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特開2024-171788電気集塵設備及び、電気集塵設備の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171788
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電気集塵設備及び、電気集塵設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/70 20060101AFI20241205BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B03C3/70 Z
F27D17/00 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088997
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】生野 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】柴田 航平
【テーマコード(参考)】
4D054
4K056
【Fターム(参考)】
4D054AA02
4D054BA01
4D054EA18
4D054FA10
4K056AA01
4K056AA02
4K056AA16
4K056CA02
4K056DB15
(57)【要約】
【課題】 露出端子において可燃性ガスが燃焼する、いわゆる異常燃焼を防止する、電気集塵設備等を提供する。
【解決手段】 電気集塵設備は、可燃性ガスに含まれるダストを、帯電させた電極によって捕集する。電気集塵設備は、前記可燃性ガスが供給される供給口、前記可燃性ガスを排出する排出口及び、前記供給口と前記排出口の間に配置されている前記電極と、を有する集塵室と、壁部によって前記集塵室と隔てて配され、前記電極に給電するための露出端子が設けられている給電室と、前記集塵室及び、前記給電室を隔てる前記壁部に形成された取付孔に挿入されかつ、前記露出端子及び、前記電極を電気的に接続する給電ケーブルと、前記壁部の前記取付孔を閉塞するように設けられかつ、前記給電ケーブル及び、前記壁部を絶縁する貫通碍子と、酸素を成分として含有する酸素含有ガスを前記給電室に供給する酸素含有ガス供給部と、前記給電室と外部とを接続する放散管と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスに含まれるダストを、帯電させた電極によって捕集する電気集塵設備であって、
前記可燃性ガスが供給される供給口、前記可燃性ガスを排出する排出口及び、前記供給口と前記排出口の間に配置されている前記電極と、を有する集塵室と、
壁部によって前記集塵室と隔てて配され、前記電極に給電するための露出端子が設けられている給電室と、
前記集塵室及び、前記給電室を隔てる前記壁部に形成された取付孔に挿入されかつ、前記露出端子及び、前記電極を電気的に接続する給電ケーブルと、
前記壁部の前記取付孔を閉塞するように設けられかつ、前記給電ケーブル及び、前記壁部を絶縁する貫通碍子と、
酸素を成分として含有する酸素含有ガスを前記給電室に供給する酸素含有ガス供給部と、
前記給電室と外部とを接続する放散管と、を含む、電気集塵設備。
【請求項2】
前記酸素含有ガス供給部は、窒素を含みかつ、前記窒素の濃度が80体積%以下でありかつ、前記酸素の濃度が15体積%以上である前記酸素含有ガスを前記給電室に供給する、請求項1に記載の電気集塵設備。
【請求項3】
前記酸素含有ガス供給部は、前記酸素含有ガスの露点を低下させるドライヤーを有する、請求項1又は2に記載の電気集塵設備。
【請求項4】
前記放散管は前記給電室の天井側に設けられる、請求項1又は2に記載の電気集塵設備。
【請求項5】
前記露出端子は、前記給電室の底部側に設けられる、請求項1又は2に記載の電気集塵設備。
【請求項6】
可燃性ガスに含まれるダストを、帯電させた電極によって捕集する電気集塵設備の運転方法であって、
前記電極に給電して前記電極を帯電させる帯電ステップと、
前記電極が配置されている集塵室に前記可燃性ガスを供給する可燃性ガス供給ステップと、
壁部によって前記集塵室と隔てて配され、前記電極に給電するための露出端子が設けられている給電室に、酸素を成分として含有する酸素含有ガスを供給しかつ、前記給電室から外部に気体を排出させる酸素含有ガス供給ステップと、
を有する電気集塵設備の運転方法。
【請求項7】
前記酸素含有ガス供給ステップにおいて、露点が-18~10℃の前記酸素含有ガスが供給される、請求項6に記載の電気集塵設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスに含まれるダストを捕集する電気集塵設備及び、電気集塵設備の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銑鋼一貫製鉄所においては、鉄鉱石を還元して溶銑を製造する高炉の炉頂から排出される高炉ガスをはじめとして、転炉やコークス炉で副生ガスが発生する。副生ガスには、可燃性ガスを含むため燃料ガスなどに利用されている。副生ガスは、ダストを含有するため、燃料ガスとして使用される前に電気集塵機等によってダストが取り除かれる。
【0003】
電気集塵機は、ダスト等の微粒子に電荷を与える放電電極と、放電電極に直流電圧を給電する直流電源が設けられている給電室と、帯電させたダストを捕捉する集塵電極と、放電電極及び、集塵電極を収容する集塵室を含む。副生ガスが供給される集塵室は、壁部によって給電室と隔てられている。
【0004】
集塵室に配される放電電極及び、給電室に設けられている直流電圧を給電する直流電源は、給電ケーブルによって電気的に接続されている。集塵室及び、給電室が設けられている給電室を隔てる壁部には、当該壁部と給電ケーブルとを絶縁する貫通碍子が設けられている。すなわち、給電ケーブルは、貫通碍子を介して給電室及び放電電極を電気的に接続している。
【0005】
貫通碍子は、壁部の設けられた孔に挿通して設けられている。貫通碍子が設けられている孔は、パッキン等の封止部材によって閉塞され、集塵室の可燃性ガスが給電室に漏洩することを防止している。
【0006】
パッキン等の封止部材は、可燃性ガスに含まれる化学物質などにより劣化することがある。封止部材が劣化すると、可燃性ガスが給電室に漏洩し、可燃性ガスが露出端子と接触して燃焼する異常燃焼が発生する恐れがある。
【0007】
このような可燃性ガスの異常燃焼を防止することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、貫通碍子と吊りロッドの接合部分の気密性を改善することにより、貫通碍子の内部の空洞を経由したガスの流れを遮断することが開示されている。
【0008】
より具体的には、特許文献1では、吊りロッドの外径と略同径の内径を有するドーナツ状の座金及び、樹脂製パッキンを、吊りロッドの外縁に密着させながら、貫通碍子の底面に固設させることでガスシール性を高めることが行われている。
【0009】
また、特許文献2には、コークス炉で発生する可燃性ガスの異常燃焼を防止するために、可燃性ガスを含む室内を可燃性ガスの爆発限界外となるように不活性ガスを供給する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第7094755号
【特許文献2】特開平7-126654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂製パッキンは、経年劣化により気密性が低下する。このため、定期的なパッキンの交換が必要となり、メンテナンス性が悪いという問題がある。
【0012】
また、特許文献1で用いられる座金は、製鉄所の副生ガスのように腐食性物質を含有する可燃性ガスにより腐食が生じやすい問題があり、気密性の維持が難しい問題がある。
【0013】
また、特許文献2に記載の電気集塵機のように、給電ケーブルの端部等の露出端子が窒素雰囲気にさらされると、火花電圧が低下して火花が発生しやすくなるため、異常燃焼が発生する可能性が高まる問題がある。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、露出端子によって可燃性ガスが燃焼する、いわゆる異常燃焼を抑制する、電気集塵設備及び、電気集塵設備の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
[1]
可燃性ガスに含まれるダストを、帯電させた電極によって捕集する電気集塵設備であって、
前記可燃性ガスが供給される供給口、前記可燃性ガスを排出する排出口及び、前記供給口と前記排出口の間に配置されている前記電極と、を有する集塵室と、
壁部によって前記集塵室と隔てて配され、前記電極に給電するための露出端子が設けられている給電室と、
前記集塵室及び、前記給電室を隔てる前記壁部に形成された取付孔に挿入されかつ、前記露出端子及び、前記電極を電気的に接続する給電ケーブルと、
前記壁部の前記取付孔を閉塞するように設けられかつ、前記給電ケーブル及び、前記壁部を絶縁する貫通碍子と、
酸素を成分として含有する酸素含有ガスを前記給電室に供給する酸素含有ガス供給部と、
前記給電室と外部とを接続する放散管と、を含む、電気集塵設備。
[2]
前記酸素含有ガス供給部は、窒素を含みかつ、前記窒素の濃度が80体積%以下の前記酸素含有ガスを前記給電室に供給する、[1]に記載の電気集塵設備。
[3]
前記酸素含有ガス供給部は、前記酸素含有ガスの露点を低下させるドライヤーを有する、[1]又は[2]に記載の電気集塵設備。
[4]
前記放散管は前記給電室の天井側に設けられる、[1]~[3]のいずれかに記載の電気集塵設備。
[5]
前記露出端子は、前記給電室の底部側に設けられる、[1]~[4]のいずれかに記載の電気集塵設備。
[6]
可燃性ガスに含まれるダストを、帯電させた電極によって捕集する電気集塵設備の運転方法であって、
前記電極に給電して前記電極を帯電させる帯電ステップと、
前記電極が配置されている集塵室に前記可燃性ガスを供給する可燃性ガス供給ステップと、
壁部によって前記集塵室と隔てて配され、前記電極に給電するための露出端子が設けられている給電室に、酸素を成分として含有する酸素含有ガスを供給しかつ、前記給電室から外部に気体を排出させる酸素含有ガス供給ステップと、
を有する電気集塵設備の運転方法。
[7]
前記酸素含有ガス供給ステップにおいて、露点が-18~10℃の前記酸素含有ガスが供給される、[6]に記載の電気集塵設備の運転方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気集塵設備によれば、酸素を成分として含有する酸素含有ガスを前記給電室に供給する酸素含有ガス供給部を含むことにより、給電室において火花電圧を高めることができ、火花が発生する可能性を低くすることができる。また、給電室と外部とを接続する放散管を有することにより、給電室の気体を酸素含有ガスに入れ替えることが可能となる。これにより、さらに給電室において火花電圧を高めることができ、火花が発生する可能性を低くすることができる。また、給電室に可燃性ガスが流入した場合であっても、放散管から排出させることが可能となる。これにより、露出端子で可燃性ガスが燃焼する、いわゆる異常燃焼を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電気集塵設備の構成を示す説明図である。
図2】電極の構成を示す説明図である。
図3】貫通碍子の取付態様を示す説明図である。
図4】電気集塵設備による電気集塵方法を示すフロー図である。
図5】他の実施形態に係る電気集塵設備の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、電気集塵設備の構成を示している。電気集塵設備100は、可燃性ガスが供給される供給口11、可燃性ガスを排出する排出口12及び、供給口11と排出口12の間に配置されている電極13と、を有する集塵室10を含む。
【0019】
可燃性ガスとしては、例えば、製鉄所の高炉、コークス炉、転炉などで生成される副生ガスが挙げられる。高炉で生成された副生ガス(以下、高炉ガスとも称する)は、高炉で鉄鉱石を還元して銑鉄が製造される際に生成されたガスである。コークス炉で生成された副生ガス(以下、コークス炉ガスとも称する)は、コークスを製造するために石炭を高温で乾留された際に生成されるガスである。転炉で生成された副生ガス(以下、転炉ガスとも称する)は、転炉における製鋼工程で生じたガスである。
【0020】
これらの副生ガスは、生成された工程に応じた成分組成を有する。例えば、高炉ガスの代表的な組成としては、可燃成分である一酸化炭素が21~30体積%、不燃成分である窒素が50~60体積%、二酸化炭素が10~22体積%が挙げられる。
【0021】
またコークス炉ガスの代表的な組成としては、水素46~60体積%、メタン20~35体積%、一酸化炭素5~10体積%、エチレンなどの炭化水素2~4体積%が挙げられる。
【0022】
さらに転炉ガスの代表的な組成としては、一酸化炭素約75体積%、二酸化炭素約13体積%が挙げられ、他にも1体積%以下の酸素、10体積%以下の窒素、2体積%以下の水素が含まれる。いずれの副生ガスも、可燃性ガスに分類される一酸化炭素を一定程度含有している。また、これらの副生ガスは、加熱炉などの燃焼用燃料として用いられている。
【0023】
これらの副生ガスは、生成工程に応じた種々のダスト20を含む。このため、加熱炉などの燃焼用燃料に使用される前に、電気集塵機によってダストが除去される。
【0024】
集塵室10は、特には限定されないが、例えば、箱状に形成されている。集塵室10は、本実施形態においては、略直方体状に形成されている。集塵室10の一端側には、供給口11が形成されている。
【0025】
供給口11は、ダストを含有する可燃性ガスを集塵室10に供給する流路である。供給口11には、可燃性ガスを供給するポンプ(図示せず)が接続される。
【0026】
集塵室10の他端側には、排出口12が形成されている。排出口12には、可燃性ガスを外部に排出するダクト(図示せず)が接続される。
【0027】
集塵室10の中央には、電極13が配されている。電極13は、プラスに帯電する電極及び、マイナスに帯電する電極を有する。電極13には、給電ケーブルの一端側が接続されている。
【0028】
給電室40は、集塵室10と隣接して配置されている。より具体的には、給電室40は、集塵室10と壁部Wによって隔てられた箱状に形成されている。
【0029】
給電室40には、直流電源50が設けられている。直流電源50としては、例えば、定格出力4~5kW、出力電圧8~11kVのものが用いられる。直流電源50は、直流電圧を供給する一対の露出端子51を有する。露出端子51の各々は、給電室40に収容されている。言い換えれば、露出端子51の各々は、給電室40によって覆われている。露出端子51の各々は、給電ケーブル30の他端側と接続されている。したがって、給電ケーブル30は、露出端子51及び、電極13を電気的に接続する。尚、給電ケーブル30の導体には、ステンレス、銅、アルミニウム等が用いられるとよい。
【0030】
直流電源50の露出端子51は、給電室40に収容されている。言い換えれば、給電室40は、露出端子51を覆う収容空間を有する。尚、直流電源50は、露出端子51が給電室40に設けられていればよく、その他の部位は、給電室40の外部に設けられているようにしてもよい。
【0031】
露出端子51は、可燃性ガスの空気に対する重さに応じた位置に設けられているとよい。例えば、可燃性ガスの主成分が一酸化炭素である場合、一酸化炭素の比重は、空気を1.000とした場合0.967である。このため、一酸化炭素は、空気よりもやや軽く、空気の系では上方に位置する傾向がある。特に、燃焼排ガスである上記の副生ガスは温度が高く、当該副生ガスに含まれている一酸化炭素、屋内では天井付近にたまりやすい傾向がある。したがって、露出端子51は、給電室40の高さ方向において、給電室40の底部側に設けられているとよい。露出端子51が、給電室40の底部側に設けられていることにより、可燃性ガスから露出端子51を遠ざけることができるため、発火の可能性を低減させることができる。
【0032】
集塵室10と、給電室40と、を隔てる壁部Wには、その厚さ方向に貫通して形成された取付孔Hが設けられている。取付孔Hには、給電ケーブル30が挿入されている。取付孔Hには、給電ケーブル30と壁部Wとを電気的に絶縁する貫通碍子60が設けられている。取付孔Hは、図示しないパッキン等によって閉塞されている。言い換えれば、貫通碍子60は、壁部Wの取付孔Hを閉塞するように設けられている。
【0033】
尚、壁部Wの取付孔Hは、可燃性ガスの空気に対する重さに応じた位置に設けられているとよい。可燃性ガスの主成分が一酸化炭素である場合、取付孔Hは、給電室40の高さ方向において、給電室40の天井側に設けられているとよい。すなわち、取付孔Hの近傍で亀裂が生じた際に、可能な限り露出端子51と可燃性ガスとの距離を設け、両者の接触可能性を低減させることが可能となる。
【0034】
このように、集塵室10は、可燃性ガスが外部に漏洩することを防止するために、供給口11及び、排出口12を除いて気密が保たれている。供給口11から可燃性ガスが供給されることにより、集塵室10は、可燃性ガス雰囲気となる。可燃性ガスは、電極13を通過した後に排出口12から排出される。したがって、可燃性ガスは、図1の矢印に沿って供給口11から排出口12へと移動する。
【0035】
電気集塵設備100は、酸素を成分として含有する酸素含有ガスを給電室40に供給する酸素含有ガス供給部70を有する。酸素含有ガス供給部70は、例えば気体を給電室40に噴射するノズル71と、ノズル71に酸素含有ガスを供給するポンプ72を含む。
【0036】
酸素は、露出端子51による火花放電が生じる際の最小の電圧である火花電圧を増加させる性質を有する。このため、酸素含有ガス供給部70から供給される酸素含有ガスは、酸素及び窒素を含み、窒素の濃度が80体積%以下であることが好ましい。また、酸素含有ガスの酸素の濃度は、15体積%以上であるとよく、20体積%以上であることが好ましい。
【0037】
酸素含有ガスに酸素が含有されることにより、火花放電の発生を低減させることができる。このため、可燃性ガスが給電室40に流入した場合であっても、異常燃焼の発生を抑制することができる。
【0038】
また、単価が高価な酸素の代わりに、安価な窒素を酸素含有ガスに含有させることにより、火花放電の抑制効果を維持しかつ、ランニングコストを抑えることが可能となる。尚、酸素含有ガスとしては、安価に入手できるため空気を用いるとよい。
【0039】
また、窒素は、不活性ガスではあるが、給電室40におけるガスの火花電圧を低下させる性質を有する。このため、給電室40における窒素の濃度が高まると、露出端子51と壁面との間で火花放電が発生することがある。このため、給電室40に窒素を充満させることは、火花放電の発生の観点から好ましくない。
【0040】
酸素含有ガス供給部70には、ノズル71とポンプ72との間に、酸素含有ガスの露点を低下させるドライヤー73を設けるとよい。酸素含有ガスの露点を低下させることにより、結露の発生を抑止し、火花放電の発生を低減させることができる。
【0041】
ドライヤー73としては、特には限定されないが、気体を圧縮させるコンプレッサ(図示せず)と、冷媒によってコンプレッサによって圧縮された空気を冷却する熱交換器と、を有する、いわゆる冷却式エアドライヤーを用いることができる。
【0042】
ドライヤー73の処理対象となる気体は、コンプレッサで圧縮されると、飽和水蒸気量に達して水滴を発生させる。また、熱交換器で当該気体が冷却されると、結露が発生する。このようにして、ドライヤー73において気体から水分が除去される。
【0043】
電気集塵設備100は、給電室40と外部と内部とを接続する放散管80を含む。放散管80は、給電室40の気体を外部に排出するダクトである。放散管80は、例えば煙突として構成される。放散管80は、可燃性ガスの重さに応じた位置に設けられているとよい。例えば、可燃性ガスの主成分が一酸化炭素である場合、放散管80は、給電室40の高さ方向において、天井側に設けられているとよい。
【0044】
上述の通り、一酸化炭素は空気よりも軽い性質を有する。また、燃焼排ガスである上記の副生ガスは高温であり、当該副生ガスに含まれている一酸化炭素は、屋内では天井付近にたまりやすい傾向がある。したがって、放散管80が、給電室40の天井側に設けられていることにより、一酸化炭素をより効率的に外部に排出させることができ、発火の可能性を低減させることができる。
【0045】
また、給電室40の収容空間の気体は、酸素含有ガスが供給された際に放散管80から外部に排出される。これにより、一定量の気体が給電室40の外部に排出されるため、給電室40の内部の圧力が過大となることを抑制することができる。
【0046】
このように、放散管80から気体が排出されることで、給電室40の気体が酸素含有ガスに置換される。酸素含有ガスは、ドライヤー73によって露点が低く調整されているため、給電室40の絶縁抵抗を維持することができる。放散管80から排出される気体の流量は、酸素含有ガス供給部70が供給する酸素含有ガスの流量と同程度にするとよい。
【0047】
尚、放散管80から積極的に気体を排出させるために、送風機(図示せず)を設けてもよい。例えば、送風機は、給電室40から放散管80に向けて送風するように設けてもよいし、放散管80の流路において放散管80の排出口に向けて送風するように設けてもよい。
【0048】
図2は、電極13の構成を示している。図2に示すように、電極13は、プレート状に形成された放電電極14及び、集塵電極15を有する。放電電極14及び、集塵電極15は互いに対向するように対となって設けられている。電極13は、一対の放電電極14及び、集塵電極15が複数配列されることによって層状に形成されている。
【0049】
放電電極14及び、集塵電極15は、互いに離隔して配されている。図2において、矢印は、可燃性ガスの移動方向を示している。放電電極14及び、集塵電極15は、例えば、表面及び裏面が可燃性ガスの移動方向に対して直交して配置される。このように放電電極14及び、集塵電極15を配置することで、放電電極14及び、集塵電極15間の隙間に可燃性ガスを通過させることができる。
【0050】
放電電極14は、給電ケーブル30を介して直流電源50の負極側の露出端子51に接続されている。集塵電極15は、給電ケーブル30を介して直流電源50の正極側の露出端子51に接続されている。尚、集塵電極15は接地させるとよい。
【0051】
図3は、貫通碍子を模式的に示している。図3に示すように、貫通碍子60は、中空の筒状に形成されている。貫通碍子60は、エポキシ樹脂や磁器等の非磁性材料によって形成されている。貫通碍子60として、エポキシ樹脂を用いる場合には、シリコーンゴムにより外周面を被覆するとよい。本実施形態においては、貫通碍子60は、円筒状に形成されている。貫通碍子60の側面は、例えば、蛇腹状に形成されている。
【0052】
貫通碍子60は、軸方向の一端側から他端側にかけて貫通して形成された碍子挿通孔61を有する。碍子挿通孔61には、例えば、給電ケーブル30が挿通されている。給電ケーブル30と貫通碍子60の間には、エポキシ樹脂等の絶縁材によって閉塞される。
【0053】
給電ケーブル30には、導体31が絶縁材によって被覆されない状態で用いられるものがある。このような給電ケーブル30が用いられる場合であっても、集塵室10においては、給電ケーブル30の導体31が絶縁材によって被覆される。可燃性ガスと給電ケーブル30の導体31が接触して燃焼することを防止するためである。
【0054】
貫通碍子60は、その外周部にリング状に形成されたフランジ63が装着されている。フランジ63は、鍔状に形成された鍔部64と、鍔部64の縁から筒状に形成された筒状部65を有する。フランジ63としては、ステンレスや鋳鉄等で形成されたものを用いることができる。
【0055】
筒状部65は、壁部Wの取付孔Hに挿通される。鍔部64と壁部Wとの間にはパッキン等が設けられ、壁部Wの取付孔Hが封止される。したがって、貫通碍子60は、フランジ63を介して壁部Wに固定されている。
【0056】
以上で説明した電気集塵設備100の運転方法について説明する。図4は、電気集塵設備100の運転方法のフローを示している。電気集塵設備100の運転方法は、例えば、電気集塵設備100の電源がONにされると実行される。
【0057】
図4に示すように、電気集塵設備100の運転方法は、電極13に給電して電極13を帯電させる。ステップS01の帯電ステップは、直流電源50をONにすることにより行われる。
【0058】
具体的には、直流電源50から直流高電圧が給電されると、放電電極14と集塵電極15との間で電圧差が発生する。その結果、集塵電極15はプラスに帯電し、放電電極14はマイナスに帯電する。放電電極14と集塵電極15との間で電位差が一定以上となると、空気の絶縁が破壊されて発生する放電現象であるコロナ放電が生じ、負の電荷を有するイオンが発生する。
【0059】
次いで、電極13が配置されている集塵室10に可燃性ガスが供給される(ステップS02)。ステップS02の可燃性ガス供給ステップは、例えば、可燃性ガスを供給するポンプを作動させることによって行われる。
【0060】
ステップS01の帯電ステップによって負に帯電されたイオンは、電極13を通過する可燃性ガスに含まれているダスト20を補足して、ダスト20を負の電荷に帯電させる。ダスト20は、正に帯電した集塵電極15に静電引力によって引き寄せられて捕集される。
【0061】
最後に、給電室40に、酸素含有ガスを供給しかつ、給電室40から外部に気体を排出させる(ステップS03)。ステップS03の酸素含有ガス供給ステップにおいては、給電室40の容積等に応じて、酸素含有ガスの流量を設定するとよい。
【0062】
例えば、給電室40の容積が0.5m、集塵室10と給電室40との圧力差が0.03MPa、集塵室10と給電室40とを隔てる壁部Wに14.4mmの面積の亀裂が生じた場合、酸素含有ガスの流量は、0.05~0.10m/min程度にするとよい。
【0063】
また、酸素含有ガスの流量は、可燃性ガスの組成に応じて決定するとよい。例えば、可燃性ガスの組成が、水素1.54体積%、窒素27.58体積%、酸素0.02体積%、二酸化炭素17.32体積%、一酸化炭素53.54体積%である場合、可燃性ガスには一酸化炭素が最も多く含まれる。一酸化炭素の爆発下限界は、12.5体積%である。したがって、可燃性ガスの爆発下限界は、12.5体積%/53.54体積%より、23.34体積%と算出される。
【0064】
たとえば、上述した酸素含有ガスの流量を設定した場合と同様の条件、すなわち、集塵室10と給電室40との圧力差、壁部Wの亀裂の面積を想定した場合、可燃性ガスは、給電室40に0.16m/minの流量で流入すると想定される。
【0065】
この場合、酸素含有ガス供給部70は、給電室40に流入する可燃性ガスの流量と同程度の酸素含有ガスを供給するとよい。このようにすることで、給電室40における可燃性ガスの濃度を爆発下限界である23.34体積%に達することを抑止することができる。
【0066】
ステップS03の酸素含有ガス供給ステップで供給される酸素含有ガスの露点は、-18~10℃であることが好ましい。酸素含有ガスの露点が、10℃以下であれば、給電室40において結露が生じるリスクを抑制することができる。酸素含有ガスの露点は、低いほど結露が生じるリスクを抑制することができるが、露点が-18℃未満とすると、酸素含有ガスを乾燥させるためにドライヤー73の稼動量が大きくなり経済的でない。酸素含有ガスの露点をこのような範囲するため、例えば、ドライヤー73の出力は、2~5kWとするとよい。
【0067】
尚、ステップS03の酸素含有ガス供給ステップは、給電室40における可燃性ガスの濃度が予め設定した基準値以上になった場合に、行われるようにしてもよい。具体的には、可燃性ガスを検知するガス検知器を給電室40及び、放散管80のうつの少なくとも一方に設け、予め設定する基準値以上の可燃性ガスの濃度が検知された場合に、ステップS03の酸素含有ガス供給ステップ実行されるようにしてもよい。また、予め設定する基準値以上の可燃性ガスの濃度が検知された場合には、電気集塵設備100の稼動を停止し、周囲への立ち入りを制限するようにするとよい。これにより、作業者が可燃性ガスを吸引することを防ぐことができる。
【0068】
以上のように、本発明の電気集塵設備100及び、電気集塵設備の運転方法によれば、可燃性ガスが給電室40に流入した場合であっても、給電室40に酸素含有ガスが供給されているため、雰囲気ガスの火花電圧を高くすることができる。これにより、給電室40において火花放電の発生を抑制することが可能となる。
【0069】
また、給電室40は、その雰囲気ガスを大気に放散する放散管80を備える。すなわち、給電室40には、酸素含有ガスが流入し、放散管80から雰囲気ガスが排出されるため、給電室40の火花電圧を高めることができる。これにより、集塵室10の可燃性ガスが給電室40に漏出した場合であっても、異常燃焼の発生を防止することができる。
【0070】
尚、給電室40と集塵室10との間には、壁部Wの他に碍子室を設けて区画されるようにしてもよい。図5は、給電室40と集塵室10との間に碍子室を設けた電気集塵設備100を示している。
【0071】
図5に示すように、給電室40と集塵室10との間には、壁部Wで区画された碍子室18が設けられている。碍子室18は、給電ケーブル30を中継するために設けられている。このため、碍子室18と、集塵室10とは、通気可能に形成されていてもよい。碍子室18には、給電ケーブル30を中継するためのサポート碍子67が設けられている。サポート碍子67は、壁部Wと給電ケーブル30とを絶縁可能に形成されている。このように電気集塵設備100を構成しても、碍子室18は、集塵室10と同様に、可燃性ガスで満たされている。したがって、碍子室18は、集塵室10の一部と考えることができ、給電室40は、集塵室10と隣接していると考えることができる。
【符号の説明】
【0072】
100 電気集塵設備
10 集塵室
11 供給口
12 排出口
13 電極
40 給電室
50 直流電源
51 露出端子
60 貫通碍子
70 酸素含有ガス供給部
80 放散管
W 壁部
H 取付孔
図1
図2
図3
図4
図5