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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171777
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/00 20060101AFI20241205BHJP
   F17C 9/02 20060101ALI20241205BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F17C9/00 A
F17C9/02
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088981
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友裕
(72)【発明者】
【氏名】林原 鉄治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敦
(72)【発明者】
【氏名】江頭 慎二
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD05
3E172EA03
3E172EB03
3E172EB08
3E172GA11
3E172GA17
3E172GA26
3E172HA04
3E172HA06
(57)【要約】
【課題】タンク内の液化ガスを需要先に安定的に供給できるようにする。
【解決手段】ガス供給システム10は、液化ガス貯槽1から液体水素Lを受け入れる第1及び第2貯留タンク11,12と、第1又は第2貯留タンク11,12内から吸入した水素ガスGを用いて、第2又は第1貯留タンク12,11内を加圧することにより、第2又は第1貯留タンク12,11内の液体水素Lを供給路25に押し出す圧縮機15と、圧縮機15により、第1貯留タンク11を減圧させるとともに第2貯留タンク12を加圧する状態と、圧縮機15により、第2貯留タンク12を減圧させるとともに第1貯留タンク11を加圧する状態と、の間で切り替え可能に構成された加圧切替機構30と、加圧切替機構30を制御する制御部33と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス貯槽に貯留された液化ガスを供給路に送り出すガス供給システムであって、
前記液化ガス貯槽から液化ガス(L)を受け入れる第1貯留タンク及び第2貯留タンクを含む貯留タンク群と、
所定のガス(G)を用いて、前記第2又は第1貯留タンク内を加圧することにより、前記第2又は第1貯留タンク内の液化ガス(L)を前記供給路に押し出すための圧縮機と、
前記第2貯留タンクを加圧する状態である第1状態と、前記第1貯留タンクを加圧する状態である第2状態と、の間で切り替え可能に構成された加圧切替機構と、
前記加圧切替機構を制御する制御部と、
を備えている、ガス供給システム。
【請求項2】
前記圧縮機が、前記第1又は第2貯留タンク内から吸入したガス(G)を用いて、前記第2又は第1貯留タンク内を加圧することにより、前記第2又は第1貯留タンク内の液化ガスを前記供給路に押し出すための圧縮機であり、
前記第1状態が前記圧縮機により前記第1貯留タンクを減圧させるとともに前記第2貯留タンクを加圧する状態であり、前記第2状態が前記圧縮機により前記第2貯留タンクを減圧させるとともに前記第1貯留タンクを加圧する状態である、請求項1に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記供給路に配置され、前記圧縮機によって加圧された前記第2又は第1貯留タンク内から押し出された液化ガス(L)をガス化させる気化器を備えている、請求項1または2に記載のガス供給システム。
【請求項4】
前記液化ガス貯槽内の液化ガス(L)の流入先を前記第1貯留タンク及び前記第2貯留タンクの間で切り替え可能に構成された入口切替機構と、
前記供給路への液化ガスの押し出し元を前記第1貯留タンク及び前記第2貯留タンクの間で切り替え可能に構成された出口切替機構と、
を備え、
前記制御部は、前記圧縮機、前記加圧切替機構、前記入口切替機構及び前記出口切替機構を制御するように構成され、
前記制御部は、
前記液化ガス貯槽内の液化ガス(L)を前記第1貯留タンクに流入可能な状態にように前記入口切替機構を制御するとともに、前記加圧切替機構が前記第1状態になるように前記加圧切替機構を制御し、さらに、前記第2貯留タンク内の液化ガス(L)が前記供給路に流出可能な状態となるように前記出口切替機構を制御する第1制御と、
前記液化ガス貯槽内の液化ガス(L)を前記第2貯留タンクに流入可能な状態にように前記入口切替機構を制御するとともに、前記加圧切替機構が前記第2状態になるように前記加圧切替機構を制御し、さらに、前記第1貯留タンク内の液化ガス(L)が前記供給路に流出可能な状態となるように前記出口切替機構を制御する第2制御と、
を実行可能である、請求項2に記載のガス供給システム。
【請求項5】
前記圧縮機に吸入される前のガス(G)を加熱するヒータ部をさらに備える、請求項1または2に記載のガス供給システム。
【請求項6】
前記液化ガス貯槽から前記圧縮機への前記液化ガス貯槽内のガスの流通を可能とする蒸発ガス流通路と、
前記液化ガス貯槽内のボイルオフガスが前記蒸発ガス流通路を通して前記圧縮機に吸入されるように、前記蒸発ガス流通路を開放する開閉機構と、
を備えている、請求項1または2に記載のガス供給システム。
【請求項7】
前記圧縮機を迂回しつつ前記第1又は第2貯留タンクと前記供給路とを繋ぐバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉可能に構成されたバイパス切替機構と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第1又は第2貯留タンク内の圧力が所定値を超えたことに基づいて、前記バイパス通路が開放されるように前記バイパス切替機構を制御するように構成されている、請求項1または2に記載のガス供給システム。
【請求項8】
前記圧縮機を迂回しつつ前記第1又は第2貯留タンクと前記供給路とを繋ぐバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉可能なバイパス切替機構と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記加圧切替機構が前記第1状態にある場合において、前記第1貯留タンク内の圧力が閾値以下となったことに基づいて、前記供給路から前記圧縮機に向けてガス(G)が還流するように前記バイパス切替機構を制御し、
前記加圧切替機構が前記第2状態にある場合において、前記第2貯留タンク内の圧力が閾値以下となったことに基づいて、前記供給路から前記圧縮機に向けてガス(G)が還流するように前記バイパス切替機構を制御するように構成されている、請求項2に記載のガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。水素ガス等の液化ガスをガス化して圧送する手段として、(1)液体ポンプによって液体のまま加圧された液を気化器で気化させ、気化したガスを送る方法(ポンプ型)と、(2)気化器で気化されたガスをガス圧縮機で圧送する方法(圧縮機型)と、の2種類の方法がある。
【0003】
特許文献1には、液化水素に関して、圧縮機型の水素ガス圧送方法を行う水素燃料供給システムが開示されている。この水素燃料供給システムでは、タンクから取り出された液体水素を気化器で気化させ、この気化した水素ガスを圧縮機で昇圧させるととともに、この昇圧された水素ガスを元のタンクに戻してタンク内を加圧し、タンク内の液体水素を需要先に送り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-70301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている水素燃料供給システムでは、圧縮機によって加圧された水素ガスをタンクに戻してタンク内を昇圧させて、この圧力によってタンク内の液体水素を需要先に送り出す。このため、タンク内の液体水素を需要先に向けて送り出しながら圧縮機を作動させると、タンクから需要先に向けて送り出すはずの液体水素の一部が圧縮機に吸引されてしまう。このため、常時、液体水素を需要先に向けて送出しながら圧縮機を作動させておくことが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タンク内の液化ガスを需要先に安定的に供給できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るガス供給システムは、液化ガス貯槽に貯留された液化ガスを供給路に送り出すガス供給システムであって、前記液化ガス貯槽から液化ガス(L)を受け入れる第1貯留タンク及び第2貯留タンクを含む貯留タンク群と、所定のガス(G)を用いて、前記第2又は第1貯留タンク内を加圧することにより、前記第2又は第1貯留タンク内の液化ガス(L)を前記供給路に押し出すための圧縮機と、前記第2貯留タンクを加圧する状態である第1状態と、前記第1貯留タンクを加圧する状態である第2状態と、の間で切り替え可能に構成された加圧切替機構と、前記加圧切替機構を制御する制御部と、を備えている。
【0008】
本発明に係るガス供給システムでは、第1貯留タンク及び第2貯留タンクが設けられており、制御部により加圧切替機構の状態が切り替えられる。加圧切替機構が第1状態にある場合、第2貯留タンク内の液化ガス(L)が供給路に押し出される。一方、加圧切替機構が第2状態にある場合には、所定のガス(G)により第1貯留タンク内の液化ガス(L)が供給路に押し出される。このため、従来のように、タンク内の液化ガス(L)が需要先に向けて押し出されるまで圧縮機を待機状態にしておく必要がないため、液化ガス(L)を安定的に需要先に向けて押し出すことができる。
【0009】
前記圧縮機が、前記第1又は第2貯留タンク内から吸入したガス(G)を用いて、前記第2又は第1貯留タンク内を加圧することにより、前記第2又は第1貯留タンク内の液化ガスを前記供給路に押し出すための圧縮機であってもよい。この場合、前記第1状態が前記圧縮機により前記第1貯留タンクを減圧させるとともに前記第2貯留タンクを加圧する状態であり、前記第2状態が前記圧縮機により前記第2貯留タンクを減圧させるとともに前記第1貯留タンクを加圧する状態であってもよい。
【0010】
この態様では、第1貯留タンク及び第2貯留タンクが設けられており、制御部により加圧切替機構の状態が切り替えられる。加圧切替機構が第1状態にある場合、第1貯留タンク内が減圧されることにより、第1貯留タンク内の液化ガス(L)が気化する。この気化したガス(G)は圧縮機に吸引されて圧縮され、第2貯留タンク内の液化ガス(L)を加圧する。これにより、第2貯留タンク内の液化ガス(L)が供給路に押し出される。一方、加圧切替機構が第2状態にある場合には、圧縮機から吐出されたガス(G)により第1貯留タンク内の液化ガス(L)が供給路に押し出される。このように、圧縮機が吸引するガス(G)が貯留されるタンクと、圧縮機から吐出されたガス(G)で加圧されるタンクとが別個に設けられている。このため、従来のように、タンク内の液化ガス(L)が需要先に向けて押し出されるまで圧縮機を待機状態にしておく必要がないため、液化ガス(L)を安定的に需要先に向けて押し出すことができる。
【0011】
前記ガス供給システムは、前記供給路に配置され、前記圧縮機によって加圧された前記第2又は第1貯留タンク内から押し出された液化ガス(L)をガス化させる気化器を備えていてもよい。
【0012】
この態様では、液化ガス(L)から得られたガス(G)を需要先に送ることができる。
【0013】
前記ガス供給システムは、前記液化ガス貯槽内の液化ガス(L)の流入先を前記第1貯留タンク及び前記第2貯留タンクの間で切り替え可能に構成された入口切替機構と、前記供給路への液化ガスの押し出し元を前記第1貯留タンク及び前記第2貯留タンクの間で切り替え可能に構成された出口切替機構と、を備えてもよい。この場合、前記制御部は、前記圧縮機、前記加圧切替機構、前記入口切替機構及び前記出口切替機構を制御するように構成されてもよい。また、前記制御部は、前記液化ガス貯槽内の液化ガス(L)を前記第1貯留タンクに流入可能な状態にように前記入口切替機構を制御するとともに、前記加圧切替機構が前記第1状態になるように前記加圧切替機構を制御し、さらに、前記第2貯留タンク内の液化ガス(L)が前記供給路に流出可能な状態となるように前記出口切替機構を制御する第1制御と、前記液化ガス貯槽内の液化ガス(L)を前記第2貯留タンクに流入可能な状態にように前記入口切替機構を制御するとともに、前記加圧切替機構が前記第2状態になるように前記加圧切替機構を制御し、さらに、前記第1貯留タンク内の液化ガス(L)が前記供給路に流出可能な状態となるように前記出口切替機構を制御する第2制御と、を実行可能であってもよい。
【0014】
この態様では、入口切替機構及び出口切替機構が設けられるため、液化ガス貯槽内の液化ガス(L)の流入先、および、供給路への液化ガス(L)の押し出し元を切り替え動作によって切り替えることができる。したがって、より安定的に液化ガスの供給を可能とすることができる。
【0015】
前記ガス供給システムは、前記圧縮機に吸入される前のガス(G)を加熱するヒータ部をさらに備えていてもよい。
【0016】
この態様では、圧縮機の吸込温度を上げることで吐出温度を上げることができ、それにより、貯留タンク内の気化を促進させることができる。また、圧縮機が低温ガスを吸入する場合と比べて圧縮機内部の低温ガス対策を不要とすることができる。
【0017】
前記ガス供給システムは、前記液化ガス貯槽から前記圧縮機への前記液化ガス貯槽内のガスの流通を可能とする蒸発ガス流通路と、前記液化ガス貯槽内のボイルオフガスが前記蒸発ガス流通路を通して前記圧縮機に吸入されるように、前記蒸発ガス流通路を開放する開閉機構と、を備えていてもよい。
【0018】
この態様では、圧縮機を液化ガス貯槽内のボイルオフガス(BOG)回収用途にも活用することができる。
【0019】
前記ガス供給システムは、前記圧縮機を迂回しつつ前記第1又は第2貯留タンクと前記供給路とを繋ぐバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉可能に構成されたバイパス切替機構と、をさらに備えてもよい。この場合において、前記制御部は、前記第1又は第2貯留タンク内の圧力が所定値を超えたことに基づいて、前記バイパス通路が開放されるように前記バイパス切替機構を制御するように構成されていてもよい。
【0020】
この態様では、貯留タンク内の圧力の異常な上昇を抑制しつつ、ガスの廃棄も防止できる。
【0021】
前記ガス供給システムは、前記圧縮機を迂回しつつ前記第1又は第2貯留タンクと前記供給路とを繋ぐバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉可能なバイパス切替機構と、をさらに備えてもよい。この場合において、前記制御部は、前記加圧切替機構が前記第1状態にある場合において、前記第1貯留タンク内の圧力が閾値以下となったことに基づいて、前記供給路から前記圧縮機に向けてガス(G)が還流するように前記バイパス切替機構を制御し、前記加圧切替機構が前記第2状態にある場合において、前記第2貯留タンク内の圧力が閾値以下となったことに基づいて、前記供給路から前記圧縮機に向けてガス(G)が還流するように前記バイパス切替機構を制御するように構成されていてもよい。
【0022】
この態様では、第1(又は第2)の貯留タンク内の圧力が所定の下限圧力に達した場合には、供給路から高圧のガスを圧縮機入口側に還流させる。これによって、第2(又は第1)の貯留タンク内の加圧に必要な圧縮機処理量を確保できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、タンク内の液化ガスを需要先に安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係るガス供給システムの構成を概略的に示す図である。
図2】ヒータ部が省略された変形例を概略的に示す図である。
図3】蒸発ガス流通路及び圧縮ガス流通路が設けられた変形例を概略的に示す図である。
図4】バイパス通路が設けられた変形例を概略的に示す図である。
図5】供給路内の水素ガスを圧縮機を通して貯留タンクに戻すときの動作を説明するための図である。
図6】入口側規制部及び出口側規制部が設けられた変形例を概略的に示す図である。
図7】変形例に係るガス供給システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係るガス供給システム10は、液化ガス貯槽1に貯留された液化ガスを需要先3に向けて送り出すものであるが、本実施形態では液化ガスを気化させた上で需要先3に供給する。液化ガスは本実施形態では液体水素Lであるが、これに代え、液化天然ガス(LNG)等であってもよい。需要先3は、例えばガスタービンであってもよく、この場合、液体水素Lから気化した水素ガスGは燃料として用いられることになる。
【0027】
ガス供給システム10は、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12を含む貯留タンク群13と、圧縮機15と、を備えている。第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12は、液化ガス貯槽1よりも容積の小さなタンクによって構成されている。第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12は、同じ容量のタンクによって構成されているのが好ましい。
【0028】
第1貯留タンク11は、1つの容器によって構成されていてもよく、あるいは複数の容器を有していてもよい。また、第2貯留タンクも、1つの容器によって構成されていてもよく、あるいは複数の容器を有していてもよい。
【0029】
第1貯留タンク及び第2貯留タンク12は、何れも密閉構造である。このため、後述するように、圧縮機15によって第1貯留タンク11(又は第2貯留タンク12)内の水素ガスG(又はボイルオフガス)が吸引されると、第1貯留タンク11(又は第2貯留タンク12)内は減圧される。また、圧縮機15から吐出された水素ガスGによって第2貯留タンク12(又は第1貯留タンク11)内が加圧されると、第2貯留タンク12(又は第1貯留タンク11)から液体水素Lが押し出される。
【0030】
第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12は、液流路17を通して液化ガス貯槽1と接続されている。液流路17は、液化ガス貯槽1の底部に一端部が接続された主流路17cと、主流路17cから分岐した第1支流路17a及び第2支流路17bと、を含む。第1支流路17aの先端部は第1貯留タンク11の底部に接続され、第2支流路17bの先端部は第2貯留タンク12の底部に接続されている。すなわち、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12は、液化ガス貯槽1に対して並列に接続されている。主流路17cには開閉弁18が設けられているが、この開閉弁18は省略可能である。
【0031】
第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12は、液化ガス貯槽1よりも低い位置又は液化ガス貯槽1と同レベルに配置されている。このため、液化ガス貯槽1内の液体水素Lは、ポンプを用いることなく第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12内に流入可能となっている。ただし、この配置関係には限られない。例えば、液化ガス貯槽1の内圧が貯留タンク11,12の内圧よりも高い状態に維持されるような場合には、貯留タンク11,12は液化ガス貯槽1よりも高い位置に配置されてもよい。
【0032】
第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12のそれぞれの上部は、ガス流路19を通して圧縮機15と接続されている。ガス流路19は、第1貯留タンク11に接続された第1ガス流路19aと、第2貯留タンク12に接続された第2ガス流路19bと、基端が第1ガス流路19a及び第2ガス流路19bに接続された合流ガス流路19cと、を含む。合流ガス流路19cの先端は、圧縮機15の吸入ポートに接続されている。すなわち、圧縮機15が作動すると、第1貯留タンク11又は第2貯留タンク12内の水素ガスGが圧縮機15に吸引される。
【0033】
ガス流路19における合流ガス流路19cには、ヒータ部21が設けられている。ヒータ部21は、第1貯留タンク11又は第2貯留タンク12から吸引されて圧縮機15に流入する前の水素ガスGを加熱する。
【0034】
圧縮機15の吐出ポートには、加圧流路23が接続されている。加圧流路23は、圧縮機15の吐出ポートに接続された加圧主流路23cと、加圧主流路23cから分岐した第1加圧支流路23a及び第2加圧支流路23bと、を含む。第1加圧支流路23aは、第1貯留タンク11の天部に接続され、第2加圧支流路23bは、第2貯留タンク12の天部に接続されている。
【0035】
第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12には、供給路25が接続されている。供給路25は、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12から押し出された液体水素Lを需要先3に向けて送り出すための流路である。供給路25は、第1貯留タンク11の底部に接続された第1供給路25aと、第2貯留タンク12の底部に接続された第2供給路25bと、第1供給路25a及び第2供給路25bに接続された合流供給路25cと、を含む。
【0036】
供給路25の合流供給路25cには、第2貯留タンク12又は第1貯留タンク11内から押し出された液体水素Lをガス化させる気化器27が設けられている。この気化器27によってガス化した水素ガスGが需要先3に送られる。なお、合流供給路25cには、開閉弁26が設けられているが、この開閉弁26は省略可能である。
【0037】
ガス供給システム10は、加圧切替機構30と、入口切替機構31と、出口切替機構32と、制御部33と、を備えている。加圧切替機構30は、圧縮機15によって加圧又は減圧される貯留タンク11,12を切り替えるための機構であり、吸入側切替部35と、加圧側切替部36と、を含む。
【0038】
吸入側切替部35は、第1ガス流路19aに設けられた第1吸入側バルブ35aと、第2ガス流路19bに設けられた第2吸入側バルブ35bと、を含む。第1吸入側バルブ35a及び第2吸入側バルブ35bは、制御部33によって選択的に開かれる。したがって、第1ガス流路19aから合流ガス流路19cに水素ガスGが流れる状態と、第2ガス流路19bから合流ガス流路19cに水素ガスGが流れる状態と、が選択的に得られる。
【0039】
なお、吸入側切替部35は、代替的に、第1ガス流路19a、第2ガス流路19b及び合流ガス流路19cの接続部に配置された三方弁(図示省略)によって構成されていてもよい。この三方弁は、第1ガス流路19aから合流ガス流路19cに水素ガスGが流れる状態と、第2ガス流路19bから合流ガス流路19cに水素ガスGが流れる状態と、を選択的に取り得る。
【0040】
加圧側切替部36は、第1加圧支流路23aに設けられた第1加圧側バルブ36aと、第2加圧支流路23bに設けられた第2加圧側バルブ36bと、を含む。第1加圧側バルブ36a及び第2加圧側バルブ36bは、制御部33によって選択的に開かれる。したがって、加圧主流路23cから第1加圧支流路23aに水素ガスGが流れる状態と、加圧主流路23cから第2加圧支流路23bに水素ガスGが流れる状態と、が選択的に得られる。
【0041】
なお、加圧側切替部36は、代替的に、加圧主流路23c、第1加圧支流路23a及び第2加圧支流路23bの接続部に配置された三方弁(図示省略)によって構成されていてもよい。この三方弁は、加圧主流路23cから第1加圧支流路23aに水素ガスGが流れる状態と、加圧主流路23cから第2加圧支流路23bに水素ガスGが流れる状態と、を選択的に取り得る。
【0042】
すなわち、加圧切替機構30は、第1吸入側バルブ35aが開き且つ第2吸入側バルブ35bが閉じた状態であり、且つ、第1加圧側バルブ36aが閉じ且つ第2加圧側バルブ36bが開いた状態である第1状態と、第1吸入側バルブ35aが閉じ且つ第2吸入側バルブ35bが開いた状態であり、且つ、第1加圧側バルブ36aが開き且つ第2加圧側バルブ36bが閉じた状態である第2状態と、を取り得る。
【0043】
入口切替機構31は、第1支流路17aに設けられた第1液側バルブ31aと、第2支流路17bに設けられた第2液側バルブ31bと、を含む。第1液側バルブ31a及び第2液側バルブ31bは、制御部33によって開閉制御される。すなわち、入口切替機構31は、第1液側バルブ31aが開き且つ第2液側バルブ31bが閉じた状態である第1入口側状態と、第1液側バルブ31aが閉じ且つ第2液側バルブ31bが開いた状態である第2入口側状態と、を取り得る。
【0044】
なお、入口切替機構31は、代替的に、主流路17c、第1支流路17a及び第2支流路17bの接続部に配置された三方弁(図示省略)によって構成されていてもよい。この三方弁は、主流路17cから第1支流路17aに水素ガスGが流れる第1入口側状態と、主流路17cから第2支流路17bに水素ガスGが流れる第2入口側状態と、を選択的に取り得る。
【0045】
出口切替機構32は、第1供給路25aに設けられた第1供給バルブ32aと、第2供給路25bに設けられた第2供給バルブ32bと、を含む。第1供給バルブ32a及び第2供給バルブ32bは、制御部33によって選択的に開かれる。すなわち、出口切替機構32は、第2供給バルブ32bが開き且つ第1供給バルブ32aが閉じた状態である第1出口側状態と、第2供給バルブ32bが閉じ且つ第1供給バルブ32aが開いた状態である第2出口側状態と、を取り得る。
【0046】
なお、出口切替機構32は、代替的に、第1供給路25a、第2供給路25b及び合流供給路25cの接続部に配置された三方弁によって構成されていてもよい。この三方弁は、第2供給路25bから合流供給路25cに水素ガスGが流れる第1出口側状態と、第1供給路25aから合流供給路25cに水素ガスGが流れる第2出口側状態と、を選択的に取り得る。
【0047】
制御部33は、加圧切替機構30(吸入側切替部35及び加圧側切替部36)、入口切替機構31、出口切替機構32及び圧縮機15を制御するように構成されている。具体的に、制御部33は、第1制御と第2制御とを実行可能である。
【0048】
第1制御では、圧縮機15が駆動され、加圧切替機構30(吸入側切替部35及び加圧側切替部36)が上述した第1状態になるように制御され、入口切替機構31が上述した第1入口側状態になるように制御され、出口切替機構32が上述した第1出口側状態になるように制御される。一方、第2制御では、圧縮機15が駆動され、加圧切替機構30(吸入側切替部35及び加圧側切替部36)が上述した第2状態になるように制御され、入口切替機構31が上述した第2入口側状態になるように制御され、出口切替機構32が上述した第2出口側状態になるように制御される。
【0049】
第1制御及び第2制御は、交互に実行される。
【0050】
ここで、ガス供給システム10により行われるガス供給方法について説明する。ガス供給方法では、貯留ステップと、第1押し出しステップと、第2押し出しステップと、がこの順に行われる。以降、第1押し出しステップと第2押し出しステップは、交互に繰り返して行なわれる。
【0051】
<貯留ステップ>
貯留ステップでは、第1液側バルブ31a及び第2液側バルブ31bが開かれる。これにより、液化ガス貯槽1内の液体水素Lが液流路17を通して第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12に流入し、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12に貯留される。第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12内が液体水素Lで満たされると、第1液側バルブ31a及び第2液側バルブ31bは閉じられる。このとき、第1供給バルブ32a及び第2供給バルブ32bは閉じられている。一方、第1及び第2吸入側バルブ35a,35b、第1及び第2加圧側バルブ36a,36bは、開いているが、閉じておいてもよい。
【0052】
<第1押し出しステップ>
続いて、第1押し出しステップが行われる。第1押し出しステップでは、制御部33が第1制御を実行する。第1制御では、入口切替機構31が第1入口側状態に設定され、加圧切替機構30が第1状態に設定され、出口切替機構32が第1出口側状態に設定される。したがって、入口切替機構31は、第1液側バルブ31aが開き且つ第2液側バルブ31bが閉じた状態となる。また、加圧切替機構30は、第1吸入側バルブ35aが開き且つ第2吸入側バルブ35bが閉じた状態であり、且つ、第1加圧側バルブ36aが閉じ且つ第2加圧側バルブ36bが開いた状態となる。また、出口切替機構32は、第2供給バルブ32bが開き且つ第1供給バルブ32aが閉じた状態となる。この状態で、圧縮機15が駆動される。
【0053】
これにより、第1貯留タンク11内の水素ガスGが圧縮機15によって吸引される。これに伴い、液化ガス貯槽1内の液体水素Lが第1貯留タンク11に流入する。
【0054】
第1貯留タンク11内で気化した水素ガスGは、第1ガス流路19a及び合流ガス流路19cを通して圧縮機15に吸引される。このとき、水素ガスGは、ヒータ部21において加熱された上で圧縮機15に流入する。圧縮機15で圧縮されて昇圧した水素ガスGは、加圧主流路23c及び第2加圧支流路23bを通して第2貯留タンク12を加圧する。第2加圧支流路23bは、第2貯留タンク12の上側部に接続されているため、水素ガスGによって第2貯留タンク12内の液体水素Lの液面が加圧される。つまり、1つの圧縮機15が、一方の貯留タンクの吸入と他方の貯留タンクの加圧という2つの役割を果たしている。
【0055】
第2貯留タンク12内が加圧されると、第2貯留タンク12内の液体水素Lは、第2供給路25bに押し出され、この液体水素Lは合流供給路25cを流れる。液体水素Lは気化器27においてガス化し、気化した水素ガスGは需要先3に向けて流れる。
【0056】
なお、第1押し出しステップでは、第1貯留タンク11内の液体水素Lの一部が気化して圧縮機15によって吸引されるが、第1貯留タンク11内の減圧に伴って液化ガス貯槽1内の液体水素Lが第1貯留タンク11に流入する。このため、第1押し出しステップを終了するときには、第1貯留タンク11内にある程度の液体水素Lが溜まった状態となる。
【0057】
第2貯留タンク12内の液体水素Lの全量が気化器27側に流れることにより、第1押し出しステップが終了する。第2貯留タンク12内に液体水素Lが存在しないことの確認は、第2貯留タンク12内の圧力の測定や液面センサなど種々の方法で行うことができる。また、簡易的に第1制御の実施時間が所定時間経過したことにより第1押し出しステップが終了したと判断してもよい。
【0058】
<第2押し出しステップ>
続いて、第2押し出しステップが行われる。第2押し出しステップでは、制御部33は第2制御を実行する。第2制御では、入口切替機構31が第2入口側状態に設定され、加圧切替機構30が第2状態に設定され、出口切替機構32が第2出口側状態に設定される。具体的に、入口切替機構31は、第1液側バルブ31aが閉じ且つ第2液側バルブ31bが開いた状態となる。また、加圧切替機構30は、第2吸入側バルブ35bが開き且つ第1吸入側バルブ35aが閉じた状態であり、且つ、第2加圧側バルブ36bが閉じ且つ第1加圧側バルブ36aが開いた状態となる。また、出口切替機構32は、第2供給バルブ32bが閉じ且つ第1供給バルブ32aが開いた状態となる。この状態で、圧縮機15の駆動が継続される。
【0059】
これにより、第2貯留タンク12内が減圧される。これに伴い、液化ガス貯槽1内の液体水素Lが第2貯留タンク12に流入する。
【0060】
第2貯留タンク12内で気化した水素ガスGは、第2ガス流路19b及び合流ガス流路19cを通して圧縮機15に吸引される。このとき、水素ガスGは、ヒータ部21において加熱された上で圧縮機15に流入する。圧縮機15で圧縮されて昇圧した水素ガスGは、加圧主流路23c及び第1加圧支流路23aを通して第1貯留タンク11を加圧する。これにより、第1貯留タンク11内の液体水素Lは、第1供給路25aに押し出され、この液体水素Lは合流供給路25cを流れ、気化器27においてガス化し、需要先3に向けて流れる。
【0061】
第1貯留タンク11内の液体水素Lの全量が気化器27側に流れることにより、第2押し出しステップが終了する。第1貯留タンク11内に液体水素Lが存在しないことの確認は、第1貯留タンク11内の圧力の測定や液面センサなど種々の方法で行うことができる。また、簡易的に第2制御の実施時間が所定時間経過したことにより第2押し出しステップが終了したと判断してもよい。なお、第2押し出しステップでは、第2貯留タンク12内の液体水素Lの一部が気化して圧縮機15によって吸引されるが、液化ガス貯槽1から液体水素Lが第2貯留タンク12に流入する。このため、第2押し出しステップを終了するときには、第2貯留タンク12内にある程度の液体水素Lが溜まった状態となる。
【0062】
第2押し出しステップが終了すると、再び第1押し出しステップが行われる。以降、第1押し出しステップと第2押し出しステップとが繰り返される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係るガス供給システム10では、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12が設けられており、制御部33により加圧切替機構30の状態が切り替えられる。加圧切替機構30が第1状態にある場合、第1貯留タンク11内が減圧されることにより、第1貯留タンク11内の液体水素Lが気化する。この気化した水素ガスGは圧縮機15に吸引されて圧縮され、第2貯留タンク12内の液体水素Lを加圧する。これにより、第2貯留タンク12内の液体水素Lが供給路25に押し出される。一方、加圧切替機構30が第2状態にある場合には、圧縮機15から吐出された水素ガスGにより第1貯留タンク11内の液体水素Lが供給路25に押し出される。このように、圧縮機15が吸引する水素ガスGが貯留されるタンクと、圧縮機15から吐出された水素ガスGによって加圧されるタンクとが別個に設けられている。このため、従来のように、タンク内の液体水素Lが需要先3に向けて押し出されるまで圧縮機15を待機状態にしておく必要がないため、液体水素Lを安定的に需要先3に向けて押し出すことができる。そして、ガス供給システム10では、第1貯留タンク11と第2貯留タンク12とを切り替え続けることで需要先3に向けて液体水素Lの連続供給が可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、ヒータ部21が設けられているため、圧縮機15の吸込温度を上げることができ、それによって吐出温度を上げることができる。したがって、貯留タンク11,12内の気化を促進させることができる。その結果、圧縮機15の処理量を少なくでき、圧縮機15の小型化及び動力の低減が可能となる。また、圧縮機15が低温ガスを吸入する場合と比べて圧縮機15内部の低温ガス対策を不要とすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、例えば再生可能エネルギーから得られた液体水素Lを需要先3に供給することができる。また、技術的難易度が高い液体水素Lポンプを用いることなく高圧大流量の液体水素Lを圧送することができる。また、圧縮機によって需要先3まで水素ガスGを送る方法に比べ、圧縮機15に要求される処理量が小さくなるため、圧縮機15の小型化及び動力の低減が可能となる。また、圧縮機15での断熱圧縮熱を気化熱源として使用できるため、圧縮機15の小型化、動力の低減、気化器27の小型化が可能となる。
【0066】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態においては、気化器27が設けられているが、気化器27を省略することが可能である。この場合、液体水素Lが需要先3に供給され、需要先3にて液体水素L自体を利用してもよく、あるいは、需要先3にて液体水素Lを気化させてもよい。
【0067】
前記実施形態では、圧縮機15に吸入される前の水素ガスGを加熱するヒータ部21が設けられているが、図2に示すように、ヒータ部21は削除されてもよい。
【0068】
また、図3に示すように、ボイルオフガス(BOG)を処理するための蒸発ガス流通路38及び圧縮ガス流通路39が追加されていてもよい。蒸発ガス流通路38は、一端部が液化ガス貯槽1の上端部に接続され、他端部がガス流路19における合流ガス流路19cに接続されている。すなわち、蒸発ガス流通路38は、液化ガス貯槽1内のボイルオフガスを、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12を介することなく圧縮機15で吸引できるようにするための流路である。圧縮ガス流通路39は、一端部が加圧流路23における加圧主流路23cに接続され、他端部が供給路25における気化器27よりも下流側の部位に接続されている。すなわち、圧縮ガス流通路39は、圧縮機15に吸引されたボイルオフガスを供給路25に送り出すための流路である。
【0069】
蒸発ガス流通路38及び圧縮ガス流通路39には、開閉機構41が設けられている。開閉機構41は、蒸発ガス流通路38に配置されたバルブ41aと圧縮ガス流通路39に配置されたバルブ41bとを含む。これらバルブ41a,41bは制御部33によって開閉制御される。
【0070】
図3のガス供給システム10では、例えば液化ガス貯槽1の内圧を検出する検出器43が設けられていて、この検出器43によって液化ガス貯槽1内の圧力が予め設定された値よりも高い値になると、蒸発ガス流通路38及び圧縮ガス流通路39が開通するように開閉機構41を制御するとともに圧縮機15を駆動する。これにより、液化ガス貯槽1内のボイルオフガスを回収することができる。これ以外のときは、開閉機構41は閉じられている。
【0071】
図3のシステム10では、圧縮機15が、ボイルオフガス処理用の圧縮機を兼用するため、ボイルオフガス処理のための専用の圧縮機を追加する必要がない。なお、検出器43を省略し、蒸発ガス流通路38及び圧縮ガス流通路39が定期的に開通するように開閉機構41を制御してもよい。
【0072】
ガス供給システム10では、圧縮ガス流通路39が省略されてもよい。この場合、第1又は第2制御では液化ガス貯槽1内のボイルオフガスが蒸発ガス流通路38を介して、貯留タンク11,12のうち減圧される側の貯留タンクで生じた水素ガスGと合流する。ボイルオフガス及び当該減圧される側の貯留タンクの水素ガスGは、圧縮機15に吸入されるとともに貯留タンク11,12のうち加圧される側の貯留タンクへと供給される。これにより、ボイルオフガスの処理と、貯留タンク11,12から需要先への水素ガスGの供給とを同時に行うことができる。
【0073】
図4に示すように、圧縮機15を迂回しつつ第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12を互いに繋ぐバイパス通路45が設けられていてもよい。バイパス通路45は、一端部がガス流路19における合流ガス流路19cに接続され、他端部が圧縮ガス流通路39に接続されている。バイパス通路45にはバイパス切替機構46が設けられており、バイパス通路45はバイパス切替機構46によって開閉される。
【0074】
第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12には、内圧を検出する検出器51,52が設けられており、制御部33は、この検出器51,52による検出結果に基づいてバイパス切替機構46を制御する。具体的には、検出器51,52により、第1貯留タンク11又は第2貯留タンク12の内圧が所定値を超えたことが検出されると、この検出結果に基づき、制御部33は、バイパス通路45が開通するようにバイパス切替機構46を制御する。このとき、第1吸入側バルブ35a又は第2吸入側バルブ35bのうち、昇圧が検出された貯留タンク11,12に対応するバルブ35a,35bも開放される。したがって、図4のシステム10では、貯留タンク11,12内の圧力の異常な上昇を抑制しつつ、水素ガスGの廃棄も防止できる。
【0075】
バイパス通路45が設けられる場合には、第1貯留タンク11又は第2貯留タンク12の内圧が低下したときに、図5に示すように、当該貯留タンク11,12内の圧力を回復させるべくバイパス通路45を利用することもできる。具体的に、例えば加圧切替機構30が第1状態にある場合において、検出器52により、第1貯留タンク11の内圧が予め設定された閾値以下になったことが検出されると、バイパス切替機構46によってバイパス通路45が開通し、また、第2加圧側バルブ36bによって第2加圧支流路23bが開通する。これにより、図5に破線で示すように、供給路25内の水素ガスGが、バイパス通路45及びガス流路19の合流ガス流路19cを通って圧縮機15に吸引され、圧縮機15から吐出された水素ガスGは、加圧主流路23c及び第2加圧支流路23bを通して第2貯留タンク12に供給される。
【0076】
一方、加圧切替機構30が第2状態である場合において、第2貯留タンク12の異常低圧が検出された場合には、同様にして、バイパス通路45を利用して供給路25から圧縮機15に水素ガスGが供給される。
【0077】
このように、第1及び第2状態のそれぞれにおいて第2貯留タンク12及び第1貯留タンク内の液面加圧に必要な圧力を確保できる。
【0078】
前記実施形態では、入口切替機構31及び出口切替機構32が設けられているが、入口切替機構31及び出口切替機構32は必須の構成要素ではない。図6に示すように、入口切替機構31及び出口切替機構32に代えて、入口側規制部55及び出口側規制部56が設けられてもよい。この場合、液流路17における主流路17cに開閉弁18が設けられていてもよい。
【0079】
入口側規制部55は、液化ガス貯槽1から第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12に液体水素Lが流れることを許容する一方、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12から液化ガス貯槽1に液体水素Lが流れること阻止するように構成されている。入口側規制部55は、例えば逆止弁によって構成されている。
【0080】
出口側規制部56は、第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12から需要先3に向けて水素ガスGが流れることを許容する一方、供給路25から第1貯留タンク11及び第2貯留タンク12に水素ガスGが流れることを阻止するように構成されている。出口側規制部56は、例えば流量調整弁によって構成されていてもよく、あるいは、直列に配置された逆止弁及び流量調整弁によって構成されていてもよい。
【0081】
この構成では、加圧切替機構30が第1状態にある場合において、第1貯留タンク11内が減圧された場合に、液化ガス貯槽1の液体水素Lが液流路17を通じて第1貯留タンク11に流入する一方で、供給路25から第1貯留タンク11への液体水素Lの還流が防止される。加圧切替機構30が第2状態にある場合には、液化ガス貯槽1の液体水素Lが液流路17を通じて第2貯留タンク12に流入する一方で、供給路25から第2貯留タンク12への水素ガスGの還流が防止される。なお、第1押し出しステップ(又は第2押し出しステップ)においては、第1貯留タンク11(又は第2貯留タンク12)内の圧力及び液量をコントロールすべく液流路17の開閉弁18を一時的に閉じてもよい。
【0082】
なお、図6の構成においても、図2~5等の前述した構成を採用することができる。
【0083】
上記実施形態では、圧縮機15がガス流路19を通して、貯留タンク11,12内のガスを吸引する。これに代え、ガス供給システム10において、図7に示すように、第1ガス流路19a、第1吸入側バルブ35a、第2ガス流路19b及び第2吸入側バルブ35bが省略され、ガス流路19が所定の水素ガスを貯留しているガスタンク60に接続されてもよい。この場合、加圧切替機構30では、第1状態において、圧縮機15がガスタンク60の水素ガスを用いて第2貯留タンク12を加圧し、第2状態において、圧縮機15がガスタンク60の水素ガスを用いて第1貯留タンク11を加圧する。図7に示すガス供給システム10の他の構成は、図1と同様である。
【符号の説明】
【0084】
1 :液化ガス貯槽
3 :需要先
10 :ガス供給システム
11 :第1貯留タンク
12 :第2貯留タンク
13 :貯留タンク群
15 :圧縮機
21 :ヒータ部
25 :供給路
27 :気化器
30 :加圧切替機構
31 :入口切替機構
32 :出口切替機構
33 :制御部
38 :蒸発ガス流通路
39 :圧縮ガス流通路
41 :開閉機構
45 :バイパス通路
46 :バイパス切替機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7