(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171776
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】注油用ノズル、及びこのノズルを用いた注油方法
(51)【国際特許分類】
F16N 21/00 20060101AFI20241205BHJP
F16N 37/00 20060101ALI20241205BHJP
F16N 99/00 20060101ALI20241205BHJP
F16N 29/00 20060101ALI20241205BHJP
F16N 7/00 20060101ALI20241205BHJP
B67D 7/04 20100101ALI20241205BHJP
B67D 7/42 20100101ALI20241205BHJP
【FI】
F16N21/00
F16N37/00
F16N99/00
F16N29/00 Z
F16N7/00
B67D7/04 F
B67D7/42 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088976
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】藤井 範章
(72)【発明者】
【氏名】宮前 耕二
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】長尾 貴之
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA20
3E083AG01
3E083AG38
(57)【要約】
【課題】オイルの吹き返しによるオイル漏れを防止しつつ、安定した注油作業を実施可能とする。
【解決手段】この注油用ノズル10は、先端の開口部10aから軸方向の基端側に向けて延びるスリット13を有し、かつ注油作業時の位置まで注油用ノズル10を注油口2に挿入した状態で、注油対象物1の外側空間6に臨む位置までスリット14が延びている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注油対象物の注油口に挿入して、オイルを前記注油対象物の内側空間に注入可能な注油用ノズルであって、
先端の開口部から軸方向の基端側に向けて延びるスリットを有し、かつ
注油作業時の位置まで前記注油用ノズルを前記注油口に挿入した状態で、前記注油対象物の外側空間に臨む位置まで前記スリットが延びている、注油用ノズル。
【請求項2】
注油対象物の注油口に注油用ノズルを挿入して、オイルを前記注油対象物の内側空間に注入する注油方法であって、
前記注油用ノズルとして、先端の開口部から軸方向の基端側に向けて延びるスリットを有し、かつ注油作業時の位置まで前記注油用ノズルを前記注油口に挿入した状態で、前記注油対象物の外側空間に臨む位置まで前記スリットが延びている注油用ノズルを用意し、
前記注油用ノズルを前記注油口に挿入して前記注油対象物の内側空間に所定量の前記オイルを注入した後、前記注油用ノズルから気体を吐出する、注油方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注油用ノズル、及びこのノズルを用いた注油方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用トランスミッションの内部は潤滑用のオイルで満たされている(特許文献1を参照)。そのため、上記トランスミッションの製造工程には、組立て後のトランスミッションの内部にオイルを供給するための工程が設けられている。
【0003】
この注油工程では、トランスミッションの外郭(ケーシング)に設けられた注油口に、例えばホースタイプ又はガンタイプの注油用ノズルを挿入して、トランスミッションの内部に所定量のオイルを注入する。そして、所定量のオイルを注入した後、ノズルの内面に付着したオイルをエアブローで除去することで、ノズルを注油口から抜き取った際に、ノズルからオイルが垂れ落ちて、周囲に付着する事態を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上述のようにオイルを注入する場合、エアブローによるオイルの吹き返しと呼ばれる現象が問題になる。この現象は、
図4に示すように、注油用ノズル100をトランスミッション1の注油口2に挿入して、トランスミッション1の内側空間3に所定量のオイル4を注入する際、内側空間3の容積と、必要とされるオイル4の注入量との大小関係によっては、
図4に示すように、注油用ノズル100の先端開口部100aがオイル4に浸かった状態となる。この状態で注油用ノズル100の先端開口部100aからエアを吐出した場合、オイル4が飛散し、注油用ノズル100と注油口2の内壁面2bとの隙間を通じて、トランスミッション1の外側空間6にオイル4が漏れ出す事態が起こり得る。オイル4が漏れ出した場合、オイル4のふき取りや清掃、手直しのための工数が増加する。また、オイル4が付着すべきでない箇所に付着することによる品質の低下も懸念される。
【0006】
例えば、注油用ノズル100の挿入量を少なくして、先端開口部100aの位置を高めに設定すれば、オイル4の液面4aとの間に一定の距離が保たれるので(
図4中、二点鎖線で示す状態)、上述の如きオイル4の吹き返しが生じるおそれはない。ただ、挿入量が少ない場合には、注油作業時、注油用ノズル100の姿勢が安定せず、不意の振動や衝撃、又は作業者との接触により、注油用ノズル100が注油口2から抜け落ちるおそれがある。
【0007】
上述した問題は何もトランスミッションの注油作業に限ったことではなく、注油口にノズルを挿入して内側空間に所定量のオイルを注入する必要のある物品全般に対して起こり得る。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、オイルの吹き返しによるオイル漏れを防止しつつ、安定した注油作業を実施可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る注油用ノズルによって達成される。すなわち、このノズルは、注油対象物の注油口に挿入してオイルを注油対象物の内側空間に注入可能な注油用ノズルであって、先端の開口部から軸方向の基端側に向けて延びるスリットを有し、かつ注油作業時の位置まで注油用ノズルを注油口に挿入した状態で、注油対象物の外側空間に臨む位置までスリットが延びている点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明に係る注油用ノズルでは、ノズル先端の開口部から軸方向の基端側に向けて延びるスリットを設けたので、注油後、オイルに代えてエアなどの気体を注油用ノズルから吐出した際、少なくとも気体の一部がスリットを介して注油用ノズルの径方向に吐出される。これにより、注油用ノズルの先端から吐出される気体を減らすことができるので、内側空間に注油されたオイルが気体の吐出により吹き上がる事態を抑制又は可及的に回避することができる。また、注油用ノズルに設けられたスリットは、注油口を越えて注油対象物の外側空間に臨む位置まで延びているため、オイルの漏れ出し防止のために、注油用ノズルと注油口との隙間を小さく設定した場合であっても、スリットを介して気体が外側に排出され得る。従って、本発明に係る注油用ノズルによれば、オイルの漏れ出しを防止しつつも、周辺にオイルが付着する事態を回避して、安定した注油作業を継続的に実施することが可能となる。
【0011】
また、前記課題の解決は、本発明に係る注油用ノズルを用いた注油方法によっても達成される。すなわち、この注油方法は、注油対象物の注油口に注油用ノズルを挿入して、オイルを注油対象物の内側空間に注入する注油方法であって、注油用ノズルとして、先端の開口部から軸方向の基端側に向けて延びるスリットを有し、かつ注油作業時の位置まで注油用ノズルを注油口に挿入した状態で、注油対象物の外側空間に臨む位置までスリットが延びている注油用ノズルを用意し、この注油用ノズルを注油口に挿入して注油対象物の内側空間に所定量のオイルを注入した後、注油用ノズルから気体を吐出する点をもって特徴付けられる。
【0012】
上述したように、本発明に係る注油方法では、ノズル先端の開口部から軸方向の基端側に向けて延びるスリットを設けた注油用ノズルを用いて注油を行ったので、注油後、オイルに代えてエアなどの気体を注油用ノズルから吐出した際、少なくとも気体の一部がスリットを介して注油用ノズルの径方向に吐出される。これにより、注油用ノズルの先端から吐出される気体を減らすことができるので、内側空間に注油されたオイルが気体の吐出により吹き上がる事態を抑制又は可及的に回避することができる。また、注油用ノズルに設けられたスリットは、注油口を越えて注油対象物の外側空間に臨む位置まで延びているため、オイルの漏れ出し防止のために、注油用ノズルと注油口との隙間を小さく設定した場合であっても、スリットを介して気体が外側に排出され得る。従って、本発明に係る注油方法によれば、オイルの漏れ出しを防止しつつも、周辺にオイルが付着する事態を回避して、安定した注油作業を継続的に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、オイルの吹き返しによるオイル漏れを防止しつつ、安定した注油作業を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る注油用ノズルを用いた注油方法の概要を説明するための要部拡大断面図である。
【
図3】
図1に示す注油用ノズルのA-A断面図である。
【
図4】従来構成の注油用ノズルを用いた注油方法の概要を説明するための要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る注油用ノズル、及びこのノズルを用いた注油方法の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、トランスミッションの注油口に注油用ノズルを挿入して注油を行う場合を例にとって説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る注油方法の概要を説明するための図を示している。同図に示すように、本実施形態に係る注油方法は、注油対象物となるトランスミッション1の注油口2に本実施形態に係る注油用ノズル10を挿入する挿入工程S1と、注油用ノズル10からトランスミッション1の内側空間3にオイル4を注入する注油工程S2と、注油後の内側空間3に向けて注油用ノズル10から気体5を吐出する気体吐出工程S3とを備える。本実施形態では、この注油方法は、注油用ノズル10を通じて内側空間3の気体を吸引する吸引工程S4をさらに備える。以下、注油用ノズル10の構成を中心に説明した後、注油方法の各工程S1~S4の詳細を説明する。
【0017】
本実施形態に係る注油用ノズル10は、
図2及び
図3に示すように、注油用ノズル10の先端開口部10aを構成するホース11と、ホース11の外周に配設されるホースガイド12とで構成される。
【0018】
このうち、ホース11は円筒形状をなし、注油用ノズル10の先端開口部10aを構成している。ホース11には、軸方向に延びる第一スリット13が形成されている。この第一スリット13は、ホース11の円周方向所定位置に設けられてホース11を径方向に貫通すると共に、ホース11の先端開口部11aから軸方向の基端側に向けて延びている。ホース11の材質は原則として任意であるが、注油口2への挿入時、先端開口部11aと注油口2の端面2aや内壁面2bとの干渉を想定して、樹脂又はゴムなど相対的に軟質の材料で形成されるのがよい。
【0019】
ホースガイド12は、ホース11と同様に円筒形状をなし、ホース11の外周に配設される。本実施形態では、ホース11とホースガイド12とは軸方向への相対移動が不能な程度に相互に嵌合された状態にある。ホースガイド12には、軸方向に延びる第二スリット14が形成されている。この第二スリット14は、ホースガイド12の円周方向所定位置に設けられてホースガイド12を径方向に貫通すると共に、ホースガイド12の先端開口部12aから軸方向の基端側に向けて延びている。この場合、ホース11に設けられた第一スリット13の基端部13bと、ホースガイド12に設けられた第二スリット14の先端部14aとが円周方向で同じ位置となるように、第一スリット13と第二スリット14との位相を合わせた状態で、ホースガイド12がホース11に取付けられる(
図2を参照)。ホースガイド12の材質は原則として任意であるが、注油口2への挿入時、当接面12bが先端開口部11aと当接した状態で注油用ノズル10の姿勢が安定するように、金属など相対的に重量な材料で形成されるのがよい。
【0020】
また、第二スリット14は、後述するように注油作業時の位置まで注油用ノズル10を注油口2に挿入した状態では、トランスミッション1の外側空間6に臨む位置まで基端側に延びている。すなわち、
図1に示すように、第二スリット14の基端部14bは、注油時において、注油口2よりも上側に位置しており、第二スリット14の基端側の一部が外側空間6と連通した状態にある。なお、本実施形態では、ホースガイド12に、注油口2と軸方向で当接する当接面12bが設けられており、この当接面12bを注油口2の端面2aに当接させることで、注油用ノズル10のトランスミッション1に対する軸方向位置が設定される。すなわち、当接面12bを基準として注油用ノズル10の先端開口部10aの軸方向位置、及び第一スリット13及び第二スリット14の軸方向位置及び軸方向寸法が設定される。
【0021】
また、本実施形態では、注油用ノズル10の先端開口部10aを構成するホース11の先端開口部11aが、中心軸線に対して斜めに傾斜した傾斜面11a1で構成されている(
図3を参照)。この場合、傾斜面11a1は楕円形状をなす(
図2を参照)。また、第一スリット13の先端部13aがホース11の最先端に位置するように(
図3を参照)、第一スリット13に対する傾斜面11a1の位相が設定されている。
【0022】
上記構成の注油用ノズル10には、給油路15と、給気路16とが接続されている(
図1を参照)。ここで、給油路15上には、給油路15と注油用ノズル10とを連通状態と遮断状態とに切替え可能な第一切替え弁17が設けられている。また、給気路16上には、給気路16と注油用ノズル10とを連通状態と遮断状態とに切替え可能な第二切替え弁18が設けられている。もちろん、図示は省略するが、第一及び第二切替え弁17,18に代えて、給油路15と注油用ノズル10との連通状態と、給気路16と注油用ノズル10との連通状態とに切替え可能なソレノイド等の切替え弁を設けてもよい。要は、必要なタイミングで、オイル4と気体5を注油用ノズル10に供給可能な限りにおいて、オイル4及び気体5の供給系は任意の構成をとり得る。
【0023】
また、本実施形態では、給気路16は、注油用ノズル10側から気体5を吸引する吸気路としても使用される。すなわち、図示は省略するが、給気路16には、給気装置と吸気装置(排気装置)とが切替え可能に接続されており、必要に応じて何れか一方の装置を駆動しかつ給気路16と接続することで、注油用ノズル10側に対する気体5の供給と吸引を可能としている。
【0024】
次に、上記構成の注油用ノズル10を用いた注油方法の一例を、主に
図1に基づいて説明する。
【0025】
(S1)挿入工程
本工程S1では、注油対象物となるトランスミッション1の注油口2に上記構成の注油用ノズル10を挿入する。本実施形態では、注油口2が鉛直上方を指向する姿勢でトランスミッション1が載置されている。そのため、作業者は、注油用ノズル10を鉛直上方から注油口2に向けて接近させ、挿入する。本実施形態では、ホースガイド12の当接面12bが注油口2の端面2aと当接する位置まで注油用ノズル10を挿入する。
【0026】
ここで、注油用ノズル10の挿入深さ(内側空間3への侵入量)は、オイル4の内側空間3への供給量(供給完了時におけるオイル4の液面4aの高さ)と、注油時の注油用ノズル10の姿勢安定性などを総合的に勘案して所定の大きさに設定される。本実施形態では、所定量のオイル4を注入した時点で内側空間3に供給されたオイル4に注油用ノズル10の先端開口部10aが浸かった状態となるように、注油用ノズル10の挿入深さが設定される。
【0027】
(S2)注油工程
本工程S2では、注油口2に挿入した状態の注油用ノズル10から所定量のオイル4をトランスミッション1の内側空間3に注入する。この際、第一切替え弁17の操作により注油用ノズル10と給油路15とを連通状態とし、図示しない給油装置により給油路15にオイル4を供給することで、注油用ノズル10の先端開口部10aを通じて内側空間3にオイル4が供給される。そして、所定量のオイル4を内側空間3に注入した時点で第一切替え弁17を操作して注油用ノズル10と給油路15とを遮断し、オイル4の供給を停止する。
【0028】
(S3)気体吐出工程
本工程S3では、注油後の注油用ノズル10に向けてエアなどの気体5を供給する。この場合、第二切替え弁18の操作により注油用ノズル10と給気路16とを連通状態とし、図示しない給気装置により給気路16に気体5を供給することで、注油用ノズル10から気体5が吐出される。これにより、注油工程S2の際に注油用ノズル10の内面10bに付着したオイル4が気体5により除去される。
【0029】
また、注油用ノズル10には先端開口部10aから軸方向の基端側に向けて延びる第一スリット13が設けられているので、この第一スリット13を介して気体5の一部がホース11から径方向に吐出される。加えて、注油用ノズル10には、トランスミッション1の内側空間3に連通しかつ外側空間6とも連通する第二スリット14が設けられているので、内側空間3に吐出された気体5は、第二スリット14を通じて外側空間6に円滑に排出される。
【0030】
(S4)吸引工程
本工程S4では、注油用ノズル10を通じて内側空間3の気体5を吸引する。この場合、注油用ノズル10を液面4aよりも高い位置まで引き上げた後、注油用ノズル10と給気路16との連通状態を維持したままで、給気路16と吸気装置とを接続して給気装置を駆動させることにより、給気路16、そして注油用ノズル10を通じて、内側空間3の気体5を吸引する。これにより、注油用ノズル10の先端開口部10aに依然として残っている(付着している)オイル4が吸い上げられて除去される。然る後、注油用ノズル10を注油口2から引き抜くことで、注油作業が完了する。
【0031】
以上述べたように、本実施形態に係る注油用ノズル10では、先端開口部10aから軸方向の基端側に向けて延びるスリット(第一スリット13)を設けたので、注油後、オイル4に代えて気体5を注油用ノズル10から吐出した際、少なくとも気体5の一部が第一スリット13を介して注油用ノズル10の径方向に吐出される。これにより、注油用ノズル10の先端から吐出される気体5を減らすことができるので、内側空間3に注油されたオイル4が気体5の吐出により吹き上がる事態を抑制又は可及的に回避することができる。また、注油用ノズル10に設けられたスリット(第二スリット14)は、注油口2を越えてトランスミッション1の外側空間6に臨む位置まで延びているため、オイル4の漏れ出し防止のために、注油用ノズル10と注油口2の内壁面2bとの隙間を小さく設定した場合であっても、第二スリット14を介して気体5が外側空間6に排出され得る。従って、本実施形態に係る注油用ノズル10によれば、オイル4の漏れ出しを防止しつつも、周辺にオイル4が付着する事態を回避して、安定した注油作業を継続的に実施することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、注油用ノズル10の先端開口部10aを構成するホース11の先端開口部11aを、中心軸線に対して斜めに傾斜した傾斜面11a1で構成した(
図3を参照)。このように、注油用ノズル10の先端開口部10aを構成することによって、注油工程S2の際、注油用ノズル10の内面10bに付着したオイル4が、先端開口部10aの最先端部に集まり易い。そのため、後の気体吸引工程S4で気体5を吸引することで、注油用ノズル10に付着したオイル4を効果的に吸い上げて除去することが可能となる。これにより、注油用ノズル10を注油口2から引き抜いた後に注油用ノズル10の先端開口部10aからオイル4が垂れ落ちる事態を高確率で防止することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る注油用ノズル10、及びこのノズル10を用いた注油方法は、上記例示の構成に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能なことは言うまでもない。
【0034】
例えば上記実施形態では、注油用ノズル10の先端側をホース11で、基端側をホースガイド12でそれぞれ構成した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば注油用ノズル10全体を金属で形成してもかまわない。
【0035】
また、上記実施形態では、ホース11に設けた第一スリット13と、ホースガイド12に設けた第二スリット14とが軸方向で重複しないように各スリット13,14を配置した場合を例示したが、もちろん、これには限られない。例えば注油工程S2の際、注油用ノズル10側に供給されたオイル4が、少なくとも注油口2の内壁面2bに向けて吹付けられることがない限りにおいて、注油用ノズル10の内面10bに開口形成される第一スリット13を第二スリット14と軸方向で重複する位置まで基端側に延ばしてもよい。
【0036】
また、以上の説明では、トランスミッション1の注油口2に本発明に係る注油用ノズル10を挿入して注油を行う場合を例示したが、もちろんこれには限られない。トランスミッション1以外の注油対象物に設けられた注油口に挿入して注油を行う限りにおいて、任意の注油対象物に本発明に係る注油用ノズルを適用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 トランスミッション
2 注油口
2a 端面
2b 内壁面
3 内側空間
4 オイル
4a 液面
5 気体
6 外側空間
10 注油用ノズル
10a 先端開口部
10b 内面
11 ホース
11a 先端開口部
11a1 傾斜面
12 ホースガイド
12a 先端開口部
12b 当接面
13 第一スリット
13a 先端部
13b 基端部
14 第二スリット
14a 先端部
14b 基端部
15 給油路
16 給気路
17 第一切替え弁
18 第二切替え弁
100 注油用ノズル
100a 先端開口部