(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171763
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/14 20060101AFI20241205BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241205BHJP
G03G 5/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G03G5/14 101E
G03G21/00 314
G03G5/14 101D
G03G5/06 372
G03G5/06 319
G03G5/06 314A
G03G5/06 316A
G03G5/06 315Z
G03G5/06 312
G03G5/06 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088962
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕子
(72)【発明者】
【氏名】大石 康宏
【テーマコード(参考)】
2H068
2H134
【Fターム(参考)】
2H068AA19
2H068AA20
2H068AA43
2H068AA44
2H068BA12
2H068BA13
2H068BA14
2H068BA16
2H068BA39
2H068BA58
2H068BA60
2H068BA63
2H068BA64
2H068CA06
2H068CA29
2H068CA33
2H068FA12
2H068FC15
2H134GA01
2H134GB02
2H134HA13
2H134HA16
2H134HB16
2H134HB18
2H134KB03
2H134KG03
(57)【要約】
【課題】画像形成装置は、静電気力で電子写真感光体をクリーニングするクリーニング部材を備え、電子写真感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。
【解決手段】画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を正極性に帯電する帯電装置と、帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写装置と、前記像担持体の前記表面と当接して、前記像担持体の前記表面に付着しているトナーを回収するクリーニング部材と、前記クリーニング部材に印加する電圧を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、印刷モードにおいて負極性の第1電圧を前記クリーニング部材に印加させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面を正極性に帯電する帯電装置と、
帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写装置と、
前記像担持体の前記表面と当接して、前記像担持体の前記表面に付着しているトナーを回収するクリーニング部材と、
前記クリーニング部材に印加する電圧を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、印刷モードにおいて負極性の第1電圧を前記クリーニング部材に印加させ、
前記像担持体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる感光層とを有する電子写真感光体であって、
前記中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有し、
前記特定無機粒子は、金属酸化物粒子を有し、
前記特定ポリアミド樹脂は、脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、ジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有し、
前記特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、前記第1繰り返し単位及び前記第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上である、画像形成装置。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ジアミン化合物は、シクロアルカン構造を有する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、8以上20以下である、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記特定無機粒子は、前記金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層を更に有する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記表面処理層は、有機シロキサン化合物に由来する成分、酸化アルミニウム、シリカ、ジルコニア及びステアリン酸のうち少なくとも1つを含有する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御装置は、クリーニングモードにおいて正極性の第2電圧を前記クリーニング部材に印加させる、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体の前記表面を除電する除電装置を更に備える、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記感光層は、電荷発生剤、電子輸送剤、バインダー樹脂及び正孔輸送剤を含有する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記電荷発生剤は、チタニルフタロシアニンのY型結晶を含む、請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記電子輸送剤は、下記化学式(ETM-1)~(ETM-8)で表される化合物のうち少なくとも1つを含む、請求項9に記載の画像形成装置。
【化1】
【請求項12】
前記正孔輸送剤は、下記化学式(HTM-1)~(HTM-12)で表される化合物のうち少なくとも1つを含む、請求項9に記載の画像形成装置。
【化2】
【化3】
【請求項13】
前記中間層において、前記特定ポリアミド樹脂100質量部に対する前記特定無機粒子の含有量は、50質量部以上1000質量部以下である、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記特定無機粒子の個数平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下である、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、像担持体として用いる電子写真感光体が環境に依存せず一定の感度を維持できることや、高温高湿環境下においてもかぶりの少ない画像を形成できることが要求される。
【0003】
また、画像形成装置においては、静電気力で電子写真感光体をクリーニングするクリーニング部材を備える場合がある。クリーニングブレードを用いて電子写真感光体を物理的にクリーニングする一般的な画像形成装置と比較して、上述のクリーニング部材を備える画像形成装置は、電子写真感光体の長寿命化を実現できるなどのメリットがある。一方、電子写真感光体は、静電気力でクリーニングされた場合、帯電装置による帯電(例えば、正極性の帯電)と、クリーニング部材による帯電(例えば、負極性の帯電)とが繰り返されるため、帯電装置による帯電が不十分となり易い(帯電電位が低下し易い)。
【0004】
これらへの対応として、例えば、金属酸化物粒子を含有し、所定の物性を有する中間層を備える電子写真感光体が提案されている(特許文献1)。中間層は、導電性基体及び感光層の密着性向上や、導電性基体側から感光層側への電荷注入を抑制する役割を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、静電気力で電子写真感光体をクリーニングするクリーニング部材を備える画像形成装置においては、特許文献1に記載の電子写真感光体を用いても、電子写真感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を十分に抑制しつつ、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制することは困難である。これは、特許文献1に記載の電子写真感光体の中間層が吸湿性を有していることが要因の一つであると本発明者らの検討により判明した。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電気力で電子写真感光体をクリーニングするクリーニング部材を備え、電子写真感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を正極性に帯電する帯電装置と、帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写装置と、前記像担持体の前記表面と当接して、前記像担持体の前記表面に付着しているトナーを回収するクリーニング部材と、前記クリーニング部材に印加する電圧を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、印刷モードにおいて負極性の第1電圧を前記クリーニング部材に印加させる。前記像担持体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる感光層とを有する電子写真感光体である。前記中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有する。前記特定無機粒子は、金属酸化物粒子を有する。前記特定ポリアミド樹脂は、脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、ジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有する。前記特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、前記第1繰り返し単位及び前記第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置は、静電気力で電子写真感光体をクリーニングするクリーニング部材を備え、電子写真感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電子写真感光体の一例を示す部分断面図である。
【
図3】
図2に示す像担持体及びクリーニング部材と、制御装置とを示す図である。
【
図4】印刷モード及びクリーニングモードにおけるクリーニング部材の制御を示すタイムチャート図である。
【
図5】
図2に示す画像形成装置の制御を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。
【0012】
アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「一般式」及び「化学式」を包括的に、「式」と記載する。式の説明における「各々独立に」は、同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよいことを意味する。本明細書に記載の各成分は、特記なき限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、及び「A、B、及びCの少なくとも1つ」は、「A、B、及びCからなる群から選択される少なくとも1つ」と同義である。
【0013】
[画像形成装置]
本発明の実施形態は、画像形成装置に関する。本実施形態の画像形成装置は、像担持体と、像担持体の表面を正極性に帯電する帯電装置と、帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成する露光装置と、静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、トナー像を像担持体から被転写体へ転写する転写装置と、像担持体の表面と当接して、像担持体の表面に付着しているトナーを回収するクリーニング部材と、クリーニング部材に印加する電圧を制御する制御装置とを備える。制御装置は、印刷モードにおいて負極性の第1電圧をクリーニング部材に印加させる。像担持体は、導電性基体と、導電性基体上に設けられる中間層と、中間層上に設けられる感光層とを有する電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)である。中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有する。特定無機粒子は、金属酸化物粒子を有する。特定ポリアミド樹脂は、脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、ジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有する。特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上である。
【0014】
本実施形態の画像形成装置は、上述の通り、静電気力で電子写真感光体をクリーニングするクリーニング部材を備える。本実施形態の画像形成装置は、上記構成を備えることで、静電気力で電子写真感光体をクリーニングするクリーニング部材を備えるにも関わらず、感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。その理由は、以下のように推察される。本実施形態の画像形成装置が備える感光体は、中間層を有する。中間層は、リーク電流が発生しない程度の耐圧性を発揮しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを妨げない機能を発揮する。これにより、中間層は、感光体の感度(特に、低温低湿環境下における感度)を安定化し、感光体の感度が環境に依存して増減する現象を抑制できる。また、感光体が有する中間層は、感光層に電荷が蓄積することを抑制できる。これにより、本実施形態の画像形成装置は、帯電装置による正極性の帯電と、クリーニング部材による負極性の帯電とを感光体に対して繰り返し付与した場合においても、感光体の帯電電位の低下を抑制できる。即ち、本実施形態の画像形成装置は、中間層の存在により、静電気力で感光体をクリーニングすることによるメリット(感光体の長寿命化等)を発揮しつつ、デメリット(感光体の帯電電位の低下)を抑制できる。更に、公知の感光体が備える中間層は、高温高湿環境下において、吸湿により抵抗が低下し、リーク電流が発生し易い。これにより、公知の感光体は、高温高湿環境下において、中間層の機能が十分に発揮されない場合がある。これに対して、本実施形態の画像形成装置における中間層は、特定ポリアミド樹脂及び特定無機粒子を含有する。特定ポリアミド樹脂及び特定無機粒子は、高温高湿環境における中間層の吸湿を抑制し、中間層が上述の機能を発揮し易くする。また、ポリアミド樹脂の一般的な特性として、ジアミン及びジカルボン酸のみから製造できるため、安定した品質を実現できる。これらにより、本実施形態の画像形成装置は、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。以下、本実施形態の画像形成装置について、まず感光体の詳細について説明した後に、感光体以外の構成の詳細を説明する。
【0015】
[感光体]
感光体は、例えば、単層型電子写真感光体(以下、単層型感光体と記載することがある)である。以下、
図1を参照して、本実施形態の画像形成装置が備える感光体の一例である感光体1の構造について説明する。
図1は、感光体1の部分断面図を示す。
図1に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、導電性基体2上に設けられる中間層3と、中間層3上に設けられる感光層4とを備える。感光層4は、単層の感光層(以下、単層型感光層と記載することがある)である。
【0016】
中間層3の厚みとしては、1μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましい。
【0017】
感光層4の厚みとしては、特に限定されないが、5μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。以上、
図1を参照して、感光体の一例である感光体1の構造について説明した。
【0018】
但し、感光体の構造は、
図1と異なっていてもよい。例えば、感光体は、導電性基体、中間層及び感光層に加え、他の層(例えば、感光層上に設けられる保護層)を更に備えてもよい。また、感光体は、多層の感光層(以下、積層型感光層と記載することがある)を備えていてもよい。
【0019】
[中間層]
中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。中間層は、特定ポリアミド樹脂及び特定無機粒子のみを含有することが好ましい。具体的には、中間層において、特定ポリアミド樹脂及び特定無機粒子の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0020】
(特定ポリアミド樹脂)
特定ポリアミド樹脂は、脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、ジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有する。特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上であり、95モル%以上が好ましく、100モル%が更に好ましい。
【0021】
特定ポリアミド樹脂が有する第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の種類は、それぞれ、1種でもよく、2種以上でもよい。特定ポリアミド樹脂は、1種の第1繰り返し単位と、1種の第2繰り返し単位とを有することが好ましい。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸は、例えば、一般式「COOH-(CH2)n-COOH」で表される。nが表す整数としては、8以上20以下が好ましく、8以上12以下がより好ましい。つまり、脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数としては、8以上20以下が好ましく、8以上12以下がより好ましい。炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、及びエイコサン二酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、オクタン二酸、デカン二酸又はドデカン二酸が好ましい。
【0023】
ジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン化合物(例えば、炭素元素数4以上14以下の脂肪族ジアミン化合物)及びシクロアルカン構造を有するジアミン化合物が挙げられる。ジアミン化合物としては、シクロアルカン構造を有するジアミン化合物が好ましい。
【0024】
シクロアルカン構造を有するジアミン化合物において、シクロアルカン構造としては、例えば、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、ビシクロペンタン構造、及びデカリン構造が挙げられる。シクロアルカン構造を有するジアミン化合物としては、例えば、1,2-シクロペンタンジアミン、1,3-シクロペンタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4-メチレンビス-2-メチルシクロヘキシルアミン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、及び2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンが挙げられる。シクロアルカン構造を有するジアミン化合物としては、イソホロンジアミン、又は4,4-メチレンビス-2-メチルシクロヘキシルアミンが好ましく、イソホロンジアミンがより好ましい。
【0025】
特定ポリアミド樹脂は、少量であれば、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位に加え、他の繰り返し単位(例えば、ラクタム化合物に由来する繰り返し単位)を有してもよい。但し、特定ポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を有しないことが好ましい。具体的には、特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の含有割合としては、5モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましく、0モル%が更に好ましい。
【0026】
特定ポリアミド樹脂としては、以下のモノマー混合物(a1)~(a4)の重合体が好ましい。以下、モノマー混合物(a1)~(a4)の重合体をそれぞれポリアミド樹脂(a1)~(a4)と記載することがある。
a1:ドデカン二酸及びイソホロンジアミンの混合物
a2:デカン二酸及びイソホロンジアミンの混合物
a3:オクタン二酸及びイソホロンジアミンの混合物
a4:ドデカン二酸及び4,4-メチレンビス-2-メチルシクロヘキシルアミンの混合物
【0027】
中間層において、特定ポリアミド樹脂の含有割合としては、8質量%以上70質量%以下が好ましく、12質量%以上65質量%以下がより好ましい。特定ポリアミド樹脂の含有割合を8質量%以上70質量%以下とすることで、特定ポリアミド樹脂が中間層のバインダー樹脂としての機能を発揮し易くなる。
【0028】
(特定無機粒子)
特定無機粒子は、金属酸化物粒子を有する。特定無機粒子は、金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層を更に有することが好ましい。特定無機粒子が表面処理層を更に有することで、中間層において特定無機粒子を高度に分散させ易くなる。特定無機粒子の個数平均一次粒子径としては、5nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下が好ましく、5nm以上20nm以下がより好ましい。
【0029】
中間層において、特定ポリアミド樹脂100質量部に対する特定無機粒子の含有量としては、50質量部以上1000質量部以下が好ましく、100質量部以上600質量部以下がより好ましく、150質量部以上500質量部以下が更に好ましい。特定無機粒子の含有量を50質量部以上1000質量部以下とすることで、中間層は、導電性基体及び感光層の密着性向上や、導電性基体側から感光層側への電荷注入を抑制する役割を更に効果的に発揮できる。
【0030】
(金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子としては、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、及び導電性を有する金属酸化物(例えば、リンドープ酸化錫、及びアンチモンドープ酸化錫)の粒子が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子が好ましく、酸化チタン粒子がより好ましい。
【0031】
なお、特定無機粒子において、表面処理層の厚みはごく僅かである。そのため、金属酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、特定無機粒子の個数平均一次粒子径とほぼ同様である。
【0032】
特定無機粒子において、金属酸化物粒子の含有割合としては、80質量%以上99質量%以下が好ましく、85質量%以上93質量%以下がより好ましい。
【0033】
(表面処理層)
上述の通り、特定無機粒子は、金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層を更に有することが好ましい。この場合、表面処理層は、有機シロキサン化合物に由来する成分、酸化アルミニウム、シリカ、ジルコニア及びステアリン酸のうち少なくとも1つを含有することが好ましい。なお、表面処理層において、酸化アルミニウム、シリカ及びジルコニアは、例えば、微細な粒子を形成しているか、又は均質な膜を形成している。有機シロキサン化合物に由来する成分とは、有機シロキサン化合物そのものでもよく、有機シロキサン化合物が金属酸化物粒子又は酸素等と化学反応して生じる化合物でもよい。表面処理層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
【0034】
有機シロキサン化合物とは、有機基(例えば、置換基で置換されていてもよい炭素原子数1以上5以下のアルキル基、置換基で置換されていてもよい炭素原子数4以上8以下のシクロアルキル基、及び置換基で置換されていてもよい炭素原子数6以上10以下のアリール基)と、シロキサン結合(Si-O-Si結合)とを有する化合物である。有機基としては、メチル基、エチル基又はフェニル基が好ましい。なお、有機シロキサン化合物は、「シリコーンオイル」との名称で市販されている場合もある。
【0035】
有機シロキサン化合物としては、例えば、有機基で置換されたポリシロキサン化合物が挙げられる。有機基で置換されたポリシロキサン化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びメチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。有機シロキサン化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0036】
表面処理層において、有機シロキサン化合物に由来する成分、酸化アルミニウム、シリカ、ジルコニア及びステアリン酸の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上が好ましく、100質量%が更に好ましい。表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのみを含有するか、酸化アルミニウムのみを含有するか、酸化アルミニウム及びジルコニアのみを含有するか、シリコーンオイルのみを含有するか、酸化アルミニウム、シリカ及びメチルポリシロキサンのみを含有するか、又は酸化アルミニウム及びステアリン酸のみを含有することが好ましい。
【0037】
表面処理層は、例えば、金属酸化物粒子が表面処理剤によって表面処理されることで形成される層である。表面処理剤としては、例えば、有機シロキサン化合物、酸化アルミニウム、シリカ、ジルコニア及びステアリン酸が挙げられる。表面処理剤としては、焼成等の処理によって酸化アルミニウム、シリカ又はジルコニアを生成する化合物(例えば、水酸化アルミニウム、含水シリカ水酸化及び水酸化ジルコニウム)とを含有してもよい。表面処理方法としては、例えば、表面処理剤を金属酸化物粒子に塗布した後に焼成する方法が挙げられる。
【0038】
金属酸化物粒子100質量部に対する表面処理層の含有量としては、1質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上20質量部以下がより好ましい。表面処理層の含有量を1質量部以上とすることで、中間層における特定無機粒子の分散性を更に最適化できる。表面処理層の含有量を30質量部以下とすることで、特定無機粒子の抵抗を最適化できる。
【0039】
特定無機粒子としては、表1に示す構成を満たす特定無機粒子(t1)~(t7)が好ましい。なお、表1において、表面処理層の欄は、表面処理層が含有する成分を示す。例えば、特定無機粒子(t1)の表面処理層の欄における「シリカ+アルミナ」は、表面処理層がシリカ及びアルミナを含有することを示す。「MHPS」は、メチルハイドロジェンポリシロキサンを示す。個数平均一次粒子径の欄は、好ましい個数平均一次粒子径の数値範囲を示す。例えば、特定無機粒子(t1)の個数平均一次粒子径の欄の「7-15」は、個数平均一次粒子径が7nm以上15nm以下であることを示す。
【0040】
【0041】
[感光層]
感光層は、電荷発生剤、電子輸送剤、バインダー樹脂及び正孔輸送剤を含有することが好ましい。感光層は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0042】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。
【0043】
フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン構造を有する。フタロシアニン系顔料としては、例えば、金属フタロシアニン、及び無金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、チタニルフタロシアニンが好ましい。チタニルフタロシアニンは、式(CG-1)で表される。無金属フタロシアニンは、式(CG-2)で表される。
【0044】
【0045】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0046】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、チタニルフタロシアニン又は無金属フタロシアニンがより好ましく、Y型チタニルフタロシアニン又はX型無金属フタロシアニンが特に好ましい。
【0047】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2°にピークを有していない。
【0048】
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0049】
感光層における電荷発生剤の含有量としては、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以上4.5質量部以下がより好ましい。
【0050】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
【0051】
正孔輸送剤としては、式(10)、(20)、(21)、(23)、(24)及び(25)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送剤(10)、(20)、(21)、(23)、(24)及び(25)と記載することがある)が挙げられる。
【0052】
【0053】
式(10)中、R1~R6は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。d1、d2、d4、及びd5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。d3及びd6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。R1~R6は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。d1、d2、d4、及びd5は、各々独立に、0、1又は2を表すことが好ましい。d3及びd6は、各々独立に、0を表すことが好ましい。
【0054】
式(10)中、d1~d6が2以上の整数を表すとき、複数のR1~複数のR6は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0055】
式(20)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。R52、R53、R54、R55、R56、R57、及びR58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。f1及びf2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表す。f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0056】
式(20)中、f3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR50は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR51は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0057】
式(20)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R52及びR53は、各々、水素原子又はメチル基で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。R54~R58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。f1及びf2は、何れも0を表すか、又は何れも1を表すことが好ましい。f3及びf4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0058】
【0059】
式(21)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。b1、b2、及びb3は、各々独立に、0又は1を表す。
【0060】
式(21)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。R21、R22、及びR23は、エテニル基又はブタジエニル基に対して、フェニル基のメタ位に結合することが好ましい。R24、R25、及びR26は、各々、水素原子を表すことが好ましい。b1、b2、及びb3は、何れも0を表すか、何れも1を表すことが好ましい。
【0061】
【0062】
式(23)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。R47及びR48は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。e1、e2、e3、及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。e5及びe6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。e7及びe8は、各々独立に、0又は1を表す。
【0063】
式(23)中、e1~e6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR41~複数のR46は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0064】
式(23)中、R41~R46は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R47及びR48は、水素原子を表すことが好ましい。e1、e2、e5、及びe6は、0を表すことが好ましい。e3及びe4は、2を表すことが好ましい。e7及びe8は、何れも0を表すか、又は何れも1を表すことが好ましい。
【0065】
式(24)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。a1、a2、a3、及びa4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0066】
式(24)中、a1~a4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR11~複数のR14は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0067】
式(24)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。a1、a2、a3、及びa4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0068】
【0069】
式(25)中、R60は、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。R61、R62、及びR63は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。g1、g2、及びg3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。g4は、0又は1を表す。R60は、フェニル基を表すことが好ましい。R61、R62、及びR63は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。g1及びg2は、1を表すことが好ましい。g3は、0を表すことが好ましい。
【0070】
式(25)中、g1~g3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR61~複数のR63は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0071】
正孔輸送剤としては、化学式(HTM-1)~(HTM-12)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送(HTM-1)~(HTM-12)と記載することがある)が好ましい。
【0072】
【0073】
【0074】
正孔輸送剤の全量に対する正孔輸送剤(10)、(20)、(21)、(23)、(24)及び(25)の合計含有割合としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0075】
感光層において、バインダー樹脂100質量部に対する正孔輸送剤の含有量としては、10質量部以上200質量部以下が好ましく、50質量部以上100質量部以下がより好ましい。正孔輸送剤の含有量を10質量部以上200質量部以下とすることで、感光体は、感度の環境依存を更に効果的に抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を更に効果的に抑制できる。
【0076】
(電子輸送剤)
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0077】
電子輸送剤は、式(11)~(17)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。以下、式(11)~(17)で表される化合物を、各々、電子輸送剤(11)~(17)と記載することがある。
【0078】
【0079】
式(11)中のQ1及びQ2、式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24、式(13)中のQ31及びQ32、式(14)中のQ41、Q42、及びQ43、式(15)中のQ71、Q72、Q73、Q74、Q75、及びQ76、並びに式(16)中のQ61及びQ62は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は少なくとも1つの特定置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。上述の特定置換基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つの置換基である。
【0080】
式(11)中のQ1及びQ2は、各々独立に、炭素原子数4以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(13)中のQ31及びQ32は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。式(14)中のQ41及びQ42は、各々独立に、炭素原子数3以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(14)中のQ43は、ハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。式(15)中のQ71及びQ73は、各々独立に、炭素原子数3以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(15)中のQ72及びQ74は、水素原子を表すことが好ましい。式(15)中のQ75は、フェニル基又は炭素原子数2以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(15)中のQ76は、ハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基、又は炭素原子数3以上5以下のアルキル基が好ましい。式(16)中のQ61及びQ62は、各々独立に、炭素原子数3以上5以下のアルキル基が好ましい。
【0081】
式(17)中のQ81は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。Q82は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、又は炭素原子数7以上20以下のアラルキルオキシ基を表す。Q83は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。vは、0以上4以下の整数を表す。Q81は、フェニル基を表すことが好ましい。Q82は、炭素原子数7以上8以下のアラルキルオキシ基を表すことが好ましい。Q83は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。vは、0を表すことが好ましい。
【0082】
電子輸送剤としては、化学式(ETM-1)~(ETM-8)で表される化合物(以下、それぞれを、電子輸送剤(ETM-1)~(ETM-8)と記載することがある)が好ましい。
【0083】
【0084】
電子輸送剤の全量に対する電子輸送剤(11)~(17)の合計含有割合としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0085】
感光層における電子輸送剤の含有量としては、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下が好ましく、30質量部以上60質量部以下がより好ましい。電子輸送剤の含有量を5質量部以上150質量部以下とすることで、感光体は、感度の環境依存を更に効果的に抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を更に効果的に抑制できる。
【0086】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
【0087】
これらの樹脂の中では、加工性、機械的強度、光学的特性、及び耐摩耗性のバランスに優れた単層型感光層及び電荷輸送層が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールB型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。バインダー樹脂としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂が好ましいが特に限定されるものではない。ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂は、式(BisZ)で表される繰り返し単位を有する樹脂である。
【0088】
【0089】
感光層におけるバインダー樹脂の含有割合としては、20質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0090】
(添加剤)
感光層が含有する添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、電子アクセプター化合物、及びレベリング剤が挙げられる。レベリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられ、より具体的にはジメチルシリコーンオイルが挙げられる。
【0091】
感光層は、シリコーンオイルを含有することが好ましい。この場合、感光層におけるシリコーンオイルの含有量としては、バインダー樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.5質量部以下が好ましい。
【0092】
[導電性基体]
導電性基体は、特に限定されず、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、及びインジウムが挙げられる。導電性を有する材料を2種以上組み合わせて、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は真鍮等)として用いてもよい。感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、導電性を有する材料としては、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚みは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0093】
[感光体の製造方法]
次に、感光体の製造方法の一例について説明する。感光体の製造方法は、例えば、中間層形成工程と、感光層形成工程とを含む。
【0094】
(中間層形成工程)
中間層形成工程では、中間層を形成するための塗布液(以下、中間層用塗布液と記載することがある)を調製する。中間層用塗布液は、特定無機粒子、特定ポリアミド樹脂及び溶媒を含有する。次いで、中間層用塗布液を、導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した中間層に含有される溶媒の少なくとも一部を除去して、中間層を形成する。
【0095】
(感光層形成工程)
感光層形成工程では、感光層を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、正孔輸送剤、及び溶媒と、任意成分(例えば、添加剤)とを含有する。感光層用塗布液は、上述の成分を混合することにより調製される。次いで、感光層用塗布液を、中間層上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含有される溶媒の少なくとも一部を除去して、感光層を形成する。
【0096】
上記中間層用塗布液及び感光層用塗布液(以下、これらを包括的に塗布液と記載することがある)に含有される溶媒は、塗布液に含有される各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶媒としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、2-ブタノン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0097】
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶媒に溶解又は分散させることにより調製される。混合には、例えば、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0098】
塗布液を塗布する方法は、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、及びローラー塗布法が挙げられる。
【0099】
上記中間層用塗布液、及び感光層用塗布液に含有される溶媒の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上150分以下である。
【0100】
[感光体の好ましい構成]
感光体は、表2に示す構成(1)~(28)の何れかを備えることが好ましい。なお、表2における用語は、以下の通りである。
CGM:電荷発生剤
CGM-1:Y型チタニルフタロシアニン
HTM:正孔輸送剤
ETM:電子輸送剤
BisZ:ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂
【0101】
表2において、例えば、構成(1)は、中間層が特定無機粒子(t1)及びポリアミド樹脂(a1)を含有し、感光層がY型チタニルフタロシアニン、正孔輸送(HTM-1)、電子輸送剤(ETM-1)及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を含有する感光体であることを示す。
【0102】
【0103】
[画像形成装置の詳細]
次に、本実施形態の画像形成装置について、感光体以外の構成の詳細について説明する。
図2は、本実施形態の画像形成装置の一例である画像形成装置110の断面図である。
【0104】
図2に示す画像形成装置110は、制御装置10(
図3参照)と、給送部20と、搬送部30と、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kと、転写部60と、ベルトクリーニング部70と、定着部80と、排紙部90とを備える。なお、ベルトクリーニング部70については、下記<印刷モード及びクリーニングモード>の説明において詳述する。
【0105】
制御装置10は、画像形成装置110の各部(より具体的には、給送部20、搬送部30、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40K、転写部60、ベルトクリーニング部70、定着部80、及び排紙部90)の動作を制御する。制御装置10は、本体筐体内の適宜な位置に配置されている。制御装置10は、例えば、図示しないCentral Processing Unit(CPU)、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、及び入出力インターフェイスを備える。制御装置10は、各種センサーの検出結果、及び予め設定されたプログラムに基づいて各演算処理を行うことで制御を実行する。
【0106】
給送部20は、カセット22を備える。カセット22は、複数枚の記録媒体Pを収容する。給送部20は、カセット22から搬送部30へ、記録媒体Pを給送する。記録媒体Pは、例えば、紙、布、又は合成樹脂製のシートである。
【0107】
搬送部30は、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kに記録媒体Pを搬送する。
【0108】
画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kは、各々、対応する像担持体100Y、100M、100C、及び100Kと、帯電装置42Y、42M、42C、及び42Kと、露光装置44Y、44M、44C、及び44Kと、現像装置46Y、46M、46C、及び46Kと、クリーニング装置48Y、48M、48C、及び48Kと、除電装置50Y、50M、50C、及び50Kとを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成装置110の各部材に付された「Y」、「M」、「C」、及び「K」の添え字を省略して説明する。例えば、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
【0109】
転写部60は、4つの転写装置62Y、62M、62C、及び62Kと、駆動ローラー64と、無端状の転写ベルト66と、従動ローラー67と、テンションローラー68とを備える。転写装置62Y、62M、62C、及び62Kは、各々、転写ベルト66の内周側に配置され、転写ベルト66を介して像担持体100Y、100M、100C、及び100Kに対向する。転写ベルト66は、駆動ローラー64と、従動ローラー67と、テンションローラー68とに掛け渡される。転写ベルト66は、駆動ローラー64が回転することにより、矢付方向(
図2における時計回り方向)に回転する。
【0110】
画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体100が設けられる。像担持体100は、矢符方向(
図2における反時計回り方向)に回転可能に設けられる。像担持体100の周囲には、像担持体100の回転方向の上流側から記載された順に、帯電装置42と、露光装置44と、現像装置46と、転写装置62と、クリーニング装置48と、除電装置50とが設けられる。
【0111】
像担持体100は、上述の感光体(例えば、
図1の感光体1)である。
【0112】
帯電装置42は、像担持体100の表面(例えば、周面)を、正極性に帯電させる。帯電装置42は、例えば、スコロトロン帯電器である。
【0113】
露光装置44は、帯電された像担持体100の表面を露光する。これにより、像担持体100の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置110に入力された画像データに基づいて形成される。
【0114】
現像装置46は、像担持体100の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。トナーは、正帯電性トナーである。現像装置46は、像担持体100の表面と接触している。即ち、画像形成装置110は、接触現像方式を採用している。現像装置46は、例えば、現像ローラーである。
【0115】
現像剤が一成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体100に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。現像剤が二成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体100に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含有されるトナーとキャリアとのうち、トナーを供給する。供給されたトナーにより形成されたトナー像を、像担持体100が担持する。
【0116】
転写ベルト66は、像担持体100と転写装置62との間に記録媒体Pを搬送する。転写装置62は、現像装置46によって現像されたトナー像を、像担持体100の表面から、被転写体である記録媒体Pへ転写する。転写される際に、像担持体100の表面と記録媒体Pとは接触している。即ち、画像形成装置110は、直接転写方式を採用している。転写装置62は、例えば、転写ローラーである。
【0117】
画像形成ユニット40Y及び転写装置62Y、画像形成ユニット40M及び転写装置62M、画像形成ユニット40C及び転写装置62C、並びに画像形成ユニット40K及び転写装置62Kの各々によって、転写ベルト66上の記録媒体Pに、複数色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4色)のトナー像が順に重ねられ、未定着トナー像が形成される。
【0118】
クリーニング装置48Y、48M、48C、及び48Kは、各々、対応するハウジング481Y、481M、481C、及び481K、並びにクリーニング部材482Y、482M、482C、及び482Kを備える。クリーニング部材482は、ハウジング481内に配置される。クリーニング部材482は、像担持体100の表面に当接している。クリーニング部材482は、像担持体100の表面を研磨して、像担持体100の表面に付着しているトナーをハウジング481内に回収する。このようにして、クリーニング装置48は、像担持体100の表面に付着しているトナーを回収する。クリーニング部材482は、例えば、クリーニングローラー又はクリーニングブラシである。
【0119】
除電装置50は、像担持体100の表面を除電する。
【0120】
未定着トナー像が形成された記録媒体Pは、定着部80に搬送される。定着部80は、加圧部材82と加熱部材84とを含む。加圧部材82及び加熱部材84により、記録媒体Pが加圧及び加熱されて、未定着のトナー像が記録媒体Pに定着される。
【0121】
排紙部90から、トナー像が定着した記録媒体Pが排出される。
【0122】
<印刷モード及びクリーニングモード>
次に、
図2に加えて、
図3及び
図4を更に参照して、印刷モード及びクリーニングモードにおいて実行される画像形成装置110の動作について説明する。
図3は、
図2に示す像担持体100及びクリーニング部材482と、制御装置10とを示す図である。
図4は、印刷モード及びクリーニングモードにおけるクリーニング部材482の制御を示すタイムチャート図である。
図4中の横軸は時間を示し、縦軸はクリーニング部材482に印加される電圧を示す。
図4中の縦軸が示す「+」は正極性の電圧が印加されていることを示し、「0」は電圧が印加されていないことを示し、「-」は負極性の電圧が印加されていることを示す。
【0123】
図2を参照しながら既に述べたように、画像形成装置110は、制御装置10、及びベルトクリーニング部70を備える。また、
図3に示すように、画像形成装置110は、電圧印加装置200Y、200M、200C、及び200Kと、接離機構300Y、300M、300C、及び300Kとを更に備える。なお、既に述べたように、区別する必要がない場合には、画像形成装置110の各部材に付された「Y」、「M」、「C」、及び「K」の添え字を省略して説明する。
【0124】
制御装置10は、電圧印加装置200を制御することで、クリーニング部材482に印加する電圧を制御する。
【0125】
ベルトクリーニング部70は、クリーニングモードにおいて、像担持体100から転写ベルト66に移動したトナーを回収する。ベルトクリーニング部70は、ベルトクリーニングローラー72と、トナー回収容器74と、バックアップローラー76とを備える。ベルトクリーニング部70は、転写ベルト66の下方に設けられる。ベルトクリーニングローラー72は、転写ベルト66の表面(例えば、外周面)と当接している。バックアップローラー76は、ベルトクリーニングローラー72との間で転写ベルト66を挟持するように配置される。ベルトクリーニングローラー72は、転写ベルト66の表面(当接面である外周面)を研磨して、転写ベルト66の表面に付着しているトナーを、トナー回収容器74内に回収する。
【0126】
電圧印加装置200Y、200M、200C、及び200Kは、各々、クリーニング部材482Y、482M、482C、及び482Kに接続されている。電圧印加装置200は、クリーニング部材482に電圧を印加する。
【0127】
接離機構300Y、300M、300C、及び300Kは、各々、像担持体100Y、100M、100C、及び100Kに対して、対応する現像装置46Y、46M、46C、及び46Kを接触、又は離間させる。
【0128】
(印刷モード)
以下、印刷モードのときの制御装置10による制御と、画像形成装置110の動作とについて説明する。外部装置(不図示、例えばパーソナルコンピューター)から、画像データを含む印刷ジョブが入力されると、制御装置10は、印刷モードを実行する。印刷モードにおいて、記録媒体Pに画像が印刷される。
【0129】
具体的には、
図4に示すように、印刷モードの印刷が開始される時刻t11において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、負極性の第1電圧を、クリーニング部材482に印加させる。また、時刻t11において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を開始させる。像担持体100上に転写後に残存したトナー(正に帯電したトナー)が、負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482によって静電気的に回収される。
【0130】
詳しくは、印刷モードにおいて、制御装置10は、正極性の電圧を帯電装置42に印加させる。そして、帯電装置42が、像担持体100の表面を、正極性に帯電する。このため、正に帯電したトナーは、正極性に帯電した像担持体100の表面から、負極性の電圧が印加されたクリーニング部材482へ、静電気的に移動して回収される。
【0131】
負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482によってトナーの回収を続けながら、制御装置10は、回転駆動する像担持体100に対して、帯電装置42による帯電、露光装置44による露光、現像装置46による現像、転写装置62による転写、及び除電装置50による除電を実施させる。そして、像担持体100と転写装置62との間に搬送された記録媒体Pに未定着トナー像が転写された後、制御装置10は、定着部80による未定着トナー像の定着を実施させて、記録媒体Pに定着トナー像である画像が形成される。
【0132】
印刷ジョブに含まれる全ての画像データの画像形成が完了した時点、即ち印刷モードが終了する時刻t12において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、クリーニング部材482への負極性の第1電圧の印加を停止させる。また、時刻t12において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を停止させる。これにより、印刷モードが終了する。
【0133】
上述の通り、像担持体100である感光体1は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、良好に正帯電される。このため、印刷モードにおいて、帯電装置42によって像担持体100の表面が正極性に帯電されること、及び負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482との当接により像担持体100の電位が負極性に低下することが繰り返された場合であっても、帯電工程において、像担持体100である感光体1は所望の正極性の電位まで好適に帯電される。その結果、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、像担持体100として感光体1を備える画像形成装置110は良好な画像を形成できる。
【0134】
(クリーニングモード)
以下、クリーニングモードのときの制御装置10による制御と、画像形成装置110の動作とについて説明する。上記印刷モードが終了すると、制御装置10は、クリーニングモードを実行する。クリーニングモードにおいて、印刷モードの終了後にクリーニング部材482に付着したトナーが回収される。
【0135】
具体的には、クリーニングモードの第1所定時間T1(時刻t12~t13)において、制御装置10は、接離機構300を制御して、離間方向D1に現像装置46を像担持体100から離間させる。離間方向D1は、像担持体100から現像装置46が離間する方向である。
【0136】
現像装置46の離間後、クリーニングモードの時刻t13において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、正極性の第2電圧(トナーの帯電極性と同極性の電圧)を、クリーニング部材482に印加させる。また、時刻t13において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を開始させる。これにより、クリーニング部材482に付着しているトナー(正に帯電したトナー)が、正極性の第2電圧が印加されたクリーニング部材482から、像担持体100に静電気的に移動する。像担持体100に移動したトナーは、像担持体100の回転に伴い、転写ベルト66に移動する。転写ベルト66に移動したトナーは、転写ベルト66の回転に伴い、ベルトクリーニング部70で回収される。
【0137】
クリーニングモードの第2所定時間T2(時刻t13~t14)において、正極性の第2電圧がクリーニング部材482に印加される。その後、時刻t14において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、クリーニング部材482への正極性の第2電圧の印加を停止させる。
【0138】
なお、クリーニングモードの第2所定時間T2(時刻t13~t14)において、制御装置10は、帯電装置42に電圧を印加させなくてもよいし、正極性の電圧を帯電装置42に印加させてもよい。正極性の電圧を帯電装置42に印加する場合には、帯電装置42に印加される正極性の電圧は、クリーニング部材482に印加される正極性の第2電圧よりも、低いことが好ましい。正に帯電したトナーをクリーニング部材482から帯電装置42に静電気的に好適に移動させるためである。
【0139】
クリーニングモードの第3所定時間T3(時刻t14~t15)において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を続ける。また、第3所定時間T3において、制御装置10は、接離機構300を制御して、接近方向D2に現像装置46を移動させる。接近方向D2は、現像装置46が像担持体100に接近する方向である。そして、時刻t15において、制御装置10は、像担持体100に対して現像装置46を接触させる。また、時刻t15において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を停止させる。なお、時刻t15は、正極性の第2電圧の印加を停止する直前にクリーニング部材482から像担持体100に移動したトナーが、像担持体100から転写ベルト66に移動し、転写ベルト66からベルトクリーニング部70に回収されるまでの時間が経過した時点とすることができる。像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動の停止により、クリーニングモードが終了する。
【0140】
上述の通り、像担持体100である感光体1は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、良好に正帯電される。このような像担持体100は、表面電位の変動の影響を受け難い。このため、正極性の第2電圧が印加されたクリーニング部材482との接触により感光体1の電位が正極性に上昇した場合であっても、クリーニングモードの終了後、再び印刷モードを実行する際に、像担持体100を所望の正極性の電位まで好適に帯電することができる。
【0141】
以上、印刷モード及びクリーニングモードのときの制御装置10による制御と、画像形成装置110の動作とについて説明した。以下、
図5を参照しながら、上記印刷モード及びクリーニングモードのときの制御装置10による制御について、更に詳細に説明する。
図5は、
図2に示す画像形成装置110の制御を示すフローチャート図である。
【0142】
制御装置10は、
図5に示すフローチャートの処理を繰り返し実行する。具体的に、制御装置10は、印刷ジョブが入力されたか否かを判定する(S101)。印刷ジョブが入力されなかった場合(S101においてNo)、
図5に示すフローチャートの処理を終了する。印刷ジョブが入力された場合(S101においてYes)、印刷モードを実行する。印刷モードにおいて、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、負極性の第1電圧をクリーニング部材482に印加させる(S102)。このとき、既に述べたように、像担持体100上に残留している正に帯電したトナーが、負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482によって回収される。
【0143】
印刷モードの終了後、クリーニングモードが実行される。クリーニングモードにおいて、制御装置10は、現像装置46を像担持体100から離間させる(S103)。次いで、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、正極性の第2電圧をクリーニング部材482に印加させる(S104)。このとき、既に述べたように、クリーニング部材482に付着している正に帯電したトナーが、像担持体100に移動する。次いで、像担持体100に移動したトナーは、転写ベルト66を介して、ベルトクリーニング部70で回収される。次いで、制御装置10は、現像装置46の位置を戻して、現像装置46を像担持体100に接触させる(S105)。そして、制御装置10は、
図5に示すフローチャートの処理を終了する。
【0144】
(変形例)
なお、既に述べた画像形成装置110は、以下に示す変形例のように変更可能である。多色の画像を印刷する多色印刷モードにおいて、既に述べた印刷モード及びクリーニングモードが実行される。
【0145】
一方、上記多色印刷モードと異なり、モノクロの画像を印刷するモノクロ印刷モードは、次のように実行可能である。モノクロ印刷モード(
図4中の時刻t11~t12)において、制御装置10は、電圧印加装置200K(ブラック用電圧印加装置)を制御して、負極性の第1電圧を、クリーニング部材482K(ブラック用クリーニング部材)に印加させる。モノクロ印刷モード(
図4中の時刻t11~t12)において、制御装置10は、電圧印加装置200Y、200M、及び200C(イエロー用、マゼンタ用、及びシアン用電圧印加装置)を制御して、正極性の第3電圧を、クリーニング部材482Y、482M、及び482C(イエロー用、マゼンタ用、及びシアン用クリーニング部材)に印加させる。モノクロ印刷モード時に使用されない像担持体100Y、100M、及び100C(イエロー用、マゼンタ用、及びシアン用像担持体)には、負帯電した記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)が付着することがある。そこで、クリーニング部材482Y、482M、及び482Cに第3電圧(正極性電圧)を印加させることにより、負帯電した記録媒体Pの微小成分が、クリーニング部材482Y、482M、及び482Cに静電気的に回収される。
【0146】
また、モノクロ印刷モード後のクリーニングモードの第2所定時間T2(
図4中の時刻t13~t14)においては、制御装置10は、電圧印加装置200Kを制御して、正極性の第2電圧を、クリーニング部材482Kに印加させる。これにより、クリーニング部材482Kに付着している正に帯電したトナーが、像担持体100K(ブラック用像担持体)上に移動する。モノクロ印刷モード後のクリーニングモードの第2所定時間T2(
図4中の時刻t13~t14)において、制御装置10は、電圧印加装置200Y、200M、及び200Cを制御して、負極性の第4電圧を、クリーニング部材482Y、482M、及び482Cに印加させる。これにより、クリーニング部材482Y、482M、及び482C上に付着している負帯電した記録媒体Pの微小成分が、像担持体100Y、100M、及び100C上に移動する。次いで、像担持体100K上に移動したトナー、及び像担持体100Y、100M、及び100C上に移動した記録媒体Pの微小成分が、転写ベルト66を介して、ベルトクリーニング部70で回収される。以上、変形例について説明した。
【0147】
以上、本実施形態の画像形成装置の一例について説明したが、本実施形態の画像形成装置は、上記画像形成装置110に限定されず、例えば、以下の点を更に変更可能である。上記画像形成装置110はカラー画像形成装置であったが、本実施形態の画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、本実施形態の画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上記画像形成装置110はタンデム方式を採用していたが、本実施形態の画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。帯電装置42としてスコロトロン帯電器を例に挙げて説明したが、帯電装置はスコロトロン帯電器以外の帯電装置(例えば、帯電ローラー、帯電ブラシ、又はコロトロン帯電器)であってもよい。上記画像形成装置110は接触現像方式を採用していたが、画像形成装置は非接触現像方式を採用してもよい。上記画像形成装置110は直接転写方式を採用していたが、画像形成装置は中間転写方式を採用してもよい。上記画像形成装置110は印刷モード及びクリーニングモードを備えるが、本実施形態の画像形成装置は、少なくとも印刷モードを備えればよく、クリーニングモードは備えなくてもよい。即ち、「制御装置10がクリーニングモードにおいて正極性の第2電圧を前記クリーニング部材に印加させる」という点は、本実施形態の画像形成装置において任意構成である。以上、本実施形態の画像形成装置について、説明した。
【0148】
[置換基]
以下、本明細書で用いられる置換基について説明する。ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0149】
アルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数が異なる他のアルキル基の例示としては、例えば、上述のアルキル基のうち所定の炭素原子数を有するものが挙げられる。
【0150】
アルコキシ基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、及び3-エチルブトキシ基が挙げられる。炭素原子数が異なる他のアルコキシ基の例示としては、例えば、上述のアルコキシ基のうち所定の炭素原子数を有するものが挙げられる。
【0151】
アリール基の各々は、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数が異なる他のアリール基の例示としては、例えば、上述のアリール基のうち所定の炭素原子数を有するものが挙げられる。
【0152】
アルケニル基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、1つ以上3つ以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、及びヘキサトリニル基が挙げられる。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
【実施例0153】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0154】
[無機粒子]
下記表3に示す無機粒子(T1)~(T7)を準備した。無機粒子(T1)~(T7)は、何れも特定無機粒子であった。なお、表3において、表面処理層の欄は、各無機粒子が有する表面処理層に含まれる成分を示す。例えば、無機粒子(T1)の表面処理層の欄における「シリカ+アルミナ」は、表面処理層がシリカ及びアルミナを含有することを示す。「MHPS」は、メチルハイドロジェンポリシロキサンを示す。「径」は、個数平均一次粒子径を示す。
【0155】
【0156】
[ポリアミド樹脂]
以下に示す通り、下記表4に示すモノマーにより形成されるポリアミド樹脂(A1)~(A6)を準備した。なお、ポリアミド樹脂(A1)~(A6)のうち、ポリアミド樹脂(A1)~(A4)は特定ポリアミド樹脂であった。
【0157】
(ポリアミド樹脂(A1))
攪拌装置、温度計、窒素導入管及び脱水管を備えた4つ口フラスコを反応容器として用いた。反応容器に、ジカルボン酸としてのドデカン二酸(0.5モル部)と、ジアミンとしてのイソホロンジアミン(0.5モル部)とを投入した。次に、反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器の内部を窒素置換した。以降、反応終了までこの状態を維持した。次に、反応容器の内容物の温度を230℃に加熱し、この温度で反応容器の内容物を4時間反応(脱水縮合)させた。反応終了後、反応により生じた水を脱水するため、反応容器の内部を減圧し、250℃で2時間保持した。その後、反応容器の内部を常温常圧に戻した。これにより、ポリアミド樹脂(A1)を得た。
【0158】
(ポリアミド樹脂(A2)~(A5))
使用するモノマーを下記表4に示す通りに変更した以外は、ポリアミド樹脂(A1)の調製と同様の方法により、ポリアミド樹脂(A2)~(A5)を調製した。なお、下記表4において、「MM」は、4,4-メチレンビス-2-メチルシクロヘキシルアミンを示す。
【0159】
(ポリアミド樹脂(A6))
ポリアミド樹脂(A6)として、東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」を準備した。ポリアミド樹脂(A6)は、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66及びナイロン610の共重合体であった。ポリアミド樹脂(A6)は、脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、ジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位との合計含有割合が80モル%未満であった。
【0160】
【0161】
<感光体の製造>
以下の方法により、正帯電型の単層型感光体である試験例1~30及び比較試験例1~3の感光体(P-1)~(P-33)を製造した。
【0162】
[感光体(P-1)]
(中間層形成)
無機粒子(T1)3質量部と、ポリアミド樹脂(A1)1質量部と、エタノール12質量部と、n-ブタノール4質量部と、トルエン4質量部とを混合した。得られた混合物を、ビーズミルで10時間攪拌し、無機粒子(T1)を溶媒(エタノール、n-ブタノール及びトルエンの混合有機溶媒)に十分に分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。
【0163】
導電性基体として、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、長さ252.6mm)を用いた。導電性基体に、上述の中間層形成溶液をディップコート法で塗布した。次に、塗布後の導電性基体を、130℃で30分間加熱乾燥した。これにより、導電性基体上に中間層(膜厚:3μm)を形成した。
【0164】
(単層型感光層形成)
Y型チタニルフタロシアニン3.0質量部と、正孔輸送剤(HTM-1)70.0質量部と、電子輸送剤(ETM-1)45.0質量部と、バインダー樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「パンライト(登録商標)TS2050」、粘度平均分子量:50000)100.0質量部と、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社「KF96-50cs」、ジメチルシリコーンオイル)0.1質量部と、テトラヒドロフラン760.0質量部とを混合し、混合液を得た。得られた混合液を、棒状音波発振子を用いて20分間超音波分散処理し、感光層用塗布液を得た。次に、リングコート法により、導電性基体上の中間層に、感光層用塗布液を塗布した。塗布した感光層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、中間層上に単層型感光層(膜厚:30μm)を形成した。これにより、試験例1の感光体を得た。
【0165】
[感光体(P-2)~(P-33)]
以下の点を変更した以外は、感光体(P-1)の製造と同様の方法により、感光体(P-2)~(P-33)を製造した。感光体(P-2)~(P-33)の製造では、中間層用塗布液に添加する無機粒子の種類及び量と、ポリアミド樹脂の種類とを下記表5に示す通りに変更した。また、感光体(P-2)~(P-33)の製造では、感光層用塗布液に添加する正孔輸送剤及び電子輸送剤の種類を下記表5に示す通りに変更した。
【0166】
下記表5における用語は、以下の通りである。
CGM:電荷発生剤
CGM-1:Y型チタニルフタロシアニン
HTM:正孔輸送剤
ETM:電子輸送剤
Resin1:ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「パンライト(登録商標)TS2050」、粘度平均分子量:50000)
【0167】
下記表5において、無機粒子の欄の「部」は、中間層において、ポリアミド樹脂100質量部に対する無機粒子の含有量[質量部]を示す。
【0168】
【0169】
<単層型感光体の評価>
以下の方法により、試験例1~30及び比較試験例1~3の感光体について、帯電電位の低下量(詳しくは、正帯電及び負帯電を繰り返した場合の感光体の帯電電位の低下量)と、感度の環境依存と、高温高湿環境下でのかぶりとを評価した。評価結果及び確認結果を下記表6に示す。
【0170】
[帯電電位の低下量]
温度10℃及び湿度15%RHの環境下(LL環境下)で、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、測定対象となる感光体の帯電電位の低下量を測定した。測定においては、感光体に正帯電及び負帯電を繰り返し、実施形態に記載の帯電装置による感光体の正帯電と、クリーニング部材による感光体の負帯電との繰り返しを再現する構成とした。
【0171】
詳しくは、ドラム感度試験機に、測定対象となる感光体をセットした。この際、ドラム感度試験機には、感光体の回転方向の上流側から、第1帯電装置、プローブ、第2帯電装置、及び除電装置が備えられていた。第1帯電装置は、感光体の表面を正極性に帯電させる(実施形態に記載の帯電装置による正帯電に相当)。第1帯電装置は、スコロトロン帯電器であり、グリッド電圧を+700Vに設定した。プローブは、現像位置に備えられ、感光体の表面電位を測定する。第2帯電装置は、クリーニング位置に備えられ、感光体の表面を負極性に帯電させる(実施形態に記載のクリーニング部材による負帯電に相当)。第2帯電装置は、コロトロン帯電器であり、印加電圧を-5kVに設定した。除電器は、感光体の表面を除電する(実施形態に記載の除電装置による除電に相当)。
【0172】
正帯電用の第1帯電装置をオンにし、除電装置をオンにし、負帯電用の第2帯電装置をオフにした状態で、回転速度200mm/秒で感光体を10周回転させた。このようにして、感光体の正帯電及び除電を繰り返した。10周回転させる間、プローブを用いて感光体の表面電位を継続して測定した。この10周分の感光体の表面電位の平均値を、正帯電及び負帯電を繰り返す前の感光体の帯電電位V1(単位:+V)とした。
【0173】
次いで、正帯電用の第1帯電装置、除電装置、及び負帯電用の第2帯電装置の全てをオンにした状態で、回転速度200mm/秒で感光体を200周回転させた。このようにして、感光体の正帯電、負帯電及び除電を繰り返した。プローブを用いて、191周目から200周目までの10周分の感光体の表面電位を継続して測定した。この10周分の感光体の表面電位の平均値を、正帯電及び負帯電を繰り返した後の感光体の帯電電位V2(単位:+V)とした。
【0174】
そして、式「帯電電位の低下量=V1-V2」から、正帯電及び負帯電の繰り返し前後における、感光体の帯電電位の低下量(単位:V)を算出した。感光体は、帯電電位の低下量が小さいほど、クリーニング電圧を印加された際に帯電電位が低下し難いため好ましい。帯電電位の低下量は、以下の基準に沿って判定した。
【0175】
(帯電電位の低下量の基準)
A(良好):帯電電位の低下量が、150V未満である。
B(不良):帯電電位の低下量が、150V以上である。
【0176】
[感度の環境依存]
温度10℃及び湿度15%RHの環境下(LL環境下)で、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、測定対象となる感光体の感度を測定した。詳しくは、ドラム感度試験機を用いて、感光体の表面電位が+800Vになるように、感光体を帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いてハロゲンランプの光から取り出した単色光(波長:780nm、光エネルギー:0.5μJ/cm2)を、感光体の表面に照射した。単色光の照射から50ミリ秒が経過した時点での感光体の表面電位を測定した。得られた表面電位をLL環境下での露光後電位VL(LL)(単位:+V)とした。次に、測定条件を温度30℃かつ湿度80%RHの環境下(HH環境下)に変更した以外は、LL環境下での露光後電位VL(LL)の測定と同様の測定を行い、得られた表面電位をHH環境下での露光後電位VL(HH)(単位:+V)とした。下記式にVL(LL)及びVL(HH)を当てはめることにより、ΔVLを算出した。感光体は、感度の環境依存が低いほど、ΔVLの値が低くなる。感光体の感度の環境依存は、以下の基準で判定した。
ΔVL=VL(LL)-VL(HH)
【0177】
(感度の環境依存の基準)
A(良好):ΔVLが40(単位:+V)以下である。
B(不良):ΔVLが40(単位:+V)超である。
【0178】
[高温高湿環境下でのかぶり]
評価機として、プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「ECOSYS(登録商標)P2040dw」)を用いた。評価機は、感光体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、転写装置と、クリーニング部材とを備えていた。評価機から感光体を取り外し、代わりに評価対象となる感光体を装着した。評価用の現像剤として、上述のプリンターに標準的に附属する現像剤を用いた。温度30℃かつ湿度80%RH環境下(HH環境下)において、評価機を用いて、印刷用紙にグレー画像を形成した。グレー画像を形成後の印刷用紙を目視で観察し、かぶりと見做される画像不良の有無を確認した。高温高湿環境下でのかぶりは、以下の基準で判定した。
【0179】
(高温高湿環境下でのかぶりの基準)
A(良好):印刷用紙にかぶりが確認されなかった。
B(不良):印刷用紙にかぶりが確認された。
【0180】
【0181】
表5~6に示すように、試験例1~30の感光体(P-1)~(P-30)は、導電性基体と、導電性基体上に設けられる中間層と、中間層上に設けられる感光層とを備えていた。中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有していた。特定無機粒子は、金属酸化物粒子を有していた。特定ポリアミド樹脂は、脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、ジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有していた。特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上であった。試験例1~30の感光体は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、良好に正に帯電することが可能であった。また、試験例1~30の感光体は、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できた。
【0182】
以上から、実施形態に記載の帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、クリーニング部材及び制御装置を備える画像形成装置は、像担持体として試験例1~30の感光体(P-1)~(P-30)を備えることにより、静電気力で電子写真感光体をクリーニングしつつ、感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できると判断される。
【0183】
一方、比較試験例1及び2の感光体(P-31)~(P-32)は、中間層におけるポリアミド樹脂として、特定ポリアミド樹脂の代わりに、他のポリアミド樹脂が用いられていた。感光体(P-31)~(P-32)は、中間層が特定ポリアミド樹脂を含有しないため、吸湿性が高かったと判断される。これにより、感光体(P-31)~(P-32)は、帯電電位の低下量、感度の環境依存、及び高温高湿環境下でのかぶりの評価が不良であった。即ち、実施形態に記載の帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、クリーニング部材及び制御装置を備える画像形成装置は、感光体(P-31)~(P-32)を用いた場合に、感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を抑制できず、かつ高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できないと判断される。
【0184】
比較例3の感光体(P-33)は、中間層が特定無機粒子を含有していなかった。感光体(P-33)は、中間層が特定無機粒子を含有しないため、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制するという中間層の機能を十分に発揮できなかった。これにより、感光体(P-33)は、帯電電位の低下量、感度の環境依存、及び高温高湿環境下でのかぶりの評価が不良であった(評価を行えるレベルの画像を形成できなかった)。即ち、実施形態に記載の帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、クリーニング部材及び制御装置を備える画像形成装置は、感光体(P-33)を用いた場合に、感光体の帯電電位の低下及び感度の環境依存を抑制できず、かつ高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できないと判断される。