(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171835
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 H
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089085
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 貴大
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB89
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730FD41
5H730FG01
5H730FG10
5H730XX02
5H730XX11
5H730XX22
5H730XX35
5H730XX41
(57)【要約】
【課題】 制御部においてリアクトル部の偏磁を検出するための信号処理を簡略化することができる電力変換システムを提供する。
【解決手段】 電力変換システムA1では、制御部5は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4を制御する。差分回路3は、第1リアクトルL1を流れる第1リアクトル電流IL1と第2リアクトルL2を流れる第2リアクトル電流IL2との差分に基づく差分信号Y1を生成する。ピークホールド回路4は、差分信号Y1を入力されて、差分のピーク値を示すピーク信号Y2を制御部5へ出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リアクトル及び第2リアクトルを有し、前記第1リアクトルの両端のうち一方と前記第2リアクトルの両端のうち一方とが互いに接続したリアクトル部と、
第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との直列回路を有し、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点が前記第1リアクトルの前記両端のうち他方に接続した第1レグと、
第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との直列回路を有して、前記第1レグに並列接続され、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点が前記第2リアクトルの前記両端のうち他方に接続した第2レグと、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、及び前記第4スイッチング素子を制御する制御部と、
前記第1リアクトルを流れる第1リアクトル電流と前記第2リアクトルを流れる第2リアクトル電流との差分に基づく差分信号を生成する差分回路と、
前記差分信号を入力されて、前記差分のピーク値を示すピーク信号を前記制御部へ出力するピークホールド回路と、を備える
電力変換システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1リアクトル電流及び前記第2リアクトル電流の各測定値に基づいて、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、及び前記第4スイッチング素子を制御する
請求項1の電力変換システム。
【請求項3】
前記第1リアクトルと前記第2リアクトルとは、互いに逆極性に磁気結合した結合リアクトルを構成する
請求項1の電力変換システム。
【請求項4】
前記第1リアクトルと前記第2リアクトルとの接続点に接続した第3リアクトルを更に備える
請求項1の電力変換システム。
【請求項5】
前記ピークホールド回路は、所定のタイミングにおいて前記ピーク信号をリセットする
請求項1の電力変換システム。
【請求項6】
前記差分回路は、
前記第1リアクトル電流から前記第2リアクトル電流を引いた第1差分を示す第1差分信号を、前記差分信号として生成する第1差分器と、
前記第2リアクトル電流から前記第1リアクトル電流を引いた第2差分を示す第2差分信号を、前記差分信号として生成する第2差分器と、を備える
請求項1の電力変換システム。
【請求項7】
前記ピークホールド回路は、
前記第1差分信号を入力され、前記第1差分のピーク値を示す第1ピーク信号を前記ピーク信号として前記制御部へ出力する第1ピークホールド回路と、
前記第2差分信号を入力され、前記第2差分のピーク値を示す第2ピーク信号を前記ピーク信号として前記制御部へ出力する第2ピークホールド回路と、を備える
請求項6の電力変換システム。
【請求項8】
前記差分回路は、
前記第1差分器の出力に接続された第1ダイオードと、
前記第2差分器の出力に接続された第2ダイオードと、を更に備え、
前記ピークホールド回路は、
前記第1ダイオードを介して前記第1差分信号を取得し、
前記第2ダイオードを介して前記第2差分信号を取得する
請求項6の電力変換システム。
【請求項9】
前記差分回路は、前記第1リアクトル電流及び前記第2リアクトル電流の一方から他方を引いた値の絶対値を示す信号を、前記差分信号として生成する
請求項1の電力変換システム。
【請求項10】
前記ピークホールド回路は、サンプルホールド機能を有する集積回路である
請求項1の電力変換システム。
【請求項11】
前記第1リアクトル電流を測定する第1電流センサと、
前記第2リアクトル電流を測定する第2電流センサと、を更に備える
請求項1の電力変換システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記ピーク信号に基づいて、前記リアクトル部を流れる励磁電流の偏りを検出する
請求項1の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、低圧側と高圧側の間で直流変換を行う多重チョッパ装置を開示している。この多重チョッパ装置は、低圧側に接続されたリアクトル、及び並列接続された2台のチョッパ装置を備える。チョッパ装置は、リアクトルに接続したスイッチ素子及びダイオードからなる。多重チョッパ装置は、各チョッパ装置のスイッチ素子を互いに位相差をもたせてオン、オフすることにより、低圧側と高圧側の間で直流変換を行う。
【0003】
多重チョッパ装置は、電流検出器、電流波形処理部、及び制御部を備える。電流検出器は、各チョッパ装置に接続しているリアクトルの配線に流れる電流の差を検出する。電流波形処理部は、電流検出器の検出電流の波形からリプル成分を取り除き、直流成分を電流偏差信号として生成する。
【0004】
制御部は、スイッチング周期設定及び各チョッパ装置の間の位相差設定を行うとともに、入出力電圧設定に基づいて、各チョッパ装置に対する所定のデューティをもつスイッチング信号を生成する。また、制御部は、電流偏差信号に基づいて、2台のチョッパ装置の間の電流アンバランス状態の向き(正負)と大きさを判定する。そして、制御部は、当該判定に基づいて2台のチョッパ装置の間の電流アンバランス状態を低減するように、スイッチング信号に対してデューティ補正を施し、デューティ補正後のスイッチング信号を各チョッパ装置に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電流偏差信号(差分信号)は、2台のチョッパ装置の間の電流アンバランス状態を検出するために用いられる。しかしながら、電流偏差信号は、各リアクトルの電流差の瞬時値を示すアナログ信号であり、制御部における電流偏差信号の処理が煩雑になっていた。
【0007】
本開示の目的は、制御部においてリアクトル部の偏磁を検出するための信号処理を簡略化することができる電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電力変換システムは、リアクトル部と、第1レグと、第2レグと、制御部と、差分回路と、ピークホールド回路と、を備える。前記リアクトル部は、第1リアクトル及び第2リアクトルを有し、前記第1リアクトルの両端のうち一方と前記第2リアクトルの両端のうち一方とが互いに接続する。前記第1レグは、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との直列回路を有し、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点が前記第1リアクトルの前記両端のうち他方に接続する。前記第2レグは、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との直列回路を有して、前記第1レグに並列接続され、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点が前記第2リアクトルの前記両端のうち他方に接続する。前記制御部は、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、及び前記第4スイッチング素子を制御する。前記差分回路は、前記第1リアクトルを流れる第1リアクトル電流と前記第2リアクトルを流れる第2リアクトル電流との差分に基づく差分信号を生成する。前記ピークホールド回路は、前記差分信号を入力されて、前記差分のピーク値を示すピーク信号を前記制御部へ出力する。
【発明の効果】
【0009】
本開示では、制御部においてリアクトル部の偏磁を検出するための信号処理を簡略化することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力変換システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の電力変換システムの昇圧モードにおける第1リアクトル電流、第2リアクトル電流、及び第1リアクトル側から見た励磁電流の各波形を示す。
【
図3】
図3は、同上の電力変換システムの昇圧モードにおける第1リアクトル電流、第2リアクトル電流、及び第1リアクトル側から見た励磁電流の各波形を示す。
【
図4】
図4は、同上の電力変換システムの昇圧モードにおける第1リアクトル電流、第2リアクトル電流、及び第1リアクトル側から見た励磁電流の各波形を示す。
【
図5】
図5は、同上の電力変換システムの昇圧モードにおける第1リアクトル電流、第2リアクトル電流、及び第1リアクトル側から見た励磁電流の各波形を示す。
【
図6】
図6は、同上の電力変換システムの昇圧モードにおける第1センサ信号、第2センサ信号、及び第1差分信号の各波形を示す。
【
図7】
図7は、同上の電力変換システムにおけるリアクトル部の偏磁検出を説明するための波形図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係る電力変換システムを示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第2変形例に係る電力変換システムを示すブロック図である。
【
図10】
図10は、同上の電力変換システムが備える絶対値回路を示す回路図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る電力変換システムが用いられる電力システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、一般に、電力変換システムに関する。より詳細には、インタリーブ(interleave)方式の電力変換システムに関する。
【0012】
なお、以下の実施形態は、本開示の実施形態の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。なお、以下の説明における「接続」は、「電気的に接続」を含み得る。
【0013】
(1)電力変換システムの概略
本実施形態の電力変換システムA1は、
図1に示す構成を備えて双方向の電力変換を行うインタリーブ方式の電力変換システムである。
【0014】
電力変換システムA1は、リアクトル部1と、第1レグ21と、第2レグ22と、制御部5と、差分回路3と、ピークホールド回路4と、を備える。
【0015】
リアクトル部1は、第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を有し、第1リアクトルL1の両端のうち一方と第2リアクトルL2の両端のうち一方とが互いに接続する。
【0016】
第1レグ21は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との直列回路を有し、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との接続点P1が第1リアクトルL1の両端のうち他方に接続する。
【0017】
第2レグ22は、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との直列回路を有し、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との接続点P2が第2リアクトルL2の両端のうち他方に接続する。
【0018】
制御部5は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4を制御する。
【0019】
差分回路3は、第1リアクトルL1を流れる第1リアクトル電流IL1と第2リアクトルL2を流れる第2リアクトル電流IL2との差分に基づく差分信号Y1を生成する。
【0020】
ピークホールド回路4は、差分信号Y1を入力されて、差分のピーク値を示すピーク信号Y2を制御部5へ出力する。
【0021】
上述の電力変換システムA1は、差分信号Y1をそのまま制御部5へ出力するのではなく、ピークホールド回路4で保持されたリアクトル電流の差分のピーク値を示すピーク信号Y2を制御部5へ出力する。したがって、電力変換システムA1は、上述の特許文献1のように各リアクトルの電流差の瞬時値を示すアナログの電流偏差信号に基づいて励磁電流を検出する構成に比べて、制御部5においてリアクトル部1の偏磁を検出するための信号処理を簡略化することができる。
【0022】
(2)詳細
(2.1)電力変換システムの構成
電力変換システムA1は、
図1に示すように、一対の第1端子T11、T12と、一対の第2端子T21、T22と、を備える。第1端子T11、T12は、蓄電池B1と接続され、第1端子T11、T12には、蓄電池B1の電池電圧である直流電圧V1が印加される。第1端子T11は、蓄電池B1の正極に接続される。第1端子T12は、蓄電池B1の負極に接続される。第2端子T21、T22は、一対の導体からなる電路W1と接続される。電路W1は直流電力を伝送する一対の導体であり、第2端子T21、T22には、電路W1の直流電圧V2が印加される。第2端子T21は、電路W1の正極に接続される。第2端子T22は、電路W1の負極に接続される。
【0023】
直流電圧V2は、直流電圧V1より大きい。電力変換システムA1は、蓄電池B1によって第1端子T11、T12に印加された直流電圧V1を直流電圧V2へ昇圧し、昇圧した直流電圧V2を第2端子T21、T22から電路W1へ出力する。すなわち、電力変換システムA1は、蓄電池B1から供給される直流電力を昇圧して電路W1に供給する。また、電力変換システムA1は、第2端子T21、T22に印加された直流電圧V2を直流電圧V1へ降圧し、降圧した直流電圧V1を第1端子T11、T12から蓄電池B1へ出力する。すなわち、電力変換システムA1は、電路W1から供給される直流電力を降圧することで蓄電池B1を充電する。
【0024】
電力変換システムA1は、リアクトル部1、第1レグ21、第2レグ22、差分回路3、ピークホールド回路4、制御部5、第3リアクトルL3、第1電流センサ61、第2電流センサ62、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2を備える。
【0025】
第1コンデンサC1は、第1端子T11、T12の間に接続される。第2コンデンサC2は、第2端子T21、T22の間に接続される。第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2は、平滑コンデンサとして機能し、例えば電解コンデンサで構成される。
【0026】
第1レグ21及び第2レグ22は、一対の第2端子T21、T22に対して並列接続されている。
【0027】
第1レグ21は、ハイサイドの第1スイッチング素子Q1と、ローサイドの第2スイッチング素子Q2と、を備えている。第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。nチャネルMOSFETである第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のそれぞれのドレイン・ソース間には、寄生ダイオードが形成されている。そして、第1スイッチング素子Q1のドレインは、正極の第2端子T21に接続されている。第1スイッチング素子Q1のソースは、第2スイッチング素子Q2のドレインに接続されている。第2スイッチング素子Q2のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22に接続されている。ただし、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子であっても構わない。
【0028】
第2レグ22は、ハイサイドの第3スイッチング素子Q3と、ローサイドの第4スイッチング素子Q4と、を備えている。第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4はそれぞれ、エンハンスメント形のnチャネルMOSFETである。nチャネルMOSFETである第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のそれぞれのドレイン・ソース間には、寄生ダイオードが形成されている。そして、第3スイッチング素子Q3のドレインは、正極の第2端子T21に接続されている。第3スイッチング素子Q3のソースは、第4スイッチング素子Q4のドレインに接続されている。第4スイッチング素子Q4のソースは、負極の第1端子T12及び負極の第2端子T22に接続されている。ただし、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4はそれぞれ、バイポーラトランジスタ、IGBTなどの半導体スイッチング素子であっても構わない。
【0029】
リアクトル部1は、互いに磁気結合した第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2を備える。すなわち、リアクトル部1は、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2とが互いに逆極性に磁気結合した結合リアクトルを構成する。例えば、結合リアクトルを構成する第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2のそれぞれの巻線は、1つの鉄心に対して互いに逆極性となるように巻回されている。具体的に、第1リアクトルL1の第1端(巻き終わり)は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の接続点P1に接続する。接続点P1は、第1スイッチング素子Q1のソースと第2スイッチング素子Q2のドレインとの接続点である。第2リアクトルL2の第1端(巻き始め)は、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4の接続点P2に接続する。接続点P2は、第3スイッチング素子Q3のソースと第4スイッチング素子Q4のドレインとの接続点である。
【0030】
結合リアクトル1では、第1リアクトルL1の第2端(巻き始め)と第2リアクトルL2の第2端(巻き終わり)とは、接続点Paにおいて互いに接続されている。さらに、第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2のそれぞれの第2端は、接続点Paにおいて第3リアクトルL3の第1端に接続されている。第3リアクトルL3の第2端は、正極の第1端子T11に接続されている。すなわち、電力変換システムA1は、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2との接続点Paに接続した第3リアクトルL3を更に備える。この第1リアクトルL1、第2リアクトルL2、及び第3リアクトルL3の構成は、密結合方式である。
【0031】
制御部5は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれ制御する駆動信号Yg1-Yg4を出力する。駆動信号Yg1は、第1スイッチング素子Q1をオンオフ駆動するための信号である。駆動信号Yg2は、第2スイッチング素子Q2をオンオフ駆動するための信号である。駆動信号Yg3は、第3スイッチング素子Q3をオンオフ駆動するための信号である。駆動信号Yg4は、第4スイッチング素子Q4をオンオフ駆動するための信号である。例えば、制御部5は、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3を駆動するハイサイドドライバと、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4を駆動するローサイドドライバと、ハイサイドドライバ及びローサイドドライバを制御するマイクロコントローラと、を有している。
【0032】
なお、制御部5は、プログラムを実行することによって、制御部5の機能の少なくとも一部を実現するコンピュータシステムを備えることが好ましい。コンピュータシステムは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、若しくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータシステムが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、非一時的記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して非一時的記録媒体に供給されてもよい。
【0033】
第1電流センサ61は、変流器(Current transformer)又はシャント抵抗などを有する。第1電流センサ61は、第1リアクトルL1の第1端と第1レグ21の接続点P1との間に設けられて、第1リアクトル電流IL1の瞬時値を測定する。第1電流センサ61は、第1リアクトル電流IL1の瞬時値を電圧又は電流の大きさで表すアナログ信号を、第1センサ信号Ys1として生成する。第1リアクトル電流IL1は、第1リアクトルL1を流れる電流である。そして、第1電流センサ61は、第1センサ信号Ys1を差分回路3及び制御部5へ出力する。なお、第1電流センサ61は、第1リアクトルL1から接続点P1に向かって流れる第1リアクトル電流IL1の瞬時値を正値とする。
【0034】
第2電流センサ62は、変流器又はシャント抵抗などを有する。第2電流センサ62は、第2リアクトルL2の第1端と第2レグ22の接続点P2との間に設けられて、第2リアクトル電流IL2の瞬時値を測定する。第2電流センサ62は、第2リアクトル電流IL2の瞬時値を電圧又は電流の大きさで表すアナログ信号を、第2センサ信号Ys2として生成する。第2リアクトル電流IL2は、第2リアクトルL2を流れる電流である。そして、第2電流センサ62は、第2センサ信号Ys2を差分回路3及び制御部5へ出力する。なお、第2電流センサ62は、第2リアクトルL2から接続点P2に向かって流れる第2リアクトル電流IL2の瞬時値を正値とする。
【0035】
差分回路3は、第1差分器31、及び第2差分器32を備える。
【0036】
第1差分器31は、第1電流センサ61から第1センサ信号Ys1を受け取り、第2電流センサ62から第2センサ信号Ys2を受け取る。そして、第1差分器31は、第1センサ信号Ys1から第2センサ信号Ys2を差し引くことで、第1差分信号Y11を生成する。第1差分信号Y11は、第1リアクトル電流IL1の瞬時値から第2リアクトル電流IL2の瞬時値を引いた第1差分を電圧又は電流の大きさで表すアナログ信号である。すなわち、第1差分器31は、第1リアクトル電流IL1から第2リアクトル電流IL2を引いた第1差分を示す第1差分信号Y11を、差分信号Y1として生成する。
【0037】
第2差分器32は、第1電流センサ61から第1センサ信号Ys1を受け取り、第2電流センサ62から第2センサ信号Ys2を受け取る。そして、第2差分器32は、第2センサ信号Ys2から第1センサ信号Ys1を差し引くことで、第2差分信号Y12を生成する。第2差分信号Y12は、第2リアクトル電流IL2の瞬時値から第1リアクトル電流IL1の瞬時値を引いた第2差分を電圧又は電流の大きさで表すアナログ信号である。すなわち、第2差分器32は、第2リアクトル電流IL2から第1リアクトル電流IL1を引いた第2差分を示す第2差分信号Y12を、差分信号Y1として生成する。
【0038】
ピークホールド回路4は、第1ピークホールド回路41、及び第2ピークホールド回路42を備える。ピークホールド回路4は、サンプルホールド機能を有する集積回路であることが好ましい。この場合、第1ピークホールド回路41及び第2ピークホールド回路42は、サンプルホールド機能を有する集積回路である。ピークホールド回路4は、サンプルホールド機能を有する集積回路で容易に実現できる。
【0039】
第1ピークホールド回路41は、第1差分器31から第1差分信号Y11を受け取る。第1差分信号Y11は、第1リアクトル電流IL1の瞬時値から第2リアクトル電流IL2の瞬時値を引いた第1差分を示すアナログ信号である。第1ピークホールド回路41は、第1差分信号Y11のピーク値を第1差分のピーク値として保持する。そして、第1ピークホールド回路41は、第1差分のピーク値を示す第1ピーク信号Y21をピーク信号Y2として制御部5へ出力する。
【0040】
第2ピークホールド回路42は、第2差分器32から第2差分信号Y12を受け取る。第2差分信号Y12は、第2リアクトル電流IL2の瞬時値から第1リアクトル電流IL1の瞬時値を引いた第2差分を示すアナログ信号である。第2ピークホールド回路42は、第2差分信号Y12のピーク値を第2差分のピーク値として保持する。そして、第2ピークホールド回路42は、第2差分のピーク値を示す第2ピーク信号Y22をピーク信号Y2として制御部5へ出力する。
【0041】
制御部5は、第1センサ信号Ys1、及び第2センサ信号Ys2に基づいて、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれスイッチング制御する。すなわち、制御部5は、予め決められた制御周期に応じて、第1リアクトル電流IL1及び第2リアクトル電流IL2の各瞬時値を取得し、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4を制御する。例えば、制御部5は、第1センサ信号Ys1に基づいて第1リアクトル電流IL1の中央値を平均値として取得し、第2センサ信号Ys2に基づいて第2リアクトル電流IL2の中央値を平均値として取得する。そして、制御部5は、第1リアクトル電流IL1、及び第2リアクトル電流IL2の各平均値をそれぞれの目標値に一致させるように、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれスイッチング制御する。すなわち、制御部5は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4の制御として、第1リアクトル電流IL1及び第2リアクトル電流IL2の各平均値をそれぞれの目標値に一致させる平均値制御を行う。
【0042】
(2.2)電力変換システムの電力変換動作
電力変換システムA1は、昇圧モード又は降圧モードで動作する2相のインタリーブ方式の電力変換システムである。制御部5は、第1レグ21の第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2、並びに第2レグ22の第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれオンオフ駆動することで、電力変換システムA1をインタリーブ方式で動作させる。
【0043】
制御部5は、第1レグ21及び第2レグ22の各動作を、予め決められたスイッチング周期に同期させる。スイッチング周期を360度(2π)とすると、第1レグ21と第2レグ22とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。具体的に、第1レグ21の第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2は交互にオン、オフする。第2レグ22の第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4は交互にオン、オフする。さらに、第1レグ21の第1スイッチング素子Q1と第2レグ22の第3スイッチング素子Q3とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。第1レグ21の第2スイッチング素子Q2と第2レグ22の第4スイッチング素子Q4とは、180度(π)の位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
【0044】
なお、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2と同時にオンしないように、第1スイッチング素子Q1がターンオンするタイミングと第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングとの間には、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とがオフするデッドタイムが設けられる。また、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4と同時にオンしないように、第3スイッチング素子Q3がターンオンするタイミングと第4スイッチング素子Q4がターンオンするタイミングとの間には、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4とがオフするデッドタイムが設けられる。
【0045】
そして、制御部5は、昇圧モードで動作するときは、第1レグ21及び第1リアクトルL1を昇圧チョッパ回路として動作させ、第2レグ22及び第2リアクトルL2を昇圧チョッパ回路として動作させる。また、制御部5は、降圧モードで動作するときは、第1レグ21及び第1リアクトルL1を降圧チョッパ回路として動作させ、第2レグ22及び第2リアクトルL2を降圧チョッパ回路として動作させる。
【0046】
電力変換システムA1が動作しているとき、リアクトル部1には励磁電流Ie(
図1では、第1リアクトルL1側から見た(接続点Paから接続点P1に向かって流れる)励磁電流Ieを示す)が流れている。励磁電流Ieは、リアクトル部1の鉄心を励磁するための電流である。なお、
図1では、第1リアクトルL1側から見た励磁電流Ieの値を正値とする。
【0047】
図2-
図4は、昇圧モードにおいて昇圧比を2倍以上としたときの第1リアクトル電流IL1、第2リアクトル電流IL2、及び励磁電流Ieの各波形を示す。
【0048】
第2スイッチング素子Q2がターンオン(第1スイッチング素子Q1がターンオフ)するタイミングをタイミングt1とする。第4スイッチング素子Q4がターンオフ(第3スイッチング素子Q3がターンオン)するタイミングをタイミングt2とする。第4スイッチング素子Q4がターンオン(第3スイッチング素子Q3がターンオフ)するタイミングをタイミングt3とする。第2スイッチング素子Q2がターンオフ(第1スイッチング素子Q1がターンオン)するタイミングをタイミングt4とする。
【0049】
そして、昇圧比2倍以上では
図2-
図4に示すように、タイミングt1-t4は、タイミングt1→タイミングt2→タイミングt3→タイミングt4→タイミングt1→………の順に繰り返される。例えばタイミングt1から次のタイミングt1までの期間が、スイッチング周期360度(2π)に相当する。タイミングt1とタイミングt3との間の位相差は180度(π)、タイミングt2とタイミングt4との間の位相差は180度(π)である。
【0050】
第1リアクトル電流IL1は、第2スイッチング素子Q2がターンオンするタイミングt1から徐々に増加し、第2スイッチング素子Q2がターンオフするタイミングt4から徐々に減少する波形を繰り返す。
【0051】
第2リアクトル電流IL2は、第4スイッチング素子Q4がターンオンするタイミングt3から徐々に増加し、第4スイッチング素子Q4がターンオフするタイミングt2から徐々に減少する波形を繰り返す。
【0052】
励磁電流Ieは、昇圧比2倍以上では、タイミングt2からタイミングt3までの期間で増加し、タイミングt3からタイミングt4までの期間ではほぼ一定値となる。そして、励磁電流Ieは、タイミングt4からタイミングt1までの期間で減少し、タイミングt1からタイミングt2までの期間ではほぼ一定値となる。
図2-
図4のそれぞれにおける励磁電流Ieの波形は、第1リアクトル電流IL1から第2リアクトル電流IL2を引いた波形であり、第1差分の波形に相当する。なお、昇圧比2倍以上では、タイミングt3からタイミングt4までの期間において、励磁電流Ieの正側のピーク値が発生し、タイミングt1からタイミングt2までの期間において、励磁電流Ieの負側のピーク値が発生する。
【0053】
図2は、偏磁を生じていない理想的なリアクトル部1を流れる第1リアクトル電流IL1、第2リアクトル電流IL2、及び励磁電流Ieの各波形を示す。この場合、励磁電流Ieは正側及び負側のいずれにもほとんど偏っておらず(励磁電流Ieの正側のピーク値及び負側のピーク値の各絶対値がほぼ等しい)、第1リアクトル電流IL1と第2リアクトル電流IL2とが平衡している。
【0054】
例えば、制御部5は、第1センサ信号Ys1に基づく第1リアクトル電流IL1の平均値として、タイミングt1からタイミングt4までの期間に増加する第1リアクトル電流IL1の中央値である第1中央値R1を取得する。具体的に、タイミングt1からタイミングt4までの期間は第2スイッチング素子Q2がオンしているオン期間に相当する。そこで、制御部5は、第2スイッチング素子Q2のオン期間の半分の時点における第1リアクトル電流IL1の値を、第1中央値R1として取得する。また、制御部5は、第2センサ信号Ys2に基づく第2リアクトル電流IL2の平均値として、タイミングt3からタイミングt2までの期間に増加する第2リアクトル電流IL2の中央値である第2中央値R2を取得する。具体的に、タイミングt2からタイミングt3までの期間は第4スイッチング素子Q4がオンしているオン期間に相当する。そこで、制御部5は、第4スイッチング素子Q4のオン期間の半分の時点における第2リアクトル電流IL2の値を、第2中央値R2として取得する。そして、制御部5は、第1中央値R1及び第2中央値R2がそれぞれの目標値に一致するように制御を、平均値制御として行う。
【0055】
しかしながら、リアクトル部1の偏磁が発生すると、
図3及び
図4のようにリアクトル部1の励磁電流Ieが正側又は負側に偏ってしまう(励磁電流Ieの正側のピーク値及び負側のピーク値の各絶対値が異なってしまう)。
【0056】
図3は、寄生抵抗を含むリアクトル部1を流れる第1リアクトル電流IL1、第2リアクトル電流IL2、及び第1リアクトルL1側から見た励磁電流Ieの各波形を示す。リアクトル部1の偏磁によって、励磁電流Ieは正側に偏っている。そして、第1リアクトル電流IL1が正側に偏り、第2リアクトル電流IL2が負側に偏っており、第1リアクトル電流IL1と第2リアクトル電流IL2とが不平衡になっている。この場合、制御部5は、第1リアクトル電流IL1の第1中央値R1及び第2リアクトル電流IL2の第2中央値R2に基づいて、リアクトル部1の偏磁を検出することができる。
【0057】
図4は、寄生リアクトルを含むリアクトル部1を流れる第1リアクトル電流IL1、第2リアクトル電流IL2、及び第1リアクトルL1側から見た励磁電流Ieの各波形を示す。リアクトル部1の偏磁によって、励磁電流Ieは歪んだ波形になって負側に偏っている。しかし、第1リアクトル電流IL1と第2リアクトル電流IL2とはほぼ平衡している。この場合、制御部5は、第1中央値R1及び第2中央値R2を用いても、リアクトル部1の偏磁を検出することはできない。
【0058】
また、
図5は、昇圧モードにおいて昇圧比1倍以上、2倍未満としたときの第1リアクトル電流IL1、第2リアクトル電流IL2、及び第1リアクトルL1側から見た励磁電流Ieの各波形を示す。なお、
図5に示す各波形は、偏磁を生じていない理想的なリアクトル部1を流れる波形である。
【0059】
昇圧比1倍以上、2倍未満では
図5に示すように、タイミングt1-t4は、タイミングt1→タイミングt4→タイミングt3→タイミングt2→タイミングt1→………の順に繰り返される。励磁電流Ieは、タイミングt1からタイミングt4までの期間で増加し、タイミングt4からタイミングt3までの期間ではほぼ一定値となる。そして、励磁電流Ieは、タイミングt3からタイミングt2までの期間で減少し、タイミングt2からタイミングt1までの期間ではほぼ一定値となる。そして、タイミングt4からタイミングt3までの期間において、励磁電流Ieの正側のピーク値が発生する。また、タイミングt2からタイミングt1までの期間において、励磁電流Ieの負側のピーク値が発生する。
図5では、励磁電流Ieは正側及び負側のいずれにもほとんど偏っておらず(励磁電流Ieの正側のピーク値及び負側のピーク値の各絶対値がほぼ等しい)、第1リアクトル電流IL1と第2リアクトル電流IL2とが平衡している。なお、図示は省略するが、昇圧比1倍以上2倍未満においても、偏磁が発生すると、昇圧比2倍以上のときと同様に、リアクトル部1の励磁電流Ieが正側又は負側に偏ってしまう。
【0060】
なお、タイミングt1-t4の順序、及び第1リアクトル電流IL1、第2リアクトル電流IL2、及び励磁電流Ieの各波形は、昇圧比によって変動することがある。
【0061】
そこで、本実施形態の電力変換システムA1は、以下のように励磁電流Ieの偏りを検出することで、リアクトル部1の偏磁を検出する。
【0062】
(2.3)励磁電流の検出
インタリーブ方式の電力変換システムA1には、第1レグ21と第2レグ22との平衡(均等性)が求められる。特に、リアクトル部1を結合リアクトルで構成した場合、この平衡がさらに求められる。しかしながら、リアクトル部1に偏磁が生じ、励磁電流Ieが正側又は負側に偏ると、第1レグ21と第2レグ22との平衡が崩れてしまう。
【0063】
そこで、電力変換システムA1は、リアクトル部1の偏磁による励磁電流Ieの偏りを検出するため、励磁電流Ieの正側のピーク値及び負側のピーク値を検出する。以下、電力変換システムA1における励磁電流Ieのピーク検出処理について、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0064】
図6は、昇圧モードにおいて昇圧比を2倍以上としたときの第1センサ信号Ys1、第2センサ信号Ys2、及び第1差分信号Y11の各波形を示す。第1センサ信号Ys1の波形は、第1リアクトルL1から接続点P1に向かって流れる第1リアクトル電流IL1の波形に相当する。第2センサ信号Ys2の波形は、第2リアクトルL2から接続点P2に向かって流れる第2リアクトル電流IL2の波形に相当する。第1差分信号Y11の波形は、接続点Paから接続点P1に向かって流れる(第1リアクトルL1側から見た)励磁電流Ieの波形に相当する。なお、第2差分信号Y12の波形は、第1差分信号Y11の波形を反転させたものであり、図示を省略する。
【0065】
制御部5は、タイミングt1からタイミングt4までの期間において増加する第1センサ信号Ys1の中央値として第1中央値R11を取得する。第1中央値R11は、第1リアクトル電流IL1の第1中央値R1(
図2参照)に対応する。制御部5は、タイミングt3からタイミングt2までの期間において増加する第2センサ信号Ys2の中央値として第2中央値R12を取得する。第2中央値R12は、第2リアクトル電流IL2の第2中央値R2(
図2参照)に対応する。そして、制御部5は、第1中央値R11及び第2中央値R12を用いて、平均値制御を行う。
【0066】
さらに、制御部5は、第1ピークホールド回路41が出力した第1ピーク信号Y21、及び第2ピークホールド回路42が出力した第2ピーク信号Y22に基づいて、励磁電流Ieの偏りを検出する。第1ピーク信号Y21は、励磁電流Ieの正側のピーク値の情報を含む。第2ピーク信号Y22は、励磁電流Ieの負側のピーク値の情報を含む。
【0067】
具体的に
図7に示すように、第1差分器31は、第1センサ信号Ys1から第2センサ信号Ys2を引くことで、第1差分信号Y11を生成する。第1差分信号Y11は、接続点Paから接続点P1に向かって流れる(第1リアクトルL1側から見た)励磁電流に相当する。第2差分器32は、第2センサ信号Ys2から第1センサ信号Ys1を引くことで、第2差分信号Y12を生成する。第2差分信号Y12は、接続点Paから接続点P2に向かって流れる(第2リアクトルL2側から見た)励磁電流に相当する。すなわち、第1差分信号Y11の波形と第2差分信号Y12の波形とは互いに反転した波形である。
【0068】
第1ピークホールド回路41は、第1差分信号Y11のピーク値を第1差分のピーク値として保持する。そして、第1ピークホールド回路41は、第1差分のピーク値を示す第1ピーク信号Y21を制御部5へ出力する。
【0069】
第2ピークホールド回路42は、第2差分信号Y12のピーク値を第2差分のピーク値として保持する。そして、第2ピークホールド回路42は、第2差分のピーク値を示す第2ピーク信号Y22を制御部5へ出力する。
【0070】
第1ピークホールド回路41及び第2ピークホールド回路42は、第1レグ21及び第2レグ22のスイッチング周期に同期して、第1ピーク信号Y21及び第2ピーク信号Y22をそれぞれリセットする。例えば、第1ピーク信号Y21及び第2ピーク信号Y22は、所定数(1以上)のスイッチング周期毎にリセットされる(
図7のタイミングtr1、tr2参照)。したがって、電力変換システムA1は、スイッチング周期に合わせて、第1差分信号Y11及び第2差分信号Y12の各ピーク値を随時取得できる。
【0071】
制御部5は、第1センサ信号Ys1の第1中央値R11を取得するタイミングで、第1ピーク信号Y21の値を第1ピーク値R21として取得する。制御部5は、第2センサ信号Ys2の第2中央値R12を取得するタイミングで、第2ピーク信号Y22の値を第2ピーク値R22として取得する。なお、制御部5は、第1センサ信号Ys1、第2センサ信号Ys2、第1ピーク信号Y21、及び第2ピーク信号Y22をそれぞれA/D変換することで、第1中央値R11、第2中央値R12、第1ピーク値R21、第2ピーク値R22の各デジタルデータを取得する。なお、制御部5が第1ピーク値R21及び第2ピーク値R22を取得するタイミングは、第1中央値R11を取得するタイミング及び第2中央値R12を取得するタイミングと同じであることに限定されず、他のタイミングであってもよい。
【0072】
そして、制御部5は、第1ピーク値R21及び第2ピーク値R22に基づいて、励磁電流Ieの偏りを検出する。
【0073】
例えば、制御部5は、第1ピーク値R21と第2ピーク値R22との差が所定範囲(例えば、-X以上、+X未満)に収まっていれば、励磁電流Ieの偏りはない、と判定する。すなわち、制御部5は、励磁電流Ieは偏っておらず、リアクトル部1に偏磁は生じていないと判定する。
【0074】
制御部5は、第1ピーク値R21と第2ピーク値R22との差が所定範囲外であれば、励磁電流Ieの偏りが生じている、と判定する。すなわち、制御部5は、励磁電流Ieは偏っており、リアクトル部1に偏磁が生じていると判定する。
【0075】
例えば、制御部5は、励磁電流Ieの偏りが生じている(リアクトル部1に偏磁が生じている)と判定すれば、上述の平均値制御を一時停止して、励磁電流Ieの偏りを抑制するように、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4をそれぞれスイッチング制御する。制御部5は、励磁電流Ieは偏っていないと判定すれば、上述の平均値制御を継続する。
【0076】
また、制御部5は、励磁電流Ieの偏りが生じていると判定すれば、リアクトル部1に偏磁が生じている旨をユーザに報知する報知信号を生成してもよい。そして、制御部5は、ユーザが使用するパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンなどの情報端末に報知信号を送信する。ユーザは、リアクトル部1に偏磁が生じていることを情報端末で確認すると、リアクトル部1の偏磁を抑制するための対策を実行する。
【0077】
なお、電力変換システムA1は、降圧モードで動作するときも、上記同様に平均値制御を行い、励磁電流Ieの偏りを検出する。
【0078】
上述のように、電力変換システムA1は、ピークホールド回路4が保持した第1ピーク値R21及び第2ピーク値R22を用いて、リアクトル部1の偏磁による励磁電流Ieの偏りを検出する。したがって、電力変換システムA1は、上述の特許文献1のように各リアクトルの電流差の瞬時値を示すアナログの電流偏差信号に基づいて励磁電流を検出する構成に比べて、制御部5においてリアクトル部1の偏磁を検出するための信号処理を簡略化することができる。
【0079】
また、電力変換システムA1は、第1リアクトル電流IL1及び第2リアクトル電流IL2の平均値制御、及びリアクトル部1の偏磁検出の両方を、第1リアクトル電流IL1及び第2リアクトル電流IL2の各測定結果に基づいて実現できる。
【0080】
(3)第1変形例
図8は、第1変形例の電力変換システムA2を示す。電力変換システムA2は、差分回路3の代わりに差分回路3Aを備え、ピークホールド回路4(第1ピークホールド回路41及び第2ピークホールド回路42)の代わりにピークホールド回路4Aを備える点が、上述の電力変換システムA1と異なる。
【0081】
差分回路3Aは、第1差分器31及び第2差分器32に加えて、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2を更に備える。第1ダイオードD1のアノードは、第1差分器31の出力に接続される。第2ダイオードD2のアノードは、第2差分器32の出力に接続される。第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2の各カソードは互いに接続されて、ピークホールド回路4Aに接続される。第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2は、第1差分信号Y11と第2差分信号Y12のうち、電圧がより大きいいずれか一方を、差分信号Y13(Y1)としてピークホールド回路4Aに出力する。すなわち、ピークホールド回路4Aは、第1ダイオードD1を介して第1差分信号Y11を取得し、第2ダイオードD2を介して第2差分信号Y12を取得する。
【0082】
ピークホールド回路4Aは、差分信号Y13のピーク値を保持する。差分信号Y13は、第1リアクトル電流IL1から第2リアクトル電流IL2を引いた第1差分、及び第2リアクトル電流IL2から第1リアクトル電流IL1を引いた第2差分の情報を交互に含んでいる。したがって、ピークホールド回路4Aは、第1差分のピーク値及び第2差分のピーク値を示すピーク信号Y23をピーク信号Y2として制御部5へ出力する。例えば、ピーク信号Y23は、第1ピーク値R21及び第2ピーク値R22(
図7参照)の情報を交互に含む。制御部5は、第1ピーク値R21及び第2ピーク値R22に基づいて、リアクトル部1の偏磁による励磁電流Ieの偏りを検出する。
【0083】
本変形例では、第1ピークホールド回路41及び第2ピークホールド回路42を用いずに、1つのピークホールド回路4Aを用いる。したがって、電力変換システムA2は、ピークホールド回路4Aの構成を簡略化できる。
【0084】
(4)第2変形例
図9は、第2変形例の電力変換システムA3を示す。電力変換システムA3は、差分回路3Aの代わりに差分回路3Bを備え、ピークホールド回路4Aの代わりにピークホールド回路4Bを備える点が、上述の電力変換システムA2と異なる。
【0085】
差分回路3Bは、第1差分器31、及び絶対値回路7を備える。絶対値回路7は、第1差分器31が出力する第1差分信号Y11を入力され、第1差分信号Y11の絶対値を示す信号を差分信号Y14(Y1)として出力する。すなわち、差分回路3Bは、第1リアクトル電流IL1及び第2リアクトル電流IL2の一方から他方を引いた値の絶対値を示す信号を、差分信号Y14として生成する。
【0086】
ピークホールド回路4Bは、差分信号Y14のピーク値を保持する。差分信号Y14は、第1差分及び第2差分の情報を交互に含んでいる。そこで、ピークホールド回路4Bは、第1差分のピーク値及び第2差分のピーク値を示すピーク信号Y24をピーク信号Y2として制御部5へ出力する。例えば、ピーク信号Y24は、第1ピーク値R21及び第2ピーク値R22(
図7参照)の情報を交互に含む。制御部5は、第1ピーク値R21及び第2ピーク値R22に基づいて、リアクトル部1の偏磁による励磁電流Ieの偏りを検出する。
【0087】
本変形例では、差分回路3Bは1つの第1差分器31を備える。したがって、電力変換システムA2は、差分回路3Bに用いる差分器の数を抑えることができる。
【0088】
図10は、絶対値回路7の回路構成の一例を示す。絶対値回路7は、入力部7a、及び出力部7bを備える。第1差分信号Y11は入力部7aに入力される。差分信号Y14は出力部7bから出力される。
【0089】
絶対値回路7は、入力部7aと出力部7bとの間に、オペアンプOP1、OP2、抵抗71-75、ダイオード76-77を備える。オペアンプOP1の反転入力端子は、抵抗71を介して入力部7aに接続される。オペアンプOP1の非反転入力端子は、回路グランドに接続される。オペアンプOP1の出力端子は、ダイオード77のカソードに接続される。ダイオード77のアノードは抵抗72を介してオペアンプOP1の反転入力端子に接続される。オペアンプOP1の出力端子と反転入力端子との間には、ダイオード76が接続される。ダイオード76のアノードは、オペアンプOP1の出力端子に接続され、ダイオード76のカソードは、オペアンプOP1の反転入力端子に接続される。
【0090】
ダイオード77のアノードは、抵抗73を介してオペアンプOP2の反転入力端子に接続される。オペアンプOP2の出力端子と反転入力端子との間には、抵抗75が接続される。オペアンプOP2の非反転入力端子は、回路グランドに接続される。オペアンプOP2の出力端子は、出力部7bに接続される。オペアンプOP2の反転入力端子と入力部7aとの間には抵抗74が接続される。
【0091】
なお、絶対値回路7は、
図10に示す回路構成を備えるものに限定されず、第1差分信号Y11の絶対値を示す差分信号Y14を出力する機能を有するものであればよい。
【0092】
(5)電力変換システムの周辺構成
電力変換システムA1は、例えば
図11に示す電力システムPS1に用いられる。
【0093】
電力システムPS1は、太陽電池モジュール91、パワーコンディショナ92、蓄電コンバータ93、及び蓄電池ユニット94を備えて、商用の電力系統95に接続している。パワーコンディショナ92は、太陽電池モジュール91、蓄電コンバータ93、及び電力系統95に接続している。蓄電池ユニット94は、蓄電コンバータ93に接続している。
【0094】
太陽電池モジュール91は、太陽光によって発電する太陽電池セルを有し、直流の発電電力をパワーコンディショナ92へ供給する。パワーコンディショナ92は、太陽電池モジュール91から供給される発電電力、及び電力系統95から供給される交流の商用電力を直流電力(以降、中間電力と称す)に変換し、中間電力を蓄電コンバータ93に供給する。蓄電コンバータ93は、中間電力を直流の充電電力に変換し、充電電力を蓄電池ユニット94に供給する。蓄電池ユニット94は蓄電池を有し、蓄電池は、蓄電コンバータ93から供給される充電電力によって充電される。また、蓄電コンバータ93は、蓄電池ユニット94の放電電力を直流の中間電力に変換し、中間電力をパワーコンディショナ92に供給する。パワーコンディショナ92は、中間電力を交流電力に変換し、交流電力を逆潮流電力として電力系統95に供給する。電力系統95には負荷96が接続されており、負荷96には、電力系統95の商用電力、及びパワーコンディショナ92の交流電力が供給される。
【0095】
上述の電力変換システムA1、A2、A3は、蓄電コンバータ93としてそれぞれ機能する。すなわち、電力変換システムA1は、パワーコンディショナ92から供給される中間電力を充電電力に変換したり、蓄電池ユニット94の放電電力を中間電力に変換したりする。この場合、電力変換システムA1、A2、A3の第1端子T11、T12は蓄電池ユニット94に接続され、第2端子T21、T22はパワーコンディショナ92に接続される。すなわち、電力変換システムA1、A2、A3は、蓄電池ユニット94の直流電圧V1を昇圧した直流電圧V2をパワーコンディショナ92へ出力する。また、電力変換システムA1、A2、A3は、パワーコンディショナ92から出力された直流電圧V2を降圧した直流電圧V1を蓄電池ユニット94へ出力する。
【0096】
(6)他の変形例
リアクトル部1では、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2とが互いに磁気結合していなくてもよい。すなわち、リアクトル部1は、結合リアクトルでなくてもよい。
【0097】
電力変換システムは、第3リアクトルL3を備えていなくてもよい。すなわち、電力変換システムは、第3リアクトルL3を備えた密結合方式、及び第3リアクトルL3を備えていない疎結合方式のいずれを採用してもよい。
【0098】
制御部5は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4の制御として、第1リアクトル電流IL1及び第2リアクトル電流IL2の各実効値をそれぞれの目標値に一致させる実効値制御を行ってもよい。
【0099】
制御部5は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4の制御として、第1リアクトル電流IL1及び第2リアクトル電流IL2の各ピーク値をそれぞれの目標値に一致させるピーク値制御を行ってもよい。
【0100】
また、電力変換システムは、リアクトル部1と、第1レグ21と、第2レグ22とを有する電力変換部を複数備えて、インタリーブ方式で動作してもよい。この場合、複数の電力変換部は、互いに位相差が生じるようにそれぞれ動作する。
【0101】
また、電力変換システムは、昇圧モードで動作する場合、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3をオフ状態に維持し、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4をオンオフ駆動してもよい。電力変換システムは、降圧モードで動作する場合、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4をオフ状態に維持し、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3をオンオフ駆動してもよい。
【0102】
また、電力変換システムは、昇圧動作及び降圧動作の両方を行う双方向の電力変換システム以外に、昇圧動作及び降圧動作のいずれか一方のみを行う単方向の電力変換システムであってもよい。
【0103】
電力変換システムは、
図11に示す電力システムPS1に用いられる構成に限定されず、例えば電動車両などの他のシステムに用いられてもよい。
【0104】
(7)まとめ
以上のように、実施形態に係る第1の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)は、リアクトル部(1)と、第1レグ(21)と、第2レグ(22)と、制御部(5)と、差分回路(3、3A、3B)と、ピークホールド回路(4、4A、4B)と、を備える。リアクトル部(1)は、第1リアクトル(L1)及び第2リアクトル(L2)を有し、第1リアクトル(L1)の両端のうち一方と第2リアクトル(L2)の両端のうち一方とが互いに接続する。第1レグ(21)は、第1スイッチング素子(Q1)と第2スイッチング素子(Q2)との直列回路を有し、第1スイッチング素子(Q1)と第2スイッチング素子(Q2)との接続点(P1)が第1リアクトル(L1)の両端のうち他方に接続する。第2レグ(22)は、第3スイッチング素子(Q3)と第4スイッチング素子(Q4)との直列回路を有して、第1レグ(21)に並列接続され、第3スイッチング素子(Q3)と第4スイッチング素子(Q4)との接続点(P2)が第2リアクトル(L2)の両端のうち他方に接続する。制御部(5)は、第1スイッチング素子(Q1)、第2スイッチング素子(Q2)、第3スイッチング素子(Q3)、及び第4スイッチング素子(Q4)を制御する。差分回路(3、3A、3B)は、第1リアクトル(L1)を流れる第1リアクトル電流(IL1)と第2リアクトル(L2)を流れる第2リアクトル電流(IL2)との差分に基づく差分信号(Y1)を生成する。ピークホールド回路(4、4A、4B)は、差分信号(Y1)を入力されて、差分のピーク値を示すピーク信号(Y2)を制御部(5)へ出力する。
【0105】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、制御部(5)においてリアクトル部(1)の偏磁を検出するための信号処理を簡略化することができる。
【0106】
実施形態に係る第2の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)では、第1の態様において、制御部(5)は、第1リアクトル電流(IL1)及び第2リアクトル電流(IL2)の各測定値に基づいて、第1スイッチング素子(Q1)、第2スイッチング素子(Q2)、第3スイッチング素子(Q3)、及び第4スイッチング素子(Q4)を制御することが好ましい。
【0107】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、リアクトル部(1)の偏磁を検出する処理に加えて、第1スイッチング素子(Q1)、第2スイッチング素子(Q2)、第3スイッチング素子(Q3)、及び第4スイッチング素子(Q4)の平均値制御、実効値制御、又はピーク値制御などを行うことができる。
【0108】
実施形態に係る第3の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)では、第1又は第2の態様において、第1リアクトル(L1)と第2リアクトル(L2)とは、互いに逆極性に磁気結合した結合リアクトルを構成することが好ましい。
【0109】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、結合リアクトルを構成するリアクトル部(1)の偏磁を検出することができる。
【0110】
実施形態に係る第4の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)は、第1乃至第3の態様のいずれか1つにおいて、第1リアクトル(L1)と第2リアクトル(L2)との接続点(Pa)に接続した第3リアクトル(L3)を更に備えることが好ましい。
【0111】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、密結合方式で構成されたリアクトル部(1)の偏磁を検出することができる。
【0112】
実施形態に係る第5の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)では、第1乃至第4の態様のいずれか1つにおいて、ピークホールド回路(4、4A、4B)は、所定のタイミングにおいてピーク信号(Y2)をリセットすることが好ましい。
【0113】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、スイッチング周期に合わせて、差分信号(Y1)のピーク値を取得できる。
【0114】
実施形態に係る第6の態様の電力変換システム(A1、A2)では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、差分回路(3、3A)は、第1差分器(31)と、第2差分器(32)と、を備えることが好ましい。第1差分器(31)は、第1リアクトル電流(IL1)から第2リアクトル電流(IL2)を引いた第1差分を示す第1差分信号(Y11)を、差分信号(Y1)として生成する。第2差分器(32)は、第2リアクトル電流(IL2)から第1リアクトル電流(IL1)を引いた第2差分を示す第2差分信号(Y12)を、差分信号(Y1)として生成する。
【0115】
上述の電力変換システム(A1、A2)は、差分信号(Y1)を生成するための具体構成を実現できる。
【0116】
実施形態に係る第7の態様の電力変換システム(A1)では、第1乃至第6の態様のいずれか1つにおいて、ピークホールド回路(4)は、第1ピークホールド回路(41)と、第2ピークホールド回路(42)と、を備えることが好ましい。第1ピークホールド回路(41)は、第1差分信号(Y11)を入力され、第1差分のピーク値を示す第1ピーク信号(Y21)をピーク信号(Y2)として制御部(5)へ出力する。第2ピークホールド回路(42)は、第2差分信号(Y12)を入力され、第2差分のピーク値を示す第2ピーク信号(Y22)をピーク信号(Y2)として制御部(5)へ出力する。
【0117】
上述の電力変換システム(A1)は、ピーク信号(Y2)を生成するための具体構成を実現できる。
【0118】
実施形態に係る第8の態様の電力変換システム(A2)では、第6の態様において、差分回路(3A)は、第1差分器(31)の出力に接続された第1ダイオード(D1)と、第2差分器(32)の出力に接続された第2ダイオード(D2)と、を更に備えることが好ましい。ピークホールド回路(4A)は、第1ダイオード(D1)を介して第1差分信号(Y11)を取得し、第2ダイオード(D2)を介して第2差分信号(Y12)を取得する。
【0119】
上述の電力変換システム(A2)は、ピークホールド回路(4A)の構成を簡略化できる。
【0120】
実施形態に係る第9の態様の電力変換システム(A3)では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、差分回路(3B)は、第1リアクトル電流(IL1)及び第2リアクトル電流(IL2)の一方から他方を引いた値の絶対値を示す信号(Y14)を、差分信号(Y1)として生成することが好ましい。
【0121】
上述の電力変換システム(A3)は、差分回路(3B)に用いる差分器の数を抑えることができる。
【0122】
実施形態に係る第10の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)では、第1乃至第9の態様のいずれか1つにおいて、ピークホールド回路(4、4A、4B)は、サンプルホールド機能を有する集積回路であることが好ましい。
【0123】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、ピークホールド回路(4、4A、4B)を容易に実現できる。
【0124】
実施形態に係る第11の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)では、第1乃至第10の態様のいずれか1つにおいて、第1リアクトル電流(IL1)を測定する第1電流センサ(61)と、第2リアクトル電流(IL2)を測定する第2電流センサ(62)と、を更に備えることが好ましい。
【0125】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、第1リアクトル電流(IL1)及び第2リアクトル電流(IL2)を測定できる。
【0126】
実施形態に係る第12の態様の電力変換システム(A1、A2、A3)では、第1乃至第11の態様のいずれか1つにおいて、制御部(5)は、ピーク信号(Y2)に基づいて、リアクトル部(1)を流れる励磁電流(Ie)の偏りを検出することが好ましい。
【0127】
上述の電力変換システム(A1、A2、A3)は、リアクトル部(1)の偏磁を検出できる。
【符号の説明】
【0128】
A1、A2、A3 電力変換システム
1 リアクトル部
21 第1レグ
22 第2レグ
3、3A、3B 差分回路
31 第1差分器
32 第2差分器
4、4A、4B ピークホールド回路
41 第1ピークホールド回路
42 第2ピークホールド回路
5 制御部
61 第1電流センサ
62 第2電流センサ
L1 第1リアクトル
L2 第2リアクトル
L3 第3リアクトル
Q1 第1スイッチング素子
Q2 第2スイッチング素子
Q3 第3スイッチング素子
Q4 第4スイッチング素子
P1、P2 接続点
Pa 接続点
D1 第1ダイオード
D2 第2ダイオード
IL1 第1リアクトル電流
IL2 第2リアクトル電流
Ie 励磁電流
Y1 差分信号
Y11 第1差分信号
Y12 第2差分信号
Y13 差分信号
Y14 差分信号
Y2 ピーク信号
Y21 第1ピーク信号
Y22 第2ピーク信号