増減を判断するものであり、滞留品見かけ密度が変動すると、滞留品重量の変動は電流値で検知できても、滞留品の体積変動は検知することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-331210
【特許文献2】特許第5330920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような背景からなされたものであって、被処理物の見かけ密度が変動したときであっても、安定した効率の良い運転を実現することのできる、新規な横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、本体シェル内に伝熱部材が具えられ、この伝熱部材を、その内部に加熱用媒体を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記伝熱部材に接触させて被処理物の乾燥品を得る装置において、前記本体シェル内に位置する被処理物の滞留品全重量WITR を測定し、この滞留品全重量WITR を用いて、本体シェルからの乾燥品排出速度F3または本体シェルへの被処理物投入速度F1の何れか一方または双方を最適化することを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項2記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記要件に加え、前記本体シェルから排出された乾燥品の乾燥品見かけ密度ρ 3、前記本体シェル内に位置する被処理物の滞留品全重量WITR 、本体シェル容積Vから成る下式〔数1〕により本体シェル内に滞留している被処理物の滞留率Hを算出し、この滞留率Hと、滞留率目標値Hs、滞留下限Hlまたは滞留上限Hhとの偏差に応じて本体シェルからの乾燥品排出速度F3を調節することを特徴として成るものである。
【0014】
〔数1〕
H=WITR /(ρ 3×V)×100
【0015】
ここでいう偏差とは、滞留率Hに対する、滞留率目標値Hs、滞留率下限Hlまたは滞留率上限Hhとの大小関係を指す。
【0016】
また請求項3記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項2記載の要件に加え、前記本体シェル内への被処理物投入速度F1は、本体シェルへ投入される前の被処理物水分w1、本体シェルから排出された乾燥品水分w3、本体シェル内における被処理物の滞留時間設定値T0、前記滞留品全重量WITR から成る下式〔数2〕により算出されたものであることを特徴として成るものである。
【0017】
〔数2〕
F1=(WITR /T0)×(100-w3) / (100 -w1)
【0018】
また請求項4記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3記載の要件に加え、前記本体シェル内における前記伝熱部材を回転させる駆動装置に流れる電流測定値Iと電流設定値I0との偏差、
及び、
前記乾燥品水分w3と乾燥品水分設定値w30との偏差に基づき、滞留率目標値Hsを変更することを特徴として成るものである。
ここでいう偏差とは、電流値Iと電流設定値I0との大小関係及び乾燥品水分w3と乾燥品水分設定値w30との大小関係を指す。
【0019】
また請求項5記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項3または4いずれか記載の要件に加え、前記滞留率H、被処理物投入速度F1、乾燥品排出速度F3は、運転前に定めておいた基準乾燥排気ガス温度t0、運転時における乾燥排気ガス温度t、係数a、b、cからなる変数に基づいて変更することができることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0020】
まず請求項1記載の発明によれば、滞留品全重量WITR を用いて、本体シェルからの乾燥品排出速度F3または本体シェルへの被処理物投入速度F1の何れか一方または双方を最適化することにより、横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転効率を向上することができる。
【0021】
また請求項2記載の発明によれば、本体シェル内に位置する滞留品見かけ密度に代えて、容易に測定することのできる本体シェルから排出された乾燥品の乾燥品見かけ密度ρ 3を用いて滞留率Hを算出するとともに、乾燥品排出速度F3を適切なものとすることができる。
【0022】
また請求項3記載の発明によれば、本体シェル内への被処理物投入速度F1を、本体シェル内に位置する被処理物の滞留品全重量WITR と、被処理物水分w1および乾燥品水分w3とに応じた適切なものとすることができる。
【0023】
また請求項4記載の発明によれば、滞留率目標値Hsを、滞留品量と、乾燥状況とに応じた適切なものとすることができる。
【0024】
また請求項5記載の発明によれば、滞留率H、被処理物投入速度F1、乾燥品排出速度F3を求める式を、排気温度tを含めた式とすることにより、より一層、適切な値を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法を実施するための制御系を示す骨格図である。
【
図2】横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す正面図である。
【
図3】横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部透視して示す左側面図(a)及び一部破断して示す右側面図(b)である。
【
図4】本体シェルからの被処理物の排出の様子および見かけ密度の測定の様子を示す骨格図である。
【
図5】本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法を示すフローチャートである。
【
図6】滞留率目標値Hsの値を変更するステップS5の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】見かけ密度測定装置の設置形態を異ならせた実施例を示すブロック図である。
【
図8】本体シェル内に位置する滞留品および本体シェルから排出された乾燥品の見かけ密度(|ρ2-ρ3|/ρ3)―運転時間特性を示すグラフである。
【
図9】既存の横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法の最良の形態は以下の実施例に示すとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0027】
以下、本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法について、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の構成を説明した後、その作動態様とともに詳しく説明する。
まず前記横型連続伝導伝熱式乾燥機1は、泥状・ケーク状・粉粒状等の被処理物Mの乾燥に好適な装置であって、被処理物Mに含まれる水分等の揮発分を蒸発させながら滞留させることにより乾燥品Dを得るための装置である。このものは
図1~3に示すように、機枠100上に具えられた本体シェル10内に多管式加熱管11が具えられ、この多管式加熱管11を、その内部に加熱媒体たる蒸気を流すとともに回転させ、被処理物Mを本体シェル10内に滞留させつつ多管式加熱管11に接触させて乾燥を行う乾燥機である。
【0028】
前記本体シェル10は
図3に示すように、一例として長楕円状の横断面を有する中空部材であり、投入口101、溢出口102、キャリヤガス口103、排気口104が形成される。
ここで前記投入口101は、本体シェル10上部の複数個所に形成されるものであり、まず
図2中、左側上部に形成される排気口104付近に第一の投入口101aが形成される。また前記排気口104よりも中央寄りの部分に第二の投入口101bが形成され、更にこの第二の投入口101bと、
図2中、右側上部に形成されるキャリヤガス口103との間に第三の投入口101cが形成される。なおこの実施例では投入口101を三カ所に形成するようにしたが、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の仕様に応じて一カ所、二カ所または四カ所以上に投入口101を形成するようにしてもよい。また、投入口101の形成位置も特に限定されるものではなく、本体シェル10内に被処理物Mを投入可能な位置であれば、どこから投入するようにしてもよい。
そして例えば汚泥ポンプが具えられた被処理物投入装置6により被処理物Mが圧送され、各投入口101に振り分けられる。被処理物投入装置6はモータ61により駆動され、モータ61に接続されたインバータの周波数の設定値を変更することにより圧送する被処理物Mの量(汚泥量、詳しくは後述する被処理物投入速度)を変更可能である。
【0029】
また前記本体シェル10及び多管式加熱管11は、水平な状態で機枠100に設置されるか、または排気口104側が、キャリヤガス口103側よりもいくぶんか高くなるように傾斜して機枠100に設置される。
更にまた前記本体シェル10は二重ジャケット構造とされ、投入口101a付近に形成される蒸気供給口105から、溢出口102の下方に形成されるドレン口106に至る蒸気の通過経路が形成されるものであり、本体シェル10内を昇温することができるような構成が採られている。なお、このような二重ジャケット構造に替えてトレース配管等を設置することもできる。
【0030】
また前記溢出口102は、前記本体シェル10の高所側面に形成されるものであり、この溢出口102の一部を被覆するための固定堰板107及び堰板108が具えられる。前記固定堰板107は、溢出口102の上端と下端との間にそれぞれ隙間ができるように、図示しないボルト等により適宜固定されている。一方、前記堰板108は、固定堰板107の背面側に具えられるものであり、エアシリンダ109を駆動源として、図示していない適宜のリンク機構を介して上下に摺動される。この実施例では、堰板108が上方に摺動されると、
図4(b)に示すように固定堰板107の下側部分が開放され、この開放部分から乾燥品Dが溢出し、本体シェル10から排出されることになる。また堰板108が、エアシリンダ109により下げられると、前記開放部分は塞がれて、
図4(a)に示すように乾燥品Dの本体シェル10からの排出が止まるようになっている。
なお前記エアシリンダ109は
図1に示すように、電磁弁109aの開閉動作によりコンプレッサエアが供給、あるいは遮断されることで駆動される。
また前記電磁弁109aの開閉動作は、後述する堰板108の開閉時間の設定値に従い、乾燥運転中に繰返し連続的に行われる。
更に前記溢出口102、固定堰板107及び堰板108の外側には、これらを覆うようにシュート12が具えられ、このシュート12に形成される乾燥品排出口121にロータリーバルブ122が具えられる。
【0031】
また前記多管式加熱管11は、複数のチューブを円筒状に配して成るチューブ束116の両側部に鏡板112を具えるとともに、この鏡板112の中心に軸体113を具えて成り、前記機枠100に具えた軸受ブロック114によって軸体113を回転可能に支持して成るものである。なお多管式加熱管11を回転させるための駆動装置として機枠100上にモータ14が具えられる。
そして前記軸体113の両端にはロータリージョイント115(115a、115b)が取り付けられ、チューブ束116と接続される。また軸体113と本体シェル10との間には、外気との遮断のためのシール機構13が設けられている。
なおチューブ束116の側周部には、複数のリフタ117及び適宜の角度を持たせた送り羽根118が取り付けられたアングル111が多数(この実施例では12本)具えられるものであり、これらによって被処理物Mは掻き上げられて前記チューブ束116の各チューブに接触するとともに投入口101側から溢出口102側に進むこととなる。
【0032】
そして本体シェル10の下部にはロードセル15が具えられており、これにより本体シェル10の重量を測定し、その中に位置する被処理物Mの全重量(以下、滞留品全重量WITR 〔kg〕と呼ぶ。)を測定することが可能とされている。
なおロードセル15は、本体シェル10内の滞留品全重量WITR が測定できれば良いので、その設置位置は本体シェル10の下部に限定されるものではない。
更にこの滞留品全重量WITR を用いて、滞留率H〔%〕が求められる。この滞留率Hは、本体シェル容積V〔m3 〕に対して、どの程度の量の被処理物Mが収容されているのかを表わす値であって、下式(1)によって算出される。
なお、ここでいう本体シェル容積Vは、本体シェル10の内容積から多管式加熱管11等の内部部品の体積と、キャリヤガスや被処理物Mから蒸発する水蒸気等のガス成分が通過するための通気空間を差し引いた、被処理物Mを充填可能な容積(固定値)を指すが、本発明において重要なのは、滞留率H(変動値)の変化率であるから、本体シェル容積Vの詳細な定義については、上述したものに限定されない。
H=WITR /(ρ2×V)×100 ・・・ 式(1)
ρ2〔kg/m3 〕:本体シェル10内に位置する被処理物Mの見かけ密度(滞留品見かけ密度)
V〔m3 〕:本体シェル容積
【0033】
また図示は省略するが、横型連続伝導伝熱式乾燥機1には蒸気発生装置が併設されるものであり、U字形、直管形、ヘリカルコイル形等適宜の装置が適用される。そしてこの蒸気発生装置から前記横型連続伝導伝熱式乾燥機1におけるロータリージョイント115a及び蒸気供給口105に管路が接続される。
また、キャリヤガスがキャリヤガス口103より本体シェル10内に供給される。そして多管式加熱管11の加熱により被処理物Mから揮発する揮発成分は、前記キャリヤガスにより排気口104を経て本体シェル10外に運び去られる。キャリヤガスには、前記揮発成分の他に、被処理物Mから発生する微粉も含まれるため、排気口104以降のキャリヤガスの流れる経路上に図示していない除塵装置を具えるようにしてもよい。更にこの排気口104以降のキャリヤガスの流れる経路上には、温度センサ16が具えられる。
【0034】
そして一例として前記シュート12における乾燥品排出口121の下方には、見かけ密度測定装置2が設けられる。このものは
図1、2、4に示すように、サンプリング容器21に取り込まれた乾燥品Dの重量と、サンプリング容器21の容積とから、乾燥品Dの見かけ密度を算出するものであり、サンプリング容器21と、このサンプリング容器21の重量を測定するためのロードセル22とを具えて構成される。
また前記サンプリング容器21内に所定量の乾燥品Dが投入されたことを検知するためのレベル計23が具えられる。
前記サンプリング容器21への乾燥品Dの供給及び供給停止は、バルブ24を開閉することにより行われ、サンプリング容器21からの乾燥品Dの排出及び排出停止は、バルブ25を開閉することにより行われる。
【0035】
なお、前記バルブ24の下方にはフレキシブルシュート26aが具えられる。このフレキシブルシュート26aは、一例として薄いシリコンゴム製の筒状シュートであり、乾燥品Dをサンプリング容器21に導く。
また、サンプリング容器21の下方のバルブ25は、ボルト等でサンプリング容器21に締結されている。そして、バルブ25の下方にはフレキシブルシュート26bが具えられる。このフレキシブルシュート26bは、一例として薄いシリコンゴム製の筒状シュートである。これらフレキシブルシュート26a、26bは、乾燥品Dを周囲に飛散させないために具えられるものであり、且つ、ロードセル22による重量の測定に大きな誤差を与えないよう具えられる。
【0036】
なお
図1、2、4に示した構成は、見かけ密度測定装置2を横型連続伝導伝熱式乾燥機1に対して一体的に具え、本体シェル10から排出された全ての乾燥品Dが、見かけ密度測定装置2を通過するようにしたものであるが、これとは異なる設置形態を採ることもできる。
具体的には、乾燥品排出口121の次段に具えられるコンベヤ装置に対して見かけ密度測定装置2が具えられるような形態を採るようにしてもよく、
図7(a)に示す形態は、乾燥品排出口121の次段に排出コンベヤ4を配し、この排出コンベヤ4の次段に乾燥汚泥ホッパ5を配すると共に、これら排出コンベヤ4と乾燥汚泥ホッパ5との間に見かけ密度測定装置2が具えられるようにしたものである。
また
図7(b)に示す形態は、乾燥品排出口121の次段に二基の排出コンベヤ41、42を配し、この排出コンベヤ42の次段に乾燥汚泥ホッパ5を配すると共に、排出コンベヤ41と排出コンベヤ42との間に見かけ密度測定装置2が具えられるようにしたものである。なお前記排出コンベヤ41には二カ所に排出口412、416が形成されており、一方、前記排出コンベヤ42には二カ所に投入口422、426が形成されるとともに、排出口412と投入口422、排出口416と投入口426がそれぞれ対向した状態とされる。そして排出口416と投入口426との間に見かけ密度測定装置2を配することにより、本体シェル10から排出された乾燥品Dの一部を抽出して測定することができるようなにしたものである。
【0037】
ここで前記見かけ密度測定装置2による見かけ密度の測定について説明する。
まず、レベル計23のセンシング位置に達した時の乾燥品Dの体積を運転前に測っておき、この体積がサンプリング容器21の「容積値」として制御盤3の図示していないプログラマブルロジックコントローラ(以下はPLCと呼ぶ)に乾燥運転前に入力され、記憶される。
また、サンプリング容器21に乾燥品Dが入っていない状態での重量がロードセル22により測定され、前記PLCに入力され、記憶される。
そして乾燥運転時には、サンプリング容器21に所定量の乾燥品Dが入った状態での重量がロードセル22により測定され、前記PLCに入力される。これにより、前記容積値と、乾燥品Dが入っていない状態での重量と、所定量の乾燥品Dが入った状態での重量とにより、乾燥品Dの見かけ密度ρ3が前記PLCにより算出される。
【0038】
本発明を実施するための横型連続伝導伝熱式乾燥機1及び周辺機器は、一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様と併せて本発明の「横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法」について、
図5に示すフローチャートにしたがって説明する。
なお本発明の「横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法」の特徴は、本体シェル10内に位置する被処理物Mの重量(滞留品全重量W
ITR )を測定し、この滞留品全重量W
ITR を用いて、本体シェル10からの乾燥品排出速度F3または本体シェル10への被処理物投入速度F1の何れか一方または双方を最適化するものである。
【0039】
(1)乾燥機の準備
まず被処理物Mの投入に先立って、横型連続伝導伝熱式乾燥機1における多管式加熱管11及び本体シェル10を昇温しておくものであり、モータ14を起動して多管式加熱管11を回転させた状態で、ロータリージョイント115a及び蒸気供給口105に加熱用蒸気(一例として0.5MPa(約160℃))を供給する。そしてロータリージョイント115aに供給された加熱用蒸気はチューブ束116を通過しながら多管式加熱管11を昇温し、やがてドレンとなって他端側のロータリージョイント115bから外部に排出される。また蒸気供給口105に供給された加熱用蒸気は本体シェル10を昇温し、やがてドレンとなってドレン口106から外部に排出される。
なお、ロータリージョイント115b側の鏡板112内には図示していないサイホン管が具えられ、ロータリージョイント115bから排出されるドレンの流れる経路には図示していないスチームトラップが具えられる。また、ドレン口106から排出されるドレンの流れる経路にも図示していないスチームトラップが具えられる。
【0040】
(2)被処理物の乾燥
次いで投入口101に被処理物Mを投入するものであり、このものは送り羽根118の作用によって投入口101側から溢出口102側に移動し、更にリフタ117によって掻き上げられてチューブ束116等と接触し、この際、熱を受けて乾燥が進行するものである。このとき投入口101は多管式加熱管11の長手方向に沿って複数個所に形成されているため、多管式加熱管11の熱伝導面を有効に使用することができ、乾燥効率が高められる。
そして
図4(b)に示すように、堰板108が上げられて固定堰板107の下方部分が解放されると、乾燥品Dは溢出口102から流出し、シュート12を経由して見かけ密度測定装置2側に送られることとなる。
なお乾燥品Dの排出速度の調節は、堰板108の上げ下げによる溢出口102の開閉時間を異ならせて行われるものであり、一例として2秒開放、28秒閉鎖を繰り返すパターンや、2秒開放、18秒閉鎖を繰り返すパターン等が挙げられる。
溢出口102の閉鎖時間が短ければ、詳しくは後述する乾燥品排出速度F3が高くなり(排出量が増え)、一方、閉鎖時間が長ければ、乾燥品排出速度F3が低くなる(排出量が減る)。
【0041】
そして上述のように、横型連続伝導伝熱式乾燥機1への被処理物Mの投入、並びに横型連続伝導伝熱式乾燥機1からの乾燥品Dの排出といった一連の動作が確立された時点で本発明の「横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法」が実施される(
図5参照)。
まずステップS0においてタイマーをスタートするとともに、制御盤3のPLCには、滞留時間設定値T0、乾燥品水分設定値w30、電流設定値I0が事前に設定されているものであり、更に被処理物投入速度F1、乾燥品排出速度F3について、仮の設定値が事前に設定されており、スタートから所定時間(すなわち初回のステップS12までの時間)は、これらの設定値により運転が行われ、この間には以下で述べる測定、二回目以降のループの制御数値に利用される。
なおこの実施例では一例として、滞留時間設定値T0の値を10〔h〕、乾燥品水分設定値w30の値を15〔W.B.%〕、電流設定値I0の値を15〔A〕とした。
更にステップS11においては、乾燥品見かけ密度ρ3が見かけ密度測定装置2により、被処理物水分w1が水分センサ17により、乾燥品水分w3が水分センサ18により、モータ電流値Iが図示しない電流計により、それぞれ測定されるとともに、これらの値は制御盤3のPLCに入力される。
【0042】
なお乾燥品見かけ密度ρ3については、一例として6時間毎に測定されるものとしたが、サンプリング容器21に所定量の乾燥品Dが入る毎に測定するようにしてもよい。
また被処理物水分w1については投入経路に設けられた水分センサ17によって、一例として1時間毎に測定され、また乾燥品水分w3については排出経路に設けられた水分センサ18によって、一例として30分毎に測定されるようにした。
なおこれらの測定頻度は任意に設定することができるものであり、ステップS11の測定開始からステップS12までに得られたデータの平均値がS13で確定され、次のループにおいては、これらの平均値(ρ3、w1、w3、I)が利用される。
【0043】
次いでステップS2において、滞留品全重量WITR がロードセル15によって測定されるとともに、この値は制御盤3のPLCに入力される。
【0044】
そして二回目以降のループでは、ステップS3において、下式(1′)によって滞留率Hの算出が行われるものであり、この値は制御盤3のPLCに入力される。
H=WITR /(ρ 3×V)×100 ( 式1′)
なお式(1′)において、本来であれば本体シェル10内の滞留品見かけ密度ρ2の値を用いるべきであるが、本体シェル10内の滞留品は、特に分級等の物理的選別が行われる訳ではなく、常に所定の溢出口102から定期的に乾燥品として取り出されるものであるから、滞留品見かけ密度ρ2と乾燥品見かけ密度ρ3の関係は、ρ2≒ρ3(ρ2=ρ3+α)と見做すことができる上、本制御での目的は滞留率Hの経時変化を把握することにあるため、乾燥品見かけ密度ρ3の値を用いて構わない。
【0045】
(3)乾燥品排出速度の最適化
次いで乾燥品排出速度F3の最適化が行われるものであり、本体シェル10内における伝熱部材たる多管式加熱管11を回転させる駆動装置たるモータ14に流れる電流測定値Iと、電流設定値I0との偏差、及び、乾燥品水分測定値w3と乾燥品水分設定値w0との偏差に基づいて最適化が行われる。
具体的には、先ずステップS4において、滞留率Hが適正値か否かの判断が為される。ここで前記適正値とは一例として、滞留率Hの値が滞留率下限Hl以上、滞留率上限Hh以下の範囲に収まっていることとする(滞留率下限Hl≦滞留率H≦滞留率上限Hh)。 なおこの実施例では、滞留率下限Hl=35〔%〕、滞留率上限Hh=65〔%〕とした。
【0046】
そしてステップS4の判断がYESであればステップS5に進み、一方、NOであればステップS8に進む。
まずステップS5においては、滞留率目標値Hsの値が決定される(
図6参照)。
はじめにステップS51において、乾燥品水分測定w3が乾燥品水分設定値w30よりも高いか否かの判断が為される。
そしてステップS51の判断がYESであればステップS52に進み、一方、NOであればステップS53に進む。
これらステップS52、S53においては、電流測定値Iが電流設定値I0よりも高いが否かの判断が為される
そしてステップS54において、ステップS52の判断がYESであれば滞留率目標値Hsの値が60〔%〕に変更される。一方、NOであれば滞留率目標値Hsの値が55〔%〕に変更される。
またステップS53の判断がYESであれば滞留率目標値Hsの値が45〔%〕に変更される。一方、NOであれば滞留率目標値Hsの値が40〔%〕に変更される。
このようにステップS54を具体的な数値で例示したが、滞留率目標値Hsに対する偏差をそれぞれに設定し、変更することでも構わない。
【0047】
次いでステップS6において、滞留率Hが滞留率目標値Hs以上か否かの判断が為される
そしてステップS7において、ステップS6の判断がYESであれば乾燥品排出速度F3が次式(2)で求められる値に変更される。一方、NOであれば乾燥品排出速度F3が次式(3)で求められる値に変更される。
F3=(WITR /T0)×1.5 式(2)
F3=(WITR /T0)×0.75 式(3)
【0048】
一方、ステップS4の判断がNOでありステップS8に進んだ場合は、滞留率Hが滞留率上限Hhよりも大きいか否かの判断が為される
そしてステップS9において、ステップS8の判断がYESであれば乾燥品排出速度F3が次式(4)で求められる値に変更される。一方、NOであれば(Hl>Hであれば)乾燥品排出速度F3が次式(5)で求められる値に変更される。
F3=(WITR /T0)×2.0 式(4)
F3=(WITR /T0)×0.5 式(5)
なお式(2)~(5)中の数値(0.5、0.75、1.5、2.0)は、事前に種々の条件の下で実施された試験運転により得られた値である。これらはF0 に対する係数であり、現場の状況に応じて適宜変更して構わない。
【0049】
(4)被処理物投入速度の最適化
また本発明の「横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法」では、被処理物投入速度F1の最適化も行われるものであり、前記ステップS2に次いで、ステップS10において次式(6)で求められる値に変更される。
F1=(WITR /T0)×((100-w3)/(100-w1)) 式(6)
=F0×(100-w3) / (100 -w1)
F0=(WITR /T0)
【0050】
そしてステップS12において、所定時間の経過が確認されたら、ステップS13において乾燥品見かけ密度ρ3、被処理物水分w1、乾燥品水分w3、電流測定値Iの平均値が確定されるとともに、ステップS2及びステップS11に戻り、上述した操作が繰り返されることとなる。
ここで前記所定時間とは、事前に種々の条件の下で実施された試験運転により得られた値であって、この実施例では一例として6時間とした。
【0051】
以上述べたように本発明によれば、横型連続伝導伝熱式乾燥機1を運転するにあたって、本体シェル10内に位置する被処理物Mの滞留品全重量WITR を測定し、この滞留品全重量WITR から、本体シェル10からの乾燥品排出速度F3または本体シェル10への被処理物投入速度F1の何れか一方または双方を最適化することにより、被処理物Mの見かけ密度が変動して滞留品の体積も変動したときであっても、安定した効率の良い運転を実現することが可能となるものである。
特には、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の機内における被処理物Mの滞留率Hが、滞留率下限値Hl、滞留率上限値Hhを越えているかにより乾燥品排出速度F3を調節して適正範囲に戻す制御であるのみならず、滞留率下限値Hlと滞留率上限値Hhの適正範囲においては、乾燥品水分w3と電流測定値Iをそれぞれの設定と比較することにより、滞留率目標値Hsを運転中に調整するものである。これは、機内における滞留品見かけ密度ρ2と乾燥品見かけ密度ρ3の差が10%以内の小さな密度を維持するように横型連続伝導伝熱式乾燥機1の運転を行うシステムにおいては特に有効な手段となる。
なおここで云う差とは、次式(7)で求められるものである。
(|ρ2-ρ3|/ρ3)×100 (式7)
【0052】
ここでステップS3において滞留率Hを算出するにあたり、本体シェル10内の滞留品見かけ密度ρ2の値に代えて乾燥品見かけ密度ρ3の値を用いた根拠を示す。
図8に示すグラフは、検証用の被処理物Mを用いて計測した滞留品見かけ密度ρ2および乾燥品見かけ密度ρ3の実測値―時間特性を示すものである。
測定結果から、ρ3-ρ2の平均値は約13kg/m
3 であって、この値は概ね時間軸全域に亘ってグラフから読み取ることができる。
ρ2=ρ3-13〔kg/m
3 〕
この結果を踏まえて、一例としてρ2=325とし、ρ3=325+13=338として、それぞれ滞留率H2、H3を求め、更に両者の差異を求めるとともに、この値がH2に対してどの程度の値であるかを算出してみると、
H2=W
ITR ÷(ρ2×V)×100
H3=W
ITR ÷(ρ3×V)×100
であるから、
|H3ーH2|/H2= |ρ2-ρ3|/ρ3×100=3.8
であって、両者の差異はH2の3.8%程度と極僅かなものとなる。
よってρ2に代えてρ3を用いて求めたHの値は、ρ2を用いて求めた値と見做して差し支えないといえる。
【0053】
次に温度条件を考慮した実施形態について説明する。前記滞留率H、被処理物投入速度F1、乾燥品排出速度F3については、温度センサ16によって検出される乾燥排気ガス温度tを考慮した式から求めるようにしてもよい。
すなわち乾燥排気ガス温度tの値が上昇したということは、チューブ束116の伝熱面の露出面積が増加したということであり、これは滞留品見かけ密度ρ2が増加したということであり、更にこれは滞留率Hが低下したということであって、被処理物投入速度F1を増加させる操作または乾燥品排出速度F3を減少させる操作が必要であることを意味するものである。
一方、乾燥排気ガス温度tの値が下降したということは、チューブ束116の伝熱面の露出面積が減少したということであり、これは滞留品見かけ密度ρ2が減少したということであり、更にこれは滞留率Hが増加したということであって、被処理物投入速度F1を減少させる操作または乾燥品排出速度F3を増加させる操作が必要であることを意味するものである。
【0054】
そしてこのような温度条件を考慮すると、滞留率H、被処理物投入速度F1、乾燥品排出速度F3を求める式は以下に示すようなものとなる。
H=(WITR /(ρ3×V))×(t+a×t0)/t×100・・・ 式(1′′)
F1=((WITR /T0)×(100-w3)/(100-w1))×(t+b×t0)/t・・・式(2′)
F3=(WITR /T0)×(t+c×t0)/t・・・式(8)
t0:基準乾燥排気ガス温度
t:乾燥排気ガス温度
a:定数
b:定数
c:定数
なお上記定数a、b、cについては、滞留品見かけ密度ρ3の急変にいち早く対応するため、ρ3の変化率に応じて一例として下表1に示すような異なった数値が採られるものである。
【0055】
【0056】
このように滞留率H、被処理物投入速度F1、乾燥品排出速度F3を求める式を、排気温度tを含めた式とすることにより、よりいっそう適切な値を求めることができるものである。