(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171791
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水電解・燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
C25B 15/021 20210101AFI20241205BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20241205BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241205BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241205BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20241205BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241205BHJP
【FI】
C25B15/021
H01M8/04 N
H01M8/04029
H01M8/0656
H01M8/04746
H01M8/043
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/00 303
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089001
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 美祐
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC05
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB21
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA46
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127CC06
5H127DA13
5H127DC80
5H127DC85
5H127EE12
5H127EE15
5H127EE19
5H127EE22
(57)【要約】
【課題】本開示は、水電解モジュール(WEM)と燃料電池モジュール(FCM)に熱媒体を循環させる熱媒体流路の圧力損失を低減するととともに、WEMの機能低下を抑制可能な水電解・燃料電池システムを提供する。
【解決手段】熱媒体流路41は、熱媒体とWEM2とを熱交換させる流路411と、その流路411よりも熱媒体の流れの下流側で熱媒体とFCM3とを熱交換させる流路412と、WEM2を迂回する流路413と、FCM3を迂回する流路414と、を有する。制御装置は、WEM2の運転中かつFCM3の停止中に、制御弁421により流路411を開いて流路413を閉じ、第2制御弁422により流路412を閉じて流路414を開く。また、制御装置は、WEM2の停止中かつFCM3の運転中に、制御弁421により流路411を閉じて流路413を開き、制御弁422により流路412を開いて流路414を閉じる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解モジュールと、燃料電池モジュールと、前記水電解モジュールおよび前記燃料電池モジュールと熱交換する熱媒体を循環させる熱媒体循環装置と、前記熱媒体循環装置を制御する制御装置と、を備えた水電解・燃料電池システムであって、
前記熱媒体循環装置は、前記熱媒体が循環する熱媒体流路と、前記制御装置によって制御されて前記熱媒体流路を開閉する複数の制御弁と、を有し、
前記熱媒体流路は、前記熱媒体と前記水電解モジュールとを熱交換させる第1熱交換流路と、前記第1熱交換流路よりも前記熱媒体の流れの下流側で前記熱媒体と前記燃料電池モジュールとを熱交換させる第2熱交換流路と、前記水電解モジュールを迂回する第1迂回流路と、前記燃料電池モジュールを迂回する第2迂回流路と、を有し、
前記複数の制御弁は、前記第1熱交換流路および前記第1迂回流路を開閉可能な第1制御弁と、前記第2熱交換流路および前記第2迂回流路を開閉可能な第2制御弁とを有し、
前記制御装置は、前記水電解モジュールの運転中かつ前記燃料電池モジュールの停止中に、前記第1制御弁により前記第1熱交換流路を開いて前記第1迂回流路を閉じ、前記第2制御弁により前記第2熱交換流路を閉じて前記第2迂回流路を開き、前記水電解モジュールの停止中かつ前記燃料電池モジュールの運転中に、前記第1制御弁により前記第1熱交換流路を閉じて前記第1迂回流路を開き、前記第2制御弁により前記第2熱交換流路を開いて前記第2迂回流路を閉じることを特徴とする水電解・燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1制御弁は、前記第1熱交換流路を開閉する第1熱交換弁と、前記第1迂回流路を開閉する第1迂回弁と、を有し、
前記第2制御弁は、前記第2熱交換流路を開閉する第2熱交換弁と、前記第2迂回流路を開閉する第2迂回弁と、を有し、
前記制御装置は、前記水電解モジュールの停止前かつ前記燃料電池モジュールの起動前に前記第2迂回弁を閉じて前記第2熱交換弁を開き、前記水電解モジュールの起動前かつ前記燃料電池モジュールの停止前に前記第1迂回弁を閉じて前記第1熱交換弁を開くことを特徴とする請求項1に記載の水電解・燃料電池システム。
【請求項3】
前記熱媒体は、燃料電池用クーラントであり、
前記水電解モジュールは、水電解スタックと、該水電解スタックに純水を供給する純水流路とを有することを特徴とする請求項1に記載の水電解・燃料電池システム。
【請求項4】
前記水電解モジュールは、前記純水を貯留する純水タンクを備え、
前記熱媒体流路は、前記第2熱交換流路よりも前記熱媒体の流れの下流側に設けられて前記熱媒体と前記純水タンクに貯留された前記純水とを熱交換させる第3熱交換流路を有することを特徴とする請求項3に記載の水電解・燃料電池システム。
【請求項5】
前記熱媒体流路は、前記第1熱交換流路において前記水電解モジュールよりも前記熱媒体の流れの上流側に設けられた熱交換器を有し、
前記熱交換器は、前記第1熱交換流路を流れる前記熱媒体と熱交換する冷媒を流通させる冷媒流路を有することを特徴とする請求項1に記載の水電解・燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水電解モジュールと燃料電池モジュールとを備えた水電解・燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から冷媒冷却装置と、複数の燃料電池モジュールを有する燃料電池システムが知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された燃料電池システムは、複数の燃料電池本体を流れる冷媒の流量のばらつきを抑えつつ、各燃料電池本体の状態に応じた冷媒流量の調整を可能とする。
【0003】
また、固体高分子形の水電解セルと燃料電池セルとを一体型にした可逆セルを用いた充放電システムが知られている(下記特許文献2を参照)。特許文献2に記載された充放電システムは、水電解運転時において原料水が供給されかつ酸素が発生する酸素発生極に対して、燃料電池運転時には水素を供給し、水電解運転時に水素が発生する水素発生極に対して、燃料電池運転時には酸化剤を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-118947号公報
【特許文献2】特開2014-194916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された燃料電池システムにおいて、複数の燃料電池モジュールの少なくとも一つを水電解モジュールに置き換えることを想定する。この場合、燃料電池モジュールと熱交換する熱媒が流れる熱媒体流路と、水電解モジュールと熱交換する熱媒体が流れる熱媒体流路とを直列に接続すると、圧力損失が大きくなる。また、水電解モジュールと熱交換する熱媒が流れる熱媒体流路に水電解モジュールの作動温度よりも高温の熱媒体が流入し、水電解モジュールの機能が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、水電解モジュールと燃料電池モジュールに熱媒体を循環させる熱媒体流路の圧力損失を低減するととともに、水電解モジュールの機能低下を抑制可能な水電解・燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、水電解モジュールと、燃料電池モジュールと、前記水電解モジュールおよび前記燃料電池モジュールと熱交換する熱媒体を循環させる熱媒体循環装置と、前記熱媒体循環装置を制御する制御装置と、を備えた水電解・燃料電池システムであって、前記熱媒体循環装置は、前記熱媒体が循環する熱媒体流路と、前記制御装置によって制御されて前記熱媒体流路を開閉する複数の制御弁と、を有し、前記熱媒体流路は、前記熱媒体と前記水電解モジュールとを熱交換させる第1熱交換流路と、前記第1熱交換流路よりも前記熱媒体の流れの下流側で前記熱媒体と前記燃料電池モジュールとを熱交換させる第2熱交換流路と、前記水電解モジュールを迂回する第1迂回流路と、前記燃料電池モジュールを迂回する第2迂回流路と、を有し、前記複数の制御弁は、前記第1熱交換流路および前記第1迂回流路を開閉可能な第1制御弁と、前記第2熱交換流路および前記第2迂回流路を開閉可能な第2制御弁とを有し、前記制御装置は、前記水電解モジュールの運転中かつ前記燃料電池モジュールの停止中に、前記第1制御弁により前記第1熱交換流路を開いて前記第1迂回流路を閉じ、前記第2制御弁により前記第2熱交換流路を閉じて前記第2迂回流路を開き、前記水電解モジュールの停止中かつ前記燃料電池モジュールの運転中に、前記第1制御弁により前記第1熱交換流路を閉じて前記第1迂回流路を開き、前記第2制御弁により前記第2熱交換流路を開いて前記第2迂回流路を閉じることを特徴とする水電解・燃料電池システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の上記一態様によれば、水電解モジュールと燃料電池モジュールに熱媒体を循環させる熱媒体流路の圧力損失を低減するととともに、水電解モジュールの機能低下を抑制可能な水電解・燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態1を示す概略構成図。
【
図2】
図1の水電解・燃料電池システムの変形例を示す概略構成図。
【
図3】
図1の水電解・燃料電池システムの動作を説明するタイムチャート。
【
図4】本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態2を示す概略構成図。
【
図5】本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態3を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態を説明する。
【0011】
[実施形態1]
図1は、本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態1を示す概略構成図である。
図2は、
図1の水電解・燃料電池システム1の変形例を示す概略構成図である。なお、以下の説明では、特に必要な場合を除いて、水電解モジュール2を「WEM2」と略記し、燃料電池モジュール3を「FCM3」と略記する。
【0012】
図1および
図2に示す本実施形態の水電解・燃料電池システム1,1Aは、WEM2と、FCM3と、熱媒体循環装置4と、図示を省略する制御装置と、を備えている。WEM2とFCM3は、たとえば、同時には運転せず、交互に運転する。
【0013】
WEM2は、たとえば、複数の水電解セルが積層された水電解スタック21によって構成されている。水電解セルは、たとえば、固体高分子形水電解セルであり、水を電気分解して水素を製造する。WEM2は、たとえば、水電解スタック21に水を供給する水供給系と、水電解スタック21に電力を供給する電力供給系と、水電解スタック21で生成される水素を回収する水素回収系と、を含む。
【0014】
FCM3は、たとえば、WEM2と同様に、複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタック31によって構成されている。燃料電池セルは、たとえば、固体高分子形燃料電池セルであり、水素と酸素が供給されて発電する。FCM3は、たとえば、燃料電池スタック31に水素を供給する水素供給系と、燃料電池スタック31に空気を供給する空気供給系と、燃料電池スタック31から排出されるオフガスを回収するオフガス回収系と、を含む。
【0015】
熱媒体循環装置4は、WEM2およびFCM3と熱交換する熱媒体を循環させる装置である。熱媒体循環装置4は、熱媒体が循環する熱媒体流路41と、制御装置によって制御されて熱媒体流路41を開閉する複数の制御弁42と、を有している。また、熱媒体循環装置4は、たとえば、ポンプ43と、イオン交換器44と、冷却装置45と、を有している。
【0016】
図1に示す水電解・燃料電池システム1において、熱媒体循環装置4に循環させる熱媒体は、たとえば、純水である。また、
図2に示す水電解・燃料電池システム1Aにおいて、熱媒体循環装置4に循環させる熱媒体は、たとえば、燃料電池用クーラント(FCC)である。燃料電池用クーラントは、不凍性を有し、パワーコントロールユニットに使用されるロングライフクーラント(LLC)と比較して高い電気絶縁性を有している。
【0017】
熱媒体がFCCである場合、WEM2の水供給系は、たとえば、
図2に示すように、純水を貯留する純水タンク22と、純水タンク22からWEM2へ純水を供給する純水流路23と、その純水流路23に設けられて純水を圧送する純水ポンプ24とを有している。
【0018】
熱媒体流路41は、第1熱交換流路411と、第2熱交換流路412と、第1迂回流路413と、第2迂回流路414と、を有している。
【0019】
第1熱交換流路411は、たとえば、WEM2の水電解スタック21を構成する複数の水電解セルの間を通るセル間流路と、そのセル間流路のマニホールドの入口と出口にそれぞれ接続される配管とを含む。第1熱交換流路411は、熱媒体を流通させることで、熱媒体とWEM2とを熱交換させる。
【0020】
より具体的には、第1熱交換流路411を流れる熱媒体の温度がWEM2の温度よりも低い場合には、WEM2が熱媒体によって冷却される。一方、第1熱交換流路411を流れる熱媒体の温度がWEM2の温度よりも高い場合には、WEM2が熱媒体によって温められる。
【0021】
第2熱交換流路412は、たとえば、FCM3の燃料電池スタック31を構成する複数の燃料電池セルの間に形成されるセル間流路と、そのセル間流路のマニホールドの入口と出口にそれぞれ接続される配管とを含む。第2熱交換流路412は、熱媒体を流通させることで、第1熱交換流路411よりも熱媒体の流れの下流側で、熱媒体とFCM3とを熱交換させる。
【0022】
より具体的には、第2熱交換流路412を流れる熱媒体温度がFCM3の温度よりも低い場合には、FCM3が熱媒体によって冷却される。一方、第2熱交換流路412を流れる熱媒体の温度がFCM3の温度よりも高い場合には、FCM3が熱媒体によって温められる。
【0023】
第1迂回流路413は、WEM2を迂回するように設けられている。より具体的には、第1迂回流路413は、たとえば、熱媒体流路41における熱媒体の流れ方向において、第1熱交換流路411の上流側の端部から分岐して、第1熱交換流路411の下流側の端部に連結され、第1熱交換流路411およびWEM2を迂回している。
【0024】
第2迂回流路414は、FCM3を迂回するように設けられている。より具体的には、第2迂回流路414は、たとえば、熱媒体流路41における熱媒体の流れ方向において、第2熱交換流路412の上流側の端部から分岐して、第2熱交換流路412の下流側の端部に連結され、第2熱交換流路412およびFCM3を迂回している。
【0025】
複数の制御弁42は、第1制御弁421と、第2制御弁422と、を有している。第1制御弁421は、第1熱交換流路411および第1迂回流路413をそれぞれ開閉可能に設けられ、第2制御弁422は、第2熱交換流路412および第2迂回流路414をそれぞれ開閉可能に設けられている。
【0026】
より具体的には、第1制御弁421は、第1熱交換流路411を開閉する第1熱交換弁421aと、第1迂回流路413を開閉する第1迂回弁421bと、を有している。また、第2制御弁422は、第2熱交換流路412を開閉する第2熱交換弁422aと、第2迂回流路414を開閉する第2迂回弁422bと、を有している。
【0027】
なお、第1制御弁421は、たとえば、第1熱交換流路411を開いて第1迂回流路413を閉じた第1熱交換状態と、第1熱交換流路411を閉じて第1迂回流路413を開いた第1迂回状態とを切り替え可能な三方弁であってもよい。また、第2制御弁422は、第2熱交換流路412を開いて第2迂回流路414を閉じた第2熱交換状態と、第2熱交換流路412を閉じて第2迂回流路414を開いた第2迂回状態とを切り替え可能な三方弁であってもよい。
【0028】
ポンプ43は、たとえば、熱媒体流路41の途中に設けられ、熱媒体を圧送する。より詳細には、ポンプ43は、たとえば、冷却装置45とイオン交換器44との間の熱媒体流路41に設けられ、冷却装置45の出口からイオン交換器44の入口へ熱媒体を圧送する。
【0029】
イオン交換器44は、たとえば、イオン交換樹脂を用いてFCCまたは純水中の不純物イオンを取り除き、FCCおよび純水の電気絶縁性を維持する。イオン交換器44は、たとえば、熱媒体流路41を流れる熱媒体の流れ方向において、第1熱交換流路411よりも上流側に設けられている。
【0030】
冷却装置45は、たとえば、WEM2またはFCM3との熱交換によって温度が上昇した熱媒体の熱を、冷却装置45を通過する空気に放熱することによって熱媒体を冷却するラジエータである。
【0031】
図示を省略する水電解・燃料電池システム1,1Aの制御装置は、WEM2およびFCM3に熱媒体を循環させる熱媒体循環装置4を制御する。制御装置は、たとえば、中央処理装置(CPU)と、RAMやROMなどのメモリと、タイマと、入出力部と、を備える一つ以上のマイクロコントローラによって構成することができる。制御装置は、たとえば、メモリに記憶されたプログラムをCPUによって実行することで、第1制御弁421および第2制御弁422を含む熱媒体循環装置4の複数の制御弁42の開閉を制御する。
【0032】
以下、
図3を参照して、水電解・燃料電池システム1,1Aの動作を説明する。
図3は、
図1および
図2の水電解・燃料電池システム1,1Aの動作を説明するタイムチャートである。より詳細には、
図3の上段の4つのチャートは、WEM2の運転中および暖機中にそれぞれONになるWEM運転中フラグおよびWEM暖機中フラグと、FCM3の運転中および暖機中にそれぞれONになるFCM運転中フラグおよびFCM暖機中フラグと、を示している。
【0033】
また、
図3の中段の3つのグラフは、水電解モジュール(WEM)2の上流側と下流側の熱媒体温度と、燃料電池モジュール(FCM)3の上流側と下流側の熱媒体温度と、冷却装置45の上流側と下流側の熱媒体温度を、それぞれ一点鎖線(上流側の熱媒体温度)と破線(下流側の熱媒体温度)で示している。また、
図3の下段の4つのチャートは、第1制御弁421および第2制御弁422、すなわち、第1迂回弁421bおよび第1熱交換弁421aならびに第2迂回弁422bおよび第2熱交換弁422aの開閉状態を示している。
【0034】
図3に示すように、水電解・燃料電池システム1,1Aは、たとえば、時刻t0において、WEM2が運転中(WEM運転中フラグ:ON)かつFCM3が停止中(FCM運転中フラグ:OFF)である。この状態で、水電解・燃料電池システム1,1Aの制御装置は、第1制御弁421により第1熱交換流路411を開いて第1迂回流路413を閉じ、第2制御弁422により第2熱交換流路412を閉じて第2迂回流路414を開いている。より具体的には、制御装置は、たとえば、
図3の下段の4つのチャートに示すように、第1熱交換弁421aを開いて第1迂回弁421bを閉じ、第2熱交換弁422aを閉じて第2迂回弁422bを開いている。
【0035】
これにより、熱媒体流路41を流れる熱媒体は、第1熱交換流路411を通り、運転中のWEM2と熱交換することで、WEM2を冷却して温度が上昇する。その後、第1熱交換流路411を通過した熱媒体は、停止中のFCM3と熱交換することなくFCM3を迂回する第2迂回流路414を通り、冷却装置45へ流入し、冷却装置45で冷却されて温度が低下する。
【0036】
その結果、
図3の中段のグラフに示すように、WEM2の下流側の熱媒体温度(破線)が、WEM2の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)よりも高くなる。また、熱媒体が第2迂回流路414を通ることで、FCM3の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)とFCM3の下流側の熱媒体温度(破線)が概ね等しくなる。また、冷却装置45の下流側の熱媒体温度(破線)は、冷却装置45の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)よりも低くなっている。
【0037】
その後、制御装置は、たとえば、WEM2の停止前かつFCM3の起動前の時刻t1から時刻t2までの間、
図3の上段に示すFCM暖機中フラグをONにしてFCM3を暖機する。この時刻t1から時刻t2までの間、制御装置は、たとえば、
図3の下段に示すように、第2迂回弁422bを閉じて第2熱交換弁422aを開く。
【0038】
これにより、時刻t1から時刻t2までの間、第1熱交換流路411を通過して温度が上昇した熱媒体が第2熱交換流路412に流入し、
図3の中段に示すFCM3の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)が所定の温度まで上昇する。そして、温度が上昇した熱媒体が第2熱交換流路412を通過することで、起動前のFCM3と熱交換してFCM3を暖機する。その結果、起動前のFCM3の温度が上昇することで、FCM3の下流側の熱媒体温度(破線)が徐々に上昇して、FCM3の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)と概ね等しくなる。
【0039】
制御装置は、たとえば、時刻t2において、
図3の中段に示すFCM3の上流側と下流側の熱媒体温度の差が所定値以下になると、
図3の上段のグラフに示すように、FCM暖機中フラグをOFFにして、FCM運転中フラグをONにする。また、制御装置は、WEM運転中フラグをOFFにする。同時に、制御装置は、たとえば、WEM2の運転を停止させ、FCM3を起動させる。
【0040】
また、制御装置は、たとえば、WEM2が停止中かつFCM3が運転中である時刻t2から時刻t3までの間、第1制御弁421により第1熱交換流路411を閉じて第1迂回流路413を開き、第2制御弁422により第2熱交換流路412を開いて第2迂回流路414を閉じる。より具体的には、制御装置は、たとえば、
図3の下段の4つのチャートに示すように、第1熱交換弁421aを閉じて第1迂回弁421bを開き、第2熱交換弁422aを開いて第2迂回弁422bを閉じている。
【0041】
これにより、熱媒体流路41を流れる熱媒体は、WEM2と熱交換することなくWEM2を迂回する第1迂回流路413を通過する。また、第1迂回流路413を通過した熱媒体は、第2熱交換流路412を流れ、FCM3と熱交換することで、FCM3を冷却して温度が上昇する。その後、第2熱交換流路412を通過した熱媒体は、冷却装置45へ流入し、冷却装置45で冷却されて温度が低下する。
【0042】
その結果、
図3の中段のグラフに示すように、時刻t2後に停止中のWEM2の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)とWEM2の下流側の熱媒体温度(点線)とが概ね等しくなる。また、熱媒体が第2熱交換流路412を通ることで、運転中のFCM3の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)よりもFCM3の下流側(破線)の熱媒体温度が高くなる。また、冷却装置45の下流側の熱媒体温度(破線)は、冷却装置45の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)よりも低くなっている。
【0043】
その後、制御装置は、たとえば、WEM2の起動前かつFCM3の停止前の時刻t3から時刻t4までの間、
図3の上段に示すWEM暖機中フラグをONにしてWEMを暖機する。この時刻t3から時刻t4までの間、制御装置は、たとえば、
図3の下段に示すように、第1迂回弁421bを閉じて第1熱交換弁421aを開く。
【0044】
これにより、時刻t3から時刻t4までの間、第2熱交換流路412を通過して温度が上昇した熱媒体は、冷却装置45で冷却され、イオン交換器44を通過して第1熱交換流路411に流入する。これにより、
図3の中段に示すWEM2の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)が所定の温度まで上昇する。そして、温度が上昇した熱媒体が第1熱交換流路411を通過することで、起動前のWEM2と熱交換してWEM2を暖機する。
【0045】
その結果、起動前のWEM2の温度が上昇することで、WEM2の下流側の熱媒体温度(破線)が徐々に上昇して、WEM2の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)に近づく。なお、WEM2の暖機中は、第1熱交換流路411のWEM2よりも上流側を流れる熱媒体の温度、すなわち、冷却装置45の出口における熱媒体の温度は、WEM2の耐熱温度以下である必要がある。
【0046】
制御装置は、たとえば、時刻t4において、
図3の中段に示すWEM2の上流側と下流側の熱媒体温度の差が所定値以下になると、
図3の上段のグラフに示すWEM暖機中フラグをOFFにして、WEM運転中フラグをONにする。また、制御装置は、FCM運転中フラグをOFFにする。同時に、制御装置は、たとえば、WEM2を起動させ、FCM3を停止させる。制御装置は、WEM2が運転中かつFCM3が停止中である場合、第1制御弁421により第1熱交換流路411を開いて第1迂回流路413を閉じ、第2制御弁422により第2熱交換流路412を閉じて第2迂回流路414を開く。
【0047】
より具体的には、制御装置は、たとえば、
図3の下段の4つのチャートに示すように、第1熱交換弁421aを開いて第1迂回弁421bを閉じ、第2熱交換弁422aを閉じて第2迂回弁422bを開く。これにより、熱媒体は、第1熱交換流路411を通り、WEM2と熱交換することで、WEM2を冷却して温度が上昇する。また、第1熱交換流路411を通過した熱媒体は、FCM3と熱交換することなくFCM3を迂回する第2迂回流路414を通り、冷却装置45へ流入し、冷却装置45で冷却されて温度が低下する。
【0048】
その結果、
図3の中段のグラフに示すように、WEM2の下流側の熱媒体温度(破線)が、WEM2の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)よりも高くなる。また、熱媒体が停止中のFCM3を迂回する第2迂回流路414を通り、FCM3の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)と下流側の熱媒体温度(破線)が低下して概ね等しくなる。また、冷却装置45の下流側の熱媒体温度(破線)は、冷却装置45の上流側の熱媒体温度(一点鎖線)よりも低くなっている。時刻t5以降の水電解・燃料電池システム1,1Aの動作は、時刻t1以降と同様である。
【0049】
以上のように、本実施形態およびその変形例の水電解・燃料電池システム1,1Aは、水電解モジュール2と、燃料電池モジュール3と、水電解モジュール2および燃料電池モジュール3と熱交換する熱媒体を循環させる熱媒体循環装置4と、その熱媒体循環装置4を制御する制御装置と、を備えている。熱媒体循環装置4は、熱媒体が循環する熱媒体流路41と、制御装置によって制御されて熱媒体流路41を開閉する複数の制御弁42と、を有する。熱媒体流路41は、熱媒体と水電解モジュール2とを熱交換させる第1熱交換流路411と、その第1熱交換流路411よりも熱媒体の流れの下流側で、熱媒体と燃料電池モジュール3とを熱交換させる第2熱交換流路412と、水電解モジュール2を迂回する第1迂回流路413と、燃料電池モジュール3を迂回する第2迂回流路414と、を有する。複数の制御弁42は、第1熱交換流路411および第1迂回流路413を開閉可能な第1制御弁421と、第2熱交換流路412および第2迂回流路414を開閉可能な第2制御弁422とを有する。制御装置は、水電解モジュール2の運転中かつ燃料電池モジュール3の停止中に、第1制御弁421により第1熱交換流路411を開いて第1迂回流路413を閉じ、第2制御弁422により第2熱交換流路412を閉じて第2迂回流路414を開く。また、制御装置は、水電解モジュール2の停止中かつ燃料電池モジュール3の運転中に、第1制御弁421により第1熱交換流路411を閉じて第1迂回流路413を開き、第2制御弁422により第2熱交換流路412を開いて第2迂回流路414を閉じる。
【0050】
このような構成により、WEM2の運転中かつFCM3の停止中に、熱媒体が第1熱交換流路411を流れることで、熱媒体とWEM2との熱交換によってWEM2を冷却することができる。また、第1熱交換流路411を通過した熱媒体が、第2迂回流路414を通過してFCM3を迂回することで、熱媒体が第2熱交換流路412を通過する場合と比較して、圧力損失が低減される。同様に、WEM2の停止中かつFCM3の運転中に、熱媒体がWEM2を迂回する第1迂回流路413を流れることで、熱媒体が第1熱交換流路411を通過する場合と比較して、圧力損失が低減される。また、第1迂回流路413を通過した熱媒体が第2熱交換流路412を流れることで、熱媒体とFCM3との熱交換によってFCM3を冷却することができる。また、熱媒体流路41における熱媒体の流れ方向において、第1熱交換流路411を第2熱交換流路412よりも上流側に配置することで、FCM3を冷却して温度がWEM2の作動温度を超えて上昇した熱媒体が第1熱交換流路411へ流入することが防止される。これにより、WEM2の機能低下を防止することができる。
【0051】
また、本実施形態およびその変形例の水電解・燃料電池システム1,1Aにおいて、第1制御弁421は、第1熱交換流路411を開閉する第1熱交換弁421aと、第1迂回流路413を開閉する第1迂回弁421bと、を有している。第2制御弁422は、第2熱交換流路412を開閉する第2熱交換弁422aと、第2迂回流路414を開閉する第2迂回弁422bと、を有している。制御装置は、水電解モジュール2の停止前かつ燃料電池モジュール3の起動前に第2迂回弁422bを閉じて第2熱交換弁422aを開き、水電解モジュール2の起動前かつ燃料電池モジュール3の停止前に第1迂回弁421bを閉じて第1熱交換弁421aを開く。
【0052】
このような構成により、たとえば、
図3の時刻t1-t2間のように、WEM2の停止前かつFCM3の起動前に、第1熱交換流路411を通過してWEM2との熱交換により温度が上昇した熱媒体を第2熱交換流路412に流して、FCM3を暖機することができる。同様に、たとえば、
図3の時刻t3-t4間のように、WEM2の起動前かつFCM3の停止前に、第2熱交換流路412を通過してFCM3との熱交換により温度が上昇した熱媒体を第1熱交換流路411に流して、WEM2を暖機することができる。また、熱媒体流路41の熱媒体の流れ方向において、熱媒体とWEM2とを熱交換させる第1熱交換流路411が、熱媒体とFCM3とを熱交換させる第2熱交換流路412よりも上流側に配置されている。これにより、WEM2の暖機の際に、FCM3からカチオン溶出物がWEM2に流入することが抑制されるだけでなく、WEM2の作動温度の上昇が回避され、WEM2を構成する水電解セルの性能劣化を防止することができる。
【0053】
また、
図2に示す水電解・燃料電池システム1Aにおいて、熱媒体循環装置4を循環する熱媒体は、燃料電池用クーラントである。この場合、水電解モジュール2は、水電解スタック21と、その水電解スタック21へ純水を供給する純水流路23とを有している。このような構成により、熱媒体として機能性に優れたFCCを使用しつつ、WEM2の水電解スタック21へ純水を供給することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態およびその変形例によれば、水電解モジュール2と燃料電池モジュール3に熱媒体を循環させる熱媒体流路41の圧力損失を低減するととともに、水電解モジュール2の機能低下を抑制可能な水電解・燃料電池システム1,1Aを提供することができる。
【0055】
[実施形態2]
以下、
図4を参照して本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態2を説明する。
図4は、本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態2を示す概略構成図である。本実施形態の水電解・燃料電池システム1Bにおいて、前述の水電解・燃料電池システム1,1Aと同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施形態の水電解・燃料電池システム1Bは、
図2に示す水電解・燃料電池システム1Aと同様に、熱媒体としてFCCを用いている。そのため、水電解モジュール2は、純水を貯留する純水タンク22を備えている。また、熱媒体流路41は、第2熱交換流路412よりも熱媒体の流れの下流側に設けられて熱媒体と純水タンク22に貯留された純水とを熱交換させる第3熱交換流路415を有している。
【0057】
このような構成により、水電解・燃料電池システム1Bの外部環境の温度が氷点下となる運転条件であっても、純水タンク22に貯留された純水と第3熱交換流路415を流れる熱媒体とを熱交換させ、純水タンク22に貯留された純水を温めることができる。したがって、純水タンク22に貯留された純水の凍結を防止することができる。
【0058】
[実施形態3]
以下、
図5を参照して本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態3を説明する。
図5は、本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態3を示す概略構成図である。本実施形態の水電解・燃料電池システム1Cにおいて、前述の水電解・燃料電池システム1,1Aと同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施形態の水電解・燃料電池システム1Cの熱媒体循環装置4を構成する熱媒体流路41は、第1熱交換流路411の水電解モジュール2よりも熱媒体の流れの上流側に設けられた熱交換器6を有している。熱交換器6は、第1熱交換流路411を流れる熱媒体と熱交換する冷媒を流通させる冷媒流路61を有している。
【0060】
このような構成により、WEM2の起動前の暖機中に、第1熱交換流路411へ流入する熱媒体の温度がWEM2の耐熱温度よりも高くなる場合に、第1熱交換流路411のWEM2よりも上流側で熱交換器6によって熱媒体を冷却することができる。これにより、WEM2と熱交換する熱媒体の温度をWEM2の耐熱温度よりも低下させることができる。したがって、FCM3の排熱を利用しつつ、WEM2の耐熱温度以下の温度で、WEM2を暖機することができる。
【0061】
以上、図面を用いて本開示に係る水電解・燃料電池システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 水電解・燃料電池システム
1A-1C 水電解・燃料電池システム
2 水電解モジュール(WEM)
21 水電解スタック
22 純水タンク
23 純水流路
3 燃料電池モジュール(FCM)
4 熱媒体循環装置
41 熱媒体流路
411 第1熱交換流路
412 第2熱交換流路
413 第1迂回流路
414 第2迂回流路
415 第3熱交換流路
42 複数の制御弁
421 第1制御弁
421a 第1熱交換弁
421b 第1迂回弁
422 第2制御弁
422a 第2熱交換弁
422b 第2迂回弁
6 熱交換器
61 冷媒流路