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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171799
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】機能部材及び建築板の施工構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/10 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
E04D13/10 B
E04D13/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089021
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西田 俊文
(57)【要約】
【課題】既設の建築板であっても簡単に取り付けることがでる。また、大掛かりな工事を必要とすることなく建築板から簡単に取り外すことができる機能部材を提供する。
【解決手段】機能部材1は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板100の重ね部101において、複数の建築板100の間に配置される基板部2と、重ね部101の外側に位置するよう基板部2の一端22に設けられる機能部と、を備える。基板部2は、建築板100が有する係止部105に係止される係止突起25を有する。係止部105は、重ね部101に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部を重ねるようにして配置された複数の建築板の重ね部において、複数の前記建築板の間に配置される基板部と、
前記重ね部の外側に位置するよう前記基板部の一端に設けられる機能部と、を備え、
前記基板部は、前記建築板が有する係止部に係止される係止突起を有し、
前記係止部は、前記重ね部に位置する、
機能部材。
【請求項2】
前記係止部は、前記建築板が有する切り欠きであり、
前記切り欠きは、左右方向に隣り合う二枚の前記建築板の左方の前記建築板の右端部と、右方の前記建築板の左端部との突き付け部分に位置する、
請求項1に記載の機能部材。
【請求項3】
前記係止部は、前記建築板を固定する固定具が挿通される固定用孔である、
請求項1に記載の機能部材。
【請求項4】
前記係止突起が、前記基板部の、前記機能部が設けられている前記一端とは反対側に位置する他端に形成されている、
請求項1に記載の機能部材。
【請求項5】
前記係止突起が、前記基板部が有する板部の一部を切り起こして形成されている、
請求項1に記載の機能部材。
【請求項6】
前記基板部は、接着剤が通過する孔部を厚み方向で貫通して有する、
請求項1に記載の機能部材。
【請求項7】
一部を重ねるようにして配置された複数の前記建築板と、請求項1から6のいずれか一項に記載の機能部材と、を備える建築板の施工構造であって、
前記基板部が、複数の前記建築板の一部が重なって形成される重ね部において、複数の前記建築板の間に配置されており、
前記係止突起が、複数の前記建築板が有する前記係止部に係止している、
建築板の施工構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部材及び建築板の施工構造に関する。より詳細には、本発明は、雪止め金具などとして使用可能な機能部材及び建築板の施工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雪止め金具と、該雪止め金具を屋根上に複数配置した際に、これら雪止め金具の雪止め部内に挿入して架設されるパイプとからなる屋根の雪止め具が記載されている。雪止め部は、金属板の中央部から一端にかけての部分を山型に折曲して形成されたもので、中央部から立ち上がる登り坂面と下り坂面を有して前記登り坂面が屋根傾斜方向に対して直交する方向に配置されて屋根上に積もった雪の落下を防止することを特徴とする。
【0003】
特許文献1に記載の雪止め金具は、金属板の一方側半部を長手方向に褶曲して表面側に突出する雪止め部が形成されると共に、金属板の他方側半部に裏面側に突出する幅方向ずれ止め部材が設けられ、且つ、金属板の幅方向中心線に沿って複数の釘通し孔が穿設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2540442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の雪止め金具は、複数の釘によって釘止めすることによって、屋根上に配置される。このため、雪止め金具を屋根上に配置するに当たり、手間を要するという問題がある。また、前記の雪止め金具を既設の屋根に配置するためには、後付け孔が上位の屋根板に入り込まない位置で釘止めする必要がある。このため、釘止め箇所が風雨に曝される状況となり、確実に防水処理を施さないと釘止め箇所から漏水の可能性があるという問題がある。また、前記の雪止め金具を屋根から取り外すためには、釘を外す必要がある。このため、雪止め金具を交換する際に取り外しに非常に手間を要し、大掛かりな工事を必要とするという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、既設の建築板であっても簡単に取り付けることができ、かつ大掛かりな工事を必要とすることなく建築板から取り外すことができる機能部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る機能部材は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板の重ね部において、複数の前記建築板の間に配置される基板部と、前記重ね部の外側に位置するよう前記基板部の一端に設けられる機能部と、を備える。前記基板部は、前記建築板が有する係止部に係止される係止突起を有する。前記係止部は、前記重ね部に位置する。
【0008】
本発明の一態様に係る建築板の施工構造は、一部を重ねるようにして配置された複数の前記建築板と、前記機能部材と、を備える建築板の施工構造であって、前記基板部が、複数の前記建築板の一部が重なって形成される重ね部において、複数の前記建築板の間に配置されている。前記係止突起が、複数の前記建築板が有する前記係止部に係止している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機能部材に設けられている基板部が係止突起を有するので、建築板が有する係止部に係止突起を係止させることによって、機能部材を建築板に簡単に取り付けることができる。その結果、既設の建築板であっても機能部材を簡単に取り付けることができる。また、係止突起と係止部との係止を解除することによって、大掛かりな工事を必要とすることなく機能部材を建築板から取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、本発明の実施形態に係る機能部材を示す平面図である。図1Bは、同上の側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る建築板の施工構造を示す平面図である。
図3図3は、図1Bのa部分を示す拡大図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る建築板の施工構造の一部を示す断面図である。
図5図5Aは、本発明の実施形態に係る建築板の施工構造の一部を示す平面図である。図5Bは、図5Aのb部分を示す拡大図である。
図6図6Aは、本発明の実施形態に係る機能部材の施工方法を示す斜視図である。図6Bは、本発明の実施形態に係る機能部材の施工方法を示す斜視図である。
図7図7Aは、本発明の実施形態に係る機能部材の施工方法を示す断面図である。図7Bは、本発明の実施形態に係る機能部材の施工方法を示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る機能部材の施工状態の一部を示す断面図である。
図9図9Aは、本発明の実施形態に係る機能部材の変形例を示す平面図である。図9Bは、同上の側面図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る建築板の施工構造の変形例の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、実施形態に係る機能部材1及び建築板100の施工構造10(以下、単に施工構造10ともいう)について、図面を参照しながら説明する。なお、各図は模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさは必ずしも実際の寸法を反映しているとは限らない。また、図中にX軸、Y軸及びZ軸を規定する矢印を図示しているが、これらの矢印は、説明の都合上図示しているだけであり、機能部材1の方向を限定する趣旨ではなく、実体を伴わない。X軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する。
【0012】
図1A及び図1Bは、本発明の機能部材1を示している。図2は、本発明の建築板100の施工構造10を示している。機能部材1は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板100の重ね部101において、複数の建築板100の間に配置される基板部2と、重ね部101の外側に位置するよう基板部2の一端22に設けられる機能部3と、を備える。基板部2は、建築板100が有する係止部105に係止される係止突起25を有する。係止部105は、重ね部101に位置する。上記によれば、機能部材1に設けられた基板部2が、係止突起25を有するので、建築板100が有する係止部105に係止突起25を係止させることによって、機能部材1を建築板100に簡単に取り付けることができる。その結果、既設の建築板100であっても機能部材1を簡単に取り付けることができる。また、係止突起25と係止部105との係止を解除することによって、大掛かりな工事を必要とすることなく機能部材1を建築板100から取り外すことができる。なお、重ね部101とは、平面視において、複数の建築板100が重なっている領域を意味する。
【0013】
<機能部材>
上記の通り、機能部材1は、施工構造10に設置される部材である。なお、本実施形態では、機能部材1は、屋根に設置される雪止め金具として形成されている。
【0014】
機能部材1は、金属製の部材であって、例えば、ステンレス鋼板、鉄板及びアルミニウム板などの金属板が挙げられる。機能部材1は、前記の金属板を切削加工したり曲げ加工したりすることによって形成することができる。金属板の厚みは、0.8~1.5mmであればよいが、これに限定されるものではない。また、機能部材1は、平面視において、X軸に沿って長く形成され、Y軸に沿って短く形成されている。なお、X軸に沿った方向を長手方向といい、Y軸に沿った方向を短手方向又は幅方向といい、Z軸に沿った方向を厚み方向という場合がある。
【0015】
機能部材1は、基板部2を備えている。基板部2は、機能部材1を施工構造10に設置した際に、建築板100の重ね部101に配置される部分である。基板部2は、平面視で短冊のような長方形の平板状に形成された板部26を有する。基板部2は、板部26の長手方向の両端に一端22と他端23とを有する。機能部材1は、機能部3を備えている。機能部3は、基板部2の一端22から突出するようにして設けられている。基板部2は、係止突起25を有している。本実施形態では、係止突起25は、基板部2の長手方向の他端23(機能部3と反対側の端部)に形成されている。
【0016】
係止突起25は、厚み方向に沿って突出するよう形成されている。係止突起25を形成する方法は特に限定されていないが、例えば金属板から機能部材1を作製する際に、基板部2の他端23から一部が飛び出す箇所が生じるようにして金属板を切削し、その飛び出した箇所を厚み方向に突出するように折り曲げることによって形成することができる。飛び出した箇所の形状を適宜調整することで、係止突起25の形状を適宜設計することができる。係止突起25の形状は、特に限定されていないが、例えば矩形状である。また、係止突起25の厚み方向の長さは、特に限定されていないが、施工性等を考慮すると建築板100の厚みよりも短い方が好ましい。この場合、係止突起25による屋根、特に下葺き材1042の傷つきが抑えられる。係止突起25の厚み方向の長さは、例えば6mmである。係止突起25は、例えば基板部2の幅方向の中央部に近い部分に設けられている。
【0017】
また、基板部2は複数の孔部21を有している。複数の孔部21は、基板部2の長手方向及び幅方向に略対称に位置するよう離間して設けられている。各孔部21は、基板部2を厚み方向で貫通するように形成されている。複数の孔部21は、接着剤103を通過させるための孔である。すなわち、基板部2の表面又は裏面のいずれか片面に接着剤103を塗布した場合、接着剤103が、複数の孔部21を通って基板部2の他の片面に達することができる。
【0018】
上記の通り、機能部材1は、機能部3を備えている(図3参照)。機能部3は、機能部材1の役割を決める部分である。機能部材1が、雪止め金具である場合、機能部3は、屋根に積もった雪が屋根から落ちないように堰き止める部分である。
【0019】
機能部3は、接続部31、突出部32、頂部33、支持部34及び脚部35を備えている。接続部31は、基板部2の一端22から外側(係止突起25と反対側、すなわち屋根に設けられた際に軒側となる)に向かって突出する部分である。接続部31は、基板部2と同一平面上に形成されている。突出部32は、接続部31から上方(基板部2の表面が向く方向)に向かって突出して形成されている。頂部33は、突出部32と頂部33との境界部分から基板部2の長手方向に沿って基板部2の反対側に向かって突出して形成されている。支持部34は、支持部34と頂部33との境界部分から基板部2と反対側に向かって斜め下方に突出して形成されている。脚部35は、支持部34と脚部35の境界部分から基板部2の長手方向に沿って基板部2の反対側に向かって突出して形成されている。また、基板部2と脚部35とは同一平面上に形成されている。
【0020】
機能部3は、補強部36,37,38を有している。補強部36は、接続部31と突出部32との境界部分を補強するために接続部31から突出部32に連続して一部を厚み方向上側に突出するように形成されている。また、補強部36は、仮想の中央線Lを対称軸として互いに線対称に位置するように、一対形成されている。補強部37は、突出部32と頂部33との境界部分、及び頂部33と支持部34との境界部分を補強するため、突出部32から頂部33を経て支持部34に連続して一部を厚み方向下側に突出するように形成されている。また、補強部37は、仮想の中央線Lを対称軸として線対称となるように、形成されている。補強部38は、支持部34と脚部35との境界部分を補強するために、支持部34から脚部35に連続して一部を厚み方向上側に突出するように形成されている。また、補強部38は、仮想の中央線Lを対称軸として互いに線対称となるように、一対形成されている。
【0021】
更に、基板部2には、深さライン39が設けられている。深さライン39は、基板部2の短手方向(幅方向)の全長にわたって形成されており、例えば、刻印等で凹状に形成され、平面視では線に見える。深さライン39は、基板部2を重ね部101に差し込む深さ(長さ)の目安となる線である。
【0022】
<施工構造>
図2及び図4は、機能部材1を設置した施工構造10を示している。なお、上記の通り、本実施形態では、機能部材1は、雪止め金具である。つまり、本実施形態では、施工構造10は、屋根構造であって、また、建築板100は、屋根材であって、屋根を形成する。建築板100としては、例えば、化粧スレート板(セメント硬化物で形成される窯業系の薄板材)を使用することができる。より具体的には、建築板100としては、カラーベスト(登録商標)やコロニアル(登録商標)などを使用することができる。なお、建築板100の厚みは、特に限定されていないが、例えば7mm程度である。
【0023】
また、各建築板100には、位置合わせのための切り欠き1051が形成されている(図5A参照)。切り欠き1051は、建築板100の左端部115及び右端部116の両方に一つずつ形成されている。そして、この二つの切り欠き1051は、上端部112又は下端部113が延びる方向に沿って水平に並んでいる。本実施形態では、この切り欠き1051に、機能部材1の係止突起25を係止することにより、機能部材1を建築板100に取り付けることができる。つまり、本実施形態では、切り欠き1051を係止部105として利用することができる。
【0024】
更に、建築板100は、曝露部110と、非曝露部111とを有している。建築板100が施工されて施工構造10が形成されるに当たり、屋根の傾斜方向(例えば、軒棟方向)で隣接する建築板100は、曝露部110と非曝露部111とが重なった状態で施工される。すなわち、屋根の傾斜方向で隣接する複数の建築板100は、屋根の傾斜方向で上側の建築板100aの曝露部110が、屋根の傾斜方向で下側の建築板100bの非曝露部111の表面に重なっている。このようにして、複数の建築板100は、一部(曝露部110と非曝露部111)を重ねるようにして配置され、曝露部110と非曝露部111とが重なった重ね部101が形成される。
【0025】
図2及び図4に示すように、施工構造10は、複数の建築板100を有して形成されている。複数の建築板100は、野地板1041や下葺き材1042等を備える屋根下地104の上に配置され、釘やビスなどの複数の固定具102で屋根下地104に固定されている。また、複数の建築板100は、平面視において、千鳥配置で施工されている(図2参照)。すなわち、屋根の傾斜方向で隣接する複数の建築板100は、屋根の傾斜方向で上側の建築板100aが下側の建築板100bに対して、屋根の傾斜方向と直交する方向で略半ピッチずれて配置されている。なお、上記の通り、建築板100には、位置合わせのための切り欠き1051が形成されている。これによって、建築板100を配置するに当たり、所定の位置から傾斜方向及び傾斜方向と直交する方向(左右方向)に正確に建築板100を配置することができる。例えば、下側の建築板100bの上端部112に、上側の建築板100aの切り欠き1051を合わせるようにして、建築板100を配置する。このように建築板100を配置すれば、建築板100同士を所望の位置に配置することができる。また、左右方向に隣り合う建築板100,100の突き付け部分に雨水が入り込んだ際に、毛細管現象により、雨水が突き付け部分を通って、屋根下地104に到達し得ることがある。これに対して、建築板100は切り欠き1051を有しており、雨水の流動を切り欠き1051で止めることができるため、雨水が屋根下地104に到達することを防ぐことができる。
【0026】
そして、施工構造10において、機能部材1は、基板部2において機能部3が形成されている側の一端22が軒側を向くようにして設置されている。また、機能部3は、隣接する重ね部101には介在しない。言い換えれば、機能部3は、上側の建築板100aよりも軒側に位置している。更に、機能部材1が備える基板部2は、複数の建築板100の一部が重なって形成される重ね部101において、複数の建築板100の間に配置されている。つまり、上側の建築板100aの曝露部110と、下側の建築板100bの非曝露部111との間に、基板部2が配置されている。加えて、機能部材1は、深さライン39が上側の建築板100aの下端部113と略重なるようにして設置されている(図5B参照)。なお、深さライン39は、機能部材1を重ね部101に差し込む際の目安である。したがって、深さライン39が上側の建築板100aの下端部113と必ずしも重なっている必要はなく、上側の建築板100aの下端部113と、深さライン39との間に多少のずれがあっても構わない。そして、建築板100が有する切り欠き1051に対して、係止突起25が係止されている(引っ掛けられている)。
【0027】
なお、本実施形態では、施工構造10において、上側の建築板100aの下端部113から下側の建築板100bの切り欠き1051までの距離と、機能部材1における、係止突起25から深さライン39までの距離とを同じ長さにしておくことが好ましい。この場合、屋根の傾斜方向における、機能部材1が有する係止突起25の位置と、下側の建築板100bの切り欠き1051との位置とがずれにくくなる。そのため、機能部材1を建築板100bにより簡単に取り付けることができる。
【0028】
<機能部材の設置方法>
建築板100を施工することによって形成された屋根に機能部材1を設置する方法について説明する。なお、機能部材1の設置方法は、これに限定されず、適宜の方法を採用することができる。
【0029】
図7Aに示すように、軒棟方向に一部重なるよう位置する上側の建築板100aと下側の建築板100bとは、ほとんど隙間なく施工されている。
【0030】
そこで、まず、上側の建築板100aの下端部113を上側に少し持ち上げる(図7B参照)。これによって、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に隙間を生じさせる。上側の建築板100aの下端部113を持ち上げる方法は特に限定されていないが、バールのような治具を用いることによって、上側の建築板100aの下端部113を持ち上げて、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に隙間を生じさせることができる。
【0031】
続いて、図6Aに示すように、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの隙間に向かって、屋根の傾斜方向(軒棟方向)の下側(軒側)から、基板部2を差し込む。これによって、基板部2が重ね部101に向かって、差し込まれる。このとき、基板部2の長手方向と、屋根の軒棟方向とが略平行になるように支持された状態で差し込まれることが好ましい。例えば、隣り合う建築板100同士の突き付け部分に沿って基板部2を挿入することによって、機能部材1の長手方向と、軒棟方向とが略平行になるように支持された状態で差し込むことができる。このように機能部材1の長手方向と軒棟方向とが略平行になるように支持された状態で、基板部2を重ね部101に差し込んだ場合、軒棟方向に直交する方向(左右方向)における切り欠き1051の位置と、係止突起25の位置とを合わせやすくすることができる。また、基板部2を重ね部101に差し込むに当たり、基板部2の深さライン39が、上側の建築板100aの下端部113と略重なる位置まで差し込む。基板部2の深さライン39と、建築板100aの下端部113とが略重なる位置まで、基板部2を差し込むことによって、傾斜方向における、建築板100bの切り欠き1051の位置と、係止突起25の位置とを合わせることができる。なお、このとき、左右方向における、下側の建築板100bの切り欠き1051の位置と、係止突起25の位置とが一致していない場合、係止突起25が、切り欠き1051に係止しないことがある。この場合、基板部2の深さライン39と、上側の建築板100aの下端部113とが略重なった状態で左右方向に機能部材1を動かし、左右方向における機能部材1の位置を調整することにより、係止突起25が切り欠き1051に係止することができる。
【0032】
次に、図6Bに示すように、係止突起25が切り欠き1051に係止し、機能部材1が、軒棟方向及び左右方向にずれなくなったことを確認した後に、上側の建築板100aを持ち上げるために使用した治具を取り外す。上側の建築板100aを持ち上げていた治具を取り外したことにより、上側の建築板100aと、下側の建築板100bとの間の隙間が閉じられる。これによって、基板部2を、上側の建築板100aと、下側の建築板100bとで挟むことができる。
【0033】
このようにして、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの隙間を生じさせた後、隙間に基板部2を差し込み、基板部2の係止突起25を切り欠き1051に係止させ、その後、隙間を閉じることによって、簡単に屋根に機能部材1を設置することができる。機能部材1は、係止突起25が建築板100の切り欠き1051に係止し、かつ基板部2が上側の建築板100aと下側の建築板100bとで挟まれている。このため、機能部材1は、強固に屋根に設置されている。
【0034】
また、機能部材1は、更に接着剤103で建築板100に接着されてもよい。これにより、機能部材1を重ね部101により強固に固定することができる。機能部材1を、接着剤103を用いて建築板100に接着する場合は、図7に示すように、予め接着剤103を基板部2の裏面、特に孔部21を形成した箇所の周辺の裏面に塗布しておき、接着剤103を塗布した基板部2を上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に差し込むようにすればよい。この場合、上側の建築板100aを持ち上げていた治具を取り外し、上側の建築板100aと、下側の建築板100bとの間の隙間が閉じられることによって、基板部2を、上側の建築板100aと、下側の建築板100bとで挟むことができるため、塗布された接着剤103は、孔部21を通って基板部2の表面にも達することになる。その結果、基板部2は、重ね部101において、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの両方に接着されることになる(図8参照)。
【0035】
なお、接着剤103を基板部2の裏面に塗布しないで、表面に塗布しても構わない。この場合、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に基板部2が差し込まれ、その後、基板部2が上側の建築板100aと下側の建築板100bとで挟まれることによって、接着剤103が、孔部21を通って基板部2の裏面に達することになる。
【0036】
また、接着剤103は、重ね部101に基板部2を差し込んだ後に基板部2、基板部2付近の上側の建築板100aの裏面又は下側の建築板100bの表面等の所定位置に塗布してもよい。例えば、接着剤103を塗布していない状態で基板部2を重ね部101に差し込んだ後に、上側の建築板100aを持ち上げている治具を取り外す前に、ノズル等を用いることによって所定位置に接着剤103を塗布してもよい。
【0037】
<機能部材の取り外し>
施工構造10に設置されている機能部材1を取り外す方法について説明する。なお、機能部材1を取り外す方法については以下の方法に限定されず、適宜の方法を採用することができる。
【0038】
まず、取り外す機能部材1が接している上側の建築板100aを上側に持ち上げる。これによって、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に隙間を生じさせることができる。上側の建築板100aを持ち上げる方法は特に限定されていないが、基板部2を上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に挿入したときと同様に、バールのような治具を用いて上側の建築板100aを持ち上げることにより、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に隙間を生じさせることができる。
【0039】
続いて、機能部材1を上側に持ち上げることによって、機能部材1の係止突起25と、切り欠き1051との係止を解除する。なお、接着剤103を使用して、機能部材1を建築板100に接着していた場合、接着剤103を剥離した後に、機能部材1を持ち上げることによって、係止突起25と、切り欠き1051との係止を解除することができる。
【0040】
次に、機能部材1を軒棟方向及び左右方向に動かすことができることを確認する。これによって、係止突起25と切り欠き1051との係止が解除されたことを確認し、その後、基板部2を上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間から引き抜くことによって、機能部材1を屋根から取り外すことができる。
【0041】
このように、上側の建築板100aを持ち上げ、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に隙間を生じさせた後に、機能部材1を上側に動かし、係止突起25と、切り欠き1051との係止を解除することによって、上側の建築板100aを取り外すことなく機能部材1を施工構造10から取り外すことができる。なお、もともと設置されていた機能部材1を取り外した後に、上側の建築板100aを持ち上げた状態を維持し、新たな機能部材1を設置することもできる。その結果、機能部材1の交換を容易に行うことができる。
【0042】
(変形例)
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
【0043】
<変形例1>
実施形態では、機能部材1が雪止め金具である場合を説明したが、これに限定されない。例えば、機能部材1は、屋根に付設する設備を固定するための固定部材として形成することができる。屋根に付設する設備としては、太陽電池パネル、温水器及びアンテナなどを例示することができる。機能部材1が固定部材である場合は、機能部3に設備を直接固定したり、設備を取り付けるレールなどの部材を固定したりすることができる。
【0044】
<変形例2>
実施形態では、建築板100が屋根材であって、機能部材1を屋根に施工する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、建築板100が壁材である場合、機能部材1は壁面に施工することができる。この場合、機能部材1は、壁に付設する設備を固定するための固定部材として形成することができる。壁に付設する設備としては、壁飾り、棚及び雨樋などを例示することができる。
【0045】
<変形例3>
実施形態では、接着剤103を使用したが、これに限定されない。つまり、機能部材1を、建築板100に設置するに当たり、接着剤103を使用しなくともよい。例えば、接着剤103を基板部2に塗布した状態で、重ね部101に差し込んだ際に、接着剤103が建築板100における意図しない箇所に付着することがなくなる。このため、建築板100に対する機能部材1の位置の調整を容易に行うことができる。また、接着剤103を使用しないで機能部材1を設置した場合、係止突起25と係止部105との係止を解除するだけで、機能部材1を取り外すことができるため、機能部材1の交換を特に容易に行うことができる。
【0046】
<変形例4>
実施形態では、係止突起25を基板部2の他端23に形成したが、係止突起25は、基板部2の他端23以外の位置に形成しても構わない。例えば、基板部2が有する板部26の一部を切り起こして、係止突起25が形成されてもよい(図9A及び図9B参照)。この機能部材1は、係止突起25を囲むようにして孔部21が配置されている。そのため、接着剤103を用いて建築板100に設置した場合、接着剤103が係止突起25を囲むようにして広がり、基板部2が建築板100に接着されることになる。これによって、機能部材1が建築板100に特に強固に固定される。
【0047】
また、係止突起25が、基板部2の板部26を切り起こして形成される場合、例えば、機能部材1を屋根等に設置する直前まで、係止突起25を、係止突起25を形成したときに生じる開口部27内に収めた状態にしておくことができる。例えば、係止突起25が、機能部材1の厚み方向に突出した状態で、機能部材1を運搬する際に、運搬者に係止突起25が接触することにより、運搬者を傷つけてしまうおそれがある。これに対して、運搬の際に、係止突起25を開口部27内に収めた状態としておくことで、係止突起25が運搬者に接触することを防ぐことができる。これによって、係止突起25が運搬者を傷つけることを防ぐことができる。また、係止突起25が、機能部材1の厚み方向に突出した状態で、機能部材1を複数梱包した際に、ある機能部材1の係止突起25が、他の機能部材1や梱包材料を傷つけるおそれがある。これに対して、梱包の際に、係止突起25を開口部27内に収めた状態としておくことで、ある機能部材1の係止突起25が、他の機能部材1や梱包材料を傷つけることを防ぐことができる。
【0048】
<変形例5>
実施形態では、建築板100が有する切り欠き1051を機能部材1の係止突起25と係止する係止部105として利用したが、係止部105は、切り欠き1051のみに限定されない。例えば、係止部105は、建築板100が有する、固定具102を挿通する箇所を示す固定用孔1052であっても構わない(図10参照)。別の言い方をすれば、固定用孔1052は、建築板100における固定具102が挿通される箇所を示すために設けられたものであるが、その固定用孔1052は、係止突起25を係止させるための係止部105として利用されても構わない。この場合、機能部材1を左右方向に隣り合う建築板100,100の突き付け部分から離れた箇所に設置することができる。なお、固定用孔1052が、係止突起25を係止することに適用される場合、その固定用孔1052に固定具102は挿通されない。なお、建築板100の施工状態によっては既設の固定用孔1052に設置することが困難な場合がある。この場合、施工現場などで別途、係止部105を形成してもよい。
【0049】
<変形例6>
実施形態では、基板部2と機能部3とは一枚の金属板を折り曲げ加工して形成したが、これに限られることはない。例えば、基板部2と機能部3を別々に形成した後、溶接や連結具などにより一体化してもよい。
【0050】
<変形例7>
実施形態では、切り欠き1051は、建築板100の左端部115及び右端部116の両方に一つずつ形成されていたが、これに限定されない。切り欠き1051は、左端部115及び右端部116のいずれか一方にのみ形成されていても構わない。
【0051】
<変形例8>
機能部材1は、建築板100によって屋根を形成した後に、設置することに限定されず、建築板100を形成する過程において、機能部材1が建築板100に設置されるようにしてもよい。
【0052】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る機能部材1は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板100の重ね部101において、複数の建築板100の間に配置される基板部2と、重ね部101の外側に位置するよう基板部2の一端22に設けられる機能部3と、を備える。基板部2は、建築板100が有する係止部105に係止される係止突起25を有する。係止部105は、重ね部101に位置する。
【0053】
この態様によれば、機能部材1に設けられている基板部2が係止突起25を有するので、建築板100が有する係止部105に係止突起25を係止させることによって、機能部材1を建築板100に簡単に取り付けることができる。その結果、既設の建築板100であっても機能部材1を簡単に取り付けることができる。また、係止突起25と係止部105との係止を解除することによって、大掛かりな工事を必要とすることなく機能部材1を建築板100から取り外すことができる。
【0054】
第2の態様は、第1の態様に係る機能部材1であって、係止部105は、建築板100が有する切り欠き1051であり、切り欠き1051は、左右方向に隣り合う二枚の建築板100の左方の建築板100の右端部116と、右方の建築板100の左端部115との突き付け部分に位置する。
【0055】
この態様によれば、軒棟方向と直交する方向に隣り合う建築板100,100の突き付け部分に沿って、機能部材1を設置することができる。このため、建築板100の取り付けを容易に行うことができる。
【0056】
第3の態様は、第1の態様に係る機能部材1であって、係止部105は、建築板100を固定する固定具102が挿通される固定用孔1052である。
【0057】
この態様によれば、機能部材1を左右方向に隣り合う建築板100,100の突き付け部分から離れた箇所に設置することができる。
【0058】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1の態様に係る機能部材1であって、係止突起25が、基板部2の、機能部3が設けられている一端22とは反対側に位置する他端23に形成されている。
【0059】
この態様によれば、基板部2の長手方向の寸法を小さくすることができる。また、機能部材1に係止突起25を簡単に形成することができる。
【0060】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1の態様に係る機能部材1であって、係止突起25が、基板部2が有する板部26の一部を切り起こして形成されている。
【0061】
この態様によれば、係止突起25を建築板100に設置する直前まで、基板部2の板部26に収めておくことができる。これによって、係止突起25を厚み方向に突出させない状態で機能部材1を運搬又は梱包することができる。
【0062】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1の態様に係る機能部材1であって、基板部2は、接着剤103が通過する孔部21を厚み方向で貫通して有する。
【0063】
この態様によれば、基板部2の片面に塗布した接着剤103が孔部21を通して他の片面にまで達することになり、重ね部101を構成する複数の建築板100に基板部2を接着することができる。
【0064】
第7の態様は、建築板100の施工構造10は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板100と、第1から第6のいずれか1の態様の機能部材1と、を備える建築板100の施工構造10であって、基板部2が、複数の建築板100の一部が重なって形成される重ね部101において、複数の建築板100の間に配置されている。係止突起25が、複数の建築板100が有する係止部105に係止している。
【0065】
この態様によれば、既設の建築板100であっても簡単に取り付けることができ、また、大掛かりな工事を必要とすることなく建築板100から取り外すことができる機能部材1を備えた建築板100の施工構造10を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 機能部材
2 基板部
3 機能部
21 孔部
22 一端
23 他端
25 係止突起
26 板部
100 建築板
101 重ね部
102 固定具
103 接着剤
105 係止部
1051 切り欠き
1052 固定用孔
図1
図2
図3
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図5
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図10