(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171765
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 43/044 20060101AFI20241205BHJP
A47J 43/07 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A47J43/044
A47J43/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088964
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北谷 和也
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053BE11
4B053BE12
4B053BF04
4B053BF14
(57)【要約】
【課題】内鍋内の食材を適切に撹拌する。
【解決手段】調理器(1)は、調理する食材を収容する内鍋(21)と、モータ(43)と、モータによって回転し、内鍋に収容された食材を撹拌する撹拌部材(42)と、を備え、撹拌部材は、撹拌動作中に撹拌部材の回転中心からの距離が変化可能な少なくとも1つの撹拌アーム(42c)を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理する食材を収容する食材収容部と、
モータと、
前記モータによって回転し、前記食材収容部に収容された前記食材を撹拌する撹拌部材と、を備え、
前記撹拌部材は、撹拌動作中に前記撹拌部材の回転中心からの距離が変化可能な少なくとも1つの撹拌アームを備えている、調理器。
【請求項2】
前記撹拌部材は、前記撹拌アームに前記回転中心方向への力を加える印加部材、をさらに備える、請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記モータの回転数によって、前記回転中心からの前記撹拌アームの位置を制御する、請求項1に記載の調理器。
【請求項4】
前記モータの低速回転における前記撹拌アームの位置が、前記モータの高速回転における前記撹拌アームの位置よりも、前記回転中心寄りに位置する、請求項1に記載の調理器。
【請求項5】
前記撹拌部材を平面視したときに、前記撹拌アームと前記回転中心との距離が変化する際に、前記撹拌アームが通る位置の軌跡の延長上には前記回転中心が位置しない、請求項1に記載の調理器。
【請求項6】
前記モータの回転を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記撹拌アームと前記回転中心との距離が第1距離である第1回転制御と、前記撹拌アームと前記回転中心との距離が前記第1距離と異なる第2距離であり、前記第1回転制御よりも高速回転の第2回転制御と、の第1間欠運転を前記モータに周期的に行わせる、請求項1に記載の調理器。
【請求項7】
前記制御部は、第1期間において、前記第2回転制御よりも低速回転な第3回転制御と、停止と、の第2間欠運転を前記モータに行わせる、請求項6に記載の調理器。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1期間より後の第2期間において、前記第2間欠運転を行い、前記第1期間における前記第3回転制御の時間よりも、前記第2期間における前記第3回転制御の時間は長い、請求項7に記載の調理器。
【請求項9】
前記食材収容部を加熱する加熱部をさらに備える、請求項1に記載の調理器。
【請求項10】
前記モータを駆動する駆動電流を検出する検出部をさらに備える、請求項1に記載の調理器。
【請求項11】
前記撹拌アームに加わる力を検出する検出部をさらに備える、請求項1に記載の調理器。
【請求項12】
前記モータの回転を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部の値に基づき、前記モータの回転数を変化させる、請求項10または11に記載の調理器。
【請求項13】
前記印加部材は、バネである、請求項2に記載の調理器。
【請求項14】
前記撹拌アームは、少なくとも2本である、請求項1から11のいずれか1項に記載の調理器。
【請求項15】
前記撹拌アームによってパン生地を捏ねる、請求項1から11のいずれか1項に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、内鍋の内部に収容した食材を、内蓋の内面側に設けられた撹拌部材によって撹拌する調理器が多用されている。撹拌部材は、回転体および回転体の回転中心からの距離が異なる2本の撹拌アームを有し、回転体から下方へ伸びた状態となる2本の撹拌アームによって内鍋の内部の食材を撹拌するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、撹拌アームの回転中心からの回転半径が固定されているため、同じ位置を撹拌し続けることになる。そのため、内鍋内の食材を適切に撹拌することができない。
【0005】
したがって、本発明は内鍋内の食材を適切に撹拌する撹拌装置を備えた調理器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る調理器は、調理する食材を収容する食材収容部と、モータと、前記モータによって回転し、前記食材収容部に収容された前記食材を撹拌する撹拌部材と、を備え、前記撹拌部材は、撹拌動作中に前記撹拌部材の回転中心からの距離が変化可能な少なくとも1つの撹拌アームを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、食材を適切に撹拌できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る調理器を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した調理器における蓋体の開状態を示す斜視図である。
【
図3】蓋体の外蓋の内部の構造を示す斜視図である。
【
図5】
図4とは90度異なる位置での縦断面により蓋体の内部および撹拌部材を示す斜視図である。
【
図9】蓋体および蓋体に取り付けられた撹拌部材の正面図である。
【
図10】撹拌部材が内鍋の内部に挿入された状態における蓋体、撹拌部材および内鍋の正面図である。
【
図11】撹拌部材を停止または低速回転させているときにおける、撹拌部材の断面平面図である。
【
図12】撹拌部材を停止または低速回転させているときにおける、撹拌部材と内鍋の断面正面図である。
【
図13】撹拌部材を高速回転させているときにおける、撹拌部材の断面平面図である。
【
図14】撹拌部材を高速回転させているときにおける、撹拌部材と内鍋の断面正面図である。
【
図17】撹拌部材を停止または低速回転させているときにおける、撹拌部材の断面平面図である。
【
図18】撹拌部材を高速回転させているときにおける、撹拌部材の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
(調理器1の構造の概要)
図1および
図2に示すように、調理器1は、調理器本体部11と蓋体12とを備えている。調理器本体部11と蓋体12とは後部の回転支持部13によって連結されている。したがって、蓋体12は回転支持部13を中心として回転し、調理器本体部11に対して開閉可能となっている。
【0011】
調理器本体部11は内鍋(食材収容部)21を有し、内鍋21は、調理器本体部11の内部の凹部に出し入れ自在に収納されている。内鍋21は、調理する食材を収容する。
【0012】
蓋体12は、閉状態において、ロック機構(図示せず)により閉状態に保持される。蓋体12は、前部の上面に開ボタン31を備え、開ボタン31が押されると、ロック機構が外れて、
図2に示すように開状態となる。
【0013】
蓋体12は、外蓋32と内蓋33とを有する。外蓋32は、蓋体12の筐体部となっており、主として樹脂にて形成されている。内蓋33は、例えばアルミニウムまたはステンレス等の金属材料にて形成され、蓋体12を閉じたときに、内鍋21の蓋となり、内鍋21の上面を塞ぐようになっている。内蓋33は、外周部に例えばゴム製のパッキン33bを有している。内蓋33は外蓋32の内面に設けられ、例えば外周部分を外蓋32に嵌合させることにより、外蓋32に対して着脱自在となっている。内蓋33には耐熱ガラス製の覗き窓33aが形成され、覗き窓33aに対応する外蓋32の部分には、ユーザが覗き窓33aから内鍋21の中を覗けるように、覗き穴34が形成されている。蓋体12には蒸気排出口35が形成されている。
【0014】
また、加熱調理器1は、撹拌装置41を備えている。撹拌装置41は、回転して内鍋21内の食材を撹拌する撹拌部材42および撹拌部材42を駆動するモータ43(
図3参照)を備えている。撹拌部材42は、内蓋33の下面側に位置している。
【0015】
(外蓋32の内部の構造)
図3は、蓋体12の外蓋32の内部の構造を示す斜視図である。
図4は、
図3におけるA-A矢視断面図である。
図5は、
図4とは90度異なる位置での縦断面により蓋体の内部および撹拌部材を示す斜視図である。
【0016】
図3から
図5に示すように、外蓋32の内部には、外蓋32の端部付近にモータ43が設けられ、外蓋32の内部の中心部には回転軸44が設けられている。回転軸44は、モータ43の駆動力が例えばプーリおよびベルトを介して伝達されることにより回転する。回転軸44は内蓋33の下面側へ突出し、回転軸44の下端部には撹拌装置41の撹拌部材軸42aが嵌脱自在に嵌合されている。なお、撹拌部材42の蓋体12に対する固定は、撹拌部材42が有するスライドレバー47をスライドさせることにより行う。
【0017】
(撹拌部材42の構成)
図6は、撹拌部材42の正面図である。
図7は、撹拌部材42の平面図である。
図8は、撹拌部材42の底面図である。
図9は、蓋体12および蓋体12に取り付けられた撹拌部材42の正面図である。
図10は、撹拌部材42が内鍋21の内部に挿入された状態における蓋体12、撹拌部材42および内鍋21の正面図である。
【0018】
撹拌部材42は、上記の撹拌部材軸42a、撹拌部材基部42b、撹拌アーム42cを2本有している。なお、撹拌アーム42cの2本は、撹拌部材軸42aに対して対角配置されている。撹拌部材軸42aは、撹拌部材基部42bに設けられている。撹拌アーム42cは、常に下方に向けて延伸している。結果的に、撹拌部材42は、回転軸44を介してモータ43によって回転し、内鍋21に収容された食材を撹拌することができる。
【0019】
図8に示すように、撹拌部材42の2本の撹拌アーム42cは撹拌部材42の回転中心である撹拌部材軸42aに対して、互いに等しい半径の円周上を回転するように設けられている。
【0020】
撹拌アーム42cは、撹拌動作中に撹拌部材軸42a(回転中心)からの距離が変化可能になっている。つまり、撹拌アーム42cの回転半径は固定されておらず、変化できるような構造をしている。
【0021】
(撹拌部材42の詳細構成)
図11は、撹拌部材42を停止または低速回転させているときにおける、撹拌部材42の断面平面図である。
図12は、撹拌部材42を停止または低速回転させているときにおける、撹拌部材42と内鍋21の断面正面図である。
図13は、撹拌部材42を高速回転させているときにおける、撹拌部材42の断面平面図である。
図14は、撹拌部材42を高速回転させているときにおける、撹拌部材42と内鍋21の断面正面図である。
【0022】
撹拌部材42には、撹拌アーム42cごとに、シャフト42dと押しバネ42f(印加部材)とを備える。撹拌部材基部42bには、複数のシャフトホルダ42eが形成されている。シャフトホルダ42eには、シャフト42dが通る穴が開いている。
【0023】
シャフト42dの中ほどには、押しバネ42fの外形よりも大きい円板状のバネ受け42gが形成されている。シャフト42dの一端は撹拌アーム42cに固定されており、他端は開放されている。なお、本実施形態では、2個のシャフトは撹拌部材軸42aと直交する同一直線状に並んでいる。
【0024】
押しバネ42fは、撹拌部材基部42bの最外周に位置するシャフトホルダ42eとバネ受け42gの間に位置し、かつシャフト42dは押しバネ42fの中央の穴部に収容されている。結果的に、押しバネ42fは、シャフト42dの位置を中央よりに動かす力を、シャフト42dに印加する。つまり、撹拌アーム42cが中央よりに位置するようになる力が押しバネ42fによって撹拌アーム42cに印加される。したがって、押しバネ42fは、撹拌アーム42cに回転中心方向への力を加える。
【0025】
モータ43によって、撹拌部材42が回転することによって、撹拌アーム42cに対し遠心力が働く。そのため、撹拌アーム42cは回転中心に対し、撹拌アーム42cを外側に動かそうとする力が働く。この遠心力と押しバネ42fのばね力とが釣り合う位置に、撹拌アーム42cは位置することになる。
【0026】
遠心力は、角速度の二乗に比例することが知られている。そのため、モータ43の回転数が大きくなるほど、角速度が大きくなり遠心力が増大し、押しバネ42fが縮んでいく。結果的に、モータ43の低速回転における撹拌アーム42cの位置が、モータ43の高速回転における撹拌アーム42cの位置よりも、回転中心寄りに位置することになる。
【0027】
このように、撹拌アーム42cは、撹拌アーム42cが回転する円の半径方向に回転半径が変化できるようになっている。つまり、モータ43の回転数によって、回転中心からの撹拌アーム42cの位置を制御することができる。
【0028】
そのため、シャフト42dは、シャフトホルダ42eの穴を通過し、撹拌アーム42cが通る軌跡と平行に摺動する必要がある。ここで、シャフト42dの形状は、円形に限定されず矩形などであってもよく、この場合、シャフトホルダ42eの穴の形状も同様である必要がある。仮にシャフトが矩形である場合は、撹拌アーム42cの回転を抑制する効果がある。また、シャフト42dが円形である場合も、円の接線方向の力によって、撹拌アーム42cが回転することを抑制する何等かの機構が備わっていてもよい。
【0029】
(制御部91)
図15は、調理器1における制御ブロック図である。調理器1は、さらに制御部91と、検出部92と、加熱部93と、を備える。制御部91は、様々な情報に基づき、各部を統括して制御する。例えば、調理器1に予め設けられている調理メニューに従って、調理器1の各部を制御し調理を行う。
【0030】
検出部92は、モータ43を駆動する駆動電流を検出する。モータ43は、DCモータなどが用いられており、速度制御で管理されている。そのため、検出部92によって、モータ43を流れる電流を計測することによって、モータ43のトルク、ひいては撹拌部材42でのトルクを計測することができる。検出部92は、制御部91にトルクの値を出力する。このトルクの値を用いて、制御部91は制御を切り替えてもよい。
【0031】
加熱部93は、内鍋21を加熱するヒータである。なお、加熱部93はなくてもよいし、あってもよい。加熱部93が備わる調理器1は、いわゆる加熱調理器となる。
【0032】
(制御シーケンス)
図16は、制御部91の制御シーケンスの一例である。制御部91は、第1期間T1から、第3期間T3に亘って動作し、動作を変更する。なお、本実施形態では、食品としてパン生地を想定している。つまり、調理器1は撹拌アーム42cでパン生地を捏ねる。
【0033】
一般的にパン生地は、小麦粉と、水または牛乳と、塩と、イースト菌と、を捏ねることによってパン生地を作ることができる。初めは、液体と粉であるために、液体に粉類を溶け込ませ、まとめる必要がある。そのため、あまり高速回転していると液体が飛び散り生地がまとまらない。そこで、第1期間T1では、100rpmほどの低速回転(第3回転制御)を行ったり、停止したりする。つまり、低速回転と停止との第2間欠運転をモータ43に行わせる。例えば、第1期間T1では、2秒間回転し、2秒間停止する動作を、2分間繰り返す。
【0034】
次に粉類が液体に溶け込んだ生地を均質化するために混ぜる第2期間T2を行う。第2期間T2では、100rpmほどの低速回転(第3回転制御)を行ったり、停止したりする。つまり、低速回転と停止との第2間欠運転を行う。ただし、期間T2では、期間T1における第3回転制御の時間よりも、期間T2における第3回転制御の時間は長くする。なお、両者の回転数は、必ずしも一致させる必要性はないし、同一であってもよい。例えば、第2期間T2では、10秒間回転し、5秒間停止する動作を、3分間繰り返す。
【0035】
最後に、生地を捏ねる第3期間T3を行う。第3期間T3では、制御部91は、撹拌アーム42cと回転中心との距離が第1距離である第1回転制御と、撹拌アームと回転中心との距離が第1距離と異なる第2距離であり、第1回転制御よりも高速回転の第2回転制御と、の第1間欠運転をモータ43に周期的に行わせる。つまり、第3期間T3では、100rpmほどの低速回転(第1回転制御)と、400rpmほどの高速回転(第2回転制御)と、を交互に繰り返す。第1回転制御と第2回転制御との間の角速度変化は等角加速度であってよい。なお、第2回転は、第1回転よりも高速回転であればよく、特に制限されない。なお、第3回転制御は、第2回転制御よりも低速回転である。
【0036】
上述したように、低速回転では、撹拌アーム42cの回転半径は小さい。対して、高速回転では、撹拌アーム42cの回転半径は大きい。そのため、第1回転制御と第2回転制御とを繰り返すことによって、撹拌アーム42cは、回転半径が小さい場合と大きい場合とを繰り返し変化する。結果的に、撹拌アーム42cに接触しているパン生地は、伸び縮みする動作を繰り返す。そのため、パン生地を捏ねることができる。例えば、10秒間かけて第1回転制御から第2回転制御に回転数を増加させ、10秒間かけて第2回転制御から第1回転制御に回転数を低下させる動作を90回繰り返す、つまり30分間生地を捏ねる。
【0037】
なお、パンの調理においては、パン生地を伸ばすという処理が行われることが重要である。従来の回転半径が固定された撹拌アームを有する調理器では、パン生地を伸ばすという処理を効果的に行うことができない。一方で、本実施形態の調理器1では、撹拌動作中に撹拌アーム42cの回転半径が変化するため、パン生地に適したパン生地を伸ばす処理を効果的に行うことができる。したがって、調理器1によって、食材であるパン生地を適切に混ぜる(撹拌する)ことができる。
【0038】
第3期間T3を終了したら、調理器1は、パン生地が捏ねあがったことをユーザに通知して確認を促してもよい。または、ユーザに通知せずに、自動的に加熱部93でもって、内鍋21を加熱し、パン生地を加熱調理してもよい。勿論適切な発酵時間を設けてもよい。
【0039】
(検出部92)
上述した制御シーケンスでは、第1期間T1から第3期間T3の各動作の管理を時間管理で行ったが、これに限定されない。検出部92によって、生地を捏ねた際の反力を検出し、パン生地の硬さを推測してもよい。そして、推測したパン生地の硬さを指標として制御シーケンスを管理してもよい。つまり、制御部91は、検出部92の値に基づき、モータ43の回転数を変化させる。
【0040】
例えば、パン生地の硬さが所定の硬さ(閾値)になるまで、第3期間T3を続けるなどをしてもよい(回数または時間で制御を行わない)。また、パン生地のメニューに応じて、管理に用いる閾値を変更しても構わない。
【0041】
これにより、生地の状態を管理したパン生地を作ることができ、安定した品質のパン生地を作ることができるようになる。
【0042】
(加熱部93)
パン生地は、適温で捏ねることが好ましい。低すぎても、イースト菌の活動は促進されず、高すぎてもイースト菌が死滅してしまう。すなわち、パン生地を捏ねている期間および捏ねあげたときにおける温度に応じて、イースト菌の活動が変化する。このイースト菌の活動度合いに応じて、発酵度合いが変化するため、パン生地の温度管理は大切である。
【0043】
また、パン生地はある程度温度が高い方が捏ねやすい。そこで、加熱部93によって、適温でパン生地を捏ねるように加熱してもよい。なお、メニューに応じて加熱部93における温度管理を変更しても構わない。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
実施形態1では、2本の撹拌アーム42cと撹拌部材軸42aとが、同一直線状に配置されている。そのため、撹拌アーム42cの最小半径が制限されてしまい、撹拌できる位置が制限される。つまり、パン生地を捏ねられる範囲が制限されている。
【0046】
そのため、実施形態2では、実施形態1よりも撹拌アーム42cの最小半径を小さくするために、撹拌部材42に代えて、撹拌部材42’を備える。
【0047】
図17は、撹拌部材42’を停止または低速回転させているときにおける、撹拌部材42’の断面平面図である。
図18は、撹拌部材42’を高速回転させているときにおける、撹拌部材42’の断面平面図である。
【0048】
(撹拌部材42’)
撹拌部材42’では、撹拌部材42’を平面視したときに、撹拌アーム42cと回転中心との距離が変化する際に、撹拌アーム42cが通る位置の軌跡の延長上には、回転中心(撹拌部材軸42a)が位置しない。つまり、撹拌アーム42cが移動する軌跡と、撹拌部材軸42aとはオフセットしている。
【0049】
また、一方の撹拌アーム42cと他方の撹拌アーム42cとは、回転中心に対し逆側にオフセットしている。つまり、撹拌アーム42cの間に撹拌部材軸42aは位置する。結果的に、撹拌アーム42cは、撹拌部材軸42aの近傍まで近づくことができるようになる。そのため、撹拌アーム42cの最小半径は小さい。したがって、実施形態2は、実施形態1と同様に食材を適切に混ぜることができ、特に実施形態1よりも食材であるパン生地を効率的に捏ねることができる。
【0050】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0051】
実施形態1および2では、食材を適切に混ぜる、特にパン生地を捏ねることを目的としたが、実施形態3は、任意の食材を均一に混ぜることを目的とする。上述したように、回転数に応じて、撹拌アーム42cの回転半径は変化する。そのため、回転数を微細に制御することによって、撹拌アーム42cの回転半径を制御することができる。撹拌アーム42cの回転半径を制御することで、結果的に、内鍋21の中を均一に撹拌することができる。
【0052】
(回転数の変化)
なお、同一回転数での撹拌アーム42cの移動距離が同じになるように制御することが好ましい。つまり、低速回転では長い時間を維持し、高速回転では短い時間を維持し、次の回転数に変更していく。これによって、撹拌アーム42cが均等に撹拌することができるようになる。
【0053】
なお、回転半径が小さすぎる場合は、ほぼ同一点を撹拌することになるため、煮崩れを防止するために、所定の移動距離よりも短い移動距離としてもよい。
【0054】
〔変形例〕
(撹拌アーム42cの本数)
撹拌アーム42cは、少なくとも2本以上が好ましいが1本であってもよい。撹拌アーム42cが2本以上ある場合、食品としてパン生地を用いた場合、上述したように複数の撹拌アーム42cによってパン生地を引き延ばしたり、縮めたりする動作を行うことができる。そのため、良好なパン生地を作ることができる。
【0055】
また、撹拌アーム42cは少なくとも1本であってもよい。この場合、モータ43の回転数を動的に変更することで、任意の回転半径の位置を撹拌することができる。そのため、均一に撹拌することができる。
【0056】
(検出部92)
実施形態1では、検出部92は電流センサとしたが、これに限定されない。例えば、撹拌アーム42cに加わる力を検出する装置、例えばロードセルなどであってもよい。この場合でも、検出部92が検出した撹拌アーム42cに加わる力に応じて、制御部91は制御を変更することができる。なお、撹拌アーム42cではなく、撹拌部材42に加わる力を計測しても構わない。
【0057】
(引きバネ)
実施形態1および2では、撹拌アーム42cに対し、回転中心方向への力を付加するものとして押しバネ42fを用いたが、これに限定されない。例えば、回転中心方向への力を付加するように、撹拌アーム42c同士を引きバネで接続しても構わない。これにより、一対の撹拌アーム42cは互いに中央側に引き寄せられることで、遠心力と釣り合った位置に制御されることになる。
【0058】
なお、引きバネは、撹拌アーム42c同士を接続しなくてもよく、撹拌アーム42cと、撹拌部材軸42aの近傍とを接続してもよい。この場合でも同様の効果を得ることができる。
【0059】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る調理器は、調理する食材を収容する食材収容部と、モータと、前記モータによって回転し、前記食材収容部に収容された前記食材を撹拌する撹拌部材と、を備え、前記撹拌部材は、撹拌動作中に前記撹拌部材の回転中心からの距離が変化可能な少なくとも1つの撹拌アームを備えている。
【0060】
上記の構成によれば、撹拌アームの回転中心からの距離、すなわち撹拌アームの回転半径を変化させることができ、食材収容部における食材を均一に撹拌することができる。
【0061】
本発明の態様2に係る調理器は、上記態様1において、前記撹拌部材は、前記撹拌アームに前記回転中心方向への力を加える印加部材、をさらに備えてもよい。
【0062】
上記の構成によれば、印加部材による撹拌アームに対する回転中心方向への力と、撹拌アームの回転に伴う遠心力とが釣り合う位置に、撹拌アームが位置することになる。そのため、撹拌部材の回転数を調整することで、撹拌アームの撹拌部材の回転中心からの距離を制御することができる。
【0063】
本発明の態様3に係る調理器は、上記態様1または2において、前記モータの回転数によって、前記回転中心からの前記撹拌アームの位置を制御してもよい。
【0064】
上記の構成によれば、撹拌部材の回転数に応じて、撹拌アームの位置を制御することで、撹拌アームを所望の回転中心からの距離に位置させることができるため、均一に撹拌することができるようになる。
【0065】
本発明の態様4に係る調理器は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記モータの低速回転における前記撹拌アームの位置が、前記モータの高速回転における前記撹拌アームの位置よりも、回転中心寄りに位置してもよい。
【0066】
上記の構成によれば、低速回転における回転中心から撹拌アームまでの距離と、高速回転における回転中心から撹拌アームまでの距離と、では低速回転の方が小さくすることができる。
【0067】
本発明の態様5に係る調理器は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記撹拌部材を平面視したときに、前記撹拌アームと前記回転中心との距離が変化する際に、前記撹拌アームが通る位置の軌跡の延長上には前記回転中心が位置しなくてもよい。
【0068】
上記の構成によれば、撹拌アームと回転中心との距離が変化する際に、撹拌アームが通る位置の軌跡の延長上に、回転中心が位置しないために、撹拌アームをより回転中心の近傍まで近づけることができるようになる。そのため、撹拌アームを広い範囲において位置させることができるようになる。
【0069】
本発明の態様6に係る調理器は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記モータの回転を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記撹拌アームと前記回転中心との距離が第1距離である第1回転制御と、前記撹拌アームと前記回転中心との距離が前記第1距離と異なる第2距離であり、前記第1回転制御よりも高速回転の第2回転制御と、の第1間欠運転を前記モータに周期的に行わせてもよい。
【0070】
上記の構成によれば、第1回転制御において撹拌アームと回転中心との距離を第1距離とすることができ、第2回転制御において撹拌アームと回転中心との距離を第2距離とすることができる。第1距離の時間と第2距離の時間とを第1間欠運転することによって、撹拌アームによって食材に対し、食材を伸び縮みさせるような力を加えることができる。そのため、食材であるパン生地を捏ねることができる。
【0071】
本発明の態様7に係る調理器は、上記態様6において、前記制御部は、第1期間において、前記第2回転制御よりも低速回転な第3回転制御と、停止と、の第2間欠運転を前記モータに行わせてもよい。
【0072】
上記の構成によれば、第1期間において、低速回転と停止との第2間欠運転を行うため、液体に対し、粉類を溶け込ませるような処理を撹拌アームによって行うことができる。そのため、撹拌アームによってパン生地を作ることができる。
【0073】
本発明の態様8に係る調理器は、上記態様7において、前記制御部は、前記第1期間より後の第2期間において、前記第2間欠運転を行い、前記第1期間における前記第3回転制御の時間よりも、前記第2期間における前記第3回転制御の時間は長くてもよい。
【0074】
上記の構成によれば、第2期間において、粉類が液体に溶け込んだ生地を混ぜることで均質な生地を作ることができ、撹拌アームによってパン生地を捏ねるための準備を行うことができる。
【0075】
本発明の態様9に係る調理器は、上記態様1から8のいずれかにおいて、前記食材収容部を加熱する加熱部をさらに備えてもよい。
【0076】
上記の構成によれば、加熱部によって食材収容部を加熱することによって、食材を加熱調理することができる。また、食材としてパン生地を用いる場合、適温でパン生地を捏ねることができるようになり、捏ねやすくなり、また発酵を促進することができる。
【0077】
本発明の態様10に係る調理器は、上記態様1から9のいずれかにおいて、前記モータを駆動する駆動電流を検出する検出部をさらに備えてもよい。
【0078】
上記の構成によれば、モータの電流を検出することによって、撹拌アームに加わる力を推定することができる。撹拌アームに加わる力を推定することによって、食材の硬さを推定し、適切な硬さの状態において、調理シーケンスを進めていくことができるようになる。結果的に、良質なパン生地を作ることができるようになる。
【0079】
本発明の態様11に係る調理器は、上記態様1から10のいずれかにおいて、前記撹拌アームに加わる力を検出する検出部をさらに備えてもよい。
【0080】
上記の構成によれば、撹拌アームに加わる力を検出することによって、食材の硬さを計測し、適切な硬さの状態において、調理シーケンスを進めていくことができるようになる。結果的に、良質なパン生地を作ることができるようになる。
【0081】
本発明の態様12に係る調理器は、上記態様10または11において、前記モータの回転を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記検出部の値に基づき、前記モータの回転数を変化させてもよい。
【0082】
上記の構成によれば、検出部によって検出した結果に基づき、モータの回転数を制御することができる。そのため、検出部が適切な食材の硬さを検出するまで制御シーケンスを進めなくすることができ、良質なパン生地を作ることができるようになる。
【0083】
本発明の態様13に係る調理器は、上記態様2から12のいずれかにおいて、前記印加部材は、バネであってもよい。
【0084】
上記の構成によれば、印加部材としてバネを用いることができ、安価な構成で撹拌アームの位置を制御することができるようになる。
【0085】
本発明の態様14に係る調理器は、上記態様1から13のいずれかにおいて、前記撹拌アームは、少なくとも2本であってもよい。
【0086】
上記の構成によれば、撹拌アームを少なくとも2本とすることができる。そのため、少なくとも2本の撹拌アームによって、パン生地を掴み伸縮させることができるようになる。そのため、パン生地を捏ねることができるようになる。
【0087】
本発明の態様15に係る調理器は、上記態様1から14のいずれかにおいて、前記撹拌アームによってパン生地を捏ねてもよい。
【0088】
上記の構成によれば、食材としてパン生地とすることができ、撹拌アームによってパン生地を捏ねることができる。
【0089】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 調理器
11 調理器本体部
12 蓋体
13 回転支持部
21 内鍋
31 開ボタン
32 外蓋
33 内蓋
33b パッキン
35 蒸気排出口
41 撹拌装置
42、42’ 撹拌部材
42a 撹拌部材軸
42b 撹拌部材基部
42c 撹拌アーム
42d シャフト
42e シャフトホルダ
42f 押しバネ
42g バネ受け
43 モータ
44 回転軸
47 スライドレバー