(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171859
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】仮想建物の仮想部屋における位置指定方法及び位置指定システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04845 20220101AFI20241205BHJP
【FI】
G06F3/04845
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089119
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 元明
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA01
5E555BA02
5E555BA04
5E555BA73
5E555BB02
5E555BB04
5E555BC18
5E555BE17
5E555CA02
5E555CA42
5E555CC01
5E555DB34
5E555DC09
5E555EA21
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】デジタルツインシステムにおける仮想建物の仮想部屋における有効な位置指定方法を確立する。
【解決手段】実施形態の一例である仮想建物の仮想部屋における位置指定方法は、現実空間における情報に基づいて仮想空間を形成し、現実空間の変化を仮想空間に再現するデジタルツインシステムにおいて、仮想空間における仮想建物内の仮想部屋に、現実空間における現実建物の現実部屋内の特定位置に対応する位置を指定する方法である。位置指定方法は、仮想部屋の床に沿って第2座標系34を設定するステップと、仮想建物の全体の座標系である第1座標系32に第2座標系の原点O2位置を設定するステップと、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間における情報に基づいて仮想空間を形成し、前記現実空間の変化を前記仮想空間に再現するデジタルツインシステムにおいて、前記仮想空間における仮想建物内の仮想部屋に、前記現実空間における現実建物の現実部屋内の特定位置に対応する位置を指定する方法であって、
前記仮想部屋の床に沿って第2座標系を設定するステップと、
前記仮想建物の全体の座標系である第1座標系に前記第2座標系の原点位置を設定するステップと、を有する、
仮想建物の仮想部屋における位置指定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の仮想建物の仮想部屋における位置指定方法において、
前記第1座標系において前記原点位置を設定するステップは、前記原点位置と共に、前記第1座標系に対する前記第2座標系の傾き角度を設定する、
仮想建物の仮想部屋における位置指定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の仮想建物の仮想部屋における位置指定方法において、
前記第2座標系に基づいて、前記仮想部屋内に、前記現実部屋内の前記特定位置に対応する位置を指定するステップを有する、
仮想建物の仮想部屋における位置指定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の仮想建物の仮想部屋における位置指定方法において、
前記現実部屋における床要素と前記特定位置との位置関係に応じて、前記仮想部屋における前記特定位置に対応する位置を指定するステップを有する、
仮想建物の仮想部屋における位置指定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の仮想建物の仮想部屋における位置指定方法において、
前記特定位置は、前記現実部屋内における位置取得対象の人の位置であり、
前記現実部屋における前記床要素と前記人との位置関係は、前記現実部屋内に存在するカメラの撮影画像から取得する、
仮想建物の仮想部屋における位置指定方法。
【請求項6】
現実空間における情報に基づいて仮想空間を形成し、前記現実空間の変化を前記仮想空間に再現するデジタルツインシステムにおいて、前記仮想空間における仮想建物内の仮想部屋に、前記現実空間における現実建物の現実部屋内の特定位置に対応する位置を指定する位置指定システムであって、
前記仮想部屋の床に沿って第2座標系が設定され、
前記仮想建物の全体の座標系である第1座標系に前記第2座標系の原点位置が設定される、
仮想建物の仮想部屋における位置指定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現実空間における情報に基づいて仮想空間を形成し、現実空間の変化を仮想空間に再現するデジタルツインシステムにおいて、仮想空間における仮想建物内の仮想部屋に、現実空間における現実建物の現実部屋内の特定位置に対応する位置を指定する方法及び位置指定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現実空間における情報に基づいて仮想空間を形成し、現実空間の変化を仮想空間に再現するデジタルツインシステムが知られている。デジタルツインシステムは、現実空間の設備機器などを、仮想空間に再現し、現実空間の情報に基づいて、現象または機器の挙動の分析、予測、最適化等を行うために利用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタルツインシステムにおいて、現実空間の建物(現実建物)の部屋である現実部屋に対応して、仮想空間内の建物(仮想建物)の部屋である仮想部屋を設定することが考えられる。しかしながら、この場合に、現実部屋の特定位置、例えば位置取得対象である人の現在位置に対応する仮想部屋内の位置を指定する有効な方法は十分には確立されていない。
【0005】
本発明の目的は、デジタルツインシステムにおける仮想建物の仮想部屋における有効な位置指定方法及び位置指定システムを確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一例である仮想建物の部屋における位置指定方法は、現実空間における情報に基づいて仮想空間を形成し、前記現実空間の変化を前記仮想空間に再現するデジタルツインシステムにおいて、前記仮想空間における仮想建物内の仮想部屋に、前記現実空間における現実建物の現実部屋内の特定位置に対応する位置を指定する方法であって、前記仮想部屋の床に沿って第2座標系を設定するステップと、前記仮想建物の全体の座標系である第1座標系に前記第2座標系の原点位置を設定するステップと、を有する、仮想建物の仮想部屋における位置指定方法である。
【0007】
実施形態の一例である仮想建物の部屋における位置指定システムは、現実空間における情報に基づいて仮想空間を形成し、前記現実空間の変化を前記仮想空間に再現するデジタルツインシステムにおいて、前記仮想空間における仮想建物内の仮想部屋に、前記現実空間における現実建物の現実部屋内の特定位置に対応する位置を指定する位置指定システムであって、前記仮想部屋の床に沿って第2座標系が設定され、前記仮想建物の全体の座標系である第1座標系に前記第2座標系の原点位置が設定される、仮想建物の仮想部屋における位置指定システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の仮想建物の仮想部屋における位置指定方法及び位置指定システムによれば、デジタルツインシステムにおける仮想建物の仮想部屋における有効な位置指定方法及び位置指定システムを確立できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の位置指定システムに相当するデジタルツインシステムの概念を示す図である。
【
図2】
図1のデジタルツインシステムの構成を示すブロック図である。
【
図3A】実施形態の位置指定方法を適用する現実空間の建物の部屋を含む階の平面図である。
【
図3B】
図3Aの部屋に対応する仮想空間内の建物の部屋を含む階における、
図3Aの部分拡大相当図である。
【
図4A】実施形態の位置指定方法を示すフローチャートのうち、仮想部屋の内接長方形を決定するまでの方法を示すフローチャートである。
【
図4B】実施形態の位置指定方法を示すフローチャートのうち、内接長方形を決定した後、仮想部屋内に特定位置に対応する位置を指定する方法を示すフローチャートである。
【
図5】内接長方形から仮想部屋に第2座標系を設定する方法を示す図である。
【
図6】仮想部屋に傾き角度が異なる複数の内接長方形を設定する方法を示す図である。
【
図7】仮想建物の座標系である第1座標系に第2座標系の原点位置と傾き角度を設定する方法を示す図である。
【
図8】実施形態の位置指定方法を適用する仮想部屋の別例を示す平面図である。
【
図9】
図8の仮想部屋において面積最大の内接長方形を決定するために、複数の内接長方形を作成した状態を示す図である。
【
図10】仮想部屋に設定した第2座標系と刻みピッチの一例とを示す図である。
【
図11】実施形態の別例の位置指定方法を適用する現実空間の建物の部屋を示す斜視図である。
【
図12】実施形態の別例において、部屋の床面に配置する模様付き床パネルの模様の一例を示す図である。
【
図13】実施形態の別例において、携帯端末のカメラの写真の画像から位置取得対象である人の現在位置を取得する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る仮想建物の部屋における位置指定方法及び位置指定システムの実施形態について詳細に説明する。以下で説明する各実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0011】
図1は、実施形態の位置指定システムに相当するデジタルツインシステム1の概念を示す図である。
図1に示すように、デジタルツインシステム1は、仮想空間2と現実空間3とを連携する。より具体的には、デジタルツインシステム1は、現実空間3の所定領域における情報に基づいて仮想空間2の所定領域を形成し、現実空間3の変化を仮想空間2に再現する。デジタルツインシステム1は、仮想空間2における種々の条件でシミュレーション等の解析を行うために用いられる。デジタルツインシステム1は、仮想空間2で行った解析の結果を、現実空間3における制御等にフィードバックする。また、デジタルツインシステム1は、現実空間3における位置取得対象である人の位置に対応する仮想空間内の位置を指定する。
【0012】
仮想空間2は、コンピュータ上、またはネットワーク上に構築される仮想的な空間であり、三次元の空間を有する。仮想空間2には、対応する現実空間3に、位置取得対象の人の位置として特定位置が取得される場合に、その特定位置に対応する位置が指定される。
【0013】
仮想空間2及び現実空間3の所定領域は、それぞれ1つまたは複数の部屋を有する少なくとも1つの建物を含んでいる。仮想空間2の建物である仮想建物2a、2b、2c、2dは、現実建物3a、3b、3c、3dに対応するように形成される。仮想空間2の所定領域は、現実空間3における所定領域と対応関係を有していればよく、現実空間3の所定領域を正確に再現してもよく、少なくとも一部の領域が改変されていてもよい。
【0014】
図2は、実施形態の位置指定システムに相当するデジタルツインシステム1の構成を示すブロック図である。デジタルツインシステム1は、デジタルツイン作成処理装置10と、現実空間における現実建物の現実部屋内にいる人の位置を取得するために、現実部屋及び人を撮影するカメラ等を有する位置取得補助部20とを備える。デジタルツイン作成処理装置10は、コンピュータを含んで構成され、現実空間の所定領域における情報収集を行う情報収集部11、特定位置取得部13、座標系設定部14、位置指定部15、処理部16、及びフィードバック部17を有する。デジタルツイン作成処理装置10の一部の機能を有する部分がクラウドサーバ上に設けられ、デジタルツイン作成処理装置10の残りの機能を有する部分と、ネットワークを介して接続されてもよい。
【0015】
情報収集部11は、機器または装置のセンサからデータを取得する。特定位置取得部13は、位置取得補助部20から取得された情報に基づいて、位置取得対象の人の現在位置である特定位置を取得する。位置取得補助部20は、カメラを有する構成に限定せず、重量センサ、赤外線センサ等の人の現在位置を取得可能な人感知センサ、無線タグなどを用いた位置情報システム等を有する構成であってもよい。
【0016】
座標系設定部14は、仮想建物の全体の座標系である第1座標系と、仮想建物内の仮想部屋の床に沿った第2座標系とを設定する。座標系設定部14は、第1座標系において、仮想部屋の原点位置を設定する。座標系設定部14は、第1座標系において、仮想部屋の原点位置と、第1座標系に対する第2座標系の傾き角度を設定する構成としてもよい。
【0017】
位置指定部15は、第2座標系に基づいて、仮想部屋内に、現実空間の現実建物における現実部屋内の特定位置に対応する位置を指定する。
【0018】
処理部16は、取得されたデータ及び特定位置に対応して仮想部屋に指定された位置と、ユーザからマウス、キーボード、タッチスクリーン等の入力部(図示せず)を用いて入力された指示等に基づいて、現実空間の変化を仮想空間に再現するシミュレーションである処理を実行する。処理部16は、現象または機器の挙動の分析、予測、最適化等の処理を行ってもよい。例えば、情報収集部11で照明装置や空調装置のセンサからデータを取得し、処理部16によって、仮想部屋における明るさや温度の変化のシミュレーションが実行されてもよい。フィードバック部17は、処理部16で実行された処理の結果をディスプレイ、プリンタ、またはユーザの携帯端末等の出力部に出力したり、現実空間の機器または装置の制御を行う。
【0019】
上記のように、位置指定システムに相当するデジタルツインシステム1によれば、仮想部屋の床に沿って第2座標系が設定され、仮想建物の全体の座標系である第1座標系に第2座標系の原点位置が設定される。これにより、後で位置指定方法において詳しく説明するように、仮想部屋内での位置情報の計算に用いるコンピュータの計算量を少なくできるので、仮想部屋における有効なデジタルツインシステム1を確立できる。
【0020】
以下、
図3Aから
図10を用いて、現実空間における建物である現実建物3a(
図3A)の部屋内の特定位置に対応して、仮想建物2a(
図3B)の仮想部屋内における位置を指定する方法をより具体的に説明する。
図3Aは、実施形態の位置指定方法を適用する現実建物3aの複数の部屋を含む階の平面図である。
図3Bは、
図3Aの複数の部屋に対応する、仮想空間内の仮想建物2aの複数の部屋を含む階における、
図3Aの部分拡大相当図である。
【0021】
図3Aに示すように、現実建物3aの所定階には、複数の現実部屋がある。複数の現実部屋は、平面視で互いにほぼ同じ広さであり、縦方向(
図3Aの上下方向)に長い略長方形の3つの第1側部屋4a,5a,6aと、各第1側部屋4a,5a,6aと廊下8aに関して反対側に配置され、平面視で横方向(
図3Aの左右方向)に長い略長方形の1つの第2側部屋7aとを含んでいる。3つの第1側部屋4a,5a,6aは横方向に並んで配置される。第2側部屋7aは、2つの第1側部屋4a、5aと廊下8aを挟んで対向する。
【0022】
次に、1例として、
図3Aの2つの第1側部屋4a、5aと第2側部屋7aとに対応する3つの仮想部屋の座標系を設定する場合を考える。
図3Bに示すように、座標系設定部14(
図2)は、仮想建物2aの所定階において、現実建物3aの所定階と略同じ形状の、2つの第1側部屋4b、5bと第2側部屋7bとを有する部分の平面視の形状を作成する。
【0023】
図4A、
図4Bは、実施形態の位置指定方法を示すフローチャートである。
図4Aは、その位置指定方法のうち、仮想部屋の内接長方形を決定するまでの方法を示す。
図4Bは、上記位置指定方法のうち、内接長方形を決定した後、仮想部屋内に特定位置に対応する位置を指定する方法を示す。以下では、現実部屋である第1側部屋4aに対応する、仮想部屋である第1側部屋4bに、第1側部屋4a内の特定位置に対応する第1側部屋4b内における位置を指定する方法を中心に説明する。
【0024】
図4Aに示すように、まず座標系設定部14は、仮想建物2a内の対象とする仮想部屋の部屋番号等の識別情報及び仮想部屋の形状を取得するステップを行う(S10)。例えば、座標系設定部14は、
図3Aの3階にある部屋番号が304号である第1側部屋4aに対応して、
図3Bの3階にある部屋番号が304号の第1側部屋4bと、その部屋4bの形状とを取得する。
【0025】
次に、座標系設定部14は、予め記憶部に記憶され設定された、仮想部屋に設定する後述の内接長方形の短辺方向長さの最小値Wpyaと、計測ピッチLと、角度計測ピッチΔαと、を取得するステップを行う(S11)。例えば、座標系設定部14は、内接長方形の短辺方向長さの最小値Wpyaとして600cm、計測ピッチLとして60cm、そして角度計測ピッチΔαとして10度を取得する。
【0026】
図5は、内接長方形30から仮想部屋に第2座標系を設定する方法を示す。
図6は、仮想部屋に傾き角度αが異なる複数の内接長方形B1、C3を設定する方法を示す。
図5(a)に示すように、内接長方形30は、長辺方向長さをWpxとし、短辺方向長さをWpyとする。このとき、仮想部屋の1つの壁面である第1壁面に沿って、内接長方形30を作成した後、次回の内接長方形を作成するときに、1つの頂点を第1壁面の一方端側に移動させる距離が、計測ピッチLである。また、短辺方向長さWpyは、最小値Wpya以上である。
【0027】
次に、
図4AのS12において、座標系設定部14は、仮想部屋において、壁に接する内接長方形の候補を1つ作成するステップを行う。例えば、座標系設定部14は、
図6に示すように、点A1の1つの頂点を持ち、かつ第1壁面31に沿った内接長方形B1を作成し、記憶部に記憶させる。
【0028】
続いて、座標系設定部14は、前回作成の内接長方形B1に対し、1つの頂点位置と、傾き角度と、短辺方向長さ及び長辺方向長さとのうち、少なくとも一方を変化させて、仮想部屋の壁に接する別の内接長方形の候補を作成するステップを行う(S13)。例えば、座標系設定部14は、内接長方形B1に対し、1つの頂点位置を点A1で一致させ、かつ、所定の傾き角度αで一方側に傾斜させ、かつ短辺方向長さ及び長辺方向長さをそれぞれ小さくした所定の大きさの長方形C1(
図6)を作成する。次に、座標系設定部14は、
図6に実線C2,C3で示すように、長方形が仮想部屋の壁に内接するまで、短辺方向長さ及び長辺方向長さをそれぞれ同じ比率で徐々に大きくし、別の内接長方形の候補を作成する。一方、所定の傾き角度αで傾斜させて形成した所定の大きさの長方形が仮想部屋の壁より外側にはみ出す場合には、1つの頂点位置を計測ピッチL分、第1壁面31の一方端側に移動させたA2,A3・・・とし、第1壁面31に沿った別の内接長方形の候補を作成してもよい。
【0029】
次に、
図4AのS14において、座標系設定部14は、S13で作成した別の内接長方形の候補が、既に作成した内接長方形の候補より面積が大きいか否かを判定するステップを行う。S14の判定結果が肯定(YES)の場合には、内接長方形の候補を、S13で作成した別の候補に入れ替えて記憶部に記憶させるステップを行う(S15)。
【0030】
一方、S14の判定結果が否定(NO)の場合には、内接長方形の候補の入れ替えを行わず、記憶部に記憶された内接長方形の候補を維持するステップを行う(S16)。S15,S16の処理の後で、座標系設定部14は、作成可能な全ての内接長方形の作成が終了したか否かを判定するステップを行う(S17)。S17の判定結果が肯定(YES)の場合には、S18に処理が移行する。一方、S17の判定結果が否定(NO)の場合には、S13に戻って、S13からS17の処理を繰り返す。
【0031】
S18では、記憶部に最終的に記憶された内接長方形を、最終的に決定された内接長方形とするステップを行う。これにより、Wpy≧Wpyaの条件下での面積最大となる仮想部屋に内接する長方形を決定することができる。
【0032】
このように長方形を小さいものから仮想部屋に内接するまで拡大することにより、近似的に内接長方形が定義できるので、室内の壁面の全部について、計測ピッチL、所定の傾き角度αをある程度大きく設定することにより、内接長方形の候補の作成数を減らして計算量を削減することができる。例えば、傾き角度αは、0度から10度ずつ、180度まで大きくし、その変化の中で内接長方形を決定してもよい。また、その後、1つの頂点位置を計測ピッチL分移動させた後、同様に傾き角度αを0度から10度ずつ、180度まで大きくし、その変化の中で内接長方形を決定してもよい。これにより、最も面積が大きい内接長方形を近似的に決定できる。一方、計測ピッチL及び角度計測ピッチΔαを小さくすることにより、内接長方形の候補をより高精度で決定できる。
【0033】
S18の処理の後、座標系設定部14は、仮想部屋に第2座標系を設定するステップを行う(
図4BのS20)。例えば、
図5(b)に示すように、決定された内接長方形W1の長辺方向に沿ってX2軸を形成し、短辺方向に沿ってY2軸を形成する。また、X2軸とY2軸の交点を第2座標系の原点O2とする。具体的には、X2軸及びY2軸と、X2、Y2のそれぞれに直交するZ2軸との3軸の座標系で、原点O2の座標を(30X、30Y、30Z)と設定する。これにより、例えば、
図3Bに示すように、2つの第1側部屋4b、5bと1つの第2側部屋7bとに、X2軸及びY2軸を持つ第2座標系をそれぞれ設定することができる。
【0034】
また、各部屋4b、5b、7bの第2座標系のX2軸方向及びY2軸方向のそれぞれに、刻みピッチが設定されてもよい。刻みピッチは、位置の特定に用いられる。
図3Bでは、刻みピッチは、格子の間隔で示している。刻みピッチの大きさは、X2軸方向とY2軸方向とで互いに同じとすることができる。このため、格子で規定される最小の矩形は正方形である。
【0035】
刻みピッチは正の値であれば、任意の値とすることができる。X2軸方向とY2軸方向とで刻みピッチの大きさを同じとする場合には、現実空間の部屋の床面に、複数の平面視正方形の床パネルが敷き詰められた後述のフリーアクセスフロアを設ける場合に、その床パネルの大きさと刻みピッチで規定される正方形との大きさを一致させることができる。これにより、現実空間と仮想空間との位置連携を行いやすくなる。
【0036】
次に、座標系設定部14は、第1座標系に第2座標系の原点位置と第1座標系に対する第2座標系の傾き角度を設定するステップを行う(S21)。
【0037】
図7は、仮想建物全体の座標系である第1座標系32において、第2座標系34の原点O2位置と傾き角度θ
30Xとを設定する方法を示している。
図7に示すように、建物の外面等から、互いに直交するX1軸、Y1軸及びZ1軸を座標軸として持ち、原点O1を持つ第1座標系32が設定される。そして、この第1座標系32に、
図5(b)で説明した第2座標系のX2軸及びY2軸と原点O2の位置とを設定する。そして、原点O2を基準とした第2座標系に、第1座標系32の座標を変換する。例えば、原点O2について、(X1―30X、Y1-30Y、Z1―30Z)と設定する。また、原点O2を通る鉛直方向の軸であるZ2軸を中心とした、水平面上における第2座標系34の第1座標系32に対する傾き角度をθ
30Xと設定する。
【0038】
これにより、第1座標系32の座標が、原点O2を原点位置とし、傾き角度θ
30Xで水平方向に沿って第1座標系32の座標軸を回転させた場合に得られる座標に変換される。例えば
図3Bの各部屋の床面では、Z1軸方向の位置が30Zで一定であるので、X2及びY2についての二次元座標と設定できる。また、2つの第1側部屋4b、5bの原点O2のX2、Y2座標の(30X、30Y)をそれぞれ(304、304)、(303,303)とした場合に、原点O2の座標は、(X1-304,Y1-304)、(X1-303,Y1-303)と変更される。また、第2側部屋7bの原点O2のX2、Y2座標の(30X,30Y)を(301,301)とした場合に、原点O2の座標は、(X1-301,Y1-301)と変更される。
【0039】
また、
図3Bのように、X1軸及びY1軸が第2側部屋7bのX2軸及びY2軸にそれぞれ同じ向きで沿っている場合に、各第1側部屋4b、5bの傾き角度が-90度であり、第2側部屋7bの傾き角度が0度である。
【0040】
次に、
図4BのS22において、特定位置取得部13(
図2)が、現実部屋における位置取得対象の人の特定位置を、カメラの撮影画像等、位置取得補助部20で取得した情報から取得するステップを行う。そして、S23において、位置指定部15(
図2)が、第2座標系に基づいて、現実部屋に対応する仮想部屋内に、特定位置に対応する位置を指定するステップを行い、処理が終了する。
【0041】
このような仮想建物の部屋における位置指定方法及びデジタルツインシステム1によれば、仮想空間での位置情報の検討に際し、仮想部屋内での位置情報が、部分的な各部屋の座標だけで設定可能となるので、仮想建物全体の第1座標系を使用する必要がなくなる。これにより、位置情報の計算に用いるコンピュータの情報処理量に対応する計算量を少なくできる。このため、仮想部屋における有効な位置指定方法及びデジタルツインシステム1を確立できる。また、現実部屋と仮想部屋とにおいて、位置関係の比較を行い易くなる。
【0042】
なお、
図3Bの第1側部屋4bで示すように、仮想部屋の形状によっては、内接長方形ではカバーされない斜線部で示したような領域が生じる場合がある。この場合でも、その内接長方形に基づいて第2座標系が設定されれば、その第2座標系に基づいて内接長方形でカバーされない領域でも位置の指定が可能となる。例えば、
図3Bの斜線領域では、Y2軸の負の方向の領域に位置を指定することができる。
【0043】
また、
図4A及び
図4Bのフローチャートで説明した位置指定方法では、仮想部屋に内接する内接長方形に基づいて第2座標系を設定しているが、正方形を含む形状である内接矩形に基づいて、第2座標系を設定することもできる。
【0044】
図8は、実施形態の位置指定方法を適用する仮想部屋の別例である部屋22を示す平面図である。
図9は、部屋22において面積最大の内接長方形を決定するために、複数の内接長方形D1,D2,D3,D4を作成した状態を示す図である。
図10は、部屋22に設定した第2座標系と刻みピッチの一例とを示す図である。
【0045】
図3Bでは、仮想部屋が略矩形である場合において第2座標系を設定する場合を説明したが、
図8~
図10に示すように、部屋22が複雑な形状を有する場合にも第2座標系を設定できる。
図8の部屋22は、平面視で略長方形の部分の短辺方向一方側の壁の両端2つの突出部23,24が形成され、短辺方向他方側の壁の長辺方向一端部に突出部25が形成されている。
【0046】
この場合も、
図4A、
図4Bで説明した位置指定方法と同様に、複数の内接長方形の候補を作成し、最大面積を有する内接長方形を決定する。例えば、
図9に実線、破線、一点鎖線、二点鎖線の長方形で示すように、部屋22内に複数の内接長方形D1,D2,D3、D4を作成することができる。このとき、
図4A、
図4Bで説明した位置指定方法と同様に、各内接長方形の短辺方向長さD1,D2,D3、D4は、所定の最小値Wpya以上とすることができる。
【0047】
そして、
図10に示すように、最大面積を有する内接長方形D1を決定し、その内接長方形D1の長辺方向と短辺方向に沿ってX2軸とY2軸とを決定し、X2軸とY2軸との交点である原点O2を決定することができる。
図10では、部屋22の内側に砂地を付している。また、
図10に示すように、X2軸及びY2軸に沿って、位置の特定に用いる刻みピッチを設定できる。
図10では、刻みピッチを破線格子の間隔で示している。刻みピッチの大きさは、X2軸方向とY2軸方向とで互いに同じである。このため、
図3Bで示した仮想部屋の場合と同様に、現実空間と仮想空間との位置連携を行いやすくなる。
【0048】
図11は、実施形態の別例の位置指定方法を適用する現実空間の建物の部屋26を示す斜視図である。本例の構成では、フリーアクセスフロア40の床パネルの一部が模様付床パネル41,42,43であり、他の床パネル46の上面とは異なる意匠が施されている。また、少なくとも1つの模様付床パネル41,42,43を含む部分がカメラで撮影されたときに、その撮影画像からそのカメラを持っている人や、その撮影画像中の人の現在位置を特定する。カメラは、位置取得補助部に相当する。
【0049】
まず、カメラを持っている人の現在位置を特定する場合を説明する。この場合、カメラは、スマートフォン等の携帯端末に内蔵されたものとすることができる。
【0050】
部屋26の床面は、室内の縦横に格子状に敷き詰められた複数の床パネル41,42,43,46の上面により構成される。複数の床パネル41,42,43,46は、フリーアクセスフロア40を構成する。例えば下側の基礎床(図示せず)に、複数の支持部材(図示せず)が固定される。各支持部材は、基礎床の上側に直立するように固定された複数の支持脚と、各支持脚の上端に固定された載置部とを有する。複数の床パネル41,42,43,46は、複数の載置部上面に載せられて配置される。これにより、床パネル41,42,43,46で形成された床面と基礎床との間に空間が形成される。この空間に、種々の機器の電源コードや通信ケーブル等を収容することが可能となり、その電源コードや通信ケーブルが床上に配置されることが防止される。床パネル41,42,43,46は、一般的に平面視が正方形の板部により形成される。
【0051】
本例の場合、複数の床パネル41,42,43,46の一部が、複数(
図11では3つ)の模様付床パネル41,42,43である。各模様付床パネル41,42,43は、上面に模様が施され、他の床パネル46の上面の意匠、例えば一色のみからなる意匠とは異なっている。また、複数の模様付床パネル41,42,43同士でも、上面の模様が異なっている。
図11では、簡易的に、模様付床パネル41,42,43の上面を斜線部で示している。
【0052】
図12は、実施形態の別例において、部屋の床面に配置する模様付床パネル41,42,43の上面の模様の一例を示している。模様付床パネル41,42,43の模様は、正方形の外枠49の四隅に表示された4つの外側三角形50,51,52,53と、4つの外側三角形50,51,52,53の内側であって、外枠49に内接する中間正方形54と、中間正方形54に内接する内側正方形55とを含んでいる。中間正方形54の内側において、内側正方形55の外側の四隅には、4つの内側三角形56,57,58,59が表示される。
【0053】
床パネル41,42,43の外枠49の縦方向及び横方向の長さは、例えば600mmである。4つの外側三角形50,51,52,53には、それぞれ一色の色が付されている。4つの外側三角形50,51,52,53の色は、例えば青色、桃色、黄色、緑色の中から選ばれる。4つの外側三角形50,51,52,53の色は、互いに異なっていてもよいし、少なくとも一部の色が同じであってもよい。このため、4つの外側三角形50,51,52,53の色の組み合わせは、4×4×4×4=256通りである。
【0054】
4つの内側三角形56,57,58,59には、それぞれ一色の色が付されている。4つの内側三角形は、1つの黒色の内側三角形59と、3つの白色の内側三角形56,57,58とを含む。黒色の内側三角形59の位置が、模様付床パネル41,42,43の上側であることを示している。
【0055】
内側正方形55には、文字またはオリジナルの模様、絵、記号が表示される。例えば、内側正方形55に、アルファベットの大文字、小文字、及び0から9の数字のいずれか1つが表示される。この場合、アルファベットの文字及び数字のうちの1つだけが内側正方形に表示される場合でも、その種類は、26×2+10=62通りある。また、他の模様、絵、記号を用いれば、その種類の数は無限大となる。
【0056】
このため、内側正方形55に、アルファベットの大文字、小文字、及び0から9の数字のいずれか1つが表示される場合であって、4つの外側三角形50,51,52,53の色と、4つの内側三角形56,57,58,59の色とを上記のように規定する場合には、その組み合わせの合計は、256×62=1万5872通りとなる。
【0057】
本例の場合には、
図4BのS22において、部屋26における人の特定位置を、カメラの撮影画像から取得する場合に、部屋26における床要素である模様付床パネル41,42,43の少なくとも1つと人の特定位置との位置関係を取得する。そして、その位置関係に応じて部屋26における人の特定位置を取得する。そして、その取得された特定位置に応じて、仮想部屋における特定位置に対応する位置を指定する。このとき、特定位置は、部屋26内における位置取得対象の人の位置である。また、部屋26における模様付床パネル41,42,43と人との位置関係は、部屋26内に存在する、人が携帯するスマートフォン等の携帯端末に内蔵されたカメラの撮影画像から取得する。
【0058】
図13は、携帯端末101のカメラの写真の画像から位置取得対象である人100の現在位置を取得する方法を示している。
図13では、4つの位置に模様付床パネル80a、80b、80c、80dがある場合を示している。4つの模様付床パネル80a、80b、80c、80dは、他の模様がない複数の床パネル90と並んで配置される。人100は、少なくとも1つの模様付床パネル80a、80b、80c、80dを含む撮影画像を取得するように、カメラで部屋26の室内を撮影する。これにより、撮影画像に含まれる少なくとも1つの模様付床パネル80a、80b、80c、80dの模様の種類、向き、カメラの画角等から人100の位置を推定できる。
【0059】
携帯端末101には予め所定のアプリケーションプログラムがインストールされており、そのプログラムの実行に従って、人100が上記のように室内を撮影したときに、その撮影画像が携帯端末101の通信部を介して、デジタルツイン作成処理装置10(
図2)に送信される。そして、デジタルツイン作成処理装置10の特定位置取得部13が、撮影画像から位置取得対象の人100の特定位置を取得する。このために、デジタルツイン作成処理装置10は、予め、記憶部に、模様付床パネル80a、80b、80c、80dの配置位置を、三次元座標または床面上の二次元座標として記憶している。
【0060】
上記では、人100が携帯する携帯端末101のカメラの撮影画像から人100の位置を取得する場合を説明したが、部屋26の室内を撮影するために天井部等に取り付けられた監視カメラや、室内を自動で移動するロボットに取り付けられたカメラの撮影画像から人の位置が取得されてもよい。このとき、撮影画像における人と模様付パネルとの位置関係から人の位置が取得される。この撮影画像も、携帯端末の場合と同様に、デジタルツイン作成処理装置10(
図2)に送信される。例えば、監視カメラを使用する場合に、予め人がいない状態で撮影した画像における床パネルの座標が、デジタルツイン作成処理装置10の記憶部に記憶されており、人を含んで撮影した画像が特定位置取得部13に取得された場合に、その画像における人の足下に位置する床パネルの座標から人の現在位置を取得できる。
【0061】
人100の現在位置は、仮想部屋に対応する位置を指定するために利用される。また、人100の現在位置は、施設内の各種のサービスを提供するシステムに送信され、そのシステムでサービスを提供するために利用されてもよい。例えば、そのシステムは、サービスとして、人の位置情報を通知したり、人の動線解析や、設備制御や、不審者解析等を提供することができる。
【0062】
このように、カメラを用いて人の位置を取得する構成によれば、特殊なセンシング専用機器を用意することなく、人の位置を把握でき、現実空間と仮想空間とでの位置の連携に利用できる。また、既存建物でも、床面に設けるフリーアクセスフロアの一部の床パネルを交換するだけで、位置情報関連のサービスを提供でき、その位置情報を利用したIOT(Internet of Things)環境を容易に構築できる。
【0063】
また、本例の構成によれば、床パネルがカーペット素材等のQRコード(登録商標)等の二次元コードを印刷することが困難な材料から構成される場合でも、模様付床パネルの比較的広い面積の色の違いや大きな文字の表示によって、他の床パネルと識別可能とすることができる。また、床面に行先表示の看板等の部材を取り付ける必要がないので、人の歩行性に悪影響が及ぶことを防止できる。
【0064】
なお、本発明は上記の実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。例えば、上記では、現実部屋内の特定位置が、位置取得対象の人である場合を説明したが、これに限定せず、特定位置は、現実部屋における任意の位置としてもよい。例えば、現実部屋の中心や壁際の特定位置に対応する仮想部屋の位置を指定することにより、その位置の温度や明るさ等の状態の変化をシミュレーションで分析することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 デジタルツインシステム、2 仮想空間、2a,2b,2c,2d 仮想建物、3 現実空間、3a,3b,3c,3d 現実建物、4a,5a,6a 第1側部屋(現実建物)、4b,5b,6b 第1側部屋(仮想建物)、 7a 第2側部屋(現実建物)、7b 第2側部屋(仮想建物)、8a 廊下、10 デジタルツイン作成処理装置、11 情報収集部、13 特定位置取得部、14 座標系設定部、15 位置指定部、16 処理部、17 フィードバック部、20 位置取得補助部、22 部屋、23,24,25 突出部、26 部屋、30 内接長方形、31 第1壁面、32 第1座標系、34 第2座標系、40 フリーアクセスフロア、41,42,43 模様付床パネル、46 床パネル、49 外枠、50,51,52,53 外側三角形、54 中間正方形、55 内側正方形、56,57,58,59 内側三角形、80a、80b 模様付床パネル、90 床パネル、100 人、101 携帯端末。