(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171798
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】乳児日用品の選択支援システム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20241205BHJP
A41B 13/06 20060101ALI20241205BHJP
A41B 13/04 20060101ALI20241205BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
A41B13/06
A41B13/04
G01N33/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089019
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 考司
【テーマコード(参考)】
2G045
3B128
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB07
2G045CB30
2G045DA36
3B128MA00
3B128NA00
3B128PA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乳児が日常使用する日用品の選択を支援する技術を提供する。
【解決手段】乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する評価値取得手段と、前記評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手段と、前記評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出するオキシトシン予測値算出手段と、前記評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する支援情報処理手段と、前記選択支援品に関する支援情報を送信する送信手段とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳児の養育者に、前記乳児が日常使用する日用品の選択を支援する選択支援システムであって、
乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する評価値取得手段と、
前記評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手段と、
前記評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出するオキシトシン予測値算出手段と、
前記評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する支援情報処理手段と、
前記選択支援品に関する支援情報を送信する送信手段と
を備える選択支援システム。
【請求項2】
前記オキシトシン予測値算出手段による乳児のオキシトシン予測値を乳児の養育者に提示するオキシトシン予測値提示手段をさらに備える請求項1に記載の選択支援システム。
【請求項3】
前記選択支援品決定手段は、評価値取得手段による評価値とその最大評価値との差が大きい物品を選択支援品として選別する選択支援品選別手段を含む請求項1又は2記載の選択支援システム。
【請求項4】
前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値はなめらかさ評価値、やわらかさ評価値又はこれらの組み合わせ評価値である請求項1~3のいずれか1項に記載の選択支援システム。
【請求項5】
前記日用品は繊維性物品、繊維処理剤及びスキンケア品から選ばれる1種又は2種以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の選択支援システム。
【請求項6】
乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する評価値取得手順と、
前記評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手順と、
前記評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出するオキシトシン予測値算出手順と、
前記評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する支援情報処理手順と、
前記選択支援品に関する支援情報を送信する送信手順と
を実行する選択支援システムにより乳児の養育者に前記乳児が使用する日用品の選択を支援する方法。
【請求項7】
コンピューターに、
乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する評価値取得手順と、
前記評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手順と、
前記評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出するオキシトシン予測値算出手順と、
前記評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する支援情報処理手順と、
前記選択支援品に関する支援情報送信する送信手順と
を実行させるための乳児の養育者に前記乳児が使用する日用品の選択を支援する選択支援用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳児オキシトシンレベル予測に基づく乳児日用品の選択支援システム、選択支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オキシトシンは養育者と子どもとの間の愛着形成に関与する、脳由来のペプチドホルモンである(非特許文献1)。オキシトシンは乳幼児の社会性の発達向上に関与するため(非特許文献2、非特許文献3)、乳幼児期にオキシトシンを上昇させることは、社会性向上に伴う、より良い家族・社会の形成に繋がり、養育者の育児ストレス軽減にも寄与すると考えられる。
【0003】
これまで成人女性において、手の平(掌)で布生地に触れた後の触感評価値と、触れた前後のオキシトシン変化率が相関を示すことが明らかになっている(特許文献1)。また、オキシトシンの分泌にはオートクラインシステム(自己分泌調節機構)が存在し、数週間、継続してオキシトシンが上昇する刺激が行われると、定常状態(ベースライン)のオキシトシンレベルが上昇することが知られている(特許文献2、非特許文献4)。
【0004】
乳児は、おむつを始め、衣類、タオル、寝具類などの一定の繊維性物品、スキンケア品に継続的に接触して生活しており、当該繊維性物品やスキンケア品による継続的な接触刺激が定常状態のオキシトシンレベルに影響を及ぼす可能性が高いと考えられる。
したがって、簡便に乳児の定常状態のオキシトシンレベルを把握し、且つそのレベルを上昇させる繊維製物品やスキンケア品等を乳児が常時使用できることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-67669号公報
【特許文献2】特開2019-105619号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Weisman et al., Biol. Psychiatry., 72, 982-989, 2012.
【非特許文献2】Feldman et al., Neuropsychopharmacology., 38, 1154-1162, 2013.
【非特許文献3】Simpson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 111, 6922-6927, 2014.
【非特許文献4】Feldman et al., Horm. Behav., 58, 669-676, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、乳児が日常使用する日用品の選択を支援する技術を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、まず、乳児が日常で使用している日用品(紙おむつ、自宅の洗剤、柔軟剤で洗濯し、乾燥した後の繊維性物品(衣類とタオル))に母親が触れた触感と、それに触れて生活している乳児のオキシトシンの関連性を解析したところ、母親の当該物品に対する触感評価値(なめらかさ、やわらかさ)及び母親による乳児の肌状態の評価値が当該乳児の唾液中オキシトシン量に有意に正相関し、斯かる触感評価値又は肌状態評価値、更にはこれらを組み合わせて利用することにより当該物品に接して生活している乳児のオキシトシンレベルが予測可能であることを見出し、出願している(特願2023-88401)。そして、予測した乳児のオキシトシンレベルを利用した特定の構成を有するシステムによれば、乳児の養育者に対し、当該乳児の定常状態のオキシトシンレベルを上昇させる適切な乳児日用品の選択を支援できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)~3)に係るものである。
1)乳児の養育者に、前記乳児が日常使用する日用品の選択を支援する選択支援システムであって、
乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する評価値取得手段と、
前記評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手段と、
前記評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出するオキシトシン予測値算出手段と、
前記評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する支援情報処理手段と、
前記選択支援品に関する支援情報を送信する送信手段と
を備える選択支援システム。
2)乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する評価値取得手順と、
前記評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手順と、
前記評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出するオキシトシン予測値算出手順と、
前記評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する支援情報処理手順と、
前記選択支援品に関する支援情報を送信する送信手順と
を実行する選択支援システムにより乳児の養育者に前記乳児が使用する日用品の選択を支援する方法。
3)コンピューターに、
乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する評価値取得手順と、
前記評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手順と、
前記評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出するオキシトシン予測値算出手順と、
前記評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する支援情報処理手順と、
前記選択支援品に関する支援情報送信する送信手順と
を実行させるための乳児の養育者に前記乳児が使用する日用品の選択を支援する選択支援用プログラム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、乳児の定常状態のオキシトシンを上昇させる乳児日用品の選択を支援する情報を乳児の養育者に提示することができる。これにより、乳児の養育者は適切な乳児日用品を選択、購入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明選択支援システムが実行する処理手順を示す概略フローチャート。
【
図3】乳児の養育者に提示する質問事項の一例を示す図。
【
図4】評価値の高低に応じた選択支援品の一例を示す図。
【
図5】乳児の養育者に提示する選択支援品に関する支援情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る選択支援システムの概略構成説明図である。選択支援システム1は、乳児の養育者に、前記乳児が日常使用する日用品の選択を支援する選択支援システムである。乳児の養育者は、好ましくは乳児の母親である。また、乳児は、3-11ヶ月齢児である。
日用品は、乳児が日常で使用している繊維性物品、自宅の繊維処理剤(例えば、洗剤、柔軟剤等)、スキンケア品である。繊維性物品とは、乳児が日常生活において継続して肌に触れることが多い繊維性物品であり、例えば、紙おむつ、タオル、肌着等の衣類、寝具のシーツ、毛布、掛け布団カバー、枕ケース、タオルケット等が挙げられ、好ましくは紙おむつ、タオル、衣類である。なお、斯かる繊維性物品には、洗剤又は洗剤及び柔軟剤のような繊維処理剤で処理された繊維性物品、例えば洗濯・乾燥後の繊維性物品が包含される。スキンケア品とは、乳児が日常生活において継続して使用しているもので、肌洗浄剤、ローション、乳液、クリーム、化粧水、ジェル等が挙げられ、好ましくはローション、クリームである。
選択を支援する日用品の数は一つであってよく、又は複数であってよい。複数の場合、例えば、2~5である。
【0014】
選択支援システム1は、評価値取得手段10、選択支援品決定手段11、オキシトシン予測値算出手段12、支援情報処理手段13、及び送信手段18で構成される。
選択支援システム1は、評価値取得手段10、選択支援品決定手段11、オキシトシン予測値算出手段12、支援情報処理手段13、及び送信手段18が一つの装置に組み込まれたシステムであってよく、または複数の装置に分散されて構成されたシステムであってよい。
選択支援システム1は、
図1に示すように、データベース3を備えているか、あるいはデータベース3から乳児日用品情報を受信可能なようにネットワークを介して接続されている。
【0015】
評価値取得手段10は、入出力端末2を通じて、乳児の養育者から、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する。
入出力端末2は、選択支援システム1と直接接続されたものであってよく、またはネットワークを介して接続されたものであってよい。入出力端末2は、例えば、乳児の養育者によって使用される端末であり、汎用コンピュータ、携帯端末、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末等である。入出力端末2は、例えば、養育者が所有または小売店等に設置されている端末である。
入出力端末2は、乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を選択支援システム1に送信する。
また、入出力端末2は、乳児の定常状態のオキシトシンを上昇させる乳児日用品の選択を支援するための支援情報を選択支援システム1から受け取って、乳児の養育者に通知する。支援情報にはオキシトシンの機能(乳児の社会性発達、養育者と乳児の愛着、絆関係に寄与する等)の説明、またはオキシトシンが上昇することの効果(乳児の社会性、養育者と乳児の愛着、絆関係の向上)も含む。
【0016】
乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値は、前記乳児の養育者の皮膚と前記日用品との接触により触感を評価する工程により得られる。
皮膚は、例えば、顔、手指や掌、手の甲等の手、上腕、肘、下腕、脚、足裏等が挙げられるが、無毛部(手指、掌、足裏)が好ましく、より好ましくは手指や掌である。
好ましい接触の態様としては、乳児の養育者自身が手の指先と掌で当該物品に触れる態様が挙げられ、具体的には手の指先と掌を前後左右に動かして当該物品に触れる態様が挙げられる。よって、本発明の選択支援システム1において、触感評価値を基に生成される選択支援品に関する支援情報は、繊維性物品、当該繊維性物品を処理する洗剤又は洗剤及び柔軟剤のような繊維処理剤の支援情報である。
【0017】
繊維性物品への接触時間及び接触回数等の接触態様は適宜設定することができ、連続的又は断続的に行ってもよいが、一定時間試験物品に接触させた後に接触を解除して安静状態とし、再び接触させる動作を何回か繰り返して行う態様が挙げられる。例えば、試験物品に30秒間触れた後に、試験物品から手を離し、何も触れずに30秒間安静にする動作を数回(例えば、3~5回)繰り返すことが挙げられる。
【0018】
繊維性物品との接触による触感評価は、当該繊維性物品が持つなめらかさ、やわらかさ、あたたかさ、ふんわり感等の、幸福・満足感、リラックス、リフレッシュ等の感情を喚起させる触感(風合い)が評価されるが、このうち、なめらかさ又はやわらかさを評価するのが好ましく、なめらかさ及びやわらかさを併せて評価するのがより好ましい。
触感評価の手法は、例えば、乳児の養育者が繊維性物品に触れた時の触感(例えば、なめらかさ、やわらかさ、あたたかさ)を10cmのVisual Analog Scale(VAS)を用いて、又は10件法を用いて、感覚量の程度を示す方法が挙げられる。
VAS法では、直線の左端を「例えば、なめらかでない、やわらかくない、又はあたたかくない」、右端を「例えば、非常になめらか、非常にやわらかい、又は非常にあたたかい」とし、被験者である乳児の養育者が該当する箇所に線を引き、左端から線を引いた箇所までの距離(cm)が各触感評価値とされる。
10件法では、10:非常に良い、1:全く良くないとし、被験者である乳児の養育者が1~10の間で該当するスコアを決定し、その該当スコアが触感評価値とされる。
【0019】
乳児の肌状態評価値は、前記乳児の養育者が乳児の皮膚に触れて及び/又は目視で、その肌状態を評価する工程により得られる。皮膚は、上記において説明したとおりであるが、好ましくは額や頬等の顔面部や頸部、肘部、上腕部、下肢、膝等である。
乳児の肌状態評価の手法は、例えば、“これまで「皮膚が弱い」、「敏感」、「あれやすい」、「肌トラブルが起きやすい」と感じたことがあるか”という設問に対して、5件法(1:あてはまる、2:ややあてはまる、3:どちらともいえない、4:ややあてはまらない、5:あてはまらない)で評価する方法が挙げられる。被験者である乳児の養育者が1~5の間で該当するスコアを決定し、該当スコアが乳児の肌状態評価値とされる。
本発明の選択支援システム1において、乳児の肌状態評価値を基に生成される選択支援品に関する支援情報は、スキンケア品の支援情報である。
【0020】
選択支援品決定手段11は、前記乳児の養育者から得られた乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値の高低に応じて、選択を支援する日用品の種類を決定する。前記評価値が低値の場合、選択を支援する日用品として決定し、前記評価値が高値の場合、選択を支援しない日用品として決定する。高低の判断は、適宜設定すればよいが、例えば、VAS法による触感評価値7cm以上と10件法による触感評価値スコア7以上を高値とし、VAS法による触感評価値7cm未満と10件法による触感評価値スコア7未満を低値として割り当てる。また、5件法による肌状態評価値4スコア以上を高値とし、4スコア未満を低値と割り当てる。
選択支援品決定手段11は、乳児の養育者に対し、効率良く乳児日用品の選択を支援するために、決定した日用品の種類が複数の場合、取得された前記評価値がその最大評価値(VAS法・10件法による触感評価値の場合は10、5件法による乳児の肌状態評価値の場合は5)からの差が大きい(5件法による乳児の肌状態評価値の場合は差分を2倍)物品を選択支援品として選別する選択支援品選別手段(図示しない)をさらに含みうる。
【0021】
オキシトシン予測値算出手段12は、前記乳児の養育者から得られた乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値から、前記乳児のオキシトシン量の予測値を算出する。
乳児が日常で使用中の繊維性物品の養育者の触感評価値(なめらかさ評価値、やわらかさ評価値)とその乳児の唾液中オキシトシン量は、有意な正相関を示す。また、乳児の養育者による当該乳児の肌状態評価値とその乳児の唾液中オキシトシン量は、有意に正相関する。さらに、触感評価値と乳児の肌状態評価値を用いて乳児のオキシトシン量の予測値を算出することによりオキシトシンレベルの予測精度の向上を図ることができる。したがって、斯かる触感評価値又は肌状態評価値、更にはこれらを組み合わせて利用することにより当該物品に接して生活している乳児のオキシトシンレベルが予測可能である。
【0022】
1つの触感評価値(例えば、なめらかさ評価値又はやわらかさ評価値)を使用する場合、前記触感評価値とオキシトシン量との散布図から単回帰分析を利用することにより予め予測式を作成し、この予測式を用いて乳児のオキシトシン量の予測値を算出する。予測式は例えば以下のとおりである。
1)紙おむつのなめらかさ評価値による予測式
(数1)
y=4.53x+14.78
(y:オキシトシン量、x:紙おむつのなめらかさ評価値、r=0.47、p<0.05)
2)紙おむつのやわらかさ評価値による予測式
(数2)
y=4.95x+10.13
(y:オキシトシン量、x:紙おむつのやわらかさ評価値、r=0.47、p<0.1) 3)洗剤及び柔軟剤処理繊維性物品(衣類とタオル)のなめらかさ評価値による予測式(数3)
y=8.23x-0.40
(y:オキシトシン量、x:洗剤及び柔軟剤処理繊維性物品(衣類とタオル)のなめらかさ評価値、r=0.60、p<0.05)
4)洗剤及び柔軟剤処理繊維性物品(衣類とタオル)のやわらかさ評価値による予測式(数4)
y=6.62x+5.63
(y:オキシトシン量、x:洗剤及び柔軟剤処理繊維性物品(衣類とタオル)のやわらかさ評価値、r=0.49、p<0.05)
【0023】
複数の触感評価値(例えば、なめらかさ評価値及びやわらかさ評価値)を使用する場合、複数の触感評価値と乳児のオキシトシン量との散布図から重回帰分析を利用することにより予め予測式を作成し、この予測式を用いて乳児のオキシトシン量の予測値を算出する。予測式は例えば以下のとおりである。
5)洗剤及び柔軟剤処理繊維性物品(衣類とタオル)のなめらかさ、やわらかさ評価値による予測式
(数5)
y=7.56x1+0.87x2-1.82
(y:オキシトシン量、x1:洗剤及び柔軟剤処理繊維性物品(衣類とタオル)のなめらかさ評価値、x2:洗剤及び柔軟剤処理繊維性物品(衣類とタオル)のやわらかさ評価値、自由度調整済み決定係数:0.28、p<0.05)
【0024】
乳児の肌状態評価値を使用する場合、前記肌状態評価値とオキシトシン量との散布図から単回帰分析を利用することにより予め予測式を作成し、この予測式を用いて乳児のオキシトシン量の予測値を算出する。予測式は例えば以下のとおりである。
6)乳児の肌状態評価値による予測式
(数6)
y=11.43x+4.43
(y:オキシトシン量、x:乳児肌状態評価値、r=0.52、p<0.05)
【0025】
触感評価値(例えば、紙おむつのなめらかさ評価値)と肌状態評価値を組み合わせて使用する場合、触感評価値及び肌状態評価値と乳児のオキシトシン量との散布図から重回帰分析を利用することにより予め予測式を作成し、この予測式を用いて乳児のオキシトシン量の予測値を算出する。予測式は例えば以下のとおりである。
7)紙おむつのなめらかさ評価値と乳児の肌状態評価値による予測式
(数7)
y=4.12x1+10.51x2+10.51
(y:オキシトシン量、x1:紙おむつのなめらかさ評価値、x2:乳児肌状態評価値、r=0.63、r2=0.39、p<0.05)
【0026】
選択支援システム1は、現在の乳児の定常状態のオキシトシン予測値を把握しやすくするために、算出されたオキシトシン予測値を入出力端末2に送信し、乳児の養育者に、前記乳児のオキシトシン量の予測値を提示するオキシトシン予測値提示手段(図示しない)をさらに備えることが好ましい。
【0027】
支援情報処理手段13は、選択支援品情報取得手段14、選択支援品オキシトシン予測値算出手段15、オキシトシン予測値差分算出手段16、及び支援情報生成手段17を含み、前記乳児の養育者から得られた乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を用いて、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報を格納するデータベースから前記乳児の養育者から得られた乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を上回る触感評価値及び/又は乳児の肌状評価値を有する選択支援品の情報を取得して、選択支援品のオキシトシン予測値を算出し、算出した前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する。支援情報にはオキシトシンの機能(乳児の社会性、家族の絆、養育者と乳児の愛着関係等)の説明、またはオキシトシンが上昇することの効果(乳児の社会性、家族の絆、養育者と乳児の愛着関係の向上)も含む。
支援情報処理手段13は、乳児の養育者に対し、乳児の定常状態のオキシトシンを上昇させる乳児日用品の選択を支援するため、算出された選択支援品のオキシトシン予測値を入出力端末2に送信し、乳児の養育者に、選択支援品を使用した時のオキシトシン量の予測値を提示するオキシトシン予測値提示手段(図示しない)をさらに含みうる。
【0028】
選択支援品情報取得手段14は、前記乳児の養育者から得られた乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値をキーとして、前記選択支援品として決定した日用品のデータベース3を検索する。この検索により、選択支援品情報取得手段14は、データベース3から、前記乳児の養育者から得られた評価値を上回る評価値を有する選択支援品の情報を取得する。選択支援品の評価値は、特に限定するものではなく、前記乳児の養育者から得られた評価値を少しでも上回ればよい。
前記選択支援品の情報には、選択支援品の評価値、すなわちその物品に触れた時の触感評価値又はその物品を使用した時の乳児の肌状態評価値の他、ブランド名、製品名、メーカー名、サイズ、素材、写真等の情報が含まれていてもよい。
【0029】
データベース3には、日用品の夫々についての触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値情報が格納されている。データベース3は、日用品の種類毎に作成されている。日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値は、その日用品を乳児が日常で使用した場合に想定される触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値であり、例えば、予めパネル(例えば、乳児の養育者の集団)より取得した触感評価値又は肌状態評価値(例えば、平均値や標準偏差等の統計値を参考に決定した値)である。データベース3には、日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値、すなわちその物品に触れた時の触感評価値又はその物品を使用した時の乳児の肌状態評価値の他、製品名、ブランド名、メーカー名、サイズ、素材、写真等の情報が含まれうる。
【0030】
選択支援品オキシトシン予測値算出手段15は、取得された選択支援品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値から、オキシトシン予測値を算出する。オキシトシン量の予測値を算出する予測式は、上記において述べたとおりである。
【0031】
オキシトシン予測値差分算出手段16は、算出された選択支援品のオキシトシン予測値から、前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を算出する。日用品の種類毎に、この差分を算出する。
【0032】
支援情報生成手段17は、前記乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する。選択支援品に関する支援情報には、オキシトシン予測値の差分の他、例えば、その物品に触れた時の触感評価値又はその物品を使用した時の肌状態評価値、物品の種類、ブランド名、製品名、メーカー名、サイズ、素材、写真等の情報が含まれていてもよい。
【0033】
送信手段18は、前記選択支援品に関する支援情報を入出力端末2に送信する。入出力端末2は、この支援情報を前記端末の表示部(例えば、ディスプレイ等)に表示する。その結果、乳児の養育者は、選択支援品に関する支援情報を参照して、乳児の定常状態のオキシトシンを上昇させると想定される乳児日用品を選択することができる。
送信手段18は、例えば、入出力端末2との間でデータ等の送受信を実行するように構成されたデバイスである。
【0034】
次に、上記の実施の形態に係る本発明の選択支援システムによる乳児日用品の選択支援の例を、処理ステップの概略フローチャートを示す
図2に基づいて説明する。
【0035】
まず、選択支援システム1が作動を開始すると、例えば
図3に示すような質問事項を入出力端末2の表示部に表示する(S100)。次に、乳児の養育者が質問事項に対する回答をクリックすると、入出力端末2は、その回答を、選択支援システム1に送信する。
質問事項には、乳児が日常で使用中の日用品の製品名やブランド名、メーカー名等を表示することもできる。
【0036】
次に、選択支援システム1は、前記乳児が日常で使用中の日用品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を取得する(S101)と、各評価値の高低を判定し、その判定結果に基づき、選択を支援する日用品の種類を決定する(S102)。
選択支援品決定の例を
図4に示す。ここでは、評価値“低”の判断は、
図3のQ1、Q2で触感評価値7未満、Q3で乳児の肌状態評価値3未満とし、評価値“高”の判断は、
図3のQ1、Q2で触感評価値7以上、Q3で乳児の肌状態評価値3以上とした。
選択を支援する日用品として決定する日用品がない場合、選択支援システム1は処理を終了する(図示なし)。
【0037】
次に、選択支援システム1は、取得した触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値から乳児のオキシトシン量の予測値を算出する(S103)。オキシトシン予測値の算出は、上記において説明したとおり、選択支援品として決定した日用品の種類に応じて触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を使用して行われる。
選択を支援する日用品の種類を決定する選択支援品決定手順(S102)の前に、乳児のオキシトシン量の予測値を算出する手順(S103)を先に行ってもよい。
【0038】
算出した乳児のオキシトシン量の予測値を入出力端末2に送信し、乳児の養育者に現在の乳児の定常状態のオキシトシン予測値を提示してもよい(S104)。
【0039】
次に、選択支援システム1は、取得した触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値と、選択支援品として決定した日用品の夫々のデータベース3とを照合して、選択支援品の触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を含む選択支援品情報を取得する(S105)。乳児の養育者から得られた触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を上回る評価値を有する選択支援品がある場合は、前記選択支援品のオキシトシン予測値を算出する(S106)。
【0040】
次に、選択支援システム1は、乳児と選択支援品のオキシトシン予測値の差分を算出する(S107)。この算出は、選択支援品の種類毎に行われる。
次に、算出した乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む選択支援品に関する支援情報を生成する(S108)。
【0041】
その後、入出力端末2に生成した選択支援品に関する支援情報を送信し、その表示部に支援情報を表示して(S109)、処理を終了する。
選択支援品に関する支援情報の例を
図5(a)~(d)に示す。
選択支援品に関する支援情報は、その物品の種類、その物品に触れた時の触感評価値及び/又はその物品を使用した時の乳児の肌状態評価値、乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を含む。ここでは、乳児のオキシトシン予測値と選択支援品のオキシトシン予測値との差分を3つのスコア(Aスコア:差が20以上、Bスコア:差が10~20、Cスコア:差が10未満)に分けて示した。これにより選択支援品の情報が見やすく表示される。
選択支援品が複数の場合、物品の種類毎に支援情報を表示することができる(
図5(b-1)、(b-2))。
また、乳児の乳児の養育者から取得した触感評価値及び肌状態評価値を表示することもできる。
さらに、乳児の養育者から取得した触感評価値及び肌状態評価値に応じた選択支援に関するコメントを表示することもできる。
【0042】
一方、乳児の養育者から得られた触感評価値及び/又は乳児の肌状態評価値を上回る評価値を有する選択支援品がない場合は、選択支援システム1は処理を終了する。あるいは、
図5(c)に示すように、提示する日用品がなかったことを示す情報を生成し、入出力端末2に送信して終了する。
【0043】
本発明の乳児の養育者に前記乳児が使用する日用品の選択を支援する選択支援用プログラムは、上記の選択支援方法をコンピューターに実行させるためのプログラムである。当該プログラムにより実行される各手順は、上記において述べたとおりである。
【符号の説明】
【0044】
1:選択支援システム
2:入出力端末
3:データベース
10:評価値取得手段
11:選択支援品決定手段
12:オキシトシン予測値算出手段
13:支援情報処理手段
14:選択支援品情報取得手段
15:選択支援品オキシトシン予測値算出手段
16:オキシトシン予測値差分算出手段
17:支援情報生成手段
18:送信手段