(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171829
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089074
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】393007857
【氏名又は名称】佳能電産香港有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】渕上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 良平
(72)【発明者】
【氏名】李向延
(72)【発明者】
【氏名】洪海
(72)【発明者】
【氏名】陳浩基
(72)【発明者】
【氏名】ダン ジーロン
(72)【発明者】
【氏名】謝志瀚
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211CA02
3B211CC03
3B211CE02
(57)【要約】
【課題】音声からの情報漏洩を防止しつつ、通気性を確保したマスクを提供する。
【解決手段】着用者の音声を集音して外部機器に送信する集音部を配置可能な、着用者の口及び鼻を覆うマスクが、マスクの着用者側の面を、口を覆う第1の部分と鼻を覆う第2の部分とに隔てるセパレータと、第1の部分に配置され、マスクの内部から外部へと通過する音の音量を低減する消音部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の音声を集音して外部機器に送信する集音部を配置可能な、前記着用者の口及び鼻を覆うマスクであって、
前記マスクの着用者側の面を、口を覆う第1の部分と鼻を覆う第2の部分とに隔てるセパレータと、
前記第1の部分に配置され、前記マスクを通過する音の音量を低減する消音部と、
を備えることを特徴とする、マスク。
【請求項2】
前記消音部は、通過する音を遮蔽する部材であることを特徴とする、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記消音部は、2以上の層の部材により構成されることを特徴とする、請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記層の部材は、前記マスクの着用者側の面に対して垂直な面を有するシート状の部材であることを特徴とする、請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記消音部は、多孔質の部材であることを特徴とする、請求項1に記載のマスク。
【請求項6】
前記消音部は、防水性のカバーで覆われていることを特徴とする、請求項1に記載のマスク。
【請求項7】
前記第2の部分は前記マスクの内部と外部との間に第1の通気口を有していることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のマスク。
【請求項8】
前記第1の通気口はフィルタにより覆われていることを特徴とする、請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
前記フィルタが不織布、織地、又は編地であることを特徴とする、請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
前記第1の部分及び第2の部分は合成樹脂で構成されることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のマスク。
【請求項11】
前記セパレータは、通過する音の音量を低減する材料により構成されることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のマスク。
【請求項12】
前記セパレータは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に第2の通気口を有することを特徴とする、請求項11に記載のマスク。
【請求項13】
前記第1の部分は前記マスクの内部と外部との間に第3の通気口を有しており、前記第3の通気口は前記マスクの内部の空気の交換を行う空気交換部を備えていることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のマスク。
【請求項14】
前記空気交換部はファンであることを特徴とする、請求項13に記載のマスク。
【請求項15】
前記セパレータは、前記第1の部分を覆う形状であることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、働き方改革や感染症予防のために在宅勤務が広く普及してきており、これまでは会議室に集まって行っていた会議をウェブ会議により行う場合も多くなってきている。オフィスに出勤して会議に参加する際も、会議参加者の中に在宅勤務者がいる場合はウェブ会議に参加することも多く、その場合はオフィスの自席から会議に参加するケースが考えられる。このように、自席から会議に参加するなどする場合には、会議での発言が周囲に聞こえてしまうことになるため、情報漏洩などのリスクが生じることとなる。
【0003】
特許文献1では、通話者の口を覆うためのマスク本体内部に入れたマイクによって携帯電話への通話を行うことにより、通話者の音声が外部に漏れにくくした電話機用消音マスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のマスクでは、口と鼻との全体を通気性のない素材で構成された遮音層で覆われてしまい、着用者が息苦しさを感じるという問題があった。
【0006】
本発明は、音声からの情報漏洩を防止しつつ、通気性を確保したマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、例えば、一実施形態に係るマスクは以下の構成を備える。すなわち、着用者の音声を集音して外部機器に送信する集音部を配置可能な、前記着用者の口及び鼻を覆うマスクであって、前記マスクの着用者側の面を、口を覆う第1の部分と鼻を覆う第2の部分とに隔てるセパレータと、前記第1の部分に配置され、前記マスクの内部から外部へと通過する音の音量を低減する消音部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
音声からの情報漏洩を防止しつつ、通気性を確保したマスクを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】消音部材を有するマスクの内部構造を説明するための図。
【
図6】マスクの着用者側から見た構成要素の一部の例を示す図。
【
図7】集音部と空気交換部との間に消音部材を有するマスクの内部構造を説明するための図。
【
図8】マスクの着用者側から見た構成要素の一部の例を示す図。
【
図9】消音部材を有するマスクの内部構造を説明するための図。
【
図10】消音部材を有するマスクの内部構造を説明するための図。
【
図11】ダクトを有するマスクの内部構造を説明するための図。
【
図12】ダクトが有する消音部材について説明するための図。
【
図13】ダクトの内部孔及び外部孔の位置関係について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係るマスクは、着用者の口及び鼻を覆うマスクである。本実施形態に係るマスクは、着用者の口を覆う部分が、マスクの内部の空気の交換を行う空気交換部と、着用者の声が入力される集音部と、空気交換部と集音部との間に配置される、通過する音の音量を低減する消音部材と、集音部へ入力された着用者の声を外部に送信する送信部と、を備える。また、本実施形態においては、マスクの着用者側の空間を、口を覆う第1の部分により形成される空間と鼻を覆う第2の部分により形成される空間とに隔てるセパレータが設けられ、以下においては「第1の部分」及び「第2の部分」と表記する場合、セパレータによって隔てられる、マスクの口を覆う部分と鼻を覆う部分とをそれぞれ指すものとする。
【0012】
[第1の実施形態]
図1~
図3を参照して、本実施形態に係るマスクを所定方向から見た際の構成の一例について説明を行う。
図1は、本実施形態に係るマスクを上から(着用時の頭部側から)見た様子の一例を示す図である。
図1においては、マスクの本体1が備える、通気口2と、本体1を顔と接触させる部分である接触部3とが図示されている。本体1は、着用者の口及び鼻(鼻先)を覆う形状を有する。着用者の鼻を覆うことで本体1が安定し、会話時も本体1の上下の移動が抑制される。本体1は、例えば合成樹脂(プラスチック)など、形状を保持可能な材料により構成される。本実施形態に係る合成樹脂としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなど任意の合成樹脂を用いることができる。本体1の材料をより軽量にすることにより、マスクの着用者への負担を減らすことができる。本実施形態に係る本体1は、全体の厚みが均等であり、その厚みは10mm程度であるものとするが、部分的に厚みが大きい部分を設けてもよく、また厚みの値も限定はされない。
【0013】
通気口2は、本体1の第2の部分に設けられる、マスク内への空気の導入、又は排出を行うための穴である。本実施形態に係る通気口2には、外部から飛沫又はウイルスなどの異物の本体内への侵入を防ぐため、フィルタを設けてもよい。ここで用いられるフィルタは、不織布、織地、又は編地など、通気口2を通過する異物の低減が望めるのであれば特にその種類に限定はない。通気口2の大きさは特に限定はされないが、例えば直径1mm、2mm、3mm、4mm、又は5mmの正円であってもよい。また、通気口2は矩形であってもよく、楕円であってもよく、空気を通すことが可能であればどのような形状であってもよい。
【0014】
接触部3は、本体1が備える、着用者の顔と接触させる部分である。本実施形態に係る接触部3は、例えばシリコンゴムなどの弾性素材により構成されてもよい。シリコンゴムなどの弾性素材を接触部3として用いることにより、本体1を着用者の顔に接触させ固定する際に、接触部3が着用者の顔面に沿って変形することで、本体1を着用者に密着させやすくすることができる。なお、接触部3は、本体1の縁に沿うように配置される、所定の幅(例えば、1cm)を有する帯状の部分であるものとするが、上述のような着用者との接触部としての機能を果たせるのであればこのような位置及び形状に限定する必要はない。例えば、接触部3は波状の帯であってもよく、本体1の縁の一部に配置されていなくてもよい。また、
図1~
図3では、接触部3は、本体1の着用者側の面とその反対側の面との両方にかかるように縁部に配置されるものとして図示しているが、接触部3は着用者側の面にのみ配置されてもよい。ケーブル11、発音部(イヤフォン)12は
図6を用いて説明する。
【0015】
図2は、本実施形態に係るマスクを正面から(着用者に対して正面から)見た様子の一例を示す図である。
図2においては、マスクの本体1が備える、通気口2と、接触部3と、空気交換部(ファン)4と、通気口5とが図示されている。また
図3は、本実施形態に係るマスクを側面から(着用者に対して側面から)見た様子の一例を示す図である。
図3においては、マスクを着用者に対して向かって右側から見た様子が示されており、マスクの本体1が備える、通気口2と、接触部3と、空気交換部4とが図示されている。
【0016】
空気交換部4は、マスクの第1の部分への空気の導入又は第1の部分の空気の排出を行う。本実施形態に係る空気交換部4は、回転により気流を生じさせるファンであるものとするが、第1の部分と本体1の外部との空気の交換が可能であれば別の態様であっても構わない。以下、空気交換部4はファン4とも表記する。なお、本実施形態においてはファン4を本体1が備えているものとして説明を行うが、ファン4が本体1から着脱可能であってもよい。
【0017】
通気口5は、本体1の第1の部分に設けられる、マスク内への空気の導入、又は排出を行うための穴である。本実施形態においては、ファン4が空気の導入を行うのであれば通気口5が空気の排出を行い、ファン4が空気の排出を行うのであれば通気口5が空気の導入を行う。なお、ファン4を用いて第1の部分からの空気の排出を行うことにより、マスク内の湿気を効率的に外部へと排出することも可能となる。呼気などに由来する湿気をマスクの外部に排出することで、後述する消音部材7に水滴が付着することによる消音部材の効果の低減を抑制することが可能となる。また、ここでは通気口2と通気口5とは大きさが異なり、通気口5の方が小さいものとするが、通気口5の大きさ及び形状も通気口2と同様限定されない。
【0018】
図4は、本実施形態に係るマスクの着用時のイメージ図を参照して内部構造を説明するための、マスクの断面を模式的に示す図である。本実施形態においては、マスクの本体1は、
図4に示されるような、鼻の上から顎付近までをカバーする骨組みであるものとして説明を行うが、これは一例であり、本体1が上述したように口と鼻とを覆うことができればよい。なお、本発明に係るマスクは、不図示の耳掛け部により着用者に装着されてもよく、外部の耳掛け部を取り付けることにより着用者に装着可能な構成であってもよい。外部の耳掛け部としては、例えば
図5に示されるような一般的な家庭用マスクを本体1の外部を覆うアウターマスクとして用いてもよく、耳掛けのみを本体1に取り付ける構成の耳掛け部を用いてもよい。ここで、アウターマスクとしてはガーゼマスク又は不織布マスクなど、一般的に用いられる任意の家庭用マスクを用いることが可能である。また、外部の耳掛け部を用いる場合、耳掛け部と本体1とを固定するための固定部(クリップなど)が使用されてもよい。
【0019】
図4には、本実施形態に係る本体1の内部(着用者側)における、セパレータ6と消音部材7とが図示されている。セパレータ6は、マスクの本体1の着用者側の空間を、口を覆う第1の部分により形成される空間(
図4において点線41で示した空間)と鼻を覆う第2の部分により形成される空間(
図4において一点鎖線42で示した空間)とに隔てる。消音部材7は、第1の部分に配置され、マスクの内部から外部へと通過する音及びマスクの外部から内部へと通過する音の音量を低減する部材である。
【0020】
また
図6は、本発明に係るマスクにおける消音部材7の配置例を説明するための図である。
図6においては、マスクの本体1を着用者側から見た場合の構成要素の一部の配置の一例を示す図であり、通気口2、ファン4につながる開口部、セパレータ6、消音部材7、集音部8、通信機器10、ケーブル11、及び発音部(イヤフォン)12が本体1上に図示されている。また、
図2で説明した通り通気口5(
図6では不図示)も備えられている。
【0021】
消音部材7は、例えば、吸音を行う多孔質の部材(吸音材)であってもよく、マスクを通過する(マスクの内部から外部への、又はマスクの外部から内部への)音を遮蔽する部材(遮音材)であってもよく、マスクの内部から外部へと通過する音の音量を低減できるのであれば材料及び構造の指定はない。吸音材としては、例えばグラスウールなどの繊維状の材料により構成される部材を用いてもよく、ウレタンスポンジなどの発泡成形した合成樹脂を用いてもよい。また、遮音材としては、周期的な格子構造(ハニカム構造など)と膜とを含む音響メタマテリアルで構成される部材を用いてもよく、ゴム、ガラス、又は金属などの所望の遮音性を有する各種材料で構成される板状の部材を用いてもよい。
【0022】
なお、本実施形態に係る消音部材7は一層のシート状の部材であるものとして説明を行うが、消音部材7を通過する音の音量を低減できるのであれば特にこのような形状に限定するわけではない。例えば消音部材7は、2以上の層の部材により構成され、各層の間を流路として音波を反射させることで音量の低減を行ってもよい。この2以上の層は、例えばマスクの面(
図6に示した消音部材7の面)に対して平行でない(例えば、垂直な)面を有する層であってもよく、マスクの面と平行な面を有する層であってもよい。例えば消音部材7は、マスクの面に対して垂直な面を有する層が渦巻き状、又は遮音壁を複数有する迷路状に配置されることで流路が複雑な形に形成された構造のものであってもよく、マスクの面に対して垂直な面を有する層が複数配置されたものであってもよく、これらがともに配置されたものであってもよい。
【0023】
なお、マスクに含まれる消音部材7の量(厚み、本体1の面部分に対する面積など)は、消音部材を構成する材料、本体1を構成する材料などに応じて、期待される消音の性能から任意に設定されてもよい。本実施形態においては、消音部材7は、
図6に示されるように、第1の部分の着用者側の面の全面を覆うように配置されているものとするが、例えば口元付近の一部領域のみなど、第1の部分の一部領域のみを覆うように(又は、そのような領域の厚みが最も厚いように)配置されてもよい。また、消音部材7は、
図4に示されるような不均等な厚みで配置されてもよく、厚みの均等なシートを本体1の着用者側の面に貼り付けるような形式であってもよい。また、消音部材は、セパレータ6に対して垂直下方向(着用者の頭部から地面方向)に平面状に伸びるように配置されていてもよい。消音部材の厚みは、例えば(最も厚い部分で)1mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよく、15mm以上であってもよく、20mm以上であってもよい。また消音部材の厚みは、例えば(最も厚い部分で)30mm以下であってもよく、25mm以下であってもよく、20mm以下であってもよく、18mm以下であってもよく、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。
【0024】
なお、第1の部分においては着用者の呼気や発生による湿度の上昇が予見されることから、消音部材7は、防水機能を有するカバー(防水カバー)により覆われていてもよい。この防水カバーは、例えば消音部材7全体を覆うように配置されてもよく、消音部材7の着用者側の面を覆うように配置されていてもよい。防水カバーの例としては、例えば合成樹脂(例えば、ビニル樹脂)などにより構成されるカバーが用いられる。防水カバーの厚さは、例えば1mmとしてもよく、0.8mm以下としてもよく、0.5mm以下としてもよく、0.2mm以下としてもよい。
【0025】
セパレータ6は、上述のようにマスクの本体1の着用者側の空間を第1の部分により形成される空間と第2の部分により形成される空間とに隔てる部材である。セパレータ6は、例えば(消音部材7と同様に)通過する音の音量を低減する材料により構成されていてもよい。また、セパレータ6は、
図6に示されるように厚みが均等なシート状であり、マスクの内部空間を第1の部分により形成される空間と第2の部分により形成される空間とに隔てるものとするが、特にこのように限定されるわけではない。例えば、セパレータ6は、着用者と接する、弾性素材による接触部(不図示)を備え、接触部を介して着用時の密着性を高めるようにしてもよい。また、本実施形態に係るセパレータ6は、第1の部分における通気性を向上させるために、第1の部分と第2の部分との間に不図示の通気口を有していても構わない。
【0026】
また、本発明に係るマスクは、着用者の声が入力される集音部を第1の部分に配置可能であり、集音部に集音された音声は外部機器に送信される。集音部8は、ここではマイクロフォン(マイク)であり、入力された音声を集音する機器である。集音部8が集音した音声は通信機器10により、外部機器(例えば、サーバ)へと送信される。通信機器10は、集音部8が集音した音声を、無線通信、又は有線通信により外部機器に送信することができる。発音部12(イヤフォン)はケーブル11により通信機器10に接続され、通信機器10は無線通信、又は有線通信により外部機器より受信した音声をケーブル11及び発音部12を介して発音することができる。
図6では左右それぞれに発音部12とケーブル11が配置されているが、どちらか一方でも構わない。無線通信としては、例えばBluetooth(登録商標)通信などの近距離無線通信が用いられてもよい。集音部8、発音部12及び通信機器10により行われる情報処理、及び通信(通話など)に関する処理については、マイク、イヤフォンを用いた公知の処理により行うことが可能であり、ここでの説明は省略する。
【0027】
集音部8は、ここでは消音部材7に対して着用者側に配置することができる。このように配置することにより、マスクの外部の音を集音部8が拾うことによるノイズを低減し、また着用者の音声を(消音部材7に対して着用者側の反対側に配置した場合より)クリアに拾うことができる。
【0028】
なお、この例では、ファン4は、消音部材7に対して着用者側の反対側に配置することができる。ファン4を消音部材7と本体との間に配置し、集音部8を消音部材7の着用者側の面に配置することにより、ファン4が発する音は集音部8に到達する前に消音部材7により低減されることとなる。
【0029】
図8には、
図6に示すような着用者側から見たマスクの本体1に対して、その内部における構成要素の一部の配置の一例が示されている。
図8においては、本体1に対して、通気口2、ファン4、セパレータ6、集音部8、消音部材9、及び通信機器10が図示されている。通気口2及びファン4については
図2と同様の構成であり、セパレータ6は
図4で説明したものと同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0030】
集音部8が配置される位置は特に指定されない。集音部8は、例えば集音部8とファン4とのそれぞれの重量を考慮し、着用時のバランスが保たれるようにファン4の位置に対して設定される位置に配置されてもよい。
図8の例では、集音部8とファン4との重量が略同一であるものとして、
図8に示されるように本体1の縦方向を挟んで線対象の位置に集音部8とファン4とが配置されている。なお、集音部8とファン4との間隔を大きくすることにより、ファン4が発する音を集音部8が拾いづらいように配置することができる。集音部8は、例えば本体1と一体の装置として配置されていてもよく、本体1と別体の集音部8が、本体1が備える不図示の保持部に保持される態様であってもよい。
【0031】
このような構成によれば、セパレータによりマスクの着用者側の空間を、口を覆う第1の部分により形成される空間と鼻を覆う第2の部分により形成される空間とに隔て、第1の部分に消音部材を配置したマスクを提供することができる。これにより、第2の部分により通気性を確保し、第1の部分に配置される消音部材により口から発せられる音声のマスク外部への漏れを低減しながら、当該音声が第2の部分から外部に漏れることも抑制することができる。したがって、着用者の音声からの情報漏洩を防止しつつ、通気性を確保したマスクを提供することができる。また、飛沫やウイルスなどの異物のマスク内への侵入を抑制することも可能となる。なお、セパレータを設けることにより、鼻息が第1の部分へと入り集音部に拾われることを抑制し、ノイズを低減することも可能となる。
【0032】
上述のように、集音部8がファン4の発する音を拾うことを抑制するため、ファン4を消音部材7と本体との間に配置し、集音部8を消音部材7の着用者側の面に配置することが好ましい。このような配置によって、ファン4が発する音は集音部8に到達する前に消音部材7により低減されることとなる。
【0033】
また、集音部8とファン4との間に消音部材が配置されていてもよい。
図8及び
図7に示される消音部材9は、そのような用途で集音部8とファン4との間に配置される消音部材である。消音部材9の構成については消音部材7と同様であるためここでの説明は行わない。消音部材9は、例えば消音部材7と一体の消音部材であってもよく、消音部材7とは別に配置される消音部材であってもよい。このように、集音部8とファン4との間に消音部材を配置することにより、ファン4が発する音は集音部8に到達する前に消音部材9により低減されることとなる。
【0034】
図7は、
図4と同様に示すマスクの本体1の断面のイメージ図であり、消音部材9が第1の部分に配置されている。
図7及び
図8に示される消音部材9は、両面がそれぞれ着用者の側面方向を向くシート状の消音部材である。この消音部材は、ファン4が発し集音部8へと向かう音を低減できるのであればその大きさ及び位置は特に限定はされないが、ここでは
図7及び
図8に示されるように、セパレータ6から本体1の下方向(着用者の頭部から地面方向)に縦断するように配置されるものとする。
【0035】
なお、ファン4及び集音部8のそれぞれの電源の起動/終了は、本体1が備える不図示の機械式スイッチにより行われてもよく、外部機器からの通信に応じて行われてもよく、本体1の着脱を検知したことに応じて行われてもよい。また、ここでは通信機器10がファン4及び集音部8に電力を供給するバッテリーを備えているものとするが、ファン4及び集音部8のいずれか又は両方が別にバッテリーを備えていてもよい。また、本体1は、ファン4及び集音部8の電力供給源を備えていてもよく、外部機器からの電力供給に応じてファン4及び集音部8を動作させるようにしてもよい。
【0036】
なお、通信機器10の位置は特に限定されないが、着用時のバランスを考えて、着用者から見た本体1の左右の中心線上に配置されてもよい。また、
図8の例では通信機器10は第2の部分に配置されているが、第1の部分に配置されてもよく、また第1の部分と第2の部分に跨って配置されてもよい。なお、本体1が備えるこれらの構成要素は、洗浄を行うことを考慮して、それぞれ取り外し可能に備え付けられていてもよい。
【0037】
[第2の実施形態]
図9、
図10は本発明における第2の実施形態に係るマスクを示す図である。なお、ここでは第1の実施形態と異なる構造について説明し、第1の実施形態において説明した内容はここでは省略する。すなわち、本実施形態に係るマスクの本体1が備える各構成要素のうち、第1の実施形態と同じ参照番号を有するものは、以下に説明する差異を除き第1の実施形態と同様に機能することが可能であるものとする。
【0038】
本実施形態に係る本体1が備えるセパレータ6は、マスクの第1の部分を覆う形状である。以下、そのようなセパレータについて説明を行う。
図9(a)はマスクの本体1の主要構成要素の断面図であり、
図9(b)は、本体1の内部の構成要素について、一部の部材を透過させて表示した図である。また、
図10(a)は主要構成要素の配置を着用者に対して正面方向から示した図であり、
図10(b)は後述する消音部材7の配置範囲を示す図である。
【0039】
本実施形態では本体1は布状の部材で構成されており、内側にセパレータ6が配置されている。セパレータ6は着用者側に開口部を有する立体形状に形成されており、内部に消音部材7が、開口部の縁に沿って接触部3が設けられている。セパレータ6は本体1の内側に配置されており、マスクが着用されると、マスク内の空間を、着用者の口を覆う第1の部分により形成される空間と鼻を覆う第2の部分により形成される空間とに分けることができる。このように、セパレータ6が、着用者側の空間を、口を覆う第1の部分により形成される空間と鼻を覆う第2の部分により形成される空間とに隔てるものであるという点は第1の実施形態と同様であるが、セパレータ6自体が第1の部分(着用者の口を覆う部分)となる点が第1の実施形態と異なる点である。そのため、第1の実施形態において本体1の第1の部分が果たす役割を、第2の実施形態においてはセパレータ6が果たすこととなる。
【0040】
本実施形態においても第1の実施形態と同様に、第1の部分(本実施形態におけるセパレータ6)に集音部8が配置されており、セパレータ6の外側にファン4が配置されている。ファン4と集音部8の間には消音部材7が存在する。また集音部8の信号を送信する通信機器10がセパレータの内側に配置されている。
【0041】
このような構成をとることで、着用者の音声のセパレータの内部(第1の部分)からの漏れを低減し、消音部材7による音量低減効果と合わせて、外部への漏出音を低減することが可能である。また、集音部8によって集音されるファン4の音及びマスク外の音を低減させ、着用者の音声品質を向上させることが可能である。
【0042】
さらには、第2の部分が着用者の鼻を覆う形状になっているため、本体1の位置が安定し、着用者が発話する際の口の動きによってセパレータ6がずれて、上述した効果が損なわれてしまうことを防止可能である。
【0043】
[第3の実施形態]
図11~
図13は、本発明における第3の実施形態に係るマスクを示す図である。なお、ここでは第1・第2の実施形態と異なる構造について説明し、第1・第2の実施形態において説明した内容はここでは省略する。すなわち、本実施形態に係るマスクの本体1が備える各構成要素のうち、第1・第2の実施形態と同じ参照番号を有するものは、以下に説明する差異を除き第1・第2の実施形態と同様に機能することが可能であるものとする。
【0044】
図11は、本体1の内部の構成要素について、一部の部材を透過させて表示した図である。
図12、
図13は、主要構成要素の配置を着用者正面方向から示した図である。
【0045】
第3の実施形態は、第2の実施形態と同様に、本体1は布状の部材で構成されており、内側にセパレータ6が配置されている。セパレータ6は本体1の内側に配置されており、マスクが着用されると、マスク内の空間を、着用者の口を覆う第1の部分により形成される空間と鼻を覆う第2の部分により形成される空間とに分けることができる。このように、セパレータ6が、着用者側の空間を、口を覆う第1の部分により形成される空間と鼻を覆う第2の部分により形成される空間とに隔てるものであるという点は第1の実施形態と同様であるが、セパレータ6自体が第1の部分(着用者の口を覆う部分)となる点が第1の実施形態と異なる点である(第2の実施形態と共通する)。そのため、第1の実施形態において本体1の第1の部分が果たす役割を、第3の実施形態においてはセパレータ6が果たすこととなる。なお、セパレータ6を第1の実施形態と同様にシート状のものとし、以下に説明する吸気ダクト11及び排気ダクト12を本体1が備えるものとしてもよい。
【0046】
本実施形態に係る本体1は、第1の部分に、第1の部分の外部孔と内部孔とを繋ぐ2以上のダクトを備える。ここでは、そのようなダクトとして、吸気ダクト11及び排気ダクト12が備えられている。ここで、セパレータ6は、吸気ダクト11、排気ダクト12、及び消音部材7を備えた構造となっている。吸気ダクト11はマスクの(ここでは、第1の部分を覆うセパレータ6の)外部から空気を取り入れる通気口であり、排気ダクト12は本体1の(セパレータ6の)内部の空気を外に排出するための通気口である。吸気ダクト11並びに排気ダクト12はそれぞれ、セパレータ6の外側(着用者側の反対側)に空いた穴である外部孔13及び16と、セパレータ6の内側(着用者の口側)に空いた穴である内部孔14及び15とをつないでいる(吸気ダクト11/排気ダクト12の両端が外部孔、内部孔である)。また、以下においては、吸気ダクト11及び排気ダクト12を区別せず単に「ダクト」と称する場合がある。また、ここではダクトの数は計2つであるものとして説明を行うが、セパレータ6が3つ以上のダクトを備えていてもよい。
【0047】
すなわち、外部孔13から入った空気は吸気ダクト11を通り内部孔14から本体1の(ここでは、セパレータ6の)内部に取り入れられ、セパレータ6の内部の空気は内部孔15から排気ダクト12を通り外部孔16から外部に排出される。
【0048】
また、本実施形態に係るダクトは、側面に、消音部材7と、消音部材7に通じる穴と、を有している。本実施形態においては、消音部材7は、
図12に示すようにダクトに沿ってダクトの周囲に配置されている。ダクト内には消音部材7に通じる穴があいており、その穴を通じて音が消音部材7に広がることで、消音される構造となっている。
【0049】
なお、
図12では、消音部材7を断続的に配置した形態を示しているが、ダクトに沿って配置されていればどのような位置に配置されていても良い。また、消音部材7は、吸気ダクト11及び排気ダクト12の両端の穴と接する箇所に穴が開いていることを除き、第1の実施形態と同様に第1の部分を覆うように配置されていてもよい。消音部材7はダクトの外部に配置されてもよく、ダクトの内部に配置されてもよい。
【0050】
消音部材7の素材及び構造は第1の実施形態において説明したものと同様である。消音部材7は、例えば、吸音を行う多孔質の部材(吸音材)であってもよく、通過する音を遮蔽する部材(遮音材)であってもよく、通過する音の音量を低減できるのであれば材料及び構造の指定はない。吸音材としては、例えばグラスウールなどの繊維状の材料により構成される部材を用いてもよく、ウレタンスポンジなどの発泡成形した合成樹脂を用いてもよい。また、遮音材としては、周期的な格子構造(ハニカム構造など)と膜とを含む音響メタマテリアルで構成される部材を用いてもよく、ゴム、ガラス、又は金属などの所望の遮音性を有する各種材料で構成される板状の部材を用いてもよい。また、例えば消音部材7は、2以上の層の部材により構成され、各層の間を流路として音波を反射させることで音量の低減を行ってもよい。また消音部材7は、層が渦巻き状、又は遮音壁を複数有する迷路状に形成されることで流路が複雑な形に形成された構造のものであってもよい。
【0051】
また、吸気又は排気を着用者の呼吸に依存せずより効率的に行うために、セパレータ6にファン17を取り付けても良い。
図12においては、排気ダクト12の内部孔15にファンを取り付けた例を示しているが、ファンを取り付ける位置は、吸気ダクト11の外部孔13若しくは内部孔14、又は排気ダクト12の外部孔16であってもよい。
【0052】
ここで、吸気ダクト11の外部孔13及び内部孔14、並びに排気ダクト12の外部孔16及び内部孔15の位置関係について説明する。
【0053】
図13に示す通り、本実施形態に係る本体1(セパレータ6)は、吸気ダクト11の内部孔14と排気ダクト12の内部孔15との距離(D3)が、吸気ダクト11の外部孔13と排気ダクトの内部孔15との距離(D1)及び吸気ダクト11の内部孔14と排気ダクト12の外部孔16との距離(D2)より大きいことを特徴としている。
【0054】
このような位置関係にすることで、吸気・排気ダクトの長さを長く確保することができるため、消音効果を向上させることが可能となる。また、吸気ダクト11の内部孔14と排気ダクト12の内部孔15とが離して配置されることになるため、セパレータ6内部の空間を効率的に換気することが可能となる。
【0055】
このようなダクトの長さは、所望の消音効果に応じて任意に設定することが可能である。例えばダクトの長さは、3cm以上であってもよく、4cm以上であってもよく、5cm以上であってもよく、7cm以上であってもよい。また、このダクトの長さは、12cm以下であってもよく、11cm以下であってもよく、10cm以下であってもよく、9cm以下であってもよく、8cm以下であってもよい。また、本実施形態に係る吸気ダクト11及び排気ダクト12は、長さが同一であってもよく、それぞれ異なる長さを有していてもよい。
【0056】
また、内部孔14と内部孔15との距離D3についても、換気効率などの条件に応じて所望の値に設定することが可能である。D3は、例えば1cm以上であってもよく、2cm以上であってもよく、3cm以上であってもよく、4cm以上であってもよく、5cm以上であってもよい。またD3は10cm以下であってもよく、9cm以下であってもよく、8cm以下であってもよく、7cm以下であってもよく、6cm以下であってもよい。
【0057】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1:本体、2:通気口、3:接触部、4:空気交換部、5:通気口