IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特開2024-171825情報処理装置、プログラム、及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171825
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20241205BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089068
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔アドナース
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸敏
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PS00
4C038VA04
4C038VA20
4C038VB31
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い自律神経指標を提供することである。
【解決手段】本発明の情報処理装置は、対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された前記対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する取得部と、前記心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する第1算出部と、前記加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第2指標値を算出する第2算出部と、前記第1指標値及び前記第2指標値の関連を解析する解析部とを備える、情報処理装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された前記対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する取得部と、
前記心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する第1算出部と、
前記加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第2指標値を算出する第2算出部と、
前記第1指標値及び前記第2指標値の関連を解析する解析部と
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記センサデバイスは、3軸加速度センサを備え、前記3軸加速度センサを用いて前記加速度情報を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1算出部は、前記第1指標値として、前記心電情報から得られる心拍に関する統計値、前記心電情報から得られる心拍変動の周波数解析に基づく値、及び前記心拍変動の非線形解析に基づく値のうち少なくとも一つを算出し、
前記第2算出部は、前記第2指標値として、加速度情報に含まれる3軸加速度の各種の統計値、及び所定の算出方法により前記3軸加速度から得られる値のうち少なくとも一つを算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1算出部は、前記第1指標値として、平均心拍、及びRMSSD(root mean square successive difference)のうち少なくとも一つを算出し、
前記第2算出部は、前記第2指標値として、METs(Metabolic equivalents)を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記関連として、前記第1指標値及び前記第2指標値を、多次元のうち少なくとも2次元とする関連図を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記関連として、前記平均心拍又は前記RMSSDを第1軸とし、前記METsを第2軸とする2軸以上のグラフを生成する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記解析部は、前記関連として、前記第1指標値及び前記第2指標値に基づく第3指標値を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記解析部は、前記第3指標値を、多次元のうちの1次元とする関連図を生成する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記解析部は、特定の行動が行われた特定行動期間について、前記関連を解析する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記特定行動期間は、前記対象者の行動が記録された行動履歴情報の中から操作者によって選択された期間に対応する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記解析部は、前記心電情報及び前記加速度情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記行動履歴情報を推定する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記心電情報及び前記加速度情報それぞれは、前記対象者から48時間以上にわたって連続的に検出された連続データである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記心電情報及び前記加速度情報それぞれは、前記対象者から144時間以上にわたって連続的に検出された連続データである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記解析部は、24時間ごとに解析する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記心電情報は、第1心電情報であり、
前記加速度情報は、第1加速度情報であり、
前記取得部は、更に、前記第1心電情報と同一の対象者について異なるタイミングで検出された第2心電情報と、前記第1加速度情報と同一の対象者について前記タイミングと同一のタイミングで検出された第2加速度情報とを取得し、
前記第1算出部は、更に、前記第2心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第3指標値を算出し、
前記第2算出部は、更に、前記第2加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第4指標値を算出し、
前記解析部は、更に、前記第1指標値、前記第2指標値、前記第3指標値、及び前記第4指標値のうち少なくとも二つを同一の時間帯で比較する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記心電情報は、第1心電情報であり、
前記加速度情報は、第1加速度情報であり、
前記取得部は、更に、前記第1心電情報と同一の対象者について異なるタイミングで検出された第2心電情報と、前記第1加速度情報と同一の対象者について前記タイミングと同一のタイミングで検出された第2加速度情報とを取得し、
前記第1算出部は、更に、前記第2心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第3指標値を算出し、
前記第2算出部は、更に、前記第2加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第4指標値を算出し、
前記解析部は、更に、特定の時間帯について前記第1指標値及び前記第2指標値の第1関連を解析し、前記時間帯と同一の時間帯について前記第3指標値及び前記第4指標値の第2関連を解析する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記センサデバイスは、可撓性を有する板状であり、前記対象者の体幹部の皮膚に対して粘着又は吸着されることにより取り付けられる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記関連を出力する出力制御部を更に備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項19】
対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された前記対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する取得処理と、
前記心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する第1算出処理と、
前記加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第2指標値を算出する第2算出処理と、
前記第1指標値及び前記第2指標値の関連を解析する解析処理と
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項20】
対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された前記対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する取得部と、
前記心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する第1算出部と、
前記加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第2指標値を算出する第2算出部と、
前記第1指標値及び前記第2指標値の関連を解析する解析部と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、プログラム、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象者の自律神経の状態を表す指標(以下、自律神経指標と表記)を算出するために種々の技術が提案されている。例えば、対象者の安静時において心電情報を数分間程度計測し、心拍変動の周波数解析により特定の周波数成分のパワースペクトルを算出して自律神経指標を得る技術がある。具体的には、当該パワースペクトルにおけるLF(Low Frequency)成分(0.04Hz~0.15Hz)のスペクトル密度は交感神経と副交感神経の強さを、HF(High Frequency)成分(0.15Hz~0.40Hz)のスペクトル密度は副交感神経の強さを、LF/HF比は副交感神経に対する交感神経の優位性を、LFとHFの和に対応するトータルパワーは自律神経の活動量をそれぞれ示す指標値として利用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Kazunori Ohkawara et al, “Real-time estimation of daily physical activity intensity by a triaxial accelerometer and a gravity-removal classification algorithm”, British Journal of Nutrition (2011), 105, 1681-1691
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自律神経は、仕事、家事、移動など、各種の生活活動においても常に機能しているものであり、身体活動の影響によっても変動する。これに対し、従来の自律神経指標は安静時の数分間に計測したものを用いることが一般的であった。このため、従来の自律神経指標は、対象者の日々の生活活動における自律神経の状態、特に身体活動が自律神経に及ぼす影響を考慮したものになっているかという点で、信頼性に疑問があった。
【0005】
本発明は、信頼性の高い自律神経指標を提供することができる情報処理装置、プログラム、及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された前記対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する取得部と、前記心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する第1算出部と、前記加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第2指標値を算出する第2算出部と、前記第1指標値及び前記第2指標値の関連を解析する解析部とを備える、情報処理装置である。
【0007】
また、本発明は、対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された前記対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する取得処理と、前記心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する第1算出処理と、前記加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第2指標値を算出する第2算出処理と、前記第1指標値及び前記第2指標値の関連を解析する解析処理とをコンピュータに実行させる、プログラムである。
【0008】
また、本発明は、対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された前記対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する取得部と、前記心電情報に基づいて、前記対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する第1算出部と、前記加速度情報に基づいて、前記対象者の活動量に関する第2指標値を算出する第2算出部と、前記第1指標値及び前記第2指標値の関連を解析する解析部とを備える、システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信頼性の高い自律神経指標を提供することができる情報処理装置、プログラム、及びシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、情報処理システムの概略構成の一例を示す図である。
図2図2は、ウェアラブルセンサにおける3軸方向について説明するための図である。
図3図3は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、情報処理システムの処理手順を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、解析部の処理を説明するための図である。
図5B図5Bは、解析部の処理を説明するための図である。
図6A図6Aは、解析部の処理を説明するための図である。
図6B図6Bは、解析部の処理を説明するための図である。
図6C図6Cは、解析部の処理を説明するための図である。
図6D図6Dは、解析部の処理を説明するための図である。
図7A図7Aは、解析部の処理を説明するための図である。
図7B図7Bは、解析部の処理を説明するための図である。
図8A図8Aは、解析部の処理を説明するための図である。
図8B図8Bは、解析部の処理を説明するための図である。
図9A図9Aは、解析部の処理を説明するための図である。
図9B図9Bは、解析部の処理を説明するための図である。
図10A図10Aは、解析部の処理を説明するための図である。
図10B図10Bは、解析部の処理を説明するための図である。
図11A図11Aは、センサデバイスによるデータ品質の検証結果について説明するための図である。
図11B図11Bは、センサデバイスによるデータ品質の検証結果について説明するための図である。
図11C図11Cは、センサデバイスによるデータ品質の検証結果について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る情報処理装置、プログラム、及びシステムを説明する。なお、以下の各実施形態は、以下の説明に限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。
【0012】
(実施形態)
まず、図1を用いて、本発明に係る情報処理システム1の概略構成について説明する。図1は、情報処理システム1の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施形態に係る情報処理システム1は、情報処理装置10、ウェアラブルセンサ20、及び情報処理装置30を備える。
【0013】
情報処理装置10は、精神状態を評価する処理をサービスとして提供するサーバ装置である。例えば、情報処理装置10は、取得部101、第1算出部102、第2算出部103、解析部104、及び出力制御部105を備える。なお、情報処理装置10が有する機能は、第1算出部102、第2算出部103、解析部104、及び出力制御部105に限られるものではない。また、第1算出部102、第2算出部103、解析部104、及び出力制御部105については後述する。
【0014】
ウェアラブルセンサ20は、対象者の体幹部に取り付けられるセンサデバイスである。例えば、ウェアラブルセンサ20は、可撓性を有する板状に形成され、体幹部の皮膚に対して粘着又は吸着されることにより取り付けられる。なお、対象者とは、本発明に係る解析の解析対象となる者であり、例えば、自律神経系に何らかの疾患のある者、それら疾患の疑いのある者、及び健常者を含む。
【0015】
例えば、ウェアラブルセンサ20は、心電計及び体動計を備えるマルチセンサデバイスである。心電計は、対象者の身体に流れる電気信号に基づいて、時系列の心電情報(心電波形データ)を計測する。体動計は、対象者の身体の動きに基づいて、時系列の加速度情報(加速度データ)を計測する。ウェアラブルセンサ20は、計測した各種の計測データを、計測時刻と対応づけて装置内部のメモリに記録する。
【0016】
ここで、ウェアラブルセンサ20は、体動計として、例えば3軸加速度センサを備え、3軸加速度センサを用いて加速度情報を検出する。加速度情報は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の3軸方向それぞれにおける加速度が連続的に記録された連続データである。この3軸方向は、図2に例示するように、ウェアラブルセンサ20の構造に基づいて規定される。図2では、ウェアラブルセンサ20の長手方向がX軸方向に対応し、ウェアラブルセンサ20の厚み方向がZ軸方向に対応し、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向がY軸方向に対応する。なお、この3軸方向は図2に図示した方向に限定されるものではなく、ウェアラブルセンサ20の構造に基づいていれば任意の方向に規定されてよい。また、図2は、ウェアラブルセンサ20における3軸方向について説明するための図である。
【0017】
情報処理装置30は、操作者が操作する端末装置であり、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、スマートフォン、タブレット等である。情報処理装置30は、情報処理装置10及びウェアラブルセンサ20それぞれと任意の通信手段によって相互に接続される。通信手段としては、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等、任意のネットワークが適用可能である。なお、操作者とは、情報処理装置30を操作する者であり、例えば、医師、医療機関に従事する者、又は心理カウンセラー等を含む。ただし、操作者はこれに限定されるものではない。例えば、操作者は、対象者であってもよいし、対象者を支援する者であってもよい。
【0018】
ここで、図1に示した情報処理システム1における処理の代表例について説明する。ウェアラブルセンサ20は、数日~数週間程度の一定期間にわたって対象者に常時装着され、当該期間における心電情報及び加速度情報を逐次収集する。対象者は、本発明に係る解析が行われる際にウェアラブルセンサ20を取り外し、取り外したウェアラブルセンサ20を操作者に渡す。操作者は、情報処理装置30を操作してウェアラブルセンサ20内部のメモリにアクセスし、一定期間にわたって収集された心電情報及び加速度情報の読み出しを行う。そして、操作者は、読み出した心電情報及び加速度情報を情報処理装置10へ送信する。情報処理装置10は、心電情報及び加速度情報に基づいて解析を行い、解析結果を情報処理装置30へ送信する。操作者は、情報処理装置10から送信された解析結果を閲覧し、解析結果に基づく種々の対応を行う。
【0019】
なお、図1にて説明した内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ウェアラブルセンサ20は、心電計や体動計以外にも、脈波を計測する脈波計や、温度(体温)を計測するサーミスタなど、任意の種類のセンサを備えていてもよい。
【0020】
また、例えば、情報処理装置30は、情報処理装置10及びウェアラブルセンサ20と常時接続されていなくてもよい。上述した各種の情報が各装置間でやり取りされる場合に各装置が接続されれば十分である。また、部記録媒体などを介して情報のやり取りを行う場合には、各装置は接続されなくてもよい。また、ウェアラブルセンサ20は、情報処理装置30を介さずに、直接的に情報処理装置10へ各種の情報を送信してもよい。
【0021】
また、ウェアラブルセンサ20は、対象者に常時装着されるのが好適であるが、情報処理装置10の処理に影響の無い範囲で取り外されてもよい。また、ウェアラブルセンサ20に記録された各種の計測データは、ネットワーク経由で定期的(例えば、数時間に1回など)に情報処理装置10へ自動送信されてもよい。
【0022】
次に、図3を用いて、情報処理システム1に備えられる情報処理装置10のハードウェア構成について説明する。図3は、情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、図3では、情報処理装置10のハードウェア構成について説明するが、情報処理装置30のハードウェア構成も基本的に同様であるので説明を省略する。
【0023】
図3に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、補助記憶装置14と、入力装置15と、表示装置16と、外部I/F(Interface)17とを備える。
【0024】
CPU11は、プログラムを実行することにより、情報処理装置10の動作を統括的に制御し、情報処理装置10が有する各種の機能を実現するプロセッサ(処理回路)である。例えば、情報処理装置10が有する取得部101、判定部102、及び出力制御部103の各機能は、CPU11により実現される。
【0025】
ROM12は、不揮発性のメモリであり、情報処理装置10を起動させるためのプログラムを含む各種データ(情報処理装置10の製造段階で書き込まれる情報)を記憶する。RAM13は、CPU11の作業領域を有する揮発性のメモリである。補助記憶装置14は、CPU11が実行するプログラム等の各種データを記憶する。補助記憶装置14は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。
【0026】
入力装置15は、情報処理装置10を操作する者が各種の操作を行うためのデバイスである。入力装置15は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル又はハードウェアキーで構成される。
【0027】
表示装置16は、各種情報を表示する。例えば、表示装置16は、画像データやモデルデータ、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、医用画像等を表示する。表示装置16は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はブラウン管ディスプレイで構成される。なお、例えばタッチパネルのような形態で、入力装置15と表示装置16とが一体に構成されても良い。
【0028】
外部I/F17は、サーバ装置20等の任意の外部装置と接続(通信)するためのインタフェースである。
【0029】
なお、図3にて説明した内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、情報処理装置10のハードウェア構成としては、公知のコンピュータやワークステーションなどの構成を任意に適用可能である。
【0030】
図4を用いて、情報処理システム1に備えられる情報処理装置10の処理を説明する。図4は、情報処理システム1の処理手順を示すフローチャートである。図4に示す処理手順は、例えば、操作者からの要求によって開始される。なお、図4の説明では、図1図3、及び図5A図11Cを適宜参照しつつ説明する。
【0031】
図4に示すように、情報処理装置10の取得部101は、対象者の心電情報及び加速度情報を受信する(ステップS101)。例えば、操作者は、対象者に7日間(約168時間)装着されていたウェアラブルセンサ20から時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得し、取得した心電情報及び加速度情報を情報処理装置10へ送信する。つまり、取得部101は、ウェアラブルセンサ20によって検出された対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する。
【0032】
ウェアラブルセンサ20が対象者に7日間装着されていた場合には、対象者の心電情報及び加速度情報それぞれは、対象者から168時間にわたって連続的に検出された連続データである。なお、対象者の心電情報及び加速度情報は、必ずしも168時間分でなくてもよい。例えば、対象者の心電情報及び加速度情報は、48時間以上の連続データを含むのが好適であり、144時間以上の連続データを含むのが更に好適である。
【0033】
次に、情報処理装置10の第1算出部102は、心電情報に基づいて、対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する(ステップS102)。例えば、第1算出部102は、第1指標値として、心電情報から得られる心拍に関する統計値、前記心電情報から得られる心拍変動の周波数解析に基づく値、及び心拍変動の非線形解析に基づく値のうち少なくとも一つを算出する。
【0034】
一例としては、第1算出部102は、第1指標値として、平均心拍、及びRMSSD(root mean square successive difference)のうち少なくとも一つを算出する。平均心拍は、1分当たりの心拍数である。RMSSDは、隣接する心拍間隔の差の2乗の平均値の平方根である。RMSSDは、副交感神経の活動を表す指標の一つであり、その値が高いほど副交感神経が活発であることを示す。
【0035】
第1算出部102は、連続データのうち任意の時間間隔で区切られたデータごとに第1指標値を算出する。例えば、第1算出部102は、168時間分の心電情報のうち計測開始時刻(0分)から5分に含まれるデータを用いて、0分(初期時相)の平均心拍を算出する。また、第1算出部102は、1分から6分に含まれるデータを用いて、1分(第2時相)の平均心拍を算出する。このように、第1算出部102は、5分間に含まれるデータを用いて、1分ごとの平均心拍を算出する。
【0036】
なお、第1算出部102による算出処理は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、算出処理に用いるデータの期間は5分間に限らず、任意の期間を設定可能である。また、算出される第1指標値の間隔は1分間に限らず、任意の間隔を設定可能である。
【0037】
また、第1算出部102によって算出されるパラメータは、上記のパラメータに限定されるものではない。例えば、心拍に関する統計値としては、平均心拍及びRMSSD以外にも、心拍の標準偏差、平均RR間隔、又はRR間隔の標準偏差(SDNN:Standard Deviation of the Normal to Normal Interval)が算出されてもよい。
【0038】
また、例えば、心拍変動の周波数解析に基づく値としては、ULF(Ultra low Frequency)成分のピーク値若しくは積分値、VLF(Very low Frequency)成分のピーク値若しくは積分値、LF(low Frequency)成分のピーク値若しくは積分値、又はHF(High Frequency)成分のピーク値若しくは積分値が算出されてもよい。また、心拍変動の周波数解析に基づく値としては、ULF成分の積分値、VLF成分の積分値、LF成分の積分値、及びHF成分の積分値のうち任意の積分値同士の比率や、その比率の対数が算出されてもよい。また、心拍変動の周波数解析に基づく値としては、上記の各周波数成分の積分値を用いて四則演算した値やパワースペクトルの対数成分の傾きが算出されてもよい。また、周波数解析は、高速フーリエ変換、Lomb-Scargle Periodogram、及びautoregressive modelのうち少なくとも一つである。
【0039】
また、例えば、心拍変動の非線形解析に基づく値としては、心拍変動のローレンツプロットのy=-x軸方向の標準偏差(SD1)、ローレンツプロットのy=x軸方向の標準偏差(SD2)、SD1及びSD2を互いに積算もしくは除算した値、近似エントロピー、サンプルエントロピー、又はマルチスケールエントロピーが算出されてもよい。
【0040】
また、第1算出部102によって算出される各種のパラメータは、上記の算出方法に限らず、公知の算出方法により算出可能である。
【0041】
次に、情報処理装置10の第2算出部103は、加速度情報に基づいて、対象者の活動量に関する第2指標値を算出する(ステップS103)。例えば、第2算出部103は、第2指標値として、加速度情報に含まれる3軸加速度の各種の統計値、及び所定の算出方法により3軸加速度から得られる値のうち少なくとも一つを算出する。
【0042】
一例としては、第2算出部103は、第2指標値として、METs(Metabolic Equivalents)を算出する。METsは、運動強度を表す指標の一つである。METsは、例えば呼気ガス分析装置を使用した心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary Exercise Test:CPX)によって計測されるのが通例であるが、本発明では例えば非特許文献1に記載の算出方法に基づいて加速度情報(3軸加速度)から算出される。なお、3軸加速度は、互いに直交する3つの軸方向それぞれの加速度の総称である。
【0043】
第2算出部103は、連続データのうち任意の時間間隔で区切られたデータごとに第2指標値を算出する。例えば、第2算出部103は、168時間分の加速度情報のうち計測開始時刻(0分)から5分に含まれるデータを用いて、0分(初期時相)のMETsを算出する。また、第1算出部102は、1分から6分に含まれるデータを用いて、1分(第2時相)のMETsを算出する。このように、第1算出部102は、5分間に含まれるデータを用いて、1分ごとのMETsを算出する。なお、加速度情報からMETsを算出する算出方法は、非特許文献1に記載の算出方法に限らず、公知の算出方法を任意に適用可能である。
【0044】
なお、第2算出部103による算出処理は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、算出処理に用いるデータの対象期間は5分間に限らず、任意の期間を設定可能である。また、算出される第2指標値の算出間隔は1分間に限らず、任意の間隔を設定可能である。ただし、第2算出部103において設定される対象期間及び算出間隔は、第1算出部102において設定される対象期間及び算出間隔とそれぞれ同一であるのが好適である。
【0045】
また、第2算出部103によって算出されるパラメータは、上記のパラメータに限定されるものではない。例えば、3軸加速度の各種の統計値としては、互いに直交する3つの軸方向それぞれの加速度の3軸合成値、3軸加速度それぞれの微分値、当該微分値の3軸合成値、3軸加速度の互いの差分値、当該差分値の3軸合成値、又は3軸加速度の各方向の大きさ(姿勢)が算出されてもよい。また、所定の算出方法により3軸加速度から得られる値としては、METs以外にも、公知の活動量や運動強度が算出されてもよい。
【0046】
そして、情報処理装置10の解析部104は、第1指標値及び第2指標値の関連を解析する(ステップS104)。例えば、解析部104は、関連として、第1指標値及び第2指標値を、多次元のうち少なくとも2次元とする関連図を生成する。また、解析部104は、関連として、第1指標値及び第2指標値に基づく第3指標値を算出する。
【0047】
図5A図10Bを用いて、解析部104の処理を説明する。図5A図10Bは、解析部104の処理を説明するための図である。
【0048】
図5A及び図5Bには、第1指標値を第1軸とし、第2指標値を第2軸とするグラフを例示する。図5Aには、ある1名の対象者について、同一時刻に算出された平均心拍(縦軸)及びMETs(横軸)のペアを各サンプルとしてプロットした散布図を例示する。図5Bには、図5Aと同一の対象者について、同一時刻に算出されたRMSSD(縦軸)及びMETs(横軸)のペアを各サンプルとしてプロットした散布図を例示する。なお、RMSSDは、その値が高いほど副交感神経が活発であることを示し、その値が低いほど交感神経が活発であることを示す。
【0049】
図5Aに示すように、解析部104は、第1算出部102及び第2算出部103によって算出された平均心拍及びMETsに基づいて、平均心拍を縦軸とし、METsを横軸とするグラフを生成する。なお、図5Aのグラフは、関連図の一例である。
【0050】
このように、解析部104は、関連として、平均心拍又はRMSSDを第1軸とし、METsを第2軸とする2軸以上のグラフを生成する。
【0051】
また、解析部104は、HR_min、HR_1、HR_2、HR_3、及びHR_slopeそれぞれの値を算出する。HR_minは、METsが1.5未満であるサンプルのうち、平均心拍が全体の2%に相当する点である。HR_1は、METsが1.5未満であるサンプルの平均心拍の平均値である。HR_2は、METsが1.5以上2.5未満であるサンプルの平均心拍の平均値である。HR_3は、METsが2.5以上3.5未満であるサンプルの平均心拍の平均値である。HR_slopeは、HR_1、HR_2、及びHR_3の近似直線の傾きである。なお、HR_min、HR_1、HR_2、HR_3、及びHR_slopeそれぞれは、第3指標値の一例である。
【0052】
ここで、HR_minは、安静時の心拍に相当し、例えば、この値が高いほど体調が悪いと考えられる。また、HR_slopeは、活動量の変化に対する心機能の応答機能を表し、例えば、傾きが緩やかである場合には心機能が低下していると考えられる。
【0053】
図5Bに示すように、解析部104は、第1算出部102及び第2算出部103によって算出されたRMSSD及びMETsに基づいて、RMSSDを縦軸とし、METsを横軸とするグラフを生成する。なお、図5Bのグラフは、関連図の一例である。
【0054】
また、解析部104は、RMSSD_max、RMSSD_1、RMSSD_2、RMSSD_3、及びRMSSD_slopeそれぞれの値を算出する。RMSSD_maxは、METsが1.5未満であるサンプルのうち、RMSSDが全体の98%に相当する点である。RMSSD_1は、METsが1.5未満であるサンプルのRMSSDの平均値である。RMSSD_2は、METsが1.5以上2.5未満であるサンプルのRMSSDの平均値である。RMSSD_3は、METsが2.5以上3.5未満であるサンプルのRMSSDの平均値である。RMSSD_slopeは、RMSSD_1、RMSSD_2、及びRMSSD_3の近似直線の傾きである。なお、RMSSD_max、RMSSD_1、RMSSD_2、RMSSD_3、及びRMSSD_slopeそれぞれは、第3指標値の一例である。
【0055】
ここで、RMSSD_maxは、安静時における自律神経の働きに相当すると考えられる。また、RMSSD_slopeは、活動量の変化に対する自律神経の応答機能を表し、例えば、傾きが緩やかである場合には自律神経の応答機能が低下していると考えられる。
【0056】
また、解析部104は、第3指標値を、多次元のうちの1次元とする関連図を生成する。例えば、解析部104は、HR_min、HR_slope、RMSSD_max、及びRMSSD_slopeの加齢に伴う変化を示すグラフを生成する。
【0057】
図6A図6Dには、複数の対象者について算出した第3指標値を縦軸とし、各対象者の年代を横軸とするグラフを例示する。図6Aには、同一の対象者について算出されたHR_min(縦軸)及び年代(横軸)のペアを各サンプルとしてプロットした散布図を例示する。図6Bには、同一の対象者について算出されたHR_slope(縦軸)及び年代(横軸)のペアを各サンプルとしてプロットした散布図を例示する。図6Cには、同一の対象者について算出されたRMSSD_max(縦軸)及び年代(横軸)のペアを各サンプルとしてプロットした散布図を例示する。図6Dには、同一の対象者について算出されたRMSSD_slope(縦軸)及び年代(横軸)のペアを各サンプルとしてプロットした散布図を例示する。なお、図6A図6Dのサンプルは、74名の健常ボランティアから一週間にわたって計測されたデータである。
【0058】
図6A図6Dに示すように、解析部104は、心機能や自律神経の応答機能の加齢に伴う変化を可視化することができる。図6Aの例では、安静時の心拍は加齢に伴う顕著な変化は認められなかった。図6Bの例では、活動量の変化に対する心機能の応答機能は加齢に伴って低下する傾向が認められた。図6Cの例では、安静時における自律神経の働きは加齢に伴って低下する傾向が認められた。図6Dの例では、活動量の変化に対する自律神経の応答機能は加齢に伴って低下する傾向が認められた。
【0059】
また、解析部104は、24時間(1日)ごとに解析する。例えば、解析部104は、第1指標値又は第2指標値を24時間ごとに解析し、24時間ごとの変化を重畳したグラフを生成する。
【0060】
図7A図8Bには、複数の対象者について算出された第1指標値の各時刻の平均値又は第2指標値の各時刻の平均値を縦軸とし、時間を横軸とするグラフを例示する。図7Aには、一週間におけるLF/HFの変化を示すグラフを例示する。図7Aの線種の違いは計測日(曜日)の違いに対応する。図7Bには、図7Aに示した全ての計測日のLF/HFの変化を重畳したグラフを例示する。図8Aには、一週間におけるMETsの変化を示すグラフを例示する。図8Aの線種の違いは計測日(曜日)の違いに対応する。図8Bには、図8Aに示した全ての計測日のMETsの変化を重畳したグラフを例示する。なお、LF/HFは、副交感神経に対する交感神経の優位性を表す。なお、図7A図8Bのサンプルは、図6A図6Dのサンプルと同一である。
【0061】
図7A図8Bに示すように、解析部104は、自律神経の活動や活動量の変化を曜日別に解析することができる。図7Aの例では、一週間のうち夜間に副交感神経が優位となり、日中に交感神経が優位となる傾向が認められた。図7Bの例では、横軸を0~24時間として各計測日のLF/HFの変化を重畳したことにより、自律神経の活動の変化における計測日ごとの違いが可視化された。図8Aの例では、一週間のうち夜間に活動量が低下し、日中に活動量が増加する傾向が認められた。図8Bの例では、横軸を0~24時間として各計測日の活動量の変化を重畳したことにより、活動量の変化における計測日ごとの違いが可視化された。
【0062】
図9A図10Bには、自律神経の安定性について対象者間で比較した解析結果を例示する。図9A及び図9Bには、対象者Aの自律神経の安定性についての解析結果を示す。図9Aには、全期間(Whole period)又は計測日ごとの対象者AのlnHFの確率密度を示す。図9Aの線種の違いは計測日(曜日)の違いに対応する。図9Bには、全期間(Whole period)又は計測日ごとの対象者AのlnHFの平均値及び95%信頼区間を示す。図9Bにおいて、横軸はlnHFに対応し、縦軸は計測日に対応する。また、図10A及び図10Bには、対象者B(対象者Aとは異なる者)の自律神経の安定性についての解析結果を示す。図10A及び図10Bの説明は、対象者が異なる点を除き、図9A及び図9Bの説明とそれぞれ同様であるので省略する。
【0063】
図9A及び図9Bに示すように、対象者Aについては、計測日ごとのlnHFは揺らぎが少なく、また、計測日間で比較しても概ね近しい平均値となっている。一方、図10A及び図10Bに示すように、対象者Bについては、計測日ごとのlnHFは揺らぎが対象者Aより大きく、また、計測日間で比較しても平均値がばらついていることがわかる。これらの結果から、自律神経の活動を1日以上の期間で観察すると、自律神経の安定性には個人差があることが認められる。なお、対象者A及び対象者Bは、上述した74名の健常ボランティアから任意に抽出された者である。
【0064】
このように、解析部104は、第1指標値及び第2指標値の関連を解析し、関連図や第3指標値を生成する。
【0065】
なお、図5A図10Bにて説明した内容はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5A図10Bに示した関連図は一例にすぎず、グラフ(時系列変化、2軸、又は3軸等)、度数分布、確率分布、箱ひげ図等、任意の形態の関連図が生成可能である。
【0066】
また、例えば、図5A及び図5Bでは、第1指標値として平均心拍及びRMSSDが適用され、第2指標値としてMETsが適用される場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1指標値としては、第1算出部102によって算出可能なあらゆる指標値が適用可能である。また、第2指標値としては、第2算出部103によって算出可能なあらゆる指標値が適用可能である。
【0067】
また、解析部104によって算出される第3指標値は、HR_min、HR_slope、RMSSD_max、及びRMSSD_slopeに限定されるものではない。第3指標値としては、第1指標値及び第2指標値のあらゆる組み合わせによって算出可能な指標値が適用可能である。
【0068】
また、例えば、図6A図6Dでは、第3指標値の加齢に伴う変化が解析されたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、解析部104は、特定の対象者について、第3指標値を第1週目、第2週目・・・と、経時的に算出することで、第3指標値の経時的な変化を解析してもよい。
【0069】
また、例えば、図7A図10Bでは、LF/HF、METs、及びlnHFを解析対象とする場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、解析対象としては、算出可能なあらゆる第1指標値及び第2指標値が適用可能である。また、解析対象は、第1指標値及び第2指標値に限らず、上述した第3指標値が適用されてもよい。つまり、解析部104は、第1指標値、第2指標値、及び第3指標値のうち少なくとも一つについて、24時間ごとに解析することができる。また、第1指標値、第2指標値、及び第3指標値のうち少なくとも二つが同時に解析される場合には、解析対象となる少なくとも二つの指標値は正規化されるのが好適である。
【0070】
図4の説明に戻る。情報処理装置10の出力制御部105は、第1指標値及び第2指標値の関連を出力する(ステップS105)。例えば、出力制御部105は、解析部104による解析結果を情報処理装置30へ送信する。情報処理装置30は、出力制御部105から送信された解析結果を表示装置に表示させたり、所定の記憶装置に格納したりする。
【0071】
例えば、出力制御部105は、解析結果として、図5A図10Bに示したグラフを情報処理装置30へ送信する。この結果、情報処理装置30は、図5A図10Bに示したグラフをディスプレイに表示させる。
【0072】
なお、出力制御部105によって出力される解析結果は、図5A図10Bに示したグラフに限定されるものではない。例えば、解析結果としては、解析部104によって生成可能なあらゆる関連図、及び解析部104によって算出可能なあらゆる第3指標値が出力可能である。
【0073】
上述してきたように、情報処理装置10において、取得部101は、対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する。第1算出部102は、心電情報に基づいて、対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する。第2算出部103は、加速度情報に基づいて、対象者の活動量に関する第2指標値を算出する。解析部104は、第1指標値及び第2指標値の関連を解析する。これにより、情報処理装置10は、信頼性の高い自律神経指標を提供することができる。
【0074】
例えば、情報処理装置10は、安静時の数分間に限らず、日々の生活活動の中で対象者から計測された心電情報及び加速度情報に基づいて解析を行う。このため、情報処理装置10は、安静時の数分間に計測された従来の自律神経指標と比較して、信頼性の高い自律神経指標を提供することが期待される。
【0075】
また、情報処理装置10は、対象者の体幹部に取り付けられるウェアラブルセンサ20によって検出された心電情報を用いる。この結果、情報処理装置10は、バンド型(腕時計型)の光電脈波計(心拍計)によって検出された心拍情報と比較して、信頼性の高い心電情報を利用することができる。なお、心拍情報とは、心臓の脈動に伴って変化する血流量の変化を計測したものであり、この時系列変化から平均心拍、SDNN、及びHFを算出可能である。
【0076】
図11A図11Cを用いて、センサデバイスによるデータ品質の検証結果について説明する。図11A図11Cは、センサデバイスによるデータ品質の検証結果について説明するための図である。図11A図11Cにおいて、実線はウェアラブルセンサ20によって検出された心電情報に基づくパラメータであり、破線はバンド型の光電脈波計によって検出された心拍情報に基づくパラメータである。図11A図11B、及び図11Cには、平均心拍、SDNN、及びHFのそれぞれの時系列変化を示す。
【0077】
図11Aに示すように、ウェアラブルセンサ20に基づく平均心拍は概ね60~110の間で変化しており、特にデータの「抜け」は見受けられない。これに対して、バンド型の光電脈波計に基づく平均心拍も60~110の間で変化しているものの、時折、値が「0」を指しており、データの「抜け」が見受けられる。また、図11B及び図11Cに示すように、自律神経指標の一つであるSDNN及びHFにて比較しても、ウェアラブルセンサ20に基づくパラメータよりバンド型の光電脈波計に基づくパラメータの方が揺らぎが大きい。これらの結果から、ウェアラブルセンサ20によって検出された心電情報は、バンド型の光電脈波計によって検出された心電情報より信頼性が高いことが裏付けられたと言える。つまり、本発明に係る情報処理装置10は、ウェアラブルセンサ20によって検出された信頼性の高い心電情報を用いるとともに、日々の様々な生活活動の中で対象者から計測された心電情報及び加速度情報に基づいて解析を行う。これにより、情報処理装置10は、より信頼性の高い自律神経指標を提供することができる。
【0078】
(変形例1)
上記の実施形態では、24時間ごと(計測日ごと)に解析を行う場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、解析部104は、特定の行動が行われた特定行動期間について、関連を解析してもよい。ここで、特定行動期間は、対象者の行動が記録された行動履歴情報の中から操作者によって選択された期間に対応する。この場合、解析部104は、行動履歴情報の中から操作者によって選択された特定行動期間について、関連を解析する。
【0079】
例えば、情報処理装置10には、行動履歴情報が記録されている。行動履歴情報には、例えば、1日のうち、仕事、家事、移動などの各種の行動(生活活動)が、実際に行われた時間とともに記録されている。操作者は、行動履歴情報のうち任意の行動を指定する。解析部104は、操作者によって指定された行動が行われた時間(期間)を特定行動期間として特定し、特定した特定行動期間に含まれる第1指標値及び第2指標値を用いて、関連を解析する。
【0080】
これにより、情報処理装置10は、仕事、家事、移動などの各種の行動が行われた期間ごとに解析を行うことができる。これにより、情報処理装置10は、各種の行動に関連する自律神経指標を提供することができる。
【0081】
(変形例2)
変形例1にて説明した行動履歴情報は、心電情報及び/又は加速度情報に基づいて推定可能である。つまり、解析部104は、心電情報及び加速度情報のうち少なくとも一方に基づいて、行動履歴情報を推定してもよい。
【0082】
例えば、解析部104は、心電情報に基づいて、行動履歴情報を推定する。一例としては、解析部104は、心電情報から得られる平均心拍が閾値以上となる時間が10分以上継続した場合に、その時間を「運動」として特定する。なお、心電情報から行動(生活活動)を推定する技術は、これに限定されるものではなく、公知の技術を適宜適用可能である。
【0083】
また、解析部104は、加速度情報に基づいて、行動履歴情報を推定する。一例としては、解析部104は、加速度情報から得られる対象者の動作(体動)の大きさが閾値未満である時間が3時間以上継続した場合に、その時間を「睡眠」として特定する。なお、加速度情報から行動(生活活動)を推定する技術は、これに限定されるものではなく、公知の技術を適宜適用可能である。
【0084】
また、解析部104は、心電情報及び加速度情報の組み合わせに基づいて、行動履歴情報を推定する。一例としては、平均心拍が閾値以上であり、かつ、動作(体動)の大きさが閾値以上である時間が10分以上継続した場合に、その時間を「運動」として特定する。なお、心電情報及び加速度情報から行動(生活活動)を推定する技術は、これに限定されるものではなく、公知の技術を適宜組み合わせて適用可能である。
【0085】
(変形例3)
また、上述した実施形態では、連続データ(心電情報及び加速度情報)を1回収集する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、情報処理装置10は、連続データの収集を複数回実行し、収集した複数回分の連続データから各種の指標値を算出し、解析を行うことが可能である。
【0086】
一例として、ある月の第1週目の連続データと、第3週目の連続データとを収集して解析を行う場合について説明する。この場合、ウェアラブルセンサ20は、第1週目と第3週目において特定の対象者に装着され、第1週目の連続データと、第3週目の連続データとをそれぞれ収集する。そして、操作者は、ウェアラブルセンサ20から第1週目の連続データと、第3週目の連続データとを取得して、取得した連続データを情報処理装置10へ送信する。
【0087】
情報処理装置10において、取得部101は、第1週目の連続データと、第3週目の連続データとを取得する。具体的には、取得部101は、第1週目の心電情報、第1週目の加速度情報、第3週目の心電情報、及び第3週目の加速度情報を取得する。言い換えると、取得部101は、上述した実施形態で取得した心電情報(第1心電情報)に加えて、第1心電情報と同一の対象者について異なるタイミングで検出(収集)された第2心電情報を取得する。また、取得部101は、上述した実施形態で取得した加速度情報(第1加速度情報)に加えて、第1加速度情報と同一の対象者について異なるタイミングで検出された第2加速度情報とを取得する。なお、第2心電情報及び第2加速度情報は、互いに同一のタイミング(期間)に検出されるのが好適である。また、変形例3に係る取得部101の処理は、第1週目と第3週目などの複数回分の連続データを取得する点を除き、上記の実施形態にて説明した取得部101の処理と同様である。
【0088】
続いて、第1算出部102は、第1週目の心電情報に基づいて、第1週目の平均心拍を算出するとともに、第3週目の心電情報に基づいて、第3週目の平均心拍を算出する。言い換えると、第1算出部102は、上述した実施形態で算出した第1指標値に加えて、第2心電情報に基づいて、対象者の自律神経に関する第3指標値を算出する。なお、変形例3に係る第1算出部102の処理は、第1週目と第3週目などの複数回分の連続データから指標値を算出する点を除き、上記の実施形態にて説明した第1算出部102の処理と同様である。また、第3指標値は、平均心拍やRMSSDなど、第1指標値と同様の指標値である。
【0089】
また、第2算出部103は、第1週目の加速度情報に基づいて、第1週目のMETsを算出するとともに、第3週目の加速度情報に基づいて、第3週目のMETsを算出する。言い換えると、第2算出部103は、上述した実施形態で算出した第2指標値に加えて、第2加速度情報に基づいて、対象者の活動量に関する第4指標値を算出する。なお、変形例3に係る第2算出部103の処理は、第1週目と第3週目などの複数回分の連続データから指標値を算出する点を除き、上記の実施形態にて説明した第2算出部103の処理と同様である。また、第4指標値は、METsなど、第2指標値と同様の指標値である。
【0090】
そして、解析部104は、解析部104は、第1指標値、第2指標値、第3指標値、及び前記第4指標値のうち少なくとも二つを同一の時間帯で比較する。例えば、解析部104は、第1週目の平均心拍と第3週目の平均心拍とを比較する。また、解析部104は、第1週目のMETsと第3週目のMETsとを比較する。具体的には、解析部104は、比較対象となる各指標値の時系列変化のグラフを生成してもよいし、比較対象となる各指標値の差分などを算出してもよい。
【0091】
また、解析部104は、特定の時間帯について第1指標値及び第2指標値の第1関連を解析し、特定の時間帯と同一の時間帯について第3指標値及び第4指標値の第2関連を解析する。例えば、解析部104は、第1週目の平均心拍と第1週目のMETsとに基づいて、第1週目のHR_slopeを算出する。また、解析部104は、第3週目の平均心拍と第3週目のMETsとに基づいて、第3週目のHR_slopeを算出する。そして、解析部104は、第1週目のHR_slopeと、第3週目のHR_slopeとを比較する。
【0092】
そして、出力制御部105は、解析部104による比較結果を出力する。例えば、出力制御部105は、比較結果として、各指標値の時系列変化のグラフを同時に表示してもよいし、比較結果の値(差分値など)を出力してもよい。
【0093】
このように、情報処理装置10は、複数回分の連続データから各種の指標値を算出し、解析を行うことが可能である。
【0094】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0095】
(システム構成)
上記の実施形態では、図1を用いて情報処理システム1の概略構成を説明したが、本発明はこれ限定されるものではない。例えば、情報処理装置10が備える取得部101、第1算出部102、第2算出部103、解析部104、及び出力制御部105の各処理機能は、情報処理システム1が備える任意の装置に備えられていてもよい。一例としては、取得部101は、情報処理装置30に備えられていてもよい。
【0096】
すなわち、情報処理システム1において、取得部101は、対象者の体幹部に取り付けられたセンサデバイスによって検出された対象者の時系列の心電情報及び時系列の加速度情報を取得する。第1算出部102は、心電情報に基づいて、対象者の自律神経に関する第1指標値を算出する。第2算出部103は、加速度情報に基づいて、対象者の活動量に関する第2指標値を算出する。解析部104は、第1指標値及び第2指標値の関連を解析する。
【0097】
以上説明した実施形態及び変形例によれば、信頼性の高い自律神経指標を提供することができる。
【0098】
また、上述した実施形態及び変形例に係る情報処理システム1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良いし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、各種プログラムを、例えばROM等の不揮発性の記憶媒体に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0099】
1 情報処理システム
10,30 情報処理装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 補助記憶装置
15 入力装置
16 表示装置
17 外部I/F
20 ウェアラブルセンサ
101 取得部
102 第1算出部
103 第2算出部
104 解析部
105 出力制御部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C