(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171840
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089091
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊也
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA04
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】蓄電部を交換しても回路部品の許容電力値を超過するのを抑えつつ、過熱や焼損を抑制することができる電源システムを提供すること。
【解決手段】本発明の電源システムは、複数の蓄電部と、蓄電部ごとに回路部品であるリアクトルと少なくとも1つのスイッチング素子とを介して、負荷と繋がる母線に対して並列接続される電源システムであって、前記複数の蓄電部のSOCに偏りがある場合には、回路部品の許容電力値に制限を付与する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電部と、前記蓄電部ごとに回路部品であるリアクトルと少なくとも1つのスイッチング素子とを介して、負荷と繋がる母線に対して並列接続される電源システムであって、
前記複数の蓄電部のSOCに偏りがある場合には、前記回路部品の許容電力値に制限を付与することを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のバッテリと負荷との間に電気的に接続された複数の入出力調整装置を制御することにより、力行時は全体のSOC(State Of Charge)平均値よりSOCが高いバッテリから優先して電力を出力する制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の制御方法では、電源システムを構成する回路部品の温度が高くなった場合であっても電力の出力が継続されることによって過熱及び焼損が発生する可能性がある。一方、過熱及び焼損の発生を抑制するために電力の出力を停止した場合には、電源システム全体の動作が停止してしまうことになる。そこで、回路部品の温度に応じて蓄電部の出力に制限をかけ、不足分は他の余裕のある蓄電部から出力することが考えられる。しかしながら、蓄電部を交換して、交換した蓄電部のSOCが全体の平均値よりも高い場合に、交換した蓄電部の放電量は他の蓄電部の放電量よりも大きく設定されるため、回路部品の許容電流値を超過するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、蓄電部を交換しても回路部品の許容電力値を超過するのを抑えつつ、過熱や焼損を抑制することができる電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源システムは、複数の蓄電部と、前記蓄電部ごとに回路部品であるリアクトルと少なくとも1つのスイッチング素子とを介して、負荷と繋がる母線に対して並列接続される電源システムであって、前記複数の蓄電部のSOCに偏りがある場合には、前記回路部品の許容電力値に制限を付与することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電源システムは、蓄電部を交換しても回路部品の許容電力値を超過するのを抑えつつ、過熱や焼損を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電源システムにおける電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源システムにおける制御方式の一例を示したブロック図である。
【
図4】
図4は、放電の際における上下限制限後総電力要求量の分配処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、充電の際における上下限制限後総電力要求量の分配処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る電源システムの実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態に係る電源システム1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、実施形態に係る電源システム1は、電源装置2、及び、制御装置3を備えている。
【0011】
電源装置2は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、及び、キャパシタなどの充放電可能な複数(n個)の電池21(N)(N=1~n)を備えている。電池21(N)は、蓄電部として機能する。なお、複数の電池21(N)は、同一の電池やキャパシタなどとしてもよいし、異なる種類の電池やキャパシタなどとしてもよい。ただし、異なる種類の電池やキャパシタなどとした場合には、制御装置3は容量や電圧といった電池の電気特性の違いを考慮して後述するような仮決定する電力を算出する制御などを行う。また、同一の電池やキャパシタなどとした場合であっても電池間で劣化度が異なるときには、制御装置3は劣化度の違いを考慮して前記仮決定する電力を算出する制御などを行う。
【0012】
各電池21(N)は、スイッチング素子22(N),23(N)及びリアクトル素子(インダクタ素子)24(N)を介して、負荷4及び系統電源5に接続される母線L1,L2に対して並列に接続されている。母線L1,L2は、本発明に係る入出力電力線として機能する。なお、母線L1と母線L2との間には、電源装置2と制御装置3との間を流れる電力を平滑化するための平滑コンデンサC及びリアクトル素子Rが接続されている。また、スイッチング素子22(N),23(N)は、半導体スイッチング素子によって構成されている。
【0013】
ここで、半導体スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子に接続される側をアノードとしてダイオード(整流素子)が接続されている。半導体スイッチング素子としてIGBT以外のものを用いる場合、スイッチング素子が導通したときに流れる電流とは逆向きの電流が流れるように半導体スイッチング素子にダイオードを並列に接続する。ダイオードは、半導体スイッチング素子に伴う寄生ダイオードであってもよい。本明細書では、半導体スイッチング素子とダイオードとを併せたものをスイッチング素子という。
【0014】
各電池21(N)には、スイッチング素子22(N),23(N)と電池21(N)との間を流れる電力を平滑化する平滑コンデンサ25(N)が並列に接続されている。各電池21(N)の正極には正極側リレーが接続され、負極には負極側リレーが接続されている。また、負極側リレーには、直列に接続された抵抗素子及びプリチャージリレーが並列に接続されている。これにより、例えば起動時などの所定のタイミングでこれらのリレーのオン/オフを制御することにより、平滑コンデンサ25(N)をプリチャージすることができる。
【0015】
制御装置3は、ECU(Electronic Control Unit)などの情報処理装置により構成され、情報処理装置内部の演算処理装置がコンピュータプログラムを実行することにより電源システム1全体の動作を制御する。具体的には、制御装置3は、電源装置2のスイッチング素子22(N),23(N)のオン/オフを制御することにより、系統電源5から供給される電力を用いて電池21(N)を充電すると共に電池21(N)の充電電力を負荷4に供給する。
【0016】
図2は、実施形態に係る電源システム1における電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、実施形態に係る電源システムにおける制御方式の一例を示したブロック図である。
図2に示すフローチャートは、負荷4または系統電源5から制御装置3に出力要求信号または入力要求信号が入力されたタイミングで開始となり、電力制御処理はステップS1の処理に進む。
【0017】
ステップS1の処理において、制御装置3は、電池21(N)が入出力可能な電力量Win(N)/Wout(N)と、各電池21(N)の電圧と組となるリアクトル(インダクタ)やスイッチング素子などの回路部品の許容電流値(正負で2値)とを乗算して得られる制限電力によって電力量Win(N)/Wout(N)を上下限制限した制限電力量Win’(N)/Wout’(N)として算出する。そして、制御装置3は、各電池(N)の制限電力量Win’(N)/Wout’(N)の合計値を電源装置2全体で入出力可能な電力量である全体制限電力量Win’/Wout’として算出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、電力制御処理はステップS2の処理に進む。
【0018】
ステップS2の処理において、制御装置3は、ステップS1の処理において算出された全体制限電力量Win’/Wout’に従って負荷4または系統電源5からの総電力要求量の上下限値を制限した上下限制限後総電力要求量を算出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、電力制御処理はステップS3の処理に進む。
【0019】
ステップS3の処理では、制御装置3は、電池21(N)のSOC(残容量)あるいは電圧と、電源装置2全体の平均SOC(平均残容量)あるいは電圧との差分値に基づいて、各電池21(N)の電力を仮決定し、ステップS2の処理において算出された上下限制限後総電力要求量を電池(N)間で分配する。具体的には、制御装置3は、放電の際は、例えば、
図4に示すように、電池21(N)のSOCより電源装置2全体の平均SOCが大きい場合は電池21(N)の入出力係数k(N)を所定値より大きく設定し、電池21(N)のSOCより電源装置2全体の平均SOCが小さい場合には電池21(N)の入出力係数k(N)を所定値より小さく設定する。同様に、充電の際には、
図5に示すように、制御装置3は、電池21(N)のSOCより電源装置2全体の平均SOCが大きい場合は電池21(N)の入出力係数k(N)を所定値より小さく設定し、電池21(N)のSOCより電源装置2全体の平均SOCが小さい場合には電池21(N)の入出力係数k(N)を所定値より大きく設定する。そして、制御装置3は、入出力係数k(N)を入出力係数k(N)の和Σk(N)で除算した値k(N)/Σk(N)に上下限制限後総電力要求量を乗算することによって各電池21(N)の電力分配量を算出する。これにより、ステップS3の処理は完了し、電力制御処理はステップS4の処理に進む。
【0020】
仮決定した各電池21(N)の電力は、SOC(N)が平均SOCと概ね同じならば電力量Win(N)/Wout(N)により上下限制限され、SOC(N)が平均SOCから乖離しているならば制限電力量Win’(N)/Wout’(N)により上下限され、またその差分から各電池21(N)の電力余裕代及び電力不足代が算出される。
【0021】
具体的には、ステップS4の処理において、制御装置3は、放電側でSOC(n)-平均SOC>閾値Aの関係を満たすか、充電側でSOC(n)-平均SOC<閾値Bの関係を満たすか、を判断する。そして、制御装置3が否定的に判断した場合(ステップS4の処理にてNo)、電力制御処理はステップS5の処理に進む。ステップS5の処理では、制御装置3は、電力量Win(N)/Wout(N)で上下限制限を行う。これにより、ステップS5の処理は完了し、電力制御処理はステップS7の処理に進む。
【0022】
一方、ステップS4の処理において、制御装置3が肯定的に判断した場合(ステップS4の処理にてYes)、電力制御処理はステップS6の処理に進む。ステップS6の処理では、制御装置3は、回路部品で電流超過しないように算出された制限電力量Win’(N)/Wout’(N)で上下限制限を行う。すなわち、複数の電池21(N)のSOCに偏りがある場合には、リアクトルやスイッチング素子などの回路部品の許容電力値に制限を付与する。これにより、ステップS6の処理は完了し、電力制御処理はステップS7の処理に進む。
【0023】
ステップS7の処理において、制御装置3は、電力余裕代及び電力不足代を電池21(N)毎に算出する。そして、制御装置3は、各電池21(N)の電力不足代の合計値を全体の電力不足量として算出し、全体の電力不足量を小さくするように電力余裕代が大きい順に傾斜をつけて電力余裕代がある電池21(N)に不足している電力量(追加負担電力量)を再分配する。なお、制御装置3は、電力余裕代がある電池21(N)に不足している電力量を均等に再分配してもよい。これにより、ステップS5の処理は完了し、電力制御処理はステップS8の処理に進む。
【0024】
ステップS8の処理において、制御装置3は、ステップS7の処理後の電力量を入出力するように各電池21(N)に対して電力出力要求する制御を行う。これにより、ステップS8の処理は完了し、一連の電力制御処理は終了する。
【0025】
実施形態に係る電源システム1は、複数の電池21(N)のSOCに偏りがある場合には、リアクトルやスイッチング素子などの回路部品の許容電力値に制限を付与することによって、電池21を交換しても回路部品の許容電力値を超過するのを抑えつつ、過熱や焼損を抑制することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 電源システム
2 電源装置
3 制御装置
4 負荷
5 系統電源
21,21(N) 電池