(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171863
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】自走搬送システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241205BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241205BHJP
G01S 17/86 20200101ALI20241205BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 A
G01S17/86
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089128
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛也
(72)【発明者】
【氏名】角間 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
【テーマコード(参考)】
5H181
5J084
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181JJ28
5H181LL04
5H181LL09
5H181MC19
5H181MC27
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AA14
5J084AB01
5J084AD01
5J084AD05
5J084BA48
5J084CA31
5J084CA65
5J084EA23
5J084EA27
(57)【要約】
【課題】車両の自走による搬送に不具合が生じることを防止する。
【解決手段】自走搬送システム2は、車両40の搬送が行われる空間において車両40とは別に設けられた第一のセンサ10によって車両40の空間情報(第一の空間情報)を取得し、また、第一のセンサ10とはモダリティの異なる第二のセンサ20によって車両40の空間情報(第二の空間情報)を取得する。自走搬送システム2のプロセッサ31は、第一の空間情報に基づいて所定の座標系における車両40の第一の位置を算出し、第二の空間情報に基づいて所定の座標系における車両40の第二の位置を算出する。そして、プロセッサ31は、第一の位置と第二の位置とのずれを判定し、ずれが許容範囲内であることを条件として、第一の位置と第二の位置の少なくとも一方に基づいて車両40に対する制御指示を作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自走させて搬送する自走搬送システムであって、
前記車両の空間情報を取得する第一のセンサと、
前記車両の空間情報を取得するセンサであって、前記第一のセンサとはモダリティの異なる第二のセンサと、
前記第一のセンサで取得された前記車両の第一の空間情報と、前記第二のセンサで取得された前記車両の第二の空間情報とを処理する少なくとも一つのプロセッサと、
前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される複数のインストラクションを記憶した少なくとも一つのメモリと、を備え、
前記複数のインストラクションは、前記少なくとも一つのプロセッサに、
前記第一の空間情報に基づいて所定の座標系における前記車両の第一の位置を算出することと、
前記第二の空間情報に基づいて前記所定の座標系における前記車両の第二の位置を算出することと、
前記第一の位置と前記第二の位置とのずれを判定することと、
前記ずれが許容範囲内であることを条件として、前記第一の位置と前記第二の位置の少なくとも一方に基づいて前記車両に対する制御指示を作成することと、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする自走搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自走搬送システムにおいて、
前記複数のインストラクションは、前記少なくとも一つのプロセッサに、
前記第一の位置と前記第二の位置のいずれか一方に基づいて前記制御指示を作成することと、
前記ずれが前記許容範囲内であることを条件として、前記制御指示の基礎となる前記車両の位置を前記第一の位置から前記第二の位置へ、或いは、前記第二の位置から前記第一の位置へ切り替えることと、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする自走搬送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の自走搬送システムにおいて、
前記複数のインストラクションは、前記少なくとも一つのプロセッサに、
前記ずれが前記許容範囲外である場合、前記車両に対して停止、或いは、退避行動を指示すること、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする自走搬送システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自走搬送システムにおいて、
前記第一のセンサは、前記車両の搬送が行われる空間において前記車両とは別に設けられたセンサである
ことを特徴とする自走搬送システム。
【請求項5】
請求項4に記載の自走搬送システムにおいて、
前記第一のセンサは、前記第一の空間情報として映像を取得するカメラであり、
前記第二のセンサは、前記第二の空間情報として三次元情報を取得するライダーである
ことを特徴とする自走搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を自走させて搬送する自走搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自走させて搬送する自走搬送システムが知られている。自走搬送システムに関連する従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術を挙げることができる。特許文献1には、自動運行エリアを走行する複数のマイクロモビリティを固定インフラ装置によって遠隔制御する技術が開示されている。固定インフラ装置は、自動運行エリア内に規定される検出範囲の物標を検出するライダーを備えている。固定インフラ装置は、ライダーの検出する物標の検出情報を用いて、検出範囲内を走行するマイクロモビリティの走行経路を生成し、走行経路に基づく制御指令をマイクロモビリティへ向けて送信する。
【0003】
なお、本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特許文献1の他にも特許文献2及び特許文献3を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-134583号公報
【特許文献2】特開2022-157096号公報
【特許文献3】特開2022-157033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自走搬送システムでは、車両への制御指示を作成するにあたり車両の位置が必要になる。本出願人は、車両が搬送される空間に設置された固定カメラによって車両の映像を取得し、その映像に基づいて車両の位置を算出することを検討している。ところが、その検討の過程で、固定カメラを設置する上での制約上、車両の搬送ルート上の全て場所が必ずしも固定カメラで撮影できるとは限らないことが分かった。車両の位置を算出できない場所がある場合、車両の自走による搬送に不具合が生じてしまう。
【0006】
本開示は上記の課題に鑑みてなされたものである。本開示の1つの目的は、車両の自走による搬送に不具合が生じることを防止する自走搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の自走搬送システムは二種類のセンサ、すなわち、第一のセンサと第二のセンサを備える。第一のセンサは車両の空間情報を取得するセンサである。第二のセンサもまた車両の空間情報を取得するセンサである。ただし、第二のセンサは第一のセンサとはモダリティの異なるセンサである。ゆえに、第一のセンサで取得される車両の空間情報(以下、第一の空間情報と呼ぶ)と第二のセンサで取得される車両の空間情報(以下、第二の空間情報と呼ぶ)とは異なる種類の情報である。なお、第一のセンサは車両の搬送が行われる空間において車両とは別に設けられていてもよい。
【0008】
本開示の自走搬送システムは第一の空間情報と第二の空間情報とを処理する少なくとも一つのプロセッサと、その少なくとも一つのプロセッサにより実行される複数のインストラクションを記憶した少なくとも一つのメモリとを備える。それら複数のインストラクションは、少なくとも一つのプロセッサに所定の処理を実行させるように構成されている。そびプロセッサにより実行される処理には、第一の空間情報に基づいて所定の座標系における車両の第一の位置を算出すること、及び、第二の空間情報に基づいてその所定の座標系における車両の第二の位置を算出することが含まれる。さらに、プロセッサにより実行される処理には、第一の位置と第二の位置とのずれを判定すること、及び、ずれが許容範囲内であることを条件として第一の位置と第二の位置の少なくとも一方に基づいて車両に対する制御指示を作成することが含まれる。
【0009】
プロセッサにより実行される処理には、第一の位置と第二の位置のいずれか一方に基づいて制御指示を作成することが含まれてもよい。プロセッサにより実行される処理には、ずれが許容範囲内であることを条件として、制御指示の基礎となる車両の位置を第一の位置から第二の位置へ、或いは、第二の位置から第一の位置へ切り替えることが含まれてもよい。またプロセッサにより実行される処理には、ずれが許容範囲外である場合、車両に対して停止、或いは、退避行動を指示することが含まれてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の自走搬送システムによれば、モダリティの異なる二種類のセンサを用いて車両の位置を算出することができる。車両に対する制御指示の作成には、第一のセンサで取得された空間情報に基づき算出された第一の位置と、第二のセンサで取得された空間情報に基づき算出された第二の位置のどちらも使用可能である。ただし、第一の位置と第二の位置とのずれが許容範囲内であることが第一の位置又は第二の位置の使用の条件とされているので、位置のずれの制御指示への影響によって車両の自走による搬送に不具合が生じることは防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る自走搬送システムの概略図である。
【
図2】制御指示の算出に使用する車両位置の切り替えについて説明する図である。
【
図3】許容範囲内の位置のずれの例を示す図である。
【
図4】許容範囲外の位置のずれの例を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る自走搬送システムの構成の詳細を示すブロック図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る自走搬送システムで実行される処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.自走搬送システムの概要
図1は本開示の実施形態に係る自走搬送システム2の概要を示す。自走搬送システム2は、自走機能を有する車両40を出発地P1から目的地P2まで自走させて搬送するシステムである。自走搬送システム2は、例えば、工場や倉庫において完成車を移動させるためのシステムとして構築することができる。また、自走搬送システム2は自動バレーパーキングシステムとして構築することも可能である。
【0013】
自走搬送システム2は車両40の空間情報を取得するための二種類のセンサを備える。二種類のセンサの違いはモダリティの違いである。具体的には、自走搬送システム2が備える第一のセンサは、車両40の空間情報として車両40の映像を取得するカメラ10である。自走搬送システム2が備える第二のセンサは、車両40の空間情報として車両40の三次元情報を取得するライダー20である。
【0014】
カメラ10は車両40の搬送が行われる空間に少なくとも1台設置されている。詳しくは、カメラ10は出発地P1から目的地P2までの車両40の搬送ルートを俯瞰できるような位置に配置されている。ただし、自走搬送システム2が適用される対象によっては、カメラの10を設置する上での制約上、必ずしも搬送ルートの全てが映るようにカメラ10を設置できない場合がある。
【0015】
ライダー20は車両40の搬送が行われる空間に少なくとも1台設置されている。ライダー20はカメラ10に比べて設置条件は緩い。そのためカメラ10の設置が難しい場所でもライダー20は設置できる場合がある。カメラ10とライダー20との協働によって車両40の搬送ルートの全てにおいて車両40の空間情報が取得される。
【0016】
自走搬送システム2はサーバ30を備える。サーバ30は車両40を自走させるための制御指示を車両40に対して送信する。制御指示には車両40の駆動、制動、操舵に関する指示値が含まれている。サーバ30が制御指示を作成する上で基礎とする情報は、車両40の位置に関する情報である。車両40の位置は車両40の空間情報から算出することができる。そのため、サーバ30はカメラ10から第一の空間情報としての映像を受信し、ライダー20から第二の空間情報としての三次元情報を受信する。サーバ30は受信した各空間情報に基づいて車両40の位置を算出し、車両40の位置に基づいて車両40に対する制御指示を作成する。
【0017】
サーバ30は少なくとも1つのプロセッサ31(以下、単にプロセッサ31と呼ぶ)を備えている。また、サーバ30はプロセッサ31に通信可能に結合された少なくとも1つのメモリ32(以下、単にメモリ32と呼ぶ)を備えている。メモリ32はプログラム記憶領域33とデータ記憶領域34とを備えている。プログラム記憶領域33には、プロセッサ31に車両40の位置を算出させるインストラクションと、プロセッサ31に制御指示を作成させるインストラクションとを含む複数のインストラクションが記憶されている。データ記憶領域34には、インストラクションの実行に必要なデータが記憶されるとともに、カメラ10から取得した映像やライダー20から取得した三次元情報等のデータが一時的に記憶される。
【0018】
2.自走搬送システムの詳細
制御指示の作成には、カメラ10で取得された映像から算出した車両40の位置(以下、第一の車両位置と呼ぶ場合がある)と、ライダー20で取得された三次元情報から算出した車両40の位置(以下、第二の車両位置と呼ぶ場合がある)の少なくとも一方を用いることができる。本実施形態では、サーバ30は、カメラ10の映像に基づき算出される第一の車両位置と、ライダー20の三次元情報に基づき算出される第二の車両位置のいずれか一方を使用する。
【0019】
前述のように、カメラ10を設置する上での制約上、車両40の搬送ルートにはカメラ10では撮影できない領域が生じ得る。本実施形態では、車両40の搬送ルートにカメラ10の撮影領域から外れた領域が存在し、ライダー20はその領域を走査するように設置されているものとする。具体的には、
図2に示すように、車両40の自走搬送ルートATRに沿ってカメラ10の撮影領域CMR1、CMR2が設定されている。撮影領域CMR1と撮影領域CMR2とは別々のカメラ10で撮影される領域であって、両者は繋がってはいない。撮影領域CMR1と撮影領域CMR2との間には、ライダー20の走査領域LDRが設定されている。走査領域LDRと撮影領域CMR1との間には重なりが有り、走査領域LDRと撮影領域CMR2との間にも重なりが有る。
【0020】
車両40が撮影領域CMR1内にある場合、サーバ30は映像から車両40の位置を算出することができる。車両40が走査領域LDRに進んだ場合、サーバ30は三次元情報から車両40の位置を算出することができる。そして、車両40が撮影領域CMR2まで進んだ場合、サーバ30は再び映像から車両40の位置を算出することができる。本実施形態では、サーバ30は第一の車両位置と第二の車両位置のいずれか一方に基づいて制御指示を作成する。ゆえに、撮影領域CMR1と走査領域LDRとの重なりの開始点L1から終了点L2までの間に、サーバ30は、制御指示の作成の基礎とする車両40の位置を第一の車両位置から第二の車両位置へ切り替える必要がある。また、走査領域LDRと撮影領域CMR2との重なりの開始点L3から終了点L4までの間に、サーバ30は、制御指示の作成の基礎とする車両40の位置を第二の車両位置から第一の車両位置へ切り替える必要がある。
【0021】
しかしながら、カメラ10の映像に基づき算出される第一の車両位置と、ライダー20の三次元情報に基づき算出される第二の車両位置とは必ずしも一致しない。第一の車両位置と第二の車両位置との間のずれが大きい場合、制御指示の作成の基礎とする車両位置の切り替えに伴って車両40の挙動が不安定になる虞がある。よって、サーバ30には、第一の車両位置から第二の車両位置へ、或いは、第二の車両位置から第一の車両位置への切り替えに先立って、第一の車両位置と第二の車両位置との間の位置のずれが許容範囲内か否か判定することが求められる。なお、許容範囲の位置のずれとは、車両位置の切り替えに伴い発生する車両40の挙動の変化が、車両40を工場、倉庫、駐車場等の構内で自走させる上で許容範囲に収まる位置のずれを意味する。
【0022】
位置のずれが許容範囲内か否か判定する方法の例について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3及び
図4は、所定の座標空間上に投影された二つのバウンディングボックスOBJ1、OBJ2を示している。バウンディングボックスOBJ1はカメラ10の映像に対する物体認識処理で得られた車両40の位置を示している。バウンディングボックスOBJ2はライダー20の三次元情報に対する物体認識処理で得られた車両40の位置を示している。また、
図3及び
図4には、各バウンディングボックスOBJ1、OBJ2の重心CNT1、CNT2が示されている。
【0023】
図3に示す例では、二つのバウンディングボックスOBJ1、OBJ2の重心CNT1、CNT2は近いのに対し、
図4に示す例では、二つの重心CNT1、CNT2は遠く離れている。よって、位置のずれが許容範囲内か否か判定する一つの方法として、バウンディングボックスOBJ1、OBJ2の重心CNT1、CNT2間の距離を用いることができる。例えば、重心間の距離が閾値以下であれば、位置のずれは許容範囲内であると判定してもよい。一方、重心間の距離が閾値より大きければ、位置のずれは許容範囲外であると判定してもよい。
【0024】
また、
図3に示す例では、二つのバウンディングボックスOBJ1、OBJ2は重なっているのに対し、
図4に示す例では、二つのバウンディングボックスOBJ1、OBJ2は重なっていない。よって、位置のずれが許容範囲内か否か判定する別の方法として、バウンディングボックスOBJ1、OBJ2間の重なり率を用いることができる。例えば、重なり率が閾値以下であれば、位置のずれは許容範囲内であると判定してもよい。一方、重なり率が閾値より大きければ、位置のずれは許容範囲外であると判定してもよい。
【0025】
図5は、車両位置のずれの判定を含む自走搬送システム2の機能に着目した場合の自走搬送システム2の機能ブロック図である。
図5に示すように、サーバ30は、第一の車両位置算出部301、第二の車両位置算出部302、位置ずれ判定部303、及び制御指示作成部304を備える。メモリ32には、これらの要素301-304において実行される処理をプロセッサ31に実行させるためのインストラクションが記憶されている。すなわち、これらの要素301-304に対応するインストラクションがプロセッサ31により実行されたとき、これらの要素301-304において定義される処理がプロセッサ31により実行される。
【0026】
第一の車両位置算出部301は、インフラカメラ10から車両40の映像を取得する。インフラカメラ10とサーバ30とは通信機15、35によって有線或いは無線で接続されている。第一の車両位置算出部301は、インフラカメラ10から取得した映像に対して所定の物体認識処理を施し、映像に含まれる車両40を認識する。そして、第一の車両位置算出部301は、映像から認識された車両40を所定の座標系に投影し、その座標系おける第一の車両位置を算出する。
【0027】
第二の車両位置算出部302は、ライダー20から車両40の三次元情報を取得する。ライダー20とサーバ30とは通信機25、35によって有線或いは無線で接続されている。第二の車両位置算出部302は、ライダー20から取得した三次元情報に対して所定の物体認識処理を施し、三次元情報に含まれる車両40を認識する。そして、第二の車両位置算出部302は、第一の車両位置が表されている座標系と同じ座標系に三次元情報から認識された車両40を投影し、その座標系おける第二の車両位置を算出する。
【0028】
位置ずれ判定部303は、第一の車両位置と第二の車両位置とのずれが許容範囲内か否かを判定する。判定方法としては、例えば、
図3及び
図4を用いて説明した方法を用いてもよい。位置ずれの判定結果は制御指示作成部304に入力される。
【0029】
制御指示作成部304は、車両40に与えるべき制御指示を車両位置に基づいて作成する。車両40がカメラ10の撮影領域内にあるがライダー20の走査領域内にはない場合、車両40が含まれる映像は得られるが車両40が含まれる三次元情報が得られない。この場合、制御指示作成部304は、映像に基づき算出された第一の車両位置に基づいて制御指示を作成する。逆に、車両40がカメラ10の撮影領域内にはないがライダー20の走査領域内にある場合、車両40が含まれる映像は得られないが車両40が含まれる三次元情報は得られる。この場合、制御指示作成部304は、三次元情報に基づき算出された第二の車両位置に基づいて制御指示を作成する。
【0030】
車両40がカメラ10の撮影領域内にあり、且つ、ライダー20の走査領域内にもある場合、車両40が含まれる映像と車両40が含まれる三次元情報の両方が得られる。この場合、制御指示作成部304は、位置ずれ判定部303の判定結果に応じた処理を行う。位置ずれ判定部303により位置ずれは許容範囲内であると判定された場合、制御指示作成部304は、第一の車両位置と第二の車両位置のいずれか一方を選択し、選択した車両位置に基づいて制御指示を作成する。例えば、車両40がカメラ10の撮影領域からライダー20の走査領域に入った場合、制御指示作成部304は、車両40が走査領域に入った時点において制御指示の作成の基礎とする車両位置を第一の車両位置から第二の車両位置へ切り替えてもよい。また、車両40がライダー20の走査領域からカメラ10の撮影領域に入った場合、制御指示作成部304は、車両40が撮影領域に入った時点において制御指示の作成の基礎とする車両位置を第二の車両位置から第一の車両位置へ切り替えてもよい。
【0031】
位置ずれ判定部303により位置ずれは許容範囲外であると判定された場合、制御指示作成部304は非常制御指示を作成する。非常制御指示は、位置ずれが起きている状態での車両位置の切り替えによって車両40の挙動が不安定になってしまうことを防ぐための制御指示である。具体的には、車両40をその場で停止させるように、車両40に対して停止を指示する停止指示が作成される。また、停止指示に代えて、車両40を近くの退避場所まで退避させるように、車両40に対して退避行動を指示する退避指示を作成してもよい。
【0032】
制御指示作成部304は、サーバ30の通信機35を介して作成した制御指示を車両40に送信する。通信機35は車両40の受信機45と無線で接続されている。車両40はアクチュエータ制御部401を備える。アクチュエータ制御部401は、受信した制御指示したがって駆動アクチュエータ、制動アクチュエータ、及び操舵アクチュエータを制御する。
【0033】
図5には示されていないが、位置ずれ判定部303による位置ずれの判定結果はセンサの異常判定に用いてもよい。つまり、カメラ10とライダー20の両方が正常であるなら、第一の車両位置と第二の車両位置との間の位置ずれは許容範囲内に収まっているはずである。したがって、位置ずれが許容範囲外であるなら、カメラ10とライダー20の少なくとも一方に故障が発生しているか、或いは、カメラ10とライダー20の少なくとも一方の設定にずれが生じていると判断することができる。例えば、
図2に示すケースにおいて、撮影領域CMR1の映像から算出された第1の車両位置と、走査領域LDRの三次元情報から算出された第2の車両位置との間に位置ずれが発生したとする。その場合、撮影領域CMR1を撮影しているカメラ10と走査領域LDRを走査しているライダー20の少なくとも一方に異常が生じていると判定することができる。
【0034】
制御指示作成部304による制御指示によって車両40を停止させる場合や車両40に退避行動を取らせる場合、自走搬送システム2を早期に復旧させる必要が有る。よって、位置ずれ判定部303において位置ずれの発生が判定された場合、自走搬送システム2の管理者に連絡を行うようにしてもよい。その際、センサの異常判定の結果に基づき、どのセンサに異常が発生しているのかを管理者に通知してもよい。
【0035】
自走搬送システム2で実行される上述の処理は、
図6に示すようにフロー図で表わすことができる。このフロー図において、フローF100はカメラ10において実行される処理を示している。フローF200はライダー20において実行される処理を示している。フローF300はサーバ30において実行される処理を示している。そして、フローF400は車両40において実行される処理を示している。各フローはそれぞれが所定の周期で互いに非同期で実行されている。
【0036】
フローF100で表わされるように、カメラ10では、ステップS101が実行される。ステップS101では、車両40を含む映像が取得される。そして、取得された映像はサーバ30に送信される。
【0037】
フローF200で表わされるように、ライダー20では、ステップS201が実行される。ステップS201では、車両40を含む三次元情報が取得される。そして、取得された三次元情報はサーバ30に送信される。
【0038】
フローF300で表わされるように、サーバ30では、まず、ステップS301が実行される。ステップS301では、映像と三次元情報の両方が取得されたか判定される。
【0039】
映像と三次元情報の一方のみが取得されている場合、処理はステップS301からステップS302に進む。ステップS302では、取得された映像或いは三次元情報から車両位置が算出される。そして、算出された車両位置に基づいて制御指示が作成される。ステップS302の実行後、処理はステップS303に進む。ステップS303では、ステップS302で作成された制御指示が車両40に送信される。
【0040】
映像と三次元情報の両方が取得されている場合、処理はステップS301からステップS304に進む。ステップS304では、映像に基づいて第一の車両位置が算出されるとともに、三次元情報に基づいて第二の車両位置が算出される。ステップS304の実行後、処理はステップS305に進む。ステップS305では、第一の車両位置と第二の車両位置の位置ずれは許容範囲内か否か判定される。
【0041】
位置ずれが許容範囲内の場合、処理はステップS305からステップS306に進む。ステップS306では、第一の車両位置と第二の車両位置のうちいずれか一方が選択される。そして、選択された車両位置に基づいて制御指示が作成される。ステップS306の実行後、処理はステップS303に進む。ステップS303では、ステップS306で作成された制御指示が車両40に送信される。
【0042】
位置ずれが許容範囲外の場合、処理はステップS305からステップS307に進む。ステップS307では、車両40を停止させるための停止指示が作成される。ステップS307の実行後、処理はステップS303に進む。ステップS303では、ステップS306で作成された停止指示が制御指示として車両40に送信される。
【0043】
フローF400で表わされるように、車両40では、まず、ステップS401が実行される。ステップS401では、制御指示を受信したかどうか判定される。制御指示を受信した場合、処理はステップS402に進む。ステップS402では、ステップS306で受信した制御指示に基づいて各種アクチュエータが制御される。
【0044】
3.その他の実施形態
車両40は遠隔オペレータによる遠隔手動運転を実現するための遠隔運転キットを備えてもよい。車両40が遠隔運転キットを備えているのであれば、位置ずれが許容範囲外の場合、車両40の搬送を制御指示の送信による自走搬送から遠隔手動運転による搬送に切り替えてもよい。
【0045】
図2に示す撮影領域CMR1と走査領域LDRとが重なっている領域や、走査領域LDRと撮影領域CMR2とが重なっている領域では、映像と三次元情報の両方が取得される。このような領域では、第一の車両位置と第二の車両位置との間の中間位置を算出し、その中間位置に基づいて制御指示を作成してもよい。また、第一の車両位置から第二の車両位置へ、或いは、第二の車両位置から第一の車両位置へ、制御指示の作成の基礎となる車両位置を徐々に切り替えてもよい。
【0046】
自走搬送システムに適用可能なセンサの組み合わせは、設置型のカメラと設置型のライダーには限定されない。例えば、第一のセンサが設置型のカメラである場合、第二のセンサは車載のライダーであってもよい。また、第二のセンサとしてレーダーを用いることもできる。レーダーは設置型でもよいし車載型でもよい。第二のセンサがレーダーである場合、第一のセンサとしてライダーを用いてもよい。また、第二のセンサとしては車載のGPSでもよいし、路面に設けられた磁気センサであってもよい。つまり、第一のセンサと第二のセンサとは、車両の空間情報を取得することができ、且つ、互いに異なるセンサモダリティを有していればよい。
【符号の説明】
【0047】
2…自走搬送システム、10…カメラ、20…ライダー、30…サーバ、40…車両