(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171861
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
H01J 35/06 20060101AFI20241205BHJP
H01J 35/14 20060101ALI20241205BHJP
H01J 35/10 20060101ALI20241205BHJP
H01J 35/30 20060101ALI20241205BHJP
H01J 35/26 20060101ALI20241205BHJP
H05G 1/00 20060101ALI20241205BHJP
H05G 1/52 20060101ALI20241205BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
H01J35/06 H
H01J35/14
H01J35/10 A
H01J35/30
H01J35/26
H05G1/00 D
H05G1/52 D
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089124
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 遼
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
【テーマコード(参考)】
2G001
4C092
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001GA13
2G001HA08
2G001HA14
2G001JA02
2G001JA08
2G001LA11
2G001SA02
4C092AA01
4C092AB14
4C092AB15
4C092AC08
4C092BD04
4C092BD06
(57)【要約】
【課題】被写体の画像を確実に取得可能であるとともに、再構成した画像において被写体が不鮮明になるのを抑制することが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】このX線撮影装置100は、X線管1と、X線管1から照射されて被写体90を透過したX線9aを検出する検出器2と、検出器2ら出力される検出信号に基づいて画像を生成する画像処理部5cと備えている。X線撮影装置100は、複数の電子放出部13の一部から電子線9bを放出させることにより、被写体90の寸法に応じて、被写体90側から見て、複数の電子線9bの各々の傾斜面151b上の複数の焦点位置94同士の距離95b(および距離96b)が異なるようにX線9aを照射させる制御部8を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を放出するための複数の電子源を各々が有し、基板上において第1方向および第1方向に直交する第2方向の各々に直線状に並ぶ複数の電子放出部と、前記複数の電子放出部の各々から別個に放出される複数の電子線を集束させる集束部と、前記集束部により別個の複数の焦点位置に集束させた前記複数の電子線の各々により発生されたX線を被写体に向けて照射するように傾斜した傾斜面を有するターゲットとを含むX線管と、
前記X線管から照射されて前記被写体を透過したX線を検出する検出器と、
前記検出器から出力される検出信号に基づいて画像を生成する画像処理部と、
前記複数の電子放出部の一部から電子線を放出させることにより、前記被写体の寸法に応じて、前記被写体側から見て、前記複数の電子線の各々の前記傾斜面上の前記複数の焦点位置同士の距離が異なるようにX線を照射させる制御部とを備える、X線撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被写体の寸法に応じた前記複数の電子放出部の各々の照射パターンに基づいて、第1方向および第2方向の各々に直線状に並ぶ前記複数の電子放出部の一部として、第1方向として前記傾斜面から前記被写体に向かうX線の照射方向に直線状に並ぶ複数の一の電子放出部、および、第2方向として前記照射方向に直交する方向に直線状に並ぶ複数の他の電子放出部の少なくともいずれかから電子線を放出させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被写体として寸法が小さい小検査対象に応じた前記照射パターンの場合、隣り合う前記複数の一の電子放出部から、電子線を放出させる制御を行うように構成されている、請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被写体として寸法が大きい大検査対象に応じた前記照射パターンの場合、前記複数の他の電子放出部、および、前記複数の一の電子放出部のうちの少なくとも1つおきに配置された一の電子放出部ごとに、の少なくともいずれかにより電子線を放出させる制御を行うように構成されている、請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記複数の電子放出部の各々は、
前記ターゲット側から見て、前記照射方向を長手方向とする長方形状または楕円形状になるように並べられた複数の円錐形状の電子源と、
前記複数の円錐形状の電子源の各々から、電子を放出させるための電界を発生するゲート電極とを有する、請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記ターゲットは、前記集束部と前記ターゲットとが並ぶ方向に延びる回転軸線回りに回転するように構成されており、
前記制御部は、前記ターゲットを回転させながら、前記照射パターンに基づいて、前記複数の一の電子放出部、および、前記複数の他の電子放出部の少なくともいずれかから電子線を放出させる制御を行うように構成されている、請求項5に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記X線管は、前記ターゲットから照射されたX線が通過するX線透過窓をさらに含み、
前記傾斜面上の前記複数の焦点位置は、前記被写体側から見て、前記X線透過窓内に収まるように設けられている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記集束部は、第1方向および第2方向の各々に直線状に並ぶ前記複数の電子放出部のうちの第1方向として前記傾斜面から前記被写体に向かうX線の照射方向に並ぶ複数の一の電子放出部のそれぞれに対向するように配置された複数のレンズ部を有する、請求項1に記載のX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線撮影装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、X線撮影システム(X線撮影装置)が開示されている。このX線撮影システムは、撮影装置(検出器)と、X線放出装置(X線管)と、ドライバ(制御部)とを備えている。撮影装置は、X線放出装置から放出されて対象物を透過したX線を検出するように構成されている。ここで、X線撮影システムでは、撮影装置の検出結果に基づいて、対象物の画像が生成される。
【0004】
上記特許文献1のX線放出装置は、複数の電子放出構造体と、フォーカス構造体と、陽極とを含んでいる。
【0005】
上記特許文献1の複数の電子放出構造体の各々は、複数の電子源を有している。複数の電子放出構造体の各々は、ドライバにより制御されることによって、複数の電子源の各々から放出された電子を陽極に向けて電子ビーム(電子線)として照射するように構成されている。フォーカス構造体は、電子ビームを陽極上の1つの焦点位置に集束させるように構成されている。このような構成を含む複数の電子放出構造体の各々は、基板上に一定のピッチで並んでいる。
【0006】
上記特許文献1の陽極は、照射された電子によりX線を発生させるように構成されている。陽極は、電子ビームの照射方向において、複数の電子放出構造体の各々と対向する位置に配置されている。陽極は、電子ビームの照射方向に直交する方向に延びている。陽極は、照射された電子ビームにより発生したX線を対象物に向けて透過させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1のような従来のX線撮影システムでは、対象物が比較的小さい寸法である場合、小さい寸法の対象物にX線を確実に当てるために、複数の電子ビームの互いの焦点位置同士が近い方が望ましい。
【0009】
また、対象物が比較的大きい寸法である場合、複数の電子ビームの互いの焦点位置同士を離して、複数の電子ビームのうちの一の電子ビームによるX線が当たる撮影装置の範囲と他の電子ビームによるX線が当たる撮影装置の他の範囲とを離れた位置にすることが望ましい。すなわち、対象物が比較的大きい寸法である場合、一の電子線の焦点位置と他の電子線の焦点位置とを離していないことにより、同じような範囲にX線が照射されるので、撮影装置の検出精度によっては、撮影装置の複数の検出素子の同じ領域においてX線が検出されてしまう。このような場合、複数の画像を再構成する際、画像同士の位置が合っているにも関わらず、位置補正を行うことになるので、画像同士の位置ずれが発生してしまい再構成した画像が不鮮明になる。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1のX線撮影システムでは、対象物の画像を撮影する際、複数の電子放出構造体の各々から別個に照射される複数の電子ビームの互いの焦点位置同士の距離は変わっていないので、小さい寸法の対象物に対しては対象物(被写体)の画像を確実に取得できない場合があるとともに、大きい寸法の対象物に対しては再構成した画像において対象物(被写体)が不鮮明になるという問題点がある。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被写体の画像を確実に取得可能であるとともに、再構成した画像において被写体が不鮮明になるのを抑制することが可能なX線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるX線撮影装置は、電子線を放出するための複数の電子源を各々が有し、基板の表面上において第1方向および第1方向に直交する第2方向の各々に直線状に並ぶ複数の電子放出部と、複数の電子放出部の各々から別個に放出される複数の電子線を集束させる集束部と、集束部により別個の複数の焦点位置に集束させた複数の電子線の各々により発生されたX線を被写体に向けて照射するように傾斜した傾斜面を有するターゲットとを含むX線管と、X線管から照射されて被写体を透過したX線を検出する検出器と、検出器から出力される検出信号に基づいて画像を生成する画像処理部と、複数の電子放出部の一部から電子線を放出させることにより、被写体の寸法に応じて、被写体側から見て、複数の電子線の各々の傾斜面上の複数の焦点位置同士の距離が異なるようにX線を照射させる制御部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
上記一の局面におけるX線撮影装置では、上記のように、複数の電子放出部の一部から電子線を放出させることにより、被写体の寸法に応じて、被写体側から見て、複数の電子線の各々の傾斜面上の複数の焦点位置同士の距離が異なるようにX線を照射させる制御部を設ける。これにより、被写体の寸法に応じて、複数の焦点位置同士の距離が異なるようにX線を照射させることにより、被写体が比較的小さい寸法である場合、被写体の寸法に合わせて、ターゲットの傾斜面上における焦点位置同士の距離を小さくすることができるので、複数の電子線の各々によりターゲットにおいて別個に発生した複数のX線を被写体を透過させて検出器に当たるようにすることができる。これにより、被写体の画像を確実に取得することができる。また、被写体が比較的大きい寸法である場合、電子線のターゲット上における焦点位置同士の距離を大きくすることができるので、複数の電子線の各々から発生したX線の検出器における検出範囲が同じにならないようにすることができる。したがって、取得された画像同士の位置ずれを抑制することができるので、被写体を撮影したX線画像を再構成した画像において被写体が不鮮明になるのを抑制することができる。これらにより、被写体の画像を確実に取得することができるとともに、再構成した画像において被写体が不鮮明になるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態のX線撮影装置の全体構成を示した模式図である。
【
図2】第1実施形態のX線撮影装置の全体構成を上方から見た模式図である。
【
図3】第1実施形態のX線撮影装置の基板上の複数の電子放出部を示した模式図である。
【
図5】第1実施形態のX線撮影装置の集束部を示した模式図である。
【
図6】第1実施形態のX線撮影装置のターゲットの傾斜面に放出される電子線と電子線により照射されるX線とを示した側面図である。
【
図7】第1実施形態のX線撮影装置の一の電子放出部側の焦点位置とターゲットの傾斜面上の焦点位置とを示した模式図である。
【
図8】第1実施形態のX線撮影装置のターゲットの傾斜面上の焦点位置を被写体側から見た側面図である。
【
図9】第1実施形態のX線撮影装置の他の電子放出部側の焦点位置とターゲットの傾斜面上の焦点位置とを示した模式図である。
【
図10】第1実施形態のX線撮影装置において小さな被写体の撮影を行う場合を示した模式図である。
【
図11】第1実施形態のX線撮影装置において小さな被写体の撮影を行う場合における、一の電子放出部側の焦点位置とターゲットの傾斜面上の焦点位置とを示した模式図である。
【
図12】第1実施形態のX線撮影装置において中位の被写体の撮影を行う場合を示した模式図である。
【
図13】第1実施形態のX線撮影装置において中位の被写体の撮影を行う場合における、一の電子放出部側の焦点位置とターゲットの傾斜面上の焦点位置とを示した模式図である。
【
図14】第1実施形態のX線撮影装置において大きな被写体の撮影を行う場合を示した模式図である。
【
図15】第1実施形態のX線撮影装置において大きな被写体の撮影を行う場合における、他の電子放出部側の焦点位置とターゲットの傾斜面上の焦点位置とを示した模式図である。
【
図16】第2実施形態のX線撮影装置の全体構成を示した模式図である。
【
図17】第2実施形態のX線撮影装置の基板上の複数の電子放出部を示した模式図である。
【
図18】第2実施形態のX線撮影装置においてかなり大きな被写体の撮影を行う場合を示した模式図である。
【
図19】第2実施形態のX線撮影装置においてかなり大きな被写体の撮影を行う場合における、一の電子放出部および他の電子放出部側の照射パターンを示した模式図である。
【
図20】第2実施形態のX線撮影装置において特大の被写体の撮影を行う場合を示した模式図である。
【
図21】第2実施形態のX線撮影装置において特大の被写体の撮影を行う場合における、一の電子放出部および他の電子放出部側の照射パターンを示した模式図である。
【
図22】第1および第2実施形態の変形例のX線撮影装置の基板上の複数の電子放出部を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
[第1実施形態]
まず、
図1~
図15を参照して、本発明の第1実施形態によるX線撮影装置100の構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、X線撮影装置100は、被写体90のCT画像を撮影する装置である。X線撮影装置100は、たとえば、非破壊検査に用いられる。被写体90は、たとえば、基板または電子部品などである。
【0018】
X線撮影装置100は、X線管1と、検出器2と、被写体設置部3と、回転機構4と、主制御部5と、表示部6と、入力部7と、撮影制御部8とを備えている。なお、撮影制御部8は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0019】
ここで、X線管1と検出器2とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちの検出器2側をX1方向とし、X方向のうちのX線管1側をX2方向とする。上下方向をZ方向とし、Z方向のうちの上方向をZ1方向とし、Z方向のうちの下方向をZ2方向とする。X方向およびZ方向は、互いに直交している。X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうちの一方をY1方向とし、Y方向のうちの他方向をY2方向とする。なお、X方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例である。また、Z方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。また、X1方向は、特許請求の範囲の「照射方向」の一例である。
【0020】
X線管1は、被写体設置部3に配置された被写体90にX線9aを照射するように構成されている。X線管1は、高電圧が印加されることにより、X線9aを発生させるように構成されている。X線管1は、X方向において、被写体設置部3を介して、検出器2と対向している。X線管1と被写体設置部3と検出器2とが、X方向(水平方向)に並んで配置されている。なお、X線管1の詳細な構成は後に説明する。
【0021】
検出器2は、X線管1から出射されて被写体90を透過したX線9aを検出するように構成されている。X線管1から出射されたX線9aは、検出器2の検出面に入射する。この際、被写体90を透過してX線9aにより、被写体90が検出される。検出器2は、検出されたX線9aを電気信号(検出信号)に変換するように構成されている。検出器2において検出された検出信号は、主制御部5に送られる。これにより、主制御部5において処理が行われることにより、被写体90を撮影したX線画像が得られる。
【0022】
検出器2は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器2は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とを含んでいる。複数の変換素子の各々は、互いに所定の周期(画素ピッチ)で、検出面内にマトリクス状に並んで配置されている。また、複数の画素電極の各々は、複数の変換素子の各々の位置に合わせて検出面内にマトリクス状に並んで配置されている。
【0023】
被写体設置部3は、被写体90を設置するように構成されている。被写体設置部3は、被写体ステージである。被写体設置部3は、X線管1と検出器2との間に配置されている。
【0024】
回転機構4は、Z方向に延びる回転中心軸線91回りに被写体設置部3を回転させるように構成されている。すなわち、回転機構4は、X線管1および検出器2に対して被写体設置部3を相対的に回転させるように構成されている。これにより、回転機構4は、撮影制御部8からの信号に基づいて、被写体90の撮影角度を変化させることが可能である。
【0025】
主制御部5は、X線撮影装置100による被写体90の撮影に関する制御を行うように構成されている。主制御部5は、処理部5aと、記憶部5bと、画像処理部5cと、入出力部5dとを含んでいる。
【0026】
処理部5aは、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。記憶部5bは、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを有している。
【0027】
画像処理部5cは、GPU(Graphics Processing Unit)または画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサである。
【0028】
画像処理部5cは、回転機構4により回転させる被写体90に対して予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。画像処理部5cは、複数の撮影角度の各々の検出信号に基づいて、複数の撮影角度毎のX線画像を作成するように構成されている。画像処理部5cは、1回転分の複数の撮影角度毎に作成された複数のX線画像を再構成処理を実行することにより、CT画像を作成するように構成されている。このように、CT画像とは、様々な撮影角度で撮影された複数のX線画像に基づいて再構成処理により作成される。CT画像は、被写体90の断層画像、または、3次元立体画像などの被写体90の3次元構造を反映した画像である。再構成処理としては、逐次近似法などの処理が適宜用いられる。なお、CT画像は、特許請求の範囲の「画像」の一例である。
【0029】
画像処理部5cにより作成されたX線画像およびCT画像の各々は、記憶部5bに記憶される。
【0030】
入出力部5dは、主制御部5に対する信号の入出力を行うための各種のインターフェースにより構成されている。入出力部5dは、表示部6および入力部7の各々と互いに接続されている。表示部6は、たとえば、液晶ディスプレイなどである。入力部7は、キーボードおよびマウスなどのデバイスである。主制御部5は、入出力部5dを介して、検出器2からの検出信号を取得するように構成されている。主制御部5は、入出力部5dを介して、撮影制御部8に対して撮影開始または撮影停止の指示などを送信するように構成されている。
【0031】
撮影制御部8は、主制御部5から送信される、被写体90を撮影する際のX線管1の照射制御情報に基づいて、X線管1を制御するためのドライバである。また、撮影制御部8は、主制御部5から送信される、被写体90を撮影する際の回転機構4の回転制御情報に基づいて、回転機構4を制御するためのドライバでもある。なお、撮影制御部8によるX線管1の制御については、X線管1の詳細な構成について説明した後に説明する。
【0032】
(X線管の詳細な構成)
図2に示すように、X線管1は、真空容器11と、基板12(
図3を参照)と、複数の電子放出部13と、集束部14と、回転ターゲット15と、X線透過窓16と、コリメータ17とを含んでいる。真空容器11は、内部に真空の空間を有している。真空容器11内には、基板12、複数の電子放出部13および集束部14が収容されている。
【0033】
図3に示すように、基板12は、シリコンおよびガラスなどにより形成された板状の部材である。基板12のY1方向側の表面上には、複数(15個)の電子放出部13が形成されている。なお、電子放出部13は、Z方向において、2つ、または、4つ以上、基板12の表面上に形成されてもよい。また、電子放出部13は、X方向において、2つ~4つ、または、6つ以上、基板12の表面上に形成されてもよい。
【0034】
〈電子放出部〉
複数の電子放出部13の各々は、印加された電圧により電子線9b(
図4を参照)を放出するように構成されている。複数の電子放出部13の各々は、基板12上においてX方向およびZ方向の各々に直線状に並んでいる。複数の電子放出部13の各々は、Y2方向側から見て、マトリクス状に配置されている。複数の電子放出部13の各々は、同じ構造を有しているので、
図3に示すZm部分の位置に配置された電子放出部13についてのみ説明する。
【0035】
図4に示すように、電子放出部13は、ゲート電極(図示せず)と、絶縁層(図示せず)と、複数の電子源131とを有している。ゲート電極、絶縁層および電子源131の各々は、基板12上にエッチングにより一体的に形成されている。ゲート電極は、印加された電圧により、複数の電子源131の各々から電子を放出させるための電界を発生させるように構成されている。絶縁層は、複数の電子源131の各々を囲むことにより、複数の電子源131の各々の周囲を絶縁するように構成されている。
【0036】
複数の電子源131の各々は、電子放出部13から電子線9bを放出するために、ゲート電極において印加された電圧により発生した電界のトンネル効果によって、電子を放出するように構成されている。複数の電子源131の各々は、円錐形状を有するスピント型電子源である。複数の電子源131の各々は、エミッタとも呼ばれる。複数の電子源131は、
図4では説明の便宜上、15個記載しているが、100個以上、または、1000個以上の複数の電子源131が、電子放出部13に設けられている。これにより、1つの電子源131から照射された電子線9bにより発生するX線9aの強度は弱いが、多数(100個以上、または、1000個以上)の電子源131から照射された電子線9bによりX線9aを発生させることにより、所望の強度のX線9aが照射される。
【0037】
図3および
図4に示すように、このような複数の電子源131の各々は、Y2方向側から見て、X1方向を長手方向とする長方形状になるように並べられている。
【0038】
〈集束部〉
図5および
図6に示すように、集束部14は、複数の電子放出部13の各々から別個に放出される複数の電子線9bを集束させるように構成されている。集束部14は、複数(15個)のレンズ部141を有する光学レンズである。なお、光学レンズの種類としては、電磁レンズ、静電レンズまたは集束電極などである。複数のレンズ部141の各々は、集束部14を貫通する貫通孔を有している。複数のレンズ部141の各々は、集束部14を貫通する貫通孔を通過する電子線9bに電場または磁場を与えるように構成されている。複数のレンズ部141の各々において、貫通孔を通過する電子線9bが、電場または磁場による引力および斥力によって集束する。また、複数のレンズ部141の数は、電子放出部13の数に合わせていればよく、2個~14個、または、15個以上であってもよい。
【0039】
複数のレンズ部141の各々は、Y方向において、別個に複数の電子放出部13と対向している。複数のレンズ部141の各々は、複数の電子放出部13のうちのX方向に並ぶ複数の一の電子放出部13の各々に別個に対向するように配置されているとともに、複数の電子放出部13のうちのZ方向に並ぶ複数の他の電子放出部13の各々に別個に対向するように配置されている。複数のレンズ部141の各々は、複数の電子放出部13の配置位置に合わせて、集束部14にマトリクス状に配置されている。
【0040】
〈回転ターゲット〉
図6に示すように、回転ターゲット15は、Z方向(集束部14と後述するターゲット15bとが並ぶ方向)に延びる回転中心軸線92(
図2を参照)回りに回転しながら、電子線9bが照射されるように構成されている。具体的には、回転ターゲット15は、回転駆動機構15a(
図2を参照)と、ターゲット15bとを有している。回転駆動機構15aは、ターゲット15bを回転させるための駆動源および駆動力伝達機構を有している。
【0041】
ターゲット15bは、電子線9bが衝突することによりX線9aを発生させるため、モリブデン、ロジウムまたはタングステンなどで形成された陽極部材である。ターゲット15bは、Z1方向側から見て、Y1方向側に向かって半径が小さくなる円錐台形状を有している。ターゲット15bは、X方向に沿って断面において、X1方向に交差するY2方向に向かって傾斜する傾斜面151bを有している。傾斜面151bは、集束部14により別個の複数の焦点位置94に集束させた複数の電子線9bの各々により発生されたX線9aを被写体90に向けて照射するように傾斜している。傾斜面151b上の複数の焦点位置94は、X1方向側(被写体90側)から見て、X線透過窓16内に収まるように設けられている。なお、
図6では、説明の便宜上、X方向に並んだ複数の一の電子放出部13のうちの中間に配置された一の電子放出部13から電子線9bが放出された状態が示されている。
【0042】
〈X線透過窓およびコリメータ〉
X線透過窓16は、ターゲット15bから照射されたX線9aが通過するように構成されている。コリメータ17は、X線透過窓16を透過してX1方向に向かって照射されたX線9aの照射範囲を絞るための部材である。
【0043】
(撮影制御部の詳細な構成)
図7~
図9に示すように、第1実施形態の撮影制御部8は、複数の電子放出部13の一部から電子線9bを放出させることにより、被写体90の寸法に応じて、被写体90から(X1方向側から)見て、複数の電子線9bの各々の傾斜面151b上の複数の焦点位置94同士の距離(
図8の距離95bおよび
図9の距離96b)が異なるようにX線9aを照射する制御を行うように構成されている。すなわち、撮影制御部8は、ターゲット15bを回転させながら、X線管1から送信される照射制御情報に含まれる照射パターンに基づいて、X方向に並んだ複数の一の電子放出部13、および、Z方向に並んだ複数の他の電子放出部13の少なくともいずれかから電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。照射パターンは、記憶部5bに予め記憶されている。照射パターンは、主制御部5から撮影制御部8に送信される照射制御情報に含まれる情報である。
【0044】
〈焦点位置同士の距離〉
以下に、複数の焦点位置94同士の距離が異なることについて説明する。
【0045】
図7に示すように、基板12上の複数の電子放出部13の各々において、X方向およびZ方向における中心点が、基板12上の焦点位置94になる。ここで、説明の便宜上、基板12上の複数の電子放出部13のうちのX方向に並んだCo列の複数の一の電子放出部13について説明する。
【0046】
基板12上において、Co列の複数の一の電子放出部13の各々の焦点位置94同士の距離は距離95aである。ここで、傾斜面151bは、X方向に対してY1方向に向かって傾斜角度θ分だけ傾斜している。したがって、
図7および
図8に示すように、傾斜面151b上において、Co列の複数の一の電子放出部13の各々の焦点位置94同士の距離95bは、距離95aとtanθとを乗算した数値である。したがって、距離95bは、距離95aよりも小さい。ここで、傾斜角度θは、45度未満である。
【0047】
図9に示すように、基板12上の複数の電子放出部13の各々において、X方向およびZ方向における中心点が、基板12上の焦点位置94になる。ここで、説明の便宜上、基板12上の複数の電子放出部13のうちのX方向に並んだRo行の複数の他の電子放出部13について説明する。
【0048】
基板12上において、Ro行の複数の他の電子放出部13の各々の焦点位置94同士の距離は距離96aである。距離96aは、距離95aと同じである。ここで、傾斜面151bは、Z方向におけるRo行の範囲は略平面である。したがって、傾斜面151b上において、複数の他の電子放出部13は略直線状に並んでいるので、Ro行の複数の他の電子放出部13の各々の焦点位置94同士の距離96bは、距離96aと同じである。一例として、距離95aおよび距離96aの各々が2.5mmであり、かつ、傾斜角度θが10度であるような場合、距離95bは0.44mmになるとともに、距離96bは2.5mmになる。
【0049】
このように、X線管1では、基板12上における距離96aと距離95aとは同じであるが、傾斜面151bの傾斜角度θを利用して、傾斜面151b上における距離96bと距離95bとは異ならせている。
【0050】
したがって、複数の一の電子放出部13の各々から電子線9bを放出した場合には、焦点位置94同士の距離を距離95bに短くして、同じような照射範囲にX線9aを照射することが可能である。また、複数の他の電子放出部13の各々から電子線9bを放出した場合には、焦点位置94同士の距離を変えずに距離96bのままなので、照射範囲同士の重なる範囲を小さくすることが可能である。
【0051】
上記したように、X線管1では、複数の電子放出部13の各々の焦点位置94を集束部14において発生させる電場または磁場により変更せずに、焦点位置94同士の距離を距離95bおよび距離96bの各々に変更することを実現している。したがって、焦点位置94における収差の発生を抑制可能である。また、複数のレンズ部141の各々の貫通孔の数を増やすことにより、焦点位置94同士の距離が距離95bおよび距離96bになるように構成を実現していないので、貫通孔が少ない分だけ、集束部14の機械的強度の低下を抑制可能である。
【0052】
〈照射パターン〉
次に、
図10~
図15を参照して、被写体90の寸法に応じた照射パターンに複数の焦点位置94同士の距離が異なることについて説明する。すなわち、撮影制御部8は、被写体90の寸法に応じて複数の電子放出部13の各々の照射パターンに基づいて、マトリクス状に並ぶ複数の電子放出部13の一部として、X1方向(傾斜面151bから被写体90に向かうX線9aの照射方向)に直線状に並ぶ複数の一の電子放出部13、および、Z方向(照射方向に直交する方向)に直線状に並ぶ複数の他の電子放出部13の少なくともいずれかから電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。
【0053】
〈小さい被写体の場合〉
図10および
図11では、被写体90の寸法が比較的小さい場合の照射パターンを示している。この場合、撮影制御部8は、被写体90として寸法が小さい小検査対象に応じた照射パターンの場合、隣り合う複数の一の電子放出部13から、電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。
【0054】
図11に示す一例では、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、1番目に(
図11では1で示す)最もX1方向側に配置された一の電子放出部13aから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0055】
次に、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、2番目に(
図11では2で示す)1番目の一の電子放出部13aのX2方向側に隣り合う一の電子放出部13bから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、3番目に(
図11では3で示す)2番目の一の電子放出部13bのX2方向側に隣り合う一の電子放出部13cから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0056】
この場合、焦点位置94同士の距離を距離95bに短くしていることにより、同じような照射範囲にX線9aを照射することができるので、寸法が比較的小さい被写体90であっても、照射された複数のX線9aの各々を被写体90を透過して検出器2に当てることが可能である。
【0057】
画像処理部5cは、上記した処理で取得した複数の検出信号と、複数の検出信号の各々に対応付けられた一の電子放出部13から放出された電子線9bの傾斜面151b上の焦点位置94の情報と、SRD情報と、SDD情報とを含む再構成情報に基づいて、検出信号に基づくX線画像における被写体90の拡大率変化の補正処理、および、検出信号に基づくX線画像における被写体90の投影像の位置の補正処理を行う。ここで、SRD情報は、傾斜面151b上の焦点位置94から回転機構4の回転中心軸線91の位置までの距離である。SDD情報は、傾斜面151b上の焦点位置94から検出器2の検出面の位置までの距離である。回転機構4の回転中心軸線91の位置までの距離は、予め記憶部5bに登録されている。検出器2の検出面の位置は、予め記憶部5bに登録されている。画像処理部5cは、補正後の複数のX線画像の各々に基づいて再構成処理を行うことにより、CT画像を生成するように構成されている。
【0058】
〈少し大きい(中位の)被写体の場合〉
図12および
図13では、被写体90の寸法が少し大きい(中位の)場合の照射パターンを示している。この場合、撮影制御部8は、被写体90として寸法が少し大きい中検査対象に応じた照射パターンの場合、複数の一の電子放出部13のうちの少なくとも1つおきに配置された一の電子放出部13ごとに電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。これにより、傾斜面151b上の焦点位置94同士の距離が、距離95bの2倍になる。なお、中検査対象は、特許請求の範囲の「大検査対象」の一例である。
【0059】
図13に示す一例では、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、1番目に(
図13では1で示す)最もX1方向側に配置された一の電子放出部13aから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0060】
次に、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、2番目に(
図13では2で示す)1番目の一の電子放出部13aのX2方向側に1つおいて配置された一の電子放出部13bから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、3番目に(
図13では3で示す)2番目の一の電子放出部13bのX2方向側に1つおいて配置された一の電子放出部13cから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0061】
この場合、焦点位置94同士の距離を距離95bの2倍にしているので、照射範囲同士の重なる範囲を比較的小さくすることが可能である。CT画像の作成の処理に関しては、上記した処理と同じであるので、説明を省略する。
【0062】
〈大きい被写体の場合〉
図14および
図15では、被写体90の寸法が大きい場合の照射パターンを示している。この場合、撮影制御部8は、被写体90として寸法が大きい大検査対象に応じた照射パターンの場合、複数の他の電子放出部13により電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。これにより、傾斜面151b上の焦点位置94同士の距離が、距離96bになる。
【0063】
図15に示す一例では、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、1番目に(
図15では1で示す)最もZ1方向側に配置された他の電子放出部13aから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0064】
次に、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、2番目に(
図15では2で示す)1番目の他の電子放出部13aのZ2方向側に隣り合う他の電子放出部13bから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、3番目に(
図15では3で示す)2番目の一の電子放出部13bのZ2方向側に隣り合う他の電子放出部13cから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、予め設定された複数の撮影角度の各々において、検出器2により検出された検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0065】
この場合、焦点位置94同士の距離を距離96bにしているので、照射範囲同士の重なる範囲を小さくすることが可能である。CT画像の作成の処理に関しては、上記した処理と同じであるので、説明を省略する。
【0066】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
第1実施形態では、上記のように、X線撮影装置100は、複数の電子放出部13の一部から電子線9bを放出させることにより、被写体90の寸法に応じて、被写体90側から見て、複数の電子線9bの各々の傾斜面151b上の複数の焦点位置94同士の距離95b(および距離96b)が異なるようにX線9aを照射させる撮影制御部8を備えている。これにより、被写体90の寸法に応じて、複数の焦点位置94同士の距離95b(および距離96b)が異なるようにX線9aを照射させることにより、被写体90が比較的小さい寸法である場合、被写体90の寸法に合わせて、ターゲット15bの傾斜面151b上における焦点位置94同士の距離(距離95b)を小さくすることができるので、複数の電子線9bの各々によりターゲット15bにおいて別個に発生した複数のX線9aを被写体90を透過させて検出器2に当たるようにすることができる。これにより、被写体90の画像を確実に取得することができる。また、被写体90が比較的大きい寸法である場合、電子線9bのターゲット15b上における焦点位置94同士の距離(距離96b)を大きくすることができるので、複数の電子線Erの各々から発生したX線Rの検出器2における検出範囲が同じにならないようにすることができる。したがって、取得されたX線画像同士の位置ずれを抑制することができるので、被写体90を撮影したX線画像を再構成した画像において被写体90が不鮮明になるのを抑制することができる。これらにより、被写体90の画像を確実に取得することができるとともに、再構成した画像において被写体90が不鮮明になるのを抑制することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、上記のように、撮影制御部8は、被写体90の寸法に応じた複数の電子放出部13の各々の照射パターンに基づいて、X方向(第1方向)およびZ方向(第2方向)の各々に直線状に並ぶ複数の電子放出部13の一部として、X方向(第1方向)として傾斜面151bから被写体90に向かうX線9aのX1方向(照射方向)に直線状に並ぶ複数の一の電子放出部13、および、Z方向(第2方向)としてX1方向(照射方向)に直交する方向に直線状に並ぶ複数の他の電子放出部13の少なくともいずれかから電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。ここで、複数の一の電子放出部13、および、複数の他の電子放出部13の照射パターンに基づいて、複数の電子線9bの各々の傾斜面151b上の複数の焦点位置94同士の距離95b(および距離96b)が異なるようにX線9aを照射させている。これにより、複数の一の電子放出部13、および、複数の他の電子放出部13の照射パターンを変更するだけで複数の焦点位置94同士の距離(距離95bおよび距離96b)が異なるという構成を実現しているので、集束部14により中心位置から焦点位置をずらすという制御を行わなくても、複数の焦点位置94同士の距離を異ならせることができる。この結果、焦点位置94をずらす制御に起因して発生する電子線9bの収差の発生を抑制することができる。また、異なる複数の焦点位置94同士の距離(距離95bおよび距離96b)に合わせて集束部14に個別にレンズ部141を設ける必要がないので、必要なレンズ部141の数の増大を抑制することができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、撮影制御部8は、被写体90として寸法が小さい小検査対象に応じた照射パターンの場合、隣り合う複数の一の電子放出部13から、電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。ここで、複数の一の電子放出部13は、傾斜面151bの傾斜方向に沿って並んでいるので、傾斜面151bの傾斜角度θが小さい(たとえば、45度未満などの)場合、一の電子放出部13から傾斜面151bに向かう方向における、隣り合う複数の一の電子放出部13から放出された電子線9bの各々の傾斜面151b上での焦点位置94同士の距離95bは、基板12上での複数の一の電子放出部13の各々の焦点位置94同士の距離95aと比較して小さくなる。これにより、複数の電子線9bの各々によりターゲット15bにおいて別個に発生した複数のX線9aを同じような照射範囲に照射することができるので、複数のX線9aの各々を小検査対象としての被写体90に確実に当たるようにすることができる。
【0070】
また、第1実施形態では、上記のように、撮影制御部8は、被写体90として寸法が大きい大検査対象に応じた照射パターンの場合、複数の他の電子放出部13、および、複数の一の電子放出部13のうちの少なくとも1つおきに配置された一の電子放出部13ごとに、の少なくともいずれかにより電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。ここで、複数の他の電子放出部13は、傾斜面151bの傾斜方向に沿って並んでおらず、傾斜方向に直交するZ方向に直線状に並んでいるので、複数の他の電子放出部13の傾斜面151bでの距離96bは、傾斜角度θに応じて小さくならない。これにより、隣り合う複数の一の電子放出部13同士の焦点位置94同士の距離95bと比較して、焦点位置94同士の距離を大きくすることができる。この結果、複数の電子線Erの各々から発生したX線Rの検出器2における検出範囲が同じにならないようにすることができるので、複数のX線画像を再構成する場合、取得されたX線画像同士の位置ずれを抑制することができる。また、複数の一の電子放出部13のうちの少なくとも1つおきに配置された一の電子放出部13から電子線9bを照射することにより、焦点位置94同士の距離95aと比較して、焦点位置94同士の距離を大きくすることができるので、複数の電子線Erの各々から発生したX線Rの検出器2における検出範囲が同じにならないようにすることができる。この結果、複数の画像を再構成する場合、取得されたX線画像同士の位置ずれを抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の電子放出部13の各々は、ターゲット15b側から見て、X1方向(照射方向)を長手方向とする長方形状になるように並べられた複数の円錐形状の電子源131を有している。複数の電子放出部13の各々は、複数の円錐形状の電子源131の各々から、電子を放出させるための電界を発生するゲート電極とを有している。これにより、長方形状になるように複数の円錐形状の電子源131の各々を並べることにより、複数の円錐形状の電子源131の各々を正方形に並べた場合と比較して、短辺方向において複数の電子放出部13を多く並べることができる。この結果、複数の他の電子放出部13の各々から別個に放出された複数の電子線9bの各々のターゲット15b上の複数の焦点位置94同士の距離96bの設定の自由度を確保することができる。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、ターゲット15bは、集束部14とターゲット15bとが並ぶ方向に延びる回転中心軸線92回りに回転するように構成されている。撮影制御部8は、ターゲット15bを回転させながら、照射パターンに基づいて、複数の一の電子放出部13、および、複数の他の電子放出部13の少なくともいずれかから電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。これにより、長方形状になるように並べられた複数の円錐形状の電子源131の各々から放出された電子線9bは、複数の円錐形状の電子源131の各々を正方形に並べた場合と比較して、ターゲット15b上での回転方向における幅が小さくなるので、電子線9bが再度照射される回転方向における傾斜面151b上の距離を確保することができる。この結果、電子線9bが再度照射されるまでの時間においてターゲット15bの温度を下げることができるので、ターゲット15bの溶融を抑制することができる。
【0073】
また、第1実施形態では、上記のように、X線管1は、ターゲット15bから照射されたX線9aが通過するX線透過窓16を含んでいる。傾斜面151b上の複数の焦点位置94は、被写体90側から見て、X線透過窓16内に収まるように設けられている。これにより、焦点位置94から照射される最も強度の高いX線9aを確実に被写体90に照射することができるので、被写体90に当たるX線9aの強度を確保することができる。
【0074】
また、第1実施形態では、上記のように、集束部14は、X方向(第1方向)およびZ方向(第2方向)の各々に直線状に並ぶ複数の電子放出部13のうちのX方向(第1方向)として傾斜面151bから被写体90に向かうX線9aのX1方向(照射方向)に並ぶ複数の一の電子放出部13のそれぞれに対向するように配置された複数のレンズ部141を有している。これにより、複数の電子放出部13の各々から放出される電子線9bを1つのレンズ部141で複数の焦点位置94に集束させる場合と比較して、個別に複数の焦点位置94に集束させているので、傾斜面151b上での電子線9bの収差の発生を抑制することができる。
【0075】
[第2実施形態]
図16~
図21を参照して、第2実施形態によるX線撮影装置200の構成について説明する。第2実施形態では、X線撮影装置200において、寸法がさらに大きい被写体90に合わせて、基板212のY2方向側の表面上に複数の電子放出部13が形成されている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
【0076】
図16~
図21を参照して、本発明の第2実施形態によるX線撮影装置200の構成について説明する。
【0077】
図16に示すように、X線撮影装置200は、被写体90のCT画像を撮影する装置である。X線撮影装置200は、X線管201と、検出器2と、被写体設置部3と、回転機構4と、主制御部5と、表示部6と、入力部7と、撮影制御部8とを備えている。なお、撮影制御部8は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0078】
ここで、X線管1と検出器2とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちの検出器2側をX1方向とし、X方向のうちのX線管1側をX2方向とする。上下方向をZ方向とし、Z方向のうちの上方向をZ1方向とし、Z方向のうちの下方向をZ2方向とする。X方向およびZ方向は、直交している。X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうちの一方をY1方向とし、Y方向のうちの他方向をY2方向とする。なお、X方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例である。また、Z方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。また、X1方向は、特許請求の範囲の「照射方向」の一例である。
【0079】
(X線管の構成)
図17に示すように、X線管201は、真空容器11(
図2を参照)と、基板212と、複数の電子放出部13と、集束部(図示せず)と、回転ターゲット15(
図2を参照)と、X線透過窓16(
図2を参照)と、コリメータ17(
図2を参照)とを含んでいる。
【0080】
基板212のY2方向側の表面上には、複数(40個)の電子放出部13が形成されている。なお、電子放出部13は、Z方向において、2つ~4つ、または、6つ以上、基板212の表面上に形成されてもよい。また、電子放出部13は、X方向において、2つ~7つ、または、9つ以上、基板212の表面上に形成されてもよい。
【0081】
(撮影制御部の詳細な構成)
図17に示すように、第2実施形態の撮影制御部8は、複数の電子放出部13の一部から電子線9bを放出させることにより、被写体90の寸法に応じて、被写体90から(X1方向側から)見て、複数の電子線9bの各々の傾斜面151b上の複数の焦点位置94同士の距離(
図8の距離95bおよび
図9の距離96b)が異なるようにX線9aを照射する制御を行うように構成されている。すなわち、撮影制御部8は、ターゲット15bを回転させながら、X線管201から送信される照射制御情報に含まれる照射パターンに基づいて、X方向に並んだ複数の一の電子放出部13、および、Z方向に並んだ複数の他の電子放出部13の少なくともいずれかから電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。
【0082】
〈照射パターン〉
次に、
図18~
図21を参照して、被写体90の寸法に応じた照射パターンに複数の焦点位置94同士の距離が異なることについて説明する。
【0083】
〈大きい被写体の場合〉
図18および
図19では、被写体90の寸法が大きい場合の照射パターンを示している。この場合、撮影制御部8は、被写体90として寸法が大きい大検査対象に応じた照射パターンの場合、複数の他の電子放出部13、および、複数の一の電子放出部13のうちの少なくとも1つおきに配置された一の電子放出部13ごとに、の両方により電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。
【0084】
図19に示す一例では、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、1番目(
図19では1で示す)の他の電子放出部13aから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0085】
次に、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、2番目に(
図19では2で示す)1番目の他の電子放出部13aに対して、Z1方向側の隣の列であり、かつ、X2方向側の端部の一の電子放出部13bから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、3番目に(
図19では3で示す)、2番目の一の電子放出部13bと同じ列であり、かつ、1番目の他の電子放出部13に隣り合う他の電子放出部13cから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0086】
また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、4番目に(
図19では4で示す)、3番目の他の電子放出部13cと同じ列であり、かつ、3番目の他の電子放出部13cに対してX1方向側に2つ分離れた位置に配置された一の電子放出部13dから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0087】
また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、5番目に(
図19では5で示す)、3番目の他の電子放出部13cと隣り合う5番目の他の電子放出部13eから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0088】
〈特大の被写体の場合〉
図20および
図21では、被写体90の寸法が特大の場合の照射パターンを示している。この場合、撮影制御部8は、被写体90として寸法が特大の大検査対象に応じた照射パターンの場合、複数の他の電子放出部13、および、複数の一の電子放出部13のうちの少なくとも1つおきに配置された一の電子放出部13ごとに、の両方により電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている。
【0089】
図21に示す一例では、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、1番目(
図21では1で示す)の他の電子放出部13aから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0090】
次に、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、2番目に(
図21では2で示す)1番目の他の電子放出部13aに対して1つ分離れた位置に配置された他の電子放出部13bから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、3番目に(
図21では3で示す)、2番目の一の電子放出部13bと同じ列のX1方向側の端部の一の電子放出部13cから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0091】
また、撮影制御部8は、被写体90を回転させながら、4番目に(
図21では4で示す)、2番目の他の電子放出部13bに対して1つ分離れた位置に配置された他の電子放出部13dから電子線9bを放出させて傾斜面151bにおいてX線9aを発生させる制御を行うように構成されている。この際、画像処理部5cは、検出信号を検出器2から取得するように構成されている。
【0092】
なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0093】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0094】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、X線撮影装置200は、複数の電子放出部13の一部から電子線9bを放出させることにより、被写体90の寸法に応じて、被写体90側から見て、複数の電子線9bの各々の傾斜面151b上の複数の焦点位置94同士の距離95b(および距離96b)が異なるようにX線9aを照射させる撮影制御部8を備えている。これにより、被写体90の画像を確実に取得することができるとともに、再構成した画像において被写体90が不鮮明になるのを抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様であるので、説明を省略する。
【0095】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0096】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、複数の電子放出部13の各々は、Y1方向側から見て、マトリクス状に配置されている例を示したが本発明はこれに限られない。本発明では、
図22に示す変形例に示すように、複数の電子放出部13の各々は、Y1方向側から見て、十字状に配置されていてもよい。
【0097】
また、上記第1および第2実施形態では、回転ターゲット15は、回転駆動機構15a(
図2を参照)と、ターゲット15bとを有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ターゲットは、回転しなくてもよい。
【0098】
また、上記第1および第2実施形態では、X線撮影装置100(200)は、たとえば、非破壊検査に用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置は、たとえば、非破壊検査以外の用途に用いられてもよい。
【0099】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、複数の電子放出部13の各々は、ターゲット15b側から見て、X1方向(照射方向)を長手方向とする長方形状になるように並べられた複数の円錐形状の電子源131を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の電子放出部の各々は、ターゲット側から見て、照射方向を長手方向とする楕円形状になるように並べられてもよい。この場合、集束部のレンズ部の形状は円形状であるので、複数の電子放出部の各々から放出された電子線の集束しやすくすることができる。
【0100】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0101】
(項目1)
電子線9bを放出するための複数の電子源131を各々が有し、基板12(212)上において第1方向(X方向)および第1方向(X方向)に直交する第2方向(Z方向)の各々に直線状に並ぶ複数の電子放出部13と、前記複数の電子放出部13の各々から別個に放出される複数の電子線9bを集束させる集束部14と、前記集束部14により別個の複数の焦点位置94に集束させた前記複数の電子線9bの各々により発生されたX線9aを被写体90に向けて照射するように傾斜した傾斜面151bを有するターゲット15bとを含むX線管1と、
前記X線管1から照射されて前記被写体90を透過したX線9aを検出する検出器2と、
前記検出器2から出力される検出信号に基づいて画像を生成する画像処理部5cと、
前記複数の電子放出部13の一部から電子線9bを放出させることにより、前記被写体90の寸法に応じて、前記被写体90側から見て、前記複数の電子線9bの各々の前記傾斜面151b上の前記複数の焦点位置94同士の距離95b(および距離96b)が異なるようにX線9aを照射させる制御部(撮影制御部8)とを備える、X線撮影装置100(200)。
【0102】
(項目2)
前記制御部(撮影制御部8)は、前記被写体90の寸法に応じた前記複数の電子放出部13の各々の照射パターンに基づいて、第1方向(X方向)および第2方向(Z方向)の各々に直線状に並ぶ前記複数の電子放出部13の一部として、第1方向(X方向)として前記傾斜面151bから前記被写体90に向かうX線9aの照射方向(X1方向)に直線状に並ぶ複数の一の電子放出部13、および、第2方向(Z方向)として前記照射方向(X1方向)に直交する方向に直線状に並ぶ複数の他の電子放出部13の少なくともいずれかから電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている、項目1に記載のX線撮影装置100(200)。
【0103】
(項目3)
前記制御部(撮影制御部8)は、前記被写体90として寸法が小さい小検査対象に応じた前記照射パターンの場合、隣り合う前記複数の一の電子放出部13から、電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている、項目2に記載のX線撮影装置100(200)。
【0104】
(項目4)
前記制御部(撮影制御部8)は、前記被写体90として寸法が大きい大検査対象に応じた前記照射パターンの場合、前記複数の他の電子放出部13、および、前記複数の一の電子放出部13のうちの少なくとも1つおきに配置された一の電子放出部13ごとに、の少なくともいずれかにより電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている、項目2に記載のX線撮影装置100(200)。
【0105】
(項目5)
前記複数の電子放出部13の各々は、
前記ターゲット15b側から見て、前記照射方向(X1方向)を長手方向とする長方形状または楕円形状になるように並べられた複数の円錐形状の電子源131と、
前記複数の円錐形状の電子源131の各々から、電子を放出させるための電界を発生するゲート電極とを有する、項目2に記載のX線撮影装置100(200)。
【0106】
(項目6)
前記ターゲット15bは、前記集束部14と前記ターゲット15bが並ぶ方向に延びる回転中心軸線92回りに回転するように構成されており、
前記制御部(撮影制御部8)は、前記ターゲット15bを回転させながら、前記照射パターンに基づいて、前記複数の一の電子放出部13、および、前記複数の他の電子放出部13の少なくともいずれかから電子線9bを放出させる制御を行うように構成されている、項目5に記載のX線撮影装置100(200)。
【0107】
(項目7)
前記X線管1は、前記ターゲット15bから照射されたX線9aが通過するX線透過窓16をさらに含み、
前記傾斜面151b上の前記複数の焦点位置94は、前記被写体90側から見て、前記X線透過窓16内に収まるように設けられている、項目1に記載のX線撮影装置100(200)。
【0108】
(項目8)
前記集束部14は、第1方向(X方向)および第2方向(Z方向)の各々に直線状に並ぶ前記複数の電子放出部13のうちの第1方向(X方向)として前記傾斜面151bから前記被写体90に向かうX線9aの照射方向(X1方向)に並ぶ複数の一の電子放出部13のそれぞれに対向するように配置された複数のレンズ部141を有する、項目1に記載のX線撮影装置100(200)。
【符号の説明】
【0109】
1、201 X線管
2 検出器
5c 画像処理部
8 撮影制御部(制御部)
9a X線
9b 電子線
12、212 基板
13 電子放出部
14 集束部
15b ターゲット
16 X線透過窓
90 被写体
92 回転中心軸線
94 焦点位置
95b 距離
96b 距離
100、200 X線撮影装置
131 電子源
141 レンズ部
151b 傾斜面