(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171827
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】自動試刷りシステム
(51)【国際特許分類】
B41F 15/12 20060101AFI20241205BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20241205BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41F15/12
B41F15/08 303E
H05K3/34 505D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089072
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】和田 匡史
【テーマコード(参考)】
2C035
5E319
【Fターム(参考)】
2C035AA06
2C035FA22
2C035FA31
2C035FB32
2C035FD01
2C035FD42
5E319BB05
5E319CD29
5E319CD35
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】オペレータの作業効率が低下することを抑制しつつ、スクリーン印刷装置が大型化することを抑制可能な自動試刷りシステムを提供する。
【解決手段】自動試刷りシステムは、前記基板に半田をスクリーン印刷する印刷処理を行うスクリーン印刷装置と、前記生産ラインにおける基板搬送方向において前記スクリーン印刷装置の上流側又は下流側に配置されているバッファ装置と、を備えており、前記バッファ装置は、前記スクリーン印刷装置による試験的な前記印刷処理である試刷り処理に用いられる試刷り基板を収容するストレージと、前記ストレージに収容されている前記試刷り基板を前記スクリーン印刷装置に送り出す送り出し機構と、前記試刷り処理が施された前記試刷り基板を前記ストレージに回収する回収機構と、を有している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の生産ラインにおいて行われる半田の試刷り工程を自動化するための自動試刷りシステムであって、
前記基板に半田をスクリーン印刷する印刷処理を行うスクリーン印刷装置と、
前記生産ラインにおける基板搬送方向において前記スクリーン印刷装置の上流側又は下流側に配置されているバッファ装置と、を備えており、
前記バッファ装置は、
前記スクリーン印刷装置による試験的な前記印刷処理である試刷り処理に用いられる試刷り基板を収容するストレージと、
前記ストレージに収容されている前記試刷り基板を前記スクリーン印刷装置に送り出す送り出し機構と、
前記試刷り処理が施された前記試刷り基板を前記ストレージに回収する回収機構と、を有している、自動試刷りシステム。
【請求項2】
前記バッファ装置は、
前記基板を搬送するパススルーコンベアと、
前記基板を前記基板搬送方向に沿って搬送するための搬送位置と、前記搬送位置とは異なるコンベア待機位置と、の間で前記パススルーコンベアを移動させ、かつ、前記試刷り基板を送り出すとともに回収するための試刷り位置と、前記試刷り位置とは異なるストレージ待機位置と、の間で前記ストレージを移動させる移動機構と、をさらに有しており、
前記移動機構は、
前記生産ラインにおける前記基板の生産が行われる基板生産期間において、前記パススルーコンベアを前記コンベア待機位置から前記搬送位置に移動させるとともに、前記ストレージを前記試刷り位置から前記ストレージ待機位置に移動させ、
前記試刷り処理が行われる試刷り期間において、前記パススルーコンベアを前記搬送位置から前記コンベア待機位置に移動させるとともに、前記ストレージを前記ストレージ待機位置から前記試刷り位置に移動させる、請求項1に記載の自動試刷りシステム。
【請求項3】
前記基板搬送方向は水平方向であり、
前記移動機構は、上下方向に前記ストレージ及び前記パススルーコンベアを一体的に昇降させることにより、前記ストレージ及び前記パススルーコンベアを移動させる、請求項2に記載の自動試刷りシステム。
【請求項4】
前記バッファ装置は、
前記基板搬送方向において前記パススルーコンベアと前記スクリーン印刷装置との間に配置されている中間コンベアと、
前記試刷り基板を前記スクリーン印刷装置に向けて搬送する試刷り前搬送状態、及び、前記試刷り基板を前記ストレージに向けて搬送する試刷り後搬送状態の間で前記中間コンベアの搬送状態を切り替える中間コンベア切り替え部と、をさらに有しており、
前記送り出し機構は、前記ストレージに収納されている前記試刷り基板を前記中間コンベアに載置させるために前記試刷り基板を前記中間コンベアに向けて押し出す送り出し側押し出しユニットを有しており、
前記回収機構は、前記中間コンベアに載置されている前記試刷り基板を前記ストレージに収納するために前記試刷り基板を前記ストレージに向けて押し出す回収側押し出しユニットを有している、請求項2又は3に記載の自動試刷りシステム。
【請求項5】
前記バッファ装置は、前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷装置の上流側に配置されており、
前記スクリーン印刷装置は、
前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機と、
前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷機に対して上流側に配置されている上流側印刷コンベアと、
前記スクリーン印刷機内に配置されている機内コンベアと、
前記スクリーン印刷機に対して下流側に配置されている下流側印刷コンベアと、
前記上流側印刷コンベア、前記機内コンベア、及び前記下流側印刷コンベアのそれぞれの搬送状態を、前記基板搬送方向に沿って前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第1搬送状態、及び、前記基板搬送方向とは反対方向に前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第2搬送状態の間で切り替える印刷装置側切り替え部と、をさらに有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【請求項6】
前記バッファ装置は、前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷装置の下流側に配置されており、
前記スクリーン印刷装置は、
前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機と、
前記スクリーン印刷機内に配置されている機内コンベアと、
前記スクリーン印刷機に対して下流側に配置されている下流側印刷コンベアと、
前記機内コンベア及び前記下流側印刷コンベアのそれぞれの搬送状態を、前記基板搬送方向に沿って前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第1搬送状態、及び、前記基板搬送方向とは反対方向に前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第2搬送状態の間で切り替える印刷装置側切り替え部と、をさらに有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【請求項7】
前記ストレージのサイズは、前記スクリーン印刷装置が前記印刷処理を施すことができる全ての種類の基板の中で最大サイズの基板以上のサイズの試刷り基板を収納可能に設定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【請求項8】
前記スクリーン印刷装置は、
前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機と、
前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷機に対して上流側に配置されている上流側印刷コンベアと、
前記スクリーン印刷機内に配置されている機内コンベアと、
前記スクリーン印刷機に対して下流側に配置されている下流側印刷コンベアと、
前記基板又は前記試刷り基板のサイズに応じて、前記上流側印刷コンベア、前記機内コンベア、及び前記下流側印刷コンベアのコンベア幅を調整するコンベア幅調整部と、をさらに有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【請求項9】
前記スクリーン印刷装置は、前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機をさらに有しており、
前記スクリーン印刷機は、
前記スクリーン印刷機内に搬入される前記基板又は前記試刷り基板を下支えする複数の下支え部と、
前記基板又は前記試刷り基板のサイズに応じて前記複数の下支え部の配置を調整する配置調整部と、を有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【請求項10】
前記スクリーン印刷装置は、前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機をさらに有しており、
前記スクリーン印刷機は、
前記スクリーン印刷機内に搬入されている前記基板又は前記試刷り基板の上方に配置され、上面に半田が供給されるスクリーンマスクと、
前記スクリーンマスクの上方に配置され、予め設定されている移動方向に沿って前記スクリーンマスクに対して相対的に摺動することにより、前記半田を前記基板又は前記試刷り基板に印刷するスキージと、を有しており、
前記ストレージには、前記移動方向に対して直交する幅方向における前記基板の基板幅寸法よりも前記幅方向における試刷り幅寸法が大きく設定されている前記試刷り基板が収納されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【請求項11】
前記スキージの前記幅方向におけるスキージ幅寸法は、前記試刷り幅寸法よりも小さく設定されている、請求項10に記載の自動試刷りシステム。
【請求項12】
前記ストレージには、基準マークを有する前記試刷り基板が収納されており、
前記スクリーン印刷装置は、前記基準マークを認識するための認識カメラをさらに有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【請求項13】
前記生産ラインにおいて前記基板を前記基板搬送方向に沿って搬送する2以上のレーンをさらに備えており、
前記スクリーン印刷装置及び前記バッファ装置は、前記各レーンのそれぞれに対応して配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試刷りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動試刷りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、プリント基板に対して適切な半田の印刷が施されるか否かを確認するために、試験的な印刷処理である試刷り処理を印刷装置に実行させることがある。
【0003】
また、この試刷り処理は、半田の粘度を適切な状態に回復させるため、又は、基板の開口部にフラックスを適切に馴染ませるために行われることがある。
【0004】
例えば、特許文献2には、半田の粘度を適切な状態に保つために、擬似的な充填動作(試刷り処理)を行う技術が開示されている。特許文献2の技術では、半田の印刷が所定期間実施されなかったときに、擬似的な基板を印刷装置(スクリーン印刷装置)のテーブル部に搬入する。そして、当該擬似的な基板に対して実際の生産時と同様の条件で印刷処理を行うことにより半田を攪拌し、半田の粘性を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-219537号公報
【特許文献2】特開2004-025644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の技術では、印刷装置が大型化する恐れがある。具体的に、特許文献2に係る印刷装置は、擬似的な基板を保持しておくための上流側擬似基板ストッカと、印刷処理が施された後の擬似的な基板を保持しておくための下流側擬似基板ストッカと、を有している。さらに、特許文献2に係る印刷装置は、通常の回路基板に代えて擬似的な基板を上流側擬似基板ストッカからテーブル部に搬入するための切り替え手段、及び、擬似的な基板を下流側擬似基板ストッカに搬出するための切り替え手段を有している。これらの各部を備えるように印刷装置を設計する場合、印刷装置の大型化を抑制することは困難である。
【0007】
これに対して、印刷装置の大型化を抑制するために、印刷装置の設計を簡略化することが考えられる。具体的には、印刷装置から上流側擬似基板ストッカ、下流側擬似基板ストッカ、および2つの切り替え手段を取り除く。そして、試刷り処理を行う際は、オペレータに手動で試刷り基板を印刷装置にセットさせ、試刷り処理完了後の試刷り基板はオペレータに手動で回収させることが考えられる。しかしながら、この場合、オペレータの作業効率が低下する。
【0008】
本開示の目的は、オペレータの作業効率が低下することを抑制しつつ、スクリーン印刷装置が大型化することを抑制可能な自動試刷りシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一局面に係る自動試刷りシステムは、基板の生産ラインにおいて行われる半田の試刷り工程を自動化するための自動試刷りシステムであって、前記基板に半田をスクリーン印刷する印刷処理を行うスクリーン印刷装置と、前記生産ラインにおける基板搬送方向において前記スクリーン印刷装置の上流側又は下流側に配置されているバッファ装置と、を備えており、前記バッファ装置は、前記スクリーン印刷装置による試験的な前記印刷処理である試刷り処理に用いられる試刷り基板を収容するストレージと、前記ストレージに収容されている前記試刷り基板を前記スクリーン印刷装置に送り出す送り出し機構と、前記試刷り処理が施された前記試刷り基板を前記ストレージに回収する回収機構と、を有している。
【0010】
この自動試刷りシステムによれば、試刷り基板のスクリーン印刷装置への送り出し、スクリーン印刷装置における試刷り処理、及びスクリーン印刷装置からの試刷り基板の回収、といった一連の試刷り工程を自動化することができる。具体的に、バッファ装置は、試刷り基板をスクリーン印刷装置に向けて送り出す送り出し機構を有している。この送り出し機構を用いることにより、試刷り基板をストレージからスクリーン印刷装置に向けて自動的に送り込むことができる。さらに、バッファ装置は、試刷り基板を回収する回収機構を有している。この回収機構を用いることにより、試刷り処理が行われた後の試刷り基板をストレージに自動的に回収することができる。
【0011】
また、本発明に係る自動試刷りシステムでは、試刷り基板を貯留するストレージ、試刷り基板をスクリーン印刷装置に送り出す送り出し機構、及び、試刷り基板をスクリーン印刷装置から回収する回収機構は、バッファ装置が備えている。そのため、スクリーン印刷装置が大型化することが抑制される。
【0012】
したがって、本発明によれば、オペレータの作業効率が低下することを抑制しつつ、スクリーン印刷装置が大型化することを抑制できる。
【0013】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記バッファ装置は、前記基板を搬送するパススルーコンベアと、前記基板を前記基板搬送方向に沿って搬送するための搬送位置と、前記搬送位置とは異なるコンベア待機位置と、の間で前記パススルーコンベアを移動させ、かつ、前記試刷り基板を送り出すとともに回収するための試刷り位置と、前記試刷り位置とは異なるストレージ待機位置と、の間で前記ストレージを移動させる移動機構と、をさらに有しており、前記移動機構は、前記生産ラインにおける前記基板の生産が行われる基板生産期間において、前記パススルーコンベアを前記コンベア待機位置から前記搬送位置に移動させるとともに、前記ストレージを前記試刷り位置から前記ストレージ待機位置に移動させ、前記試刷り処理が行われる試刷り期間において、前記パススルーコンベアを前記搬送位置から前記コンベア待機位置に移動させるとともに、前記ストレージを前記ストレージ待機位置から前記試刷り位置に移動させることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、基板生産期間に、基板にバッファ装置を素通りさせることができる。具体的に、上記構成によれば、基板生産期間にはパススルーコンベアを搬送位置に移動させ、試刷り期間にはパススルーコンベアをコンベア待機位置に移動させることができる。さらに、上記構成によれば、基板生産期間にはストレージを試刷り位置に移動させ、試刷り期間にはストレージをストレージ待機位置に移動させることができる。搬送位置は、パススルーコンベアに基板を搬送させるための位置であり、試刷り位置は、試刷り工程を自動化するための位置である。コンベア待機位置は、パススルーコンベアが試刷り工程の妨げとなることを防止するための位置であり、ストレージ待機位置は、ストレージがパススルーコンベアによる基板の搬送の妨げとなることを防止するための位置である。したがって、上記構成によれば、試刷り期間には前記試刷り工程を実行させつつ、基板搬送期間には基板にバッファ装置を素通りさせることが可能になる。これにより、バッファ装置を、スクリーン印刷装置に対して直列的に配置することが可能になる。そのため、生産ラインの構成が複雑化することを抑制できる。
【0015】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記基板搬送方向は水平方向であり、前記移動機構は、上下方向に前記ストレージ及び前記パススルーコンベアを一体的に昇降させることにより、前記ストレージ及び前記パススルーコンベアを移動させることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、簡易な構成によってストレージ及びパススルーコンベアを移動させることができる。そのため、自動試刷りシステムの設計が複雑化することを抑制できる。
【0017】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記バッファ装置は、前記基板搬送方向において前記パススルーコンベアと前記スクリーン印刷装置との間に配置されている中間コンベアと、前記試刷り基板を前記スクリーン印刷装置に向けて搬送する試刷り前搬送状態、及び、前記試刷り基板を前記ストレージに向けて搬送する試刷り後搬送状態の間で前記中間コンベアの搬送状態を切り替える中間コンベア切り替え部と、をさらに有しており、前記送り出し機構は、前記ストレージに収納されている前記試刷り基板を前記中間コンベアに載置させるために前記試刷り基板を前記中間コンベアに向けて押し出す送り出し側押し出しユニットを有しており、前記回収機構は、前記中間コンベアに載置されている前記試刷り基板を前記ストレージに収納するために前記試刷り基板を前記ストレージに向けて押し出す回収側押し出しユニットを有していることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、簡易な構成によって試刷り基板の送り出し及び回収の自動化が実現する。そのため、自動試刷りシステムの設計が複雑化することを抑制できる。
【0019】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記バッファ装置は、前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷装置の上流側に配置されており、前記スクリーン印刷装置は、前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機と、前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷機に対して上流側に配置されている上流側印刷コンベアと、前記スクリーン印刷機内に配置されている機内コンベアと、前記スクリーン印刷機に対して下流側に配置されている下流側印刷コンベアと、前記上流側印刷コンベア、前記機内コンベア、及び前記下流側印刷コンベアのそれぞれの搬送状態を、前記基板搬送方向に沿って前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第1搬送状態、及び、前記基板搬送方向とは反対方向に前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第2搬送状態の間で切り替える印刷装置側切り替え部と、をさらに有していることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、上流側印刷コンベア上に存在する基板を、簡易な構成により一時的に退避させることができる。具体的に、バッファ装置が基板搬送方向においてスクリーン印刷装置の上流側に配置されている場合、バッファ装置とスクリーン印刷機との間の中間位置に、これから印刷処理が施される予定の基板(以下、印刷未完基板と呼ぶ)が存在することがある。例えば、上流側印刷コンベア上に、印刷未完基板が存在することがある。この印刷未完基板が仮に上流側印刷コンベア上に留まる場合、印刷未完基板が障害になって、試刷り基板のスクリーン印刷機への送り込み、及び、試刷り基板のスクリーン印刷機からの回収が困難になる。つまり、試刷り工程を正常に実行することが困難になる。そのため、試刷り工程が完了するまでの間、この印刷未完基板は一時的に退避させておくことが好ましい。
【0021】
ここで、上記構成に係るスクリーン印刷装置は、上流側印刷コンベア、機内コンベア、及び下流側印刷コンベアの搬送状態を第1搬送状態と第2搬送状態との間で切り替える印刷装置側切り替え部を有している。したがって、スクリーン印刷装置は、上流側印刷コンベア上に印刷未完基板が存在する場合、各コンベアを第1搬送状態にして、スクリーン印刷機の下流側に印刷未完基板を退避させることができる。これにより、試刷り基板の送り込み及び回収が印刷未完基板によって妨げられることが防止される。つまり、試刷り工程を正常に実行することが可能になる。さらに、上記構成に係るスクリーン印刷装置は、試刷り工程が完了し次第、各コンベアを第2搬送状態にして、スクリーン印刷機の上流側に印刷未完基板を復帰させることができる。これにより、試刷り工程の完了後に、印刷未完基板に印刷処理を施すことが可能になる。
【0022】
このように、上記構成によれば、例えばロボットアーム等を用いる場合と比較して、簡易な構成により印刷未完基板を一時的に退避させることができる。したがって、自動試刷りシステムの設計が複雑化することを抑制できる。
【0023】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記バッファ装置は、前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷装置の下流側に配置されており、前記スクリーン印刷装置は、前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機と、前記スクリーン印刷機内に配置されている機内コンベアと、前記スクリーン印刷機に対して下流側に配置されている下流側印刷コンベアと、前記機内コンベア及び前記下流側印刷コンベアのそれぞれの搬送状態を、前記基板搬送方向に沿って前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第1搬送状態、及び、前記基板搬送方向とは反対方向に前記基板又は前記試刷り基板を搬送する第2搬送状態の間で切り替える印刷装置側切り替え部と、をさらに有していることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、バッファ装置がスクリーン印刷装置の上流側に配置されている場合とは異なり、印刷未完基板を一時的に退避させるとともに復帰させる動作を行う必要がなくなる。具体的に、上記構成では、バッファ装置が基板搬送方向においてスクリーン印刷装置の下流側に配置されている。このバッファ装置とスクリーン印刷装置との位置関係において、前記中間位置に存在する基板は、印刷処理が施された後の基板(以下、印刷済み基板と呼ぶ)である。したがって、このような印刷済み基板は、単純に、基板搬送方向に沿ってバッファ装置の下流側にまで搬送してしまえばよい。これにより、試刷り基板の送り込み及び回収が印刷済み基板によって妨げられることが防止される。このように、上記構成では、バッファ装置とスクリーン印刷機との間の中間位置に、印刷済み基板が存在することはあっても、印刷未完基板が存在することはない。そのため、バッファ装置がスクリーン印刷装置の上流側に配置されている場合とは異なり、印刷未完基板を一時的に退避させる動作、及び、復帰させる動作を行う必要がない。その結果、生産ラインにおける基板の生産に関するサイクルタイムを短縮することが可能になる。
【0025】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記ストレージのサイズは、前記スクリーン印刷装置が前記印刷処理を施すことができる全ての種類の基板の中で最大サイズの基板以上のサイズの試刷り基板を収納可能に設定されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、スクリーン印刷機が実行することが想定される全ての種類の試刷り処理に対応可能な試刷り基板をストレージに収納することができる。その結果、生産ラインにおいて生産される基板の種類に関わらず、ストレージに収容される試刷り基板の種類を1種類にすることができる。そのため、基板の種類ごとに個別に試刷り基板を用意する手間を省略することができる。
【0027】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記スクリーン印刷装置は、前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機と、前記基板搬送方向において前記スクリーン印刷機に対して上流側に配置されている上流側印刷コンベアと、前記スクリーン印刷機内に配置されている機内コンベアと、前記スクリーン印刷機に対して下流側に配置されている下流側印刷コンベアと、前記基板又は前記試刷り基板のサイズに応じて、前記上流側印刷コンベア、前記機内コンベア、及び前記下流側印刷コンベアのコンベア幅を調整するコンベア幅調整部と、をさらに有していることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、基板のサイズと試刷り基板のサイズとが異なる場合であっても、コンベア幅調整部が各コンベアのコンベア幅を調整するため、印刷処理及び試刷り処理を好適に行うことができる。
【0029】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記スクリーン印刷装置は、前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機をさらに有しており、前記スクリーン印刷機は、前記スクリーン印刷機内に搬入される前記基板又は前記試刷り基板を下支えする複数の下支え部と、前記基板又は前記試刷り基板のサイズに応じて前記複数の下支え部の配置を調整する配置調整部と、を有していることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、スクリーン印刷機内に搬入される基板のサイズと試刷り基板のサイズとが異なる場合であっても、配置調整部が複数の下支え部の配置を調整するため、印刷処理及び試刷り処理を好適に行うことができる。
【0031】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記スクリーン印刷装置は、前記印刷処理を実行するスクリーン印刷機をさらに有しており、前記スクリーン印刷機は、前記スクリーン印刷機内に搬入されている前記基板又は前記試刷り基板の上方に配置され、上面に半田が供給されるスクリーンマスクと、前記スクリーンマスクの上方に配置され、予め設定されている移動方向に沿って前記スクリーンマスクに対して相対的に摺動することにより、前記半田を前記基板又は前記試刷り基板に印刷するスキージと、を有しており、前記ストレージには、前記移動方向に対して直交する幅方向における前記基板の基板幅寸法よりも前記幅方向における試刷り幅寸法が大きく設定されている前記試刷り基板が収納されていることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、スキージに、半田の掻き残しを掻き取らせることが可能になる。具体的に、スクリーンマスクの幅方向におけるマスク幅寸法、及び、スキージの幅方向におけるスキージ幅寸法が基板の幅方向における基板幅寸法よりも大きい場合、印刷処理が行われる際に、スクリーンマスクに非支持領域が形成される。非支持領域は、基板幅寸法とスキージ幅寸法との差分に応じてスクリーンマスクに形成される領域である。非支持領域は、スクリーンマスクにおける、上方から摺接するスキージに対して基板によって下支えされない領域である。この非支持領域は、スキージがマスク上面に対して上方から摺接することに伴い、撓むことがある。この撓みによって、スキージの下面とスクリーンマスクの上面との間に隙間が発生する。そして、スキージが半田を印刷しながらスクリーンマスクの上面を摺動する過程において、当該隙間に半田が溜まり込むことがある。この隙間に溜まり込んだ半田によって、半田の掻き残しが形成される。
【0033】
ここで、上記構成によれば、基板幅寸法よりも大きい試刷り幅寸法を有する試刷り基板をストレージに収容することができる。この試刷り基板は、試刷り処理が行われる際に、幅方向における広範囲に亘ってスクリーンマスクを下支えすることができる。具体的に、試刷り基板は、試刷り処理が行われる際に、印刷処理時には非支持領域とされていた領域のうち少なくとも一部を下支えすることができる。そして、この状態でスキージがマスク上面を摺動することにより、非支持領域に対応して発生していた半田の掻き残しがスキージによって掻き取られる。このように、上記構成によれば、試刷り処理を実行することにより、半田の掻き残しをスキージに自動的に掻き取らせることができる。そのため、オペレータが手動により掻き残しを掻き取る場合と比較して、オペレータの作業効率が向上する。
【0034】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記スキージの前記幅方向におけるスキージ幅寸法は、前記試刷り幅寸法よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、スキージに、より効率よく半田の掻き残しを掻き取らせることができる。具体的に、上記構成によれば、試刷り幅寸法がスキージ幅寸法よりも大きくなるようにスキージ幅寸法が設定されている。そのため、試刷り処理が行われる際、スクリーンマスクは、幅方向の全域に亘って試刷り基板に下支えされる。この状態で、スキージがマスク上面を摺動することにより、半田の掻き残しがスキージによって幅方向の全域に亘って掻き取られる。このように、上記構成によれば、試刷り処理を実行することにより、より効率よく掻き残しをスキージに掻き取らせることができる。そのため、オペレータの作業効率がより一層向上する。
【0036】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記ストレージには、基準マークを有する前記試刷り基板が収納されており、前記スクリーン印刷装置は、前記基準マークを認識するための認識カメラをさらに有していることが好ましい。
【0037】
この構成によれば、スクリーン印刷装置は、基準マークを利用して試刷り基板の正確な位置を把握した状態で、試刷り処理を行うことができる。つまり、試刷り処理において、試刷り基板の位置合わせを行うことが可能になる。したがって、試刷り処理の精度が向上する。
【0038】
また、試刷り処理の精度が向上することに伴い、同一の試刷り基板における同一の領域に、半田を複数回印刷することが可能になる。つまり、重ね印刷を行うことが可能になる。この構成によれば、試刷り処理を複数回行う必要がある場合などに、重ね印刷によって当該要求に応えることができる。したがって、試刷り処理を複数回行う必要がある場合に、その都度新しい試刷り基板を用意する場合と比較して、ストレージに収納する試刷り基板の枚数を削減することができる。
【0039】
上記の自動試刷りシステムにおいて、前記生産ラインにおいて前記基板を前記基板搬送方向に沿って搬送する2以上のレーンをさらに備えており、前記スクリーン印刷装置及び前記バッファ装置は、前記各レーンのそれぞれに対応して配置されていることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、いわゆるデュアルレーン方式が採用されている生産ラインにおいて、試刷り工程を自動化しつつ、スクリーン印刷装置が大型化することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、オペレータの作業効率が低下することを抑制しつつ、スクリーン印刷装置が大型化することを抑制可能な自動試刷りシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】自動試刷りシステムの構成を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図3のスクリーン印刷機のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】配置調整ユニットの概略的な構成を示す斜視図である。
【
図6】バッファ装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図7】バッファ装置の上流側押し出し機構が試刷り基板を押し出す様子を模式的に示す正面図である。
【
図8】バッファ装置の下流側押し出し機構が試刷り基板を押し出す様子を模式的に示す正面図である。
【
図9】印刷制御装置、バッファ制御装置、及び管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】自動試刷りシステムの処理の全体像の一例を示すフロー図である。
【
図11】
図10のステップS7における処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】
図10のステップS10における処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】(a)は、印刷処理によって半田の掻き残しが形成される様子を模式的に示す図であり、(b)は、掻き取り試刷り動作によって掻き残しが掻き取られている様子を模式的に示す図である。
【
図14】第1実施形態に係る自動試刷りシステムの概略的な構成を示す平面図である。
【
図16】第2実施形態に係る自動試刷りシステムの概略的な構成を示す平面図である。
【
図17】第2実施形態の変形例に係る自動試刷りシステムの概略的な構成を示す平面図である。
【
図18】第3実施形態に係る試刷り基板のサイズと、各種の基板のサイズとを示す図である。
【
図19】(a)は、印刷処理によって半田の掻き残しが形成される様子を模式的に示す図であり、(b)は、掻き取り試刷り動作によって掻き残しが掻き取られている様子を模式的に示す図である。
【
図20】第4実施形態に係る試刷り基板を模式的に示す図である。
【
図21】第5実施形態に係る自動試刷りシステムの構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[自動試刷りシステムの全体構成]
以下、図面を参照して、本発明に係る自動試刷りシステムについて詳細に説明する。
図1は、自動試刷りシステム1000の構成を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1に係る自動試刷りシステム1000の正面図である。自動試刷りシステム1000は、基板5に処理を施す複数の処理機が配列されている生産ライン500と、当該複数の処理機のそれぞれと通信可能に構成されている管理装置400とを備える。
【0044】
生産ライン500は、各種のコンベアによってプリント基板(以下、基板5)を基板搬送方向に沿って搬送しつつ、前記複数の処理機により基板5に各種の処理を施して、電子部品が実装されている実装基板を生産する。以下では、生産ライン500における基板5が搬送される方向(水平方向)のことを基板搬送方向と呼ぶ。具体的に、基板搬送方向は、図面に示すX方向に沿う方向である。また、以下では、X方向に水平面内で直交する方向をY方向と呼び、X方向及びY方向に直交する上下方向をZ方向と呼ぶ。これらの方向は本発明に係る自動試刷りシステムの構成を説明するために便宜上示すものであり、自動試刷りシステム1000の使用態様などを限定するものではない。
【0045】
図1及び
図2に示すように、生産ライン500は、主に、スクリーン印刷装置100と、バッファ装置200と、下流機300とを備える。下流機300の例としては、基板5に電子部品を搭載する部品実装装置などが挙げられる。
【0046】
スクリーン印刷装置100は、
図1に示すように、スクリーン印刷機101と、上流側印刷コンベア102と、下流側印刷コンベア103と、印刷制御装置104(
図9参照)とを有している。
【0047】
以下、
図3~
図5を参照して、スクリーン印刷機101について説明する。
図3は、スクリーン印刷機101の平面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿ったスクリーン印刷機101の断面図である。
図5は、配置調整ユニット55の概略的な構成を示す斜視図である。
【0048】
スクリーン印刷機101は、基板5の上面に半田ペーストをマスク印刷する印刷処理、及び、試験的な印刷処理である試刷り処理を実行する。試刷り処理を実行する場合、スクリーン印刷機101は、後述するストレージ201から送り込まれる試刷り基板6の上面に半田ペーストをマスク印刷する。具体的に、スクリーン印刷機101は、基台1と、基板作業テーブル2と、配置調整ユニット55(配置調整部の一例)と、カメラユニット8と、マスククランプユニット3と、スキージユニット4と、マスク交換機構9とを有している。
【0049】
基台1は、スクリーン印刷機101の下部に配置され、スクリーン印刷機101が備える各装置を支持する平面視矩形状の構造体である。
【0050】
基板作業テーブル2は、基台1上に配置されており、印刷処理が行われる際には所定の搬入位置で基板5を受け取り、基板5を支持して固定し、印刷済みの基板5を所定の搬出位置から搬出する機能を有する。また、基板作業テーブル2は、試刷り処理が行われる際には所定の搬入位置で試刷り基板6を受け取り、試刷り基板6を支持して固定し、印刷済みの試刷り基板6を所定の搬出位置から搬出する機能を有する。具体的に、基板作業テーブル2は、可動台21と、一対のブラケット23と、機内コンベア22と、支持機構53と、バックアップピンステーション54とを含んでいる。
【0051】
可動台21は、図略の可動台移動機構により、X方向、Y方向、Z方向に移動可能とされている。また、可動台21は、可動台移動機構により、Z方向に沿って延びる中心軸回りのR方向に回転可能とされている。この可動台21上に一対のブラケット23が配置されており、各ブラケット23上に機内コンベア22が配置されている。
【0052】
機内コンベア22は、基板5又は試刷り基板6をスクリーン印刷機101に搬入する。また、機内コンベア22は、後述する印刷処理又は試刷り処理の完了後に、基板5又は試刷り基板6をスクリーン印刷機101から搬出する。機内コンベア22は、スクリーン印刷機101のX方向の略全長にわたって延びる一対の機内コンベアレール22aを含んでいる。機内コンベア22は、一対の機内コンベアレール22aのコンベア幅(一対の機内コンベアレール22a間の間隔)を、搬送する基板5又は試刷り基板6のサイズに応じて調整可能に構成されている。
【0053】
支持機構53は、複数のバックアップピン53a(複数の下支え部の一例)が配置される支持板53bと、この支持板53bを昇降させることによりバックアップピン53aを上下に移動させる昇降機構53cとを含む。バックアップピン53aは、基板5の下側に立設され、基板5の下面に当接して基板5を下支えするピン先端部を有する。昇降機構53cは、バックアップピン53aが配置されている支持板53bを上昇させて前記ピン先端部を基板5の下面に接触させ、さらに機内コンベア22上の基板5を持ち上げて支持させる。これにより、基板作業テーブル2上で基板5にスクリーン印刷作業を行うことが可能となる。試刷り処理が行われる場合、支持機構53は同様の手法で試刷り基板6を支持する。これにより、基板作業テーブル2上で試刷り基板6にスクリーン印刷作業を行うことが可能となる。
【0054】
バックアップピンステーション54は、
図3に示すように、可動台21上に設けられており、複数のバックアップピン53aを保持している。バックアップピンステーション54に保持されているバックアップピン53aは、必要に応じて配置調整ユニット55によって取り出され、支持板53bに配置される。
【0055】
配置調整ユニット55は、基板5又は試刷り基板6のサイズに応じてバックアップピン53aの配置を調整する。配置調整ユニット55は、基台1に取り付けられているY軸移動機構56と、Y軸移動機構56に取り付けられているX軸移動機構57と、X軸移動機構57に保持されているヘッドユニット55aとを有している。
【0056】
Y軸移動機構56及びX軸移動機構57は、ヘッドユニット55aをX方向及びY方向に沿って水平に移動させる。Y軸移動機構56及びX軸移動機構57は、例えばボールねじとモータとから構成される。
【0057】
ヘッドユニット55aは、図略のコントローラと、ヘッド本体551aと、ヘッド本体551aから下方に突出する吸着ノズル551bとを有している。吸着ノズル551bは、図示しない負圧発生装置と接続されており、バックアップピン53aを吸着し、かつ、脱着することができる。前記コントローラは、後述する記憶部400bの生産管理データベースDBと通信を行い、基板5又は試刷り基板6を下支えするためのバックアップピン53aの配置に関する情報を取得する。ヘッドユニット55aは、当該情報に基づいてバックアップピン53aの配置を調整する。この構成によれば、基板5のサイズと試刷り基板6のサイズとが異なる場合であっても、配置調整ユニット55が複数のバックアップピン53aの配置を都度調整するため、印刷処理及び試刷り処理を適切に行うことができる。
【0058】
図4に示すように、カメラユニット8は、基板認識カメラ8aおよびマスク認識カメラ8bを有している。カメラユニット8は、配置調整ユニット55と共通のY軸移動機構56及びX軸移動機構57によって移動される。基板認識カメラ8aについては第4実施形態で詳細に説明する。マスク認識カメラ8bは、スクリーンマスク7の下面側に付されているマスク認識マークを下方から撮像する。この撮像により得られた画像データから、スクリーンマスク7の位置及び姿勢が認識される。
【0059】
マスククランプユニット3は、印刷処理又は試刷り処理を実行する際に、スクリーンマスク7が装着されているマスク固定部材31を所定の作業位置に保持するように構成されている。具体的には、マスククランプユニット3は、それぞれがスクリーンマスク7のX方向における端部を保持する一対のクランプ部3aを有している。所定の作業位置において、一対のクランプ部3aのうちの一方側のクランプ部3aは他方側のクランプ部3aに向けてスクリーンマスク7を押圧する。これにより、スクリーンマスク7が前記作業位置に固定される。
【0060】
スクリーンマスク7は、平面視において矩形状を呈する板状のマスクであり、パターン開口を有している。パターン開口は、基板5における電子部品の配置パターンに対応するパターンで穿孔された微小な開口である。半田ペーストがスクリーンマスク7の上面に供給されて、後述するスキージ41(
図13参照)がスクリーンマスク7の上面に対して摺動すると、半田ペーストは、パターンを透過して基板5又は試刷り基板6に転写される。本実施形態に係るスクリーンマスク7は、マスク固定部材31(
図13参照)に固定されている。
【0061】
スキージユニット40は、スキージY軸駆動部46に沿ってY方向に移動可能に構成されている。スキージY軸駆動部46は、Y軸モータ46aと、Y方向に延びるボールねじ46bとを有している。スキージユニット40は、マスククランプユニット3の上方に配置されている。スキージユニット40は、スキージ41と、図略のスキージ昇降機構と、図略のスキージ角度可変機構とを含む。スキージ41は、スクリーンマスク7に対してY方向に相対的に往復移動する。具体的に、スキージ41は、スクリーンマスク7の上面に対して半田ペーストを押圧しながらY方向に往復して摺動する。なお、印刷処理に用いられるスキージ41と、試刷り処理に用いられるスキージ41とは共通している。スキージ昇降機構は、スクリーン印刷時にスキージ41を昇降させる。スキージ角度可変機構は、スクリーンマスク7に対するスキージ41の傾き方向および傾き角度を変更する。
【0062】
マスク交換機構9は、使用済みのスクリーンマスク7(以下、使用済みマスク7aと呼ぶ)と、未使用のスクリーンマスク7(以下、未使用マスク7bと呼ぶ)とを交換する。マスク交換機構9は、図略の掬い上げユニットと、マスク移動ユニット59と、マスク収容ユニット60と、を有している。
【0063】
掬い上げユニットは、スクリーンマスク7から半田を掬い上げる掬い上げ動作、及び、スクリーンマスク7に半田を供給する供給動作を行う。掬い上げ動作及び供給動作は、生産ライン500において生産される基板5の種類が切り替えられることに伴い、スクリーンマスク7の種類を変更する必要が生じた際などに行われる。掬い上げ動作は、使用済みマスク7aの上面に残存している半田溜まりSd(
図13参照)を掬い上げユニットが掬い上げて保持する動作である。供給動作は、保持している半田溜まりSdを掬い上げユニットが未使用マスク7bの上面に供給する動作である。掬い上げユニットは、例えばスキージユニット40に付設されている。
【0064】
マスク移動ユニット59は、使用済みマスク7aが装着されているマスク固定部材31をマスク収容ユニット60に収納するとともに、未使用マスク7bが装着されているマスク固定部材31をマスク収容ユニット60から取り出す。具体的に、マスク移動ユニット59は、スキージユニット40に付設されている本体部59aと、本体部59aに付設されており、Z方向に伸縮可能に構成されているシリンダロッド59bとを有している。ここで、スキージユニット40がY方向に移動することにより、マスク移動ユニット59は、シリンダロッド59bをマスク固定部材31に係止させた状態で水平方向に移動する。これにより、マスク移動ユニット59は、使用済みマスク7aが装着されているマスク固定部材31をマスク収容ユニット60に収容し、又は、未使用マスク7bが装着されているマスク固定部材31をマスク収容ユニット60から取り出すことができる。
【0065】
マスク収容ユニット60は、上側収容部60aと、下側収容部60bと、図略の昇降機構とを有している。上側収容部60aには、未使用マスク7bが装着されているマスク固定部材31が収容されている。下側収容部60bは、使用済みマスク7aが装着されているマスク固定部材31を収容するためのチャンバーである。昇降機構は、下側収容部60bにマスク固定部材31を収容するための上昇位置と、上側収容部60aからマスク固定部材31を取り出すための下降位置との間で上側収容部60a及び下側収容部60bを一体的に昇降させる。
【0066】
上流側印刷コンベア102は、
図1に示すように、基板搬送方向においてスクリーン印刷機101に対して上流側に配置されているコンベアである。上流側印刷コンベア102は、Y方向に互いに離間している一対の上流側印刷コンベアレール102aを含んでいる。
【0067】
下流側印刷コンベア103は、基板搬送方向においてスクリーン印刷機101に対して下流側、すなわち-X方向側に配置されているコンベアである。下流側印刷コンベア103は、Y方向に互いに離間している一対の下流側印刷コンベアレール103aを含んでいる。
【0068】
図9を参照して、印刷制御装置104は、マイクロコンピュータ等からなり、スクリーン印刷装置100が有する各部を統括的に制御する。印刷制御装置104は、予め記憶されているプログラムに基づいてスクリーン印刷装置100の各部を制御することにより、印刷処理又は試刷り処理を実行する。また、印刷制御装置104は、スクリーン印刷装置100の各部に配設されている種々のセンサ類と接続されている。
【0069】
印刷制御装置104は、表示/操作ユニットを備えている。表示/操作ユニットは、印刷処理の進行状況やエラーメッセージなどを表示する表示装置としての機能を果たす。表示/操作ユニットは、オペレータからの各種データの入力や指令などの情報を受け付けるインターフェースとしての機能も果たす。また、印刷制御装置104は、時間を計測するタイマーを有している。
【0070】
さらに、印刷制御装置104は、予め記憶されているプログラムを実行することにより、印刷側コンベア幅調整部109a(コンベア幅調整部の一例)及び印刷装置側切り替え部109bを有するように動作する。
【0071】
印刷側コンベア幅調整部109aは、スクリーン印刷機101内に搬入される基板5又は試刷り基板6のY方向におけるサイズに応じて、上流側印刷コンベア102、機内コンベア22、下流側印刷コンベア103のコンベア幅を調整する。具体的に、印刷側コンベア幅調整部109aは、各コンベア部を構成する一対の各コンベアレール同士のY方向における間隔を拡大又は縮小することにより、コンベア幅を調整する。この構成によれば、基板5と試刷り基板6とのサイズが異なる場合であっても、印刷側コンベア幅調整部109aが各コンベアのコンベア幅を適切に調整するため、印刷処理及び試刷り処理を適切に行うことができる。
【0072】
印刷装置側切り替え部109bは、各コンベアにおける基板5の搬送状態を第1搬送状態と第2搬送状態との間で切り替える。第1搬送状態は、基板5又は試刷り基板6を基板搬送方向に搬送する状態である。第2搬送状態は、基板5及び試刷り基板6を基板搬送方向とは反対方向に搬送する状態である。
【0073】
次に、
図6~
図8を参照して、バッファ装置200について説明する。バッファ装置200は、試刷り基板6をスクリーン印刷装置100に送り出すとともに、試刷り基板6をスクリーン印刷装置100から回収する。
図6は、バッファ装置200の構成を模式的に示す正面図である。
図7は、バッファ装置200の上流側押し出し機構202が試刷り基板6を押し出す様子を模式的に示す正面図である。
図8は、バッファ装置200の下流側押し出し機構203が試刷り基板6を押し出す様子を模式的に示す正面図である。バッファ装置200は、
図6に示すように、ストレージ201と、上流側押し出し機構202と、下流側押し出し機構203と、パススルーコンベア204と、移動機構205と、上流側バッファコンベア206と、下流側バッファコンベア207と、バッファ制御装置209(
図9参照)と、を有している。
【0074】
ストレージ201は、複数の試刷り基板6をZ方向に多段で収容する。具体的に、ストレージ201は、Z方向に並設されている複数のラック201aと、各ラック201aの角部を各々Z方向に接続するように延びる複数のフレーム201bと、を有している。試刷り基板6は、複数のラック201aのそれぞれの上面に載置されている。複数のフレーム201bは、X方向及びY方向に互いに間隔を空けた状態で上下方向に延在しており、各フレーム201b同士の間は開放されている。
【0075】
試刷り基板6は、試刷り処理に用いられる基板である。試刷り基板6は、試刷り処理が行われる際に後述する送り出し機構によってストレージ201からスクリーン印刷機101に向けて送り出される。そして、試刷り基板6は、試刷り処理が施された後は、後述する回収機構によってストレージ201に回収される。
【0076】
上流側押し出し機構202は、
図7に示すように、試刷り基板6を+X方向から-X方向に押し出すことにより、送り出し機構として、又は、回収機構として機能する。具体的に、上流側押し出し機構202は、バッファ装置200がスクリーン印刷装置100に対して上流側に配置される場合は、送り出し機構として機能する。送り出し機構として機能する場合、上流側押し出し機構202は、ストレージ201に収容されている試刷り基板6をスクリーン印刷装置100に送り出す。一方で、上流側押し出し機構202は、バッファ装置200がスクリーン印刷装置100に対して下流側に配置される場合は、回収機構として機能する。回収機構として機能する場合、上流側押し出し機構202は、試刷り処理が施された試刷り基板6をストレージ201に回収する。上流側押し出し機構202は、上流側押し出しユニット220と、上流側エレベータ機構230と、を有している。
【0077】
上流側押し出しユニット220は、上流側押し出し機構202が送り出し機構として機能する場合は、送り出し側押し出しユニットとして機能する。この場合、上流側押し出しユニット220は、ストレージ201に収納されている試刷り基板6を-X方向に押し出して、試刷り基板6を下流側バッファコンベア207に載せる。一方で、上流側押し出し機構202が回収機構として機能する場合、上流側押し出しユニット220は、回収側押し出しユニットとして機能する。この場合、上流側押し出しユニット220は、上流側バッファコンベア206に載置されている試刷り基板6を-X方向に押し出して、試刷り基板6をストレージ201に収納する。上流側押し出しユニット220は、上流側エレベータ機構230に固定される台部223と、試刷り基板6を-X方向に押し出すプッシャー221と、台部223とプッシャー221とを接続する接続部222とを含んでいる。プッシャー221は、例えばX方向に伸縮可能なエアシリンダ又は油圧シリンダなどによって構成される。
【0078】
上流側押し出しユニット220のY方向における最大寸法は、後述する一対の上流側バッファコンベアレール206a同士の間の最小の間隔寸法よりも小さくなるように設定されている。これにより、
図1に示すように、上面視において、一対の上流側バッファコンベアレール206aにY方向に挟まれる位置に上流側押し出しユニット220を配置することができる。この配置によれば、上流側押し出しユニット220が昇降する過程において、上流側押し出しユニット220と上流側バッファコンベア206とが干渉することを抑制できる。さらに、上流側押し出しユニット220を上流側バッファコンベア206に対してY方向にずらした位置に配置して両者の干渉を避ける場合と比較して、バッファ装置200のY方向における寸法が大型化することを抑制できる。
【0079】
上流側エレベータ機構230は、ストレージ201に収納されている任意の試刷り基板6をプッシャー221が押し出し可能な高さ位置にまで、上流側押し出しユニット220を昇降させる。なお、上流側押し出し機構202が回収機構として機能する場合、上流側エレベータ機構230は、試刷り基板6が上流側押し出しユニット220の上方を通過してから、上流側押し出しユニット220を上昇させる。具体的に、上流側エレベータ機構230は、上流側押し出し機構202が回収機構として機能する場合、試刷り基板6が上流側バッファコンベア206における回収位置に到達した時点で、上流側押し出しユニット220を上昇させる。回収位置とは、上面視において上流側押し出しユニット220に対して-X方向側にオフセットされた位置である。これにより、試刷り基板6が上流側押し出しユニット220によって下方から突き上げられることを防止できる。
【0080】
下流側押し出し機構203は、
図8に示すように、試刷り基板6を-X方向から+X方向に押し出すことにより、送り出し機構として、又は、回収機構として機能する。具体的に、下流側押し出し機構203は、バッファ装置200がスクリーン印刷装置100に対して上流側に配置される場合は、回収機構として機能する。一方で、下流側押し出し機構203は、バッファ装置200がスクリーン印刷装置100に対して下流側に配置されている場合は、送り出し機構として機能する。回収機構として機能する場合、下流側押し出し機構203は、下流側バッファコンベア207に載置されている試刷り基板6を+X方向に押し出して、試刷り基板6をストレージ201に収納する。送り出し機構として機能する場合、下流側押し出し機構203は、ストレージ201に収納されている試刷り基板6を+X方向に押し出して、試刷り基板6を上流側バッファコンベア206に載せる。下流側押し出し機構203は、下流側押し出しユニット240と、下流側エレベータ機構250と、を有している。下流側押し出しユニット240の構成は上流側押し出しユニット220の構成と同様であり、下流側エレベータ機構250の構成は上流側エレベータ機構230の構成と同様であるため、説明は省略する。
【0081】
パススルーコンベア204は、後述する基板生産期間に基板5にバッファ装置200を素通りさせるためのコンベアである。パススルーコンベア204は、Y方向に離間している一対のパススルーコンベアレール204aを含んでいる。
【0082】
移動機構205は、パススルーコンベア204を搬送位置P1とコンベア待機位置P2との間で移動させるとともに、ストレージ201を試刷り位置P3とストレージ待機位置P4との間で移動させる。
【0083】
搬送位置P1は、パススルーコンベア204が、上流側バッファコンベア206から搬送される基板5を受け取りつつ、基板5を下流側バッファコンベア207に受け渡すことが可能になる位置である。具体的に、搬送位置P1は、パススルーコンベア204の上面のZ軸座標が、上流側バッファコンベア206及び下流側バッファコンベア207の上面のZ軸座標と略一致する位置である。
【0084】
コンベア待機位置P2は、後述する試刷り工程をパススルーコンベア204が妨げることが防止される位置である。コンベア待機位置P2は、例えば搬送位置P1の下方の位置である。
【0085】
試刷り位置P3は、試刷り基板6の送り出し及び回収を実現するための位置である。具体的に、試刷り位置P3は、ストレージ201の任意のラック201aの上面のZ軸座標が、上流側バッファコンベア206及び下流側バッファコンベア207の上面のZ軸座標と略一致する位置である。
【0086】
ストレージ待機位置P4は、パススルーコンベア204による基板5の搬送をストレージ201が妨げることが防止される位置である。ストレージ待機位置P4は、例えば試刷り位置P3の上方の位置である。
【0087】
移動機構205は、後述する基板生産期間には、パススルーコンベア204をコンベア待機位置P2から搬送位置P1に移動させるとともに、ストレージ201を試刷り位置P3からストレージ待機位置P4に移動させる。また、移動機構205は、後述する試刷り期間には、パススルーコンベア204を搬送位置P1からコンベア待機位置P2に移動させるとともに、ストレージ201をストレージ待機位置P4から試刷り位置P3に移動させる。
【0088】
移動機構205は、例えば、パススルーコンベア204及びストレージ201を一体的に昇降させるエレベータ機構によって構成されている。なお、移動機構205は、例えばインデックステーブルによって構成することも可能である。前記インデックステーブルは、X方向又はZ方向に沿って延びる回転軸を中心に回転することにより、パススルーコンベア204及びストレージ201の位置を入れ替える。
【0089】
以上説明した構成によれば、試刷り期間には試刷り工程を実行させつつ、基板搬送期間には基板5にバッファ装置200を素通りさせることが可能になる。これにより、バッファ装置200を、スクリーン印刷装置100に対して直列的に配置することが可能になる。そのため、生産ライン500の構成が複雑化することを抑制できる。
【0090】
上流側バッファコンベア206は、
図1に示すように、基板搬送方向においてパススルーコンベア204に対して上流側に配置されている。上流側バッファコンベア206は、Y方向に互いに離間している一対の上流側バッファコンベアレール206aを含んでいる。
【0091】
バッファ装置200が基板搬送方向においてスクリーン印刷装置100の上流側に配置される場合、上流側バッファコンベア206は、中間コンベアとして機能する。
【0092】
前記中間コンベアは、スクリーン印刷装置100とパススルーコンベア204との間に位置するコンベアである。前記中間コンベアは、試刷り基板6をストレージ201からスクリーン印刷装置100に搬送する機能と、試刷り基板6をスクリーン印刷装置100からストレージ201に搬送する機能とを果たす。
【0093】
下流側バッファコンベア207は、
図1に示すように、基板搬送方向においてパススルーコンベア204に対して下流側に配置されている。下流側バッファコンベア207は、Y方向に互いに離間している一対の下流側バッファコンベアレール207aを含んでいる。バッファ装置200が基板搬送方向においてスクリーン印刷装置100の下流側に配置される場合、下流側バッファコンベア207が中間コンベアとして機能する。
【0094】
バッファ制御装置209(
図9)は、マイクロコンピュータ等からなり、バッファ装置200が有する各部を統括的に制御する。また、バッファ制御装置209は、バッファ装置200の各部に配設されている種々のセンサ類と接続されている。
【0095】
さらに、バッファ制御装置209は、予め記憶されているプログラムを実行することにより、バッファ側コンベア幅調整部209a、中間コンベア切り替え部209b、及び押し出し位置調整部209cを有するように動作する。
【0096】
バッファ側コンベア幅調整部209aは、基板5のY方向におけるサイズに応じて、上流側バッファコンベア206、パススルーコンベア204、下流側バッファコンベア207のコンベア幅を調整する。また、バッファ側コンベア幅調整部209aは、試刷り基板6のY方向におけるサイズに応じて、中間コンベアとして機能する上流側バッファコンベア206又は下流側バッファコンベア207のコンベア幅を調整する。具体的に、バッファ側コンベア幅調整部209aは、各コンベアを構成する一対の各コンベアレール同士のY方向における間隔を拡大又は縮小することにより、コンベア幅を調整する。
【0097】
中間コンベア切り替え部209bは、試刷り前搬送状態と、試刷り後搬送状態と、の間で中間コンベアの搬送状態を切り替える。試刷り前搬送状態の中間コンベアは、試刷り基板6をスクリーン印刷装置100に向けて搬送する。試刷り後搬送状態の中間コンベアは、試刷り基板6をストレージ201に向けて搬送する。
【0098】
押し出し位置調整部209cは、試刷り基板6のストレージ201からの送り出し、及び、ストレージ201への回収が実現されるように、ストレージ201及び各押し出しユニット220、240のZ軸における位置を調整する。具体的に、押し出し位置調整部209cは、ストレージ201の任意の試刷り基板6を各押し出しユニット220、240が好適に押し出すことができるように、移動機構205、上流側エレベータ機構230、及び下流側エレベータ機構250を制御する。
【0099】
図9を参照して、管理装置400について説明する。
図9は、印刷制御装置104、バッファ制御装置209、及び管理装置400の構成を示すブロック図である。管理装置400は、印刷制御装置104及びバッファ制御装置209と情報通信可能に接続されており、生産ライン500の全体的な動作を統括的に制御する。管理装置400は、各種の演算処理や制御処理を行うCPU、所定の制御プログラムが記憶されているROM等の図示しない不揮発性メモリー、データを一時的に記憶するための図示しないRAM、及びこれらの周辺回路等を備えた情報処理装置である。具体的に、管理装置400は、1以上のコンピュータからなるクラウドサーバである。
【0100】
さらに、管理装置400は、HDDやSSD等の記憶装置によって構成されている記憶部400bを有している。記憶部400bによって、生産管理データベースDBが実現されている。生産管理データベースDBには、生産ライン500によって生産される基板5の種類、基板5のサイズ、基板5の生産予定台数、基板5に用いられる半田の種類、基板5の生産スケジュール、基板5を下支えするためのバックアップピン53aの配置、ストレージ201に収納されている試刷り基板6の種類、試刷り基板6のサイズ、試刷り基板6の枚数、試刷り基板6を下支えするためのバックアップピン53aの配置、等に関する情報が記憶されている。
【0101】
管理装置400は、前記ROM等に記憶されているプログラムを前記CPUに実行させることにより、運転モード切替部400aを有するように動作する。
【0102】
運転モード切替部400aは、基板生産モードと、試刷り処理モードと、の間で生産ライン500の運転モードを切り替える。基板生産モードでは、前記実装基板が生産されるように生産ライン500が稼働する。試刷り処理モードでは、試刷り基板6のスクリーン印刷機101への送り出し、スクリーン印刷機101における試刷り処理、及びスクリーン印刷機101からの試刷り基板6の回収、といった一連の試刷り工程が行われる。本明細書では、生産ライン500が基板生産モードで稼働する期間のことを基板生産期間と呼び、生産ライン500が試刷り処理モードで稼働する期間のことを試刷り期間と呼ぶ。
【0103】
具体的に、運転モード切替部400aは、
図10に示すフローに従って運転モードを切り替える。
図10は、自動試刷りシステム1000の処理の全体像の一例を示すフロー図である。
【0104】
ステップS1において、運転モード切替部400aは、生産ライン500を基板生産モードで稼働させる。基板生産モードでは、パススルーコンベア204は搬送位置P1に配置される。このため、基板5はバッファ装置200を素通りし、スクリーン印刷機101に搬入されて印刷処理を施され、下流機300に向けて搬出される。
【0105】
ステップS2において、運転モード切替部400aは、スクリーン印刷機101が有する種々のセンサ類と通信を行い、スクリーン印刷機101への基板5の搬入が停止していることを検知する。すなわち、基板5の生産が停止していることを検知する。
【0106】
ステップS3において、運転モード切替部400aは、基板5の生産が完了しているか否かを判定する。基板5の生産が完了しているか否かは、例えば生産管理データベースDBに記憶されている予定生産台数分の基板5が生産されているか否かに基づいて判定される。基板5の生産が完了している場合(ステップS3でYesの場合)、処理はステップS9に移行する。基板5の生産が完了していない場合(ステップS3でNoの場合)、処理はステップS4に移行する。
【0107】
ステップS4において、運転モード切替部400aは、印刷制御装置104のタイマーに時間の計測を開始させる。
【0108】
ステップS5において、運転モード切替部400aは、スクリーン印刷機101が有する種々のセンサ類と通信を行うことにより、基板5の生産が再開する予定であることを示す信号を受信する。運転モード切替部400aは、前記信号を受信したタイミングで、タイマーによる時間の計測を終了させる。
【0109】
ステップS6において、運転モード切替部400aは、基板5の生産が停止してから再開するまでの時間(以下、生産停止時間と呼ぶ)が、設定時間を超過しているか否かを判定する。生産停止時間は、タイマーによって計測されている時間である。設定時間は、生産管理データベースDB等に予め記憶されている時間であり、例えば1時間である。生産停止時間が設定時間を超過している場合(ステップS6でYesの場合)、処理はステップS7に移行する。生産停止時間が設定時間を超過していない場合(ステップS6でNoの場合)、処理はステップS8に移行する。
【0110】
ステップS7において、運転モード切替部400aは生産ライン500の運転モードを試刷りモードに切り替える。ステップS7における処理の詳細は、
図11を用いて後述する。
【0111】
ステップS8において、基板5はスクリーン印刷機101内に搬入され、固定される。そして、処理はステップS1に戻る。
【0112】
ステップS9において、運転モード切替部400aは、生産する基板5の種類を切り替えるか否かを判定する。生産する基板5の種類を切り替えるか否かは、例えば生産管理データベースDBに記憶されている基板5の生産スケジュールを参照することにより判定できる。基板5の生産種を切り替える場合(ステップS9でYesの場合)、処理はステップS10に移行する。基板5の生産種を切り替えない場合(ステップS9でNoの場合)、運転モード切替部400aは生産ライン500の稼働を停止させる。
【0113】
ステップS10において、運転モード切替部400aは生産ライン500の運転モードを試刷りモードに切り替える。ステップS10における処理の詳細は、
図12を用いて後述する。
【0114】
続いて、
図11を参照して、設定時間が経過した場合の試刷りモードにおいて行われる処理の流れについて説明する。
図11は、
図10のステップS7における処理の詳細を示すフローチャートである。
【0115】
ステップS101において、バッファ装置200は、試刷り基板6をスクリーン印刷装置100に向けて送り出す。具体的に、ステップS101では、バッファ側コンベア幅調整部209aが、試刷り基板6のY方向におけるサイズに応じて、中間コンベアのコンベア幅を調整する。次いで、移動機構205が、ストレージ201をストレージ待機位置P4から試刷り位置P3に移動させる。そして、送り出し機構が、ストレージ201に収納されている試刷り基板6を押し出して、試刷り基板6を中間コンベアに載せる。しかる後、中間コンベア切り替え部209bによって試刷り前搬送状態に設定されている中間コンベアが、試刷り基板6をスクリーン印刷機101に向けて搬送する。
【0116】
ステップS111において、印刷側コンベア幅調整部109aは、バッファ装置200から送られてくる試刷り基板6のY方向におけるサイズに応じて、上流側印刷コンベア102又は下流側印刷コンベア103、及び機内コンベア22のコンベア幅を調整する。
【0117】
ステップS121において、配置調整ユニット55は、試刷り基板6のX方向及びY方向におけるサイズに応じて、バックアップピン53aの支持板53bにおける配置を調整する。
【0118】
ステップS122では、各コンベアが稼働し、試刷り基板6がスクリーン印刷機101内に搬入される。
【0119】
ステップS131において、試刷り処理が行われる。具体的に、印刷テーブル30のマスク固定部材31が保持するスクリーンマスク7の直下に試刷り基板6が位置するように、基板作業テーブル2が試刷り基板6を保持した状態で移動する。そして、スクリーンマスク7の上面に、半田ペーストの塊である半田溜まりSdを抱え込んだスキージ41が当接する。そして、スキージ41が、基板5の上面に対して半田溜まりSdを押圧しながら、スクリーンマスク7上を所定の移動方向(Y方向)に摺動する。これにより、試刷り基板6の上面には、スクリーンマスク7のパターン開口に対応した半田が印刷される。この試刷り処理によって、半田溜まりSdにおける半田の粘度が適切な状態に回復する。また、スクリーンマスク7のパターン開口にフラックスを適切に馴染ませることができる。
【0120】
ステップS141において、試刷り処理が施された後の試刷り基板6がスクリーン印刷機101からバッファ装置200に向けて搬出される。
【0121】
ステップS142において、配置調整ユニット55は、試刷り処理後にスクリーン印刷機101内に搬入される予定の基板5のX方向及びY方向におけるサイズに応じて、バックアップピン53aの配置を再び調整する。
【0122】
ステップS151において、バッファ装置200は、スクリーン印刷装置100から送られてくる試刷り基板6をストレージ201に回収する。具体的に、ステップS151では、中間コンベア切り替え部209bにより試刷り後搬送状態に設定されている中間コンベアによって、試刷り基板6が前記回収位置に搬送される。試刷り基板6が前記回収位置に到達したタイミングで、回収機構が試刷り基板6をストレージ201に向けて押し出して、試刷り基板6をストレージ201に収納する。そして、移動機構205が、ストレージ201をストレージ待機位置P4に移動させるとともに、パススルーコンベア204をコンベア待機位置P2から搬送位置P1に移動させる。
【0123】
ステップS161において、印刷側コンベア幅調整部109aは、上流側印刷コンベア102又は下流側印刷コンベア103、及び機内コンベア22のコンベア幅を調整する。具体的に、印刷側コンベア幅調整部109aは、試刷り処理後にスクリーン印刷機101内に搬入される予定の基板5のY方向におけるサイズに応じて、各コンベアのコンベア幅を調整する。また、バッファ側コンベア幅調整部209aは、前記基板5のY方向におけるサイズに応じて、各コンベアのコンベア幅を調整する。
【0124】
続いて、
図12を参照して、生産する基板5の種類が切り替えられる場合の試刷りモードにおいて行われる処理の流れについて説明する。
図12は、
図10のステップS10における処理の詳細を示すフローチャートである。なお、以下では、基板5の生産種が切り替えられる前に生産されていた基板5のことを切り替え前基板と呼び、基板5の生産種が切り替えられた後に生産される基板5のことを切り替え後基板と呼ぶ。
【0125】
ステップS201では、図示しないマスク収容ユニット60に、切り替え後基板に対応した未使用マスク7bが装着されているマスク固定部材31がセットされる。
【0126】
ステップS202において、管理装置400は、生産管理データベースDBを参照して、半田の種類を切り替える必要があるか否かについて判定する。つまり、管理装置400は、生産する基板5の種類が切り替わることに伴い、半田の種類も切り替える必要があるか否かについて判定する。半田の種類を切り替える必要がない場合(ステップS202でYesの場合)、処理はステップS211に移行する。半田の種類を切り替える必要がある場合、処理はステップS203に移行する。
【0127】
ステップS203において、スクリーン印刷装置100はオペレータコールを行う。この場合、オペレータがスクリーンマスク7の清掃、スキージ41の交換、半田の交換、交換後の半田の照合、スクリーンマスク7の交換、交換後のスクリーンマスク7の照合などを行う。
【0128】
ステップS211において、バッファ装置200は試刷り基板6をスクリーン印刷装置100に向けて送り出す。ここで、バッファ装置200は、少なくとも切り替え前基板の幅方向における基板幅寸法W5(
図13(a)参照)よりも大きい試刷り幅寸法W6(
図13(b)参照)を有する試刷り基板6を、スクリーン印刷装置100に送り出す。なお、本明細書において、幅方向はX方向に沿う方向である。また、ステップS211において、印刷側コンベア幅調整部109a及びバッファ側コンベア幅調整部209aは、試刷り基板6のY方向におけるサイズに応じて、各コンベアのコンベア幅を調整する。
【0129】
ステップS221において、配置調整ユニット55は、ステップS211で送り出されている試刷り基板6のX方向及びY方向におけるサイズに応じて、バックアップピン53aの配置を調整する。
【0130】
ステップS222では、各コンベアが稼働し、試刷り基板6がスクリーン印刷機101内に搬入される。
【0131】
ステップS231では、スクリーンマスク7上に形成されている半田の掻き残し8を掻き取るための試刷り処理が行われる。以下では、半田の掻き残し8を掻き取るための試刷り処理のことを、掻き取り試刷り動作と呼ぶ。掻き取り試刷り動作では、
図10のステップS131で行われた試刷り処理と同様の処理が行われる。ただし、掻き取り試刷り動作に係る試刷り処理では、ステップS211で説明したように、少なくとも基板幅寸法W5よりも大きい試刷り幅寸法W6を有する試刷り基板6が用いられる。これにより、スクリーンマスク7上に形成されている半田の掻き残し8を掻き取ることができる。以下、
図13を参照して具体的に説明する。
図13の(a)は、印刷処理によって半田の掻き残し8が形成される様子を模式的に示す図であり、
図13の(b)は、掻き取り試刷り動作によって掻き残し8が掻き取られている様子を模式的に示す図である。
【0132】
図13の(a)に示すように、スクリーンマスク7のマスク幅寸法W7及びスキージ41のスキージ幅寸法W41が基板幅寸法W5よりも大きい場合、印刷処理が行われる際に、非支持領域Aがスクリーンマスク7に形成される。非支持領域Aは、基板幅寸法W5とスキージ幅寸法W41との差分に応じてスクリーンマスク7に形成される領域である。非支持領域Aは、スクリーンマスク7における、上方から摺接するスキージ41に対して切り替え前基板に下支えされない領域である。このスクリーンマスク7における非支持領域Aは、スキージ41がスクリーンマスク7の上面に対して上方から摺接することに伴い、撓むことがある。この撓みによって、スキージ41の下面とスクリーンマスク7の上面との間に隙間が発生する。そして、スキージ41が半田を印刷しながらスクリーンマスク7の上面を摺動する過程において、当該隙間に半田が溜まり込むことがある。この隙間に溜まり込んだ半田によって、半田の掻き残し8が形成される。
【0133】
これに対して、掻き取り試刷り動作では、基板幅寸法W5よりも大きい試刷り幅寸法W6を有する試刷り基板6が用いられる。この試刷り基板6は、切り替え前基板と比較して、幅方向における広範囲に亘ってスクリーンマスク7を下支えすることができる。言い換えると、掻き取り試刷り動作に用いられる試刷り基板6は、印刷処理時には非支持領域Aとされていた領域のうち少なくとも一部を下支えすることができる。そして、非支持領域Aのうちの少なくとも一部が下支えされた状態でスキージ41がマスク上面を摺動することにより、
図13の(b)に示すように、非支持領域Aに対応して発生していた半田の掻き残し8がスキージ41によって掻き取られる。このように、掻き取り試刷り動作では、半田の掻き残し8の少なくとも一部がスキージ41によって自動的に回収される。そのため、オペレータが手動で掻き残し8を掻き取る場合と比較して、オペレータの作業効率を向上させることができる。
【0134】
次に、ステップS241では、掻き取り試刷り動作によって掻き取られた半田を含む半田溜まりSd(
図13(b)の半田溜まりSd)が、掬い上げユニットによって掬い上げられる。
【0135】
また、ステップS241と平行して、ステップS242では、掻き取り試刷り動作で用いられた試刷り基板6がバッファ装置200に向けて搬出される。
【0136】
そして、ステップS243において、配置調整ユニット55は、新たにバッファ装置200から送られてくる試刷り基板6のX方向及びY方向におけるサイズに応じて、バックアップピン53aの配置を調整する。
【0137】
ステップS251において、掻き取り試刷り動作で使用された試刷り基板6を回収したバッファ装置200は、新たな試刷り基板6をスクリーン印刷装置100に向けて送り出す。
【0138】
ステップS261では、各コンベアが稼働し、新たな試刷り基板6がスクリーン印刷機101内に搬入される。
【0139】
ステップS271では、マスク移動ユニット59によって、使用済みマスク7aが装着されているマスク固定部材31がマスク収容ユニット60に収納され、未使用マスク7bが装着されているマスク固定部材31がマスク収容ユニット60から取り出される。未使用マスク7bが装着されているマスク固定部材31は、所定の作業位置にセットされる。
【0140】
ステップS281では、ステップS241で掬い上げユニットが掬い上げて保持していた半田が、未使用マスク7bの上面に供給される。
【0141】
ステップS291では、試刷り処理が行われる。ステップS291で行われる試刷り処理の内容は、ステップS131で行われる試刷り処理の内容と同様であるため、説明は省略する。この試刷り処理によって、未使用マスク7bに供給されている半田の粘度が適切な状態に回復する。また、未使用マスク7bのパターン開口にフラックスを適切に馴染ませることができる。
【0142】
ステップS301では、試刷り処理が施された後の試刷り基板6がスクリーン印刷機101からバッファ装置200に向けて搬出される。
【0143】
ステップS302において、配置調整ユニット55は、切り替え後基板のX方向及びY方向におけるサイズに応じて、バックアップピン53aの配置を再び調整する。
【0144】
ステップS311において、バッファ装置200は、スクリーン印刷装置100から送られてくる試刷り基板6をストレージ201に回収する。また、ステップS311において、印刷側コンベア幅調整部109a及びバッファ側コンベア幅調整部209aは、切り替え後基板のY方向におけるサイズに応じて、各コンベアのコンベア幅を調整する。
【0145】
以上説明したように、本発明に係る自動試刷りシステム1000では、試刷り基板6のスクリーン印刷装置100への送り出し、スクリーン印刷装置100における試刷り処理、及びスクリーン印刷装置100からの試刷り基板6の回収、といった一連の試刷り工程を自動化することができる。また、本発明では、試刷り基板6を貯留するストレージ201、試刷り基板6をスクリーン印刷装置100に送り出す送り出し機構、及び、試刷り基板6をスクリーン印刷装置100から回収する回収機構は、バッファ装置200が備えている。そのため、スクリーン印刷装置100が大型化することを抑制できる。
【0146】
したがって、本発明によれば、試刷り工程を自動化しつつ、スクリーン印刷装置100が大型化することを抑制できる。
【0147】
[自動試刷りシステムの具体例]
続いて、本発明に係る自動試刷りシステムを実現する構成について、いくつかの具体例を挙げながら説明する。
【0148】
<第1実施形態>
図14及び
図15を参照しながら、本発明に係る自動試刷りシステムを実現する構成の第1実施形態を説明する。
図14は、第1実施形態に係る自動試刷りシステム1000Aの概略的な構成を示す平面図である。
図15は、自動試刷りシステム1000Aの正面図である。なお、
図14及び
図15では、後述する中間位置に位置している印刷未完基板5aを破線で、後述する基板待機位置に搬送されている印刷未完基板5aを実線で、それぞれ図示している。
【0149】
第1実施形態に係る生産ライン500Aでは、バッファ装置200がスクリーン印刷装置100に対して上流側に配置されている。したがって、第1実施形態では、試刷り基板6はスクリーン印刷機101に対して上流側から搬入される。そのため、第1実施形態に係るバッファ装置200では、上流側押し出し機構202が送り出し機構として機能し、下流側押し出し機構203が回収機構として機能する。また、第1実施形態に係るバッファ装置200では、下流側バッファコンベア207が中間コンベアとして機能する。
【0150】
第1実施形態では、試刷り工程の開始前に、印刷未完基板5aを一時的に退避させる一時退避動作が行われる。具体的に、第1実施形態において、生産停止時間が所定時間以上継続した場合、
図11を用いて説明した手順で試刷り工程が行われる。ところで、第1実施形態に係るバッファ装置200とスクリーン印刷装置100との位置関係では、バッファ装置200とスクリーン印刷機101との間の中間位置に、印刷未完基板5aが存在することがある。なお、中間位置に印刷未完基板5aが存在するか否かは、投光部及び受光部を有する公知の光学センサ等を用いることにより判定することができる。例えば、
図14では、上流側印刷コンベア102上に印刷未完基板5aが存在している。この印刷未完基板5aが仮に中間位置に留まる場合、印刷未完基板5aが障害となって、試刷り工程において試刷り基板6をスクリーン印刷機101に送り込むこと、及び、試刷り基板6をスクリーン印刷機101から回収することが困難になる。すなわち、試刷り工程を正常に実行することが困難になる。そのため、試刷り工程が完了するまでの間、この印刷未完基板5aは、中間位置から一時的に退避させておくことが好ましい。そこで、第1実施形態に係る自動試刷りシステム1000Aでは、管理装置400が、以下のような手順により印刷未完基板5aを退避させる。
【0151】
まず、管理装置400は、印刷装置側切り替え部109bを制御して、上流側印刷コンベア102、機内コンベア22、及び下流側印刷コンベア103を前記第1搬送状態にする。これにより、印刷未完基板5aが基板待機位置に搬送される。基板待機位置は、印刷未完基板5aが試刷り工程の進行を妨げない位置である。具体的に、基板待機位置は、スクリーン印刷機101に対して下流側にオフセットしている位置である。例えば、第1実施形態では、下流側印刷コンベア103上に印刷未完基板5aが搬送される。これにより、試刷り工程を正常に実行することが可能になる。なお、印刷未完基板5aを基板待機位置に搬送する際は、新たな印刷未完基板5aが中間位置に搬送されないよう、バッファ装置200の上流側に配置されているローダなどの上流機の稼働を停止させる。このような印刷未完基板5aの一時退避動作が完了した後に、管理装置400は、バッファ装置200及びスクリーン印刷装置100を稼働させて、試刷り工程を実行させる。
【0152】
管理装置400は、試刷り工程が完了し次第、各コンベアを前記第2搬送状態にして、印刷未完基板5aを中間位置に復帰させる。これにより、試刷り工程の完了後に、スクリーン印刷機101が印刷未完基板5aに印刷処理を施すことが可能になる。すなわち、生産ライン500における基板5の生産を正常に再開することが可能になる。
【0153】
以上説明したように、第1実施形態では、印刷未完基板5aの一時退避動作及び復帰動作が自動化されている。そのため、印刷未完基板5aをオペレータが手動で退避させるとともに復帰させる場合と比較して、オペレータの作業効率が向上する。また、本実施形態では、各コンベアの搬送状態を第1搬送状態と第2搬送状態との間で切り替えることによって、印刷未完基板5aの一時退避動作及び復帰動作を実現している。そのため、例えばロボットアーム等を用いる場合と比較して、簡易な構成により印刷未完基板5aを一時的に退避、復帰させることができる。したがって、自動試刷りシステム1000Aの設計が複雑化することを抑制できる。
【0154】
<第2実施形態>
図16を参照しながら、本発明に係る自動試刷りシステムを実現する構成の第2実施形態を説明する。
図16は、第2実施形態に係る自動試刷りシステム1000Bの概略的な構成を示す平面図である。なお、
図16では、中間位置に位置している印刷済み基板5bを破線で、バッファ装置200の下流側にまで搬送されている印刷済み基板5bを実線で、それぞれ図示している。
【0155】
第2実施形態に係る生産ライン500Bでは、
図16に示すように、バッファ装置200がスクリーン印刷装置100に対して下流側に配置されている。したがって、第2実施形態では、試刷り基板6はスクリーン印刷機101に対して下流側から搬入される。そのため、第2実施形態に係るバッファ装置200では、上流側押し出し機構202が回収機構として機能し、下流側押し出し機構203が送り出し機構として機能する。また、第2実施形態に係るバッファ装置200では、上流側バッファコンベア206が中間コンベアとして機能する。
【0156】
第2実施形態では、第1実施形態と異なり、印刷未完基板5aの一時退避動作、及び、復帰動作を行う必要がない。具体的に、第2実施形態に係るバッファ装置200とスクリーン印刷装置100との位置関係において、中間位置に存在する基板5は、印刷済み基板5bである。したがって、このような印刷済み基板5bは、単純に、基板搬送方向に沿ってバッファ装置200の下流側にまで搬送してしまえばよい。なお、この際、新たな印刷済み基板5bが中間位置に搬送されないよう、上流側印刷コンベア102の稼働は停止させる。これにより、試刷り工程を正常に実行することが可能になる。そして、試刷り工程が完了し次第、速やかに上流側印刷コンベア102の稼働を再開させることにより、生産ライン500における基板5の生産を正常に再開することが可能になる。
【0157】
以上説明したように、第2実施形態では、中間位置に印刷済み基板5bが存在することはあっても、印刷未完基板5aが存在することはない。そのため、第1実施形態とは異なり、印刷未完基板5aを一時的に退避させる動作、及び、復帰させる動作を行う必要がない。その結果、第1実施形態に係る構成と比較して、生産ライン500における基板5の生産に関するサイクルタイムを短縮することができる。
【0158】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態に係るバッファ装置200は、基板搬送方向において必ずしもスクリーン印刷装置100の直下に配置されている必要はなく、スクリーン印刷装置100の下流側の任意の位置に配置されていればよい。例えば、
図17の自動試刷りシステム1000Cに係る生産ライン500Cに示すように、バッファ装置200とスクリーン印刷装置100との間に、検査装置260が配置されていてもよい。検査装置260は、印刷処理が施された後の基板5を撮像して半田パターンの印刷状態を検査する装置である。このほか、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、バッファ装置200とスクリーン印刷装置100との間には、各種の処理装置が配置されていてもよい。
【0159】
<第3実施形態>
図18及び
図19を参照しながら、本発明に係る自動試刷りシステムを実現する構成の第3実施形態を説明する。
図18は、第3実施形態に係る試刷り基板6のサイズと、各種の基板5のサイズとを模式的に示す図である。
図19の(a)は、印刷処理によって半田の掻き残し8が形成される様子を模式的に示す図であり、
図19の(b)は、掻き取り試刷り動作によって掻き残し8が掻き取られている様子を模式的に示す図である。
【0160】
第3実施形態では、スクリーン印刷機101が印刷処理を施すことができる全ての種類の基板5の中で、最大サイズの基板5以上のサイズの試刷り基板6を収納可能に、ストレージ201のサイズが設定されている。具体的に、第3実施形態に係るスクリーン印刷機101は、様々な種類の基板5に対応して印刷処理を施すことが可能に構成されている。そして、ストレージ201には、様々な種類の基板5の中で、最も大きい基板幅寸法を有する基板5以上の試刷り幅寸法を有しており、かつ、最も大きい基板長さ寸法を有する基板5以上の試刷り長さ寸法を有する試刷り基板6が収納されている。上記のとおり、幅寸法とは、X方向に沿う方向における寸法のことを指している。また、長さ寸法とは、Y方向に沿う方向における寸法のことを指している。
【0161】
例えば、スクリーン印刷機101が、Aという種類の基板5(以下、基板5Aと呼ぶ)、及び、Bという種類の基板5(以下、基板5Bと呼ぶ)に印刷処理を施すことが可能に構成されている場合を想定する。ここで、
図18に示すように、基板5Bの基板幅寸法WBは基板5Aの基板幅寸法WAよりも大きく、かつ、基板5Bの基板長さ寸法LBは基板5Aの基板長さ寸法LAよりも大きく設定されているものとする。この場合、ストレージ201には、基板幅寸法WB以上の試刷り幅寸法W6を有しており、かつ、基板長さ寸法LB以上の試刷り長さ寸法L6を有している試刷り基板6が収納される。これにより、ストレージ201には、スクリーン印刷機101が実行することが想定される全ての種類の試刷り処理に対応可能な試刷り基板6が収納されることとなる。この構成によれば、生産ライン500において生産される基板5の種類に関わらず、ストレージ201に収容される試刷り基板6の種類を1種類に限定することができる。したがって、基板5の種類ごとに個別に試刷り基板6を用意する手間を省略することができる。
【0162】
さらに、
図19の(b)に示すように、本実施形態に係る試刷り基板6の試刷り幅寸法W6は、スキージ幅寸法W41よりも大きくなるように設定されている。この構成によれば、掻き取り試刷り動作において、試刷り基板6は、印刷処理時には非支持領域Aとされていた領域を、幅方向の全域に亘って下支えすることができる。また、
図19の(b)に示すように、試刷り基板6の試刷り長さ寸法L6は、基板長さ寸法L5よりも大きくなるように設定されている。そのため、本実施形態に係る試刷り基板6は、非支持領域Aとされていた領域を、全面的に下支えすることができる。そして、この状態でスキージ41がマスク上面を摺動することにより、半田の掻き残し8がスキージ41によって全面的に掻き取られる。このように、本実施形態に係る構成によれば、試刷り処理を実行することにより、より効率よく掻き残しをスキージ41に掻き取らせることができる。そのため、オペレータの作業効率がより一層向上する。
【0163】
<第4実施形態>
図20を参照しながら、自動試刷りシステムを実現する構成の第4実施形態を説明する。
図20は、第4実施形態に係る試刷り基板6を模式的に示す図である。
【0164】
図20に示すように、第4実施形態に係る試刷り基板6には、基板認識マークFID(基準マークの一例)が付されている。また、上述のとおり、スクリーン印刷装置100は、基板認識マークFIDを認識するための基板認識カメラ8aを有している。基板認識カメラ15は、CCDエリアセンサなどからなり、撮像方向を下方に向けて設置されている。基板認識カメラ15は、基板5の上面に付されている基板認識マークFIDを撮像する。この撮像により得られた画像データから、試刷り基板6の正確な位置および姿勢が認識される。本実施形態では、基板認識カメラ15が入手した画像データと、上記したマスク認識カメラ8bがマスク認識マークを撮像して入手した画像データと、に基づいて、試刷り基板6とスクリーンマスク7との位置合わせが行われる。これにより、試刷り処理の精度が向上する。
【0165】
また、本実施形態では、試刷り処理の精度が向上することに伴い、同一の試刷り基板6における同一の領域に、半田を複数回印刷することが可能になる。つまり、重ね印刷を行うことが可能になる。この構成によれば、試刷り処理を複数回行う必要がある場合などに、重ね印刷によって当該要求に応えることができる。したがって、試刷り処理を複数回行う必要がある場合に、その都度新しい試刷り基板6を用意する場合と比較して、ストレージ201に収納する試刷り基板6の枚数を削減することができる。
【0166】
<第5実施形態>
図21を参照しながら、自動試刷りシステムを実現する構成の第5実施形態について説明する。
図21は、第5実施形態に係る自動試刷りシステム1000Dの構成を概略的に示す平面図である。
【0167】
図21に示すように、本発明に係る自動試刷りシステムは、デュアルレーン方式の生産ライン500Dにも適用可能である。生産ライン500Dは、基板5を基板搬送方向に沿って搬送する第1レーンPH1と、第2レーンPH2とが並行に配設されてなる。具体的に、
図21の例では、第1レーンPH1には第1バッファ装置200Aが配置されており、第2レーンPH2には第2バッファ装置200Bが配置されている。また、
図21の例では、一対のスクリーン印刷装置100Aが互いに反転して連結される態様で配置されており、各スクリーン印刷装置100Aを第1レーンPH1及び第2レーンPH2が通過している。なお、第1バッファ装置200A及び第2バッファ装置200Bのそれぞれの構成は上記したバッファ装置200の構成と同様であり、一対のスクリーン印刷装置100Aのそれぞれの構成は上記したスクリーン印刷装置100の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。このような形態の自動試刷りシステム1000Dにおいても、試刷り工程の自動化が実現され、かつ、各スクリーン印刷装置100Aの大型化を抑制することができる。
【0168】
[他の実施形態]
以上、本発明の第1~第5実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、さらに種々の変形実施形態を採ることができる。
【0169】
具体的に、上記各実施形態では、送り出し機構及び回収機構が上記の上流側押し出しユニット220又は下流側押し出しユニット240によって実現される例について説明したが、送り出し機構及び回収機構の構成は適宜変更可能である。例えば、送り出し機構及び回収機構のそれぞれは、試刷り基板6を把持して運搬することが可能なロボットアームや、試刷り基板6を吸着して搬送することが可能なヘッドユニットなどによって実現されてもよい。ただし、簡易な構成により試刷り基板6の送り出し及び回収の自動化を実現するといった観点から考慮すると、送り出し機構及び回収機構は、上記の上流側押し出しユニット220又は下流側押し出しユニット240によって実現されることが好ましい。
【符号の説明】
【0170】
5 :基板
6 :試刷り基板
7 :スクリーンマスク
8a :基板認識カメラ
22 :機内コンベア
41 :スキージ
53a :バックアップピン(下支え部)
55 :配置調整ユニット(配置調整部)
100 :スクリーン印刷装置
101 :スクリーン印刷機
102 :上流側印刷コンベア
103 :下流側印刷コンベア
109a :印刷側コンベア幅調整部(コンベア幅調整部)
109b :印刷装置側切り替え部
200 :バッファ装置
201 :ストレージ
202 :上流側押し出し機構
203 :下流側押し出し機構
204 :パススルーコンベア
205 :移動機構
209b :中間コンベア切り替え部
500,500A,500B,500C,500D :生産ライン
1000,1000A,1000B,1000C,1000D :自動試刷りシステム
FID :基板認識マーク
P1 :搬送位置
P2 :コンベア待機位置
P3 :試刷り位置
P4 :ストレージ待機位置