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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171855
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20241205BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241205BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08G59/42
C08L63/00 C
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089113
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 佳恵
(72)【発明者】
【氏名】中村 寛子
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002BH022
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD101
4J002CD131
4J002CD141
4J002DJ016
4J002EG048
4J002EL137
4J002EN028
4J002EN068
4J002EN108
4J002EU118
4J002EU138
4J002EW018
4J002EW048
4J002EW178
4J002EZ048
4J002FA086
4J002FA096
4J002FD016
4J002FD142
4J002FD147
4J002FD158
4J002GQ05
4J036AD07
4J036AD08
4J036AF05
4J036AF06
4J036AF07
4J036AF27
4J036AG06
4J036AG07
4J036AH02
4J036AH07
4J036AH08
4J036AJ09
4J036AJ10
4J036AJ18
4J036AK19
4J036DB21
4J036DB22
4J036DC41
4J036DC46
4J036DD07
4J036FA05
4J036GA04
4J036GA09
4J036GA12
4J036GA15
4J036JA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示はポッティング封止することができ、高温環境下で接着性がよく、信頼性の高い硬化物を形成することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の樹脂組成物はエポキシ化合物(A)、酸無水物(B)、シリカフィラー(C)、及び硬化促進剤(D)を含み、ガラス転移温度(Tg)が175℃以上であり、室温で液状であることを特徴とする。また、前記樹脂組成物を硬化させた際の200℃での銅基材との接着強度が2.0MPa以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)、酸無水物(B)、シリカフィラー(C)、及び硬化促進剤(D)を含み、ガラス転移温度(Tg)が175℃以上であり、室温で液状である樹脂組成物。
【請求項2】
硬化させた際の200℃での銅基材との接着強度が2.0MPa以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物(A)として、脂環式エポキシ化合物を含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(A)として、さらに芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び/又は芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を含み、前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としてジグリシジルアニリン骨格を有する化合物を含む請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジグリシジルアニリン骨格を有する化合物としてN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-o-トルイジンを含む請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
室温で回転数が0.01rpmの条件で測定される粘度が1000Pa・s以下である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の樹脂封止方法としては、リードフレーム上に搭載された半導体等を金型中にセットしておき、金型中に固形の封止樹脂を加熱、溶融させて流し込み、硬化させた後に脱型するトランスファー成型やパッケージ中に設置された半導体素子上に液状の封止樹脂をディスペンサーで滴下し硬化させるポッティング封止が行われている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-191031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなトランスファー成型は、固形の封止樹脂を加熱溶融させた状態でも粘度が非常に高いため、信頼性の高い半導体を製造できる方法としてポッティング封止を採用することが考えられる。
【0005】
ポッティング封止についても使用されるシリコーンゲルは、耐熱性は高いものの接着性が低く、使用環境下で半導体素子と剥離し信頼性を低下させるという課題があった。
【0006】
したがって、本開示の目的はポッティング封止に使用することができ、高温環境下でも接着性がよく、信頼性の高い硬化物を形成可能な樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意努力した結果、エポキシ化合物(A)、酸無水物(B)、シリカフィラー(C)、及び硬化促進剤(D)を含み、ガラス転移温度(Tg)が一定以上であり室温で液状である樹脂組成物であれば、ポッティング封止することができ、高温環境下で接着性がよく信頼性が高い硬化物が得られることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0008】
すなわち、本開示はエポキシ化合物(A)、酸無水物(B)、シリカフィラー(C)、及び硬化促進剤(D)を含み、ガラス転移温度(Tg)が175℃以上であり、室温で液状である樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
上記樹脂組成物は、硬化前は室温で液状であることにより、ポッティング封止することができ、ガラス転移温度(Tg)が175℃以上であることで耐熱性を有し、高温時も信頼性を発揮することができる。
【0010】
また、上記樹脂組成物は硬化させた際の200℃での銅基材との接着強度が2.0MPa以上であることが好ましい。200℃での銅基材との接着強度が2.0MPa以上であることにより、高温での接着力を十分とすることができ、信頼性に優れるものとすることができる。
【0011】
上記樹脂組成物は上記エポキシ化合物(A)として、脂環式エポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0012】
上記樹脂組成物は上記エポキシ化合物(A)として、さらに芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び/又は芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
上記樹脂組成物は上記芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を含み、上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としてジグリシジルアニリン骨格を有する化合物を含むことが好ましい。
【0014】
上記樹脂組成物は上記ジグリシジルアニリン骨格を有する化合物として、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-o-トルイジンを含むことが好ましい。上記構成を有することで信頼性を発揮しつつ、樹脂組成物を低粘度化することが容易となる。
【0015】
上記樹脂組成物は室温で回転数0.01rpmの条件での粘度が1000Pa・s以下であることが好ましい。粘度が1000Pa・s以下であることにより、取り扱い性に優れ、ポッティング封止することが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の樹脂組成物はポッティング封止することができ、高温環境下で接着性がよく信頼性の高い硬化物を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[樹脂組成物]
本開示の一実施形態に係る樹脂組成物はエポキシ化合物(A)、酸無水物(B)、シリカフィラー(C)、及び硬化促進剤(D)を含み、ガラス転移温度(Tg)が175℃以上であり、室温で液状である。
【0018】
なお、本開示において、常温で液状であるとは、25℃、常圧下で流動性を示すものを意味し、常温で固体であるとは25℃、常圧下で固形状であり、流動性を示さないものを意味する。
【0019】
また、本開示において、エポキシ樹脂も含め、単に「エポキシ化合物」と称する場合がある。また、グリシジル基も含め、単に「エポキシ基」という場合がある。
【0020】
上記樹脂組成物を硬化させた際の200℃での銅基材との接着強度が2.0MPa以上であることが好ましく、より好ましくは2.3MPa以上であり、さらに好ましくは2.5MPa以上である。接着強度が2.0MPa以上であることにより、高温での接着性を有し、信頼性を発揮することが容易となる。また、上限としては特に限定されないが、10MPa以下であることが好ましい。
【0021】
また、上記樹脂組成物を硬化させた際の25℃での銅基材との接着強度が3.0MPa以上であることが好ましく、より好ましくは3.3MPa以上であり、さらに好ましくは3.5MPa以上である。接着強度が3.0MPa以上であることにより、上記樹脂組成物を硬化した際に常温での接着性を有し、信頼性を発揮することが容易となる。また、上限としては特に限定されないが、10MPa以下であることが好ましい。
【0022】
また、上述の200℃で測定される接着強度に対する上述の25℃で測定される接着強度の比は5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下である。上記接着強度の比が5以下であることにより、高温での接着性を発揮することが容易となる。
【0023】
上記樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は175℃以上であり、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは190℃以上である。Tgが175℃以上であることにより、耐熱性を発揮し、高温環境下で接着性、信頼性を発揮することができる。また、上限としては特に限定されないが、300℃以下であることが好ましい。
【0024】
上記樹脂組成物は硬化させた際に5℃/分の昇温条件で測定される60~80℃までの線膨張係数(α1)が20ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは18ppm/℃以下であり、さらに好ましくは16ppm/℃以下である。上記α1が20ppm/℃以下であることにより、線膨張係数が低く抑えられるため、硬化物が被着体から剥離することを抑制することができる。また、下限としては特に限定されないが、1ppm/℃以上であることが好ましい。
【0025】
上記樹脂組成物は硬化させた際に5℃/分の昇温条件で測定される240~260℃までの線膨張係数(α2)が55ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは50ppm/℃以下であり、さらに好ましくは45ppm/℃以下である。上記α2が55ppm/℃以下であることにより、高温条件下でも線膨張係数が低く抑えられるため、硬化物が被着体から剥離することを抑制することができる。また、下限としては特に限定されないが、10ppm/℃以上であることが好ましい。
【0026】
上記樹脂組成物は室温で液状であり、室温で回転速度0.01rpmの条件で測定される粘度は1000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは900Pa・s以下であり、さらに好ましくは800Pa・s以下である。上記樹脂組成物は液状であることにより、ポッティング封止することができる。また、上記粘度が1000Pa・s以下であることにより、取り扱い性に優れ、ポッティング封止することが容易となる。また、下限としては特に限定されないが、1Pa・s以上であることが好ましい。
【0027】
また、上記樹脂組成物は室温で回転速度0.01~100rpmの条件で測定される粘度は1000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは900Pa・s以下であり、さらに好ましくは800Pa・s以下である。また、上記条件で測定する粘度が1000Pa・s以下であることにより、取り扱い性に優れ、ポッティング封止することが容易となる。また、下限としては特に限定されないが、1Pa・s以上であることが好ましい。
【0028】
<エポキシ化合物(A)>
上記樹脂組成物はエポキシ化合物(A)を含有する。上記エポキシ化合物(A)は、分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物であり、公知乃至慣用のエポキシ化合物から任意に選択して用いることができる。また、本開示において、上記エポキシ化合物(A)としては1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
上記エポキシ化合物(A)としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物、分子内にエポキシ基を1個以上有するシロキサン誘導体等が挙げられる。
【0030】
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、芳香族グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及び芳香族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。上記芳香族グリシジルエーテル系エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタンから得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。上記芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン及び上述の各成分の骨格を有する化合物などが挙げられる。上記芳香族グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその水添物等のジカルボン酸のジグリシジルエステル、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどのアルケンオキシド類、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0031】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、分子内に1個以上のビスフェノールA骨格と1個以上のエポキシ基とを有する化合物である。
【0032】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、2000(g/eq)以下が好ましく、より好ましくは1000以下である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量を2000以下とすることにより、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎないようにし、取り扱い性が向上する傾向がある。上記エポキシ当量の下限は、特に限定されないが、例えば30以上、好ましくは50以上である。
【0033】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、10000以下が好ましく、より好ましくは8000以下である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の重量平均分子量を10000以下とすることにより、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎないようにし、取り扱い性が向上する傾向がある。上記重量平均分子量の下限は、特に限定されないが、例えば60以上、好ましくは100以上である。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定できる。
【0034】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、商品名「YD-128」(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等の市販品を使用することもできる。
【0035】
上記芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、ジグリシジルアニリン骨格を有する化合物が好ましく、具体的に、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-o-トルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-m-トルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-p-トルイジン、ジグリシジル-キシリジン、ジグリシジル-メシジン、ジグリシジル-アニシジン、ジグリシジル-フェノキシアニリン、あるいはジグリシジル-ナフチルアミン等が挙げられる。中でも、上記樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を維持しつつ、低粘度化を実現するため、上記ジグリシジルアニリン骨格を有する化合物として、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-o-トルイジンを含むことが特に好ましい。
【0036】
上記脂環式エポキシ化合物は、分子内に1個以上の脂環(脂肪族炭化水素環)と1個以上のエポキシ基とを有する化合物である(但し、上述の分子内にエポキシ基を1個以上有するシロキサン誘導体は除かれる)。上記脂環式エポキシ化合物としては、例えば、(i)分子内に脂環エポキシ基(脂環を構成する隣接する2個の炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基)を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物;(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物;(iii)脂環とグリシジル基とを有する化合物等が挙げられる。
【0037】
上述の(i)分子内に脂環エポキシ基を少なくとも1個有する化合物が有する脂環エポキシ基としては、特に限定されないが、中でも、硬化性の観点で、シクロヘキセンオキシド基(シクロヘキサン環を構成する隣接する2個の炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基)が好ましい。特に、(i)分子内に脂環エポキシ基を少なくとも1個有する化合物としては、硬化物の耐熱性の観点で、分子内に2個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましく、より好ましくは下記式(I)で表される化合物である。
【0038】
【化1】
【0039】
上記式(I)中、Zは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。なお、式(I)におけるシクロヘキサン環を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。
【0040】
上記式(I)中のZが単結合である化合物としては、3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキサン等が挙げられる。
【0041】
上記2価の炭化水素基としては、炭素数が1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基等が挙げられる。
【0042】
上記炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基である。
【0043】
上記連結基Zとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、-CO-、-O-CO-O-、-COO-、-O-、-CONH-、エポキシ化アルケニレン基;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基等が挙げられる。2価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
【0044】
上記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(I-1)~(I-10)で表される化合物、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン等が挙げられる。なお、下記式(I-5)、(I-7)中のl、mは、それぞれ1~30の整数を表す。下記式(I-5)中のRは炭素数1~8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(I-9)、(I-10)中のn1~n6は、それぞれ1~30の整数を示す。
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
上述の(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物等が挙げられる。
【0048】
【化4】
【0049】
式(II)中、R’は、構造式上、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R’-(OH)p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15のアルコール等)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、nは1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記式(II)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」、ダイセル社製]等が挙げられる。
【0050】
上述の(iii)脂環とグリシジル基とを有する化合物としては、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を水素化したもの等;ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を水素化したもの;水添ビフェノール型エポキシ樹脂;水添フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAの水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の水添ノボラック型エポキシ樹脂;水添ナフタレン型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ樹脂の水添エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記脂環式エポキシ化合物としては、その他、例えば、1,2,8,9-ジエポキシリモネン等が挙げられる。
【0052】
上記脂環式エポキシ化合物としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(以上、ダイセル社製)等の市販品を使用することもできる。中でも、上記式(I-1)で表される化合物[3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシート;例えば、商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル社製]が特に好ましい。
【0053】
上記複素環式エポキシ化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環、クロマン環、イソクロマン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環、アジリジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、インドリン環、2,6-ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環、1,3,5-トリアザシクロヘキサン環、1,3,5-トリアザシクロヘキサ-2,4,6-トリオン環等の非芳香族性複素環;チオフェン環、ピロール環、フラン環、ピリジン環等の芳香族性複素環等の分子内にエポキシ基以外の複素環と、エポキシ基とを有する化合物が挙げられる。
【0054】
上述の分子内にエポキシ基を1個以上有するシロキサン誘導体(「エポキシ基含有シロキサン誘導体」と称する場合がある)としては、分子内にシロキサン結合(Si-O-Si)により構成されたシロキサン骨格を有し、エポキシ基を1個以上有する化合物である。上記シロキサン骨格としては、例えば、環状シロキサン骨格;直鎖又は分岐鎖状のシリコーン(直鎖又は分岐鎖状ポリシロキサン)や、かご型やラダー型のポリシルセスキオキサン等のポリシロキサン骨格等が挙げられる。上記エポキシ基含有シロキサン誘導体が分子内に有するエポキシ基の数は、特に限定されないが、2~4個が好ましく、より好ましくは3個又は4個である。
【0055】
上記エポキシ化合物(A)としては、上述したうち、脂環式エポキシ化合物を含むことが好ましく、上記脂環式エポキシ化合物に加えて、さらに芳香族エポキシ化合物を含むことがより好ましく、上記芳香族エポキシ化合物として芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び/又は芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むことが好ましく、上記芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、上記芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂としてジグリシジルアニリン骨格を有する化合物を含むことがさらに好ましく、上記ジグリシジルアニリン骨格を有する化合物として、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-o-トルイジンを含むことが特に好ましい。
【0056】
上記エポキシ化合物(A)は、公知乃至慣用の方法により製造することもできるし、市販品を使用することもできる。
【0057】
上記樹脂組成物における上記エポキシ化合物(A)の割合は、樹脂組成物の全量(100質量%)に対して、3~20質量%であることが好ましく、より好ましくは4~17質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。上記エポキシ化合物(A)の割合を3質量%以上とすることにより、樹脂組成物の硬化性が向上し、硬化物の耐熱性が向上する傾向にある。一方、上記エポキシ化合物(A)の割合を20質量%以下とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性が向上する。
【0058】
上記樹脂組成物において上記エポキシ化合物(A)として脂環式エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物(A)の全量(100質量%)に対する上記脂環式エポキシ化合物の割合は、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。エポキシ化合物(A)の割合を40質量%以上とすることにより、樹脂組成物の耐熱性がより向上し、高温での接着性をより向上する傾向がある。一方、上限としては特に限定されないが、100質量%であってもよい。
【0059】
上記樹脂組成物において上記エポキシ化合物(A)として上記脂環式エポキシ化合物に加えて、上記芳香族エポキシ化合物を含有する場合、上記脂環式エポキシ化合物(100質量部)に対する上記芳香族エポキシ化合物の割合は、40~100質量部であることが好ましく、より好ましくは50~100質量部、さらに好ましくは60~90質量部である。芳香族エポキシ化合物の割合が上記範囲内であることにより、樹脂組成物の硬化した際の耐熱性を維持したまま、粘度を低減することが容易となる。
【0060】
また、上記エポキシ化合物(A)と下述のシリカフィラー(C)との混合物の室温で回転速度0.01~100rpmの条件で測定される粘度は300Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは250Pa・s以下であり、さらに好ましくは200Pa・s以下である。上記粘度が300Pa・s以下であることにより、樹脂組成物の粘度を低減することが容易となる。また、下限としては特に限定されないが、1Pa・s以上であることが好ましい。
【0061】
また、上記エポキシ化合物(A)単体の室温で回転速度0.01~100rpmの条件で測定される粘度は10Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは5Pa・s以下であり、さらに好ましくは1Pa・s以下である。上記粘度が10Pa・s以下であることにより、樹脂組成物の粘度を低減することが容易となる。また、下限としては特に限定されないが、0.01Pa・s以上であることが好ましい。
【0062】
<酸無水物(B)>
上記樹脂組成物は硬化剤として酸無水物(B)を含有する。上記酸無水物(B)はエポキシ化合物と反応することにより樹脂組成物を硬化させる働きを有する化合物である。さらに、硬化剤として酸無水物(B)を用いることにより、着色が抑制され、色相に優れた硬化物が得られる傾向がある。上記酸無水物(B)としては1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
上記酸無水物(B)としては、特に限定されず、硬化剤として周知慣用の酸無水物を使用することができ、例えば、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸等のメチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等のメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、1-メチル無水ナジック酸、5-メチル無水ナジック酸等の無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4-(4-メチル-3-ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、1-メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物等のメチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。中でも、取り扱い性の観点で、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が好ましく、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を向上するため、無水メチルナジック酸が特に好ましい。一方、室温で固体の酸無水物については、例えば、室温で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本開示の樹脂組成物における酸無水物(B)としての取り扱い性が向上する傾向がある。
【0064】
上記酸無水物(B)としては、市販品を使用することもでき、例えば、商品名「リカシッド MH-700」、「リカシッド MH-700F」、及び「HNA100」(以上、新日本理化社製);商品名「HN-5500」(レゾナック社製);商品名「NMA」(Polynt社製)等が挙げられる。
【0065】
上記樹脂組成物における酸無水物(B)の含有量は、上記樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物(A)100質量部に対して、50~200質量部が好ましく、より好ましくは80~150質量部である。酸無水物(B)の含有量を50質量部以上とすることにより、硬化を十分に進行させることができ、硬化物の強靭性がより向上する傾向がある。一方、酸無水物(B)の含有量を200質量部以下とすることにより、着色が抑制され、色相に優れた硬化物が得られる傾向がある。
【0066】
また、上記樹脂組成物における、上記エポキシ化合物(A)のエポキシ当量と上記酸無水物(B)の酸無水物当量との当量比は0.5~2.0であることが好ましく、より好ましくは0.7~1.5である。エポキシ化合物(A)と酸無水物(B)の当量比が上記範囲内であることにより、硬化を十分に進行させることができる。
【0067】
また、上記酸無水物(B)と下述のシリカフィラー(C)との混合物の室温で回転速度0.01~100rpmの条件で測定される粘度は100Pa・s以下であることが好ましく、より好ましく70Pa・s以下であり、さらに好ましくは40Pa・s以下である。上記粘度が100Pa・s以下であることにより、樹脂組成物の粘度を低減することが容易となる。また、下限としては特に限定されないが、1Pa・s以上であることが好ましい。
【0068】
また、上記酸無水物(B)単体の室温で回転速度0.01~100rpmの条件で測定される粘度は5Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1Pa・s以下であり、さらに好ましくは0.5Pa・s以下である。上記粘度が5Pa・s以下であることにより、樹脂組成物の粘度を低減することが容易となる。また、下限としては特に限定されないが、0.001Pa・s以上であることが好ましい。
【0069】
<シリカフィラー(C)>
上記樹脂組成物はシリカフィラー(C)を含有する。上記樹脂組成物がシリカフィラー(C)を含むことにより、上記樹脂組成物の硬化物において加熱時の線膨張係数を低減し被着体に対する接着性を向上することができる。上記シリカフィラー(C)としては1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
上記シリカフィラー(C)を構成するシリカとしては、沈降法やゲル法等の湿式法、燃焼法やアーク法等の乾式法等の公知乃至慣用の方法により製造されたものを使用することができ、例えば、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、破砕シリカ、微細シリカ、高純度合成シリカ、コロイダルシリカ、沈澱シリカ等が挙げられる。
【0071】
上記シリカフィラー(C)は、表面処理剤により、表面処理されたシリカフィラーであってもよく、表面処理がされていないシリカフィラーであってもよい。上記表面処理されたシリカフィラーとしては炭素数2以上のアルキルシリル基を有する有機ケイ素化合物、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物、及び直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基を有する有機ケイ素化合物からなる群より選択された少なくとも1種の表面処理剤により表面処理されたシリカであることが好ましい。すなわち、上記シリカフィラー(C)は、炭素数2以上のアルキルシリル基を有する有機ケイ素化合物に由来する構成単位、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物に由来する構成単位、及び直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基を有する有機ケイ素化合物に由来する構成単位からなる群より選択された少なくとも1種の構成単位を、その表面に有することが好ましい。
【0072】
上記シリカフィラー(C)における表面処理剤としての炭素数2以上のアルキルシリル基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクチルシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルシラン等の炭素数2~20、好ましくは3~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルシラン等が挙げられる。また、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライド、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリメチルシリル化剤等が挙げられる。さらに、直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、直鎖又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサン基を有するシリコーンオイル等が挙げられる。
【0073】
なお、上記表面処理剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、上記シリカフィラー(C)を製造するための表面処理剤としては、上記表面処理剤以外の表面処理剤を併用することも可能である。
【0074】
上記原料シリカの表面処理は、公知乃至慣用の方法により実施することができる。表面処理の方法としては、具体的には、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー等のミキサー中に原料シリカを入れ、攪拌しながら上述の表面処理剤を添加する乾式法;原料シリカのスラリー中に上述の表面処理剤を添加するスラリー法;原料シリカの乾燥後に上述の表面処理剤をスプレー付与するスプレー法等が挙げられる。上記表面処理にあたり、上述の表面処理剤はそのまま使用することもできるし、溶液又は分散液の状態で使用することもできる。
【0075】
上記シリカフィラー(C)の形状は、例えば、球状、破砕状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカー状等が挙げられる。中でも、分散性の観点で、球状が好ましい。また、上記シリカフィラー(C)は中空粒子、中実粒子、多孔粒子等のいずれであってもよい。
【0076】
上記シリカフィラー(C)の平均一次粒子径は、0.01μm~300μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μm~250μm、さらに好ましくは0.5μm~150μmである。シリカフィラー(C)の平均一次粒子径が0.01μm以上であると、作業性・安全性から取り扱いが容易となる。一方、シリカフィラー(C)の平均一次粒子径が300μm以下となると樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の透明性が十分となる傾向にある。なお、シリカフィラー(C)の平均一次粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡を用いて、例えば、100個のシリカフィラー(C)の一次粒子径の算術平均を算出することにより測定することができる。
【0077】
上記樹脂組成物における上記シリカフィラー(C)の含有量(配合量)は、樹脂組成物の全量100質量%に対して、60~95質量%であることが好ましく、より好ましくは65~90質量%であり、さらに好ましくは70~85質量%である。シリカフィラー(C)の含有量が60質量%以上であると、加熱時の線膨張係数を低減することができ、高温での接着性を向上することができる。一方、シリカフィラー(C)の含有量が95質量%以下であると、樹脂組成物の室温における粘度を低くすることが容易となる。
【0078】
<硬化促進剤(D)>
上記樹脂組成物は硬化促進剤(D)を含有する。上記硬化促進剤(D)は上記エポキシ化合物(A)が上記酸無水物(B)により硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物である。上記硬化促進剤(D)としては1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
上記硬化促進剤(D)としては公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン;1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;リン酸エステル、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p-トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛等の有機金属塩;金属キレート等が挙げられる。
【0080】
上記硬化促進剤(D)の含有量は、特に限定されないが、上記樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物(A)の全量(100質量部)に対して、0.05~5質量部が好ましく、より好ましくは0.1~3質量部、さらに好ましくは0.2~3質量部である。硬化促進剤(D)の含有量が0.05質量部以上であると、硬化促進効果を十分に発揮することができる。一方、硬化促進剤(D)の含有量が5質量部以下であると、硬化物が着色して色相が悪化することを抑制することができる。
【0081】
<その他の成分>
上記樹脂組成物は上記の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば、上述したもの以外の硬化性成分、熱可塑性樹脂、硬化触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等の安定化剤、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等の難燃剤、難燃助剤、補強材、核剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、染料、顔料等の着色剤、各種ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の表面調整剤、分散剤、消泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、その他の機能性添加剤(例えば、カルボン酸の亜鉛塩等の亜鉛化合物等)等の周知慣用の成分が挙げられる。上記その他の成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、上記その他の成分の含有量(配合量)は、特に限定されず、上記樹脂組成物の全量中、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、0質量%であってもよい。
【0082】
上記樹脂組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を、必要に応じて加熱した状態で撹拌・混合することにより調製することができる。なお、上記樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。上記撹拌・混合の方法は、特に限定されず、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式撹拌装置等の公知乃至慣用の撹拌・混合手段を使用できる。また、撹拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。
【0083】
<硬化物>
本開示の一実施形態として上記樹脂組成物を硬化した硬化物を挙げることができる。上記硬化物は高温環境下でも接着性に優れ、信頼性の高い硬化物を得ることができる。硬化の際の加熱温度(硬化温度)は、特に限定されないが、50~200℃が好ましく、より好ましくは80~300℃である。また、硬化の際に加熱する時間(硬化時間)は、特に限定されないが、30分~10時間が好ましく、より好ましくは1時間~6時間である。硬化温度と硬化時間が上記範囲の下限値より低い場合は硬化が不十分となり、逆に上記範囲の上限値より高い場合は熱分解による黄変が発生するので好ましくない。硬化条件は種々の条件に依存するが、例えば、硬化温度を高くした場合は硬化時間を短く、硬化温度を低くした場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。また、硬化処理は一段階で行ってもよいし、例えば、多段階(二次硬化)としてオーブン等でさらに加熱する等で行ってもよい。また、多段階で硬化を行う場合、この際の加熱温度は、100~250℃が好ましく、より好ましくは130~220℃、さらに好ましくは硬化温度と同程度の温度である。
【0084】
<半導体封止用樹脂組成物>
また、本開示の一実施形態として上記樹脂組成物を半導体封止用樹脂組成物として使用する様態が挙げられる。上記半導体封止用樹脂組成物として上記樹脂組成物を用いることにより、低粘度であるため取り扱い性に優れ、ポッティング封止することができ、硬化後は高温での接着性に優れ、高い信頼性を有する硬化物(封止剤)により半導体素子が封止することができる。上記半導体封止用樹脂組成物の硬化物は高温環境下での優れた接着性と信頼性を有するため、半導体装置が高出力の半導体素子を備える場合であっても、好適に使用することができる。
【0085】
<半導体装置>
本開示の一実施形態として上記樹脂組成物(半導体封止用樹脂組成物)の硬化物により半導体素子が封止された半導体装置が挙げられる。上記半導体素子の封止は、上述の方法で調製した樹脂組成物をポッティング封止により注入し、所定の条件で加熱硬化して行い作製することができる。これにより、上記樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止され、高温環境下でも信頼性を有する半導体装置が得られる。硬化温度と硬化時間は、硬化物の調製時と同様の範囲で設定することができる。
【0086】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0087】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0088】
実施例1~6、比較例1,2
(樹脂組成物の調製)
カップ容器内に表1に記載のA~D剤を表1に示す質量比率となるように混合し、真空脱泡撹拌機(商品名「自転・公転ミキサーあわとり練太郎 真空タイプARV-310」、シンキー社製)を用いて混合、脱泡を行い、実施例及び比較例の液状の樹脂組成物を作製した。
【0089】
以下に表1に記載の各成分を詳述する。なお、表1において、A剤~D剤の項は各剤の配合量(質量部)を記載しているものである。
(A剤)
A-1:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイト2021P」、ダイセル社製、エポキシ当量:130g/eq
A-2:N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-o-トルイジン、日本化薬社製、エポキシ当量:131g/eq
A-3:ポリ[2-(クロロメチル)オキシラン-alt-4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、商品名「YD-128」、日鉄ケミカル&マテリアル社製、エポキシ当量:189g/eq
A-4:4,4’-イソプロピリデンビス(2,6ジブロモフェノル)・1-クロロ-2,3-エポキシプロパンの重縮合物、商品名「NPEB-400」、南亜社製、エポキシ当量:385g/eq
(B剤)
B-1:液状脂環式酸無水物、商品名「リカジット MF-700F」、新日本理化社製、酸無水物当量:163g/eq
B-2:無水メチルナジック酸、商品名「NMA」、Polynt社製、酸無水物当量:176.2g/eq
B-3:水素化メチルナジック酸無水物、商品名「HNA100」、新日本理化社製、酸無水物当量:184g/eq
(C剤)
C-1:シリカフィラー、平均粒径30μm、商品名「FB-950」、デンカ社製
(D剤)
D-1:イミダゾール系触媒、商品名「1B2MZ」、四国化成工業社製
【0090】
上記樹脂組成物について、以下の評価を行いその結果を表1に記載した。
【0091】
[評価]
(1)粘度
樹脂組成物粘度として実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の粘度を、A剤粘度として実施例及び比較例で使用したA剤とC剤の混合物の粘度を、B剤粘度として実施例及び比較例で使用したB剤とC剤の混合物の粘度を、レオメーター(商品名「MCR302」、Anton Paar社製)を使用し、コーンプレート:D-PP25、ギャップ:0.5mm、温度:25℃、回転数:0.01~100rpmの条件で測定した。なお、C剤を添加しない比較例1では使用したA剤単体とB剤単体の粘度を測定した。
【0092】
(2)ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数(α1、α2)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を100℃で2時間、続いて200℃で2時間加熱し硬化させて、硬化物を得た。上記硬化物のガラス転移温度及び線膨張係数(α1、α2)を下記の条件で求めた。
サンプルサイズ:長さ20mm×幅10mm×厚み10mm
測定装置:熱機械測定装置(TMA)、商品名「TMA/SS6000」、セイコーインスツルメント社製
測定モード:圧縮、定荷重測定
測定温度:25℃から240℃まで5℃/分で昇温、240℃から20℃まで10℃/分で急冷、20℃から260℃まで5℃/分で昇温
線膨張係数:α1 60~80℃、α2 240~260℃で測定
【0093】
(3)接着強度
銅基材上に、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物(φ5.5mm、厚み2mm)を、100℃で2時間、続いて200℃で2時間加熱し硬化させて、硬化物を得た。得られた各硬化物について、以下の評価を行った。なお、基材を25℃と200℃にそれぞれ加温し以下の評価を行った。
評価:上記の各硬化物について、ダイシェアテスター(商品名「DAGE 4000 PXY」、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製)を用いて、測定速度300μm/sの条件で、上記の各基材に対する接着強度をそれぞれ測定した。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示す通り、実施例の樹脂組成物ではガラス転移温度(Tg)が175℃以上であり、耐熱性を有し、高温時も接着性が良く信頼性を発揮することができることが確認された。一方で、シリカフィラー(C)を含まない場合、ガラス転移温度(Tg)は十分であったが、線膨張係数が高くなり、信頼性に劣る結果となった(比較例1)。また、比較例2の樹脂組成物はガラス転移温度Tgが低く、高温での接着強度が不十分であった(比較例2)。
【0096】
以下に本開示のバリエーションを記載する。
[付記1]
エポキシ化合物(A)、酸無水物(B)、シリカフィラー(C)、及び硬化促進剤(D)を含み、ガラス転移温度(Tg)が175℃以上であり、室温で液状である樹脂組成物。
[付記2]
硬化させた際の200℃での銅基材との接着強度が2.0MPa以上である、付記1に記載の樹脂組成物。
[付記3]
前記エポキシ化合物(A)として、脂環式エポキシ化合物を含む付記1又は2に記載の樹脂組成物。
[付記4]
前記エポキシ化合物(A)として、さらに芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び/又は芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む付記3に記載の樹脂組成物。
[付記5]
前記芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を含み、前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としてジグリシジルアニリン骨格を有する化合物を含む付記4に記載の樹脂組成物。
[付記6]
前記ジグリシジルアニリン骨格を有する化合物としてN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-o-トルイジンを含む付記5に記載の樹脂組成物。
[付記7]
室温で回転数が0.01rpmの条件で測定される粘度が1000Pa・s以下である付記1~6のいずれか1つに記載の樹脂組成物。