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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171834
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089084
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大堀 貴大
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB89
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730FD41
5H730FG01
5H730FG10
(57)【要約】
【課題】 リアクトル電流のリプル成分を抑制しながら、スイッチング損失を抑えることができる電力変換システムを提供する。
【解決手段】 電力変換システムA1では、結合リアクトル1は、互いに磁気結合された複数の個別リアクトルL11、L12を有する。第1レグ21及び第2レグ22は、複数の個別リアクトルL11、L12にそれぞれ対応し、複数の個別リアクトルL11、L12のうち対応する個別リアクトルを流れるリアクトル電流IL11、IL12を導通、遮断するスイッチング素子Q1-Q4をそれぞれ有する。共通リアクトルL2は、複数の個別リアクトルL11、L12の接続点Paに接続する。共通リアクトルL2のインダクタンス値は、複数の個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに磁気結合された複数の個別リアクトルを有し、前記複数の個別リアクトルのそれぞれの端部が互いに接続した結合リアクトルと、
前記複数の個別リアクトルにそれぞれ対応し、前記複数の個別リアクトルのうち対応する個別リアクトルを流れるリアクトル電流を導通、遮断するスイッチング素子をそれぞれ有する複数のレグと、
前記複数の個別リアクトルの接続点に接続した共通リアクトルと、を備え、
前記共通リアクトルのインダクタンス値は、前記複数の個別リアクトルのそれぞれのインダクタンス値よりも大きい
電力変換システム。
【請求項2】
前記スイッチング素子を制御する制御部を更に備える
請求項1の電力変換システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記スイッチング素子を電流臨界モードでターンオンさせる
請求項2の電力変換システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記複数のレグのそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、
前記複数のレグのうち前記出力電力が電力閾値以下となるレグにおいて、前記スイッチング素子を前記電流臨界モードでターンオンさせる
請求項3の電力変換システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記複数のレグのそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、
前記複数のレグのうち前記出力電力が電力閾値以上となるレグにおいて、前記スイッチング素子を前記電流臨界モードでターンオンさせる
請求項3の電力変換システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記スイッチング素子のゼロボルトスイッチングを行う
請求項2の電力変換システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記複数のレグのそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、
前記複数のレグのうち前記出力電力が電力閾値以下となるレグにおいて、前記スイッチング素子をターンオンさせるときに前記ゼロボルトスイッチングを行う
請求項6の電力変換システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記複数のレグのそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、
前記複数のレグのうち前記出力電力が電力閾値以上となるレグにおいて、前記スイッチング素子をターンオンさせるときに前記ゼロボルトスイッチングを行う
請求項6の電力変換システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御する
請求項3乃至8のいずれか1つの電力変換システム。
【請求項10】
前記複数の個別リアクトルの互いの結合係数は1である
請求項1の電力変換システム。
【請求項11】
前記複数のレグのそれぞれは、前記結合リアクトル及び前記共通リアクトルとともに電圧変換回路を構成し、
前記電圧変換回路のそれぞれは、蓄電池の直流電圧を電圧変換する
請求項1の電力変換システム。
【請求項12】
前記スイッチング素子を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記蓄電池の充電時及び放電時の少なくとも一方において、前記直流電圧の変動の傾きが一定範囲に収まっていれば、前記スイッチング素子をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う
請求項11の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のDC-DCコンバータは、昇圧用インダクタ、密結合インダクタ、出力調整回路を備えて、マルチフェーズ動作を行うDC-DCコンバータである。マルチフェーズ動作では、DC-DCコンバータの各相のスイッチを、各相の位相を互いにずらして駆動する。
【0003】
DC-DCコンバータの入力端子には、電池などから直流電圧が入力されている。入力端子には、昇圧用インダクタのコイルが接続されている。このコイルの出力側は、密結合インダクタの入力側に接続されている。密結合インダクタは、複数の調整用コイルを備えている。複数の調整用コイルの出力側は、出力調整回路の複数のスイッチング素子にそれぞれ接続されている。さらに、複数の調整用コイルの出力側は、ダイオードを介して出力端子に接続されている。そして、スイッチング素子がオン、オフすることで、入力端子の直流電圧は、昇圧用コイルで昇圧され、更に調整用コイルで昇圧され、昇圧された直流電圧が出力端子から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-195726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような電力変換システムでは、電流のリプル成分は、コンデンサ及び負荷などの短寿命化の要因になる。そこで、リアクトルのインダクタンス値を大きくして、リアクトル電流のリプル成分を抑制することが考えられる。しかしながら、リアクトルのインダクタンス値を大きくすると、リアクトル電流の減少時の傾きが小さくなり、リアクトル電流を導通、遮断するスイッチング素子のハードスイッチングによってスイッチング損失が増大する可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、リアクトル電流のリプル成分を抑制しながら、スイッチング損失を抑えることができる電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電力変換システムは、結合リアクトルと、複数のレグと、共通リアクトルと、を備える。前記結合リアクトルは、互いに磁気結合された複数の個別リアクトルを有し、前記複数の個別リアクトルのそれぞれの端部が互いに接続する。前記複数のレグは、前記複数の個別リアクトルにそれぞれ対応し、前記複数の個別リアクトルのうち対応する個別リアクトルを流れるリアクトル電流を導通、遮断するスイッチング素子をそれぞれ有する。前記共通リアクトルは、前記複数の個別リアクトルの接続点に接続する。前記共通リアクトルのインダクタンス値は、前記複数の個別リアクトルのそれぞれのインダクタンス値よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、リアクトル電流のリプル成分を抑制しながら、スイッチング損失を抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る電力変換システムを示すブロック図である。
図2図2は、同上の電力変換システムの昇圧モードにおける各波形を示す。
図3図3は、比較例の昇圧モードにおける各波形を示す。
図4図4は、実施形態に係る電力変換システムの昇圧モードにおける各波形を示す。
図5図5は、比較例の昇圧モードにおける各波形を示す。
図6図6は、第1変形例の昇圧モードにおける個別リアクトル電流の波形を示す。
図7図7は、第3変形例における蓄電池の直流電圧の放電曲線を示す。
図8図8は、実施形態に係る電力変換システムが用いられる電力システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態は、一般に、電力変換システムに関する。より詳細には、インタリーブ(interleave)方式の電力変換システムに関する。
【0011】
なお、以下の実施形態は、本開示の実施形態の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。なお、以下の説明における「接続」は、「電気的に接続」を含み得る。
【0012】
(1)電力変換システムの概略
本実施形態の電力変換システムA1は、図1に示す構成を備えて双方向の電力変換を行うインタリーブ方式の電力変換システムである。
【0013】
電力変換システムA1は、結合リアクトル1と、複数のレグ21、22と、共通リアクトルL2と、を備える。
【0014】
結合リアクトル1は、互いに磁気結合された複数の個別リアクトルL11、L12を有し、複数の個別リアクトルL11、L12のそれぞれの端部が互いに接続している。複数のレグ21、22は、複数の個別リアクトルL11、L12にそれぞれ対応し、複数の個別リアクトルL11、L12のうち対応する個別リアクトルを流れる個別リアクトル電流IL11、IL12を導通、遮断するスイッチング素子Q1、Q2及びスイッチング素子Q3、Q4をそれぞれ有する。共通リアクトルL2は、複数の個別リアクトルL11、L12の接続点Paに接続する。そして、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]は、複数の個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]よりも大きい。
【0015】
電力変換システムA1では、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]が、複数の個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]よりも大きい。この結果、電力変換システムA1は、共通リアクトル電流IL2のリプル成分を抑制しながら、スイッチング損失を抑えることができる。
【0016】
(2)詳細
(2.1)電力変換システムの構成
電力変換システムA1は、図1に示すように、一対の第1端子T11、T12と、一対の第2端子T21、T22と、を備える。第1端子T11、T12は、蓄電池B1と接続され、第1端子T11、T12には、蓄電池B1の電池電圧である直流電圧V1が印加される。第1端子T11は、蓄電池B1の正極に接続される。第1端子T12は、蓄電池B1の負極に接続される。第2端子T21、T22は、一対の導体からなる電路W1と接続される。電路W1は直流電力を伝送する一対の導体であり、第2端子T21、T22には、電路W1の直流電圧V2が印加される。第2端子T21は、電路W1の正極に接続される。第2端子T22は、電路W1の負極に接続される。
【0017】
直流電圧V2は、直流電圧V1より大きい。電力変換システムA1は、蓄電池B1によって第1端子T11、T12に印加された直流電圧V1を直流電圧V2へ昇圧し、昇圧した直流電圧V2を第2端子T21、T22から電路W1へ出力する。すなわち、電力変換システムA1は、蓄電池B1から供給される直流電力を昇圧して電路W1に供給する。また、電力変換システムA1は、第2端子T21、T22に印加された直流電圧V2を直流電圧V1へ降圧し、降圧した直流電圧V1を第1端子T11、T12から蓄電池B1へ出力する。すなわち、電力変換システムA1は、電路W1から供給される直流電力を降圧することで蓄電池B1を充電する。
【0018】
電力変換システムA1は、結合リアクトル1、第1レグ21、第2レグ22、制御部3、第1電流センサ41、第2電流センサ42、共通リアクトルL2、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2を備える。
【0019】
第1コンデンサC1は、第1端子T11、T12の間に接続される。第2コンデンサC2は、第2端子T21、T22の間に接続される。第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2は、平滑コンデンサとして機能し、例えば電解コンデンサで構成される。
【0020】
第1レグ21及び第2レグ22は、一対の第2端子T21、T22に対して並列接続されている。
【0021】
第1レグ21は、ハイサイドの第1スイッチング素子Q1と、ローサイドの第2スイッチング素子Q2と、を備えている。第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。nチャネルMOSFETである第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のそれぞれのドレイン・ソース間には、寄生ダイオードが形成されている。そして、第1スイッチング素子Q1のドレインは、正極の第2端子T21に接続されている。第1スイッチング素子Q1のソースは、第2スイッチング素子Q2のドレインに接続されている。第2スイッチング素子Q2のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22に接続されている。ただし、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子であっても構わない。
【0022】
第2レグ22は、ハイサイドの第3スイッチング素子Q3と、ローサイドの第4スイッチング素子Q4と、を備えている。第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFETである。nチャネルMOSFETである第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のそれぞれのドレイン・ソース間には、寄生ダイオードが形成されている。そして、第3スイッチング素子Q3のドレインは、正極の第2端子T21に接続されている。第3スイッチング素子Q3のソースは、第4スイッチング素子Q4のドレインに接続されている。第4スイッチング素子Q4のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22に接続されている。ただし、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBTなどの半導体スイッチング素子であっても構わない。
【0023】
結合リアクトル1は、互いに磁気結合した個別リアクトルL11及び個別リアクトルL12を備える。結合リアクトル1では、個別リアクトルL11と個別リアクトルL12とが互いに逆極性に磁気結合している。例えば、個別リアクトルL11及び個別リアクトルL12のそれぞれの巻線は、1つの鉄心に対して互いに逆極性となるように巻回されている。具体的に、個別リアクトルL11の第1端(巻き終わり)は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の接続点P1に接続する。接続点P1は、第1スイッチング素子Q1のソースと第2スイッチング素子Q2のドレインとの接続点である。個別リアクトルL12の第1端(巻き始め)は、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4の接続点P2に接続する。接続点P2は、第3スイッチング素子Q3のソースと第4スイッチング素子Q4のドレインとの接続点である。個別リアクトルL11と個別リアクトルL12との結合係数は、1又は略1であることが好ましい。すなわち、結合係数が1に近い程好ましい。結合係数が1に近い程、結合リアクトル1の小型化を図ることができる。
【0024】
結合リアクトル1では、個別リアクトルL11の第2端(巻き始め)と個別リアクトルL12の第2端(巻き終わり)とは、接続点Paにおいて互いに接続されている。さらに、個別リアクトルL11及び個別リアクトルL12のそれぞれの第2端は、接続点Paにおいて共通リアクトルL2の第1端に接続されている。共通リアクトルL2の第2端は、正極の第1端子T11に接続されている。この個別リアクトルL11、個別リアクトルL12、及び共通リアクトルL2の構成は、密結合方式である。
【0025】
制御部3は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれ制御する駆動信号Yg1-Yg4を出力する。駆動信号Yg1は、第1スイッチング素子Q1をオンオフ駆動するための信号である。駆動信号Yg2は、第2スイッチング素子Q2をオンオフ駆動するための信号である。駆動信号Yg3は、第3スイッチング素子Q3をオンオフ駆動するための信号である。駆動信号Yg4は、第4スイッチング素子Q4をオンオフ駆動するための信号である。例えば、制御部3は、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3を駆動するハイサイドドライバと、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4を駆動するローサイドドライバと、ハイサイドドライバ及びローサイドドライバを制御するマイクロコントローラと、を有している。
【0026】
なお、制御部3は、プログラムを実行することによって、制御部3の機能の少なくとも一部を実現するコンピュータシステムを備えることが好ましい。コンピュータシステムは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、若しくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータシステムが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、非一時的記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して非一時的記録媒体に供給されてもよい。
【0027】
第1電流センサ41は、変流器(Current transformer)又はシャント抵抗などを有する。第1電流センサ41は、個別リアクトルL11の第1端と第1レグ21の接続点P1との間に設けられて、個別リアクトル電流IL11の瞬時値を測定する。第1電流センサ41は、個別リアクトル電流IL11の瞬時値を電圧又は電流の大きさで表すアナログ信号を、第1センサ信号Ys1として生成する。個別リアクトル電流IL11は、個別リアクトルL11を流れる電流である。そして、第1電流センサ41は、第1センサ信号Ys1を制御部3へ出力する。なお、第1電流センサ41は、個別リアクトルL11から接続点P1に向かって流れる個別リアクトル電流IL11の瞬時値を正値とする。
【0028】
第2電流センサ42は、変流器又はシャント抵抗などを有する。第2電流センサ42は、個別リアクトルL12の第1端と第2レグ22の接続点P2との間に設けられて、個別リアクトル電流IL12の瞬時値を測定する。第2電流センサ42は、個別リアクトル電流IL12の瞬時値を電圧又は電流の大きさで表すアナログ信号を、第2センサ信号Ys2として生成する。個別リアクトル電流IL12は、個別リアクトルL12を流れる電流である。そして、第2電流センサ42は、第2センサ信号Ys2を制御部3へ出力する。なお、第2電流センサ42は、個別リアクトルL12から接続点P2に向かって流れる個別リアクトル電流IL12の瞬時値を正値とする。
【0029】
制御部3は、第1センサ信号Ys1及び第2センサ信号Ys2に基づいて、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれスイッチング制御する。すなわち、制御部3は、個別リアクトル電流IL11及び個別リアクトル電流IL12の各瞬時値に基づいて、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4を制御する。例えば、制御部3は、第1センサ信号Ys1に基づいて個別リアクトル電流IL11の平均値を取得し、第2センサ信号Ys2に基づいて個別リアクトル電流IL12の平均値を取得する。そして、制御部3は、個別リアクトル電流IL11、及び個別リアクトル電流IL12の各平均値をそれぞれの目標値に一致させるように、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれスイッチング制御する。すなわち、制御部3は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4の制御として、個別リアクトル電流IL11及び個別リアクトル電流IL12の各平均値をそれぞれの目標値に一致させる平均値制御を行う。
【0030】
(2.2)電力変換システムの電力変換動作
電力変換システムA1は、昇圧モード又は降圧モードで動作する2相のインタリーブ方式の電力変換システムである。
【0031】
電力変換システムA1では、第1レグ21、個別リアクトルL11、及び共通リアクトルL2は電圧変換回路VT1を構成し、第2レグ22、個別リアクトルL12、及び共通リアクトルL2は電圧変換回路VT2を構成する。すなわち、電力変換システムA1は、2相の電圧変換回路VT1、VT2を備える。電圧変換回路VT1、VT2は、昇圧動作又は降圧動作をそれぞれ行う。昇圧動作を行う電圧変換回路VT1、VT2は、蓄電池B1によって第1端子T11、T12に印加された直流電圧V1を直流電圧V2へ昇圧し、昇圧した直流電圧V2を第2端子T21、T22から電路W1へ出力する。降圧動作を行う電圧変換回路VT1、VT2は、第2端子T21、T22に印加された直流電圧V2を直流電圧V1へ降圧し、降圧した直流電圧V1を第1端子T11、T12から蓄電池B1へ出力する。
【0032】
制御部3は、第1レグ21の第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2、並びに第2レグ22の第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれオンオフ駆動することで、電力変換システムA1をインタリーブ方式で動作させる。
【0033】
制御部3は、第1レグ21及び第2レグ22の各動作を、予め決められたスイッチング周期に同期させる。スイッチング周期を360度(2π)とすると、第1レグ21と第2レグ22とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
【0034】
そして、制御部3は、昇圧モードで動作するときは、電圧変換回路VT1、VT2を昇圧チョッパ回路として動作させる。また、制御部3は、降圧モードで動作するときは、電圧変換回路VT1、VT2を降圧チョッパ回路として動作させる。
【0035】
例えば、第1レグ21の第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2は交互にオン、オフし、第2レグ22の第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4は交互にオン、オフしてもよい。この場合、第1レグ21の第1スイッチング素子Q1と第2レグ22の第3スイッチング素子Q3とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。第1レグ21の第2スイッチング素子Q2と第2レグ22の第4スイッチング素子Q4とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
【0036】
なお、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とが同時にオンしないように、第1スイッチング素子Q1がターンオンするタイミングと第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングとの間には、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との両方がオフするデッドタイムが設けられる。また、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4と同時にオンしないように、第3スイッチング素子Q3がターンオンするタイミングと第4スイッチング素子Q4がターンオンするタイミングとの間には、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との両方がオフするデッドタイムが設けられる。
【0037】
あるいは、昇圧モードで動作する場合、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3をオフ状態に維持し、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4をオンオフ駆動してもよい。この場合、第2スイッチング素子Q2と第4スイッチング素子Q4とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。降圧モードで動作する場合、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4をオフ状態に維持し、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3をオンオフ駆動してもよい。この場合、第1スイッチング素子Q1と第3スイッチング素子Q3とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
【0038】
また、電力変換システムA1は、昇圧動作及び降圧動作の両方を行う双方向の電力変換システム以外に、昇圧動作及び降圧動作のいずれか一方のみを行う単方向の電力変換システムであってもよい。
【0039】
上述の電力変換システムA1では、共通リアクトルL2を流れる共通リアクトル電流IL2に含まれるリプル成分は、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]に依存する。具体的に、インダクタンス値[L2]が大きい程、共通リアクトル電流IL2のリプル成分は低減し、インダクタンス値[L2]が小さい程、共通リアクトル電流IL2のリプル成分は増大する。
【0040】
また、個別リアクトルL11を流れる個別リアクトル電流IL11の変化時の傾き(単位時間当たりの変化量の絶対値)は、個別リアクトルL11のインダクタンス値[L11]に依存する。個別リアクトルL12を流れる個別リアクトル電流IL12の変化時の傾きは、個別リアクトルL12のインダクタンス値[L12]に依存する。具体的に、インダクタンス値[L11]が大きい程、個別リアクトル電流IL11の変化時の傾きは小さくなり、インダクタンス値[L11]が小さい程、個別リアクトル電流IL11の変化時の傾きは大きくなる。また、インダクタンス値[L12]が大きい程、個別リアクトル電流IL12の変化時の傾きは小さくなり、インダクタンス値[L12]が小さい程、個別リアクトル電流IL12の変化時の傾きは大きくなる。
【0041】
そこで、電力変換システムA1では、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]を、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]よりも大きくする。言い換えると、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]を、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]より小さくする。この結果、電力変換システムA1は、共通リアクトル電流IL2のリプル成分を抑制しながら、スイッチング損失を抑えることができる。
【0042】
図2は、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]を、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]よりも大きくしたときの各部の波形を示す。具体的に、図2は、昇圧モードにおける個別リアクトル電流IL11、IL12、共通リアクトル電流IL2、スイッチ電流Iq2、スイッチ電圧Vq2、及び励磁電流Ieの各波形を示す。個別リアクトル電流IL11は、個別リアクトルL11を流れるリアクトル電流である。共通リアクトル電流IL2は、共通リアクトルL2を流れるリアクトル電流である。スイッチ電流Iq2は、スイッチング素子Q2を流れる電流である。スイッチ電圧Vq2は、スイッチング素子Q2のドレイン-ソース間の電圧である。励磁電流Ieは、結合リアクトル1の励磁電流であり、図1では個別リアクトルL11側から見た(接続点Paから接続点P1に向かって流れる)励磁電流である。
【0043】
第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングをタイミングt1とする。第4スイッチング素子Q4がターンオフするタイミングをタイミングt2とする。第4スイッチング素子Q4がターンオンするタイミングをタイミングt3とする。第2スイッチング素子Q2がターンオフするタイミングをタイミングt4とする。そして、タイミングt1-t4は、t1→t2→t3→t4→t1→………の順に繰り返される。例えばタイミングt1から次のタイミングt1までの期間が、スイッチング周期360度(2π)に相当する。タイミングt1とタイミングt3との間の位相差は180度(π)、タイミングt2とタイミングt4との間の位相差は180度(π)である。なお、第1スイッチング素子Q1は、第2スイッチング素子Q2と交互にオンオフしてもよいし、オフ状態を維持してもよい。第3スイッチング素子Q3は、第4スイッチング素子Q4と交互にオンオフしてもよいし、オフ状態を維持してもよい。
【0044】
個別リアクトル電流IL11は、第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングt1から徐々に増加し、第2スイッチング素子Q2がターンオフするタイミングt4から徐々に減少する。
【0045】
個別リアクトル電流IL12は、第4スイッチング素子Q4がターンオンするタイミングt3から徐々に増加し、第4スイッチング素子Q4がターンオフするタイミングt2から徐々に減少する。
【0046】
スイッチ電流Iq2は、第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングt1から徐々に増加し、第2スイッチング素子Q2がターンオフするタイミングt4で急峻に減少する。第2スイッチング素子Q2がオフされると、次のタイミングt1までスイッチ電流Iq2は0(ゼロ)A(又は略0A)を維持する。
【0047】
スイッチ電圧Vq2は、第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングt1で直流電圧V2から略0(ゼロ)Vまで急峻に低下する。第2スイッチング素子Q2がオンすると、スイッチ電圧Vq2は、次のタイミングt4まで略0Vを維持する。スイッチ電圧Vq2は、第2スイッチング素子Q2がターンオフするタイミングt4で急峻に上昇する。第2スイッチング素子Q2がオフすると、スイッチ電圧Vq2は、次のタイミングt1まで直流電圧V2を維持する。
【0048】
共通リアクトル電流IL2は、第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングt1から徐々に増加し、第4スイッチング素子Q4がターンオフするタイミングt2から徐々に減少する。そして、共通リアクトル電流IL2は、第4スイッチング素子Q4がターンオンするタイミングt3から徐々に増加し、第2スイッチング素子Q2がターンオフするタイミングt4から徐々に減少する。共通リアクトル電流IL2の変動が、共通リアクトル電流IL2のリプル成分に相当する。そこで、電力変換システムA1では、共通リアクトル電流IL2のリプル成分が仕様値(設計値)以下となるように、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]を決めている。
【0049】
励磁電流Ieは、タイミングt2からタイミングt3までの期間で増加し、タイミングt3からタイミングt4までの期間ではほぼ一定値となる。そして、励磁電流Ieは、タイミングt4からタイミングt1までの期間で減少し、タイミングt1からタイミングt2までの期間ではほぼ一定値となる。
【0050】
なお、スイッチング素子Q4を流れるスイッチ電流Iq4(図1参照)は、スイッチ電流Iq2の波形を180度(π)すらした波形とほぼ同じになる。また、スイッチング素子Q2のドレイン-ソース間の電圧であるスイッチ電圧Vq4(図1参照)は、スイッチ電圧Vq2の波形を180度(π)すらした波形とほぼ同じになる。
【0051】
また、タイミングt1-t4の順序、及び個別リアクトル電流IL11、IL12、共通リアクトル電流IL2、スイッチ電流Iq2、スイッチ電圧Vq2、及び励磁電流Ieなどの各波形は、昇圧比によって変動することがある。
【0052】
電力変換システムA1では、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]は、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]よりも大きい。すなわち、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]を、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]よりも小さくしている。したがって、タイミングt4以降において個別リアクトル電流IL11が減少する傾き(減少傾き:単位時間当たりの減少量の絶対値)は比較的大きくなり、タイミングt1における個別リアクトル電流IL11の値を小さくできる。この結果、タイミングt1においてターンオンする第2スイッチング素子Q2のスイッチング損失を抑えることができる。同様に、タイミングt2以降において個別リアクトル電流IL12が減少する傾き(減少傾き:単位時間当たりの減少量の絶対値)は比較的大きくなり、タイミングt3における個別リアクトル電流IL12の値を小さくできる。この結果、タイミングt3においてターンオンする第4スイッチング素子Q4のスイッチング損失を抑えることができる。
【0053】
一方、図3は、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]を、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]よりも大きくした比較例の各部の波形を示す。なお、図3のタイミングt11-t14は、図2のタイミングt1-t4にそれぞれ対応する。
【0054】
図3では、タイミングt14以降における個別リアクトル電流IL11の減少傾きは、図2のタイミングt4以降における個別リアクトル電流IL11の減少傾きよりも小さくなっている。この結果、図3のタイミングt11における個別リアクトル電流IL11の値は、図2のタイミングt1における個別リアクトル電流IL11の値よりも大きくなる。この結果、タイミングt11においてターンオンする第2スイッチング素子Q2のスイッチング損失が増大してしまう。なお、図3では、個別リアクトル電流IL12の波形を図示していないが、タイミングt13においてターンオンする第4スイッチング素子Q4のスイッチング損失も同様に増大してしまう。なお、図3における共通リアクトル電流IL2のリプル成分は、図2における共通リアクトル電流IL2のリプル成分とほぼ同じである。
【0055】
このように、電力変換システムA1では、インダクタンス値[L11]、[L12]をインダクタンス値[L2]よりも小さくすることで、共通リアクトル電流IL2のリプル成分を抑制しながら、昇圧モードにおける第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4の各スイッチング損失を抑えることができる。
【0056】
なお、電力変換システムA1は、降圧モードで動作するとき、直流電圧V2を直流電圧V1に降圧して、直流電圧V1で蓄電池B1を充電する。この場合、電力変換システムA1は、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]を、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]よりも大きくすることで、降圧モードにおいてターンオンする第1スイッチング素子Q1のスイッチング損失、及びターンオンする第3スイッチング素子Q3のスイッチング損失を抑えることができる。すなわち、電力変換システムA1は、共通リアクトル電流IL2のリプル成分を抑制しながら、降圧モードにおける第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3の各スイッチング損失を抑えることができる。
【0057】
(2.3)臨界モード
図2では、制御部3は、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4を電流臨界モードでターンオンさせている。
【0058】
具体的に、制御部3は、タイミングt4において第2スイッチング素子Q2をターンオフさせた後、個別リアクトル電流IL11が0(ゼロ)Aにまで減少したタイミングをタイミングt1とする。すなわち、制御部3は、個別リアクトル電流IL11が0Aにまで低下したタイミングt1において、第2スイッチング素子Q2をターンオンさせる(電流臨界モード)。したがって、タイミングt1においてターンオンする第2スイッチング素子Q2のスイッチング損失は更に抑えられる。
【0059】
また、制御部3は、タイミングt2において第4スイッチング素子Q4をターンオフさせた後、個別リアクトル電流IL12が0(ゼロ)Aにまで減少したタイミングをタイミングt3とする(電流臨界モード)。すなわち、制御部3は、個別リアクトル電流IL12が0Aにまで減少したタイミングt3において、第4スイッチング素子Q4をターンオンさせる。したがって、タイミングt3においてターンオンする第4スイッチング素子Q4のスイッチング損失は更に抑えられる。
【0060】
また、電力変換システムA1は、降圧モードで動作するとき、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3を電流臨界モードでターンオンさせる。この結果、ターンオンする第1スイッチング素子Q1のスイッチング損失、及びターンオンする第3スイッチング素子Q3のスイッチング損失を抑えることができる。
【0061】
制御部3は、電流臨界モードで動作するために、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4のスイッチング周波数を制御することが好ましい。具体的に、制御部3は、出力電力が増加するにつれてスイッチング周波数を低下させ、出力電力が減少するにつれてスイッチング周波数を上昇させる。例えば、制御部3は、第1レグ21を介して供給可能な出力電力の全範囲に亘ってスイッチング周波数を制御することで、第1レグ21を電流臨界モードで動作させる。制御部3は、第2レグ22を介して供給可能な出力電力の全範囲に亘ってスイッチング周波数を制御することで、第2レグ22を電流臨界モードで動作させる。このように、制御部3がスイッチング周波数を制御することで、電流臨界モードでの動作を容易に実現することができる。
【0062】
(2.4)ゼロボルトスイッチング
制御部3は、昇圧モードにおいて、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4のゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。制御部3は、降圧モードにおいて、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3のゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。
【0063】
なお、以下のゼロボルトスイッチングの説明では、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とは交互にオン、オフし、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4とは交互にオン、オフするものとする。
【0064】
図4は、昇圧モードにおいて第2スイッチング素子Q2のゼロボルトスイッチングを行ったときの各部の波形を示す。図4は、共通リアクトル電流IL2、個別リアクトル電流IL11、スイッチ電流Iq1、スイッチ電流Iq2、スイッチ電圧Vq2、駆動信号Yg1、駆動信号Yg2の各波形を示す。なお、スイッチ電流Iq1は、スイッチング素子Q1を流れる電流である(図1参照)。
【0065】
タイミングt4において駆動信号Yg2がHレベルからLレベルに遷移すると、デッドタイムが経過した後に、駆動信号Yg1がLレベルからHレベルに遷移する。駆動信号Yg2がHレベルからLレベルに遷移すると第2スイッチング素子Q2はオフし、駆動信号Yg1がLレベルからHレベルに遷移すると第1スイッチング素子Q1はオンする。第2スイッチング素子Q2がオフすると、デッドタイムでは個別リアクトル電流IL11が第1スイッチング素子Q1の寄生ダイオードを流れ、デッドタイムが経過した後では個別リアクトル電流IL11が第1スイッチング素子Q1を流れる。第1スイッチング素子Q1を流れる個別リアクトル電流IL11は、スイッチ電流Iq1に相当する。スイッチ電流Iq1は、タイミングt4で急峻に上昇した後、徐々に減少する。
【0066】
そして、電流臨界モードでは、個別リアクトル電流IL11(スイッチ電流Iq1)が0A以下に減少すると、駆動信号Yg1がHレベルからLレベルに遷移して(タイミングta)、第1スイッチング素子Q1がオフする。第1スイッチング素子Q1がオフしたとき、スイッチ電流Iq1は負値になっているので、第2スイッチング素子Q2のドレインに蓄積された電荷が放電され、スイッチ電圧Vq2は直流電圧V2から急峻に低下する(図4のエリア81内を参照)。そして、制御部3は、スイッチ電圧Vq2が0Vになるタイミングをタイミングt1とし、タイミングt1で第2スイッチング素子Q2をターンオンさせる。このように、制御部3は、第2スイッチング素子Q2をターンさせるときに、ゼロボルトスイッチングを行うことができる。
【0067】
電力変換システムA1では、インダクタンス値[L11]、[L12]をインダクタンス値[L2]よりも小さくしたことで、個別リアクトル電流IL11の減少傾きが大きくなり、第2スイッチング素子Q2のゼロボルトスイッチングを容易に実現できる。
【0068】
また、制御部3は、昇圧モードにおいて第4スイッチング素子Q4をターンさせるときにも、第2スイッチング素子Q2と同様にゼロボルトスイッチングを行う。このときも、電力変換システムA1では、インダクタンス値[L11]、[L12]をインダクタンス値[L2]よりも小さくしたことで、個別リアクトル電流IL12の減少傾きが大きくなり、第4スイッチング素子Q4のゼロボルトスイッチングを容易に実現できる。
【0069】
一方、図5は、比較例の各部の波形を示す。比較例では、個別リアクトルL11、L12のそれぞれのインダクタンス値[L11]、[L12]を、共通リアクトルL2のインダクタンス値[L2]よりも大きくして、ハードスイッチングを行う。なお、図5のタイミングt11、t14は、図4のタイミングt1、t4にそれぞれ対応する。
【0070】
図5では、タイミングt14以降における個別リアクトル電流IL11の減少傾きは、図4のタイミングt4以降における個別リアクトル電流IL11の減少傾きよりも小さくなっている。そこで、第2スイッチング素子Q2は、タイミングt11において個別リアクトル電流IL11が流れているにも関わらずターンオンするハードスイッチングを行う。図5では、タイミングt11より前のタイミングtbにおいて駆動信号Yg1がHレベルからLレベルに遷移して、第1スイッチング素子Q1がオフする。第1スイッチング素子Q1がオフしたとき、スイッチ電流Iq1は正値であるので、第2スイッチング素子Q2のドレインに蓄積された電荷が放電されず、スイッチ電圧Vq2は低下せずに直流電圧V2をほぼ維持する(図5のエリア82内を参照)。制御部3は、スイッチ電圧Vq2が直流電圧V2を維持しているときに第2スイッチング素子Q2をターンオンさせるハードスイッチングを行う。この結果、タイミングt11においてターンオンする第2スイッチング素子Q2のスイッチング損失が増大してしまう。なお、制御部3は、第4スイッチング素子Q4のターンオンも同様にハードスイッチングを行い、ターンオンする第4スイッチング素子Q4のスイッチング損失も同様に増大する。
【0071】
上述のように、電力変換システムA1では、昇圧モードにおいて第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行うことで、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4の各スイッチング損失は更に抑えられる。
【0072】
また、電力変換システムA1は、降圧モードで動作する場合、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。この結果、ターンオンする第1スイッチング素子Q1のスイッチング損失、及びターンオンする第3スイッチング素子Q3のスイッチング損失を抑えることができる。
【0073】
制御部3は、ゼロボルトスイッチングを行うために、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4のスイッチング周波数を制御することが好ましい。具体的に、制御部3は、出力電力が増加するにつれてスイッチング周波数を低下させ、出力電力が減少するにつれてスイッチング周波数を上昇させる。例えば、制御部3は、第1レグ21を介して供給可能な出力電力の全範囲に亘ってスイッチング周波数を制御することで、第1レグ21においてゼロボルトスイッチングを行う。制御部3は、第2レグ22を介して供給可能な出力電力の全範囲に亘ってスイッチング周波数を制御することで、第2レグ22においてゼロボルトスイッチングを行う。このように、制御部3がスイッチング周波数を制御することで、ゼロボルトスイッチングを容易に実現することができる。
【0074】
(3)第1変形例
制御部3は、第1レグ21及び第2レグ22のそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、第1レグ21及び第2レグ22のうち出力電力が電力閾値以下となるレグにおいて、スイッチング素子を電流臨界モードでターンオンさせることが好ましい。
【0075】
また、制御部3は、第1レグ21及び第2レグ22のそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、第1レグ21及び第2レグ22のうち出力電力が電力閾値以下となるレグにおいて、スイッチング素子をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。
【0076】
具体的に、制御部3は、第1センサ信号Ys1に基づく個別リアクトル電流IL11の代表値(平均値、又は実効値など)を、第1レグ21の出力電力の検出値とする。また、制御部3は、第2センサ信号Ys2に基づく個別リアクトル電流IL12の代表値(平均値、又は実効値など)を、第2レグ22の出力電力の検出値とする。
【0077】
図6は、昇圧モードにおける個別リアクトル電流IL11の波形Y1、Y2、Y3を示す。波形Y1、Y2、Y3は、第1レグ21における互いに異なる3つの出力電力にそれぞれ対応する。波形Y1は、出力電力が小さい軽負荷時の個別リアクトル電流IL11の波形である。波形Y2は、出力電力が中程度の中負荷時の個別リアクトル電流IL11の波形である。波形Y3は、出力電力が大きい重負荷時の個別リアクトル電流IL11の波形である。すなわち、第1レグ21の出力電力が大きくなるにつれて、個別リアクトル電流IL11の波形はY1→Y2→Y3の順に変化し、個別リアクトル電流IL11は徐々に増大する。
【0078】
そこで、制御部3は、昇圧モードにおいて、第1レグ21の出力電力の検出値を予め決められた電力閾値と比較し、第1レグ21の出力電力の検出値が電力閾値以下であれば、第2スイッチング素子Q2を電流臨界モードでターンオンさせ、第2スイッチング素子Q2をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0079】
制御部3は、昇圧モードにおいて、第2レグ22の出力電力の検出値を予め決められた電力閾値と比較し、第2レグ22の出力電力の検出値が電力閾値以下であれば、第4スイッチング素子Q4を電流臨界モードでターンオンさせ、第4スイッチング素子Q4をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0080】
また、制御部3は、降圧モードにおいて、第1レグ21の出力電力の検出値が電力閾値以下であれば、第1スイッチング素子Q1を電流臨界モードでターンオンさせ、第1スイッチング素子Q1をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0081】
制御部3は、降圧モードにおいて第2レグ22の出力電力の検出値が電力閾値以下であれば、第3スイッチング素子Q3を電流臨界モードでターンオンさせ、第3スイッチング素子Q3をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0082】
上述のように、制御部3は、出力電力の小さな領域で電流臨界モードでの動作、及びゼロボルトスイッチングを行うことで、軽負荷時の効率改善を図ることができる。
【0083】
また、全電力範囲において電流臨界モードでの動作、及びゼロボルトスイッチングを行う構成に比べて、スイッチング制御の簡易化を図ることができる。例えば、制御部3は、出力電力が増加するにつれてスイッチング周波数を低下させ、出力電力が減少するにつれてスイッチング周波数を上昇させる。そこで、制御部3は、スイッチング周波数が下限周波数以上であれば、軽負荷であると判断して、スイッチング周波数を下限周波数以上、上限周波数以下の範囲内で可変とすることで電流臨界モードでの動作、及びゼロボルトスイッチングを行う。制御部3は、スイッチング周波数が下限周波数にまで低下すると、スイッチング周波数を下限周波数に固定する。
【0084】
(4)第2変形例
制御部3は、第1レグ21及び第2レグ22のそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、第1レグ21及び第2レグ22のうち出力電力が電力閾値以上となるレグにおいて、スイッチング素子を電流臨界モードでターンオンさせることが好ましい。
【0085】
また、制御部3は、第1レグ21及び第2レグ22のそれぞれを介して供給される出力電力を検出し、第1レグ21及び第2レグ22のうち出力電力が電力閾値以上となるレグにおいて、スイッチング素子をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。
【0086】
具体的に、制御部3は、第1センサ信号Ys1に基づく個別リアクトル電流IL11の代表値(平均値、又は実効値など)を、第1レグ21の出力電力の検出値とする。また、制御部3は、第2センサ信号Ys2に基づく個別リアクトル電流IL12の代表値(平均値、又は実効値など)を、第2レグ22の出力電力の検出値とする。
【0087】
そして、制御部3は、昇圧モードにおいて、第1レグ21の出力電力の検出値を予め決められた電力閾値と比較し、第1レグ21の出力電力の検出値が電力閾値以上であれば、スイッチング素子Q2を電流臨界モードでターンオンさせ、スイッチング素子Q2をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0088】
制御部3は、昇圧モードにおいて、第2レグ22の出力電力の検出値を予め決められた電力閾値と比較し、第2レグ22の出力電力の検出値が電力閾値以上であれば、スイッチング素子Q4を電流臨界モードでターンオンさせ、スイッチング素子Q4をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0089】
また、制御部3は、降圧モードにおいて、第1レグ21の出力電力の検出値が電力閾値以上であれば、第1スイッチング素子Q1を電流臨界モードでターンオンさせ、第1スイッチング素子Q1をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0090】
制御部3は、降圧モードにおいて、第2レグ22の出力電力の検出値が電力閾値以上であれば、第3スイッチング素子Q3を電流臨界モードでターンオンさせ、第3スイッチング素子Q3をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0091】
上述のように、出力電力の大きな領域で電流臨界モードでの動作、及びゼロボルトスイッチングを行うことで、重負荷時の効率改善を図ることができる。
【0092】
また、全電力範囲において電流臨界モードでの動作、及びゼロボルトスイッチングを行う構成に比べて、スイッチング制御の簡易化を図ることができる。例えば、制御部3は、出力電力が増加するにつれてスイッチング周波数を低下させ、出力電力が減少するにつれてスイッチング周波数を上昇させる。そこで、制御部3は、スイッチング周波数が上限周波数以下であれば、重負荷であると判断して、スイッチング周波数を下限周波数以上、上限周波数以下の範囲内で可変とすることで電流臨界モードでの動作、及びゼロボルトスイッチングを行う。制御部3は、スイッチング周波数が上限周波数にまで上昇すると、スイッチング周波数を上限周波数に固定する。
【0093】
また、第2変形例における電力閾値は、最大電力点における出力電力であってもよい。
【0094】
(5)第3変形例
制御部3は、蓄電池B1の充電時及び放電時の少なくとも一方において、直流電圧V1の変動の傾きが一定範囲に収まっていれば、スイッチング素子をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。
【0095】
直流電圧V1は、充電時及び放電時には時間経過に伴って変動する。図7は、放電時における蓄電池B1の直流電圧V1の時間変化を示す放電曲線を示す。直流電圧V1は、放電開始直後及び放電終了前に急激に低下し、放電開始直後と放電終了前の間の期間Tbは比較的平坦な特性となる。すなわち、期間Tbにおける直流電圧V1の変動の傾きは、期間Tbの前後における直流電圧V1の変動の傾きよりも小さくなる。すなわち、期間Tbにおける直流電圧V1の変動の傾きは一定範囲に収まっている。蓄電池B1の充電時も同様に、直流電圧V1は、充電開始直後と充電終了前の間では、比較的平坦な特性となる。
【0096】
第3変形例の制御部3は、蓄電池B1の直流電圧V1を検出する電圧検出部の検出結果に基づいて、直流電圧V1の変動の傾きが予め決められた一定範囲に収まっているか否かを判定する。
【0097】
そして、制御部3は、昇圧モードで動作して蓄電池B1を放電させるとき、直流電圧V1の変動の傾きが一定範囲に収まっていれば、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4をターンオンさせるときに上述のゼロボルトスイッチングを行い、直流電圧V1の変動の傾きが一定範囲に収まっていなければ、ゼロボルトスイッチングを行わない。
【0098】
また、制御部3は、降圧モードで動作して蓄電池B1を充電するとき、直流電圧V1の変動の傾きが一定範囲に収まっていれば、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3をターンオンさせるときに上述のゼロボルトスイッチングを行い、直流電圧V1の変動の傾きが一定範囲に収まっていなければ、ゼロボルトスイッチングを行わない。
【0099】
すなわち、直流電圧V1の時間変化が比較的平坦な特性となる期間にゼロボルトスイッチングが行われ、直流電圧V1の時間変化が大きくなる期間にはゼロボルトスイッチングが行われない。この結果、ゼロボルトスイッチングを行うためのスイッチング制御を安定して行うことができる。
【0100】
(6)電力変換システムの周辺構成
電力変換システムA1は、例えば図8に示す電力システムPS1に用いられる。
【0101】
電力システムPS1は、太陽電池モジュール91、パワーコンディショナ92、蓄電コンバータ93、及び蓄電池ユニット94を備えて、商用の電力系統95に接続している。パワーコンディショナ92は、太陽電池モジュール91、蓄電コンバータ93、及び電力系統95に接続している。蓄電池ユニット94は、蓄電コンバータ93に接続している。
【0102】
太陽電池モジュール91は、太陽光によって発電する太陽電池セルを有し、直流の発電電力をパワーコンディショナ92へ供給する。パワーコンディショナ92は、太陽電池モジュール91から供給される発電電力、及び電力系統95から供給される交流の商用電力を直流電力(以降、中間電力と称す)に変換し、中間電力を蓄電コンバータ93に供給する。蓄電コンバータ93は、中間電力を直流の充電電力に変換し、充電電力を蓄電池ユニット94に供給する。蓄電池ユニット94は蓄電池を有し、蓄電池は、蓄電コンバータ93から供給される充電電力によって充電される。また、蓄電コンバータ93は、蓄電池ユニット94の放電電力を直流の中間電力に変換し、中間電力をパワーコンディショナ92に供給する。パワーコンディショナ92は、中間電力を交流の逆潮流電力に変換し、逆潮流電力を電力系統95に供給する。電力系統95には負荷96が接続されており、負荷96には、電力系統95の商用電力、及びパワーコンディショナ92の逆潮流電力が供給される。
【0103】
上述の電力変換システムA1は、蓄電コンバータ93としてそれぞれ機能する。すなわち、電力変換システムA1は、パワーコンディショナ92から供給される中間電力を充電電力に変換したり、蓄電池ユニット94の放電電力を中間電力に変換したりする。この場合、電力変換システムA1の第1端子T11、T12は蓄電池ユニット94に接続され、第2端子T21、T22はパワーコンディショナ92に接続される。すなわち、電力変換システムA1は、蓄電池ユニット94の直流電圧V1を昇圧した直流電圧V2をパワーコンディショナ92へ出力する。また、電力変換システムA1は、パワーコンディショナ92から出力された直流電圧V2を降圧した直流電圧V1を蓄電池ユニット94へ出力する。
【0104】
(7)他の変形例
電力変換システムA1は、降圧モードで動作するときも、上述の昇圧モードで動作しているときと同様の効果を奏し得る。
【0105】
制御部3は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4の制御として、個別リアクトル電流IL11及び個別リアクトル電流IL12の各実効値をそれぞれの目標値に一致させる実効値制御を行ってもよい。
【0106】
制御部3は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4の制御として、個別リアクトル電流IL11及び個別リアクトル電流IL12の各ピーク値をそれぞれの目標値に一致させるピーク値制御を行ってもよい。
【0107】
また、電力変換システムは、電圧変換回路VT1、VT2の組を複数備えて、インタリーブ方式で動作してもよい。この場合、複数の電力変換回路は、互いに位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
【0108】
電力変換システムは、図8に示す電力システムPS1に用いられる構成に限定されず、例えば電動車両などの他のシステムに用いられてもよい。
【0109】
(8)まとめ
以上のように、実施形態に係る第1の態様の電力変換システム(A1)は、結合リアクトル(1)と、複数のレグ(21、22)と、共通リアクトル(L2)と、を備える。結合リアクトル(1)は、互いに磁気結合された複数の個別リアクトル(L11、L12)を有し、複数の個別リアクトル(L11、L12)のそれぞれの端部が互いに接続する。複数のレグ(21、22)は、複数の個別リアクトル(L11、L12)にそれぞれ対応し、複数の個別リアクトル(L11、L12)のうち対応する個別リアクトルを流れるリアクトル電流(IL11、IL12)を導通、遮断するスイッチング素子(Q1-Q4)をそれぞれ有する。共通リアクトル(L2)は、複数の個別リアクトル(L11、L12)の接続点(Pa)に接続する。共通リアクトル(L2)のインダクタンス値([L2])は、複数の個別リアクトル(L11、L12)のそれぞれのインダクタンス値([L11]、[L12])よりも大きい。
【0110】
上述の電力変換システム(A1)は、リアクトル電流のリプル成分を抑制しながら、スイッチング損失を抑えることができる。
【0111】
実施形態に係る第2の態様の電力変換システム(A1)は、第1の態様において、スイッチング素子(Q1-Q4)を制御する制御部(3)を更に備えることが好ましい。
【0112】
上述の電力変換システム(A1)は、スイッチング素子(Q1-Q4)を制御することができる。
【0113】
実施形態に係る第3の態様の電力変換システム(A1)では、第2の態様において、制御部(3)は、スイッチング素子(Q1-Q4)を電流臨界モードでターンオンさせることが好ましい。
【0114】
上述の電力変換システム(A1)は、ターンオンするスイッチング素子(Q1-Q4)のスイッチング損失を更に抑えることができる。
【0115】
実施形態に係る第4の態様の電力変換システム(A1)では、第3の態様において、制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のそれぞれを介して供給される出力電力を検出する。制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のうち出力電力が電力閾値以下となるレグ(21、22)において、スイッチング素子(Q1-Q4)を電流臨界モードでターンオンさせることが好ましい。
【0116】
上述の電力変換システム(A1)は、軽負荷時の効率改善を図ることができる。
【0117】
実施形態に係る第5の態様の電力変換システム(A1)では、第3の態様において、制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のそれぞれを介して供給される出力電力を検出する。制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のうち出力電力が電力閾値以上となるレグ(21、22)において、スイッチング素子(Q1-Q4)を電流臨界モードでターンオンさせることが好ましい。
【0118】
上述の電力変換システム(A1)は、重負荷時の効率改善を図ることができる。
【0119】
実施形態に係る第6の態様の電力変換システム(A1)では、第2乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、制御部(3)は、スイッチング素子(Q1-Q4)のゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。
【0120】
上述の電力変換システム(A1)は、ターンオンするスイッチング素子(Q1-Q4)のスイッチング損失を更に抑えることができる。
【0121】
実施形態に係る第7の態様の電力変換システム(A1)では、第6の態様において、制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のそれぞれを介して供給される出力電力を検出する。制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のうち出力電力が電力閾値以下となるレグ(21、22)において、スイッチング素子(Q1-Q4)をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。
【0122】
上述の電力変換システム(A1)は、軽負荷時の効率改善を図ることができる。
【0123】
実施形態に係る第8の態様の電力変換システム(A1)では、第6の態様において、制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のそれぞれを介して供給される出力電力を検出する。制御部(3)は、複数のレグ(21、22)のうち出力電力が電力閾値以上となるレグ(21、22)において、スイッチング素子(Q1-Q4)をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行うことが好ましい。
【0124】
上述の電力変換システム(A1)は、重負荷時の効率改善を図ることができる。
【0125】
実施形態に係る第9の態様の電力変換システム(A1)では、第3乃至第8の態様のいずれか1つにおいて、制御部(3)は、スイッチング素子(Q1-Q4)のスイッチング周波数を制御することが好ましい。
【0126】
上述の電力変換システム(A1)は、電流臨界モードでの動作及びゼロボルトスイッチングの少なくとも一方を容易に実現することができる。
【0127】
実施形態に係る第10の態様の電力変換システム(A1)では、第1乃至第9の態様のいずれか1つにおいて、複数の個別リアクトル(L11、L12)の互いの結合係数は1であることが好ましい。
【0128】
上述の電力変換システム(A1)は、結合リアクトル(1)の小型化を図ることができる。
【0129】
実施形態に係る第11の態様の電力変換システム(A1)では、第1乃至第10の態様のいずれか1つにおいて、複数のレグ(21、22)のそれぞれは、結合リアクトル(1)及び共通リアクトル(L2)とともに電圧変換回路(VT1、VT2)を構成することが好ましい。電圧変換回路(VT1、VT2)のそれぞれは、蓄電池(B1)の直流電圧(V1)を電圧変換する。
【0130】
上述の電力変換システム(A1)は、蓄電池B1の充電及び放電の少なくとも一方を行うことができる。
【0131】
実施形態に係る第12の態様の電力変換システム(A1)では、第11の態様において、スイッチング素子(Q1-Q4)を制御する制御部(3)を更に備えることが好ましい。制御部(3)は、蓄電池(B1)の充電時及び放電時の少なくとも一方において、直流電圧(V1)の変動の傾きが一定範囲に収まっていれば、スイッチング素子(Q1-Q4)をターンオンさせるときにゼロボルトスイッチングを行う。
【0132】
上述の電力変換システム(A1)は、ゼロボルトスイッチングを行うためのスイッチング制御を安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0133】
A1 電力変換システム
1 結合リアクトル
21 第1レグ(レグ)
22 第2レグ(レグ)
3 制御部
L11、L12 個別リアクトル
L2 共通リアクトル
Q1 第1スイッチング素子(スイッチング素子)
Q2 第2スイッチング素子(スイッチング素子)
Q3 第3スイッチング素子(スイッチング素子)
Q4 第4スイッチング素子(スイッチング素子)
Pa 接続点
VT1、VT2 電圧変換回路
B1 蓄電池
IL11、IL12 個別リアクトル電流(リアクトル電流)
V1 直流電圧
[L2] 共通リアクトルのインダクタンス値
[L11]、[L12] 個別リアクトルのインダクタンス値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8