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  • 特開-セルケース 図1
  • 特開-セルケース 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171779
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】セルケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6566 20140101AFI20241205BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/613
H01M10/6563
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088985
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】片山 晴之
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】ケース外からの異物の吸入を抑制したセルケースを提供する。
【解決手段】電池セル10を格納することによって電池パック1を構成するセルケース20であって、電池セル10を格納しているケース本体21と、ケース本体21を形成している壁面を内外方向に貫通する孔22と、孔22を開閉するバルブ23と、を備え、バルブ23は、電池セル10と、ケース本体21の壁面と、の間に設けられた流路31に冷却風が流れて壁面より内側が負圧となることにより、ケース本体21の内外で発生する圧力差に応じて、孔22を閉状態から開状態に変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルを格納することによって電池パックを構成するセルケースであって、
前記電池セルを内側に格納しているケース本体と、
前記ケース本体を形成している壁面を内外方向に貫通する孔と、
前記孔を開閉するバルブと、を備え、
前記バルブは、
前記電池セルと、前記ケース本体の前記壁面と、の間に設けられた流路に冷却風が流れ、前記壁面より内側が負圧となることにより、前記ケース本体の内外で発生する圧力差に応じて、前記孔を閉状態から開状態に変更する、
セルケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックのセルケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池セルをセルケースに格納した電池パックが利用されている。電池パックは、使用中に加熱された状態となり、温度上昇が発生する。ここで電池パックでは、温度上昇に起因して予期せぬ動作が発生することを防止するために、温度を低下させるための冷却が行われる。
【0003】
特許文献1には、冷却装置において冷却風を発生させ、発生させた冷却風をセルケース内に案内することで、電池モジュールを冷却する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-107087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された電池パックは、ケースの下部に孔を開けた構造であって、常にこの孔から空気を吸い込む構造となっている。そのため、この電池パックでは、ケースの外からの吸気を必要としない場合であっても吸気を行うため、ケース外からケース内に異物を吸い込みやすいという問題がある。また、電池パックにおいて、ケース外からケース内に異物が吸入されることは好ましく無く、ケース外から異物が吸入されにくいセルケースが望まれていた。
【0006】
本開示は、ケース外からの異物の吸入を抑制したセルケースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかるセルケースは、電池セルを格納することによって電池パックを構成するセルケースであって、前記電池セルを内側に格納しているケース本体と、前記ケース本体を形成している壁面を内外方向に貫通する孔と、前記孔を開閉するバルブと、を備え、前記バルブは、前記電池セルと、前記ケース本体の前記壁面と、の間に設けられた流路に冷却風が流れて前記ケース本体の前記壁面より内側が負圧となることにより、前記ケース本体の内外で発生する圧力差に応じて、前記孔を閉状態から開状態に変更する。
これにより、セルケースに設けられた孔を閉状態と開状態で切り替えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示よれば、ケース外からの異物の吸入を抑制したセルケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電池パックの構成例を示す側面図である。
図2】セルケースのケース本体に設けられた孔及びバルブの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
以下、図面を参照して本実施の形態に係るセルケースについて説明する。図1は、電池パック1の構成例を示す側方の断面図である。図1に示すように、電池パック1は、電池セル10と、セルケース20と、を備える。また、電池パック1の近傍には冷却ファン2が設けられている。なお、本実施の形態にかかる電池パック1は、車両に利用されるものとして説明する。
【0011】
電池セル10は、バッテリーを構成する個々の電池である。電池セル10は、セルケース20の内側に格納されている。
【0012】
セルケース20は、複数の壁面により構成されているケース本体21と、ケース本体21の壁面を貫通する孔22と、孔22の開閉状態を変更するバルブ23(図2参照)と、を有する。
【0013】
具体的には、ケース本体21は、少なくとも電池セル10の下方及び側方を覆う壁面を有している。すなわち、ケース本体21では、これらの壁面で電池セル10を囲むことにより、ケース本体21の内側に電池セル10を格納している。ここでは、ケース本体21のうち、電池セル10の下方に配される壁面を下側壁面21aとして説明する。
【0014】
下側壁面21aには、ケース本体21の内外方向に貫通する複数の孔22が設けられている。複数の孔22には、それぞれバルブ23が設けられている。
【0015】
図2(a)及び図2(b)は、1つの孔22に、バルブ23が設けられている状態を示していた孔22近傍の拡大図である。なお、図2(a)及び図2(b)は、図1において破線で示した孔22箇所の拡大図であるが、他の孔22についても同様である。
【0016】
典型的にはバルブ23は、ゴム製であるが、これに限られない。ここではバルブ23は、孔22を下側壁面21aの内側から塞ぐことができるヘッド23aが設けられているものとして説明する。
【0017】
ヘッド23aは、ケース本体21の内部と外部の圧力差が所定の値より小さい場合には、孔22を塞ぐように配されている。このようにヘッド23aが孔22を塞ぐ状態を閉状態とする。
【0018】
一方、ヘッド23aは、ケース本体21の内部と外部の圧力差が所定値以上となった場合には上方向に動作して、孔22を開いた状態とする。このようにヘッド23aが孔22を開いた状態を開状態とする。ここでは、バルブ23は、後述する冷却ファン2の冷風が流れる流路31に配されているものとする。
【0019】
ここで図2(a)では、バルブ23が閉状態であって、ケース本体21の外側から内側に孔22を介した空気の流入が発生していない状態を示している。一方、図2(b)は、バルブ23が開状態であって、ケース本体21の下側壁面21aの外側から内側に、孔22を介して空気が流入される状態を示している。
【0020】
冷却ファン2は、冷却風を流路31に送り出すファンである。図1に示すように、流路31は、少なくとも電池セル10の下面と、ケース本体21の下側壁面21aの間において、冷却風が通過するように形成されている。
【0021】
ここで、通常時には下側壁面21aの孔22を閉状態とし、特に冷却が必要な場合にのみ孔22を開状態として、ケース本体21の外から吸気して電池セル10の冷却を行う動作について説明する。
【0022】
電池パック1の電池セル10が低負荷で利用されている場合には、冷却ファン2から所定の流速の冷却風が流路31に流れる状態となる。この場合の冷却風の流速は、低速である。
【0023】
流路31を流れる冷却風の流速が低速である場合には、ゴム製のバルブ23のヘッド23aは動作せず、孔22を塞いだままである。すなわち、電池パック1にかける負荷が低負荷や無負荷の場合には、バルブ23により、孔22は閉状態である。
【0024】
すなわち、電池パック1では、孔22を介してケース本体21の外部から吸気を行う必要無い場合には、バルブ23により孔22を閉状態としておくことができるため、セルケース20の内側への異物の混入を抑制することができる。
【0025】
一方で、冷却ファン2は、車両に高負荷がかかった場合には、電池セル10をより冷却するために、冷却風の風速を速くするように動作する。
【0026】
冷却ファン2から流路31への冷却風の風速が速くなると、ゴム製のバルブ23のヘッド23a付近のケース本体21内の圧力が低下して負圧が生じる。これにより、ケース本体21の下側壁面21aの内側と外側の間には、所定の圧力差が生じることとなる。
【0027】
このように所定の圧力差が生じると、バルブ23のヘッド23aは、圧力差に応じて上方向に動作する。これによりバルブ23は、孔22を開状態にすることができる。ここで図2(b)に示すように、孔22は、開状態になることで、ケース本体21の下側壁面21aの外側から内側に吸気される状態となる。
【0028】
これにより電池パック1は、電池セル10への冷却を強めたい場合には、セルケース20の外側からの吸気によって、セルケース20内の電池セル10への冷却風を増加させた状態にすることができる。
【0029】
したがって電池パック1では、孔22の状態を、セルケース20の外側からの吸気を行う開状態と、異物の混入を抑制する閉状態と、で切り替えることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0031】
例えば、上記ではケース本体21の下側壁面21aにのみ孔22が設けられているものとして説明したが、他の壁面に孔22が設けられていても良い。
【0032】
バルブ23は、流路31に流れる冷却風の風速による負圧によって上方向への動作を行うものとして説明したが、ケース本体21内の圧力を負圧にする方法はこれに限られない。
【0033】
また、孔22を塞いだ閉状態から、孔22を開いた開状態に変更するためのバルブ23の動作は、上方向への動作に限られず、バルブ23自体の変形や他方向への動作等とすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 電池パック
2 冷却ファン
10 電池セル
20 セルケース
21 ケース本体
21a 下側壁面
22 孔
23 バルブ
23a ヘッド
31 流路
図1
図2