(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171774
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ガスエンジン
(51)【国際特許分類】
F02F 1/24 20060101AFI20241205BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241205BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F02F1/24 J
F02M21/02 301R
F02M21/02 G
F02F7/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088974
(22)【出願日】2023-05-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発/水素燃料船の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 英生
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA04
3G024AA06
3G024BA18
3G024BA29
3G024DA14
3G024DA18
3G024DA30
3G024EA10
3G024FA02
3G024FA08
3G024GA27
3G024HA01
(57)【要約】
【課題】ガス蓄圧室及び作動油蓄圧室を備えたガスエンジンにおいて、その重量バランスに起因した揺れを抑制する。
【解決手段】エンジン1は、シリンダ16内で水素ガスを燃焼可能なガスエンジンである。このエンジン1は、シリンダライナ14と、シリンダ16の蓋となるシリンダカバー15と、作動油の油圧に応じて作動することで、シリンダ16内に水素ガスを噴射するガス噴射弁30と、水素ガスを蓄圧するガス蓄圧室34と、作動油の油圧に応じて作動することで、ガス蓄圧室34及びガス噴射弁30の接続を遮断するガスゲート弁35と、作動油を蓄圧する作動油蓄圧室41,45と、を備える。そして、ガス蓄圧室34及び作動油蓄圧室41,45のうちの少なくとも一方は、シリンダカバー15の内部に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内でガス燃料を燃焼可能なガスエンジンであって、
ピストンを往復移動させるシリンダライナと、
前記シリンダライナの上端に固定され、前記シリンダの蓋となるシリンダカバーと、
作動油の油圧に応じて作動することで、前記シリンダ内に前記ガス燃料を噴射するガス噴射弁と、
前記ガス燃料を蓄圧するガス蓄圧室と、
前記作動油の油圧に応じて作動することで、前記ガス蓄圧室及び前記ガス噴射弁の接続を遮断するガスゲート弁と、
前記作動油を蓄圧する作動油蓄圧室と、を備え、
前記ガス蓄圧室及び前記作動油蓄圧室のうちの少なくとも一方は、前記シリンダカバーの内部に配置される
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガス蓄圧室及び前記ガス噴射弁を接続するガス供給路を備え、
前記ガス燃料は、水素ガスであり、
前記ガス蓄圧室及び前記ガス供給路が、前記シリンダカバーの内部に配置される
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたガスエンジンにおいて、
前記シリンダカバーは、
該シリンダカバーを前記シリンダライナに締結するための締結具が挿入され、前記ピストンの中心軸まわりの周方向に沿って配置される複数の締結孔と
前記中心軸に直交する径方向において、前記複数の締結孔の外側に突出するフランジ部と、を有し、
前記ガス蓄圧室は、前記フランジ部の内部に配置され、
前記ガスゲート弁は、前記フランジ部に挿入される
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項4】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記シリンダカバーに設けられ、前記作動油の供給源が接続される供給源接続部と、
前記ガスゲート弁への前記作動油の供給を制御することで、該ガスゲート弁を開閉させるゲート制御弁と、
前記ガス噴射弁への前記作動油の供給を制御することで、該ガス噴射弁を開閉させる噴射制御弁と、
前記作動油蓄圧室は、
前記供給源接続部から前記ゲート制御弁に至る第1油路の途中に配置され、前記供給源から供給された前記作動油を、前記ゲート制御弁を介して前記ガスゲート弁に供給する第1蓄圧室と、
前記ゲート制御弁から前記噴射制御弁に至る第2油路の途中に配置され、前記ゲート制御弁を通過した前記作動油を、前記噴射制御弁を介して前記ガス噴射弁に供給する第2蓄圧室と、を有し、
前記第1蓄圧室、前記第2蓄圧室、前記第1油路及び前記第2油路が、いずれも、前記シリンダカバーの内部に配置される
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載されたガスエンジンにおいて、
前記第1蓄圧室の容積は、前記第2蓄圧室の容積よりも大きい
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項6】
請求項4に記載されたガスエンジンにおいて、
前記シリンダカバーは、
該シリンダカバーを前記シリンダライナに締結するための締結具が挿入され、前記ピストンの中心軸まわりの周方向に沿って配置される複数の締結孔と、
前記中心軸に直交する径方向において、前記複数の締結孔の外側に突出するフランジ部と、を有し、
前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室の少なくとも一方は、前記フランジ部の内部に配置され、
前記ゲート制御弁及び前記噴射制御弁は、前記フランジ部の一側面に取り付けられる
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項7】
請求項6に記載されたガスエンジンにおいて、
前記第2蓄圧室が、前記フランジ部の内部に配置され、
前記第2蓄圧室は、前記径方向において、前記ゲート制御弁及び前記噴射制御弁と、前記中心軸との間に配置されている
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項8】
請求項6に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガス蓄圧室が、前記フランジ部の内部に配置され、
前記シリンダは、所定方向に並ぶように複数設けられ、
前記シリンダの並び方向を第1方向とし、該第1方向及び前記中心軸に直交する方向を第2方向とすると、
前記フランジ部は、前記第1方向の寸法が、前記第2方向の寸法よりも長い矩形状に形成され、
前記ガス蓄圧室と、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室の少なくとも一方とは、前記第1方向に沿って延びるように区画される
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項9】
請求項8に記載されたガスエンジンにおいて、
前記シリンダカバーは、該シリンダカバーに排気弁を締結するための締結具が挿入され、前記ピストンの中心軸まわりの周方向に沿って配置される複数の第2締結孔を備え、
前記複数の第2締結孔は、前記径方向において、前記複数の締結孔の内側に配置され、
前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室は、双方とも前記フランジ部の内部に配置され、
前記ガス蓄圧室、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室は、前記第1方向に沿って延びるように区画され、
前記ガス蓄圧室、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室の少なくとも1つは、前記締結孔と前記第2の締結孔との間に区画される
ことを特徴とするガスエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガス燃料を燃焼可能なガスエンジンの一例として、燃料油及びガス燃料(ガス)の両方を供給することができるディーゼルエンジンが開示されている。具体的に、このディーゼルエンジンは、作動油(制御油)の圧力に応じて開閉するガス弁と、エンジン室内に配置され、ガス弁に接続されたガス蓄圧室(ガスアキュムレータ)と、ガス弁へのガスの供給を遮断する遮断弁と、を備えている。
【0003】
また、特許文献2には、ガス燃料を燃焼可能なガスエンジンの別例として、燃料油及びガス燃料(燃料ガス)の両方、又はガス燃料を燃焼させることができるディーゼル機関が開示されている。具体的に、このディーゼル機関は、各シリンダに対応して設けられたガスインジェクションバルブと、当該バルブに接続されたガス蓄圧室(アキュームレータ)と、ガス蓄圧室からガスインジェクションバルブに至る途中に設けられたガスゲートバルブと、ガス蓄圧室及びガスゲートバルブを収容する筐体(ガスアキュームレータボックス)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-209788号公報
【特許文献2】国際公開第2014/050269号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、ガス蓄圧室、及び作動油の蓄圧室(以下、「作動油蓄圧室」という)を、前記特許文献2に開示されているような筐体に収容するとともに、当該筐体を、各シリンダのシリンダカバーに取り付けることが考えられてきた。通常、各シリンダカバーの上面には、通常、ガス噴射弁、排気弁等が配置されることになる。そのため、各蓄圧室を収容した筐体を、各シリンダカバーの側面に取り付けることが通例とされてきた。
【0006】
しかしながら、ガス蓄圧室と作動油蓄圧室を収容した分、筐体は大型化及び高重量化する傾向にある。そのため、そうした筐体をシリンダカバーの側面に取り付けてしまっては、シリンダカバー、ひいてはシリンダの揺れ(特に、ピストンの中心軸を傾ける方向の揺れ)を招くため不都合である。
【0007】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガス蓄圧室及び作動油蓄圧室を備えたガスエンジンにおいて、その重量バランスに起因した揺れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、シリンダ内でガス燃料を燃焼可能なガスエンジンに係る。このガスエンジンは、ピストンを往復移動させるシリンダライナと、前記シリンダライナの上端に固定され、前記シリンダの蓋となるシリンダカバーと、作動油の油圧に応じて作動することで、前記シリンダ内に前記ガス燃料を噴射するガス噴射弁と、前記ガス燃料を蓄圧するガス蓄圧室と、前記作動油の油圧に応じて作動することで、前記ガス蓄圧室及び前記ガス噴射弁の接続を遮断するガスゲート弁と、前記作動油を蓄圧する作動油蓄圧室と、を備える。
【0009】
そして、前記第1の態様によれば、前記ガス蓄圧室及び前記作動油蓄圧室のうちの少なくとも一方は、前記シリンダカバーの内部に配置される。
【0010】
前記第1の態様によると、ガス蓄圧室及び作動油蓄圧室の少なくとも一方が、シリンダカバーの内部に配置される。シリンダカバーの内部に蓄圧室を区画することで、それらを収容した筐体をシリンダカバーの側面に取り付けるような構成と比べて、蓄圧室をピストンの中心軸に接近させることができる。これにより、重力に起因してガスエンジンに作用する力のモーメントを軽減し、ピストンの中心軸を傾ける方向の揺れを抑制することが可能になる。
【0011】
また、本開示の第2の態様によれば、前記ガスエンジンは、前記ガス蓄圧室及び前記ガス噴射弁を接続するガス供給路を備え、前記ガス燃料は、水素ガスであり、前記ガス蓄圧室及び前記ガス供給路が、前記シリンダカバーの内部に配置される、としてもよい。
【0012】
一般に、ガス蓄圧室は、ガス燃料の圧力変動を吸収するように機能する。この圧力変動が大きくなると想定される場合には、ガス蓄圧室へと速やかにガス燃料を供給したり、ガス蓄圧室自体を大ボリューム化したりすることが求められる。
【0013】
一方、水素ガスは、他のガスよりも密度が小さい。また、周知のように、ガスの流速は、そのガスの密度に対して負の相関関係を有している。そのため、前記第2の態様のようにガス燃料に水素ガスを用いることで、他のガスを用いた場合よりも容易に流速を高めることが可能となる。これにより、ガス蓄圧室の大ボリューム化を避けつつも、ガス燃料の圧力変動を十分に吸収させることができる。
【0014】
そして、ガス蓄圧室の大ボリューム化が避けられたことで、シリンダカバーの内部にガス蓄圧室を区画したとしても、そのシリンダカバーの大型化を可能な限り回避することができる。このことは、ガスエンジンの揺れを抑制する上で、好適に作用する。
【0015】
さらに、前記第2の態様によると、ガス蓄圧室及びガス供給路をシリンダカバーの内部に区画したことで、ガス蓄圧室とガス供給路との接続部もシリンダカバーの内部に区画されることになる。これにより、シリンダカバーの外部に配置される配管・ブロック等の部品点数を抑制するとともに、ガス燃料の漏洩リスクを抑制することができる。
【0016】
また、接続部をシリンダカバーの内部に配置したことで、従来必要とされていたシール部材が不要となる。これにより、ガスエンジンのメンテナンス性を高める上で有利になる。
【0017】
また、本開示の第3の態様によれば、前記シリンダカバーは、該シリンダカバーを前記シリンダライナに締結するための締結具が挿入され、前記ピストンの中心軸まわりの周方向に沿って配置される複数の締結孔と、前記中心軸に直交する径方向において、前記複数の締結孔の外側に突出するフランジ部と、を有し、前記ガス蓄圧室は、前記フランジ部の内部に配置され、前記ガスゲート弁は、前記フランジ部に挿入される、としてもよい。
【0018】
前記第3の態様によると、ガス蓄圧室が、フランジ部の内部に配置される。このようにレイアウトすることで、締結具等と干渉させることなく、シリンダカバーの内部にガス蓄圧室を区画することが可能となる。
【0019】
さらに、前記第3の態様のようにガスゲート弁をフランジ部に挿入することで、シリンダカバー外部の筐体に挿入する場合と比べて、ガスゲート弁をピストンの中心軸に接近させる上で有利になる。これにより、ピストンの中心軸を傾ける方向に作用する揺れを抑制する上で、さらに有利になる。
【0020】
さらに、ガスゲート弁をフランジ部に挿入することは、シリンダカバーにおける他の部位に挿入する場合と比べて、ガスゲート弁とガス噴射弁とを遠ざけることができる。これにより、ガスゲート弁とガス噴射弁との干渉を抑制する上で有利になる。
【0021】
また、本開示の第4の態様によれば、前記ガスエンジンは、前記シリンダカバーに設けられ、前記作動油の供給源が接続される供給源接続部と、前記ガスゲート弁への前記作動油の供給を制御することで、該ガスゲート弁を開閉させるゲート制御弁と、前記ガス噴射弁への前記作動油の供給を制御することで、該ガス噴射弁を開閉させる噴射制御弁と、前記作動油蓄圧室は、前記供給源接続部から前記ゲート制御弁に至る第1油路の途中に配置され、前記供給源から供給された前記作動油を、前記ゲート制御弁を介して前記ガスゲート弁に供給する第1蓄圧室と、前記ゲート制御弁から前記噴射制御弁に至る第2油路の途中に配置され、前記ゲート制御弁を通過した前記作動油を、前記噴射制御弁を介して前記ガス噴射弁に供給する第2蓄圧室と、を有し、前記第1蓄圧室、前記第2蓄圧室、前記第1油路及び前記第2油路が、いずれも、前記シリンダカバーの内部に配置される、としてもよい。
【0022】
前記第4の態様によると、第1及び第2蓄圧室と、第1及び第2油路とをシリンダカバーの内部に配置したことで、第1蓄圧室と第1油路との接続部、及び、第2蓄圧室と第2油路との接続部もシリンダカバーの内部に配置されることになる。これにより、シリンダカバーの外部に配置される配管・ブロック等の部品点数を抑制するとともに、作動油の漏洩リスクを抑制することができる。
【0023】
また、接続部をシリンダカバーの内部に配置したことで、従来必要とされていたシール部材が不要となる。これにより、ガスエンジンのメンテナンス性を高める上で有利になる。
【0024】
さらに、ガスゲート弁を開閉させるための作動油は、第1蓄圧室から供給される一方、ガス噴射弁を開閉させるための作動油は、第1蓄圧室から第2蓄圧室を介して供給されることになる。ガス噴射弁に作動油を供給するためには、噴射制御弁に加えてゲート制御弁を作動させる必要がある。ガス噴射弁に関して2重構造(2種類の制御弁を作動させる必要のある構造)を採用することで、ガス燃料に係る安全性をより確かなものとすることができる。
【0025】
また、本開示の第5の態様によれば、前記第1蓄圧室の容積は、前記第2蓄圧室の容積よりも大きい、としてもよい。
【0026】
第2蓄圧室は、ガス噴射弁の開閉のみに用いられる一方、第1蓄圧室は、ガスゲート弁及びガス噴射弁双方の開閉に用いられるようになっている。よって、前記第5の態様のように第1蓄圧室の容積を相対的に大きくすることで、作動油の圧力変動を、より確実に吸収させることができるようになる。
【0027】
また、本開示の第6の態様によれば、前記シリンダカバーは、該シリンダカバーを前記シリンダライナに締結するための締結具が挿入され、前記ピストンの中心軸まわりの周方向に沿って配置される複数の締結孔と、前記中心軸に直交する径方向において、前記複数の締結孔の外側に突出するフランジ部と、を有し、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室の少なくとも一方は、前記フランジ部の内部に配置され、前記ゲート制御弁及び前記噴射制御弁は、前記フランジ部の一側面に取り付けられる、としてもよい。
【0028】
前記第6の態様によると、第1及び第2蓄圧室の少なくとも一方が、フランジ部の内部に配置される。このようにレイアウトすることで、締結具等と干渉させることなく、シリンダカバーの内部に少なくとも一方の蓄圧室を区画することが可能となる。
【0029】
さらに、前記第6の態様のようにゲート制御弁及び噴射制御弁をフランジ部に取り付けることで、シリンダカバー外部の筐体に取り付けるような構成と比べて、ゲート制御弁及び噴射制御弁をピストンの中心軸に接近させる上で有利になる。これにより、ピストンの中心軸を傾ける方向の揺れを抑制する上で、さらに有利になる。
【0030】
さらに、ゲート制御弁及び噴射制御弁をフランジ部に取り付けることは、シリンダカバーにおける他の部位に取り付けるような構成と比べて、ゲート制御弁及び噴射制御弁と、ガス噴射弁とを遠ざける上で有利になる。このことは、ゲート制御弁及び噴射制御弁と、ガス噴射弁との干渉を抑制する上で有効である。
【0031】
また、本開示の第7の態様によれば、前記第2蓄圧室が、前記フランジ部の内部に配置され、前記第2蓄圧室は、前記径方向において、前記ゲート制御弁及び前記噴射制御弁と、前記中心軸との間に配置されている、としてもよい。
【0032】
一般に、前記第2油路のように制御弁に通じる油路は、他の油路に比して細くなる。そうした細い油路の形成は、相対的に太い油路の形成よりも困難なものとなる。シリンダカバーにおける第2油路の形成を容易なものとするためには、これを可能な限り短くすることが考えられる。
【0033】
これに対し、前記第7の態様によれば、第2蓄圧室は、少なくとも前記中心軸よりも、ゲート制御弁及び噴射制御弁に近接することになる。ここで、第2蓄圧室は、第2油路を介してゲート制御弁及び噴射制御弁に接続されるものである。ゆえに、第2蓄圧室とゲート制御弁及び噴射制御弁とを近接させた分、第2油路を短くすることができるようになる。これにより、シリンダカバーにおける第2油路の形成を、より容易なものとすることができる。
【0034】
また、本開示の第8の態様によれば、前記ガス蓄圧室が、前記フランジ部の内部に配置され、前記シリンダは、所定方向に並ぶように複数設けられ、前記シリンダの並び方向を第1方向とし、該第1方向及び前記中心軸に直交する方向を第2方向とすると、前記フランジ部は、前記第1方向の寸法が、前記第2方向の寸法よりも長い矩形状に形成され、
前記ガス蓄圧室と、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室の少なくとも一方とは、前記第1方向に沿って延びるように区画される、としてもよい。
【0035】
前記第8の態様によれば、ガス蓄圧室等の容積を可能な限り大きくしつつも、第2方向におけるフランジ部の突出量を抑制することができる。これにより、ガスエンジンの揺れの抑制と、ガス蓄圧室等による圧力変動の抑制と、を両立させる上で有利になる。
【0036】
また、本開示の第9の態様によれば、前記シリンダカバーは、該シリンダカバーに排気弁を締結するための締結具が挿入されかつ前記ピストンの中心軸まわりの周方向に沿って配置される複数の第2締結孔を備え、前記複数の第2締結孔は、前記径方向において、前記複数の締結孔の内側に配置され、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室は、双方とも前記フランジ部の内部に配置され、前記ガス蓄圧室、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室は、前記第1方向に沿って延びるように区画され、前記ガス蓄圧室、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室の少なくとも1つは、前記締結孔と前記第2の締結孔との間に区画される、としてもよい。
【0037】
前記第9の態様によれば、前記ガス蓄圧室、前記第1蓄圧室及び前記第2蓄圧室の少なくとも1つを、前記複数の締結孔と前記第2の締結孔との間を縫うように延ばす。これにより、蓄圧室同士の干渉を抑制しつつ、各蓄圧室の大容量化を実現することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本開示によれば、ガス蓄圧室及び作動油蓄圧室を備えたガスエンジンにおいて、その重量バランスに起因した揺れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、ガスエンジンの全体構成を例示する側面図である。
【
図2】
図2は、ガスエンジンの構成を例示する模式図である。
【
図3】
図3は、ガスエンジンの上部構造を模式的に例示する断面図である。
【
図4A】
図4Aは、ガスエンジンを含んだシステム全体の概略図である。
【
図4B】
図4Bは、シリンダ間の接続構造について説明する図である。
【
図5】
図5は、コントローラの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、シリンダカバーの周辺構成を例示する斜視図である。
【
図7】
図7は、シリンダカバーの周辺構成を例示する平面図である。
【
図8】
図8は、シリンダカバーの周辺構成を例示する側面図である。
【
図9】
図9は、シリンダカバーの構成を例示する斜視図である。
【
図10】
図10は、シリンダカバーの内部構造を例示する透過図である。
【
図11】
図11は、シリンダカバーの内部構造を例示するA-A断面図である。
【
図12】
図12は、シリンダカバーの構成を例示する底面図である。
【
図13】
図13は、シリンダカバー内の状態を説明するための図である。
【
図14】
図14は、シリンダカバー内の状態を説明するための図である。
【
図15】
図15は、シリンダカバー内の状態を説明するための図である。
【
図16】
図16は、従来のシリンダカバーを例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
図1は、ガスエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう)1の全体構成を例示する側面図である。また、
図2は、エンジン1の構成を例示する模式図である。その他、
図3は、エンジン1の上部構造を模式的に例示する断面図であり、
図4Aは、エンジン1を含んだシステム全体の概略図であり、
図4Bは、シリンダ16間の接続構造を例示する図であり、
図5は、コントローラ100の構成を示すブロック図である。
【0041】
<全体構成>
エンジン1は、そのシリンダ16内でガス燃料を燃焼可能なガスエンジンである。特に本実施形態では、ガス燃料は水素ガスである。なお、ガス燃料は、水素ガスには限定されない。メタンガス等、他のガス燃料を用いてもよい。また、エンジン1は、ガス燃料を単独燃焼させるものであってもよいし、そのガス燃料と他の油燃料を併用(例えば、水素ガスと重油の混焼)するものであってもよい。
【0042】
エンジン1は、ユニフロー掃気方式の2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等の大型の船舶に搭載される。このエンジン1は、搭載先の船舶を推進させるための主機関として用いられる。エンジン1の出力軸は、プロペラ軸(不図示)を介して船舶のプロペラ(不図示)に連結されている。エンジン1が運転することで、その出力がプロペラに伝達されて、船舶が推進するようになっている。
【0043】
<エンジンの主要構成>
図1~
図5に示されるように、エンジン1は、前述のシリンダ16を有する機関本体10と、ガス供給系統3と、油圧系統4と、機関本体10に接続されたコントローラ100と、を備えている。各シリンダ16は、ガス燃料を燃焼させるための燃焼室17を区画している。
【0044】
図1に示すように、シリンダ16は、所定方向に並ぶように複数(本実施形態では6つ)設けられている。以下、シリンダ16の並び方向を前後方向とし、この前後方向と、
図3に例示する中心軸(各シリンダ16に挿入されたピストン21の中心軸)Opと、に直交する方向を左右方向とする。前後方向は、本実施形態における「第1方向」の例示である。左右方向は、「第2方向」の例示である。
【0045】
以下、
図1の前側から順に、6つのシリンダ16を、「第1シリンダ16A」、「第2シリンダ16B」、「第3シリンダ16C」、「第4シリンダ16D」、「第5シリンダ16E」及び「第6シリンダ16F」と区別する場合がある(
図4Bも参照)。
【0046】
(1)機関本体10
機関本体10は、前述のように複数のシリンダ16を有している。機関本体10は、2ストローク式の機関であり、船舶の機関室に設置されている。なお、以下の説明は、6つのシリンダ16で共通である。
【0047】
図2に示すように、本実施形態に係る機関本体10は、そのロングストローク化を実現するべく、いわゆるクロスヘッド式の内燃機関として構成されている。すなわち、この機関本体10においては、下方からピストン21を支持するピストン棒22と、クランクシャフト23に連接される連接棒24と、がクロスヘッド25により連結されている。
【0048】
具体的に、機関本体10は、下方に位置する台板11と、台板11上に設けられる架構12と、架構12上に設けられるシリンダジャケット13と、シリンダライナ14と、シリンダカバー15と、を備えている。各シリンダ16は、シリンダジャケット13内に設けられている。機関本体10はまた、シリンダ16内に配置され、該シリンダ16内で往復運動するピストン21と、その往復運動に連動して回転する出力軸(例えばクランクシャフト23)と、を備えている。
【0049】
ここで、台板11は、エンジン1のクランクケースを構成するものであり、クランクシャフト23と、クランクシャフト23を回転自在に支持する軸受26と、を収容している。クランクシャフト23には、クランク27を介して連接棒24の下端部が連結されている。
【0050】
クロスヘッド25は、一対のガイド板28の間に配置されており、各ガイド板28に沿って上下方向に摺動する。すなわち、一対のガイド板28は、クロスヘッド25の摺動を案内する。クロスヘッド25は、クロスヘッドピン29を介してピストン棒22及び連接棒24と接続されている。クロスヘッドピン29は、ピストン棒22に対しては一体的に上下動するよう接続されている一方、連接棒24に対しては、連接棒24の上端部を支点として、連接棒24を回動させるように接続されている。
【0051】
シリンダジャケット13は、内筒として構成されかつピストン21を往復移動させるシリンダライナ14を支持している。詳しくは、シリンダライナ14の内部には、前述のピストン21が配置されている。シリンダライナ14は、ピストン21を、該シリンダライナ14の内壁に沿って上下方向に往復運動させる。シリンダライナ14の上端は、開口している。
【0052】
また、シリンダカバー15は、シリンダライナ14の上端に固定されている。シリンダカバー15は、シリンダライナ14とともにシリンダ16を構成している。シリンダカバー15は、シリンダライナ14の上端を閉塞することで、シリンダ16の蓋となる。
【0053】
また、シリンダカバー15には、不図示の動弁装置によって作動される排気弁18が設けられている。排気弁18は、シリンダライナ14及びシリンダカバー15から構成されるシリンダ16、並びに、ピストン21の頂面とともに燃焼室17を区画している。排気弁18は、その燃焼室17と排気管19との間を開閉するものである。排気管19は、燃焼室17に通じる排気口を有しており、排気弁18は、その排気口を開閉するように構成されている。
【0054】
また、
図2、
図3及び
図4Aに示すように、シリンダカバー15には、燃焼室17に水素ガスを供給するための1つ又は複数のガス噴射弁30が設けられている。このガス噴射弁30は、作動油の油圧に応じて作動することで、シリンダ16内に水素ガスを噴射する。
【0055】
本実施形態では、ガス噴射弁30は、シリンダ16毎に2本ずつ設けられており、それぞれ、燃焼室17の室内に臨むような姿勢で設けられている。各ガス噴射弁30は、その先端に噴射口(不図示)を有しており、その噴射口から水素ガスを噴射するように構成されている。以下、2つのガス噴射弁30のうちの一方を「第1ガス噴射弁30a」とし、他方を「第2ガス噴射弁30b」とする場合がある。
【0056】
図4Aに示すように、各ガス噴射弁30は、それぞれ、ガス供給系統3に接続されている。このガス供給系統3から各ガス噴射弁30に、水素ガスが供給されるようになっている。水素ガスが供給された状態で各ガス噴射弁が開くことで、燃焼室17内に水素ガスが供給される。
【0057】
ここで、各ガス噴射弁30への水素ガスの供給、及び、各ガス噴射弁30の開閉は、作動油の油圧に応じて実行される。この油圧は、対応する電磁弁(後述のゲート制御弁43、第1噴射制御弁47a及び第2噴射制御弁47b)によって制御される。コントローラ100から入力された制御信号に従って各電磁弁が作動することで、各ガス噴射弁30に水素ガスが供給されたり、各ガス噴射弁30が開閉したりするようになっている。
【0058】
各ガス噴射弁30は、燃焼室17に水素ガスを供給し、燃焼室17内で燃焼を生じさせる。その燃焼によって、ピストン21が上下方向に往復運動をする。このとき、排気弁18が作動して燃焼室17が開放されると、燃焼によって生じた排ガスが排気管19に押し出されるとともに、不図示の掃気ポートから燃焼室17に新気が導入される。
【0059】
また、燃焼によってピストン21が往復運動をすると、ピストン21とともにピストン棒22が上下方向に往復運動をする。これにより、ピストン棒22に連結されたクロスヘッド25が、上下方向に往復運動をする。このクロスヘッド25は、連接棒24の回動を許容するようになっており、クロスヘッド25との接続部位を支点として、連接棒24を回動させる。そして、連接棒24の下端部に接続されるクランク27がクランク運動し、そのクランク運動に応じてクランクシャフト23が回転する。こうして、クランクシャフト23は、ピストン21の往復運動を回転運動に変換し、プロペラ軸とともに船舶のプロペラを回転させる。これにより、船舶が推進する。
【0060】
(2)ガス供給系統3
図4Aに示すように、ガス供給系統3は、前述した2つのガス噴射弁(Gas Injection Valve:GIV)30と、ガス供給モジュール31と、ガス蓄圧室34と、ガスゲート弁(Gas Gate Valve:GGV)35と、第1ガス供給路36と、第2ガス供給路37と、第3ガス供給路38と、ガスパイプ39と、を有している。
【0061】
このうち、ガス供給モジュール31は、水素タンク31aと、ガスバルブトレイン(Gas Valve Train:GVT)31bと、を有している。
【0062】
水素タンク31aは、水素ガスを貯留する。水素タンク31aに貯留された水素ガスは、不図示のポンプが作動することで、同じく不図示の調温機構によって適温に調整された上、GVT31bに供給される。
【0063】
GVT31bは、種々の配管(不図示)と、各配管を開閉する電磁弁(不図示)と、を有している。GVT31bの各電磁弁は、コントローラ100と電気的に接続されており、コントローラ100から入力される制御信号にしたがって作動する。このGVT31bは、ガスパイプ39を介してガス蓄圧室34と接続されている。GVT31bが各電磁弁を開閉することで、ガス蓄圧室34、ひいては各ガス噴射弁30への水素ガスの供給が制御される。
【0064】
ガス蓄圧室34は、各ガス噴射弁30に供給される水素ガスを蓄圧する。ガス蓄圧室34には、ガスパイプ39の下流端と、第1ガス供給路36の上流端と、が接続されている。このうち、ガスパイプ39の下流端は、開口部、穴等からなるガス流入口32を介してガス蓄圧室34に接続される(ガス流入口32の詳細は後述)。ガス蓄圧室34は、ガスパイプ39を介して供給された水素ガスを、第1ガス供給路36に送り込む。
【0065】
なお、本実施形態に係るガスパイプ39は、可撓性を有する素材によって構成されており、
図1に示すように撓み変形させることができる。
【0066】
第1ガス供給路36の下流端は、第2ガス供給路37と、第3ガス供給路38と、に分岐している。第2ガス供給路37は、第1ガス噴射弁30aに接続されており、第3ガス供給路38は、第2ガス噴射弁30bに接続されている。第1ガス供給路36、第2ガス供給路37及び第3ガス供給路38は、ガス蓄圧室34と2つのガス噴射弁30とを接続する「ガス供給路」を構成している。
【0067】
ガスゲート弁35は、作動油の油圧に応じて作動することで、ガス蓄圧室34と第1及び第2ガス噴射弁30a,30bとの接続を遮断する。ガスゲート弁35は、ガス蓄圧室34から第1及び第2ガス噴射弁30a,30bに至る中途の部位(詳細には第1ガス供給路36)に配置されており、その部位を開閉する。
【0068】
なお、ガス供給系統3を構成する各要素のうち、ガス噴射弁30、ガス蓄圧室34、ガスゲート弁35、第1ガス供給路36、第2ガス供給路37及び第3ガス供給路38は、シリンダ16毎に設けられている。一方、ガス供給モジュール31は、シリンダ16単位ではなく、エンジン1毎に設けられている。
【0069】
ここで、第1シリンダ16Aのガス蓄圧室34を第1ガス蓄圧室34Aとし、第2シリンダ16Bのガス蓄圧室34を第2ガス蓄圧室34Bとし、第3シリンダ16Cのガス蓄圧室34を第3ガス蓄圧室34Cとし、第4シリンダ16Dのガス蓄圧室34を第4ガス蓄圧室34Dとし、第5シリンダ16Eのガス蓄圧室34を第5ガス蓄圧室34Eとし、第6シリンダ16Fのガス蓄圧室34を第6ガス蓄圧室34Fとする。
【0070】
この場合、
図4Bに示すように、ガス供給モジュール31は、第1のガスパイプ39を介して第1ガス蓄圧室34Aに接続され、第1ガス蓄圧室34Aは、第2のガスパイプ39を介して第2ガス蓄圧室34Bに接続され、第2ガス蓄圧室34Bは、第3のガスパイプ39を介して第3ガス蓄圧室34Cに接続され、第3ガス蓄圧室34Cは、第4のガスパイプ39を介して第4ガス蓄圧室34Dに接続され、第4ガス蓄圧室34Dは、第5のガスパイプ39を介して第5ガス蓄圧室34Eに接続され、第5ガス蓄圧室34Eは、第6のガスパイプ39を介して第6ガス蓄圧室34Fに接続されるようになっている。
【0071】
このように構成することで、ガスパイプ39自身のボリュームが、水素ガスの蓄圧室として機能することになる。このことは、第1ガス蓄圧室34A~第6ガス蓄圧室34Fそれぞれの容積の抑制に資する。
【0072】
(3)油圧系統4
図4Aに示すように、油圧系統4は、供給源接続部40と、第1蓄圧室41と、第1油路42と、ゲート制御弁43と、第2油路44と、第2蓄圧室45と、噴射制御弁47と、第3油路48と、供給源49と、を有している。
【0073】
なお、噴射制御弁47は、ガス噴射弁30と同数設けられている。すなわち、本実施形態に係る噴射制御弁47は、シリンダ16毎に例えば2本ずつ設けられている。以下、2つの噴射制御弁47のうちの一方を「第1噴射制御弁47a」とし、他方を「第2噴射制御弁47b」とする場合がある。
【0074】
供給源接続部40は、ガスゲート弁35及び各ガス噴射弁30に供給される作動油(各弁を作動させるための油圧を生じる作動油)の供給源49に接続される。詳細は後述するが、本実施形態に係る供給源接続部40は、シリンダカバー15に設けられている。供給源接続部40を介して、供給源49と、第1油路42の上流端とが接続されるようになっている。
【0075】
第1油路42は、供給源49から供給された作動油が流れる通路である。この第1油路42は、供給源接続部40からゲート制御弁43に至る油路として機能する。すなわち、第1油路42の上流端は供給源接続部40に接続されており、第1油路42の下流端はゲート制御弁43に接続されている。
【0076】
ゲート制御弁43は、ガスゲート弁35への作動油の供給を制御することで、該ガスゲート弁35を開閉させる。より詳細には、ゲート制御弁43は、いわゆる電磁弁として構成されており、
図5に示すようにコントローラ100と電気的に接続されている。ゲート制御弁43は、コントローラ100からの電気信号を受けて開閉する。
【0077】
第1蓄圧室41は、ゲート制御弁43及び各噴射制御弁47に供給される作動油を蓄圧する。この第1蓄圧室41は、第1油路42の途中に配置されている。第1蓄圧室41は、供給源49から供給された作動油を、ゲート制御弁43を介して(より詳細には、第1油路42及びゲート制御弁43と、後述の第2蓄圧室45、共通路44a及び第3分岐路44dとを介して)ガスゲート弁35に供給する。
【0078】
第2油路44は、ゲート制御弁43を通過した作動油が流れる通路である。この第2油路44は、ゲート制御弁43から各噴射制御弁47に至る油路として機能する。すなわち、第2油路44の上流端はゲート制御弁43に接続されており、第1油路42の下流端は、各噴射制御弁47に接続されている。
【0079】
また、本実施形態では噴射制御弁47が2つ設けられていることから、第2油路44は、ゲート制御弁43に接続される1つの共通路44aと、該共通路44aの下流端から分岐する第1分岐路44b及び第2分岐路44cと、を有している。第1分岐路44bは第1噴射制御弁47aに接続され、第2分岐路44cは第2噴射制御弁47bに接続される。また、第2油路44からは、ガスゲート弁35に接続される第3分岐路44dも分岐している。この第3分岐路44dを介して供給される作動油の油圧が、ガスゲート弁35を作動させるようになっている。
【0080】
噴射制御弁47は、ガス噴射弁30への作動油の供給を制御することで、該ガス噴射弁30を開閉させる。ここで、第1噴射制御弁47aは、第1ガス噴射弁30aへの作動油の供給を制御することで、該第1ガス噴射弁30aを開閉させるとともに、第2噴射制御弁47bは、第2ガス噴射弁30bへの作動油の供給を制御することで、該第2ガス噴射弁30bを開閉させる。
【0081】
より詳細には、各噴射制御弁47は、いわゆる電磁弁として構成されており、
図5に示すようにコントローラ100と電気的に接続されている。各噴射制御弁47は、コントローラ100からの電気信号を受けて開閉する。
【0082】
第2蓄圧室45は、各ガス噴射弁30に供給される作動油を蓄圧する。この第2蓄圧室45は、第2油路44の途中に配置されている。第2蓄圧室45は、ゲート制御弁43を通過した作動油を、各噴射制御弁47を介して(より詳細には、第2油路44及び各噴射制御弁47と、後述の第3油路48とを介して)各ガス噴射弁30に供給する。第2蓄圧室45は、前述の第1蓄圧室41とともに、作動油を蓄圧する「作動油蓄圧室」を構成している。
【0083】
なお、
図4Aに示す例では、第2蓄圧室45は、共通路44aと、第1分岐路44b、第2分岐路44c及び第3分岐路44dとの接続部(分岐部)を構成しているが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、後述の変形例のように、共通路44aと第3分岐路44dとの分岐部を、第2蓄圧室45の上流側の第2油路44に配置してもよい。
【0084】
第3油路48は、各噴射制御弁47を通過した作動油が流れる通路である。この第3油路48は、各噴射制御弁47から各ガス噴射弁30に至る油路として機能する。
【0085】
ここで、第3油路48は、第1ガス噴射弁30aを作動させるための第4分岐路48aと、第2ガス噴射弁30bを作動させるための第5分岐路48bと、によって構成されている。すなわち、第4分岐路48aの上流端は、第1噴射制御弁47aに接続されており、第4分岐路48aの下流端は、第1ガス噴射弁30aに接続されている。同様に、第5分岐路48bの上流端は、第2噴射制御弁47bに接続されており、第5分岐路48bの下流端は、第2ガス噴射弁30bに接続されている。
【0086】
なお、油圧系統4を構成する各要素のうち、少なくとも供給源接続部40と、第1蓄圧室41と、第1油路42と、ゲート制御弁43と、第2油路44と、第2蓄圧室45と、噴射制御弁47と、第3油路48は、シリンダ16毎に設けられている。
【0087】
(4)コントローラ100
コントローラ100は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入出力デバイスを有している。コントローラ100には、種々のセンサ類(不図示)と、テレグラフ101とが接続されている。
【0088】
コントローラ100は、例えばテレグラフ101が操作されたときに、センサ類から入力された信号に基づいて制御信号を生成する。コントローラ100は、生成した制御信号を、例えば、GVT31b、ゲート制御弁43、第1噴射制御弁47a及び第2噴射制御弁47bに入力する。
【0089】
例えば、コントローラ100がゲート制御弁43を開閉することで、ガスゲート弁35への作動油の供給が制御される。この制御によってガスゲート弁35が開くと、各ガス噴射弁30に水素ガスが供給される。
【0090】
そして、コントローラ100が第1及び第2噴射制御弁47a、47bを開閉することで、第1ガス噴射弁30aへの作動油の供給と、第2ガス噴射弁30bへの作動油の供給とが制御される。例えば、これらの制御によって第1ガス噴射弁30aが開くと、その噴射口から、燃焼室17内に水素ガスが噴射される。
【0091】
このように、コントローラ100は、ゲート制御弁43、第1噴射制御弁47a及び第2噴射制御弁47bをそれぞれ開閉させることで、ガスゲート弁35、第1ガス噴射弁30a及び第2ガス噴射弁30bを介して水素ガスの供給を制御することができる。
【0092】
<シリンダカバーの詳細>
そして、本実施形態に係るエンジン1では、ガス蓄圧室34及び作動油蓄圧室(第1及び第2蓄圧室41,45)の少なくとも一方が、シリンダカバー15の内部に配置(区画)されるようになっている。
【0093】
具体的に、
図3及び
図4Aに示す例では、ガス蓄圧室34と第1及び第2蓄圧室41,45とが、いずれも、シリンダカバー15の内部に配置されている。
【0094】
また、
図3及び
図4A等に例示するように、ガス供給路としての第1ガス供給路36、第2ガス供給路37及び第3ガス供給路38、並びに、それらのガス供給路とガス蓄圧室34との接続部も、シリンダカバー15の内部に配置(区画)されている。
【0095】
また、
図3及び
図4A等に例示するように、第1油路42及び第2油路44、並びに、それらの油路と第1及び第2蓄圧室41,45との接続部もまた、シリンダカバー15の内部に配置(区画)されている。
【0096】
以下、本実施形態に係るシリンダカバー15及びその周辺構成と、ガス供給系統3及び油圧系統4を構成する各要素と、の関係について詳細に説明する。その後、本実施形態における水素ガス及び作動油の流れについて、時系列の順に詳細に説明する。なお、以下の説明は、特段の記載を除き、複数のシリンダ16の各々について共通である。
【0097】
(1)シリンダカバー15の具体的構成
図6は、シリンダカバー15の周辺構成を例示する斜視図であり、
図7は、シリンダカバー15の周辺構成を例示する平面図であり、
図8は、シリンダカバー15の周辺構成を例示する側面図である。
【0098】
また、
図9は、シリンダカバー15の構成を例示する斜視図であり、
図10は、シリンダカバー15の内部構造を例示する透過図であり、
図11は、シリンダカバー15の内部構造を例示するA-A断面図であり、
図12は、シリンダカバーの構成を例示する底面図である。
【0099】
図6~
図9に示すように、シリンダカバー15は、前後方向及び左右方向に沿って平坦な上面15aを有する厚板状の金属ブロックによって形成されている。このシリンダカバー15は、複数(図例では6つ)の第1締結孔15bと、複数(図例では3つ)の第2締結孔15cと、を有している。複数の第1及び第2締結孔15b,15cは、いずれも前記上面15aに開口している。
【0100】
また、シリンダカバー15の中央部には、ピストン21の中心軸Opと同軸の貫通孔15dが形成されている。この貫通孔15dは、円形状の横断面を有しており、シリンダカバー15を厚み方向(上下方向)に貫通している。
【0101】
ここで、複数の第1締結孔15bには、シリンダカバー15をシリンダライナ14に締結するための締結具(例えばボルト)が挿入される。複数の第1締結孔15bは、前記中心軸Opまわりの周方向に沿って、等間隔で配置されている。各第1締結孔15bは、シリンダカバー15を厚み方向(上下方向)に貫通している。
【0102】
一方、複数の第2締結孔15cには、排気弁18をシリンダカバー15に締結するための締結具(例えばボルト)が挿入される。複数の第2締結孔15cは、前記周方向に沿って、等間隔で配置されている。各第2締結孔15cは、前記中心軸Opに直交する径方向において、各第1締結孔15bの内側(径方向内側)かつ、貫通孔15dの外側(径方向外側)に配置されている。
【0103】
また、シリンダカバー15は、左右方向において非対称な形状を有している。具体的に、シリンダカバー15は、左右方向の一側(右側)に突出した半円部15nと、左右方向の他側(左側)に突出したフランジ部15eと、を有している。半円部15nは、半円状にカーブした右側面を有している。その右側面における半円の中心軸(円弧の中心)は、ピストン軸Opと略一致している。
【0104】
一方、フランジ部15eは、前記径方向において、複数の第1締結孔15bの外側に突出している。複数の第1締結孔15b及び複数の第2締結孔15cは、前記半円部15nに開口している。
【0105】
詳しくは、フランジ部15eは、前後方向の寸法D1が、左右方向の寸法D2よりも長い矩形状に形成されている。より詳細には、フランジ部15eの前端及び後端の少なくとも一方(図例では前端及び後端の両方)は、切り欠けられている。そうして切り欠いた分、フランジ部15eの前後方向の寸法D1は、前記半円部15nの前後方向の寸法D3よりも短くなっている。
【0106】
また、シリンダカバー15の上面15aには、第1ガス噴射弁30aを挿入するための第1挿入孔15fと、第2ガス噴射弁30bを挿入するための第2挿入孔15gと、ガスゲート弁35を挿入するための第3挿入孔15hと、が設けられている。
【0107】
これらの挿入孔のうち、第1挿入孔15fは、半円部15nの前側(貫通孔15dよりも前側)に開口しており、第2挿入孔15gは、半円部15nの後側(貫通孔15dよりも後側)に開口している。
【0108】
一方、第3挿入孔15hは、フランジ部15eの上面に開口している。すなわち、ガスゲート弁35は、フランジ部15e、特にフランジ部15eの上面に挿入されるようになっている。
図7及び
図8等に示すように、ガスゲート弁35は、フランジ部15eの上面に直交するように挿入されている。
【0109】
また、
図9に示すように、フランジ部15eの一側面15lには、ゲート制御弁43を取り付けるための第1取付面15iと、第1噴射制御弁47aを取り付けるための第2取付面15jと、第2噴射制御弁47bを取り付けるための第3取付面15kと、が設けられている。
【0110】
ゲート制御弁43並びに第1及び第2噴射制御弁47a,47bは、第1取付面15i~第3取付面15kを介して、フランジ部15eの一側面15lに取り付けられている(
図6~
図8を参照)。
【0111】
なお、ここでいう一側面15lとは、左右方向における前記他側(左側)に面する側面であって、フランジ部15eの左側面に相当する。前後方向及び左右方向の定義に拘わらず、前記中心軸Opの反対側に面する側面を、前記一側面15lとすることができる。以下、これを「左側面15l」ともいう。
【0112】
また、
図12に示すように、フランジ部15eを下方から見上げると、該フランジ部15eには、複数の貫通孔が設けられていることが見て取れる。以下、それらの貫通孔をはじめ、シリンダカバー15内に区画される要素、特に、ガス供給系統3におけるガス供給モジュール31及びガスパイプ39以外の要素と、油圧系統4における供給源49以外の要素と、について順番に説明する。
【0113】
なお、以下に説明する各要素は、基本的には、
図3及び
図4Aを参照して説明した機能を果たすように構成されている。
【0114】
-ガス供給系統3に関連する要素-
具体的に、フランジ部15eの下面15mの前側には、ガス蓄圧室34に通じるガス流入口32が開口している。このガス流入口32は、フランジ部15eの下面15mから上方に向かって延びる略円筒状の穴によって形成されている。ガス流入口32の上端は、ガス蓄圧室34の前側部分に連通している。例えば第1シリンダ16Aの場合、このガス流入口32は、ガスパイプ39を介してガス供給モジュール31に接続される。それ以外のシリンダ16の場合、ガス流入口32は、ガスパイプ39を介して、隣接するシリンダ16のガス流出口33に接続されるようになっている。
【0115】
そのガス流出口33は、フランジ部15eの下面15mの後側(少なくとも、ガス流入口32よりも後側)に開口している。ガス流出口33は、フランジ部15eの下面15mから上方に向かって延びる略円筒状の穴によって形成されている。ガス流出口33の上端は、ガス蓄圧室34の後側部分に連通している。
【0116】
ガス蓄圧室34は、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、ガス蓄圧室34は、フランジ部15eの前面に開口している。ガス蓄圧室34は、この開口部から、前後方向に沿って後側に向かって延びる略円筒状の穴によって形成されている。ガス蓄圧室34の開口部(フランジ部15eの前面に形成された開口部)は、プラグ等によって閉塞されている。
【0117】
さらに詳細には、ガス蓄圧室34は、
図10等に例示するように、左右方向において、複数の第1締結孔15bよりも左側(言い換えると、径方向においてはそれら複数の第1締結孔15bよりも外側)に配置されている。
【0118】
フランジ部15eの上面に開口した前述の第3挿入孔15hは、ガスゲート弁35を受け入れる挿入孔としての機能のみならず、ガス蓄圧室34に通じる第1ガス供給路36としても機能する。
【0119】
第3挿入孔15hによって構成される第1ガス供給路36は、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、第1ガス供給路36は、フランジ部15eの上面15aから下方に向かって延びる略円筒状に形成されている。第1ガス供給路36の開口部(上面15aに形成された開口部)は、該開口部に挿入されたガスゲート弁35によって閉塞されている。また、第1ガス供給路36の下端は、ガス蓄圧室34に連通している。
【0120】
さらに詳細には、第1ガス供給路36は、前後方向においては、ガス流入口32とガス流出口33との間に位置しており、左右方向及び径方向においては、本実施形態ではガス蓄圧室34と重なり合うように配置されている。
【0121】
また、フランジ部15eの後面には、該後面から前方に向かって延びる略円筒状の穴が形成されている。この穴は、第1ガス供給路36の、上下方向における中途の部位を貫いており、フランジ部15eの前面付近に至るまで延びている。この穴の開口部(フランジ部15eの後面に形成された開口部)は、プラグ等によって閉塞されている。この穴によって、第1ガス供給路36から後方に延びる通路と、第1ガス供給路36から前方に延びる通路と、がフランジ部15e内に区画されている。前者の通路によって第2ガス供給路37の上流側部分が構成されており、後者の通路によって第3ガス供給路38の上流側部分が構成されている。
【0122】
その他、フランジ部15e及び半円部15nの側面に1つ又は複数の通路を開口させ、その開口部をプラグ等で閉塞することで、第1ガス供給路36から第1ガス噴射弁30aに至る第2ガス供給路37と、第1ガス供給路36から第2ガス噴射弁30bに至る第3ガス供給路38と、がそれぞれ区画されることになる。
【0123】
なお、
図10等に示すように、第2ガス供給路37及び第3ガス供給路38は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cのうち、少なくとも複数の第2締結孔15cよりも径方向外側に区画されるように配置されている。特に本実施形態では、第2ガス供給路37及び第3ガス供給路38は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cの双方よりも径方向外側に区画されるように配置されている。
【0124】
-油圧系統4に関連する要素-
図12に戻ると、フランジ部15eの下面15mのさらに後側(少なくとも、ガス流出口33よりも後側)には、前述した供給源接続部40が開口している。この供給源接続部40は、フランジ部15eの下面15mから上方に向かって延び、かつ第1蓄圧室41に連続した略円筒状の穴によって形成されている。供給源接続部40は、前記径方向において、複数の第1締結孔15bの外側に配置されている。
【0125】
第1蓄圧室41は、本実施形態では半円部15nの内部に配置されている。詳しくは、第1蓄圧室41は、供給源接続部40から連続して上方に延びる略円筒状の穴によって形成されている。第1蓄圧室41の上端は、フランジ部15eの上面15aに開口している。その開口は、不図示の手動停止装置によって閉塞されている。
【0126】
なお、
図10等に示すように、第1蓄圧室41は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cのうち、少なくとも複数の第2締結孔15cよりも径方向外側に区画されるように配置されている。特に本実施形態では、第1蓄圧室41は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cの双方よりも径方向外側に区画されるように配置されている。
【0127】
第1油路42は、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、第1油路42は、第1蓄圧室41と、フランジ部15eの左側面15lとを接続する略円筒状の貫通孔によって形成されている。言い換えると、第1油路42の上流端は、第1蓄圧室41の内壁面に開口しており、第1油路42の下流端は、前記左側面15l、特に前述の第1取付面15iに開口している。
【0128】
第2油路44における共通路44aは、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、共通路44aは、フランジ部15eの左側面15lと、第2蓄圧室45とを接続する略円筒状の貫通孔によって形成されている。言い換えると、共通路44aの上流端は、前記左側面15l、特に前述の第1取付面15iに開口しており、共通路44aの下流端は、第2蓄圧室45の内壁面に開口している。
【0129】
第2蓄圧室45は、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、第2蓄圧室45は、ガス蓄圧室34と同様に、フランジ部15eの前面に開口している。第2蓄圧室45は、その開口部から、前後方向に沿って後側に向かって延びる略円筒状の穴によって形成されている。第2蓄圧室45の開口部(フランジ部15eの前面に形成された開口部)は、プラグ等によって閉塞されている。
【0130】
また、
図10等に示すように、第2蓄圧室45は、径方向において、ゲート制御弁43及び噴射制御弁47と、中心軸Opとの間に配置されている。
【0131】
また、第2蓄圧室45は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cのうち、少なくとも複数の第2締結孔15cよりも径方向外側に区画されるように配置されている。特に本実施形態では、第2蓄圧室45は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cの双方よりも径方向外側に区画されるように配置されている。
【0132】
また、
図10等に示されているように、第1蓄圧室41の内径は、第2蓄圧室45の内径よりも大きい。その結果、第1蓄圧室41の容積は、第2蓄圧室45の容積よりも大きくなっている。
【0133】
第2油路44における第1分岐路44bは、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、第1分岐路44bは、フランジ部15eの左側面15lと、第2蓄圧室45とを接続する略円筒状の貫通孔によって形成されている。言い換えると、第1分岐路44bの上流端は、前記左側面15l、特に前述の第2取付面15jに開口しており、第1分岐路44bの下流端は、第2蓄圧室45の内壁面に開口している。
【0134】
同様に、第2油路44における第2分岐路44cは、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、第2分岐路44cは、フランジ部15eの左側面15lと、第2蓄圧室45とを接続する略円筒状の貫通孔によって形成されている。言い換えると、第2分岐路44cの上流端は、前記左側面15l、特に前述の第3取付面15kに開口しており、第2分岐路44cの下流端は、第2蓄圧室45の内壁面に開口している。
【0135】
一方、第2油路44における第3分岐路44dは、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。詳しくは、第3分岐路44dは、第2蓄圧室45と、フランジ部15eの上面15aとを接続する略円筒状の貫通孔によって形成されている。言い換えると、第3分岐路44dの上流端は、第2蓄圧室45の内壁面に開口しており、第3分岐路44dの下流端は、フランジ部15eの上面に開口している。後者の開口を通じて、第3分岐路44dと、ガスゲート弁35とが接続されている。
【0136】
また、
図10等に示されているように、共通路44a、第1分岐路44b、第2分岐路44c及び第3分岐路44dそれぞれの流路長は、第1油路42の流路長よりも短い。また、共通路44a、第1分岐路44b、第2分岐路44c及び第3分岐路44dそれぞれの内径は、少なくとも第1ガス供給路36、第2ガス供給路37、第3ガス供給路38及びガスパイプ39の内径よりも小さい。
【0137】
また、第3油路48は、本実施形態ではフランジ部15eの内部に配置されている。この第3油路48は、
図10等に示すように、複数の第1及び第2締結孔15b,15cのうち、少なくとも複数の第2締結孔15cよりも径方向外側に区画されている。特に本実施形態では、第3油路48は、複数の第1締結孔15bと、複数の第2締結孔15cとの間を縫うように区画されている。
【0138】
さらに詳しくは、第3油路48における第4分岐路48aは、フランジ部15eの左側面15lと、第1挿入孔15fの内壁面とを接続する略円筒状の貫通孔によって形成されている。言い換えると、第4分岐路48aの上流端は、前記左側面15l、特に前述の第2取付面15jに開口しており、第4分岐路48aの下流端は、第1挿入孔15fの内壁面に開口している。後者の開口を通じて、第4分岐路48aと、第1ガス噴射弁30aとが接続されている。
【0139】
また、第3油路48における第5分岐路48bは、フランジ部15eの左側面15lと、第2挿入孔15gの内壁面とを接続する略円筒状の貫通孔によって形成されている。言い換えると、第5分岐路48bの上流端は、前記左側面15l、特に前述の第2取付面15jに開口しており、第5分岐路48bの下流端は、第2挿入孔15gの内壁面に開口している。後者の開口を通じて、第5分岐路48bと、第2ガス噴射弁30bとが接続されている。
【0140】
また、
図4A等では省略した要素として、ゲート制御弁43、並びに第1及び第2噴射制御弁47a,47bには、戻りライン51が接続されている。戻りライン51は、ガスゲート弁35、並びに第1及び第2ガス噴射弁30a,30bを作動させた後の作動油を、シリンダカバー15の外部に流出させるための油路として機能する。
【0141】
本実施形態に係る戻りライン51は、
図10等に示すように、フランジ部15eの内部に配置されている。この戻りライン51は、ゲート制御弁43、並びに第1及び第2噴射制御弁47a,47bで共有化されており、前後方向に延びる略円筒状の穴と、その穴から分岐した3つの細穴とによって形成されている。
【0142】
また、戻りライン51は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cのうち、少なくとも複数の第2締結孔15cよりも径方向外側に区画されている。特に本実施形態では、戻りライン51は、複数の第1締結孔15bと、複数の第2締結孔15cとの双方よりも径方向外側に区画されている(
図11を参照)。
【0143】
また、
図4A等では省略した要素として、ゲート制御弁43、並びに第1及び第2噴射制御弁47a,47bには、プライミングライン52が接続されている。プライミングライン52は、ガスゲート弁35、並びに第1及び第2ガス噴射弁30aのプライミング時に、それぞれに作動油を供給するための油路として機能する。
【0144】
本実施形態に係るプライミングライン52は、
図10等に示すように、フランジ部15eの内部に配置されている。このプライミングライン52は、ゲート制御弁43、並びに第1及び第2噴射制御弁47a,47bで共有化されており、前後方向に延びる略円筒状の穴と、その穴から分岐した3つの細穴とによって形成されている。
【0145】
また、プライミングライン52は、複数の第1及び第2締結孔15b,15cのうち、少なくとも複数の第2締結孔15cよりも径方向外側に区画されている。特に本実施形態では、プライミングライン52は、複数の第1締結孔15bと、複数の第2締結孔15cとの双方よりも径方向外側に区画されている(
図11を参照)。
【0146】
その他、
図4A等では省略した要素として、第1及び第2ガス噴射弁30a,30bには、それらにシール油を供給するためのシール経路53も接続されている。シール油の供給により、第1及び第2ガス噴射弁30a,30bそれぞれの構成部品間の隙間を封止することができる。
【0147】
特に本実施形態に係るシール経路53は、
図10等に示すように、シリンダカバー15の内部に配置されている。本実施形態に係るシール経路53は、第3油路48と同様に、複数の第1及び第2締結孔15b,15cのうち、少なくとも複数の第2締結孔15cよりも径方向外側に区画されている。特に本実施形態では、シール経路53は、複数の第1締結孔15bと、複数の第2締結孔15cとの間に区画されている。
【0148】
さらに詳しくは、シール経路53は、第1ガス噴射弁30aに接続される第1シール経路53aと、第2ガス噴射弁30bに接続される第2シール経路53bと、を有している。第1シール経路53aと第2シール経路53bは、互いに連通しており、フランジ部15eの左側面15lに、それぞれの上流端が開口している(
図9を参照)。
【0149】
【0150】
-第1段階-
図13に太線で示すように、ガス蓄圧室34には、ガス供給モジュール31又は隣接するシリンダ16のガス蓄圧室34から、ガスパイプ39及びガス流入口32を介して水素ガスが供給されている。一方、ゲート制御弁43には、第1蓄圧室41から、第1油路42を通じて作動油が供給されている。
【0151】
ここで、ゲート制御弁43及び各噴射制御弁47がそれぞれ閉状態(閉弁状態)にあるとき、ゲート制御弁43によって、ガスゲート弁35への作動油の供給が遮断される。これにより、ガスゲート弁35は閉状態となる。ガスゲート弁35が閉状態にあることで、第1ガス供給路36が遮断されて、その結果、各ガス噴射弁30への水素ガスの供給も遮断される。この場合、水素ガスは、ガス蓄圧室34付近に留まる。
【0152】
また、ゲート制御弁43が閉状態にあるとき、そのゲート制御弁43によって、第1蓄圧室41から第2蓄圧室45への作動油の供給が遮断される。このとき、各噴射制御弁47への作動油の供給が遮断される。その結果、各ガス噴射弁30への作動油の供給も遮断されて、各ガス噴射弁30は閉状態を維持することになる(
図21のステップS1も参照)。
【0153】
-第2段階-
続いて、ゲート制御弁43を開状態(開弁状態)に変更するとともに、各噴射制御弁47については閉状態(閉弁状態)を維持させる。これにより、ゲート制御弁43を通じた、ガスゲート弁35への作動油の供給が開始される。その結果、ガスゲート弁35は開状態となる。ガスゲート弁35が開状態になったことで、第1ガス供給路36の遮断が解除されて、その結果、各ガス噴射弁30へと水素ガスが供給される(
図14の太線参照)。この場合、水素ガスは、各ガス噴射弁30における噴射口の直前まで到達する。
【0154】
また、ゲート制御弁43が開状態にあるとき、そのゲート制御弁43を通じて、第1蓄圧室41から第2蓄圧室45へと作動油が供給される。しかしながら、各噴射制御弁47は閉状態を維持していることから、各噴射制御弁47からガス噴射弁30への作動油の供給は、依然として遮断されたままとなる。その結果、各ガス噴射弁30は、引き続き閉状態を維持することになる(
図21のステップS2も参照)。水素ガスは、各ガス噴射弁30の噴射口から噴射されずに、ガス噴射弁30内に留まる。
【0155】
-第3段階-
続いて、ゲート制御弁43を開状態に維持しつつ、各噴射制御弁47を開状態に変更する。これにより、各噴射制御弁47を通じた、各ガス噴射弁30への作動油の供給が開始される(
図15の太線参照)。その結果、各ガス噴射弁30は開状態となる(
図21のステップS3も参照)。各ガス噴射弁30が開状態になったことで、各ガス噴射弁30から水素ガスが噴射される。
【0156】
<従来構成に対する本実施形態の意義>
図16は、従来のシリンダカバー1015を例示する斜視図である。このシリンダカバー1015の上面には、4本のガス噴射弁1030が挿入されている。
【0157】
図16に示す従来例の場合、ガスパイプ1031から供給されたガス燃料は、第1接続ブロック1081、筐体1032及び第2接続ブロック1082を通過する。
【0158】
そして、第2接続ブロック1082を通過したガス燃料は、第1分岐管1033及び第3接続ブロック1083を通過して4本のガス噴射弁1030のうちの一部に到達するものと、第2分岐管1034及び第4接続ブロック1084を通過して4本のガス噴射弁1030のうちの他部に到達するものと、に分配されることになる。
【0159】
また、筐体1032の上面には、
図4A及び
図6等に示したガスゲート弁35と同様の機能を果たすガスゲート弁1035が挿入されている。さらに、筐体1032の側面には、それぞれ
図4A及び
図6等に示したゲート制御弁43及び噴射制御弁47と同様の機能を果たすゲート制御弁1043及び噴射制御弁1047が取り付けられている。
【0160】
これまで、ガス燃料の蓄圧室及び作動油の蓄圧室は、
図16に示すような筐体1032に収容するとともに、その筐体1032を、各シリンダのシリンダカバー1015に取り付けることが通例であった。
【0161】
通常、各シリンダカバー1015の上面には、
図16に示すようなガス噴射弁1030に加えて、その上方から排気弁も取り付けられることになる。そのため、各蓄圧室を収容した筐体1032を、シリンダカバー1015の側面に取り付けることが通例とされてきた。
【0162】
しかしながら、2つの蓄圧室を収容した分、筐体1032は大型化及び高重量化する傾向にある。そのため、そうした筐体1032をシリンダカバー1015の側面に取り付けてしまっては、シリンダカバー1015、ひいてはシリンダの揺れ(特に、ピストンの中心軸を傾けるような揺れ)を招くため、不都合である。
【0163】
こうした問題は、
図16に示すように、筐体1032にガスゲート弁1035、ゲート制御弁1043及び噴射制御弁1047等を挿入又は取り付けたときに、一層、顕著なものとなる。
【0164】
これに対し、前記実施形態によると、ガス蓄圧室34及び作動油蓄圧室41,45の少なくとも一方(本実施形態では両方)が、
図3及び
図10等に示すようにシリンダカバー15の内部に配置される。シリンダカバー15の内部に蓄圧室を区画することで、それらを収容した筐体をシリンダカバー15の側面に取り付けるような構成と比べて、蓄圧室をピストン21の中心軸Opに接近させることができる。これにより、重力に起因してエンジン1に作用する力のモーメントを軽減し、ピストン21の中心軸Opを傾ける方向の揺れを抑制することが可能になる。
【0165】
一般に、ガス蓄圧室34は、ガス燃料の圧力変動を吸収するように機能する。この圧力変動が大きくなると想定される場合には、ガス蓄圧室34へと速やかにガス燃料を供給したり、ガス蓄圧室34自体を大ボリューム化したりすることが求められる。
【0166】
一方、水素ガスは、他のガスよりも密度が小さい。また、周知のように、ガスの流速は、そのガスの密度に対して負の相関関係を有している。そのため、
図4Aの水素タンク31aを参照して説明したように、ガス燃料に水素ガスを用いることで、他のガスを用いた場合よりも容易に流速を高めることが可能となる。これにより、ガス蓄圧室34の大ボリューム化を避けつつも、ガス燃料の圧力変動を十分に吸収させることができる。
【0167】
そして、ガス蓄圧室34の大ボリューム化が避けられたことで、シリンダカバー15の内部にガス蓄圧室34を区画したとしても、そのシリンダカバー15の大型化を可能な限り回避することができる。このことは、エンジン1の揺れを抑制する上で、好適に作用する。
【0168】
また、
図16に示すように筐体1032を用いた場合、ガスパイプ1031から各ガス噴射弁30に至る途中には、少なくとも10箇所もの接続部が存在することになる。
【0169】
10箇所の接続部には、ガスパイプ1031と外部機器(例えばGVT)とを接続させるための第1接続部、ガスパイプ1031と第1接続ブロック1081との第2接続部、第1接続ブロック1081と筐体1032との第3接続部、筐体1032とガスゲート弁1035との第4接続部、第2接続ブロック1082と第1分岐管1033との第5接続部、第2接続ブロック1082と第2分岐管1034との第6接続部、第1分岐管1033と第3接続ブロック1083との第7接続部、第2分岐管1034と第4接続ブロック1084との第8接続部、第3接続ブロック1083とシリンダカバー1015との第9接続部、及び、第4接続ブロック1084とシリンダカバー1015との第10接続部が含まれる。
【0170】
このように10箇所もの接続部が存在すると、各接続部からのガス漏れが懸念される。そうした懸念は、ガス燃料に水素ガスを用いたときに、取り分け顕著となる。また、第1接続ブロック1081~第4接続ブロック1084を用いることは、シリンダカバー1015周辺の高重量化を招くため、前述したような揺れを抑制する上でも不都合である。
【0171】
これに対し、
図3及び
図10等に示したようにガス蓄圧室34、第1ガス供給路36、第2ガス供給路37及び第3ガス供給路38をそれぞれシリンダカバー15の内部に配置したことで、ガス蓄圧室34と、第1ガス供給路36、第2ガス供給路37及び第3ガス供給路38との接続部もシリンダカバー15の内部に配置されることになる。これにより、シリンダカバー15の外部に配置される配管・ブロック等の部品点数を抑制するとともに、ガス燃料の漏洩リスクを抑制することができる。
【0172】
実際のところ、前記実施形態では、従来例を用いて説明したような接続部は、ガスパイプ39とフランジ部15eとの接続部のみに限られる。接続部を1箇所に削減したことで、ガス燃料に水素ガスを用いた場合であっても、その漏洩リスクを抑制することが可能となる。
【0173】
また、ガス供給系統3に係る他の接続部をシリンダカバー15の内部に配置したことで、従来必要とされていたシール部材が不要となる。これにより、エンジン1のメンテナンス性を高める上でも有利になる。
【0174】
また、
図10及び
図11等に示したように、ガス蓄圧室34は、フランジ部15eの内部に配置される。このようにレイアウトすることで、第1締結孔15b及び第2締結孔15cに挿入される締結具と干渉させることなく、シリンダカバー15の内部にガス蓄圧室34を区画することが可能となる。
【0175】
さらに、
図6、
図7及び
図8等に示したように、ガスゲート弁35をフランジ部15eに挿入することで、シリンダカバー15外部の筐体に挿入する場合と比べて、ガスゲート弁35をピストン21の中心軸Opに接近させる上で有利になる。これにより、ピストン21の中心軸Opを傾ける方向に作用する揺れを抑制する上で、さらに有利になる。
【0176】
さらに、ガスゲート弁35をフランジ部15eに挿入することは、シリンダカバー15における他の部位に挿入する場合と比べて、ガスゲート弁35と各ガス噴射弁30とを遠ざけることができる。これにより、ガスゲート弁35と各ガス噴射弁30との干渉を抑制する上で有利になる。
【0177】
また、
図3及び
図10等に示したように、第1及び第2蓄圧室41,45と、第1及び第2油路42,44とをシリンダカバー15の内部に配置したことで、第1蓄圧室41と第1油路42との接続部、及び、第2蓄圧室45と第2油路44との接続部もシリンダカバー15の内部に配置されることになる。これにより、シリンダカバー15の外部に配置される配管・ブロック等の部品点数を抑制するとともに、作動油の漏洩リスクを抑制することができる。
【0178】
また、油圧系統4に係る接続部をシリンダカバー15の内部に配置したことで、従来必要とされていたシール部材が不要となる。これにより、エンジン1のメンテナンス性を高める上で有利になる。
【0179】
さらに、ガスゲート弁35を開閉させるための作動油は、第1蓄圧室41から供給される一方、各ガス噴射弁30を開閉させるための作動油は、第1蓄圧室41から第2蓄圧室45を介して供給されることになる。ガス噴射弁30に作動油を供給するためには、各噴射制御弁47に加えてゲート制御弁43を作動させる必要がある。ガス噴射弁30に関して2重構造(2種類の制御弁を作動させる必要のある構造)を採用することで、ガス燃料に係る安全性をより確かなものとすることができる。
【0180】
また、第2蓄圧室45は、各ガス噴射弁30の開閉のみに用いられる一方、第1蓄圧室41は、ガスゲート弁35及び各ガス噴射弁30双方の開閉に用いられるようになっている。よって、第2蓄圧室45よりも第1蓄圧室41の容積を相対的に大きくすることで、作動油の圧力変動を、より確実に吸収させることができるようになる。
【0181】
また、
図10等に示したように、第1及び第2蓄圧室41,45の少なくとも一方(本実勢形態では第2蓄圧室45)が、フランジ部15eの内部に配置される。このようにレイアウトすることで、締結具等と干渉させることなく、シリンダカバー15の内部に前記少なくとも一方の蓄圧室(第2蓄圧室45)を区画することが可能となる。
【0182】
さらに、
図6、
図7及び
図8等に示したように、ゲート制御弁43及び各噴射制御弁47をフランジ部15eに取り付けることで、シリンダカバー15外部の筐体に取り付けるような構成と比べて、ゲート制御弁43及び噴射制御弁47をピストン21の中心軸Opに接近させる上で有利になる。これにより、ピストン21の中心軸O@を傾ける方向の揺れを抑制する上で、さらに有利になる。
【0183】
さらに、ゲート制御弁43及び各噴射制御弁47をフランジ部15eに取り付けることは、シリンダカバー15における他の部位に取り付けるような構成と比べて、ゲート制御弁43及び各噴射制御弁47と、各ガス噴射弁30とを遠ざける上で有利になる。このことは、ゲート制御弁43及び各噴射制御弁47と、各ガス噴射弁30との干渉を抑制する上で有効である。
【0184】
一般に、第2油路44のように制御弁に通じる油路は、他の油路に比して細くなる。そうした細い油路の形成は、相対的に太い油路の形成よりも困難なものとなる。シリンダカバー15における第2油路44の形成を容易なものとするためには、これを可能な限り短くすることが考えられる。
【0185】
これに対し、
図6、
図7、
図8及び
図11等に示すように、第2蓄圧室45は、少なくとも中心軸Opよりも、ゲート制御弁42及び各噴射制御弁47に近接することになる。ここで、第2蓄圧室45は、第2油路44を介してゲート制御弁42及び各噴射制御弁47に接続されるものである。ゆえに、第2蓄圧室45とゲート制御弁42及び各噴射制御弁47とを近接させた分、第2油路44を短くすることができるようになる。これにより、シリンダカバー15における第2油路44の形成を、より容易なものとすることができる。
【0186】
また、
図7及び
図10等に示したように、フランジ部15eの前後方向の寸法D1を、左右方向の寸法D2よりも長くするとともに、その前後方向に沿ってガス蓄圧室34及び第2蓄圧室45を延ばしたことで、ガス蓄圧室34等の容積を可能な限り大きくしつつ、左右方向におけるフランジ部15eの突出量を抑制することができる。これにより、エンジン1の揺れの抑制と、ガス蓄圧室34等による圧力変動の抑制と、を両立させる上で有利になる。
【0187】
<前記実施形態の変形例>
図17は、ガスエンジン1の変形例(エンジン1’)を示す
図3対応図である。また、
図18は、エンジン1’の
図3対応図であり、
図19は、エンジン1’の
図10対応図であり、
図20は、エンジン1’の
図11対応図である。
【0188】
図17~
図19の各々において、「’」付きの符号は、前記実施形態における「’」無しの符号に対応している。特段の記載を除き、「’」付きの符号が付された要素は、「’」無しの符号が付された要素と同じ機能を果たすように構成されている。例えば、ピストン21’は、変形例におけるピストン21を示している。
【0189】
図17に示すように、ガス蓄圧室34’及び作動油蓄圧室41’,45’は、変形例においてもシリンダカバー15’の内部に配置されている。その他、主要な特徴部については、前記実施形態と同様に具備されている。
【0190】
一方、一部の構成については、前記実施形態に係るエンジン1と、変形例に係るエンジン1’と、で相違している。例えば前記実施形態では、後側から順に、ゲート制御弁42、第1噴射制御弁47a及び第2噴射制御弁47bの順番で配置されていたところ、変形例に係るエンジン1では、
図19に示唆されているように、後側から順に、第1噴射制御弁47a’、ゲート制御弁42’及び第2噴射制御弁47b’の順番で配置されている。
【0191】
以下、前記実施形態と、変形例との相違点について詳細に説明する。
【0192】
(1)ガス供給系統3’
図17及び
図18に示すように、前記実施形態では、ガス流入口32からガスゲート弁35に至る途中にガス蓄圧室34が設けられていたところ、変形例では、第1ガス供給路36’から分岐した先にガス蓄圧室34’が設けられるようになっている。
【0193】
図19に示すように、変形例に係るガス流入口32’は、フランジ部15e’の左側面から右方に向かって延びる略円筒状の穴によって形成されている。このガス流入口32’は、前記実施形態とは異なり、ガス蓄圧室34’よりも左側に配置されている。ガス流入口32’は、これを円筒とみなしたときの底部に形成した貫通孔を通じて、第1ガス供給路36’及びガス蓄圧室34’に連通している。
【0194】
また、
図19に示すように、第2ガス供給路37’は、第1ガス噴射弁30a’に向かって、第1ガス供給路36’からストレートに延びている。第2ガス供給路37’は、径方向においては、第1締結孔15b’と第2締結孔15c’との間を縫うように延びている。第2ガス供給路37’をストレートに延ばすことで、第1ガス供給路36’の形成に要する穴の数が1本で済む。これにより、プラグ等による閉塞を要する開口の数を削減することができ、水素ガスの漏洩を抑制する上で有利になる。
【0195】
同様に、
図19に示すように、第3ガス供給路38’は、第2ガス噴射弁30b’に向かって、第1ガス供給路36’からストレートに延びている。第3ガス供給路38’は、径方向においては、第1締結孔15b’と第2締結孔15c’との間を縫うように延びている。第3ガス供給路38’をストレートに延ばすことで、第2ガス供給路38’の形成に要する穴の数が1本で済む。これにより、プラグ等による閉塞を要する開口の数を削減することができ、水素ガスの漏洩を抑制する上で有利になる。
【0196】
(2)油圧系統4’
図17及び
図18に示すように、前記実施形態では、第2蓄圧室45から第3分岐路44dが延びていたところ、変形例では、共通路44a’から第3分岐路44d’が分岐するように構成されている。
【0197】
また、
図19に示すように、変形例に係る第1蓄圧室41’は、第2蓄圧室45’と同様に、第1方向としての前後方向に延びる略円筒状の穴によって構成されている。この第1蓄圧室41’は、中心軸Op’に関する径方向においては、第1締結孔15b’よりも内側、かつ、第2締結孔15c’よりも外側に区画されている(
図20も参照)。
【0198】
一方、第2蓄圧室45’は、前記実施形態と同様に前後方向に延びる略円筒状の穴によって構成されている。第2蓄圧室45’は、第1締結孔15b’を挟んで径方向の外側に区画されている。形状こそ相違するものの、第2蓄圧室45’は、第1蓄圧室41’よりも第1噴射制御弁47a’、ゲート制御弁42’及び第2噴射制御弁47b’に近接するように区画されている。
【0199】
なお、変形例に係るプライミングライン52’は、第1蓄圧室41’と同様に、中心軸Op’に関する径方向において、第1締結孔15b’よりも内側、かつ、第2締結孔15c’よりも外側に区画されている(
図20も参照)。
【0200】
図19に示すように、変形例では、ガス蓄圧室34’、第1蓄圧室41’及び第2蓄圧室45’が、それぞれ前後方向に沿って延びるように区画されているとともに、
図20に示すように、それらのうちの第1蓄圧室41’が、第1締結孔15b’と第2締結孔15c’との間に区画されている。
【0201】
このように構成することで、蓄圧室同士の干渉を抑制しつつ、各蓄圧室の大容量化を実現することができる。また、本実施形態のように第1蓄圧室41’を前後方向に延ばすことは、第1蓄圧室41’の容積を、第2蓄圧室45’の容積よりも大きくする上で有効である。なお、第1蓄圧室41’に代えて又は加えて、ガス蓄圧室34’及び第2蓄圧室45’の少なくとも一方を、第1締結孔15b’と第2締結孔15c’との間に区画してもよい。
【0202】
<他の実施形態>
前記実施形態では、ガス蓄圧室34と、第1蓄圧室41と第2蓄圧室45とがいずれもシリンダカバー15の内部に配置されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。ガス蓄圧室34のみをシリンダカバー15の内部に配置してもよいし、第1及び第2蓄圧室41,45の一方をシリンダカバー15の内部に配置してもよい。
【符号の説明】
【0203】
1 エンジン(ガスエンジン)
14 ピストンライナ
15 シリンダカバー
15b 第1締結孔(締結孔)
15c 第2締結孔
15e フランジ部
15l フランジ部の左側面(一側面)
16 シリンダ
21 ピストン
3 ガス供給系統
30 ガス噴射弁
30a 第1ガス噴射弁
30b 第2ガス噴射弁
34 ガス蓄圧室
35 ガスゲート弁
36 第1ガス供給路(ガス供給路)
37 第2ガス供給路(ガス供給路)
38 第3ガス供給路(ガス供給路)
4 油圧系統
40 供給源接続部
41 第1蓄圧室(作動油蓄圧室)
42 第1油路
43 ゲート制御弁
44 第2油路
45 第2蓄圧室(作動油蓄圧室)
47 噴射制御弁
47a 第1噴射制御弁
47b 第2噴射制御弁
49 作動油の供給源
D1 前後方向の寸法(第1方向の寸法)
D2 左右方向の寸法(第2方向の寸法)
Op ピストンの中心軸