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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017177
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20240201BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240201BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119656
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】増原 孝昭
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC31
2C056EC38
2C056EC42
2C056FA04
2C056HA44
2C057AF21
2C057AL31
2C057AL34
2C057AM16
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることのできる印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】複数の駆動信号SDのそれぞれの波形を表す複数の波形データを保持する波形DB230が設けられる。制御部150において各印刷ジョブが波形データに関連付けられ、波形データを特定するための波形番号WNが制御部150からヘッド制御部210に送信される。ヘッド制御部210は、印刷ジョブ毎に、制御部150から送信された波形番号WNをヘッド駆動基板220に転送する。ヘッド駆動基板220は、印刷ジョブ毎に、ヘッド制御部210から転送された波形番号WNに対応する波形データを波形DB230から取り出し、その取り出した波形データに応じた波形の駆動信号SDをインクジェットヘッド241に与える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対してインクを吐出することによって印刷を行う印刷装置であって、
与えられる駆動信号に基づいて前記印刷媒体に対してインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部に駆動信号を与える吐出制御部と、
複数の駆動信号のそれぞれの波形を表す複数の波形データを保持する波形データ保持部と、
各印刷ジョブを前記複数の波形データのうちの1以上の波形データに関連付ける関連付け部と
を備え、
前記吐出制御部は、印刷ジョブ毎に、前記関連付け部によって関連付けられた波形データを前記波形データ保持部から取り出し、その取り出した波形データに応じた波形の駆動信号を前記インク吐出部に与えることを特徴とする、印刷装置。
【請求項2】
各印刷ジョブを構成する印刷データを解析することによって各印刷ジョブの属性を取得する属性取得部を更に備え、
前記関連付け部は、前記属性取得部によって取得された属性に基づいて、各印刷ジョブを前記1以上の波形データに関連付けることを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって単位時間当たりに前記印刷媒体が搬送される距離である搬送速度を制御する搬送制御部と、
印刷済み印刷媒体を乾燥させる乾燥部と
を更に備え、
前記属性取得部は、前記属性として、前記乾燥部によって前記印刷済み印刷媒体を乾燥させるのに適した搬送速度を取得することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記属性取得部は、
前記印刷データを解析することによって印字率を算出する印字率算出部と、
前記印字率算出部によって算出された印字率に基づいて前記乾燥部によって前記印刷済み印刷媒体を乾燥させるのに適した搬送速度を特定する搬送速度特定部と
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記属性取得部は、前記属性として、印字率を取得することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記属性取得部は、前記属性として、前記印刷データに基づく印刷によって消費されることが予測されるインク量を取得することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記属性取得部は、前記属性として、前記印刷データに基づく印刷によって表される画像の種類を取得することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記属性取得部は、
前記印刷データを解析することによって画像領域毎の印字率を算出する印字率算出部と、
前記印字率算出部によって算出された印字率に基づいて画像領域毎に画像の種類を特定する画像種類特定部と
を含み、
前記関連付け部は、各印刷ジョブについて、前記画像種類特定部によって特定された画像の種類に基づいて各画像領域を前記複数の波形データのうちのいずれかに関連付けることを特徴とする、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記関連付け部は、前記複数の波形データを識別するための波形識別データを用いて各印刷ジョブを前記1以上の波形データに関連付け、
前記吐出制御部は、前記波形識別データに基づいて、前記関連付け部によって関連付けられた波形データを前記波形データ保持部から取り出すことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記吐出制御部は、
印刷ジョブ毎に前記波形識別データを前記関連付け部から受け取って当該波形識別データを出力する駆動制御部と、
前記波形データ保持部にアクセス可能に構成され、前記関連付け部によって関連付けられた波形データを前記駆動制御部から出力された波形識別データに基づいて前記波形データ保持部から取り出す駆動部と
を含むことを特徴とする、請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記インク吐出部は、複数の印刷ヘッドからなり、
前記吐出制御部は、前記複数の印刷ヘッドと1対1で対応する複数のヘッド駆動基板を含み、
前記関連付け部は、各印刷ジョブを印刷ヘッド毎に前記複数の波形データのうちのいずれかに関連付け、
前記複数のヘッド駆動基板は、それぞれ、対応する印刷ヘッドに前記関連付け部によって関連付けられた波形データに応じた波形の駆動信号を与えることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記インク吐出部は、複数のノズルを含み、
前記関連付け部は、各印刷ジョブをノズル毎に前記複数の波形データのうちのいずれかに関連付け、
前記吐出制御部は、前記関連付け部によって関連付けられた波形データに応じた波形の駆動信号に基づき各ノズルからインクが吐出されるよう、前記複数のノズルのそれぞれに対応する複数の駆動信号を前記インク吐出部に与えることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記インク吐出部は、複数の印刷ヘッドからなり、
前記吐出制御部は、前記複数の印刷ヘッドと1対1で対応する複数のヘッド駆動基板を含み、
前記波形データ保持部は、前記複数のヘッド駆動基板のそれぞれに対応して設けられ、
各ヘッド駆動基板に対応して設けられている波形データ保持部には、対応する印刷ヘッドに応じた複数の波形データが保持されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記波形データ保持部は、対応するヘッド駆動基板に付属するメモリであることを特徴とする、請求項13に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記インク吐出部は、複数の印刷ヘッドからなり、
前記吐出制御部は、前記複数の印刷ヘッドと1対1で対応する複数のヘッド駆動基板を含み、
前記波形データ保持部は、前記複数のヘッド駆動基板に共通的に設けられていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記吐出制御部は、前記波形データ保持部から取り出した波形データを補正することによって駆動用波形データを生成する波形データ補正部を含み、
前記駆動用波形データによって表される波形の駆動信号が前記インク吐出部に与えられることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記波形データ補正部は、前記波形データ保持部から取り出した波形データに所定のゲインを乗ずることによって前記駆動用波形データを生成することを特徴とする、請求項16に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記インク吐出部は、それぞれが複数のノズルを含む複数の印刷ヘッドからなり、
ノズル毎または印刷ヘッド毎に前記ゲインの値が定められていることを特徴とする、請求項17に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記印刷媒体を搬送する搬送機構を更に備え、
前記インク吐出部は、前記印刷媒体が前記搬送機構によって搬送される方向とは直交する方向に並べて配置された第1のインク吐出部および第2のインク吐出部を含み、
前記第1のインク吐出部からのインクの吐出と前記第2のインク吐出部からのインクの吐出とは、異なる印刷ジョブに基づいて行われることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項20】
与えられる駆動信号に基づいて印刷媒体に対してインクを吐出するインク吐出部を備える印刷装置における印刷方法であって、
各印刷ジョブを複数の波形データのうちの1以上の波形データに関連付ける関連付けステップと、
前記インク吐出部に駆動信号を与える吐出制御ステップと
を含み、
前記印刷装置は、複数の駆動信号のそれぞれの波形を表す複数の波形データを保持する波形データ保持部を備え、
前記吐出制御ステップでは、印刷ジョブ毎に、前記関連付けステップで関連付けられた波形データが前記波形データ保持部から取り出され、その取り出された波形データに応じた波形の駆動信号が前記インク吐出部に与えられることを特徴とする、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動信号に応じてインクを吐出するヘッドを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱や圧力によってインクを印刷媒体(典型的には、印刷用紙)に向けて噴射することにより印字を行うインクジェット方式の印刷装置(以下、「インクジェット印刷装置」という。)が知られている。ドロップオンデマンド方式のインクジェット印刷装置では、例えばピエゾ素子を利用した機械的な加圧力によってインクの吐出が行われる。このようなインクジェット印刷装置に関し、印刷媒体にインクを吐出するための機構であるヘッド(以下、「インクジェットヘッド」という。)には、インクの吐出口である多数のノズルが設けられている。ピエゾ素子を利用したインクジェット印刷装置では、各ノズルに対応してピエゾ素子が設けられており、所定の駆動波形を有する駆動信号(駆動電圧)に基づいてピエゾ素子が変形することによって、ノズルに隣接するインク室の内部のインクが加圧される。これにより、ノズルから印刷媒体に向けてインクが吐出される。
【0003】
以上のように、インクジェット印刷装置では、各ノズルからインクを吐出するか否かを駆動信号によって制御することにより印刷媒体への印刷が行われている。
【0004】
なお、本発明に関連して、以下の先行技術文献が知られている。特開平11-20158号公報には、記録ヘッド駆動用の駆動波形を周囲温度に応じて切り替える技術が開示されている。その技術によれば、温度にかかわらず記録濃度が一定に保たれる。また、特開2004-338414号公報には、印刷データに基づきノズルの稼働状態を解析し、ノズルの稼働状態に応じてメニスカスに微振動を与える技術が開示されている。その技術によれば、インク粘度の増大が防止され、インク滴の飛翔が安定化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-20158号公報
【特許文献2】特開2004-338414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェット印刷装置に関しては、いかにして印刷品質を高めるかが従来より課題となっている。例えば、実行される印刷ジョブの印字率によっては、乾燥部(ヒーター等)による印刷済み印刷用紙の乾燥が間に合わないことやインクジェットヘッドへのインクの供給が間に合わないことがある。このように乾燥部による乾燥やインクの供給が間に合わないと、十分な品質の印刷物が得られない。また、例えば文字の印刷物については十分な品質が得られるが絵柄の印刷物については十分な品質が得られないというように、印刷物の種類によって印刷品質が変化することもある。以上のように、従来のインクジェット印刷装置に関しては、印刷ジョブの属性によって印刷品質にばらつきが生じることがある。
【0007】
なお、特開平11-20158号公報に開示された技術あるいは特開2004-338414号公報に開示された技術によって印刷ジョブの属性の違いに起因する印刷品質のばらつきの発生を抑制することはできない。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明は、印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることのできる印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、印刷媒体に対してインクを吐出することによって印刷を行う印刷装置であって、
与えられる駆動信号に基づいて前記印刷媒体に対してインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部に駆動信号を与える吐出制御部と、
複数の駆動信号のそれぞれの波形を表す複数の波形データを保持する波形データ保持部と、
各印刷ジョブを前記複数の波形データのうちの1以上の波形データに関連付ける関連付け部と
を備え、
前記吐出制御部は、印刷ジョブ毎に、前記関連付け部によって関連付けられた波形データを前記波形データ保持部から取り出し、その取り出した波形データに応じた波形の駆動信号を前記インク吐出部に与えることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記印刷装置は、各印刷ジョブを構成する印刷データを解析することによって各印刷ジョブの属性を取得する属性取得部を更に備え、
前記関連付け部は、前記属性取得部によって取得された属性に基づいて、各印刷ジョブを前記1以上の波形データに関連付けることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、
前記印刷装置は、
前記印刷媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって単位時間当たりに前記印刷媒体が搬送される距離である搬送速度を制御する搬送制御部と、
印刷済み印刷媒体を乾燥させる乾燥部と
を更に備え、
前記属性取得部は、前記属性として、前記乾燥部によって前記印刷済み印刷媒体を乾燥させるのに適した搬送速度を取得することを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、
前記属性取得部は、
前記印刷データを解析することによって印字率を算出する印字率算出部と、
前記印字率算出部によって算出された印字率に基づいて前記乾燥部によって前記印刷済み印刷媒体を乾燥させるのに適した搬送速度を特定する搬送速度特定部と
を含むことを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第2の発明において、
前記属性取得部は、前記属性として、印字率を取得することを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、第2の発明において、
前記属性取得部は、前記属性として、前記印刷データに基づく印刷によって消費されることが予測されるインク量を取得することを特徴とする。
【0015】
第7の発明は、第2の発明において、
前記属性取得部は、前記属性として、前記印刷データに基づく印刷によって表される画像の種類を取得することを特徴とする。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において、
前記属性取得部は、
前記印刷データを解析することによって画像領域毎の印字率を算出する印字率算出部と、
前記印字率算出部によって算出された印字率に基づいて画像領域毎に画像の種類を特定する画像種類特定部と
を含み、
前記関連付け部は、各印刷ジョブについて、前記画像種類特定部によって特定された画像の種類に基づいて各画像領域を前記複数の波形データのうちのいずれかに関連付けることを特徴とする。
【0017】
第9の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記関連付け部は、前記複数の波形データを識別するための波形識別データを用いて各印刷ジョブを前記1以上の波形データに関連付け、
前記吐出制御部は、前記波形識別データに基づいて、前記関連付け部によって関連付けられた波形データを前記波形データ保持部から取り出すことを特徴とする。
【0018】
第10の発明は、第9の発明において、
前記吐出制御部は、
印刷ジョブ毎に前記波形識別データを前記関連付け部から受け取って当該波形識別データを出力する駆動制御部と、
前記波形データ保持部にアクセス可能に構成され、前記関連付け部によって関連付けられた波形データを前記駆動制御部から出力された波形識別データに基づいて前記波形データ保持部から取り出す駆動部と
を含むことを特徴とする。
【0019】
第11の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記インク吐出部は、複数の印刷ヘッドからなり、
前記吐出制御部は、前記複数の印刷ヘッドと1対1で対応する複数のヘッド駆動基板を含み、
前記関連付け部は、各印刷ジョブを印刷ヘッド毎に前記複数の波形データのうちのいずれかに関連付け、
前記複数のヘッド駆動基板は、それぞれ、対応する印刷ヘッドに前記関連付け部によって関連付けられた波形データに応じた波形の駆動信号を与えることを特徴とする。
【0020】
第12の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記インク吐出部は、複数のノズルを含み、
前記関連付け部は、各印刷ジョブをノズル毎に前記複数の波形データのうちのいずれかに関連付け、
前記吐出制御部は、前記関連付け部によって関連付けられた波形データに応じた波形の駆動信号に基づき各ノズルからインクが吐出されるよう、前記複数のノズルのそれぞれに対応する複数の駆動信号を前記インク吐出部に与えることを特徴とする。
【0021】
第13の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記インク吐出部は、複数の印刷ヘッドからなり、
前記吐出制御部は、前記複数の印刷ヘッドと1対1で対応する複数のヘッド駆動基板を含み、
前記波形データ保持部は、前記複数のヘッド駆動基板のそれぞれに対応して設けられ、
各ヘッド駆動基板に対応して設けられている波形データ保持部には、対応する印刷ヘッドに応じた複数の波形データが保持されていることを特徴とする。
【0022】
第14の発明は、第13の発明において、
前記波形データ保持部は、対応するヘッド駆動基板に付属するメモリであることを特徴とする。
【0023】
第15の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記インク吐出部は、複数の印刷ヘッドからなり、
前記吐出制御部は、前記複数の印刷ヘッドと1対1で対応する複数のヘッド駆動基板を含み、
前記波形データ保持部は、前記複数のヘッド駆動基板に共通的に設けられていることを特徴とする。
【0024】
第16の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記吐出制御部は、前記波形データ保持部から取り出した波形データを補正することによって駆動用波形データを生成する波形データ補正部を含み、
前記駆動用波形データによって表される波形の駆動信号が前記インク吐出部に与えられることを特徴とする。
【0025】
第17の発明は、第16の発明において、
前記波形データ補正部は、前記波形データ保持部から取り出した波形データに所定のゲインを乗ずることによって前記駆動用波形データを生成することを特徴とする。
【0026】
第18の発明は、第17の発明において、
前記インク吐出部は、それぞれが複数のノズルを含む複数の印刷ヘッドからなり、
ノズル毎または印刷ヘッド毎に前記ゲインの値が定められていることを特徴とする。
【0027】
第19の発明は、第1から第8までのいずれかの発明において、
前記印刷装置は、前記印刷媒体を搬送する搬送機構を更に備え、
前記インク吐出部は、前記印刷媒体が前記搬送機構によって搬送される方向とは直交する方向に並べて配置された第1のインク吐出部および第2のインク吐出部を含み、
前記第1のインク吐出部からのインクの吐出と前記第2のインク吐出部からのインクの吐出とは、異なる印刷ジョブに基づいて行われることを特徴とする。
【0028】
第20の発明は、与えられる駆動信号に基づいて印刷媒体に対してインクを吐出するインク吐出部を備える印刷装置における印刷方法であって、
各印刷ジョブを複数の波形データのうちの1以上の波形データに関連付ける関連付けステップと、
前記インク吐出部に駆動信号を与える吐出制御ステップと
を含み、
前記印刷装置は、複数の駆動信号のそれぞれの波形を表す複数の波形データを保持する波形データ保持部を備え、
前記吐出制御ステップでは、印刷ジョブ毎に、前記関連付けステップで関連付けられた波形データが前記波形データ保持部から取り出され、その取り出された波形データに応じた波形の駆動信号が前記インク吐出部に与えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
上記第1の発明によれば、インクジェット印刷装置には、インクを吐出するインク吐出部に与えるための複数の駆動信号のそれぞれの波形を表す複数の波形データを保持する波形データ保持部が設けられている。各印刷ジョブは、関連付け部によって、複数の波形データのうちの1以上の波形データに関連付けられる。そして、各印刷ジョブに関し、関連付け部によって関連付けられた波形データが波形データ保持部から取り出され、その取り出された波形データに応じた波形の駆動信号に基づいてインク吐出部からのインクの吐出が行われる。以上より、各印刷ジョブを適宜の波形データに関連付けることによって、各印刷ジョブの特性を考慮した印刷が行われる。これにより、印刷ジョブの実行によって印刷される画像の内容に関わらず、十分な品質の印刷物を得ることが可能となる。以上のように、印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることのできる印刷装置が実現される。
【0030】
上記第2の発明によれば、印刷品質のばらつきが小さくなるよう各印刷ジョブを好適な波形データに容易に関連付けることが可能となる。
【0031】
上記第3の発明によれば、印刷物の乾燥状態のばらつきを従来よりも小さくすることが可能となる。
【0032】
上記第4の発明によれば、上記第3の発明と同様の効果が得られる。
【0033】
上記第5の発明によれば、複数の印刷ジョブ間での印字率のばらつきに起因する印刷品質のばらつきの発生が抑制される。
【0034】
上記第6の発明によれば、複数の印刷ジョブ間でのインク消費量のばらつきに起因する印刷品質のばらつきの発生が抑制される。
【0035】
上記第7の発明によれば、印刷品質が印刷物の種類によって変化することが抑制される。
【0036】
上記第8の発明によれば、複数の画像領域間での印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることが可能となる。
【0037】
上記第9の発明によれば、複数の構成要素間での波形データの転送が不要となるので、複数の構成要素間のデータ転送量を小さくすることができる。
【0038】
上記第10の発明によれば、上記第9の発明と同様の効果が得られる。
【0039】
上記第11の発明によれば、印刷ヘッド毎に波形データの関連付けが行われるので、複数の印刷ヘッド間での印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることが可能となる。
【0040】
上記第12の発明によれば、ノズル毎に波形データの関連付けが行われるので、複数の印刷ジョブ間の印刷品質のばらつきを小さくすることに加えて個々の印刷物の印刷品質を高めることが可能となる。
【0041】
上記第13の発明によれば、複数のヘッド駆動基板に共通の波形データ保持部を設ける場合に比べて、各ヘッド駆動基板から波形データ保持部内のデータへのアクセスに要する時間が短くなる。これにより、処理時間が短縮される。
【0042】
上記第14の発明によれば、上記第13の発明と同様の効果が得られる。
【0043】
上記第15の発明によれば、波形データ保持部を設けることによる回路規模の増大が抑制される。
【0044】
上記第16の発明によれば、インク吐出部に与えられる駆動信号の波形を細かく調整することができる。これにより、印刷品質のばらつきをより効果的に小さくすることが可能となる。
【0045】
上記第17の発明によれば、比較的容易に駆動信号の波形を調整することが可能となる。
【0046】
上記第18の発明によれば、ノズル毎または印刷ヘッド毎のインクの吐出状態を考慮して駆動信号の波形を調整することができる。これにより、印刷ジョブの内容に起因する印刷品質のばらつきのみならずノズル間または印刷ヘッド間でのインクの吐出状態の違いに起因する印刷品質のばらつきをも小さくすることが可能となる。
【0047】
上記第19の発明によれば、複数の印刷ジョブが同時に実行される場合にも、各印刷ジョブが適宜の波形データに関連付けられるので、印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることが可能となる。
【0048】
上記第20の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。
図2】上記第1の実施形態におけるインクジェット印刷装置の一構成例を示す模式図である。
図3】上記第1の実施形態における印刷部の一構成例を示す平面図である。
図4】上記第1の実施形態において、1つのノズルに対応する構成要素について説明するための図である。
図5】上記第1の実施形態における印刷制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】上記第1の実施形態において、インクジェットヘッドの駆動に関わる構成について説明するためのブロック図である。
図7】上記第1の実施形態において、波形DBに格納されているデータについて説明するための図である。
図8】上記第1の実施形態において、波形DBに格納されているデータの別の例を示す図である。
図9】上記第1の実施形態において、参照テーブルについて説明するための図である。
図10】上記第1の実施形態における制御部の概略機能構成を示すブロック図である。
図11】上記第1の実施形態における波形データ制御処理の手順を示すフローチャートである。
図12】本発明の第2の実施形態において、波形DBに格納されているデータについて説明するための図である。
図13】上記第2の実施形態において、参照テーブルについて説明するための図である。
図14】上記第2の実施形態における制御部の概略機能構成を示すブロック図である。
図15】上記第2の実施形態において、画像領域毎に画像の種類を特定することについて説明するための図である。
図16】本発明の第3の実施形態において、波形データ補正部について説明するためのブロック図である。
図17】上記第3の実施形態において、波形データにゲインを乗ずることについて説明するための図である。
図18】第2の変形例において、インクジェットヘッドの駆動に関わる構成について説明するためのブロック図である。
図19】第3の変形例において、第1のインク吐出部および第2のインク吐出部について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0051】
<1.第1の実施形態>
<1.1 印刷システムの全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置40とによって構成されている。インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置40とは通信回線5によって互いに接続されている。印刷データ生成装置40は、PDFファイルなどの入稿データに対してRIP処理等を施して印刷データを生成する。印刷データ生成装置40で生成された印刷データは、通信回線5を介してインクジェット印刷装置10に送信される。インクジェット印刷装置10は、印刷版を用いることなく、印刷データ生成装置40から送信された印刷データに基づいて、印刷媒体としての印刷用紙に印刷画像を出力する。インクジェット印刷装置10は、印刷機本体200と、印刷機本体200の動作を制御する印刷制御装置100と、印刷状態を検査する画像検査装置300とによって構成されている。但し、画像検査装置300を備えていないインクジェット印刷装置(すなわち、印刷状態を検査する機能を有さない)インクジェット印刷装置にも本発明を適用することができる。
【0052】
<1.2 インクジェット印刷装置の構成>
図2は、インクジェット印刷装置10の一構成例を示す模式図である。上述したように、このインクジェット印刷装置10は、印刷制御装置100と印刷機本体200と画像検査装置300とによって構成されている。
【0053】
印刷機本体200は、印刷用紙(例えばロール紙)PAを供給する用紙送出部21と、印刷用紙PAへの印刷を行う印刷機構20と、印刷後の印刷用紙PAを巻き取る用紙巻取部28とを備えている。印刷機構20は、印刷用紙PAを内部へと搬送するための第1の駆動ローラ22と、印刷機構20の内部で印刷用紙PAを搬送するための複数個の支持ローラ23と、印刷用紙PAにインクを吐出して印刷を行う印刷部24と、印刷部24のクリーニング(例えば、ノズルからのインクの吸引やノズル面のワイピング)を行うクリーニング機構25と、印刷後の印刷用紙PAを乾燥させる乾燥部26と、印刷画像(印刷後の印刷用紙PA)を撮像する撮像部310と、印刷用紙PAを印刷機構20の内部から出力するための第2の駆動ローラ27とを備えている。撮像部310は、画像検査装置300の構成要素であって、CCDまたはCMOS等のイメージセンサを用いて構成されている。
【0054】
印刷制御装置100は、以上のような構成の印刷機本体200の動作を制御する。印刷制御装置100に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置100は、印刷用紙PAが用紙送出部21から用紙巻取部28へと搬送されるよう、印刷機本体200の動作を制御する。そして、まず印刷部24によって印刷用紙PAへの印刷が行われ、次に乾燥部26によって印刷用紙PAの乾燥が行われ、最後に撮像部310によって印刷画像の撮像が行われる。また、必要に応じて、クリーニング機構25による印刷部24のクリーニングが行われる。
【0055】
画像検査装置300は、撮像部310と画像検査コンピュータ320とによって構成されている。撮像部310による印刷画像の撮像によって得られた撮像画像データDiは、画像検査コンピュータ320に送られる。画像検査コンピュータ320では、例えば、撮像画像データDiと印刷データ生成装置40から送信された印刷データDpとを比較照合することによって欠点を検出する検査などが行われる。そして、画像検査コンピュータ320で得られた検査結果Drが印刷制御装置100に送られる。
【0056】
なお、本実施形態においては、用紙送出部21と第1の駆動ローラ22と複数個の支持ローラ23と第2の駆動ローラ27と用紙巻取部28とによって搬送機構が実現され、印刷制御装置100には、搬送機構によって単位時間当たりに印刷用紙PAが搬送される距離である搬送速度を制御する搬送制御部(図2では省略)が設けられている。
【0057】
図3は、印刷部24の一構成例を示す平面図である。図3に示すように、印刷部24は、印刷用紙PAの搬送方向に列置されたC色(シアン色)、M色(マゼンタ色)、Y色(黄色)、およびK色(黒色)のインクジェットヘッド列240C、240M、240Y、および240Kから構成されている。各インクジェットヘッド列は、千鳥状に配置された複数個のインクジェットヘッド(印刷ヘッド)241により構成されている。各インクジェットヘッド241には、インクを吐出する多数のノズルが含まれている。C色のインクジェットヘッド列240Cに含まれるインクジェットヘッド241の各ノズルはC色のインクを吐出し、M色のインクジェットヘッド列240Mに含まれるインクジェットヘッド241の各ノズルはM色のインクを吐出し、Y色のインクジェットヘッド列240Yに含まれるインクジェットヘッド241の各ノズルはY色のインクを吐出し、K色のインクジェットヘッド列240Kに含まれるインクジェットヘッド241の各ノズルはK色のインクを吐出する。
【0058】
図4は、1つのノズルに対応する構成要素について説明するための図である。図4に示すように、ノズル250に対応して、インクが蓄積されるインク室251と、インク室251にインクを供給するためのインク供給路252と、インク室251の内部のインクに圧力を加えるためのピエゾ素子253とが設けられている。このような構成において、所定の駆動波形を有する駆動信号SDがピエゾ素子253に与えられると、その駆動信号SDに基づいてピエゾ素子253が変形する。これにより、インク室251の内部のインクが加圧され、ノズル250からインクが吐出される。
【0059】
<1.3 印刷制御装置のハードウェア構成>
図5は、印刷制御装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。図5に示すように、印刷制御装置100は、本体110、補助記憶装置121、光ディスクドライブ122、表示部123、キーボード124、およびマウス125などを備えている。本体110は、CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、出力インタフェース部117、およびネットワークインタフェース部118を含んでいる。CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、出力インタフェース部117、およびネットワークインタフェース部118は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部113には補助記憶装置121が接続されている。第2ディスクインタフェース部114には光ディスクドライブ122が接続されている。表示制御部115には、表示部(表示装置)123が接続されている。入力インタフェース部116には、キーボード124およびマウス125が接続されている。出力インタフェース部117には、通信ケーブルを介して印刷機本体200が接続されている。ネットワークインタフェース部118には通信回線5が接続されている。補助記憶装置121は磁気ディスク装置などである。光ディスクドライブ122には、CD-ROMやDVD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク6が挿入される。表示部123は液晶ディスプレイなどである。表示部123は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。キーボード124およびマウス125は、この印刷制御装置100に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0060】
補助記憶装置121には、印刷制御プログラム(印刷機本体200による印刷処理の実行を制御するためのプログラム)Pが格納されている。CPU111は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをメモリ112に読み出して実行することにより、印刷制御装置100の各種機能を実現する。メモリ112は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ112は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをCPU111が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、印刷制御プログラムPは、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、印刷制御プログラムPの記録媒体としての光ディスク6を購入して光ディスクドライブ122に挿入し、光ディスク6から印刷制御プログラムPを読み出して補助記憶装置121にインストールする。また、これに代えて、通信回線5を介して送信される印刷制御プログラムPをネットワークインタフェース部118で受信して、それを補助記憶装置121にインストールするようにしてもよい。
【0061】
<1.4 波形データ制御処理>
<1.4.1 概要>
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10では、印刷ジョブの属性に応じた波形(駆動波形)の駆動信号SDがインクジェットヘッド241に与えられるようにする波形データ制御処理が行われる。本実施形態においては、波形データ制御処理によって、印刷ジョブを構成する印刷データに基づいて求められる印字率に応じてインク色毎に駆動信号SDの波形が決定され、その決定された波形の駆動信号SDがインクジェットヘッド241に与えられる。
【0062】
ところで、印刷後の印刷用紙PAの乾燥(乾燥部26による乾燥)に適した搬送速度(搬送機構が印刷用紙PAを搬送する速度)は、印字率によって異なる。また、高い搬送速度で印刷が実行される場合と低い搬送速度で印刷が実行される場合とでは、駆動信号SDの波形を切り替える必要がある。そこで、本実施形態においては、高い搬送速度に対応する駆動信号SD用の波形データと低い搬送速度に対応する駆動信号SD用の波形データとがインク色毎に予め用意され、インク色毎に、印字率に応じて選択される波形データによって生成される駆動信号SDがインクジェットヘッド241に与えられる。
【0063】
<1.4.2 インクジェットヘッドの駆動に関わる構成>
図6は、インクジェットヘッド241の駆動に関わる構成(波形データ制御処理に関わる構成)について説明するためのブロック図である。なお、このインクジェット印刷装置10にはn個(nは整数である)のインクジェットヘッド241(1)~241(n)が設けられているものと仮定する。それらn個のインクジェットヘッド241(1)~241(n)には、C色用のインクジェットヘッド241とM色用のインクジェットヘッド241とY色用のインクジェットヘッド241とK色用のインクジェットヘッド241とが含まれている。
【0064】
図6に示すように、このインクジェット印刷装置10には、インクジェットヘッド241を駆動するための構成要素として、印刷制御装置100において印刷制御プログラムPが実行されることによって実現される制御部150と、ヘッド制御部(制御基板)210と、n個のインクジェットヘッド241(1)~241(n)と1対1で対応するヘッド駆動基板220(1)~220(n)と、波形DB(データベース)230とが設けられている。
【0065】
まず、波形DB230について説明する。本実施形態においては、波形DB230は、n個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)に対して共通的に設けられている。波形DB230は、例えばROMなどのメモリで実現され、n個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)からアクセス可能となっている。波形DB230には、複数の駆動信号SDのそれぞれの波形を表す複数の波形データが格納されている。なお、波形DB230をヘッド駆動基板220毎に設けるのではなくn個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)に対して共通的に設けることによって、波形DB230を設けることによる回路規模の増大が抑制される。
【0066】
図7は、本実施形態における波形DB230に格納されているデータについて説明するための図である。図7から把握されるように、波形DB230の各レコードは波形番号と波形データとからなる。すなわち、各波形データは波形番号によって特定される。本実施形態においては、図7に示すように、波形DB230には8個のレコードが格納されている。例えば、図7で符号71を付した矢印で示すレコードについては、波形番号は2であって、波形データは高速印刷に適したM色用の波形を表すデータである。図7より、各インク色につき2個のレコードが波形DB230に格納されていることが把握される。より詳しくは、各インク色につき高速印刷に適した波形を表す波形データと低速印刷に適した波形を表す波形データとが波形DB230に格納されている。
【0067】
図8は、波形DB230に格納されるデータの別の例を示す図である。図8に示すように、印刷ジョブの実行によって印刷される画像の種類に応じた様々な波形データを波形DB230に格納することもできる。例えば、図8で符号72を付した矢印で示すレコードについては、波形番号は0であって、波形データはサテライトを生じない波形(文字の多い画像に適した波形)を表すデータである。
【0068】
また、印刷制御装置100からヘッド制御部210を介して各ヘッド駆動基板220へと波形データそのものが送信されるのではなく波形データを識別するためのデータが送信されるようにするために、インク色と搬送速度と波形番号(波形データを識別するためのデータ)とを対応付けた図9に示すような参照テーブルが用意される。この参照テーブルは、印刷制御装置100の補助記憶装置121内あるいはメモリ112内に格納されている。
【0069】
図6に示す構成要素に関し、制御部150は、印刷ジョブ毎に、印刷データを解析することによって印字率を求め、印字率に応じて定まる搬送速度(高速または低速)に基づいて上述した参照テーブルを参照することによって、各インク色の印字の際に使用する波形データを特定するための波形番号WNを取得する。そして、制御部150は、印刷ジョブ毎に、印刷ジョブを構成するジョブデータJDに波形番号WNおよび制御関連情報CIを関連付けてヘッド制御部210に送信する。なお、制御関連情報CIとは、波形データの制御を適切に行うために必要な情報である。本実施形態においては、インク色毎に異なる波形番号WNが関連付けられるので、少なくとも各波形番号WNとインクジェットヘッド241を識別する番号(ヘッド番号)とを対応付ける情報が制御関連情報CIとして制御部150からヘッド制御部210に送信される。これにより、例えば波形番号「2」(図7参照)で特定される波形データによって生成される駆動信号はM色用のインクジェットヘッド241に正しく与えられる。また、ジョブデータJDには、印刷対象の画像を表す印刷データに加えて、印刷の実行に必要な各種の情報(例えば、用紙サイズの情報)が含まれている。
【0070】
ヘッド制御部210は、印刷ジョブ毎に、制御部150から送信されるジョブデータJD、波形番号WN、および制御関連情報CIを受け取る。そして、ヘッド制御部210は、印刷ジョブ毎に、受け取ったデータ(ジョブデータJD、波形番号WN、および制御関連情報CI)をn個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)へと転送する。その際、ヘッド制御部210は、各ヘッド駆動基板220に対して、受け取ったデータのうちの必要なデータのみを出力する。以上のようにして、各ヘッド駆動基板220に波形番号WNおよび制御関連情報CIが設定される。
【0071】
各ヘッド駆動基板220は、設定された波形番号WNに基づいて波形DB230から波形データを取り出し、その取り出した波形データによって表される波形の駆動信号SDを、制御関連情報CIを参照しつつ、ジョブデータJDに含まれる印刷データに基づいてインクジェットヘッド241に与える。ところで、各ヘッド駆動基板220には、波形番号WNおよび制御関連情報CIがFIFO(First in First out)の態様で保持される。すなわち、各ヘッド駆動基板220は、実行対象の印刷ジョブが切り替わる際に、蓄積されているデータのうち最も早くから保持されているデータを用いて、対応するインクジェットヘッド241に駆動信号SDを与える。
【0072】
上述したように、各インクジェットヘッド241には、インクを吐出する多数のノズル250が含まれている。また、図4に示したように、各ノズル250に対応してインク室251とインク供給路252とピエゾ素子253とが設けられている。そして、ヘッド駆動基板220からインクジェットヘッド241に与えられた駆動信号SDに基づいてピエゾ素子253が変形することによって、ノズル250からインクが吐出される。
【0073】
なお、本実施形態においては、波形DB230によって波形データ保持部が実現され、n個のインクジェットヘッド241(1)~241(n)によってインク吐出部が実現され、ヘッド制御部210によって駆動制御部が実現され、n個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)によって駆動部が実現されている。また、ヘッド制御部210とn個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)とによって吐出制御部が実現されている。また、波形番号WNによって波形識別データが実現されている。
【0074】
<1.4.3 制御部の機能構成>
図10は、印刷制御装置100で印刷制御プログラムPが実行されることによって実現される制御部150の概略機能構成を示すブロック図である。但し、図10には、波形データ制御処理に関連のある構成要素のみを示している。制御部150は、解析部151と搬送速度特定部152と参照テーブル保持部153と波形番号取得部154とデータ送信部155とを含んでいる。制御部150には、オペレータによって指定された複数の印刷ジョブのそれぞれに対応する複数のジョブデータJDが順次に与えられる。
【0075】
解析部151は、ジョブデータJDに含まれる印刷データを解析することによって印字率RPを求める。なお、印刷データから印字率を求める手法については、公知の手法を用いることができる。搬送速度特定部152は、解析部151によって求められた印字率RPに基づいて、該当の印刷ジョブの実行に適した搬送速度CSを特定する。但し、搬送速度として具体的な速度が特定されるのではなく、「高速」または「低速」のいずれかの特定が行われる。本実施形態においては、予め閾値が設定され、印字率RPが閾値以上であれば搬送速度CSは「低速」に定められ、印字率RPが閾値未満であれば搬送速度CSは「高速」に定められる。このような設定が行われる理由は、印字率が高い場合に高速での印刷が行われると乾燥部26による印刷済み印刷用紙の乾燥やインクジェットヘッド241へのインクの供給が間に合わないことがあるからである。
【0076】
参照テーブル保持部153は、図9に示した参照テーブルRTを保持している。波形番号取得部154は、搬送速度特定部152によって特定された搬送速度CSに基づいて参照テーブルRTを参照することにより、インク色毎に波形番号WNを取得する。例えば、搬送速度特定部152によって特定された搬送速度CSが「低速」であれば、C色用の波形番号WNとして「1」が取得され、M色用の波形番号WNとして「3」が取得され、Y色用の波形番号WNとして「5」が取得され、K色用の波形番号WNとして「7」が取得される。波形DB230(図7参照)において搬送番号WNと波形データとが対応付けられているので、各印刷ジョブは、インク色毎に、波形番号WNを介して、波形DB230に格納されている波形データに関連付けられる。すなわち、実質的には、波形番号取得部154は各印刷ジョブをインク色毎に複数の波形データのうちのいずれかに関連付けている。
【0077】
データ送信部155は、印刷ジョブ毎に、ジョブデータJD、波形番号WN、および制御関連情報CIをヘッド制御部210へと送信する。
【0078】
なお、本実施形態においては、解析部151と搬送速度特定部152とによって属性取得部が実現され、解析部151によって印字率算出部が実現され、波形番号取得部154によって関連付け部が実現されている。
【0079】
<1.4.4 処理手順>
図11は、波形データ制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、この処理は、典型的には、印刷出力を実行する複数の印刷ジョブが選択された後、オペレータが印刷制御装置100の表示部123(図5参照)に表示された印刷開始ボタンを押下することによって開始される。
【0080】
波形データ制御処理の開始後、印刷データを解析して解析結果に基づいて印刷ジョブの属性を取得する処理が行われる(ステップS10)。詳しくは、このステップS10では、まず、解析部151によって、処理対象の印刷ジョブを構成する印刷データ(詳しくは、処理対象の印刷ジョブに対応するジョブデータJDに含まれる印刷データ)の解析が行われる。これにより、印字率RPが求められる。そして、その印字率RPに基づいて、搬送速度特定部152による搬送速度CSの特定が行われる。このように、本実施形態においては、このステップS10で、印刷ジョブの属性として搬送速度CS(高速または低速)が取得される。
【0081】
ステップS10の終了後、特定された搬送速度CSに基づいて波形番号取得部154が参照テーブルRTを参照することによって波形番号WNが取得され、その取得された波形番号WNと制御関連情報CIとがジョブデータJDに関連付けられた状態で保持される(ステップS20)。なお、本実施形態においては波形番号取得部154は搬送速度CSに基づいて波形番号WNを取得するが、波形番号取得部154が印字率RPに基づいて波形番号WNを取得するようにしても良い。すなわち、印字率RPが印刷ジョブの属性として取得されるようにしても良い。
【0082】
ステップS20の終了後、波形番号WNおよび制御関連情報CIとジョブデータJDとの関連付けが行われていない印刷ジョブ(換言すれば、ステップS10およびステップS20の処理が行われていない印刷ジョブ)が存在するか否かの判定が行われる(ステップS30)。判定の結果、関連付けが行われていない印刷ジョブが存在すれば処理はステップS10に戻り、関連付けが行われていない印刷ジョブが存在しなければ処理はステップS40に進む。なお、ステップS10~S30の処理は、印刷出力を実行する旨の選択がなされた印刷ジョブの数に等しい回数繰り返される。
【0083】
ステップS40では、次の実行対象(印刷対象)である印刷ジョブに対応するデータ(ジョブデータJD、波形番号WN、および制御関連情報CI)が印刷制御装置100からヘッド制御部210へと送信される。
【0084】
その後、ヘッド制御部210が、印刷制御装置100から送信されたデータ(ジョブデータJD、波形番号WN、および制御関連情報CI)をヘッド駆動基板220に転送する(ステップS50)。但し、本実施形態においてはn個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)が設けられているので、それらn個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)に対して、それぞれ対応するデータが送られる。これにより、各ヘッド駆動基板220に波形番号WNおよび制御関連情報CIが設定される。
【0085】
ステップS50の終了後、各ヘッド駆動基板220が、設定されている波形番号WNに基づいて波形DB230から波形データを取り出し、その取り出した波形データによって表される波形の駆動信号SDをインクジェットヘッド241に与える(ステップS60)。これにより、各インクジェットヘッド241では、与えられた駆動信号SDに基づいてノズル250からインクが吐出される。
【0086】
その後、全ての印刷ジョブについての処理(ステップS40~ステップS60の処理)が終了したか否かの判定が行われる(ステップS70)。判定の結果、未処理の印刷ジョブが存在すれば、処理はステップS40に戻り、未処理の印刷ジョブが存在しなければ、この波形データ制御処理は終了する。なお、ステップS40~S70の処理は、印刷出力を実行する旨の選択がなされた印刷ジョブの数に等しい回数繰り返される。
【0087】
本実施形態においては、ステップS20によって関連付けステップが実現され、ステップS60によって吐出制御ステップが実現されている。
【0088】
ここで、実行対象の印刷ジョブとして2つの印刷ジョブ(ジョブXおよびジョブY)が選択されていて、ジョブXの印字率RPは閾値以上であって、ジョブYの印字率RPは閾値未満であると仮定する。この場合、ジョブXの実行の際には、C色用のインクジェットヘッド241,M色用のインクジェットヘッド241,Y色用のインクジェットヘッド241,およびK色用のインクジェットヘッド241には、それぞれ、波形番号「1」,「3」,「5」,および「7」で特定される波形データによって生成される波形の駆動信号SDが与えられ、ジョブYの実行の際には、C色用のインクジェットヘッド241,M色用のインクジェットヘッド241,Y色用のインクジェットヘッド241,およびK色用のインクジェットヘッド241には、それぞれ、波形番号「0」,「2」,「4」,および「6」で特定される波形データによって生成される波形の駆動信号SDが与えられる。このように、各インクジェットヘッド241には、印刷ジョブの印字率RPに応じて、印刷に好適な波形の駆動信号SDが与えられる。
【0089】
なお、本実施形態においては、各印刷ジョブはインク色毎に複数の波形データのうちのいずれかに関連付けられる。これに関し、制御部150において各印刷ジョブがインクジェットヘッド241毎に複数の波形データのうちのいずれかに関連付けられるようにしても良い。この場合、n個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)は、それぞれ、インクジェットヘッド241(1)~241(n)に、制御部150で関連付けられた波形データに応じた波形の駆動信号SDを与える。また、制御部150において各印刷ジョブがノズル250毎に複数の波形データのうちのいずれかに関連付けられるようにしても良い。この場合、制御部150で関連付けられた波形データに応じた波形の駆動信号SDに基づき各ノズル250からインクが吐出されるよう、各インクジェットヘッド241には、それに含まれる複数のノズル250のそれぞれに対応する複数の駆動信号SDが与えられる。このようにノズル250毎に波形データの関連付けを行うことによって、複数の印刷ジョブ間の印刷品質のばらつきを小さくすることに加えて個々の印刷物の印刷品質を高めることが可能となる。
【0090】
<1.5 効果>
本実施形態によれば、インクジェット印刷装置10には、インクジェットヘッド241を駆動するための複数の駆動信号SDのそれぞれの波形を表す複数の波形データを保持する波形DB230が設けられている。また、印刷ジョブ毎に、印刷データに基づいて印字率RPが求められ、その印字率RPから印刷に適した搬送速度CSが特定される。そして、その特定された搬送速度CSに対応付けられている波形データが波形DB230から取り出され、その取り出された波形データによって生成される駆動信号SDに基づいてインクジェットヘッド241の各ノズル250からのインクの吐出が行われる。具体的には、印字率RPが閾値以上であれば、搬送速度CSは低速に設定されて低速での印刷に適した波形の駆動信号SDに基づいて各ノズル250からのインクの吐出が行われ、印字率RPが閾値未満であれば、搬送速度CSは高速に設定されて高速での印刷に適した波形の駆動信号SDに基づいて各ノズル250からのインクの吐出が行われる。これにより、印刷ジョブの印字率RPに関わらず、乾燥部26による印刷済み印刷用紙の乾燥やインクジェットヘッド241へのインクの供給が間に合わないことに起因する印刷品質の低下が抑制される。すなわち、印刷ジョブの印字率RPに関わらず、十分な品質の印刷物が得られる。その結果、従来に比較して再印刷の必要性が少なくなるので、印刷用紙PAやインクの消費量の削減が可能となる。このように、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することができる。以上のように、本実施形態によれば、印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることのできるインクジェット印刷装置10が実現される。
【0091】
<2.第2の実施形態>
<2.1 概要>
上記第1の実施形態においては、印刷ジョブの印字率RPに基づいて(より詳しくは、印刷ジョブの印字率RPに応じて定まる搬送速度CSが高速であるか低速であるかに基づいて)、インク色毎に印刷の際にインクジェットヘッド241に与える駆動信号SDの波形(駆動波形)が決定されていた。これに対して、本実施形態においては、印刷ジョブの実行によって印刷される画像の内容に基づいて、画像領域毎に、印刷の際にインクジェットヘッド241に与える駆動信号SDの波形が決定される。以下、主に、上記第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0092】
<2.2 構成>
図12は、本実施形態における波形DB230に格納されているデータについて説明するための図である。本実施形態における波形DB230には、印刷ジョブの実行によって印刷される画像の種類毎に印刷に適した波形を表す波形データが格納されている。上記第1の実施形態と同様、波形DB230の各レコードは波形番号と波形データとからなる。例えば、図12で符号74を付した矢印で示すレコードについては、波形番号は1であって、波形データは線の印刷に適した波形を表すデータである。
【0093】
図13は、本実施形態における参照テーブルについて説明するための図である。図13から把握されるように、この参照テーブルでは、画像の種類と波形番号とが対応付けられている。
【0094】
図14は、本実施形態における制御部150の概略機能構成を示すブロック図である。本実施形態における制御部150には、上記第1の実施形態における搬送速度特定部152に代えて画像種類特定部156が含まれている。
【0095】
解析部151は、上記第1の実施形態と同様、ジョブデータJDに含まれる印刷データを解析することによって印字率RPを求める。画像種類特定部156は、解析部151によって求められた印字率RPに基づいて、画像領域毎に画像の種類TYを特定する。参照テーブル保持部153は、図13に示した参照テーブルRTを保持している。波形番号取得部154は、画像領域毎に、画像種類特定部156によって特定された画像の種類TYに基づいて参照テーブルRTを参照することにより波形番号WNを取得する。例えば、ある画像領域に関し、画像種類特定部156によって特定された画像の種類TYが「絵柄」であれば、波形番号WNとして「2」が取得される。データ送信部155は、印刷ジョブ毎に、ジョブデータJD、波形番号WN、および制御関連情報CIをヘッド制御部210へと送信する。これに関し、本実施形態においては、各画像領域の位置を特定する情報、各画像領域に対応するノズル250を特定する情報、および各波形番号WNと画像領域の位置とを対応付ける情報が制御関連情報CIとしてヘッド制御部210に送信される。
【0096】
ここで、図15を参照しつつ、画像領域毎に画像の種類TYを特定することについて説明する。図15に関し、符号60を付した領域が1つの印刷ジョブに対応する印刷領域であると仮定する。また、印刷ジョブを構成する印刷データに基づき印刷領域が5つの画像領域601~605に区分されるものと仮定する。このとき、5つの画像領域601~605のそれぞれについて、該当の領域の印字率に基づいて画像の種類TYが特定される。画像の種類TYの特定が行われた結果、例えば、画像領域601の画像の種類が文字であって、画像領域602の画像の種類が絵柄であって、画像領域603の画像の種類が文字であって、画像領域604の画像の種類が線であって、画像領域605の画像の種類が絵柄であれば、画像領域601には波形番号「0」が関連付けられ、画像領域602には波形番号「2」が関連付けられ、画像領域603には波形番号「0」が関連付けられ、画像領域604には波形番号「1」が関連付けられ、画像領域605には波形番号「2」が関連付けられる。
【0097】
<2.3 波形データ制御処理>
図11を参照しつつ、本実施形態における波形データ制御処理の手順について説明する。波形データ制御処理の開始後、印刷データを解析して解析結果に基づいて印刷ジョブの属性を取得する処理が行われる(ステップS10)。本実施形態においては、印刷データの解析結果としての印字率RPに基づいて、画像領域毎の画像(印刷データに基づく印刷によって表される画像)の種類TYが印刷ジョブの属性として取得される。
【0098】
ステップS10の終了後、画像領域毎に、画像の種類TYに基づいて波形番号取得部154が参照テーブルRTを参照することによって波形番号WNが取得され、その取得された波形番号WNと制御関連情報CIとがジョブデータJDに関連付けられた状態で保持される(ステップS20)。ステップS30およびステップS40については、上記第1の実施形態と同様である。
【0099】
ステップS40の終了後、ヘッド制御部210が、印刷制御装置100から送信されたデータ(ジョブデータJD、波形番号WN、および制御関連情報CI)をヘッド駆動基板220に転送する(ステップS50)。これに関し、上記第1の実施形態においては、各印刷ジョブについて、1つのヘッド駆動基板220には1つの波形番号WNが送られていた。これに対して、本実施形態においては、各印刷ジョブについて、1つのヘッド駆動基板220に複数の波形番号WNが送られることもある。例えば、ある1つのヘッド駆動基板220に対応するインクジェットヘッド241からインクが吐出される領域が互いに異なる種類の画像が印刷される3つの画像領域に区分される場合、当該ヘッド駆動基板220にはヘッド制御部210から3つの波形番号WNが送信される。また、各ノズルがそれら3つの波形番号WNのいずれに対応するのかを特定する情報が、制御関連情報CIとして、ヘッド制御部210から当該ヘッド駆動基板220に送信される。
【0100】
ステップS50の終了後、各ヘッド駆動基板220が、画像領域毎に、設定されている波形番号WNに基づいて波形DB230から波形データを取り出し、その取り出した波形データによって表される波形の駆動信号SDをインクジェットヘッド241に与える(ステップS60)。これにより、各インクジェットヘッド241では、画像領域毎に、与えられた駆動信号SDに基づいてノズル250からインクが吐出される。ステップS70については、上記第1の実施形態と同様である。
【0101】
ここで、図15に関し、上述したように、画像領域601の画像の種類TYは文字であって、画像領域602の画像の種類TYは絵柄であって、画像領域603の画像の種類TYは文字であって、画像領域604の画像の種類TYは線であって、画像領域605の画像の種類TYは絵柄であると仮定する。この場合、画像領域601への印字が行われる際には、対応するインクジェットヘッド241に文字の印刷に適した波形の駆動信号SDが与えられ、画像領域602への印字が行われる際には、対応するインクジェットヘッド241に絵柄の印刷に適した波形の駆動信号SDが与えられ、画像領域603への印字が行われる際には、対応するインクジェットヘッド241に文字の印刷に適した波形の駆動信号SDが与えられ、画像領域604への印字が行われる際には、対応するインクジェットヘッド241に線の印刷に適した波形の駆動信号SDが与えられ、画像領域605への印字が行われる際には、対応するインクジェットヘッド241に絵柄の印刷に適した波形の駆動信号SDが与えられる。このように、各インクジェットヘッド241には、印刷される画像の種類TYに応じて、印刷に好適な波形の駆動信号SDが与えられる。
【0102】
なお、本実施形態においては画像の種類毎に波形データが用意されるが、インク色毎かつ画像の種類毎に波形データを用意するようにしても良い。この場合、ある画像領域への印字を行う4つの色のインクジェットヘッド241に対して、互いに異なる波形の駆動信号SDが与えられる。
【0103】
<2.4 効果>
本実施形態によれば、各印刷ジョブについて、印刷データに基づいて印字率RPが求められ、その印字率RPから画像領域毎に画像の種類TYが特定される。そして、その特定された画像の種類TYに対応付けられている波形データが波形DB230から取り出され、その取り出された波形データによって生成される駆動信号SDに基づいてインクジェットヘッド241の各ノズル250からのインクの吐出が行われる。これにより、画像の種類TY毎に画質を最適化することが可能となる。すなわち、画像の種類TYによって印刷品質が変化することが抑制される。以上のように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様、印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることのできるインクジェット印刷装置10が実現される。
【0104】
<3.第3の実施形態>
<3.1 概要>
本実施形態においては、インクジェットヘッド241に与えられる駆動信号SDの波形をより細かく調整するために、波形DB230に格納されている波形データを補正する波形データ補正部が設けられる。そして、波形データ補正部による補正後の波形データによって表される波形の駆動信号SDがインクジェットヘッド241に与えられる。
【0105】
<3.2 構成および動作>
本実施形態においては、図16に示すように、各ヘッド駆動基板220に波形データ補正部222が設けられる。それ以外の点については、上記第1の実施形態と同様である。波形データ補正部222は、波形DB230から取り出された波形データを補正することによって、実際にインクジェットヘッド241に与える駆動信号SDの波形を表す駆動用波形データを生成する。この波形データ補正部222による補正は、波形DB230から取り出された波形データに所定のゲインを乗ずることによって行われる。これに関し、本実施形態においては、各インクジェットヘッド241からのインクの吐出状態を考慮して、インクジェットヘッド241毎に予めゲインの値が定められる。各ヘッド駆動基板220では、ヘッド制御部210から送られた波形番号WNに基づいて波形DB230から波形データが取り出される。そして、波形データ補正部222は、その取り出された波形データにゲインを乗ずることによって駆動用波形データを生成する。ヘッド駆動基板220は、その生成された駆動用波形データによって表される波形の駆動信号SDをインクジェットヘッド241に与える。例えば、波形DB230から取り出された波形データに基づく駆動波形が図17で符号81を付した波形であると仮定する。この場合、ゲインの値が1.1であれば、図17で符号82を付した駆動波形を有する駆動信号SDがヘッド駆動基板220からインクジェットヘッド241に与えられ、ゲインの値が1.2であれば、図17で符号83を付した駆動波形を有する駆動信号SDがヘッド駆動基板220からインクジェットヘッド241に与えられる。このようにゲインを用いることによって、比較的容易に駆動信号SDの波形を調整することが可能となる。
【0106】
なお、ここではインクジェットヘッド241毎に予めゲインの値が定められる例を挙げて説明したが、これには限定されない。例えば、ノズル250毎に予めゲインの値が定められるようにしても良い。
【0107】
<3.3 効果>
本実施形態によれば、インクジェットヘッド241に与えられる駆動信号SDの波形をより細かく調整することができる。これにより、印刷品質のばらつきをより効果的に小さくすることが可能となる。また、インクジェットヘッド241毎のインクの吐出状態を考慮して駆動信号SDの波形が調整されることにより、印刷ジョブの内容に起因する印刷品質のばらつきのみならず複数のインクジェットヘッド241間でのインクの吐出状態の違いに起因する印刷品質のばらつきも小さくなる。
【0108】
<4.変形例>
以下、変形例について説明する。
【0109】
<4.1 第1の変形例>
制御部150において印刷ジョブの属性としてインク消費量(印刷データに基づく印刷によって消費されることが予測されるインク量)が取得される例を第1の変形例として説明する。一般に、印刷ジョブの実行によって消費されるインク量が多いほど、乾燥部26による印刷済み印刷用紙の乾燥が間に合わなくなる可能性やインクジェットヘッド241へのインクの供給が間に合わなくなる可能性が高くなる。それ故、本変形例のようにインク消費量に基づいて各印刷ジョブと波形データとの関連付けを行うことによっても、印刷品質のばらつきを小さくすることができる。
【0110】
ここで、インク消費量(1つのインク色についてのインク消費量)の求め方の一例を説明する。なお、この例では、インク吐出時のドットサイズとして3段階のサイズ(Sサイズ,Mサイズ,Lサイズ)が設けられているものと仮定する。この場合、階調値毎に、Sサイズ,Mサイズ,およびLサイズのそれぞれの出現率が定められる。その出現率の情報は、例えばテーブルの形式で保持される。各ドットサイズに対応する液滴量については、予め求められる。ここでは、Sサイズに対応する液滴量をP(S)と表し、Mサイズに対応する液滴量をP(M)と表し、Lサイズに対応する液滴量をP(L)と表す。
【0111】
1つの画素についてのインク消費量は、次のようにして求められる。まず、該当の画素の階調値に基づいて、Sサイズ,Mサイズ,およびLサイズのそれぞれの出現率が取得される。ここでは、Sサイズの出現率をR(S)と表し、Mサイズの出現率をR(M)と表し、Lサイズの出現率をR(L)と表す。そうすると、該当の画素についてのインク消費量Qは、次式(1)で算出される。
Q=P(S)×R(S)+P(M)×R(M)+P(L)×R(L) ・・・(1)
【0112】
上式(1)に基づいて全ての画素についてそれぞれインク消費量を算出した後、算出した全てのインク消費量の総和を求めることによって、印刷ジョブを実行したときの1つのインク色についてのインク消費量が得られる。
【0113】
以上のようにしてインク消費量を求めることができるので、インク消費量に基づいて各印刷ジョブを波形DB230に格納されている複数の波形データのうちの1以上の波形データに関連付けるようにすることもできる。
【0114】
<4.2 第2の変形例>
上記各実施形態においては、図6に示したように、波形DB230はn個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)に対して共通的に設けられていた。すなわち、1つの波形DB230が設けられていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。本変形例においては、図18に示すように、n個のヘッド駆動基板220(1)~220(n)に1対1で対応するようにn個の波形DB230(1)~230(n)が設けられる。すなわち、波形DB230は、ヘッド駆動基板220毎に設けられる。この構成においては、各波形DB230は、例えば、対応するヘッド駆動基板220に付属するメモリによって実現される。
【0115】
本変形例においては、各波形DB230には、対応するインクジェットヘッド241に応じた複数の波形データが格納される。例えば、C色のインクジェットヘッド列240C(図3参照)に含まれるインクジェットヘッド241を駆動するためのヘッド駆動基板220に対応する波形DB230には、複数の波形データとして、高速印刷に適したC色用の波形を表すデータと低速印刷に適したC色用の波形を表すデータとが格納される。
【0116】
本変形例によれば、複数のヘッド駆動基板220に共通の波形DB230を設ける構成(図6参照)に比べて、各ヘッド駆動基板220から波形DB230内のデータへのアクセスに要する時間が短くなる。これにより、処理時間が短縮される。
【0117】
<4.3 第3の変形例>
上記各実施形態においては、複数の印刷ジョブは1つずつ順次に実行されることを想定していた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。複数の印刷ジョブが同時に実行される場合にも本発明を適用することができる。これに関し、2つの印刷ジョブが同時に実行される例を第3の変形例として以下に説明する。
【0118】
ここでは、説明を簡単にするために、印刷用紙PAの左半分と印刷用紙PAの右半分とで異なる印刷ジョブに基づく印刷が行われるものと仮定する。従って、本変形例においては、印刷部24を構成する複数のインクジェットヘッド241が、図19で符号2401を付した部分に含まれるインクジェットヘッド241と図19で符号2402を付した部分に含まれるインクジェットヘッド241とに区分される。なお、便宜上、図19で符号2401を付した部分を「第1のインク吐出部」といい、図19で符号2402を付した部分を「第2のインク吐出部」という。すなわち、印刷部24は、印刷用紙PAの搬送方向とは直交する方向に並べて配置された第1のインク吐出部2401および第2のインク吐出部2402を含んでいる。第1のインク吐出部2401からのインクの吐出と第2のインク吐出部2402からのインクの吐出とは、異なる印刷ジョブに基づいて行われる。
【0119】
以上の前提の下、例えば、各印刷ジョブが、印刷画像を構成する主要な画像の種類TYに基づいて、波形DB230に格納されている複数の波形データのうちのいずれかに関連付けられる。これに関し、実行対象の印刷ジョブとして2つの印刷ジョブ(ジョブXおよびジョブY)が選択されていて、ジョブXに基づく印刷が印刷用紙PAの左半分に対して行われ、ジョブYに基づく印刷が印刷用紙PAの右半分に対して行われるというケースに着目する。このケースでは、ジョブXに基づく印刷は第1のインク吐出部2401に含まれるインクジェットヘッド241によって行われ、ジョブYに基づく印刷は第2のインク吐出部2402に含まれるインクジェットヘッド241によって行われる。ここで、このケースにおいて、ジョブXについては印刷画像を構成する主要な画像の種類TYが文字であって、ジョブYについては印刷画像を構成する主要な画像の種類TYが絵柄であると仮定する。なお、波形DB230については図12に示したようにデータが格納され、参照テーブルRTについては図13に示したようにデータが格納されていると仮定する。このとき、第1のインク吐出部2401に含まれるインクジェットヘッド241には、波形番号「0」で特定される波形データによって生成される波形の駆動信号SDが与えられ、第2のインク吐出部2402に含まれるインクジェットヘッド241には、波形番号「2」で特定される波形データによって生成される波形の駆動信号SDが与えられる。すなわち、第1のインク吐出部2401に含まれるインクジェットヘッド241には、文字の印刷に適した波形の駆動信号SDが与えられ、第2のインク吐出部2402に含まれるインクジェットヘッド241には、絵柄の印刷に適した波形の駆動信号SDが与えられる。
【0120】
上記の例によれば、文字を主とする画像を印刷対象とする印刷ジョブと絵柄を主とする画像を印刷対象とする印刷ジョブとが同時に実行される場合に、文字を主とする画像についても絵柄を主とする画像についても十分な印刷品質が得られる。
【0121】
以上のように、本変形例によれば、複数の印刷ジョブが同時に実行される場合にも、各印刷ジョブが適宜の波形データに関連付けられるので、印刷品質のばらつきを従来よりも小さくすることが可能となる。
【0122】
<5.その他>
本発明は、上記実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では印刷部24が4色のインクジェットヘッド列から構成されている例を挙げて説明したが、印刷部24が5色以上のインクジェットヘッド列から構成されている場合にも本発明を適用することができる。また、例えば、上記実施形態ではカラー印刷を行うインクジェット印刷装置10の構成を例示したが、モノクロ印刷を行うインクジェット印刷装置が採用されている場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
10…インクジェット印刷装置
20…印刷機構
24…印刷部
26…乾燥部
100…印刷制御装置
150…制御部
151…解析部
152…搬送速度特定部
153…参照テーブル保持部
154…波形番号取得部
155…データ送信部
200…印刷機本体
210…ヘッド制御部
220,220(1)~220(n)…ヘッド駆動基板
222…波形データ補正部
230,230(1)~230(n)…波形DB
241,241(1)~241(n)…インクジェットヘッド(印刷ヘッド)
250…ノズル
253…ピエゾ素子
JD…ジョブデータ
WN…波形番号
CI…制御関連情報
SD…駆動信号
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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