(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171795
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20241205BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01M50/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089009
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 孝平
【テーマコード(参考)】
5F251
5H043
【Fターム(参考)】
5F251EA19
5H043AA19
5H043FA04
5H043HA11F
(57)【要約】
【課題】電池セルとバスバーの位置ずれの判断を容易にするとともに、溶接不良の発生を抑制する。
【解決手段】溶接を行う際に、バスバー20に設けられた四角形状の窓22を通して、セル端子10に形成された円形状、または窓22の四角形状とは異なる角度で配されたひし形形状、のいずれかの目印11を確認するステップと、バスバー20の窓22を通して確認されたセル端子10の目印11の辺のいずれかの位置と、窓22を形成している縁部との間の最大長さが、所定の基準以上の長さである場合に、溶接可能であるものとして判断するステップと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーと、セル端子とを溶接する工程における位置決めの際に、前記バスバーに設けられた四角形状の窓を通して、前記セル端子に形成された円形状、または前記窓の前記四角形状とは異なる角度で配されたひし形形状、のいずれかの目印を確認するステップと、
前記バスバーの窓を通して確認された前記セル端子の前記目印の辺のいずれかの位置と、前記窓を形成している縁部との間の最大長さが、所定の基準以上の長さである場合に、溶接可能であるものとして判断するステップと、を含む、
電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセルにより構成される電池において、セル間の接続にバスバーが用いられている。このセル間接続のバスバーの溶接時には、レーザがセル端子の位置から外れて照射されることを回避するために、バスバーがセル端子上にセットされた状態で、セル端子の位置検出をすることが必要となる。
【0003】
具体的には、セル端子上中央の凹部をレーザ変位計で検出するために、その間にあるバスバー溶接面の中央部には、端子凹部を上方から確認できるように貫通穴を設けている。
【0004】
特許文献1には、バスバーに設けられた四角形状の窓から、端子側に形成された四角形状の目印の最大長さが基準以下か否かに基づいて、位置ずれを確認する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、目印が四角形状の窓の四隅の角部に移動したときに、バスバーに設けられた窓の四角形状と、端子側の目印の四角形状の関係から、本来OKとなるはずのものであっても、位置ずれが発生しているものとしてNG判断をしてしまう可能性がある。
【0007】
ここで、セルを積層してバスバーを配置する際には、部品及び組付け公差によって、セル端子とバスバーの相対位置のばらつきが発生することがある。ここでセル端子は小さく、セル端子の検出のために、バスバーの窓の大きさを大きくすることが考えられる。このように窓を大きくことをはかる場合であっても、窓の寸法制約があることから、限られたスペースで位置ずれの判定を行うことと、バスバーに設けた窓の大きさを大きくすることで、溶接部がセル端子から外れてしまうおそれがある。
【0008】
本開示は、セル端子の形状とバスバーに設ける窓の形状の工夫により、電池セルとバスバーの位置ずれの判断の容易にするとともに、溶接不良の発生を抑制する電池モジュールの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示にかかる電池モジュールの製造方法は、バスバーと、セル端子とを溶接する工程における位置決めの際に、前記バスバーに設けられた四角形状の窓を通して、前記セル端子に形成された円形状、または前記窓の前記四角形状とは異なる角度で配されたひし形形状、のいずれかの目印を確認するステップと、前記バスバーの窓を通して確認された前記セル端子の前記目印の辺のいずれかの位置と、前記窓を形成している縁部との間の最大長さが、所定の基準以上の長さである場合に、溶接可能であるものとして判断するステップと、を含む。
これにより、窓を介して確認できる目印の長さを長くするとともに、窓より外側に設けられる溶接部とセル端子の目印の位置を重なりにくくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示よれば、電池セルとバスバーの位置ずれの判断を容易にするとともに、溶接不良の発生を抑制する電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電池モジュールを構成するセルのセル端子とバスバーの配置の一例を示した側面図である。
【
図2】セル端子とバスバーの上面及び下面を示した図である。
【
図3】セル端子に設けた目印とバスバーの窓の状態の例を示したバスバー上面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本実施の形態に係る電池モジュールの製造方法について説明する。
図1は、電池モジュール1を構成するセルのセル端子10と、複数のセル端子10の間を電気的に接続するバスバー20の配置の一例を正面視で示した図である。以下では、
図1に示すように、セルの上方にバスバー20が配されているものとして説明するが、この上下方向をZ方向として説明することがある。
【0013】
なお、電池モジュール製造部によりこの製造方法が実行されるものとし、特に、後述する溶接にかかる判定を行うものとして説明する。以下、詳述はしないが、電池モジュール製造部には、後述するバスバー20の窓22の縁部とセル端子10の目印11との距離を測定する測定手段や、測定手段により取得された測定結果に応じて溶接を行うか否かの判定を行う判定手段、溶接を行う溶接手段などを具備することができる。
【0014】
図2(a)及び
図2(b)は、セル端子10とバスバー20の配置を示す正面図であって、
図2(a)はバスバー20側からの視点で示した図であり、
図2(b)はセル端子10側からの視点で示した図である。ここでは、
図2(a)及び
図2(b)における左右方向をX方向、上下方向をY方向として説明することがある。なお、X方向、Y方向、Z方向は、互いに直角である。
【0015】
セル端子10は、セルの表面に設けられた端子である。ここでは、セルの上面にセル端子10が形成されているものとして説明する。また、セル端子10には、目印11が形成されている。
図1に示すように、電池モジュール1では、複数のセル端子10のそれぞれの上面がバスバー20の下面に当接した状態で配される。
【0016】
図3(a)は、セル端子10に設けられた目印11の一例を示す平面図であって、バスバー20側である上面からの視点で示した図である。なお
図3(a)は、
図2(a)及び
図2(b)に示した点線部分の拡大図である。また、
図3(a)に示すように、以下では、平面視においてX方向及びY方向のそれぞれに対して、45°傾いた方向の一方向をA方向、A方向とは直角の方向をB方向として説明する。
【0017】
ここでは、セル端子10に設けられた目印11の形状は、平面視において四角形状であるものとして説明する。なお以下では、この目印11の形状のことを、ひし形形状として説明することがある。後に詳述するが、目印11は、バスバー20に設けられる窓22を通して位置の確認が可能である目印であり、この窓22内の目印11の位置に応じて、セル端子10の位置とバスバー20の位置が合っているかを確認することができる。
【0018】
なお
図3(a)に示すように、目印11は、A方向及びB方向に辺が延びる四角形状であり、X方向及びY方向に対角線を有するように配された四角形状である。また、目印11は、Z方向に突出する凹凸形状として、セル端子10に形成されている。なお、
図3(a)の破線で示したA方向及びB方向に辺が延びる四角形状の目印11は、位置ずれが無い場合に配された状態を示している。
【0019】
バスバー20は、複数のセル端子10に、それぞれ接続されている。典型的には、バスバー20は、
図1に示すように、セル端子10に近い位置ではZ方向においてセルに近接して配されており、複数のセル端子10の間の箇所ではセルから遠い位置となるように、屈曲した形状とすることができる。ここで、バスバー20においてセル端子10に当接する箇所を当接部21とする。
【0020】
当接部21は、セル端子10の下面と当接する部分である。ここでは、当接部21はZ方向に薄く形成されており、当接部21の下面は略水平面であって、複数のセル端子10の夫々の略水平面として設けられた上面と対向して配され、当接するものとする。
【0021】
当接部21には、四角形状の窓22が形成されている。窓22は、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、X方向及びY方向に延びる辺を有する四角形状である。セル端子10とバスバー20の位置合わせを行う際には、バスバー20側である上面から、窓22を介して目印11の位置の確認を行う。
【0022】
なお、平面視において四角形状である窓22は、セル端子10に設けられた四角形状の目印11に比べて大きく形成されている。一例として、窓22の辺の長さは、目印11の辺の長さの2~3倍の長さとすることができるが、この長さに限られない。なお、窓22を形成している角部22a及び辺を、縁部として説明する。
【0023】
なお、セル端子10とバスバー20の位置合わせに問題が無い場合には、セルとバスバー20とを溶接することができる。このとき、
図3(a)に示すように、溶接が行われる溶接部23は平面視において窓22にかからないように、窓22の対角線より広い直径を有する円形状に設ける。
【0024】
ここで、セル端子10とバスバー20の位置の確認や位置合わせを行い、位置合わせに問題が無い場合に溶接を行う手順の一例について説明する。
【0025】
電池モジュール製造部では、セルとバスバー20の溶接を行う工程において、セルの上方にバスバー20を配置する。このとき、セルのセル端子10には、Z方向において凹凸形状、かつ上面視でひし型形状の目印11が設けられており、バスバー20には四角形状の窓22が設けられており、窓22と目印11のXY方向における位置がほぼ一致するように配置されている。すなわち、バスバー20側である上方から、窓22を通して、セル端子10の目印11が確認できる位置となるように、セル端子10とバスバー20が配置される。
【0026】
ここで、窓22はX方向及びY方向に辺を有する四角形状であり、セル端子10に設けられた目印11はA方向及びB方向に辺を有し、窓22より小さいひし形形状である。
【0027】
ここでは
図3(a)の実線で示すように、目印11が、窓22の角部22aにかかるように位置ずれした状態で配された状態を確認したものとして説明する。
【0028】
次に、窓22を通して確認された目印11を形成している辺の一部と、窓22の縁部との距離が最長となる箇所の長さの測定を行う。ここで
図3(a)に示すように、距離が最長になる位置とは、窓22の角部22aから、A方向に目印11の辺まで延ばした距離Lである。
【0029】
すなわち、電池モジュール製造部は、距離Lが所定の基準以上の長さである場合には、セル端子10とバスバー20の位置ずれが小さいものとして判定し、溶接可能であるものとして判断することができる。
【0030】
なお、電池モジュール製造部は、距離Lが所定の基準に満たない長さである場合には、セル端子10とバスバー20の位置ずれが大きいものとして判定し、溶接を実行しないように判断することができる。
【0031】
なお、
図3(a)に示すように、ずれの判定のために検出される距離Lは、目印11が角部22aの方に向けてずれた場合には、角部22aから目印11の辺までのA方向の距離であり、B方向のずれにはほぼ影響されない値とすることができる。ここで、溶接の可否の判断は、A方向のずれの大きさで決定できると考えられるので、電池モジュール製造部では、距離Lの検出により、容易に溶接可否の判断を行うことができる。
【0032】
その後、電池モジュール製造部は、溶接が可能であるという判断をした場合に、セルとバスバー20の溶接を実行する。
【0033】
このとき、
図3(a)に示すように、セル端子10の目印11の辺の方向をA方向、及びB方向となるように配置していることにより、平面視で円形状に溶接部23を設けた場合に、溶接部23の円周と、この円周に近接する目印11の辺がほぼ平行に配される。これにより、溶接部23が目印11にかかることを抑制することができる。
【0034】
言い換えると、溶接を行う際に、バスバー20に設けられた下方への凹みである目印11に対して、Z方向において溶接部23が重なった場合に発生するセル端子10とバスバー20の溶接不良を、防止することができる。
【0035】
なお、目印11の形状が、ひし形形状であるものとして説明したが、必ずしも平面視において4辺の長さが同一の四角形状でなくてもよく、適宜変更することができる。また、傾きも45°に限定されない。
【0036】
目印11の形状の別の例として、
図3(b)に示すように、平面視において円形状とすることができる。この場合であっても、目印11の形状がひし形形状である場合と同様に、バスバー20の窓22の角部22aに、円形状の目印11がかかった状態において、最大長さLは、角部22aからA方向又はB方向における目印11の円周までの長さとなる。
【0037】
そのため電池モジュール製造部では、最大長さLが基準以上の長さである場合に、セルとバスバー20の位置ずれが十分に小さいと判断することができる。そして電池モジュール製造部では、位置ずれが十分小さいことから、溶接可能であると判断することができる。
【0038】
なお、このように目印11を円形状とした場合、四角形状の目印11の辺の方向をA方向及びB方向に設けた場合と同様に、平面視で円形状に溶接部23を設けた際に、溶接部23の円周とこの円周に近接する円形状の目印11の円周がZ方向において重なりにくいという利点もある。
【0039】
より具体的な例として、
図3(c)は比較のために、セル端子10の目印11の辺の方向をX方向、及びY方向となるように配置した図である。このように
図3(c)のように目印11を配置した場合、セル端子10とバスバー20の位置ずれが発生すると、目印11の一部が溶接部23に重なりやすいことがわかる。
【0040】
したがって、
図3(c)のような形状の目印11を設けることに比べて、
図3(a)及び
図3(b)のような形状の目印11を設けることで、目印11と溶接部23が重なりにくくなり、溶接不良を防止できる。
【0041】
以上のことから、電池モジュール製造部では、溶接を行う際に、バスバー20に設けられた四角形状の窓22を通して、セル端子10に形成された円形状、または窓22の四角形状とは異なる角度で配されたひし形形状、のいずれかの目印11を確認することができる。
【0042】
さらに、電池モジュール製造部では、バスバー20の窓22を通して確認されたセル端子10の目印11の辺のいずれかの位置と、窓22を形成している縁部との間の最大長さが、所定の基準以上の長さである場合に、溶接可能であるものとして判断することができる。
【0043】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 電池モジュール
10 セル端子
11 目印
20 バスバー
21 当接部
22 窓
22a 角部
23 溶接部