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特開2024-171772熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、及び放熱構造体
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  • 特開-熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、及び放熱構造体 図1
  • 特開-熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、及び放熱構造体 図2
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  • 特開-熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、及び放熱構造体 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171772
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、及び放熱構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241205BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088972
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 和人
(72)【発明者】
【氏名】波木 秀次
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA02
5E322AB11
5E322DB10
5E322DB12
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC07
5F136FA01
5F136FA51
5F136FA70
5F136FA71
5F136GA21
(57)【要約】
【課題】高い熱伝導性と信頼性を両立できる熱伝導シートの提供。
【解決手段】厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムと、前記空隙に充填された充填材と、を有し、前記充填材が、熱伝導材を含有する熱伝導シートである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムと、
前記空隙に充填された充填材と、を有し、
前記充填材が、熱伝導材を含有することを特徴とする熱伝導シート。
【請求項2】
前記熱伝導材の前記充填材に対する含有量が、50質量%以上である請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
前記熱伝導材の熱伝導度が、50W/(m・K)以上である請求項1又は2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記熱伝導材が、金属、金属粒子、金属板、枝状金属、金属ワイヤー、及び非金属素材の少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記熱伝導材が、金、銀、銅、及びニッケルの少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
前記多孔質フィルムが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリジメチルシロキサン誘導体、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、及び縮合フェノール骨格を有する両親媒性ポリマーの少なくともいずれかを含む請求項1又は2に記載の熱伝導シート。
【請求項7】
厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムに、熱伝導材を含有する充填材を充填する工程を含むことを特徴とする熱伝導シートの製造方法。
【請求項8】
発熱体と、請求項1又は2に記載の熱伝導シートと、放熱部材と、を有し、
前記発熱体と前記放熱部材との間に、前記熱伝導シートを有することを特徴とする放熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、及び放熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュール、イメージセンサー、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)などの電子機器の小型化、及び情報処理量増加に伴い、発熱の問題がより顕著化しており、発熱源からの熱拡散の重要性が増している。
各種電子機器におけるLSI等では、用いられている素子の発熱によりLSI自身が長時間高温に晒されると動作不良や故障につながる恐れがある。このため、LSI等の昇温を防ぐために熱伝導材料が広く用いられている。前記熱伝導材料は素子の発熱を拡散させるか、あるいは大気等の系外に放出させるための放熱部材に伝えることによって機器の昇温を防ぐことができる。
【0003】
これまでに、異方性黒鉛粒子を含む黒鉛層を積層し、各々の黒鉛層間が樹脂層で結合された熱伝導シートが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
また、熱伝導性絶縁フィラーと熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂の未硬化物および/または半硬化物とを含有し、25μm以上の厚みを有する熱伝導性絶縁シートが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-055021号公報
【特許文献2】特開2019-029269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の特許文献1に記載された熱伝導シートでは、黒鉛層が異方性を有し、更に樹脂層を含むため、熱経路が限定される点で、熱伝導性が不十分であるという問題がある。また、従来の特許文献2に記載された熱伝導性絶縁シートでは、絶縁性を有し、熱伝導性が十分でないという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高い熱伝導性と信頼性を両立できる熱伝導シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムと、
前記空隙に充填された充填材と、を有し、
前記充填材が、熱伝導材を含有することを特徴とする熱伝導シートである。
<2> 前記熱伝導材の前記充填材に対する含有量が、50質量%以上である請求項1に記載の熱伝導シートである。
<3> 前記熱伝導材の熱伝導度が、50W/(m・K)以上である前記<1>又は<2>に記載の熱伝導シートである。
<4> 前記熱伝導材が、金属、金属粒子、金属板、枝状金属、金属ワイヤー、及び非金属素材の少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱伝導シートである。
<5> 前記熱伝導材が、金、銀、銅、及びニッケルの少なくともいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱伝導シートである。
<6> 前記多孔質フィルムが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリジメチルシロキサン誘導体、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、及び縮合フェノール骨格を有する両親媒性ポリマーの少なくともいずれかを含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱伝導シートである。
<7> 厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムに、熱伝導材を含有する充填材を充填する工程を含むことを特徴とする熱伝導シートの製造方法である。
<8> 発熱体と、前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱伝導シートと、放熱部材と、を有し、
前記発熱体と前記放熱部材との間に、前記熱伝導シートを有することを特徴とする放熱構造体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高い熱伝導性と信頼性を両立できる熱伝導シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の熱伝導シートにおける多孔質フィルムの一例を示す概略上面図である。
図2図2は、本実施形態の熱伝導シートにおける多孔質フィルムの一例を示す概略断面図である。
図3図3は、本実施形態の熱伝導シートの一例を示す概略上面図である。
図4図4は、本実施形態の熱伝導シートの一例を示す概略断面図である。
図5図5は、本実施形態の放熱構造体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムと、前記空隙に充填された充填材と、を有し、前記充填材が、熱伝導材を含有する熱伝導シートである。
多孔質フィルムは、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有し、したがって、前記空隙に充填された充填材が三次元方向に連通することにより、熱伝導シートが厚み方向のみならず平面方向にも熱伝導性を有する。発熱体と放熱部材との間に、熱伝導シートを設けることで、発熱体からの発熱を、熱伝導シートを介して効率的に放熱することができる。
【0011】
<多孔質フィルム>
前記多孔質フィルムは、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムである。
前記多孔質フィルムとしては、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有するものであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、特開2017-088785号公報に記載された貫通孔、及び隔壁開口部を有するフィルム基材、特開2007-269923号公報に記載されたハニカム状多孔質フィルムなどが好適に挙げられる。
【0012】
前記多孔質フィルムの材料としては、特に制限はなく目的に応じ適宜選択することができるが、多孔質樹脂フィルムであることが好ましく、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリジメチルシロキサン誘導体、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア等の疎水性ポリマー;縮合フェノール骨格を有する両親媒性ポリマーの少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記多孔質フィルムの平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じ適宜儀選択することができるが、0.2μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上30μm以下が更に好ましい。
【0014】
一実施形態において、多孔質フィルムは、厚み方向に複数の貫通孔と、平面方向に隣り合う貫通孔の間の隔壁に隔壁開口部と、を有する連通した空隙を有することが好ましい。
複数の貫通孔は、一方の多孔質フィルム面に沿って規則的に配列されていることが好ましく、多孔質フィルムは、一方の多孔質フィルム面の垂直方向からみたときにハニカム状の構造を有することがより好ましい。
【0015】
隣り合う貫通孔の間の隔壁は、多孔質フィルムの厚み方向における中央に向かって厚みが漸減していることが好ましい。隔壁はフィルム基材の厚み方向における中央に隔壁開口部を有することが好ましい。
【0016】
前記隔壁開口部の割合としては、多孔質フィルムの熱伝導性及び膜強度を両立する観点で、5%以上100%以下が好ましく、10%以上95%以下がより好ましい。
【0017】
前記割合を測定する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔質フィルムを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより、観察面における隔壁毎の隔壁開口部の有無を観察し、任意の観察視野内における隔壁の数に対する隔壁開口部の個数(%)を算出することにより求めることができる。
或いは、多孔質フィルム又は熱伝導シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより、同様にして前記割合を求めることができる。
【0018】
前記貫通孔の開口率としては、多孔質フィルムの一方の面から見たときに、40%以上が好ましく、40%以上90%以下がより好ましく、45%以上80%以下が更に好ましく、50%以上70%以下が特に好ましい。
【0019】
前記貫通孔の面積当たりの個数としては、多孔質フィルムの一方の面から見たときに、400個/mm以上が好ましく、400個/mm以上400,000個/mm以下がより好ましく、1,000個/mm以上200,000個/mm以下が更に好ましく、2,000個/mm以上100,000個/mm以下が特に好ましい。
【0020】
前記開口率、及び面積当たりの個数は、走査型電子顕微鏡での画像を用いて求めることができる。前記開口率は、具体的には、その画像が長方形であるときの一辺をx、他辺をy、貫通孔開口部(図1の符号11a)の半径をr、画像の面積(xとyとの積であるxy)における貫通孔開口部の個数をn(個)とするときに、(πrn/xy)×100の式で求められる百分率により求めることができる。
【0021】
図1、及び図2は、本実施形態の熱伝導シートにおける多孔質フィルムの一例を示す概略上面図、及びそのA-A’断面における概略断面図である。
多孔質フィルム11は、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有し、樹脂部分が三次元網目状に形成される。空隙13は、多孔質フィルム11の厚み方向に貫通して多孔質フィルム11の各面に貫通孔開口部11aを有する貫通孔を有し、厚み方向に連通するとともに、平面方向に隣り合う貫通孔の間の隔壁11bに開口する隔壁開口部11cを介して、平面方向にも連通した空隙13である。
【0022】
複数の貫通孔開口部11aは、その大きさ、形状が概ね一定であり、多孔質フィルム11の上面を垂直方向から見たときに、図1に示すように、任意の1つの貫通孔開口部11aを中心にした6角形の各頂点に周囲の6個の貫通孔開口部11aが配された状態に、貫通孔開口部11aは密に配列している。多孔質フィルム11は、ハチの巣状、いわゆる、ハニカム状の構造を有するが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともあり、六角形、多角形、円形等のいずれの形状を有していてもよい。
【0023】
多孔質フィルム11は、複数の貫通孔及び貫通孔開口部11aにより、メッシュ状とされている。複数の貫通孔開口部11aは、多孔質フィルム11の一の面に沿って規則的に配列していることが好ましく、この例では、より具体的にはマトリクス状に、配列されている。貫通孔開口部11aの大きさ、及び形状は概ね一定である。
【0024】
隣り合う貫通孔と貫通孔との間の隔壁11bは、多孔質フィルム11において、図2に示されるように、多孔質フィルム11の一の面と他の面とのそれぞれから厚み方向での中央に向かうに従い厚みが漸減していることが好ましい。
【0025】
図2に示す多孔質フィルム11では、隔壁11bは、多孔質フィルム11の厚み方向での概ね中央に隔壁開口部11cが形成されており、これにより、隔壁11bを介して隣り合う貫通孔同士は多孔質フィルム11の内部で多孔質フィルム11の平面方向に繋がっている。ただし、隔壁11bは、隔壁開口部11cが形成されていない場合もあり、その場合には貫通孔は個々に独立している。
【0026】
<充填材>
前記充填材は、熱伝導材を含有し、更に必要に応じてその他の充填材を含有する。
【0027】
前記熱伝導材の前記充填材に対する含有量としては、熱伝導性の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上、70質量%以上、及び80質量%以上のいずれかがより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
【0028】
<<熱伝導材>>
前記熱伝導材の熱伝導度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導性の観点から、50W/(m・K)以上が好ましく、100W/(m・K)以上がより好ましく、200W/(m・K)以上が更に好ましい。
【0029】
前記熱伝導材としては、熱伝導性に優れる材料であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、金属粒子、金属板、枝状金属、金属ワイヤー等の金属材料;炭素材料、ホウ素化合物等の非金属材料などが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記金属材料の種類としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導性、安全性の観点から、アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、銅、亜鉛、錫が好ましく、金、銀、銅、ニッケルがより好ましい。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記金属材料の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナノ粒子、マイクロ粒子等の粒子;棒状、板状、デンドライト状などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記非金属素材としては、窒化ホウ素、粒子状炭素材料、繊維状炭素材料(炭素繊維)等の炭素材料などが挙げられる。
【0033】
<<その他の充填材>>
前記その他の充填材としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、界面活性剤、バインダ樹脂などが挙げられる。
【0034】
前記熱伝導シートの熱伝導度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導性の観点から、50W/(m・K)以上が好ましく、80W/(m・K)以上がより好ましく、110W/(m・K)以上が更に好ましい。
【0035】
前記熱伝導材の熱伝導度に対する、前記熱伝導シートの熱伝導度の比率(%)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。
【0036】
前記熱伝導シートの平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記多孔質フィルムの平均厚みと略同等であり、0.2μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上30μm以下が更に好ましい。
【0037】
後述する熱伝導シートの製造方法により熱伝導シートを製造することで、前記多孔質フィルムの空隙に隙間なく前記充填材を充填することができる。
一方で、前記熱伝導シートにおいて空隙が残存してボイド(気泡とも称する)が生じると、発熱体からの熱伝導により熱伝導シートが加熱され、ボイド(気泡)が膨張して破裂する、クラックが生じる等により熱伝導シートの信頼性を損なう恐れがある。
また、ボイド(気泡)は断熱性が高いため、得られる熱伝導シートの熱伝導性が低下する恐れがある。
【0038】
前記熱伝導シートが、ボイド(気泡)を含まないことを確認する方法としては、超音波映像装置(SAT)を用いて熱伝導シートにおけるボイドの有無を評価する方法;加熱処理(例えば、150℃で、500時間)後の熱伝導シートについて、超音波映像装置(SAT)を用いてボイドの有無を評価する方法;用いた熱伝導材の熱伝導度に対する、製造した熱伝導シートの熱伝導度の比率(%)を比較することにより、間接的にボイドの有無を推測する方法;これらの方法の組み合わせなどが挙げられる。
【0039】
ここで、本実施形態の熱伝導シートの一例を、図を用いて説明する。
図3、及び図4は、本実施形態の熱伝導シートの一例を示す概略上面図、及びそのA-A’断面における概略断面図である。
【0040】
図3~4に示す熱伝導シート10は、図1~2に示す多孔質フィルム11の空隙13に気泡(ボイド)を含むことなく充填材12が充填される。
空隙13は、多孔質フィルム11の厚み方向、及び平面方向に連通するため(図1~2参照)、空隙13を充填する充填材12も同様に、多孔質フィルム11の厚み方向、及び平面方向の三次元方向に一体的に形成される。そのため、熱伝導シート10が、発熱体と放熱体との間に介在して用いられた場合に、発熱体からの熱を多孔質フィルム11の厚み方向のみならず、平面方向にも伝導することができ、より効率的に熱伝導を行うことができる。
【0041】
前記熱伝導シートは、その表面に多孔質フィルムが露出しているため、例えば、発熱体や放熱部材などの他の部材と接着させる際に、密着性に優れ、空隙の発生を抑えることができる。したがって、加熱処理(高温試験)後の信頼性にも優れる。
前記熱伝導シートは、三次元の網目状につながった多孔質フィルムを有するため、応力を緩和できる。また、熱伝導材をバインダ樹脂で結着させた熱伝導シートで見られるような膜自体が脆くなり、高温試験等で膜が崩れるという問題が解消され、熱伝導シートの崩れを良好に防止することができる。
【0042】
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、充填工程を含み、更に必要に応じて、多孔質フィルム作製工程、研磨工程などのその他の工程を含む。
前記熱伝導シートの製造方法により、前記多孔質フィルムの空隙に隙間なく前記充填材を充填することができ、上述した本発明の熱伝導シートを好適に製造することができる。
【0043】
<充填工程>
前記充填工程は、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムに、熱伝導材を含有する充填材を充填する工程であり、充填手段により好適に実施できる。
前記充填材を前記多孔質フィルムの空隙に充填する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記充填材充填用の液体組成物を充填する方法;めっきにより金属を充填する方法;スパッタや蒸着により金属を充填する方法;などが挙げられる。
前記充填する方法としては、1回の充填処理を行ってもよく、複数回の充填処理を行ってもよく、複数の充填処理を組み合わせて行ってもよい。
【0044】
前記充填材充填用の液体組成物は、前記熱伝導材を含み、更に必要に応じて、その他の充填材、及び溶媒を含む。
前記組成物における前記熱伝導材の含有量としては、前記組成物の固形分に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上、70質量%以上、及び80質量%以上のいずれかがより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
【0045】
前記溶媒としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノールなどが挙げられる。
【0046】
前記組成物は、前記熱伝導材、更に必要に応じて、その他の充填材、及び溶媒を混合及び分散することにより調製することができる。
前記組成物としては、市販品を用いてもよく、例えば、金属粒子を含む金属ペーストとして、H 9890-6A(ナミックス株式会社製、熱硬化型導電性接着剤、銀ペースト)などが挙げられる。
【0047】
前記組成物を前記多孔質フィルムの空隙に充填する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、インクジェット法、ディスペンス法、スプレー塗布法、スリット塗布法、スピンコート法などが挙げられる。
【0048】
前記めっきにより金属を充填する方法としては、具体的には、導電体の表面に前記多孔質フィルムを設置し、めっきにより前記多孔質フィルムの空隙に金属を充填することができる。
前記めっきとしては、電解めっき、及び無電解めっき(化学めっき)のいずれでもよいが、スループット性の観点で、電解めっきが好ましい。
前記めっきにより充填する金属としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、ニッケル、金、銀、及び銅の少なくともいずれかを含むことが好ましく、ニッケル、金、銀、及び銅の少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0049】
前記導電体としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン、ニッケル、金、銀、銅等が設置されたウエハやガラス;有機フィルム等の基板などが挙げられる。
【0050】
<多孔質フィルムの作製工程>
前記充填工程で用いる多孔質フィルムとしては、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、前記多孔質フィルムの作製工程により作製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0051】
前記多孔質フィルムの作製工程としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の手順により、多孔質フィルム形成用組成物を基材上に塗布し、結露させ、蒸発させることにより製造することができる。
【0052】
前記多孔質フィルム形成用組成物は、一実施形態としては、前記疎水性ポリマー、及び溶媒を含有し、更に必要に応じて、両親媒性界面活性剤などのその他の成分を含有する。
また、前記多孔質フィルム形成用組成物は、他の実施形態としては、前記縮合フェノール骨格を有する両親媒性ポリマー、及び溶媒を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0053】
前記溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ノルマルヘキサンなどの疎水性有機溶媒が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記縮合フェノール骨格を有する両親媒性ポリマーとしては、下記一般式(I)、及び一般式(II)のいずれかで表される単位を有するポリマーであることが好ましい。
【0055】
【化1】
【0056】
前記一般式(I)中、Rは、R’及びR’Oのいずれかを表し、R’は、水素原子、及び炭素原子4~22個を有する脂肪族炭化水素基を表し、Aは、炭素数1~50個を有する脂肪族の二価基を表し、nは、0~6の整数を表し、Xは、-COOM、-SOM、及び-PO(OM)で表される酸性基、並びにその塩のいずれかを表し、Mは、水素原子、及び塩を形成しうるカチオンのいずれかを表す。
【0057】
【化2】
【0058】
前記一般式(II)中、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、及びハロゲン原子のいずれかを表し、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、及びアリール基のいずれかを表し、Yは、-COOM、-SOM、及び-PO(OM)で表される酸性基、並びにその塩のいずれかを表し、Mは、水素原子、及び塩を形成しうるカチオンのいずれかを表す。
【0059】
前記両親媒性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(1)で示す両親媒性ポリアクリルアミドなどが挙げられる。
【0060】
【化3】
【0061】
前記一般式(1)中、m及びnは、構成単位のモル比を示し、m:n=4:1であることが好ましい。
【0062】
前記組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0063】
前記基材としては、形成した多孔質フィルムと反応性を示さず、多孔質フィルムを剥離可能な基材であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基材、シリコン基材、金属基材などが挙げられる。
【0064】
基材上に前記多孔質フィルム形成用組成物を塗布して形成した塗布膜を結露させる処理(結露処理)としては、例えば、周辺の雰囲気の温度よりも低い温度となるように前記基材を介して塗布膜を冷却することで水滴を形成して結露させる方法;相対湿度50%~95%の気体を送風し、前記塗布膜の表面に結露を生成させる方法;などが挙げられる。
【0065】
複数の水滴の発生のタイミングを揃えたり、形成される水滴の大きさを均一に揃える観点では、周辺の雰囲気の温度よりも低い温度となるように前記基材を所定の温度に保持した上で、相対湿度50%~95%の気体(例えば、空気)を送風し、前記塗布膜の表面に結露を生成させる方法が好ましい。
【0066】
結露させた前記塗布膜の水滴と溶媒とを蒸発させる処理(蒸発処理)では、水滴よりも溶媒を早く蒸発させる。これにより、塗布膜中に水滴を沈み込ませ、沈み込んだ水滴を鋳型にして孔を形成する。この孔は、得られる多孔質フィルムにおける貫通孔となる。このため、溶媒としては、水よりも蒸発速度が大きいものを用いることが好ましい。ただし、水滴が蒸発し始めるタイミングは、溶媒のすべてが蒸発し終わった後でなくてもよい。また、形成された孔が維持される程度であれば、水滴の蒸発が完了した後にも多少の溶媒が多孔質フィルムに残っていてもよく、この場合には、残存している溶媒を、水滴の蒸発が完了した後に蒸発させればよい。
【0067】
なお、結露処理中に、水滴が塗布膜中に沈み込みを開始する場合もある。また、これらの結露処理、及び蒸発処理は、ハニカム状の構造をもつ多孔質フィルムの製造方法として周知である、結露法(Breath Figure法とも呼ばれる)の処理である。
【0068】
結露処理、及び蒸発処理を経て、前記塗布膜が自己組織化されることにより、厚み方向、及び平面方向に連通した空隙を有する多孔質フィルムが形成される。結露処理、及び蒸発処理を経た塗布膜を前記基材から剥離して、多孔質フィルムを得る。
【0069】
<研磨工程>
前記研磨工程は、前記充填材が充填された多孔質フィルムの表面を研磨する工程である。
前記充填材が充填された多孔質フィルムの表面を研磨する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を目的に応じて適宜選択することができる。
【0070】
前記研磨工程により、得られた熱伝導シートの表面に多孔質フィルムが露出することで、他の部材との密着性、及び熱伝導シートの信頼性に優れる。
【0071】
(放熱構造体)
本発明の放熱構造体は、発熱体と、上述した本発明の熱伝導シートと、放熱部材とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記放熱構造体は、前記発熱体と前記放熱部材との間に、前記熱伝導シートを有する。
前記放熱構造体は、必要に応じて、各構成部材間に接着層を更に有してもよい。
【0072】
前記発熱体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の電子部品などが挙げられる。
【0073】
前記放熱部材としては、電子部品(発熱体)の発する熱を放熱する構造体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、ベーパーチャンバー、ヒートパイプなどが挙げられる。
前記ヒートスプレッダは、前記電子部品の熱を他の部品に効率的に伝えるための部材である。前記ヒートスプレッダの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートスプレッダは、通常、平板形状である。
前記ヒートシンクは、前記電子部品の熱を空気中に放出するための部材である。前記ヒートシンクの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートシンクは、例えば、複数のフィンを有する。前記ヒートシンクは、例えば、ベース部と、前記ベース部の一方の面に対して非平行方向(例えば、直交する方向)に向かって延びるように設けられた複数のフィンを有する。
前記ヒートスプレッダ、及び前記ヒートシンクは、一般的に、内部に空間を持たない中実構造である。
前記ベーパーチャンバーは、中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。前記ベーパーチャンバーとしては、例えば、前記ヒートスプレッダを中空構造にしたもの、前記ヒートシンクを中空構造にしたような板状の中空構造体などが挙げられる。
前記ヒートパイプは、円筒状、略円筒状、又は扁平筒状の中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。
【0074】
ここで、図5は、放熱構造体としての半導体装置の一例を示す概略断面図である。本発明の熱伝導シート7は、半導体素子等の電子部品3の発する熱を放熱するものであり、図5に示すように、ヒートスプレッダ2の電子部品3と対峙する主面2aに固定され、電子部品3と、ヒートスプレッダ2との間に挟持されるものである。また、熱伝導シート1は、ヒートスプレッダ2とヒートシンク5との間に挟持される。熱伝導シート1は、本発明の熱伝導シートであってもよく、他の熱伝導シートであってもよい。
【0075】
ヒートスプレッダ2は、例えば、方形板状に形成され、電子部品3と対峙する主面2aと、主面2aの外周に沿って立設された側壁2bとを有する。ヒートスプレッダ2は、側壁2bに囲まれた主面2aに熱伝導シート1が設けられ、また主面2aと反対側の他面2cに熱伝導シート1を介してヒートシンク5が設けられる。ヒートスプレッダ2は、高い熱伝導率を有するほど、熱抵抗が減少し、効率よく半導体素子等の電子部品3の熱を吸熱することから、例えば、熱伝導性の良好な銅又はアルミニウムを用いて形成することができる。
【0076】
電子部品3は、例えば、BGA等の半導体素子であり、配線基板6へ実装される。またヒートスプレッダ2も、側壁2bの先端面が配線基板6に実装され、これにより側壁2bによって所定の距離を隔てて電子部品3を囲んでいる。
そして、ヒートスプレッダ2の主面2aに、本発明の熱伝導シート7が設けられることにより、電子部品3の発する熱を吸収し、ヒートシンク5より放熱する放熱部材が形成される。
【実施例0077】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0078】
(実施例1)
<熱伝導シートの製造>
<<多孔質フィルムの作製>>
特開2017-088785号公報の段落[0059]~[0061]に記載の方法に従って、以下の手順により、開口率が60%、平均厚みが20μmの多孔質フィルム1を作製した。
【0079】
まず、疎水性ポリマーとしてポリブタジエン(JSR株式会社製)と、界面活性剤としての下記一般式(1)で示す両親媒性ポリアクリルアミドとを、質量比10:1で混合し、この混合物をクロロホルムに溶解して、濃度が2mg/mLよりも濃い濃度の溶液を調製した。得られた溶液を、冷却板上に設置した支持体としてのガラス板に塗布することで塗布膜を形成した。この塗布膜に、高加湿にされた空気を供給した。この際、冷却板の温度は5℃に、加湿した空気の湿度は露点が20℃になるように、それぞれ調節した。塗布膜を乾燥して、ガラス板から剥離して、多孔質フィルム1を得た。
【0080】
【化4】
【0081】
顕微鏡を用いて得られた多孔質フィルム1を観察し、フィルム平均厚みが20μmであり、フィルムの厚み方向に貫通する貫通孔の開口率が60%であり、隣接する貫通孔の隔壁に開口部を有することを確認した。
【0082】
<<充填材の充填、及び熱伝導シートの製造>>
シリコーン系の離型フィルム(セラピール、東レ株式会社製)上に、得られた多孔質フィルム1を貼り付け、ディスペンサーSDP520(武蔵エンジニアリング株式会社製)を用いて、多孔質フィルム1の上部より充填材としてのH 9890-6A(ナミックス株式会社製、熱硬化型導電性接着剤、熱伝導材として銀を含む銀ペースト)を充填し、80℃のオーブンで3分間加熱した。次いで、離型フィルムを剥がし、200℃のオーブンで30分間加熱した後、冷却させ、表面を研磨し、金属を充填した熱伝導シート1を得た。
【0083】
(実施例2)
実施例1において、充填材としての銀ペーストを、特開2017-206755号公報の段落[0066]及び[0080]に記載の方法に従って、以下の手順により作製した銅ペーストに代えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の熱伝導シート2を得た。
【0084】
<銅ペーストの作製>
クエン酸銅(5mmol)とクエン酸(3.75mmol)、ブチルセロソルブ(3mL)を50mLのサンプルビンに入れ、アルミブロック式加熱撹拌機中、90℃で5分間混合した。得られた混合液にオクチルアミン(60mmol)を加え、さらに5分間加熱し、銅前駆体溶液とした。銅前駆体溶液を室温まで冷却した後、1-プロパノール 3mLに溶解させたヒドラジノエタノール(20mmol)を、サンプルビンの銅前駆体溶液に加え、5分間撹拌して、銅微粒子を作製した。
【0085】
得られた銅微粒子が85質量%となるようにターピネオールを加えて、溶液を調製し、遊星撹拌(2000rpm×2min)で混合して、銅ペーストを作製した。
【0086】
(実施例3)
チタンウエハ上に、接着剤を塗布して多孔質フィルム1を設置し、硫酸銅を用い電解メッキを実施し、多孔質フィルム1の空隙に銅メッキ膜を充填させた。次いで、スパッタTiエッチング液CPET-800(日邦産業株式会社製)を用い、チタンを除去し、表面を研磨し、熱伝導シート3を得た
【0087】
(比較例1)
アクリル系オリゴマー(サイクロマーP、ダイセル・オルネクス株式会社製)を用いて、実施例1で用いた充填材(銀ペースト)を混合し、実施例1の熱伝導シート1と同じ平均厚み、及び単位面積あたりの充填材の含有量となるように、塗布及び加熱を行い、比較例1の熱伝導シートaを得た。
【0088】
(比較例2)
比較例1において、充填材を実施例1で用いた充填材(銀ペースト)から実施例2で用いた充填材(銅ペースト)に代えたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の熱伝導シートbを得た。
【0089】
<評価>
次に、実施例1~3、及び比較例1~2について、以下のようにして、「熱伝導性」、及び「信頼性」を評価した。結果を表1に示した。
【0090】
<<熱伝導性>>
ASTM-D5470に準拠した方法で、二枚の円板状標準アルミニウムプレート(純度:99.99%、直径:約12.7mm、厚さ:約1.0mm)に上で作製した各熱伝導シートを挟み、圧力と温度を掛けて圧着し、標準アルミプレートに挟まれた状態での熱伝導シートの形成体を作製した。得られた形成体の熱抵抗をマイクロフラッシュ測定機(ネッチゲレイテバウ社製)で測定した。次いで、測定値からアルミプレート分の熱抵抗を差し引くことで熱伝導シートの熱抵抗を算出した。そして、事前に測定した熱伝導シートの平均厚みを熱抵抗で割ることで熱伝導シートの熱伝導率W/(m・K)を算出した。結果を表1に示す。
【0091】
<<信頼性>>
前記熱伝導性の評価にて作製した、標準アルミプレートに挟まれた状態での熱伝導シートの形成体について、超音波映像装置(SAT、装置名:FS300IIIHR、株式会社日立パワーソリューションズ製)を用いてボイドの有無の検査を行った。
具体的には、形成体を作製した後と、形成体を150℃で、500時間加熱処理した後で検査を行い、以下の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
〇:作製後、及び加熱処理後のいずれにおいても熱伝導シートのボイドが無い。
×:作製後に比べ、加熱処理後の熱伝導シートにおいてボイド量が増加した。
【0092】
【表1】
【符号の説明】
【0093】
1 熱伝導シート
2 ヒートスプレッダ
2a 主面
3 発熱体(電子部品)
3a 上面
5 ヒートシンク
6 配線基板
7 熱伝導シート
10 熱伝導シート
11 多孔質フィルム
11a 貫通孔開口部
11b 隔壁
11c 隔壁開口部
12 充填材
13 空隙
図1
図2
図3
図4
図5