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特開2024-171843縫製システム、モニタリングプログラム、及びミシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171843
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】縫製システム、モニタリングプログラム、及びミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/04 20060101AFI20241205BHJP
   D05C 5/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
D05B19/04
D05C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089094
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】栗原 さや香
【テーマコード(参考)】
3B150
4L044
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150CA08
3B150CB04
3B150CC07
3B150CE01
3B150CE24
3B150CE27
3B150LA63
3B150LB03
3B150NA59
3B150NB19
3B150PA07
3B150QA06
3B150QA07
3B150QA08
4L044AB04
4L044AB07
4L044AC04
(57)【要約】
【課題】端末装置から無線送信された縫製データに従って、ミシンで刺繍模様の縫製を行うシステムにおいて、ミシンで刺繍模様を縫製中にミシンの再起動が必要になった場合の利便性を向上させた縫製システム、モニタリングプログラム、及びミシンを提供すること。
【解決手段】ミシンのミシン制御部は、縫製データを受信し(S44)、第一模様情報をミシン記憶部に記憶し(S45)、縫製データに基づき刺繍模様を縫製する(S52)。ミシン制御部は、起動時に、縫製制御処理実行中にミシンが再起動したかを判断する(S41)。端末装置の装置制御部は、ミシンが再起動したと判断され 、且つ、ミシン記憶部の第一模様情報がミシンに送信した縫製データに対応する場合、縫製データに対応する復元データをミシンに送信する。ミシン制御部は、復元データに基づき、縫製制御処理を再開させる(S63)。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針棒と、不揮発性のミシン記憶部と、ミシン通信部と、ミシン制御部とを有するミシンと、
前記ミシンと通信可能な装置通信部と、装置制御部とを有する端末装置と
を備える縫製システムであって、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記ミシンで刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、
前記装置通信部を介して、前記縫製データを前記ミシンに送信する縫製データ送信処理と、
を実行し、
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記ミシン通信部を介して、前記縫製データ送信処理で送信された前記縫製データを受信する縫製データ受信処理と、
前記縫製データを受信したことに応じて、前記縫製データに対応する第一模様情報を前記ミシン記憶部に記憶する模様情報記憶処理と、
前記縫製データに基づき、前記針棒を駆動して、前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理と、
前記ミシンを起動時に、前記縫製制御処理を実行中に前記ミシンが停止し、再起動をしたか否かを判断する第一判断処理と、
を実行し、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記第一判断処理で、前記ミシンが再起動したと判断され、且つ、再起動された前記ミシンの前記ミシン記憶部に記憶された前記第一模様情報が、前記ミシンの再起動前に前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応する場合に、前記装置通信部を介して、前記縫製データに対応する復元データを前記ミシンに送信する復元データ送信処理を更に実行し、
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記第一判断処理後、前記ミシン通信部を介して、前記端末装置から前記復元データを受信したことに応じて、前記復元データに基づき、前記針棒を駆動して、前記縫製制御処理を再開させる縫製再開処理を実行することを特徴とする縫製システム。
【請求項2】
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記第一判断処理で前記ミシンが再起動したと判断された場合に、前記ミシン通信部を介して、前記第一模様情報を前記端末装置に送信する模様情報送信処理を実行し、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記装置通信部を介して、前記ミシンから前記第一模様情報を受信したことに応じて、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応するか否かを判断する条件判断処理を実行し、
前記復元データ送信処理において、前記装置通信部を介して、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応すると判断された場合に、前記復元データを前記ミシンに送信することを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記第一模様情報は、前記縫製データの識別情報であることを特徴とする請求項2に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記端末装置は、装置記憶部を更に備え、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記縫製データ送信処理で前記ミシンに送信した前記縫製データに対応する第二模様情報を、前記装置記憶部に記憶する装置記憶処理を更に実行し、
前記条件判断処理において、前記ミシンから前記第一模様情報を受信したことに応じて、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記装置記憶部に記憶された前記第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応するか否かを判断することを特徴とする請求項2に記載の縫製システム。
【請求項5】
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記縫製制御処理を実行中であるか否かを示す状態フラグを、前記ミシン記憶部に記憶するフラグ記憶処理を更に実行し、
前記第一判断処理において、前記ミシンを起動時に、前記状態フラグに基づき前記縫製制御処理を実行中であると判断される場合に、前記縫製制御処理を実行中に前記ミシンが停止し、再起動したと判断することを特徴とする請求項4に記載の縫製システム。
【請求項6】
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記縫製制御処理を実行中に、前記縫製データに基づき縫製済みの針数を前記ミシン記憶部に記憶する針数記憶処理を更に実行し、
前記縫製再開処理は、前記第一判断処理後、前記復元データを受信したことに応じて、前記復元データに基づき、前記ミシン記憶部に記憶された前記縫製済みの針数に対応する針数から、前記刺繍模様の縫製を再開することを特徴とする請求項4に記載の縫製システム。
【請求項7】
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記縫製制御処理が終了したことに応じて、前記縫製済みの針数と、前記第一模様情報とを前記ミシン記憶部から削除する削除処理を実行し、
前記第一判断処理において、前記ミシンを起動時に、前記ミシン記憶部に前記縫製済みの針数と前記第一模様情報とが記憶されている場合に、前記削除処理が実行されておらず、前記縫製制御処理を実行中に前記ミシンが停止し、再起動したと判断することを特徴とする請求項6に記載の縫製システム。
【請求項8】
前記縫製システムは、前記端末装置と通信可能なサーバであって、サーバ記憶部と、サーバ制御部とを有する前記サーバを備え、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記縫製データ送信処理で前記ミシンに送信した前記縫製データに対応する第二模様情報と、前記端末装置を識別する端末情報とを対応付けて前記サーバ記憶部に記憶することを要求する記憶要求を、前記サーバに送信する記憶要求送信処理と、
前記ミシンから前記第一模様情報を受信したことに応じて、前記端末装置の前記端末情報に対応する前記第二模様情報を前記端末装置に送信することを要求する送信要求を、前記サーバに送信する送信要求送信処理と
を更に実行し、
前記サーバの前記サーバ制御部は、
前記端末装置から前記記憶要求を受信したことに応じて、前記第二模様情報と前記端末装置の前記端末情報とを対応付けて前記サーバ記憶部に記憶するサーバ記憶処理と、
前記端末装置から前記送信要求を受信したことに応じて、前記サーバ記憶部が記憶する前記端末情報に対応する前記第二模様情報を、前記端末装置に送信するサーバ送信処理と
を実行し、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記条件判断処理において、前記ミシンから前記第一模様情報を受信したことに応じて、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記サーバから送信された前記第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応するか否かを判断することを特徴とする請求項2に記載の縫製システム。
【請求項9】
前記端末装置は、報知部を更に備え、
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記縫製データ受信処理後、前記ミシン通信部を介して、前記縫製制御処理の実行状況を前記端末装置に送信する状況送信処理を実行し、
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記端末装置を起動時に、前記ミシンが前記縫製制御処理を実行中に前記端末装置が再起動されたか否かを判断する第二判断処理と、
前記第二判断処理で、前記端末装置が再起動されたと判断されない場合に、複数の刺繍模様の中から一つの前記刺繍模様を選択する選択操作を受け付ける選択受付処理とを実行し、
前記縫製データ送信処理において、前記装置通信部を介して、前記選択受付処理で選択された前記刺繍模様の前記縫製データを送信し、
前記縫製データを前記ミシンに送信後、前記ミシンにより送信された前記実行状況を前記報知部で報知する報知処理と、
前記第二判断処理で、前記端末装置が再起動されたと判断され、且つ、前記ミシン記憶部に記憶された前記第一模様情報が、前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応する場合に、前記報知処理を再開させる報知再開処理と
を実行することを特徴とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項10】
前記端末装置の前記装置制御部は、
前記第二判断処理で、前記端末装置が再起動されたと判断された場合に、前記装置通信部を介し、前記ミシンに前記第一模様情報を前記端末装置に送信することを要求する接続要求を送信する接続要求送信処理と、
前記装置通信部を介して、前記ミシンから前記第一模様情報を受信したことに応じて、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応するか否かを判断する条件判断処理とを更に実行し、
前記報知再開処理において、前記装置通信部を介して、前記ミシンから受信した前記第一模様情報が、前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応すると判断された場合に、前記報知処理を再開させ、
前記ミシンの前記ミシン制御部は、
前記接続要求を受信したことに応じて、前記ミシン記憶部に記憶された前記第一模様情報を前記端末装置に送信する接続要求応答処理を更に実行することを特徴とする請求項9に記載の縫製システム。
【請求項11】
ミシンと通信可能な通信部と制御部とを備える端末装置の前記制御部により実行されるモニタリングプログラムであって、
前記ミシンで刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、
前記通信部を介して、前記縫製データを前記ミシンに送信する縫製データ送信処理と、
前記ミシンが、前記縫製データに従って前記刺繍模様を縫製中に再起動したと判断され、且つ、前記ミシンの不揮発性の記憶部に記憶された、前記縫製データに対応する第一模様情報が、前記縫製データ送信処理で前記ミシンに送信した前記縫製データに対応する場合に、前記通信部を介して、前記縫製データに対応する復元データを前記ミシンに送信する復元データ送信処理と
を実行する指令を含むことを特徴とするモニタリングプログラム。
【請求項12】
針棒と、
端末装置と通信する通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記通信部を介して、前記端末装置から送信された、刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを受信する縫製データ受信処理と、
前記縫製データに基づき、前記針棒を駆動して、前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理と、
前記縫製制御処理の実行中に再起動された場合に、前記通信部を介して、前記端末装置から前記縫製データに対応する復元データを受信したことに応じて、前記復元データに基づき、前記針棒を駆動して、前記縫製制御処理を再開させる縫製再開処理と
を実行することを特徴とするミシン。
【請求項13】
不揮発性の第一記憶部と、
揮発性の第二記憶部とを更に備え、
前記制御部は、
前記縫製データを受信したことに応じて、受信した前記縫製データを前記第二記憶部に記憶する縫製データ記憶処理と、
前記縫製制御処理を実行中に、前記縫製データに基づき縫製済みの針数を前記第一記憶部に記憶する針数記憶処理とを更に実行し、
前記縫製再開処理において、前記ミシンを再起動時に、前記通信部を介して、前記端末装置から前記復元データを受信したことに応じて、前記復元データと前記第一記憶部に記憶される前記縫製済みの針数とに基づき、前記針棒を駆動して、前記縫製制御処理を再開させることを特徴とする請求項12に記載のミシン。
【請求項14】
前記制御部は、
前記ミシンを起動時に、前記縫製制御処理の実行中に前記ミシンが再起動したか否かを判断する判断処理を更に実行し、
前記縫製再開処理において、前記判断処理で、前記縫製制御処理の実行中に前記ミシンが再起動したと判断された場合に、前記通信部を介して、前記端末装置から前記復元データを受信したことに応じて、前記復元データと前記第一記憶部に記憶される前記縫製済みの針数とに基づき、前記針棒を駆動して、前記縫製制御処理を再開させることを特徴とする請求項13に記載のミシン。
【請求項15】
前記制御部は、
前記縫製データ受信処理で受信した前記縫製データに対応する第一模様情報を、前記第一記憶部に記憶する模様情報記憶処理と、
前記判断処理で前記ミシンが再起動したと判断された場合に、前記通信部を介して、前記第一記憶部に記憶された前記第一模様情報を前記端末装置に送信する模様情報送信処理を実行し、
前記縫製再開処理において、前記模様情報送信処理後、前記端末装置から前記復元データを受信したことに応じて、前記復元データと前記第一記憶部に記憶される前記縫製済みの針数とに基づき、前記針棒を駆動して、前記縫製制御処理を再開させることを特徴とする請求項14に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製システム、モニタリングプログラム、及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の刺繍状況確認システムのミシンは、刺繍している刺繍データを記憶する一時記憶部と、刺繍データを基にユニークなコードに変換する第1のCRCデータ変換部とを有する。刺繍状況確認装置は、ミシンが刺繍している刺繍データであって、無線ネットワークを介して転送された刺繍データを記憶する一時記憶部と、一時記憶部に記憶された刺繍データを基にユニークなコードに変換する第2のCRCデータ変換部と、CRCデータ比較部とを有する。CRCデータ比較部は、第1のCRCデータ変換部と第2のCRCデータ変換部とで変換したコード同士を比較する。刺繍状況確認装置は、第1のCRCデータ変換部と第2のCRCデータ変換部とで変換したコードが同じである場合に、ステータスデータの要求を行う。刺繍状況確認装置は、第1のCRCデータ変換部と第2のCRCデータ変換部とで変換したコードが異なる場合に、刺繍データの要求を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-33468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムでは、刺繍データが装置からミシンに送信される場合を想定していない。このため従来のシステムでは、装置からミシンに送信された刺繍データに基づいて、ミシンで刺繍模様を縫製中に、ユーザが不意にミシンの電源コードを抜いてしまう等によりミシンの再起動が必要になった場合に、刺繍模様の縫製を再開できない。
【0005】
本発明の目的は、端末装置から無線送信された縫製データに従って、ミシンで刺繍模様の縫製を行うシステムにおいて、ミシンで刺繍模様を縫製中にミシンの再起動が必要になった場合の利便性を向上させた縫製システム、モニタリングプログラム、及びミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る縫製システムは、針棒と、不揮発性のミシン記憶部と、ミシン通信部と、ミシン制御部とを有するミシンと、前記ミシンと通信可能な装置通信部と、装置制御部とを有する端末装置とを備える縫製システムであって、前記端末装置の前記装置制御部は、前記ミシンで刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、前記装置通信部を介して、前記縫製データを前記ミシンに送信する縫製データ送信処理と、を実行し、前記ミシンの前記ミシン制御部は、前記ミシン通信部を介して、前記縫製データ送信処で送信された前記縫製データを受信する縫製データ受信処理と、前記縫製データを受信したことに応じて、前記縫製データに対応する第一模様情報を前記ミシン記憶部に記憶する模様情報記憶処理と、前記縫製データに基づき、前記針棒を駆動して、前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理と、前記ミシンを起動時に、前記縫製制御処理を実行中に前記ミシンが停止し、再起動したか否かを判断する第一判断処理と、を実行し、前記端末装置の前記装置制御部は、前記第一判断処理で、前記ミシンが再起動したと判断され、且つ、再起動された前記ミシンの前記ミシン記憶部に記憶された前記第一模様情報が、前記ミシンの再起動前に前記端末装置が前記ミシンに送信した前記縫製データに対応する場合に、前記装置通信部を介して、前記縫製データに対応する復元データを前記ミシンに送信する復元データ送信処理を更に実行し、前記ミシンの前記ミシン制御部は、前記第一判断処理後、前記ミシン通信部を介して、前記端末装置から前記復元データを受信したことに応じて、前記復元データに基づき、前記針棒を駆動して、前記縫製制御処理を再開させる縫製再開処理を実行する。第一態様の縫製システムのミシンは、ミシンで刺繍模様を縫製中にミシンが再起動された場合に、端末装置から送信された復元データに基づき、刺繍模様の縫製を再開することに貢献する。縫製システムの端末装置は、再起動されたミシンのミシン記憶部に記憶された第一模様情報が、再起動前に端末装置がミシンに送信した縫製データに対応する場合に、ミシンに復元データを送信するので、縫製を再開する必要のない別のミシンといった意図しないミシンに、復元データを誤送することを回避することに貢献する。
【0007】
本発明の第二態様に係るモニタリングプログラムは、ミシンと通信可能な通信部と、制御部とを備える端末装置の前記制御部により実行されるモニタリングプログラムであって、前記ミシンで刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する取得処理と、前記通信部を介して、前記縫製データを前記ミシンに送信する縫製データ送信処理と、前記ミシンが、前記縫製データに従って前記刺繍模様を縫製中に再起動したと判断され、且つ、前記ミシンの不揮発性の記憶部に記憶された、前記縫製データに対応する第一模様情報が、前記縫製データ送信処理で前記ミシンに送信した前記縫製データに対応する場合に、前記通信部を介して、前記縫製データに対応する復元データを前記ミシンに送信する復元データ送信処理とを実行する指令を含む。第二態様のモニタリングプログラムは、ミシンで刺繍模様を縫製中にミシンが再起動された場合に、端末装置の制御部に、縫製データに対応する復元データをミシンに対して送信させることで、再起動後のミシンで刺繍模様の縫製を再開させることに貢献する。第二態様のモニタリングプログラムは、再起動されたミシンのミシン記憶部に記憶された第一模様情報が、再起動前に端末装置がミシンに送信した縫製データに対応する場合に、ミシンに復元データを送信させる指令を含むので、縫製を再開する必要のない別のミシンといった意図しないミシンに、復元データを誤送することを回避することに貢献する。
【0008】
本発明の第三態様に係るミシンは、針棒と、不揮発性の第一記憶部と、端末装置と通信する通信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記通信部を介して、前記端末装置から送信された、刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを受信する縫製データ受信処理と、前記縫製データを受信したことに応じて、前記縫製データに対応する第一模様情報を前記第一記憶部に記憶する模様情報記憶処理と、前記縫製データに基づき、前記針棒を駆動して、前記刺繍模様を縫製する縫製制御処理と、前記縫製制御処理の実行中に再起動された場合に、前記通信部を介して、前記端末装置から前記縫製データに対応する復元データを受信したことに応じて、前記復元データに基づき、前記針棒を駆動して、前記縫製制御処理を再開させる縫製再開処理とを実行する。第三態様のミシンは、ミシンで刺繍模様を縫製中にミシンが再起動された場合に、端末装置から送信された復元データに基づき、刺繍模様の縫製を再開することに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ミシン1の斜視図である。
図2】ミシン1、端末装置2、及びサーバ3を備える縫製システム4の電気的構成を示すブロック図である。
図3】縫製システム4で実行される端末処理のフローチャートである。
図4】端末装置2の表示部28に表示される画面G1からG4の遷移の説明図である。
図5】縫製データB1、B2、補正データB3、及び編集データB4の説明図である。
図6】縫製システム4で実行されるミシン処理とのフローチャートである。
図7】変形例の縫製システム4で実行されるサーバ処理と、端末処理とのフローチャートである。
図8】変形例の縫製システム4で実行されるサーバ処理と、端末処理とのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照し、本発明の一実施形態を説明する。図1を参照し、本実施形態の縫製システム4(以下、「システム4」という。)のミシン1の構成を説明する。図1の上方、下方、右下方、左上方、左下方、及び右上方が各々、ミシン1の上方、下方、前方、後方、左方、及び右方である。ベッド部11及びアーム部13の長手方向がミシン1の左右方向である。脚柱部12が配置されている側が右側である。脚柱部12の伸長方向がミシン1の上下方向である。
【0011】
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部11、脚柱部12、アーム部13、頭部14、及びキャリッジ50を備える。ベッド部11は、左右方向に延びるミシン1の土台部である。ベッド部11は、基部15、足部16、及びフリーアーム部17を有する。基部15は、ベッド部11の左右方向の略中央よりも右方の部分である。基部15は、内部にミシンモータ76(図2参照)を備える。足部16は、平面視右方が開口するU字形状の丸棒状の部分であり、足部16の右端部は、基部15の左端部下部に連結する。フリーアーム部17は、基部15の左端部上部から左方へ向けて延びる略四角柱形状の部分である。ミシン1は、フリーアーム部17の上面に針板10を備え、フリーアーム部17の内部に、図示しない釜機構等を備える。釜機構は、針板10の下方において、上糸(図示略)を下糸(図示略)に絡ませる。
【0012】
脚柱部12は、ベッド部11の右端部から上方に延びる。脚柱部12の上部には、糸立て19が設けられる。糸立て19は、上糸が巻回された糸駒(図示略)を保持できる。アーム部13は、脚柱部12の上端部から左方へ向けてベッド部11と平行に延びる。アーム部13内部には、左右方向に延びる主軸(図示略)が設けられる。主軸は、ミシンモータ76により回転駆動される。頭部14は、アーム部13の左先端部に連結する。頭部14には、刺繍模様を縫製可能な縫製部68が設けられる。縫製部68は、針棒6、針棒機構18(図2参照)、及び押え棒8を備える。針棒6の下端には、縫針7が着脱可能に装着される。押え棒8の下端部には、押え足9が着脱可能に装着される。針棒6は、主軸の回転により上下方向に駆動される。
【0013】
移動機構45は、ホルダ46、及びキャリッジ50を備え、ホルダ46を固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される位置に移動可能である。刺繍座標系のX方向及びY方向は各々、ミシン1の左右方向及び前後方向に対応する。キャリッジ50は、刺繍枠40に保持された被縫製物を、針棒6に対して相対的に、前後方向及び左右方向へ移動可能に構成される。キャリッジ50は、アーム部13の内部に設けられた支持部に支持されて、アーム部13から左右方向に移動可能に吊り下げられる。キャリッジ50は、ホルダ46を前後方向に移動可能である。
【0014】
刺繍枠40は被縫製物を保持する枠体である。被縫製物は、例えば加工布である。本実施形態の刺繍枠40は平面視で略正方形状であるが、刺繍内容に応じて、矩形状、円形状、及び長円形状の刺繍枠が適宜選択されてもよい。刺繍枠40は、右側に、キャリッジ50のホルダ46に連結するための連結部41を有する。
【0015】
図2を参照して、システム4が備えるサーバ3、端末装置2、及びミシン1との電気的構成を説明する。システム4は、サーバ3が提供するウェブアプリを利用して端末装置2で選択された縫製データに基づき、ミシン1で刺繍模様を縫製可能に構成されている。
【0016】
サーバ3は、CPU31、ROM32、RAM33、記憶部34、及び通信部35を備える。CPU31は、サーバ3の制御を司る。CPU31は、バス36を介して、ROM32、RAM33、記憶部34、及び通信部35と電気的に接続する。ROM32には、ブートプログラム及びBIOS等が記憶される。RAM33には、一時的なデータが記憶される。記憶部34は、HDD及びSSD等の不揮発性の記憶装置である。通信部35は、サーバ3をネットワーク5に接続するためのインターフェイスである。CPU31は、通信部35を介して、ネットワーク5に接続する他の機器(例えば、端末装置2)とデータの送受信を実行できる。
【0017】
端末装置2は、CPU21、ROM22、RAM23、記憶部24、第一通信部25、第二通信部30、及び入出力インターフェイス27を備える。CPU21は、端末装置2の制御を司る。CPU21は、バス26を介して、ROM22、RAM23、記憶部24、第一通信部25、第二通信部30、及び入出力インターフェイス27と電気的に接続する。ROM22には、ブートプログラム及びBIOS等が記憶される。RAM23には、一時的なデータが記憶される。記憶部24は、不揮発性の記憶装置である。記憶部24には、後述の端末処理の実行に必要な各種設定値が記憶される。第一通信部25は、端末装置2をネットワーク5に接続するためのインターフェイスである。CPU21は、第一通信部25を介して、ネットワーク5に接続する他の機器(例えば、サーバ3)とデータの送受信を実行できる。第二通信部30は、端末装置2をミシン1に接続するためのインターフェイスである。第二通信部30は、第一通信部25とは互いに異なる方式のインターフェイスであり、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信規格のインターフェイスである。入出力インターフェイス27は、表示部28及び入力部29と接続されている。表示部28は、例えば、液晶ディスプレイである。入力部29は、例えば、タッチスクリーンであり、各種指示を入力する場合に用いられる。
【0018】
ミシン1の制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63、記憶部64、入出力インターフェイス66、及び通信部67を備えている。CPU61は、バス65を介して、ROM62、RAM63、記憶部64、入出力インターフェイス66、及び通信部67と接続されている。入出力インターフェイス66には、駆動回路71、73、74、スイッチ47、LED48、及びスピーカ49が接続されている。記憶部64は、不揮発性の記憶装置である。記憶部64は、後述のミシン処理の実行に必要な各種設定値を記憶する。
【0019】
駆動回路71には、ミシンモータ76が接続される。駆動回路71は、CPU61からの制御信号に従って、ミシンモータ76を駆動する。ミシンモータ76の駆動に伴い、ミシン1の主軸(図示略)を介して針棒機構18が駆動され、針棒6が上下動する。駆動回路73には、Xモータ43が接続される。駆動回路74には、Yモータ42が接続される。駆動回路73及び駆動回路74は各々、CPU61からの制御信号に従って、Xモータ43及びYモータ42を駆動する。Xモータ43及びYモータ42の駆動に伴い、制御信号に応じた移動量だけ、移動機構45に装着された刺繍枠40が左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動する。通信部67は、ミシン1を端末装置2に接続するためのインターフェイスである。通信部67は、端末装置2の第二通信部30に対応する、近距離無線通信規格のインターフェイスである。CPU61は、通信部67を介して、端末装置2とデータの送受信を実行できる。スイッチ47は、縫製の開始又は停止を指示するのに用いられる。LED48は、スイッチ47の内側に配置され、点滅、点灯、及び消灯のパターンにより、ミシン1の動作状況を報知する。本例のLED48は、赤色と緑色との二種類のLEDを含む。ミシン1の動作状況は、停止中、縫製中、及び縫製完了を含む。スピーカ49は、音声を出力する。
【0020】
ミシン1の動作を簡単に説明する。ミシン1は、刺繍枠40が移動機構45によってX方向及びY方向に移動されることと併せて、針棒機構18及び釜機構が駆動される。これにより、針棒6に装着された縫針7によって、刺繍枠40に保持された被縫製物に対して刺繍模様が縫製される。
【0021】
図3から図6を参照して、システム4の端末装置2のCPU21、及びミシン1のCPU61が協働して、縫製データ及び編集データに基づき刺繍模様を縫製するための端末処理、及びミシン処理を順に説明する。図3に示す端末処理は、端末装置2のCPU21によって実行される処理である。CPU21は、端末処理の起動指示が取得された場合に、ROM22に記憶されたモニタリングプログラムをRAM23に読み出して端末処理を実行する。以下、ステップをSと略記する。一例として、図4の画面G1に表示された刺繍模様Eの縫製を行う場合を説明する。刺繍模様Eは、四色の糸で縫製される花束の模様である。本例の刺繍模様Eは、糸色毎に区分される、四つの部分模様を含む。端末処理、及びミシン処理が開始される段階では、端末装置2とミシン1との間の通信が既に確立されている。
【0022】
図3に示すように、CPU21は、端末装置2を起動時に、ミシン1が縫製制御処理を実行中に端末装置2の端末処理が再起動されたか否かを判断する(S1)。端末装置2は、端末処理を実行中に、不意に端末装置2の電源が落ちた場合、又は端末処理を実行するモニタリングプログラムが意図せず終了された場合に、実行中の端末処理を強制的に終了し、端末処理を再起動させる。ここでの端末装置2の起動及び再起動は、端末装置2の電源が投入されたこと、又は端末処理を実行するモニタリングプログラムが実行開始されたことを示す。CPU21は、端末装置2が起動されたとき、ミシン1に送信した縫製データに対応する第二模様情報が記憶部24に記憶されている場合に、ミシン1が縫製制御処理を実行中に端末装置2の端末処理が再起動されたと判断する(S1)。後述のように本例のCPU21は、ミシン1に縫製データを送信した場合、縫製データに応じた第二模様情報を記憶部24に記憶する。本例の第二模様情報は、縫製データの識別情報(ID)である。CPU21は、縫製データを受信したミシン1から、縫製データに基づく縫製が終了したことを通知された場合に、第二模様情報を記憶部24から削除する。このためCPU21は、端末処理を起動時に、記憶部24に第二模様情報が記憶されている場合、CPU21が縫製データをミシン1に送信後、縫製データに基づく縫製が終了していない状態で、端末処理が再起動したと判断できる。
【0023】
端末装置2が再起動されたと判断されない場合(S1:NO)、CPU21は、ミシン1で縫製する刺繍模様の複数の候補を表示部28に表示し、入力部29の入力結果に基づき、表示部28に表示された複数の刺繍模様の中から、ミシン1で縫製する刺繍模様が選択されたか否かを判断する(S5)。ユーザは、入力部29を介して、表示部28に表示された複数の候補の中から所望の刺繍模様を選択する指示を入力する。刺繍模様が選択されない場合(S5:NO)、CPU21は、刺繍模様が選択されるまでS5で待機する。刺繍模様Eを選択する指示が検出された場合(S5:YES)、CPU21は、ミシン1に確認要求を送信する(S6)。確認要求は、ミシン1が縫製可能な状態か否かをミシン1に確認するために、端末装置2からミシン1に送信される要求である。ミシン1のCPU61は、確認要求の受信に応じて、ミシン1の状態を表す情報を、確認要求を送信した端末装置2に送信する。ミシン1の状態を表す情報は、例えば、ミシン1が縫製可能な状態か否かを示す情報である。
【0024】
CPU21は、S5で選択を受け付けた刺繍模様Eを、ミシン1を用いて縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する(S7)。図5に示すように、縫製データB1は、糸色毎に区分された部分模様を縫製するための複数の部分縫製データを含む。複数の部分縫製データは、縫製順に記憶される。部分縫製データC1、C2を含む複数の部分縫製データは各々、糸色データ、フィードデータ、及び針落ち位置データを含む。糸色データは、刺繍模様Eを縫製するための糸の色を示す。フィードデータは、部分模様の縫製開始位置を刺繍座標系の座標で示すデータである。針落ち位置データは、針落ち点の位置を刺繍座標系の座標で示すデータであり、針落ち点毎の複数の座標を表すデータ群を含む。縫製データは、端末装置2の記憶部24に記憶されたデータでもよいし、S5で刺繍模様Eが選択されたことに応じて、サーバ3から取得されたデータでもよい。
【0025】
CPU21は、ミシン1から送信されたミシン1の状態を表す情報を受信する迄待機し(S8:NO)、ミシン1の状態を表す情報を受信した場合(S8:YES)、プレビュー表示として画面G1を表示部28に表示する(S9)。画面G1は、欄84、及びキー85、86を含む。欄84は、S5で選択された刺繍模様Eがミシン1で縫製される場合の縫製イメージを表示する。欄84の大きさ及び形状は、ミシン1で使用される予定の刺繍枠40の内側に設定される縫製領域の大きさ及び形状に対応する。縫製領域の大きさ及び形状は、ユーザによって入力されてもよいし、ミシン1から取得されてもよい。画面G1の左右方向及び上下方向は各々、刺繍座標系のX方向及びY方向に対応する。欄84に対する刺繍模様Eの配置は、刺繍模様Eがミシン1で縫製される場合の、縫製領域に対する刺繍模様Eの配置を表す。キー85は、刺繍模様Eの選択をキャンセルする場合に選択される。キー86は、欄84に表示された、選択中の刺繍模様Eの大きさ、角度、及び位置といった配置を編集する場合に選択される。
【0026】
CPU21は、キー86の選択が検出される迄待機する(S10:NO)。キー86の選択が検出された場合(S10:YES)、CPU21は、選択中の縫製データをミシン1に送信する処理を開始する(S11)。CPU21は、S12での編集操作を受け付ける処理終了前に、縫製データの少なくとも一部がミシン1に送信される。本例のCPU21は、S7で取得された縫製データB1のうちの針落ち位置データを含む縫製データB2をミシン1に送信し、糸色データはミシン1に送信しない。縫製データB2は、部分縫製データD1、D2を含む複数の部分縫製データを有する。縫製データB2には、糸色データは含まれず、フィードデータ及び針位置データが含まれる。
【0027】
CPU21は、S11の処理の実行開始後に、画面G2を表示部28に表示し、入力部29への、刺繍模様Eを編集する編集操作の受け付けを開始する(S12)。画面G2は、欄84、及びキー85、87を含む。キー87は、刺繍模様Eの配置を表す編集データをミシン1に転送する指示を入力する場合に選択される。ユーザは、欄84内で刺繍模様Eの配置を編集する指示を入力できる。画面G2では、編集操作後の刺繍模様Eを示す。本例のCPU21は、刺繍模様Eの大きさ、角度、及び位置といった配置の編集操作を受け付ける。刺繍模様Eの大きさの編集操作は、例えば、ユーザの指二本で入力部29をピンチするピンチ操作により実現される。刺繍模様Eの角度、及び位置の編集操作は、例えば、ユーザの指で入力部29をスワイプする操作により実現される。具体例において、刺繍模様Eの大きさを1.7倍し、角度を20度時計回りに回転し、及び左方に移動するユーザの操作に応じて、刺繍模様Eの大きさ、角度、及び位置の編集操作が検出された場合(S12:YES)、CPU21は、編集操作に応じた編集データを取得し、編集データに基づき刺繍模様Eを編集して、画面G2に示すように、表示部28の欄84に表示された刺繍模様Eを更新する(S13)。
【0028】
図5に示すように、具体例の編集データB4は、刺繍模様Eの大きさを示すサイズデータ、基準角度に対する刺繍模様Eの角度を示す角度データ、及び基準位置に対する刺繍模様Eの位置を示す位置データを含む。基準角度及び基準位置は、相対的な基準であってもよいし、絶対的な基準であってもよい。例えば、基準角度は、S7で取得された縫製データによって示される初期の刺繍模様Eの角度であってもよい。基準位置は、S7で取得された縫製データによって示される初期の刺繍模様Eの位置であってもよい。
【0029】
編集操作が検出されない場合(S12:NO)、又はS13で編集処理が実行された場合、CPU21は、キー87の選択を検出したかを判断する(S14)。キー87の選択が検出されない場合(S14:NO)、CPU21は、処理をS12に戻す。キー87の選択が検出された場合(S14:YES)、CPU21は、ミシン1にS13で取得された編集データB4をミシン1に送信する(S15)。
【0030】
端末装置2のCPU21は、ミシン1からの受信完了通知を受信する迄待機する(S16:NO)。受信完了通知は、縫製データB2、及び編集データB4がミシン1で受信完了された場合に、ミシン1から端末装置2に送信される。ミシン1からの受信完了通知が受信された場合(S16:YES)、CPU21は、S11の処理でミシン1に送信した縫製データに対応する第二模様情報を、記憶部24に記憶する(S17)。CPU21は、ミシン1のモニタリング状況を表示部28に表示する処理を開始し(S18)、S7で取得された縫製データに基づき、刺繍模様Eのうち、縫製順序が一番目の部分模様の糸色の糸をミシン1に装着することを促すメッセージ89を表示部28に表示する(S19)。図4に示すように、画面G3は、モニタリング状況88、メッセージ89、欄84、及びキー85を含む。モニタリング状況88は、ミシン1から送信される実行状況に基づき表示される。メッセージ89は、ミシン1からの通知と、S7で取得された縫製データに含まれる糸色データとに基づき表示される糸替えを促すメッセージである。
【0031】
端末装置2のCPU21は、ミシン1から縫製開始通知を受信する迄待機する(S20:NO)、縫製開始通知が受信された場合(S20:YES)、CPU21は、表示部28に表示されるモニタリング状況を「縫製中」に変更する(S21)。
【0032】
端末装置2のCPU21は、ミシン1から糸替通知を受信したか否かを判断する(S26)。糸替通知が受信された場合(S26:YES)、CPU21は、表示部28に表示されたモニタリング状況を、「停止中」に変更し、S7取得された縫製データに基づき、縫製順序が次の部分模様の糸色を表示部28に表示する(S27)。CPU21は、処理をS20に戻す。ユーザは、端末装置2の表示部28に表示された糸色の糸をミシン1に装着後、スイッチ47を押下して縫製指示を入力し、縫製を再開させる。糸替通知が受信されない場合(S26:NO)、CPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したか否かを判断する(S28)。
【0033】
後述するように、ミシン1は、端末装置2から送信された縫製データを受信したことに応じて、受信された縫製データに対応する第一模様情報を記憶部64に記憶する。第一模様情報は、縫製データに応じた情報であればよく、本例では、縫製データの識別情報(ID)である。第一模様情報を受信した場合(S28:YES)、CPU21は、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S29)。本例のCPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、ミシン1から受信した第一模様情報が、S17で記憶部24に記憶した第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S29)。
【0034】
ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応すると判断される場合(S29:YES)、第二通信部30を介して、縫製データに対応する復元データをミシン1に送信する(S30)。復元データは、縫製データに基づく縫製を再開させるために必要なデータであり、S11でミシン1に送信された縫製データの一部又は全部を含む。本例のCPU21は、縫製データと、編集データとを互いに異なるタイミングで送信している。復元データは、縫製データを編集データに基づき補正したデータであってもよいし、縫製データと、編集データとを個別に含むデータであってもよい。CPU21は、ミシン1から通知された縫製済みの針数に基づき、S11で送信した縫製データのうちの、縫製済みの針数に対応する針数以降の縫目を縫製するための針落ち位置データを含み、縫製済みの針落ち位置データは含まないデータを復元データとしてもよい。縫製済みの針数に対応する針数は、ミシン1から通知された縫製済みの針数そのものであってもよいし、ミシン1から通知された縫製済みの針数を所定量増減させた針数であってもよい。所定量はユーザが設定してもよいし、予め設定された値でもよい。本例の復元データは、縫製データと、編集データとを個別に含むデータである。
【0035】
S30の後、CPU21は、表示部28に画面G4を表示して、処理をS20に戻し、復元データに基づき縫製が再開された通知を受信するまで待機する(S20)。画面G4のメッセージ89は、ミシン1での刺繍模様Eの縫製を再開することを促すメッセージである。ユーザは、端末装置2の表示部28を確認後、ミシン1に縫製再開の指示を入力する。ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応すると判断されない場合(S29:NO)、CPU21は、処理をS5に戻す。ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応すると判断されない場合(S29:NO)は、例えば、現在、端末処理を実行する端末装置2が、S28における第一模様情報を送信したミシン1に、縫製データを送信した端末装置2とは異なる端末装置である場合である。この場合、CPU21は、S5に戻り、縫製データを送信したミシン1とは異なるミシンとの端末処理をやり直す。CPU21は、端末装置2の再起動により中断された端末処理は再開せず、縫製データを送信したミシン1とは異なるミシンと、新たな端末処理を開始することを示すメッセージを表示部28に表示してもよい。
【0036】
第一模様情報を受信していない場合(S28:YES)、CPU21は、ミシン1から縫製完了を示す完了通知を受信したかを判断する(S31)。完了通知が受信されない場合(S31:NO)、CPU21は、処理をS26に戻す。完了通知が受信された場合(S31:YES)、CPU21は、表示部28に表示されたモニタリング状況を「縫製完了」に変更する(S32)。CPU21は、続けて縫製するか否かを判断する(S33)。続けて刺繍模様を縫製する指示が検出された場合(S33:YES)、CPU21は、端末処理及びミシン処理を継続することを通知する継続通知をミシン1に送信して(S35)、処理をS5に戻す。続けて縫製する指示が検出されない場合(S33:NO)、CPU21は、端末処理及びミシン処理を終了することを通知する終了通知をミシン1に送信する(S34)。
【0037】
CPU21は、ミシン1から削除通知を受信する迄待機する(S36:NO)。ミシン1から削除通知を受信した場合(S36:YES)、CPU21は、ミシン1のモニタリングを終了し(S37)、S17で記憶部24に記憶した第二模様情報を削除する(S38)。CPU21は、以上で端末処理を終了する。
【0038】
端末処理の起動時において、ミシン1が縫製制御処理を実行中に、端末装置2の端末処理が再起動されたと判断された場合(S1:YES)、CPU21は、第二通信部30を介して、接続要求をミシン1に送信する(S2)。接続要求は、ミシン1に記憶部64に記憶されている第一模様情報を端末装置2に送信することを、ミシン1に要求するものである。CPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信する迄待機する(S3:NO)。ミシン1から第一模様情報を受信した場合(S3:YES)、CPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S4)。S29の処理と同様に、CPU21は、ミシン1から受信した第一模様情報が、記憶部24に記憶された第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S4)。
【0039】
ミシン1から受信した第一模様情報が、記憶部24に記憶された第二模様情報と一致しない場合(S4:NO)、CPU21は処理をS5に移行する。このように判断される場合は、例えば、ミシン1が縫製制御処理を実行中に、端末装置2の端末処理が再起動されたと判断されるが、第一模様情報を送信したミシン1が、端末装置2が再起動前に縫製データを送信したミシン1とは異なる場合である。端末装置2が再起動されたと判断され(S1:YES)、且つ、記憶部64に記憶された第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応する場合に(S4:YES)、CPU21は、モニタリングを再開し、ミシン1により送信された実行状況を表示部28に表示する処理を再開させる(S25)。本例のCPU21は、実行状況としてミシン1から送信された縫製済みの針数を表示部38に表示する。例えば、CPU21は、実行状況として送信された縫製済みの針数に基づき、刺繍模様全体の針数のうち、現在どこまで縫製されたかを表示する。この場合CPU21は、実行状況を数値により表示してもよいし、欄84に表示される刺繍模様Eのうち、縫製済みの部分の色を灰色にする等、適宜変更して表してもよい。CPU21は、S26に処理を移行する。
【0040】
図6を参照して、ミシン1が実行するミシン処理を説明する。CPU61は、ミシン1の起動に応じて、ROM62に記憶されたプログラムをRAM63に読み出してミシン処理を実行する。
【0041】
図6に示すように、ミシン1のCPU61は、ミシン1を起動時に、端末装置2から送信された縫製データに従って刺繍模様を縫製する処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したか否かを判断する(S41)。CPU61は、不揮発性の記憶部64に所定の情報が記憶されている場合に、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したと判断する。所定の情報は、例えば、縫製制御処理を実行中であるか否かを示す状態フラグであってもよい。この場合CPU61は、後述のように状態フラグを記憶部64に記憶する処理を実行し(S51、S55、S62)、CPU61は、ミシン1を起動時に、状態フラグに基づき縫製制御処理を実行中であると判断される場合に、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したと判断してもよい(S41:YES)。所定の情報は、端末装置2から送信される縫製データに対応する第一模様情報と、縫製データに従って縫製中に記憶された縫製済みの針数とでもよい。この場合CPU61は、ミシン1を起動時に、記憶部64に縫製済みの針数と第一模様情報とが記憶されている場合に、S71で、針数と第一模様情報とが削除される削除処理が実行されておらず、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したと判断してもよい(S41:YES)。
【0042】
ミシン1が、端末装置2から送信された縫製データに従って刺繍模様Eを縫製する処理を実行中にミシン1が停止し、再起動をしていない場合(S41:NO)。CPU61は、端末装置2から送信された確認要求を受信する迄待機する(S42:NO)。確認要求が受信された場合(S42:YES)、CPU61は、確認要求を送信した端末装置2に対し、ミシン1の状態を送信する(S43)。CPU61は、端末装置2のCPU21から送信された縫製データの受信を検出する迄待機する(S44:NO)、縫製データの受信が検出された場合(S44:YES)、CPU61は、縫製データの受信を開始し、受信された縫製データを記憶部64ではなく、RAM63に記憶する(S45)。CPU61は、端末装置2から受信した縫製データに対応する第一模様情報を記憶部64に記憶させる(S45)。このようにすることで、ミシン1の電源が落ちた場合には、RAM63に記憶された縫製データは消失する。一方で、ミシン1の電源が落ちた場合にも、第一模様情報は記憶部64に記憶された状態が維持され、消失しない。端末装置2から受信した縫製データは、ミシン1の電源が落ちた場合に自動的に消失するので、縫製済みの不要な縫製データが記憶部64に溜まったり、記憶部64の記憶容量を圧迫したりしない。
【0043】
CPU61は、端末装置2からの編集データの受信が検出されたか否かを判断する(S46)。編集データの受信が検出されない場合(S46:NO)、CPU61は、処理をS46に戻す。図5に示す編集データB4の受信が検出された場合(S46:YES)、CPU61は、編集データB4を受信し、RAM63に記憶する(S47)。CPU61は、縫製データB2、及び編集データB4を受信完了後、端末装置2に応答し、縫製データB2、及び編集データB4の受信完了通知を端末装置2に送信する(S48)。CPU61は、S45の処理で開始された縫製データの受信が完了しているが、S47の処理で編集データの受信が未完了の場合に、編集データの受信完了まで後述するS50の縫製処理を実行せず、縫製データと編集データとの各々を受信完了後にS52の縫製制御処理を実行する。CPU61は、緑色のLED48を点滅させる。緑色のLED48の点滅は、ミシン1が停止中であることを示す。
【0044】
CPU61は、受信完了された縫製データB2の針落ち位置データを、S38で受信された編集データB4に基づいて補正した補正データB3を生成する(S49)。CPU61は、編集データが角度データを含む場合、針落ち位置データと、角度データとに基づいて、角度データで示される角度の刺繍模様Eを縫製するための補正データを生成する。CPU61は、編集データが位置データを含む場合、針落ち位置データと、位置データとに基づいて、位置データで示される位置に刺繍模様Eを縫製するための補正データを生成する。CPU61は、編集データがサイズデータを含む場合、針落ち位置データと、サイズデータとに基づいて、サイズデータで示される大きさの刺繍模様Eを縫製するための補正データを生成する。CPU61は、編集データがサイズデータを含む場合、補正後の刺繍模様Eの糸密度が所定範囲に収まるように、針落ち位置データの追加又は削除を行ってもよい。補正データB3は、S34で受信開始される縫製データB2とは別に生成されてもよいし、縫製データB2を編集データB4に従って変更することで補正データB3が生成されてもよい。
【0045】
CPU61は、縫製開始の指示が検出される迄待機する(S50:NO)。ユーザは、端末装置2の表示部28に表示された糸色の糸をミシン1に装着後、スイッチ47を押下して縫製開始の指示を入力する。ユーザの操作に応じて、縫製開始の指示が検出された場合(S50:YES)、CPU61は、縫製開始通知を端末装置2に送信する(S51)。CPU61は、値が「縫製中」である状態フラグを記憶部64に記憶する(S51)。
【0046】
ミシン1のCPU61は、S34で受信開始された縫製データB2と、S38で受信された編集データB4とに基づき、編集操作に応じて編集された刺繍模様Eを縫製する処理を開始する(S52)。本例のCPU61は、S41で生成した補正データB3に基づき、刺繍模様Eを縫製する。CPU61は、針落ち位置データに従って、移動機構45、針棒機構18及び釜機構を駆動し、針棒6に装着された縫針7によって、刺繍枠40に保持された被縫製物に対して刺繍模様Eを縫製する。CPU61は、刺繍模様Eの針落ち位置データの内、縫製順序が最後の針落ち位置データに基づく縫目が形成されたか否かに基づき、縫製終了か否かを判断する(S53)。縫製終了ではない場合(S53:NO)、CPU61は、部分模様の針落ち位置データの内、縫製順序が最後の針落ち位置データに基づく縫目が形成されたか否かに基づき、糸替え時期か否かを判断する(S64)。
【0047】
糸替え時期ではない場合(S64:NO)、CPU61は、通信部67を介して端末装置2から接続要求を受信したか否かを判断する(S67)。接続要求を受信した場合(S67:YES)、CPU61は、記憶部64に記憶されている第一模様情報を、接続要求を送信した端末装置2に送信する(S70)。CPU21は、処理をS53に戻す。接続要求を受信していない場合(S67:NO)、CPU21は、縫製済みの針数を記憶部64に記憶し(S68)、通信部67を介して縫製済みの針数を端末装置2に送信し(S69)、処理をS53に戻す。S69の処理は、一針縫製毎に実行される必要はなく、所定の周期毎に実行されてもよい。
【0048】
糸替え時期である場合(S64:YES)、CPU61は、移動機構45、針棒機構18及び釜機構の駆動を停止し(S65)、ミシン1に装着される糸を、縫製順序が次の部分模様を縫製するための糸に交換する時期であることを通知する糸替通知を端末装置2に送信し、赤色のLED48を点灯させる(S66)。赤色のLED48の点灯は、糸替え等により、縫製途中でミシン1が停止中であることを示す。CPU61は、処理をS50に戻す。縫製終了の場合(S53:YES)、CPU61は、移動機構45、針棒機構18及び釜機構の駆動を停止する(S54)。CPU61は、S34で受信開始された縫製データに基づく刺繍模様Eの縫製が完了したことを通知する完了通知を端末装置2に送信し、スピーカ49を制御して完了ブザーを出力する(S55)。CPU61は、緑色のLED48を点滅させる。
【0049】
ミシン1のCPU61は、端末装置2から終了通知を受信したか、又は継続通知が受信されたかを判断する(S56)。終了通知ではなく継続通知が受信された場合(S56:NO)、CPU61は処理をS42に戻す。終了通知が受信された場合(S56:YES)、CPU61は、S44で受信開始されてS45でRAM63に記憶された縫製データ、S46で受信されてRAM63に記憶された編集データ、S45で記憶部64に記憶された第一模様情報、S51で記憶部64に記憶された状態フラグ、S68で記憶部64に記憶された針数、及びS41で生成された補正データの各々を削除する(S71)。CPU61は、LED48を消灯し(S72)、S53の処理によりデータが削除されたことを通知する削除通知を端末装置2に送信する(S73)。CPU61は、以上でミシン処理を終了する。
【0050】
S41で、ミシン1が再起動したと判断された場合(S41:YES)、CPU61は、S45で記憶部64に記憶された第一模様情報を、通信部67を介して端末装置2に送信する(S57)。CPU61は、復元データとして、縫製データを受信したか否かを判断する(S58)。上記のように本例の復元データは、縫製データと、編集データとを含む。縫製データを受信していない場合(S58:NO)、CPU61は、確認要求を受信したか否かを判断する(S59)。確認要求を受信した場合(S59:YES)、CPU61は処理をS43に移行する。確認要求を受信していない場合(S59:NO)、CPU61は、処理をS58に戻す。確認要求を受信した場合(S59:YES)は、端末装置2において、ミシン1が送信した第一模様情報が、端末装置2の記憶部24に記憶された第二模様情報と一致しないと判断された場合である。つまり、CPU61がS57で送信した第一模様情報が、ミシン1に縫製データを送信した端末装置2とは別の端末装置に送信された場合である。この場合、CPU61は、処理をS43に移行して、ミシン1の再起動により中断した刺繍模様Eの縫製を再開する処理は行わず、新たな刺繍模様Eを縫製する処理を実行する。CPU61は、ミシン1の再起動により中断した刺繍模様Eの縫製を再開する処理は行わないことを示すエラーを報知してもよいし、端末装置2にエラーを報知する要求を送信し、端末装置2の表示部28にエラーを表示させてもよい。
【0051】
縫製データを受信した場合(S58:YES)、CPU61は、記憶部64に記憶された縫製済みの針数を取得する(S60)。CPU61は、縫製再開の指示が入力されるまで待機する(S61:NO)。ミシン1のユーザは、スイッチ47を押下して、縫製開始の指示を入力する。縫製再開の指示が検出された場合(S61:YES)、CPU61は、通信部67を介して、縫製再開通知を端末装置2に送信し、値が「縫製中」である状態フラグを記憶部64に記憶する(S62)CPU61は、S58で受信した復元データに基づき、刺繍模様Eの縫製を再開する(S63)。ここで、「縫製を再開する」とは、S44で受信され、S45でRAM63に記憶された縫製データに基づく縫製を一からやり直すのではなく、ミシン1の再起動により、縫製途中の刺繍模様Eの縫製を、S44で受信されてS45でRAM63に記憶された縫製データのうち、縫製順序が1よりも大きい順序の針落ち位置データに相当する所定の箇所から再開することを意味する。再起動前に縫製された刺繍模様と、再起動後に縫製される刺繍模様とは、一部が互いに重なってもよく、全体として刺繍模様Eを表す。
【0052】
本例のCPU61は、記憶部64に記憶された縫製済みの針数に対応する針数から、刺繍模様Eの縫製を再開する。縫製済みの針数に対応する針数は、ミシン1から通知された縫製済みの針数そのものであってもよいし、ミシン1から通知された縫製済みの針数を所定量増減させた針数であってもよい。所定量はユーザが設定してもよいし、予め設定された値でもよい。CPU61は、前述のS64の処理を行う。所定量には、例えば、10以下の値が設定される。本例では、S58で受信した復元データが、縫製データB2と編集データB4とを含むので、CPU61は、S49と同様な処理で生成した補正データB3と、縫製済みの針数とに基づき、縫製済みの針数に対応する針数から刺繍模様Eの縫製を再開する。一方、S58で受信した復元データが、縫製データB2と編集データB4とに基づき補正された補正データB3のうちの、縫製順序が縫製済みの針数に対応する針数以降の針落ち位置データを含み、縫製済みの針数に対応する針数より前の針落ち位置データを含まないデータである場合、本例のCPU61は、復元データの縫製順序に基づき、縫製済みの針数に対応する針数から刺繍模様Eの縫製を再開してもよい。CPU61は、処理をS64に移行する。
【0053】
上記実施形態のシステム4は、端末装置2及びミシン1の何れかが再起動されたかを判断する処理に用いる第二模様情報を、端末装置2の記憶部24に記憶していたが、第二模様情報は、端末装置2と通信可能なサーバ3に記憶されてもよい。以下図7及び図8を参照して、第二模様情報がサーバ3に記憶される場合のサーバ処理と、端末処理とについて並列に説明する。図7及び図8に示す端末処理のうち、図3の端末処理と同様の処理には、同じステップ番号を付与する。図7及び図8のように、変形例の端末処理では、S17、S38の処理が省略され、S1の前にS91が実行され、S5とS6との間にS92が実行され、S3とS4との間にS93が実行され、S28とS29との間にS94が実行される点で、図3の端末処理と互いに異なる。図3の端末処理と同様の処理については、説明を省略又は簡略化する。CPU31は、サーバ3の起動に応じて、ROM32に記憶されたプログラムをRAM33に読み出してサーバ処理を実行する。CPU21は、端末装置2の再起動に応じて、ROM22に記憶されたプログラムをRAM23に読み出して端末処理を実行する。以下、ステップ番号を単にSと略記する。
【0054】
端末処理を開始すると、端末装置2のCPU21は、ログインデータ送信要求をサーバ3に送信する(S91)。ログインデータ送信要求は、端末装置2を識別する端末情報を含む。サーバ3のCPU31は、端末装置2から送信されたログインデータ送信要求を受信した場合に、端末装置2のログイン処理を行い、前回のログインデータを端末装置2に送信する(S101)。前回のログインデータは、端末情報、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応する第二模様情報、及び縫製データに基づく刺繍模様Eの縫製が終了したか否かを示す状況フラグを含む。
【0055】
端末装置2のCPU21は、受信されたログインデータに基づき、S1の処理を行う。具体的には、CPU21は、ログインデータに基づき、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに基づく刺繍模様Eの縫製が終了していないと判断される場合に、ミシン1が縫製制御処理を実行中に端末装置2の端末処理が再起動されたと判断する(S1:YES)。S5で刺繍模様Eを選択する指示が検出された場合(S5:YES)、CPU21は、縫製データ送信処理でミシン1に送信した縫製データに対応する第二模様情報と、端末装置2を識別する端末情報とを対応付けて記憶部34に記憶することを要求する記憶要求を、サーバ3に送信する(S92)。
【0056】
サーバ3のCPU31は、端末装置2から記憶要求を受信したことに応じて、第二模様情報に対応する縫製データを端末装置2に送信し(S102)、更に、第二模様情報と端末装置2の端末情報とを対応付けて記憶部34に記憶する(S103)。端末装置2のCPU21は、サーバ3から送信された縫製データを受信しRAM23に記憶する(S7)。つまり変形例では、S5で刺繍模様Eを選択する時点で、端末装置2には、縫製データが記憶されている必要はない。S15において、CPU21は、ミシン1に加え、サーバ3にも編集データを送信する(S15)。サーバ3のCPU31は、端末装置2から送信された編集データを受信し、ログインデータの一部として、端末装置2の端末情報と対応付けて編集データを記憶部34に記憶する(S104)。S18において、CPU21は、ミシン1から受信した実行状況を、サーバ3に送信する処理を開始する(S18)。サーバ3のCPU31は、端末装置2から送信された実行状況を受信し、ログインデータの一部として、端末装置2の端末情報と対応付けて記憶部34に記憶し、モニタリングを開始する(S105)。
【0057】
図8に示すように、端末装置2が再起動したと判断され、ミシン1から第一模様情報を受信した場合に(S1:YES、S2、S3:YES)、CPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、端末装置2の端末情報に対応する第二模様情報を端末装置2に送信することを要求する送信要求を、サーバ3に送信する(S93)。サーバ3のCPU31は、端末装置2から送信要求を受信したことに応じて、記憶部34が記憶する端末情報に対応する第二模様情報を、端末装置2に送信する(S106)。端末装置2のCPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、ミシン1から受信した第一模様情報が、サーバ3から送信された第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S4:YES)。
【0058】
CPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、端末装置2の端末情報に対応する第二模様情報を端末装置2に送信することを要求する送信要求を、サーバ3に送信する(S94)。サーバ3のCPU31は、端末装置2から送信要求を受信したことに応じて、記憶部34が記憶する端末情報に対応する第二模様情報を、端末装置2に送信する(S107)。CPU21は、ミシン1から受信した第一模様情報が、サーバ3から送信された第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S29:YES)。サーバ3のCPU31は、記憶部64に記憶された第二模様情報に対応する縫製データ及び編集データを端末装置2に送信する(S108)。端末装置2のCPU21は、サーバ3から送信された縫製データ及び編集データを受信し、受信した縫製データ及び編集データをミシン1に送信する(S30)。
【0059】
CPU21は、ミシン1のモニタリングを終了することをサーバ3に通知する(S37)。通知を受信したサーバ3のCPU31は、端末装置2に接続するミシン1のモニタリングを終了する(S109)。CPU31は、端末装置2のログイン情報を更新する(S110)。
【0060】
上記実施形態及び変形例において、システム4、ミシン1、端末装置2、サーバ3、針棒6、及び表示部28は、本発明の縫製システム、ミシン、端末装置、サーバ、針棒、及び報知部の一例である。CPU21は、本発明の装置制御部、制御部の一例である。CPU61は、本発明のミシン制御部、制御部の一例である。記憶部64は、本発明のミシン記憶部、第一記憶部の一例である。RAM63は、本発明の第二記憶部の一例である。記憶部24は、本発明の装置記憶部の一例である。通信部67は、本発明のミシン通信部、及び通信部の一例である。第二通信部30は、本発明の装置通信部及び通信部の一例である。S7の処理は、本発明の取得処理の一例である。S11の処理は、本発明の縫製データ送信処理の一例である。S44の処理は、本発明の縫製データ受信処理の一例である。S45の処理は、本発明の模様情報記憶処理の一例である。S52の処理は、本発明の縫製制御処理の一例である。S41の処理は、本発明の第一判断処理の一例である。S30の処理は、本発明の復元データ送信処理の一例である。S63の処理は、本発明の縫製再開処理の一例である。S57の処理は、本発明の模様情報送信処理の一例である。S4、S29の処理は、本発明の条件判断処理の一例である。S17の処理は、本発明の装置記憶処理の一例である。S51の処理は、本発明のフラグ記憶処理の一例である。S68の処理は、本発明の針数記憶処理の一例である。S71の処理は、本発明の削除処理の一例である。S92の処理は、本発明の記憶要求送信処理の一例である。S93、S94の処理は、本発明の送信要求送信処理の一例である。S103の処理は、本発明のサーバ記憶処理の一例である。S106、S107の処理は、本発明のサーバ送信処理の一例である。S69の処理は、本発明の状況送信処理の一例である。S1の処理は、本発明の第二判断処理との一例である。S5の処理は、本発明の選択受付処理の一例である。S18の処理は、本発明の報知処理の一例である。S25の処理は、本発明の報知再開処理の一例である。S2の処理は、本発明の接続要求送信処理の一例である。S70の処理は接続要求応答処理の一例である。
【0061】
上記実施形態のシステム4は、針棒6と、不揮発性の記憶部64と、通信部67と、CPU61とを有するミシン1と、ミシン1と通信可能な第二通信部30と、CPU21とを有する端末装置2とを備える。端末装置2のCPU21は、ミシン1で刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する(S7)。CPU21は、第二通信部30を介して、縫製データをミシン1に送信する(S11)。ミシン1のCPU61は、通信部67を介して、送信された縫製データを受信する(S44)。CPU61は、縫製データを受信したことに応じて、縫製データに対応する第一模様情報を記憶部64に記憶する(S45)。CPU61は、縫製データに基づき、針棒6を駆動して、刺繍模様を縫製する(S52)。CPU61は、ミシン1を起動時に、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したか否かを判断する(S41)。端末装置2のCPU21は、ミシン1が再起動したと判断され(S41:YES)、且つ、再起動されたミシン1の記憶部64に記憶された第一模様情報が、ミシン1の再起動前に端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応する場合に(S29:YES)、第二通信部30を介して、縫製データに対応する復元データをミシン1に送信する(S30)。ミシン1のCPU61は、S41の処理後、通信部67を介して、端末装置2から復元データを受信したことに応じて、復元データに基づき、針棒6を駆動して、縫製制御処理を再開させる(S63)。システム4のミシン1は、ミシン1で刺繍模様を縫製中にミシン1の再起動が必要になった場合に、端末装置2から送信された復元データに基づき、刺繍模様の縫製を再開できる。端末装置2は、再起動されたミシン1の記憶部64に記憶された第一模様情報が、再起動前に端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応する場合に、ミシン1に復元データを送信するので、復元データを、縫製を再開する必要のない別のミシン1といった意図しないミシン1に誤送することを回避できる。
【0062】
ミシン1のCPU61は、ミシン1が再起動したと判断された場合に(S41:YES)、通信部67を介して、第一模様情報を端末装置2に送信する(S57)。端末装置2のCPU21は、第二通信部30を介して、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて(S28:YES)、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S29)。CPU21は、S30において、第二通信部30を介して、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応すると判断された場合に(S29:YES)、復元データをミシン1に送信する(S30)。システム4の端末装置2は、ミシン1でS29の処理が実行される場合に比べ、S41の処理が実行されてから、復元データを送信するまでの処理を簡単にできる。
【0063】
CPU21は、第一模様情報は、縫製データの識別情報である。システム4の端末装置2は、第一模様情報が縫製データそのものである場合に比べ、S29の処理を比較的簡単できる。
【0064】
端末装置2は、記憶部24を備える。端末装置2のCPU21は、S11の処理でミシン1に送信した縫製データに対応する第二模様情報を、記憶部24に記憶する(S17)。CPU21は、S29の処理において、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、ミシン1から受信した第一模様情報が、記憶部24に記憶された第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S29)。システム4の端末装置2は、第一模様情報、及び第二模様情報が縫製データそのものである場合に比べ、条件判断処理を比較的簡単できる。
【0065】
ミシン1のCPU61は、S52の処理を実行中であるか否かを示す状態フラグを、記憶部64に記憶する(S51、S55、S62)。CPU61は、S41の処理において、ミシン1を起動時に、状態フラグに基づきS52で開始する縫製制御処理を実行中であると判断される場合に、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したと判断する(S41:YES)。システム4のミシン1は、S41の、ミシン1が縫製制御処理を実行中にミシン1が再起動したか否かを判断する処理を比較的簡単に実行できる。
【0066】
ミシン1のCPU61は、S52で開始する縫製制御処理を実行中に、縫製データに基づき縫製済みの針数を記憶部64に記憶する(S68)。S63の縫製再開処理は、S41の処理後、復元データを受信したことに応じて、復元データに基づき、記憶部64に記憶された縫製済みの針数に対応する針数から、刺繍模様の縫製を再開する(S63)。システム4のミシン1は、記憶部64に記憶された縫製済みの針数に基づき、適切な針数から刺繍模様の縫製を再開できる。
【0067】
ミシン1のCPU61は、S52で開始した縫製制御処理が終了したことに応じて、縫製済みの針数と、第一模様情報とを記憶部64から削除する(S71)。CPU61は、ミシン1を起動時に、記憶部64に縫製済みの針数と第一模様情報とが記憶されている場合に、削除処理が実行されておらず、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したと判断する(S41:YES)。システム4のミシン1は、S41の、ミシン1が縫製制御処理を実行中にミシン1が再起動したか否かを判断する処理を比較的簡単に実行できる。
【0068】
変形例のシステム4は、端末装置2と通信可能なサーバ3であって、記憶部34と、CPU31とを有するサーバ3を備える。端末装置2のCPU21は、S11の処理でミシン1に送信した縫製データに対応する第二模様情報と、端末装置2を識別する端末情報とを対応付けて記憶部34に記憶することを要求する記憶要求を、第二通信部30とは異なる第一通信部25を介し、サーバ3に送信する(S92)。CPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、第一通信部25を介し、端末装置2の端末情報に対応する第二模様情報を端末装置2に送信することを要求する送信要求を、サーバ3に送信する(S93、S94)。サーバ3のCPU31は、端末装置2から記憶要求を受信したことに応じて、第二模様情報と端末装置2の端末情報とを対応付けて記憶部34に記憶する(S103)。CPU31は、端末装置2から送信要求を受信したことに応じて、通信部35を介し、記憶部34が記憶する端末情報に対応する第二模様情報を、端末装置2に送信する(S107)。端末装置2のCPU21は、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて、ミシン1から受信した第一模様情報が、サーバ3から送信された第二模様情報と一致するか否かを判断することにより、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S29:YES)。システム4の端末装置2は、サーバ3の記憶部34に第二模様情報を記憶させることができるので、S29の処理を比較的簡単できる。システム4の端末装置2は、端末装置2の充電切れ等の何らかの理由により、一の端末装置2が使用不要になった場合にも、サーバ3と通信可能な別の端末装置2を用いて、S29の処理を実行できる。
【0069】
上記実施形態の端末装置2は、表示部28を備える。ミシン1のCPU61は、S44で縫製データを受信後、通信部67を介し、S52で開始する縫製制御処理の実行状況を端末装置2に送信する(S69)。端末装置2のCPU21は、端末装置2を起動時に、ミシン1が縫製制御処理を実行中に端末装置2が再起動されたか否かを判断する(S1)。S1の処理で、端末装置2が再起動されたと判断されない場合に(S1:NO)、CPU21は、複数の刺繍模様の中から一つの刺繍模様を選択する選択操作を受け付ける(S5)。CPU21は、S11の処理において、第二通信部30を介し、S5の処理で選択された刺繍模様の縫製データをミシン1に送信し(S11)、縫製データをミシン1に送信後、ミシン1により送信された実行状況を表示部28で報知する(S18)。S1の処理で、端末装置2が再起動されたと判断され(S1:YES)、且つ、記憶部64に記憶された第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応する場合に(S4:YES)、CPU21は、ミシン1により送信された実行状況を表示部28で報知する報知処理を再開させる(S25)。システム4の端末装置2は、端末装置2が再起動したと判断され、且つ、記憶部64に記憶された第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに応じた情報である場合に、実行状況の受信を再開できる。
【0070】
端末装置2のCPU21は、S1の処理で、端末装置2が再起動されたと判断された場合に(S1:YES)、第二通信部30を介し、ミシン1に第一模様情報を端末装置2に送信することを要求する接続要求を送信する(S2)、CPU21は、第二通信部30を介して、ミシン1から第一模様情報を受信したことに応じて(S3:YES)、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応するか否かを判断する(S4)。S25の処理において、第二通信部30を介して、ミシン1から受信した第一模様情報が、端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応すると判断された場合に(S4:YES)、報知処理を再開させる。ミシン1のCPU61は、接続要求を受信したことに応じて、記憶部64に記憶された第一模様情報を端末装置2に送信する(S70)。システム4は、S4の処理を端末装置2で実行するので、ミシン1の刺繍模様の縫製を妨げとなることがない。
【0071】
ミシン1と通信可能な第二通信部30と、CPU21とを備える端末装置2のCPU21により実行されるモニタリングプログラムは、ミシン1で刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを取得する処理を(S7)実行させる指令を含む。モニタリングプログラムは、CPU21に第二通信部30を介して、縫製データをミシン1に送信し(S11)、 ミシン1が、縫製データに従って刺繍模様を縫製中に再起動したと判断され、且つ、ミシン1の不揮発性の記憶部64に記憶された、縫製データに対応する第一模様情報が、S11の処理でミシン1に送信した縫製データに対応する場合に、第二通信部30を介して、縫製データに対応する復元データをミシン1に送信する(S30)処理を実行させる指令を含む。モニタリングプログラムは、再起動されたミシン1の記憶部64に記憶された第一模様情報が、再起動前に端末装置2がミシン1に送信した縫製データに対応する場合に、ミシン1に復元データを送信するので、復元データを、縫製を再開する必要のない別のミシン1といった意図しないミシン1に誤送することを回避できる。
【0072】
ミシン1は、針棒6と、端末装置2と通信する通信部67と、CPU61とを備える。CPU61は、通信部67を介して、端末装置2から送信された、刺繍模様を縫製する場合の針落ち位置を表す針落ち位置データを含む縫製データを受信する(S44)。CPU61は、縫製データに基づき、針棒6を駆動して、刺繍模様を縫製する(S52)。CPU61は、縫製制御処理の実行中に再起動された場合に、通信部67を介して、端末装置2から縫製データに対応する復元データを受信したことに応じて、復元データに基づき、針棒6を駆動して、縫製制御処理を再開させる(S63)。ミシン1は、ミシン1で刺繍模様を縫製中にミシン1が再起動された場合に、端末装置2から送信された復元データに基づき、刺繍模様の縫製を再開することに貢献する。
【0073】
ミシン1は、不揮発性の記憶部64と揮発性のRAM63とを備える。CPU61は、受信した縫製データをRAM63に記憶する(S45)。CPU61は、縫製制御処理を実行中に、縫製済みの針数を記憶部64に記憶する(S68)。CPU61は、S63の処理で、ミシン1を再起動時に、通信部67を介して、端末装置2から復元データを受信したことに応じて(S58:YES)、復元データと記憶部64に記憶される縫製済みの針数とに基づき、針棒6を駆動して、縫製制御処理を再開させる(S63)。ミシン1は、縫製制御処理の実行中に再起動されることで、RAM63に記憶された縫製データが消失した場合であっても、再起動後に新たに端末装置2から送信された復元データに基づき、縫製制御処理を再開できる。
【0074】
CPU61は、ミシン1を起動時に、縫製制御処理の実行中にミシン1が再起動したか否かを判断する(S41)。CPU61は、縫製再開処理において、S41の処理で、縫製制御処理の実行中にミシン1が再起動したと判断された場合に、通信部67を介して、端末装置2から復元データを受信したことに応じて、復元データと記憶部64に記憶される縫製済みの針数とに基づき、針棒6を駆動して、縫製制御処理を再開させる(S63)。ミシン1は、記憶部64に記憶された縫製済みの針数に基づき、適切な針数から刺繍模様の縫製を再開できる。
【0075】
CPU61は、S44の処理で受信した縫製データに対応する第一模様情報を、記憶部64に記憶する(S45)。CPU61は、S41の処理でミシン1が再起動したと判断された場合に、通信部67を介して、第一模様情報を端末装置2に送信する(S57)。CPU61は、S63の処理において、S57の処理後、端末装置2から復元データを受信したことに応じて(S58)、復元データと記憶部64に記憶される縫製済みの針数とに基づき、針棒6を駆動して、縫製制御処理を再開させる(S63)。ミシン1は、縫製データを特定するのに必要な第一模様情報を記憶部64に記憶することで、ミシン1が縫製制御処理実行中に再起動した場合にも、第一模様情報が消失することを回避できる。
【0076】
本発明の縫製システム、モニタリングプログラム、及びミシンは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
【0077】
本発明は種々の態様で実行可能であり、例えば、モニタリングプログラムを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体、縫製システムで実行される縫製方法、及び端末装置の装置制御部により実行されるモニタリング方法、及びミシン1で実行される縫製制御方法等の形態で実現されてもよい。システム4は、サーバ3を備えていてもよいし、サーバ3を備えなくてもよい。
【0078】
(A)ミシン1の構成は適宜変更してよい。ミシン1は、刺繍縫製可能であればよく工業用ミシン、多針ミシン、職業用の刺繍ミシンであってもよい。端末装置2の構成は、適宜変更されてよく、例えば、PC、スマートフォン等でもよい。ミシン1は、表示部及び入力部の少なくとも何れかを備えてもよい。端末装置2の表示部28は、画像を表示可能であればよく、例えば、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プラズマチューブアレイディスプレイ、電気泳動等を利用した電子ペーパーディスプレイ等でもよい。端末装置2は、報知部としてスピーカ、LED、プロジェクタ等を備えてもよい。端末装置2の入力部29は、タッチスクリーンの他、キーボード、マウス、及びジョイスティック等でもよい。
【0079】
(B)図3図6から図8の処理を実行させるための指令を含むプログラムは、システム4が有する端末装置2のCPU21、ミシン1のCPU61、及びサーバ3のCPU31の各々が、対応するプログラムを実行するまでに、各装置の記憶機器に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。各装置が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、記憶部等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0080】
(C)端末処理の各ステップは、CPU21によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。同様に、ミシン処理の各ステップは、CPU61によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器によって実行されてもよい。サーバ処理の各ステップは、CPU31によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器によって実行されてもよい。端末処理、ミシン処理、及びサーバ処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。端末処理、ミシン処理、及びサーバ処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。端末処理、ミシン処理、及びサーバ処理に、以下の変更が適宜加えられてもよい。
【0081】
端末装置2のCPU21は、S7で縫製データを取得する処理を開始後、縫製データの取得が終わっていない段階で、S11の処理を開始してもよい。ミシン1のCPU61は、S15の処理を開始後、S15の処理が終わっていない段階で、S52の処理を開始してもよい。例えば、部分模様毎に編集データが設定される場合、縫製順序が一番目の部分縫製データの編集データがあれば、縫製順序が二番目の部分縫製データの編集データの受信が完了していなくても、編集データに基づき補正した補正データで縫製が可能である。このため、CPU61は、縫製順序が一番目の部分縫製データの編集データの受信が完了した時点で、一番目の部分縫製データと編集データとに基づき、編集操作に応じて編集された縫製順序が一番目の部分模様を縫製してもよい。端末装置2のCPU21は、S11で縫製データを送信せず、S7で取得された縫製データをS46で取得された編集データで補正した縫製データを、ミシン1に送信してもよい。この場合、CPU21は、補正後の縫製データを記憶部24に記憶しておき、S30の処理では、記憶部24に記憶された補正後の縫製データをミシン1に送信してもよい。
【0082】
CPU61は、補正データを生成せずに、S49で縫製データと、編集データとに基づき、編集された刺繍模様を縫製してもよい。例えば、編集操作に応じて、刺繍模様の位置だけを編集する場合、且つ、針落ち位置データが絶対座標ではなく、縫製順序が一つ前の針落ち点に対する相対的な座標(移動量)を示す場合には、CPU61は、S46で受信された編集データに基づき、縫製開始位置に移動後、S44で受信開始された縫製データに従って縫製すれば、補正データを生成せずとも、編集された位置に刺繍模様を縫製できる。
【0083】
編集操作は、適宜変更されてよい。例えば、CPU21は、角度変更、位置の変更、又は大きさの変更を指示するキーの選択を検出することで、編集操作を受け付けてもよい。編集操作に応じた編集の種類は適宜変更されてよく、例えば、編集データは、角度データ、位置データ、及びサイズデータの中から選択された一以上のデータを含むデータであってもよい。CPU61は、糸色の変更を受け付けてもよく、その場合、編集データは、糸色データを含む必要はない。端末装置2のCPU21は、糸色データを含む縫製データをミシン1に送信してもよい。ミシン1が表示部を有する場合には、縫製順序が次の糸の糸色を表示する処理は、端末装置2ではなく、ミシン1において実行されてよい。CPU21は、一の刺繍模様の縫製データ及び編集データをミシン1に送信し、ミシン1で縫製データ及び編集データに基づき、編集された刺繍模様を縫製する処理が実行されている間に、次の刺繍模様についての端末処理を実行してもよい。
【0084】
CPU61は、補正データを生成せずに、S49で縫製データと、編集データとに基づき、編集された刺繍模様を縫製してもよい。例えば、編集操作に応じて、刺繍模様の位置だけを編集する場合、且つ、針落ち位置データが絶対座標ではなく、縫製順序が一つ前の針落ち点に対する相対的な座標(移動量)を示す場合には、CPU61は、S46で受信された編集データに基づき、縫製開始位置に移動後、S44で受信開始された縫製データに従って縫製すれば、補正データを生成せずとも、編集された位置に刺繍模様を縫製できる。
【0085】
ミシン1が実行する、ミシン1を起動時に、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したか否かを判断する処理(S41)は適宜変更されてもよいし、省略されてもよい。CPU61は、ミシン1を起動時に、ミシン1のホルダ46の現在位置を取得し、取得された現在位置が、所定の初期位置ではない場合に、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したと判断してもよい。CPU61は、スイッチ47を介し、ミシン1を起動時に、縫製制御処理を実行中にミシン1が停止し、再起動したか否かを、ミシン1のユーザに入力させてもよい。記憶部64に記憶される所定の情報は、S46で取得される編集データであってもよい。編集データは縫製データに比して、記憶容量が小さくて済み、且つ、編集データが記憶部64に記憶されている場合、復元データに編集データを含ませる必要が無い。
【0086】
同様に、端末装置2が実行する、端末装置2を起動時に、端末装置2が送信した縫製データに基づきミシン1が縫製制御処理を実行中に端末装置2が停止し、再起動したか否かを判断する処理(S1)は適宜変更されてもよいし、省略されてもよい。CPU21は、入力部29を介し、端末装置2又は端末処理を起動時に、端末装置2が送信した縫製データに基づきミシン1が縫製制御処理を実行中に端末装置2が停止し、再起動したか否かを、端末装置2のユーザに入力させてもよい。CPU21は、端末装置2が送信した縫製データに基づきミシン1が縫製制御処理を実行中に、ミシン1が停止し、再起動した場合に、縫製中の縫製データに対応する第一模様情報を、入力部29を介してユーザに入力させ、入力部29を介して取得された第一模様情報に基づき、S4及びS29の少なくとも何れかの処理を実行してもよい。
【0087】
縫製データのうちの、S63で刺繍模様の縫製を再開する位置の決定方法は適宜変更されてよい。CPU21は、端末装置2が送信した縫製データに基づきミシン1が縫製制御処理を実行中に、ミシン1が停止し、再起動した場合に、入力部29を介して、縫製データのうちの縫製を再開する針落ち位置データを指定する情報を受け付けてもよい。指定する情報は、縫製データに基づき縫製された刺繍模様のイメージに付与された点であってもよいし、被縫製物に縫製済みの部分模様を撮影した画像であってもよい。CPU61は、ミシン1を起動時に、ミシン1のホルダ46の現在位置を取得し、取得された現在位置に対応する針落ち位置データ、又は縫製順序が現在位置に対応する針落ち位置データの所定量前の針落ち位置データから縫製を再開してもよい。
【0088】
S4及びS29の少なくとも一方は省略されてよいし、ミシン1又はサーバ3で実行されてもよいし、適宜変更されてよい。第一模様情報及び第二模様情報の少なくとも何れかは、縫製データの識別情報でなくてもよい。例えば、ミシン1が縫製データを受信した時刻情報を第一模様情報とし、端末装置2が縫製データを送信した時刻情報を第二模様情報としてもよい。この場合CPU21、第一模様情報と第二模様情報との差の絶対値が所定値よりも少ないか否かに基づき、S4、S29の処理を実行してもよい。S18、S25、S37の処理は、省略されてもよいし、変更されてもよい。S67、S68の処理は適宜変更されてよいし、省略されてもよい。
【0089】
上記変形例は矛盾のない範囲で適宜組み合わされてもよい。本願出願人は、特許請求の範囲において例示された組み合わせに加え、本発明の要旨を逸脱しない範囲、且つ、矛盾が生じない範囲で互いに組み合わされた態様についても特許権を取得する意思を有する。
【符号の説明】
【0090】
1:ミシン、2:端末装置、3:サーバ、4:システム、5:ネットワーク、6:針棒、21、31、61:CPU、23、33、63:RAM、24、64:記憶部、25:第一通信部、30:第二通信部、35、67:通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8