(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171847
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】制御装置、光学装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20241205BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20241205BHJP
G03B 5/08 20210101ALI20241205BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20241205BHJP
G03B 17/20 20210101ALI20241205BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20241205BHJP
H04N 23/611 20230101ALI20241205BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/08 B
G03B5/08
G03B17/18
G03B17/20
H04N23/63 100
H04N23/63 300
H04N23/611
H04N23/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089101
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】水島 正康
(72)【発明者】
【氏名】長野 敏宗
(72)【発明者】
【氏名】松本 徹
(72)【発明者】
【氏名】守吉 信乃
(72)【発明者】
【氏名】大坂 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】佐治 義紀
(72)【発明者】
【氏名】平澤 隆弥
【テーマコード(参考)】
2H044
2H102
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AC03
2H044DA01
2H044DA02
2H044DB02
2H044DB03
2H044DE04
2H044DE06
2H044DE08
2H102AA33
2H102BB06
2H102BB08
2H102BB22
2H102CA03
2H102CA32
5C122EA42
5C122FB02
5C122FB23
5C122FH11
5C122FH14
5C122FK28
5C122FK37
5C122FK40
5C122FK41
5C122FL08
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】所望のティルト効果、合焦範囲(ボケ範囲)を設定できる制御装置、光学装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】複数の光学部材を有し、被写体を撮像部58へ結像させるレンズ鏡筒101と、レンズ鏡筒101により形成された像を撮る撮像部58と、第6レンズ群6、第8レンズ群8のうちの少なくとも1つのレンズ、あるいは撮像部58を駆動して回転被写体面205を傾けるTS駆動部25と、第2レンズ群2を駆動して合焦位置を変化させるフォーカス駆動部13Aと、被写体の特徴点を認識するカメラCPU50とを有するカメラシステム100において、TS駆動部25もしくはTS駆動部25とフォーカス駆動部13Aとにより、特徴点から定義される軸の回りに回転被写体面205が回転可能であることを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学部材を有し、被写体を撮像素子へ結像させる光学装置と、
前記光学装置により形成された像を撮る撮像部と、
前記複数の光学部材のうちの少なくとも1つの前記光学部材、あるいは前記撮像部を駆動してピント面を傾けるティルト駆動部と、
前記複数の光学部材のうちの他の光学部材を駆動して合焦位置を変化させるフォーカス駆動部と、
前記被写体の特徴点を認識する被写体認識部とを有する撮像装置において、
前記ティルト駆動部もしくは前記ティルト駆動部と前記フォーカス駆動部とにより、前記特徴点から定義される軸の回りに前記ピント面が回転可能であることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
複数の前記軸が定義され、少なくとも1つの前記軸が選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記軸が選択されたことを報知する報知部を有することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記報知部は、撮影する画像を表示する表示部であり、
少なくとも1つの前記軸を前記表示部に表示することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記表示部はタッチパネルであり、タッチ操作により少なくとも1つの前記軸が選択可能であることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記タッチ操作により選択された前記軸の回りに前記ピント面を回転させることができることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記特徴点を空間位置として取得する取得部を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記軸は、前記空間位置の重力方向である第1の線、あるいは2つの空間位置を結ぶ線である第2の線、あるいは前記被写体の最も近距離の空間位置と最も遠距離の空間位置とを結ぶ第3の線、もしくは単位時間に移動した空間位置を結ぶ第4の線、であることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記空間位置は、少なくとも1つの前記被写体の目又は顔又は形状の何れか1つによって定義されることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記被写体の位置を記憶する被写体記憶部を有し、
前記被写体認識部は、前記被写体記憶部に記憶された前記被写体の特徴点を認識することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記光学装置は、前記撮像部に対して着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
複数の光学部材と、
前記複数の光学部材のうちの少なくとも1つの前記光学部材を駆動してピント面を傾けるティルト駆動部と、
前記複数の光学部材のうちの他の光学部材を駆動して合焦位置を変化させるフォーカス駆動部と、を有する光学装置において、
被写体の特徴点から定義される軸の回りに前記ピント面を回転させる情報に基づいて、前記ティルト駆動部もしくは前記ティルト駆動部と前記フォーカス駆動部とが制御されることを特徴とする光学装置。
【請求項13】
被写体の特徴点を認識できる被写体認識部と、
前記特徴点から定義される軸の回りにピント面を回転させるピント面回転機構とを有し、
前記ピント面を回転させることにより合焦範囲が調整可能であることを特徴とする制御装置。
【請求項14】
前記被写体の前記特徴点から定義される軸を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項13に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、光学装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一眼レフカメラ等の撮像装置においては、さまざまな用途に応じた撮像が求められている。その1つに、撮像光学系の光軸に対して傾いた物体面に対して全面的に良好にピントを合わせるようにピント面を傾ける、いわゆるティルト効果を有する撮像光学系が要望されている。
【0003】
特許文献1には、チルト効果を発生させるレンズ部とシフト効果を発生させるレンズ部とを備え、二つのレンズ部を光軸方向に対して垂直方向に駆動させることで、チルト効果とシフト効果を得られる光学系が開示されている。特許文献2には、合焦領域が被写体となるように、焦点調節部およびティルト駆動部によって光学レンズが調整可能なカメラシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-090952号公報
【特許文献2】特開2019-7993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された光学系、特許文献2に開示されたカメラシステムでは、合焦したい被写体に対し所望のティルト効果、所望の合焦範囲を設定する機能がないので、所望の撮像を得ることが困難である。
【0006】
本発明では、所望のティルト効果、合焦範囲(ボケ範囲)を設定できる制御装置、光学装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の光学部材を有し、被写体を撮像素子へ結像させる光学装置と、前記光学装置により形成された像を撮る撮像部と、前記複数の光学部材のうちの少なくとも1つの前記光学部材、あるいは前記撮像部を駆動してピント面を傾けるティルト駆動部と、前記複数の光学部材のうちの他の光学部材を駆動して合焦位置を変化させるフォーカス駆動部と、前記被写体の特徴点を認識する被写体認識部とを有する撮像装置において、前記ティルト駆動部もしくは前記ティルト駆動部と前記フォーカス駆動部とにより、前記特徴点から定義される軸回りにピント面が回転可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望のティルト効果、合焦範囲(ボケ範囲)を設定できる制御装置、光学装置及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のカメラシステム100の断面図である。
【
図2】実施形態のカメラシステム100の模式図である。
【
図3】(A)通常のピントが合う範囲を示す図である。(B)シャインプルーフの原理を示す図である。(C)実施形態において、シャインプルーフの原理が適用されたことを示す図である。
【
図4】撮影時にティルト効果を用いた場合の表示部60の模式図である。
【
図5】カメラシステム100を原点とした空間上における被写体面202cの斜視図である。
【
図7】被写体面202cと回転被写体面205を示す模式図である。
【
図8】被写体が鉄道である場合の表示部60の模式図である。
【
図9】被写体が人物である場合の表示部60の模式図である。
【
図10】撮影モード301の例示的な一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態のカメラシステム100(撮像装置)を構成するレンズ鏡筒101(光学装置)及びカメラ本体102の断面図である。本実施形態のレンズ鏡筒101は、
図1に示されるようにカメラ本体102の撮像部58(撮像素子)に対して着脱可能に装着される構成であるが、カメラ本体102とレンズ鏡筒101が一体の構成としてもよい。なお、図面において、レンズ鏡筒101における光軸OAに沿った方向をX軸方向、ピッチ方向をY軸方向、ヨー方向をZ軸方向と定める。
【0011】
カメラ本体102は、レンズ鏡筒101により形成された像を撮る撮像部58を有している。レンズ鏡筒101を通して結像した像を、カメラCPU50により不図示のシャッターを制御することで、任意の時間だけ撮像部58に露光し、撮影することができる。また、撮影画像の表示やカメラシステム100の各種設定の変更が可能なタッチパネル機能を有するタッチパネルとしての表示部60(報知部)、覗き込むことで撮影画像の確認や視線入力が可能なファインダー70を有する。
【0012】
レンズ鏡筒101は、第1レンズ群1、第2レンズ群2(他の光学部材)、第3レンズ群3、第4レンズ群4、第5レンズ群5、第6レンズ群6(光学部材)、第7レンズ群7、第8レンズ群8(光学部材)、第9レンズ群9、第10レンズ群10を有する。これらの各群レンズからなる光学系は、光軸OAを有する。各群レンズの光軸OA方向の位置関係を変化させることで、光学系の焦点距離が変化する。また、レンズ鏡筒101は、レンズCPU30によりその光学系の開口径を変化させる絞り機構14を有する。レンズ鏡筒101は、各群レンズを通った被写体の像を撮像部58へ結像させる。
【0013】
各群レンズは、カムフォロアを有する鏡筒により保持されており、カムフォロアは、案内筒15の光軸OAに平行な直進溝とカム筒16の光軸OAに傾きを持った溝に係合している。カム筒16は、ズーム操作環20に係合されており、ズーム操作環20が回転するとカム筒16が回転するので、ズーム操作環20を回転させることで焦点距離を変化させることができる。また、ズーム操作環20の回転量を検出する不図示のズーム位置検出手段(ズーム操作環回転検出部20A)によって、光学系の焦点距離が検出可能である。
【0014】
第2レンズ群2は、光軸OA方向に駆動させることでピント調節が可能なフォーカス群となっている。フォーカスユニット13は、光軸OA方向に案内する不図示のガイドバーと、第2レンズ群2を駆動するフォーカス駆動部13A(振動アクチュエータ)と、第2レンズ群2の移動距離を検出する不図示のフォーカス位置検出部によって構成されている。フォーカスユニット13は、レンズCPU30によって駆動制御される。
【0015】
第6レンズ群6と第8レンズ群8の各々を、又は少なくとも1つを光軸OAと直交する方向に駆動させることで、撮像面に対してピント面を傾けるティルト効果や撮影範囲(画角)を移動させるシフト効果が得られる。すなわち、第6レンズ群6と第8レンズ群8の各々は、光軸OAに直交する方向に移動可能に構成されたシフト用光学部材である。具体的には、第6レンズ群6と第8レンズ群8が共に正の屈折力を持つ、もしくは、負の屈折力を持つ場合、光軸OAと直交する方向において、第6レンズ群6と第8レンズ群8のそれぞれを反対方向に動かすとティルト効果を得ることができる。第6レンズ群6と第8レンズ群8のそれぞれを同じ方向に動かすとシフト効果を得ることができる。第6レンズ群6と第8レンズ群8が正、負異なる屈折力を持つ場合には、第6レンズ群6と第8レンズ群8を反対方向に動かすとシフト効果を、同じ方向に動かカスとティルト効果を得ることができる。光軸OAに直交する方向に移動可能に保持する保持手段、駆動手段、及び移動距離を検出する不図示のシフト位置検出部によって第1シフトユニット11が構成され、第6レンズ群6が駆動される。また、同様に第2シフトユニット12が構成され、第8レンズ群8が駆動される。このとき、第1シフトユニット11、第2シフトユニット12はレンズCPU30により駆動制御される。
【0016】
本実施形態の駆動手段は、ステッピングモータを駆動源としている。ただし、第6レンズ群6と第8レンズ群8を駆動できるアクチュエータであれば、例えばボイスコイルモータ(VCM)であっても構わず、それを限定するものではない。ここで、光学系によってはいわゆるレンズを倒す(回転させる)ことでティルト効果を得ることもできるが、本実施形態の光学系ではレンズを光軸OAと直交方向に駆動させている。
【0017】
レンズ鏡筒101には、マウント17が備えられており、マウント17が不図示のカメラ本体102のカメラ側マウントに接続され、レンズ鏡筒101を固定することができる。また、レンズ鏡筒101とカメラ本体102は、それぞれレンズCPU30とカメラCPU50を接続するレンズ側電気接点21とカメラ側電気接点51を有しており、カメラ本体102側で設定した設定事項をレンズ鏡筒101に反映することができる。
【0018】
図2は、実施形態のレンズ鏡筒101及びカメラ本体102を含むカメラシステム100の電気的構成図である。まず、カメラ本体102における制御について説明する。カメラCPU50はマイクロコンピュータにより構成される。カメラCPU50は、カメラ本体102内の各部の動作を制御する。また、カメラCPU50は、レンズ鏡筒101の装着時にはレンズ側電気接点21、カメラ側電気接点51を介して、レンズ鏡筒101内に設けられたレンズCPU30との通信を行う。
【0019】
カメラCPU50からレンズCPU30に送信される情報(信号)には、第2レンズ群2の駆動量情報、ピントズレ情報、絞り駆動命令、加速度センサ等のカメラ姿勢検出部52からの信号に基づくカメラ本体102の姿勢情報が含まれる。また、撮影者がピントを合わせたい所望の被写体を指示するTS指示部61からの信号に基づく被写体の被写体距離情報、位置情報、更には所望の撮影範囲(画界)を指示する撮影範囲情報等が含まれる。このTS指示部61の詳細は後述する。
【0020】
レンズCPU30からカメラCPU50に送信される情報(信号)には、レンズ鏡筒101の撮像倍率等の光学情報や、装着したレンズ鏡筒101に搭載されたズームや防振等のレンズ機能情報が含まれる。また、ジャイロセンサや加速度センサ等のレンズ姿勢検出部22からの姿勢情報も含まれる。
【0021】
なお、レンズ側電気接点21、カメラ側電気接点51には、カメラ本体102からレンズ鏡筒101に電源を供給するための接点も含まれている。
【0022】
電源スイッチ53は、撮影者により操作可能なスイッチであり、カメラCPU50の起動、及びカメラシステム100内の各アクチュエータやセンサ等への電源供給の開始を行うことができる。レリーズスイッチ54は、撮影者により操作可能なスイッチであり、第1ストロークスイッチSW1と第2ストロークスイッチSW2とを有する。レリーズスイッチ54からの信号は、カメラCPU50に入力される。カメラCPU50は、第1ストロークスイッチSW1からのON信号の入力に応じて、撮影準備状態に入る。撮影準備状態では、測光部55による被写体輝度の測定と、焦点検出部56による焦点検出が行われる。
【0023】
カメラCPU50は、測光部55による測光結果に基づいて絞り機構14の絞り値や撮像部58の露光量(シャッター秒時)等を演算する。また、カメラCPU50は、焦点検出部56による撮影光学系の焦点状態の検出結果である焦点情報(デフォーカス量及びデフォーカス方向)に基づいて、被写体に対する合焦状態を得るための第2レンズ群2の駆動量情報(駆動方向、合焦位置)を決定する。第2レンズ群2の駆動量情報は、レンズCPU30に送信される。レンズCPU30は、レンズ鏡筒101の各構成部の動作を制御する。
【0024】
また、本実施形態のレンズ鏡筒101においては、第6レンズ群6と第8レンズ群8の各々を、又は少なくとも1つを光軸OAと直交する方向に駆動させることで、撮像面に対してピント面を傾けるティルト効果や撮影範囲を移動させるシフト効果を得られる。そのため、カメラCPU50は、TS指示部61によって指示された所望の被写体に対してピントを合わせるためのティルト駆動量を演算する。また、現在の撮影範囲から、TS指示部61によって指示された撮影範囲へ変更するシフト駆動量を演算する。これらの駆動量の情報はカメラCPU50からレンズCPU30へ送信され、第6レンズ群6と第8レンズ群8の駆動が制御される。
【0025】
ここで、TS指示部61によって指示される被写体は複数であっても良い。仮に距離が異なる被写体が複数であっても、前述のティルト効果によって傾いた被写体面202b(
図3(B)参照)上に少なくとも1つの被写体があればピントを合わせることが可能となる。ティルト動作によるティルト効果を使った撮影詳細については後述する。
【0026】
また、TS指示部61がカメラ本体102ではなく、レンズ鏡筒101にあっても良く、レンズ鏡筒101やカメラ本体102の既存の回転操作部やボタン・スイッチ等に、その機能を割り当てることも可能である。また、専用のTS指示部61をレンズ鏡筒101やカメラ本体102に用意することは可能であるが、その構成の説明は割愛する。
【0027】
更にカメラCPU50は、所定の撮影モードになると、不図示の防振レンズの偏芯駆動、すなわち手振れ防振動作の制御を開始する。なお、防振機能が無い場合は、この防振レンズの偏芯駆動は不要である。
【0028】
レリーズスイッチ54における第2ストロークスイッチSW2からのON信号が入力されると、カメラCPU50は、レンズCPU30に対して絞り駆動命令を送信し、絞り機構14が先に演算した絞り値に設定される。また、カメラCPU50は、露光部57に露光開始命令を送信し、不図示のミラーの退避動作(なお、ミラーレスカメラにはこの動作は無い。)や不図示のシャッターの開放動作を行わせ、撮像部58の撮像素子において、被写体像の光電変換、すなわち露光動作を行わせる。
【0029】
撮像部58からの撮像信号は、カメラCPU50内の信号処理部にてデジタル変換され、更に各種補正処理が施されて画像信号として出力される。画像信号(データ)は、画像記録部59において、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体に記録保存される。
【0030】
また、液晶や有機EL技術によるディスプレイである表示部60に、撮影時に撮像部58で撮像される画像や、画像記録部59に記録された画像を表示することもできる。近年、このディスプレイにはタッチ操作技術が搭載されており、ライブビュー撮影のディスプレイで被写体を選択し、ピントを合わせることができる。なお、TS指示部61が表示部60に含まれる構成が主流である。
【0031】
次に、レンズ鏡筒101における制御について説明する。なお、レンズ鏡筒101のレンズCPU30には、第1シフトユニット11、第2シフトユニット12、フォーカスユニット13、絞り機構14が電気的に接続されている。
【0032】
フォーカス操作環回転検出部18Aは、フォーカス操作環18の回転を検出する不図示のセンサを含む。絞り操作環回転検出部19Aは、絞り操作環19の回転を検出する不図示のセンサを含む。ズーム操作環回転検出部20Aは、ズーム操作環20の回転を検出する不図示のセンサを含む。
【0033】
レンズ姿勢検出部22は、ジャイロセンサや加速度センサ等で構成され、
図1には不図示であるが、レンズ鏡筒101内部に配置、固定され、レンズCPU30に電気的に接続されている。ジャイロセンサは、カメラシステム100の角度振れである縦(ピッチ方向)振れと横(ヨー方向)振れのそれぞれの角速度を検出し、検出値を角速度信号としてレンズCPU30に出力する。レンズCPU30は、ジャイロセンサからのピッチ方向及びヨー方向の角速度信号を電気的又は機械的に積分して、それぞれの方向での変位量であるピッチ方向振れ量及びヨー方向振れ量(これらをまとめて角度振れ量という。)を演算する。
【0034】
TS操作検出部23は、ティルト及びシフト効果を得るための準備をするためのマニュアル操作部(制御変更部)と、その操作量を検出する不図示のセンサを含む。すなわち、TS操作検出部23は、第6レンズ群6と第8レンズ群8を光軸OAに直交する方向に駆動させる際のマニュアル操作量をセンサで検出する。
【0035】
次に、各駆動部について説明する。フォーカスユニット13のフォーカス駆動部13Aは、合焦動作を行う第2レンズ群2の駆動量情報に応じて、第2レンズ群2を光軸OAの方向へ駆動する。その駆動量情報は、前述のカメラCPU50からの信号に基づいて決定される。又は、手動で操作されたフォーカス操作環18の回転をフォーカス操作環回転検出部18Aにより検出し、ピント位置を手動で指示したその信号から駆動量情報を決定することもできる。
【0036】
絞り機構14の電磁絞り駆動部14Aは、カメラCPU50からの絞り駆動命令を受けたレンズCPU30により制御され、絞り機構14を指定された絞り値に相当する開口状態に駆動する。また、絞り操作環19の操作により撮影者が所望の絞り値を指定した際も同様に駆動する。
【0037】
IS駆動部24は、防振動作を行う不図示の防振レンズの駆動アクチュエータとその駆動回路とを含む。なお、防振機能が無い場合は、この構成は不要となる。レンズCPU30は、上述した角度振れ量と平行振れ量の合成変位量に基づいてIS駆動部24を制御して防振レンズ(不図示)をシフト駆動させ、角度振れ補正及び平行振れ補正を行う。前述したが、防振機能が無い場合は、この構成/機能は不要となる。また、レンズCPU30は、ピント振れ量に基づいてフォーカス駆動部13Aを制御して第2レンズ群2を光軸方向に駆動させ、ピント振れ補正を行う。フォーカス駆動部13Aは、少なくとも1つの第2レンズ群2を駆動して合焦位置を変化させる。
【0038】
TS駆動部25(ティルト駆動部)は、カメラCPU50から被写体距離情報、位置情報、撮影範囲情報を受け、所望の傾いたピント面(被写体面202b、
図3(B))となるようにティルト動作すると共に、所望の撮影範囲が得られるようシフト動作をする。すなわち、TS駆動部25は、複数の光学部材である第6レンズ群6と第8レンズ群8の各々を、又は少なくとも1つを光軸OAと直交する方向に駆動させることで、撮像面に対してピント面を傾ける。あるいはTS駆動部25は、撮像部58を駆動してピント面を傾ける。ここで、所望のピントを得るため、TS駆動部25もしくはTS駆動部25とフォーカス駆動部13Aとが最適に動作するよう、レンズCPU30によって制御されることは言うまでもない。また、本実施形態のレンズ鏡筒101は、シフト動作によって被写体距離が変わらなくてもピントが変化する光学特性となっている。しかしながら、その特性に合わせTS駆動部25とフォーカス駆動部13Aが最適に制御されることは言うまでもない。
【0039】
ここで、本実施形態のレンズ鏡筒101において、レンズCPU30は、レンズ姿勢検出部22からの出力に基づいて演算されたレンズ鏡筒101の振れ、変位量に基づいて、TS駆動部25の制御を行う。例えば、カメラシステム100を手で持って撮影する際に手振れが発生した場合、被写体に対して被写体面がずれる。しかしながら、本実施形態のカメラシステム100は、後述の被写体記憶部26に被写体の位置が記憶されているため、手振れを補正して被写体に被写体面を合わせ続けるTS駆動部25の制御が可能である。このTS駆動部25の制御のため、カメラ本体102に搭載された加速度センサの信号が使用される場合もある。なお、レンズ鏡筒101にジャイロセンサだけでなく、加速度センサが搭載されていても良い。
【0040】
被写体記憶部26は、TS指示部61や表示部60によって指示された被写体の、撮影範囲における空間位置を記憶する。この位置は被写体距離、及び撮像面をX-Y軸平面としたその座標(X、Y)で定義できるが、その詳細は後述する。
【0041】
次に、シャインプルーフの原理について説明する。
図3(A)は、撮像面200aに対して光学系201aの光軸OAが傾いていない場合の、いわゆる通常、ピントが合う範囲を示している。
図3(B)は、撮像面200bに対して光学系201bの光軸OAが傾いている場合に、シャインプルーフの原理によりピントが合う範囲を示している。
【0042】
図中、撮像面200a、撮像面200b、光学系201a、光学系201b、ピントの合う被写体面202a、ピントの合う被写体面202b、光学系の主面203a、主面203bが示されている。
図3(B)に示すように、レンズ鏡筒101における光学系の光軸OAと撮像部58が傾いているとき、シャインプルーフの原理により被写体側のピントの合う範囲が決定される。シャインプルーフの原理は、撮像面200bに接する線の延長線と、光学系の主面203bに接する線の延長線とが交点204bで交わるとき、被写体面202bに接する線の延長線もまた交点204bを通るというものである。
【0043】
撮影したい被写体が奥行きを持っているとき、その奥行きに沿うように被写体面202bを傾けることで、被写体の手前から奥までピントを合わせることができる。あおり機構を持たないレンズで奥行き部分にピントを合わせたいときには、絞りを絞って被写界深度を深くする方法が一般的であるが、あおりレンズでは絞りが開放であってもティルト動作させることで、その奥行きに合わせてピントを合わせることが可能となる。
【0044】
また、逆に光学系201bの主面203bを奥行きのある被写体の傾きと反対方向にティルト動作させることにより、被写体の奥行き方向に対して被写体面202bを直角に近い角度で交差させることも可能である。この場合、ピントの合う範囲を極端に狭くすることができるので、ジオラマ風の画像を取得することができる。
【0045】
図3(C)は、本実施形態において、シャインプルーフの原理が適用され、本発明の被写体面202cと撮像面200cの傾き示す図である。本実施形態では、光学系201cを倒す方法ではなく、光学素子を偏芯させることにより像面倒れを利用することで、被写体面202cの傾きθobjを発生させる。しかしながら、倒れが発生しない光学系201cの主面203cと被写体面202cに対してシャインプルーフの原理を当てはめると、撮像面200cには角度θimgの像面倒れが発生するはずである。そこで、光学系201cの偏芯でこの角度θimgを補正し、撮像面200cを倒さなくても被写体面202cが倒れ、所望の被写体にピントを合わせられるようになっている。この構成によって、撮像面200cから角度θimg傾いた線の延長線と、光学系の主面203cの延長線が交点204cで交わり、被写体面202cに接する線の延長線もまた交点204cを通るので、シャインプルーフの原理が適用されていることがわかる。
【0046】
その一方で、所定の撮像面倒れ補正効果を確保しようとすると、光学系201cの偏芯量が増え、構図ズレが大きくなる。そこで、偏芯時の収差変動が小さくなるように設計されたもう1つのレンズを動かし、構図ズレが大きくならないようにする。すなわち、本実施形態では、光学系201cに相当する第6レンズ群6又は第8レンズ群8の少なくとも1つを偏芯動作させることで、構図ズレが大きくなる問題を解決している。
【0047】
ここで、本実施形態におけるティルト効果を用いた撮影について述べる。
図4は、撮影時にティルト効果を用いた場合のカメラ本体102の背面に設置された表示部60の模式図である。表示部60はモニタであり、タッチパネル機能によるTS指示部61でもある。表示部60に映し出されている被写体302、303、304は、テーブルに置かれた、例えば食べ物、アクセサリーなどであり、撮影シーンとしていわゆる「物撮り」を想定している。これら被写体302、303、304はそれぞれ撮影距離が異なるが、被写体302、303、304の全てにピントを合わせる撮影、いわゆる「あおり撮影」が可能である。そのため、本実施形態のカメラシステム100においては、撮影者が表示部60上で、ピントを合わせたい被写体をタッチ指示する。すると前述のカメラシステム100におけるカメラCPU50、レンズCPU30によって第6レンズ群6と第8レンズ群8を制御することで被写体面(ピント面)を倒し、所望の被写体全てに合焦することが可能となる。
【0048】
次に、
図5~
図9を用いて、カメラCPU50及びレンズCPU30がどのような演算を行い、そして第6レンズ群6と第8レンズ群8を制御し、被写体面を構築するかについて詳細を述べる。
【0049】
図5は、カメラシステム100のカメラ本体102を原点とした空間上における被写体面202cの斜視図である。本実施形態のカメラシステム100における原点は撮像部58の中心で、その表面のカメラ水平方向がZ方向、上下方向をY方向とし、光軸方向をX方向としている。
【0050】
カメラシステム100は、例えば赤外光を使った不図示の測距システムや撮像部58に搭載された測距機能により、被写体302、303、304のX方向の位置情報を取得できる。また、撮像部58のどの位置に被写体302、303、304が結像したかによってZ方向及びY方向の位置情報を取得できる。なお、光学系の焦点距離によってその空間上の位置は異なるが、それを加味した位置情報である。
【0051】
よって、前述のように撮影者が複数の被写体302、303、304をタッチ操作で指定することで、各被写体の空間上の座標情報をカメラシステム100は取得できる。取得した座標情報はメモリ等、前述の被写体位置を記憶する被写体記憶部26に記憶される。そして、本実施形態のレンズ鏡筒101が搭載する不図示のメモリには、第6レンズ群6と第8レンズ群8が何mm、どの方向に変位すれば被写体面202cが光軸OAに対しどのように倒れるか、その敏感度テーブルが記憶されている。
【0052】
これら座標や敏感度の記憶情報に基づき、カメラCPU50やレンズCPU30で演算を行い、この演算結果により第6レンズ群6と第8レンズ群8を制御し、被写体302、303、304の空間座標に被写体面202cを合わせることができる。なお、敏感度テーブルでなく、例えばレンズ移動量と被写体面202cの倒れ量を所定の計算式で演算し、それにより第6レンズ群6と第8レンズ群8を制御する方法でも構わない。また、徐々に第6レンズ群6や第8レンズ群8を動かし、各被写体の合焦レベルをそれぞれ判断することで、被写体面202cを構築する方法もある。カメラシステム100にとって適切な制御方法であれば、それを限定するものではない。
【0053】
図5では被写体302、303、304の3点の空間座標を指示することで、被写体面202cを構築する方法について説明した。しかしながら、被写体面202cを3次元空間上の平面として捉えた場合、空間平面を数学的に定義するには、3点を決定する以外にも方法がある。その計算式をカメラシステム100の制御演算に活用することによっても被写体面202cを構築できるが、以下で、これらの方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、被写体面202cを示す模式図である。
【0054】
図6には、指示した被写体位置を示す空間座標点A、B、Cが示されており、空間座標点A、B、Cによって定義可能なベクトルAB、AC、BCが示されている。ここで、平面である被写体面202cの数学的な条件は以下である。
(1)「同一直線上にない3点を通る面」
(2)「1つの直線(ベクトル)を含み、その直線上にない一つの点を通る面」
(3)「平面の通る一点と、その平面に直交する直線(ベクトル)が指定されている面」
(4)「平行であるか、一点で交わる二つの直線(ベクトル)を含む面」
【0055】
これらの条件の1つにあるように、空間座標点A、B、Cの3点が決まれば、数学的にその平面を定義できる。そして、本実施形態ではその平面に被写体面202cを合わせる制御ができる。この被写体面202cの平面の式は以下となる。
空間座標点A=(a,b,c)
空間座標点B=(d,e,f)
空間座標点C=(g,h,i)
ここで、
ベクトルAB=(d-a,e-b,f-c)
ベクトルAC=(g-a,h-b,i-c)
と定義し、これらベクトルの法線ベクトルを外積計算すると、
ベクトルAB×ベクトルAC=(p,q,r)となり、
p=(e-b)(i-c)-(h-b)(f-c)
q=(f-c)(g-a)-(i-c)(d-a)
r=(d-a)(h-b)-(g-a)(e-b)
s=-(pa+qb+rc)
となり、被写体面202cの方程式はpx+qy+rz+s=0である。
【0056】
すなわち、3つの空間座標点A、B、CによるベクトルABとベクトルACの外積によって平面の法線ベクトルを計算し、その法線ベクトルの成分がx、y、zの係数となる。そして平面上の空間座標点Aの座標を代入して定数sを計算し、結果、上記のような方程式となる。
【0057】
また別条件を考えると、例えば条件(2)に則り、ベクトルABと空間座標点A、B、Cを決める方法がある。この場合、撮影者は3つの被写体を表示部60上でタッチ指示するだけではない。被写体面202cの回転軸としてのベクトルを、例えば表示部60上で指を滑らせる、いわゆる「スワイプ」や「フリック」という操作方法で指示し、そして空間座標点Bを指示して平面として定義する方法もある。
【0058】
また、条件(4)に則り、「スワイプ」によって2つのベクトルを指示する、
図6においては例えばベクトルAB、ACを指示する方法もある。なお、
図6で図示した空間座標点A、B、Cによるベクトルだけでなく、別のベクトル指示でも構わない。なお、演算上はこれらのベクトルは平行であるか、もしくは2つのベクトルが1点で交わることが条件である。だが、表示部60での指示はその平面上で行われる。よって、ベクトルを指示する場合は、そのX方向(奥行方向)は例えば、最初にタッチした被写体と指を離したところの被写体の2点を繋ぐように決定する方法が考えられる。このような被写体指示方法の詳細は割愛する。
【0059】
なお、説明した表示部60のタッチ指示以外にも各空間座標点や各ベクトルを指示する方法がある。例えば、EVFを用いた視線入力や、絞り操作環19の回転操作や、不図示のボタンやダイヤルを活用する方法も考えられる。本実施形態において、そのすべてを列挙することは割愛するが、その指示方法を限定するものではない。何れの方法も点やベクトル又は直線、軸によって平面が定義できれば、その方法は問わない。
【0060】
ただ、撮影者は最初から被写体面202cを決定することができるわけではない。所望のボケ具合が得られるよう、主に表示部60でのライブビュー映像を確認し、ときにそのボケ具合を変化させながら決定する場合もある。そのような撮影を踏まえ、被写体面202cの幾何学的な定義方法を、
図7を用いて説明する。
図7は、被写体面202cと回転被写体面205を示す模式図である。
【0061】
図7には、撮影者が所望の被写体面202cを設定する際における、設定途中の回転被写体面205(ピント面)が示されている。回転被写体面205では、空間座標点A、空間座標点Cが撮影者によって指示され、この2点にはピントが合い、空間座標点Bにはピントが合っていない。本実施形態のカメラシステム100では、ピントを合わせる3点が決まっていれば、前述のように撮影者が指示して被写体面202cを構築し、所望の被写体にピントを合わせた撮影が可能である。
【0062】
しかしながら、例えば写真の上下をぼかして街並みや人物を撮影する、いわゆる「逆あおり撮影(ミニチュア撮影)」では、どこにピントを合わせ、どこをぼかすかを撮影者はそのぼけ程度を確認しながら撮影条件を探索、決定する。そのため、前述の通り撮影者が指示した空間座標点A、空間座標点CによってベクトルACを定義する。そしてベクトルACを回転軸として回転被写体面205をθctrl方向に回転させるよう撮影者が指示する。
【0063】
一方、前述のような「物撮り」や、あるいはミニチュア撮影のように被写体が動かない、もしくは動く量が小さい、速度が遅い条件では、撮影者が回転被写体面205を回転させる回転軸となるベクトルを比較的指示しやすい。他方、鉄道は勿論、飛行機や自動車、自転車等の所定の速度で移動する乗り物等の空間座標を撮影者が指示することは難しい。
【0064】
そのため本実施形態のカメラシステム100のカメラCPU50(被写体認識部)は、被写体記憶部26に記憶(取得)された撮影画像から被写体の特徴点を認識し、空間座標として抽出する被写体認識システムとしての役割を果たす。そして得られた空間座標からベクトルACを、被写体の特徴によっては複数選出することも可能である。そして、カメラシステム100は、そのベクトルを表示部60に撮影画像と共に表示する回転軸選出プロセスとしてのカメラCPU50、表示部60を有する。撮影者は特徴点から定義される軸(空間軸)回りにタッチ機能(ピント面回転機構)を有する表示部60で所定の操作、例えばスワイプやフリック等によって被写体面を回転させることができる。すなわち、カメラシステム100は、被写体の特徴点を認識できるカメラCPU50と、特徴点から定義される軸の回りにピント面を回転させるピント面回転機構とを有し、ピント面を回転させることにより合焦範囲が調整可能である制御装置として機能する。そして、表示部60は、被写体の特徴点から定義される軸を表示することが可能である。撮影者は表示部60を見ながら、ティルト効果や被写体の合焦範囲(ボケ範囲)が調整可能となり、所望のボケ範囲での撮影を実現する。本発明によれば、画面上の上下左右斜めどの方向にもティルト効果を得られる光学系である場合でも、所望のティルト効果、合焦範囲(ボケ範囲)を設定できる制御装置及び撮像装置を提供することができる。次に、撮影方法の具体例を
図8にて説明する。
【0065】
図8は、撮影モード301が「乗り物」を撮影するモードとして設定され、例えば被写体として鉄道が移動する場合の表示部60の模式図である。なお、撮影モード301の詳細は後述する。回転軸317は、特徴点としての鉄道の進行方向に沿った屋根の角部が被写体面回転軸として選出されている。そしてこの回転軸317は、角部の最も近い点が特徴点である空間座標(空間位置)として認識され、その空間座標を通り、空間座標が移動するベクトルで定義される。また、回転軸317は、少なくとも1つの被写体の最も近距離の空間位置と最も遠距離の空間位置とを結ぶ線(第3の線)としてもよい。なお、デュアルピクセル CMOS AFのような撮像部58(取得部)は、空間を認識することができるので、特徴点を空間位置として取得する役割を担う。
【0066】
更に、特徴点としての鉄道の「顔」となる最前面の角部の最も近い点が特徴点である空間座標(空間位置)として認識され、被写体面回転軸である回転軸313として同様に選出されている。また、特徴点としての鉄道の「顔」となる最前面の重心の重力方向に沿った仮想の軸(第1の線)が被写体面回転軸である回転軸314として同様に選出されている。本実施形態の撮影においては、これら複数の回転軸313、314、317が同時に選出され、表示部60に表示される。又は、複数の回転軸313、314、317が定義され、少なくとも1つの回転軸が選択可能なように表示部60に表示させることができる。撮影する鉄道等乗り物は移動しているが、前述の被写体認識システムによりその移動を追尾し、回転軸313、314、317は表示され続ける。なお、回転軸313、314、317を点灯させて表示し、回転軸313、314、317が選出されたことを報知するように表示部60を報知部として機能させてもよい。更に、音を発生させて報知させてもよい。
【0067】
本実施形態のカメラシステム100では、このような回転軸選出プロセスがカメラCPU50に搭載されており、撮影者はこれらの中で所望の回転軸を選択する。本実施形態においては、前述の通り表示部60はタッチパネル機能を有するタッチパネルであるため、撮影者はタッチ操作により回転軸313、314、317から少なくとも1つの所望の回転軸を選択可能である。例えば、タッチ操作により回転軸317が選択されると、これに合焦できるように選択された回転軸317の回りに回転被写体面205を移動(回転)させ、その結果、ボケがボケ範囲315、316に生じる。これは第6レンズ群6と第8レンズ群8の位置制御により被写体面が倒れるティルト動作と、第2レンズ群2を光軸方向に移動することによる合焦制御とを組み合わせることで実現している。すなわち、TS駆動部25もしくはTS駆動部25とフォーカス駆動部13Aとにより、特徴点から定義される回転軸313、314、317の回りに回転被写体面205が回転可能である。また、被写体の特徴点から定義される軸の回りに回転被写体面205を回転させる情報に基づいて、TS駆動部25もしくはTS駆動部25とフォーカス駆動部13Aとが制御される。本発明によれば、所望のティルト効果、合焦範囲(ボケ範囲)を設定できる光学装置を提供することができる。
【0068】
回転被写体面205が移動し回転軸317にピントが合うと、回転軸317、つまり鉄道より遠景の表示部60の画面左上(ボケ範囲316)、近景の画面右下(ボケ範囲315)にその距離に応じたボケが発生する。ガイド矢印318は、ボケ範囲が変化する方向を示し、このガイド矢印318に沿って、撮影者がタッチ操作、いわゆる「スワイプ」することで、ボケ範囲を変更することが可能である。ガイド矢印318は「スワイプ」方向のガイドとして機能するが、ガイド矢印318を表示させなくてもボケ範囲を表示部60で確認することでボケ範囲を変更できる。更には表示非表示を切り替えられる機能が合っても良い。また、本実施形態におけるボケ範囲を表すため
図8には点線があるが、表示しなくても操作は可能で、それが切り替えられる機能や、別の表示方法が合っても構わない。
【0069】
図9は、撮影モード301が「人物」を撮影するモードとして設定され、例えば運動会の徒競走等、被写体としての人が集団で移動する場合の表示部60の模式図である。撮影モード301の被写体が「人物」であっても、
図8で説明した「乗り物」と同様に被写体の特徴点を認識することで、回転被写体面205の回転軸を選出できる。二点鎖線で示されたエリア321は、人を集団として認識した際の撮像面上の面積を示す。
【0070】
回転軸319(第2の線)は、エリア321の重心とその移動方向から選出されている。なお、集団の中で最も近い点(特徴点としての空間位置)と最も遠い点(特徴点としての空間位置)を結ぶベクトルによって回転軸319を定義、選出する方法もある。また、回転軸319は、少なくとも1つの被写体の最も近距離の空間位置と最も遠距離の空間位置とを結ぶ線(第3の線)としてもよい。回転軸320は、例えば人物P1が単位時間内で移動した場合、少なくとも1つの被写体の目又は顔又は形状の何れか1つの特徴点(空間位置)と、その移動方向から選出されている。また、回転軸320は、単位時間に移動した空間位置を結ぶ線(第4の線)としてもよい。回転軸319、320は、同じ集団の人から選出されているため、略同じ方向である。しかしながら、人の集団が同じ方向に移動するとは限らない。そこで、人物P2が集団から外れる方向を回転軸320と同様な方法で選出した、回転軸323もある。また、回転軸323は、単位時間に移動した空間位置を結ぶ線(第4の線)としてもよい。ガイド矢印322は、回転軸319を軸として回転した場合のボケが変化する方向を示し、ガイド矢印322に沿ってスワイプすることで、ボケ範囲315、316を所望の範囲に設定可能である。
【0071】
なお、説明した表示部60のタッチ指示以外にもθctrlを指示する方法がある。例えば、EVFを用いた視線入力や、絞り操作環19の回転操作や、不図示のボタンやダイヤルを活用する方法も考えられる。本実施形態において、そのすべてを列挙することは割愛するが、その指示方法を限定するものではない。何れの方法もθctrlを指示できれば、その方法は問わない。更に、設定されたカメラの撮影モードに応じて自動で決定する方法もあるが、詳細は割愛する。
【0072】
前述の通り、
図8では被写体例として鉄道を、
図9では人物を用いて説明したが、例えば撮影モードを切り替えて、自転車レースを撮影しても同様な回転軸の選出、回転軸決定及びボケ範囲を決定するプロセスでの撮影が可能である。なお、この被写体が鳥や馬、あるいは昆虫であっても良く、所定の特徴点が抽出できる被写体認識ができれば、本実施形態を実現可能である。
【0073】
図10は、撮影モード301の一覧表である。前述した通り、本実施形態のカメラシステム100には様々な撮影モード301がある。特にティルト撮影が可能な、本実施形態の特徴点を認識する撮影モード301として、被写体を人物とする「人物」、乗り物とする「乗り物優先」、動物とする「動物優先」がある。そして更には被写体を限定せずに撮影したい撮影者が使いやすい「自動」という撮影モード301があり、前述の被写体認識で特徴点を抽出し、撮影者にとって適切な回転軸が選出される。各撮影モードはそれぞれの被写体の特徴点となりやすい被写体/スポット検知も定義され、それぞれに対し、回転軸が選出しやすいアルゴリズムとなっているが詳細は割愛する。
【0074】
更に本実施形態には、「パターン優先」という撮影モード301があり、よく撮影する被写体・パターンをカメラ本体102の画像記録部59、又は不図示の記憶手段等に記憶させ、そのパターンを特徴点として優先的に選択させるモードである。この「パターン優先」を活用すれば、撮影者の好みの被写体に簡単に合焦し、所望のボケ範囲とする撮影が可能となる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び変形例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0076】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
複数の光学部材を有し、被写体を撮像素子へ結像させる光学装置と、
前記光学装置により形成された像を撮る撮像部と、
前記複数の光学部材のうちの少なくとも1つの前記光学部材、あるいは前記撮像部を駆動してピント面を傾けるティルト駆動部と、
前記複数の光学部材のうちの他の光学部材を駆動して合焦位置を変化させるフォーカス駆動部と、
前記被写体の特徴点を認識する被写体認識部とを有する撮像装置において、
前記ティルト駆動部もしくは前記ティルト駆動部と前記フォーカス駆動部とにより、前記特徴点から定義される軸の回りに前記ピント面が回転可能であることを特徴とする撮像装置。
(構成2)
複数の前記軸が定義され、少なくとも1つの前記軸が選択可能であることを特徴とする構成1に記載の撮像装置。
(構成3)
前記軸が選択されたことを報知する報知部を有することを特徴とする構成1又は2に記載の撮像装置。
(構成4)
前記報知部は、撮影する画像を表示する表示部であり、
少なくとも1つの前記軸を前記表示部に表示することを特徴とする構成3に記載の撮像装置。
(構成5)
前記表示部はタッチパネルであり、タッチ操作により少なくとも1つの前記軸が選択可能であることを特徴とする構成4に記載の撮像装置。
(構成6)
前記タッチ操作により選択された前記軸の回りに前記ピント面を回転させることができることを特徴とする構成5に記載の撮像装置。
(構成7)
前記特徴点を空間位置として取得する取得部を有することを特徴とする構成1乃至6の何れかに記載の撮像装置。
(構成8)
前記軸は、前記空間位置の重力方向である第1の線、あるいは2つの空間位置を結ぶ線である第2の線、あるいは前記被写体の最も近距離の空間位置と最も遠距離の空間位置とを結ぶ第3の線、もしくは単位時間に移動した空間位置を結ぶ第4の線、であることを特徴とする構成7に記載の撮像装置。
(構成9)
前記空間位置は、少なくとも1つの前記被写体の目又は顔又は形状の何れか1つによって定義されることを特徴とする構成7又は8に記載の撮像装置。
(構成10)
前記被写体の位置を記憶する被写体記憶部を有し、
前記被写体認識部は、前記被写体記憶部に記憶された前記被写体の特徴点を認識することを特徴とする構成1乃至9の何れかに記載の撮像装置。
(構成11)
前記光学装置は、前記撮像部に対して着脱可能に装着されていることを特徴とする構成1乃至10の何れかに記載の撮像装置。
(構成12)
複数の光学部材と、
前記複数の光学部材のうちの少なくとも1つの前記光学部材を駆動してピント面を傾けるティルト駆動部と、
前記複数の光学部材のうちの他の光学部材を駆動して合焦位置を変化させるフォーカス駆動部と、を有する光学装置において、
被写体の特徴点から定義される軸の回りに前記ピント面を回転させる情報に基づいて、前記ティルト駆動部もしくは前記ティルト駆動部と前記フォーカス駆動部とが制御されることを特徴とする光学装置。
(構成13)
被写体の特徴点を認識できる被写体認識部と、
前記特徴点から定義される軸の回りにピント面を回転させるピント面回転機構とを有し、
前記ピント面を回転させることにより合焦範囲が調整可能であることを特徴とする制御装置。
(構成14)
前記被写体の前記特徴点から定義される軸を表示する表示部を備えることを特徴とする構成13に記載の制御装置。
【符号の説明】
【0077】
2 第2レンズ群(他の光学部材)
6 第6レンズ群(光学部材)
8 第8レンズ群(光学部材)
13A フォーカス駆動部
25 TS駆動部(ティルト駆動部)
26 被写体記憶部
50 カメラCPU(被写体認識部)
58 撮像部(撮像素子、取得部)
60 表示部(報知部)
100 カメラシステム(撮像装置)
101 レンズ鏡筒(光学装置)
202c 被写体面(ピント面)
205 回転被写体面(ピント面)
313 回転軸(軸)
314 回転軸(軸)
317 回転軸(軸)
319 回転軸(軸)
320 回転軸(軸)