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特開2024-171867バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171867
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20241205BHJP
【FI】
A61M25/10 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089135
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真弘
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼淵 崇亘
(72)【発明者】
【氏名】杖田 昌人
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB11
4C267BB28
4C267BB31
4C267BB38
4C267BB40
4C267BB70
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG21
(57)【要約】
【課題】表面に突出部が設けられたバルーンであって、収縮状態のバルーンにより狭窄部を切開することができ、拡張状態においても狭窄部の拡張機能が向上したバルーンカテーテル用バルーンと当該バルーンを備えたバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】外面及び内面を有しているバルーン本体部26と、バルーン本体部26の外面に径方向yの外方に突出し長手軸方向xに延在している突出部27を有しており、直管部23における突出部27はST部切欠き28STを有しており、遠位側テーパー部24における突出部27はDT部切欠き28DTを有しており、ST部切欠き28STの深さD3とDT部切欠き28DTの深さD4はともに50μm以上であり、深さD3と深さD4は、D3>D4の関係を満たすバルーンカテーテル用バルーン20。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部と、前記直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、前記近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、前記直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、前記遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、
外面及び内面を有しているバルーン本体部と、
前記バルーン本体部の前記外面に径方向の外方に突出し長手軸方向に延在している突出部を有しており、
前記直管部における前記突出部はST部切欠きを有しており、前記遠位側テーパー部における前記突出部はDT部切欠きを有しており、
前記ST部切欠きの深さD3と前記DT部切欠きの深さD4はともに50μm以上であり、
前記ST部切欠きの深さD3と前記DT部切欠きの深さD4は、D3>D4の関係を満たすバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項2】
前記ST部切欠きは複数のST部切欠きであり、前記深さD3は前記複数のST部切欠きの深さの平均である請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項3】
前記DT部切欠きは複数のDT部切欠きであり、前記深さD4は前記複数のDT部切欠きの深さの平均である請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項4】
前記直管部における前記突出部の高さH3と前記遠位側テーパー部における前記突出部の高さH4は、H3≧H4の関係を満たす請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項5】
前記近位側テーパー部における前記突出部はPT部切欠きを有しており、前記PT部切欠きの深さD2は50μm以上であり、前記ST部切欠きの深さD3と前記PT部切欠きの深さD2はD3<D2の関係を満たす請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項6】
前記PT部切欠きは複数のPT部切欠きであり、前記深さD2は前記複数のPT部切欠きの深さの平均である請求項5に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項7】
前記直管部における前記突出部の高さH3と前記近位側テーパー部における前記突出部の高さH2は、H3≧H2の関係を満たす請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項8】
前記ST部切欠きの深さD3と前記直管部における前記突出部の高さH3は、D3≧H3×1/4の関係を満たす請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項9】
前記DT部切欠きの深さD4と前記遠位側テーパー部における前記突出部の高さH4は、D4≧H4×1/4の関係を満たす請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項10】
前記近位側テーパー部における前記突出部はPT部切欠きを有しており、前記PT部切欠きの深さD2は50μm以上であり、前記PT部切欠きの深さD2と前記近位側テーパー部における前記突出部の高さH2は、D2≧H2×1/4の関係を満たす請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項11】
前記ST部切欠きの数は、前記DT部切欠きの数よりも多い請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項12】
前記近位側テーパー部における前記突出部はPT部切欠きを有しており、前記PT部切欠きの深さD2は50μm以上であり、前記ST部切欠きの数は、前記PT部切欠きの数よりも多い請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル用バルーンを備えているバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル用バルーン、及びそれを備えるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管の狭窄部にバルーンカテーテルを挿入してバルーンを拡張させることにより、血管を拡張して血流を確保する血管形成術は低侵襲療法として広く行われている。血管形成術は、例えば心臓の冠動脈に狭窄が生じることにより引き起こされる心筋梗塞等の疾病の治療や、透析のためのシャント部に発生した狭窄の治療などに用いられる。
【0003】
血管形成術において、一般的なバルーンカテーテルでは石灰化等により硬化した狭窄部を拡張させにくいことがある。また、ステントと称される留置拡張器具を狭窄部に留置することによって狭窄部を拡張する方法も用いられているが、例えば、この治療後に血管の新生内膜が過剰に増殖して再び血管の狭窄が発生してしまうISR(In-Stent-Restenosis)病変等の病変が起こる場合もある。ISR病変では新生内膜が柔らかく、また表面が滑りやすいため、一般的なバルーンカテーテルではバルーンの拡張時にバルーンの位置が病変部からずれてしまい血管を傷付けてしまうことがある。
【0004】
このような石灰化病変やISR病変であっても狭窄部を拡張できるバルーンカテーテルとして、狭窄部に食い込ませるための突出部やブレード、スコアリングエレメントがバルーンに設けられているバルーンカテーテルが開発されている。例えば、特許文献1には、バルーン本体を形成する高分子材料よりも剛性の高い高分子材料から構成されているスコアリングエレメントを有しており、バルーンの一方端及び他方端においてスコアリングエレメントが平坦化されているバルーンカテーテルが開示されている。特許文献2には、スコアリングエレメントの高さがバルーンの先細形状に沿って減少するスコアリングバルーン構造が、特許文献3には、バルーンの直管部には外側突出部が設けられ、テーパー部には内側突出部が設けられているバルーンカテーテルが開示されている。上記特許文献1~3では、バルーンの両端部でスコアリングエレメントの高さが減少したり、外側突出部ではなく内側突出部が設けられたりしている。これに対し、バルーンの直管部に配置される突出部よりも遠位側テーパー部に配置される突出部の突出量のほうが大きい高突出部となっているバルーンカテーテルもある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0128718号明細書
【特許文献2】特表2014-506140号公報
【特許文献3】国際公開第2020/012851号
【特許文献4】国際公開第2020/012850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バルーンカテーテルは、収縮して折り畳まれた状態で体腔に挿入され治療部位まで送達される。そのため、上記特許文献1~3に開示されているバルーンカテーテルでは、体腔に挿入されやすいようにバルーンの先端部におけるスコアリングエレメントの高さを抑えることにより外径が大きくなることを抑制し、バルーンの通過性の向上を試みている。また、上記特許文献4に開示されているバルーンカテーテルでは、先端側コーン領域だけを病変部に導入しバルーンを拡張するにあたり、先端側コーン領域に設けられたエレメントで病変部に切込みを入れながらバルーンを拡張できるように先端側コーン領域に配置される突出部の高さが高くなっている。しかし、これらいずれのバルーンにおいても、バルーンの収縮状態において、バルーンを前進或いは後退させながら狭窄部を切開することは想定されていなかった。
【0007】
上記の事情に鑑み本発明は、表面に突出部が設けられたバルーンであって、収縮状態のバルーンにより狭窄部を切開することができ、拡張状態においてバルーンが滑りにくく狭窄部からのずれを防止できるバルーンカテーテル用バルーンと当該バルーンを備えたバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンは以下の通りである。
[1]直管部と、前記直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、前記近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、前記直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、前記遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、外面及び内面を有しているバルーン本体部と、前記バルーン本体部の前記外面に径方向の外方に突出し長手軸方向に延在している突出部を有しており、前記直管部における前記突出部はST部切欠きを有しており、前記遠位側テーパー部における前記突出部はDT部切欠きを有しており、前記ST部切欠きの深さD3と前記DT部切欠きの深さD4はともに50μm以上であり、前記ST部切欠きの深さD3と前記DT部切欠きの深さD4は、D3>D4の関係を満たすバルーンカテーテル用バルーン。
【0009】
バルーン本体部の拡張時の外径が直管部から漸減している遠位側テーパー部に突出部が配されているため、遠位側テーパー部の突出部はバルーンの収縮時に羽根から露出し易く狭窄部の切開に寄与することができる。このとき、遠位側テーパー部における突出部が有するDT部切欠きの深さが相対的に浅いことにより、遠位側テーパー部における突出部の剛性を高められるため、バルーンを収縮させたまま前進(ほふく前進)させる等の操作によって、遠位側テーパー部の突出部により狭窄部を切開することができる。また、直管部における突出部が有するST部切欠きの深さが相対的に深いことで、直管部においてST部切欠きにより区分される突出部のそれぞれのセグメントが狭窄部に作用してアンカーとして機能できる。これにより、バルーンが拡張して直管部における突出部が羽根から露出した状態においては、バルーンが滑りにくくすることができ、バルーンが狭窄部からずれることを防止できる。このように、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンは、バルーンの拡張時のみならず収縮時においても狭窄部を切開して拡張することができ、拡張時のバルーンのずれを防止できるため、様々な病変に適用することが可能である。
【0010】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンは、以下の[2]~[12]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記ST部切欠きは複数のST部切欠きであり、前記深さD3は前記複数のST部切欠きの深さの平均である[1]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[3]前記DT部切欠きは複数のDT部切欠きであり、前記深さD4は前記複数のDT部切欠きの深さの平均である[1]又は[2]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[4]前記直管部における前記突出部の高さH3と前記遠位側テーパー部における前記突出部の高さH4は、H3≧H4の関係を満たす[1]~[3]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[5]前記近位側テーパー部における前記突出部はPT部切欠きを有しており、前記PT部切欠きの深さD2は50μm以上であり、前記ST部切欠きの深さD3と前記PT部切欠きの深さD2はD3<D2の関係を満たす[1]~[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[6]前記PT部切欠きは複数のPT部切欠きであり、前記深さD2は前記複数のPT部切欠きの深さの平均である[5]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[7]前記直管部における前記突出部の高さH3と前記近位側テーパー部における前記突出部の高さH2は、H3≧H2の関係を満たす[1]~[6]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[8]前記ST部切欠きの深さD3と前記直管部における前記突出部の高さH3は、D3≧H3×1/4の関係を満たす[1]~[7]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[9]前記DT部切欠きの深さD4と前記遠位側テーパー部における前記突出部の高さH4は、D4≧H4×1/4の関係を満たす[1]~[8]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[10]前記近位側テーパー部における前記突出部はPT部切欠きを有しており、前記PT部切欠きの深さD2は50μm以上であり、前記PT部切欠きの深さD2と前記近位側テーパー部における前記突出部の高さH2は、D2≧H2×1/4の関係を満たす[1]~[9]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[11]前記ST部切欠きの数は、前記DT部切欠きの数よりも多い[1]~[10]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[12]前記近位側テーパー部における前記突出部はPT部切欠きを有しており、前記PT部切欠きの深さD2は50μm以上であり、前記ST部切欠きの数は、前記PT部切欠きの数よりも多い[1]~[11]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【0011】
本発明はまた、以下も提供する。
[13]上記[1]~[12]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンを備えているバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0012】
上記バルーンカテーテル用バルーン、及びそれを備えるバルーンカテーテルによれば、遠位側テーパー部における突出部が有する切欠きの深さが相対的に浅いことにより遠位側テーパー部における突出部の剛性を向上でき、バルーンを収縮させた状態で前進(ほふく前進)させる等の操作により狭窄部を切開することができる。また、直管部が有する切欠きの深さが相対的に深いことにより、直管部において切欠きによって区分される突出部のそれぞれのセグメントが狭窄部に作用してアンカーとして機能できる。これにより、バルーンの拡張時において、バルーンを滑りにくくすることができ、バルーンが狭窄部からずれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
図2図1に示したバルーンカテーテルのII-II断面図である。
図3図1に示したバルーンカテーテルのバルーンの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るバルーンの長手軸方向の断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るバルーンの収縮状態における側面図である。
図6図5に示したバルーンのVI-VI断面図である。
図7図5に示したバルーンのVII-VII断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るバルーンの斜視図である。
図9図8に示したバルーンの収縮状態における側面図である。
図10図9に示したバルーンのX-X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
1.バルーンカテーテル用バルーン
図1図10を参照しながら、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンを説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。図2図1に示したバルーンカテーテルのII-II断面図であり、バルーンの直管部において突出部に切欠きが配されていない部分の長手軸方向に垂直な断面を表す。図3は、図1に示したバルーンカテーテルのバルーンの斜視図である。図2及び図3は、拡張状態におけるバルーンを表している。図4は、本発明の一実施形態に係るバルーンの長手軸方向の断面図であり、突出部が配されている部分を拡大して示している。図5は、本発明の一実施形態に係るバルーンの収縮状態における側面図である。図6は、図5に示したバルーンのVI-VI断面図であり、収縮状態において直管部に羽根が形成され直管部における突出部が羽根に覆われている構成を表している。図7は、図5に示したバルーンのVII-VII断面図であり、収縮状態において遠位側テーパー部に羽根が形成され遠位側テーパー部における突出部の少なくとも一部が羽根から露出している構成を表している。図8は、本発明の他の実施形態に係るバルーンの斜視図である。図8は、拡張状態におけるバルーンを表している。図9は、図8に示したバルーンの収縮状態における側面図である。図10は、図9に示したバルーンのX-X断面図であり、収縮状態において近位側テーパー部に羽根が形成され近位側テーパー部における突出部の少なくとも一部が羽根から露出している構成を表している。
【0016】
図1に示すように、バルーン20はバルーンカテーテル10の遠位部に設けられる。バルーン20はシャフト30の遠位部に接続され、シャフト30の内腔を通じて流体を導入することによりバルーン20を拡張させ、流体を排出することによりバルーン20を収縮させることができる。バルーン20の拡張と収縮を制御するために、インデフレーター(バルーン用加圧器)を用いて流体を導入又は排出することができる。流体は、ポンプ等により加圧された加圧流体であってもよい。バルーンカテーテル10については、「2.バルーンカテーテル」の項で詳述する。
【0017】
図1図10に示すように、バルーン20は、長手軸方向xと、長手軸方向xに垂直な断面においてバルーン20の外接円の図心と外接円上の点とを結ぶ方向である径方向yと外接円に沿う方向である周方向zを有する。本明細書において、長手軸方向xにおいて使用者の手元側の方向を近位側と称し、近位側とは反対側、即ち処置対象者の方向を遠位側と称する。
【0018】
バルーン20以外の部材や部分は、それぞれ長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、それらはバルーン20の長手軸方向x、径方向y、及び周方向zとは同じである場合もあり異なる場合もあるが、本明細書においては理解のし易さのために全ての部材や部品がバルーン20の長手軸方向x、径方向y、及び周方向zと同じ長手軸方向、径方向、及び周方向を有しているとして説明する。
【0019】
図1及び図3に示すように、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20は、直管部23と、直管部23よりも近位側に位置している近位側テーパー部22と、近位側テーパー部22よりも近位側に位置している近位側スリーブ部21と、直管部23よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部24と、遠位側テーパー部24よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部25とを有している。
【0020】
近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24は、直管部23から離れるにつれて縮径するように形成されていることが好ましい。このような構成により、バルーン20は拡張状態において直管部23が最大径を有することができ、病変部においてバルーン20を拡張させることにより直管部23を病変部に十分接触させて狭窄部の拡張や切開を容易に行える。また、バルーン20が近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24を有することにより、バルーン20を収縮させた際にバルーン20の近位端部と遠位端部の外径を小さくしてシャフト30とバルーン20との段差を小さくすることができ、バルーン20を体腔内や内視鏡の鉗子チャネル内、ガイディングカテーテルなどのデリバリー用のカテーテル内に挿通させやすくすることができる。
【0021】
さらに、後述するようにバルーン20を収縮させるとバルーン本体部26が羽根29に形成されるが、近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24ではバルーン本体部26の径が直管部23から離れるにつれて小さくなっているため形成される羽根29の周方向zの長さが短くなる。よって、バルーン20が収縮して羽根29がシャフト30に巻き付いた際に、近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24における突出部27の少なくとも一部は羽根29から露出することができ、突出部27の露出した部分によりバルーン20の収縮時においても狭窄部を切開することができる。
【0022】
近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25は、バルーン20の拡張状態においても拡張しない部分であることが好ましい。これにより、近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25の少なくとも一部がシャフト30と安定して固定される構成とすることができる。後述するようにシャフト30がインナーシャフト31とアウターシャフト32を有する構成の場合は、近位側スリーブ部21の少なくとも一部がアウターシャフト32と固定され、遠位側スリーブ部25の少なくとも一部がインナーシャフト31と固定される構成とすることができる。
【0023】
図2及び図3に示すように、バルーン20は、外面及び内面を有しているバルーン本体部26と、バルーン本体部26の外面に径方向yの外方に突出し長手軸方向xに延在している突出部27を有している。バルーン本体部26は、バルーン20の基本形状を画定する部分であり、その外形は、直管部23では筒形状であり、テーパー部では円錐台形状であり、スリーブ部では直管部23よりも径の小さい筒形状であることが好ましい。突出部27は、突出部27が設けられていない部分、即ちバルーン本体部26が露出している部分の厚みよりも厚く形成されている部分であると言い換えることもできる。
【0024】
バルーン20の突出部27における厚みは、例えば、バルーン20の突出部27が設けられていない部分の厚みの1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上がより好ましく、1.8倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上がさらに好ましい。バルーン20の突出部27における厚みの上限は特に限定されず、例えば、バルーン20の突出部27が設けられていない部分の厚みの30倍以下、20倍以下、10倍以下であってもよい。
【0025】
バルーン20の突出部27が設けられていない部分には凹凸が形成されていないことが好ましく、バルーン20の突出部27が設けられていない部分の厚み、即ち、バルーン本体部26の厚みは長手軸方向x及び周方向zにおいて均一であることが好ましい。ここで、当該凹凸には製造上不可避的に形成される表面粗さは含まれない。これにより、バルーン20を均等に拡張させることが容易になり、突出部27によるスコアリング機能を所望の通り発揮させやすくなる。但し、直管部23におけるバルーン本体部26の厚み、テーパー部におけるバルーン本体部26の厚み、及びスリーブ部におけるバルーン本体部の厚みは互いに異なっていてもよく、直管部23におけるバルーン本体部26の厚みが最も薄くてもよい。これにより、柔軟性の向上したバルーン20とすることができる。
【0026】
図2に示すように、突出部27は頂部27tと基部27bを有している。頂部27tは突出部27の径方向yにおける外方端を含む部分であり、基部27bはバルーン本体部26との境界、即ち突出部27の径方向yの内方端を含む部分である。
【0027】
バルーン20が突出部27を有することでバルーン20にスコアリング機能を付与でき、突出部27を狭窄部の内腔壁に接触させて食い込ませることにより、石灰化した狭窄部の内腔壁であっても亀裂を入れることが可能になる。そのため、血管内膜の解離を抑えながら狭窄部を拡張することができる。また、突出部27はその厚みや剛性によりバルーン20の剛性を向上することができるため、バルーン20の高耐圧化や加圧時の過拡張の抑制も可能となる。
【0028】
図3に示すように、突出部27は、バルーン本体部26の外面において長手軸方向xに畝状に延びるように設けられる。なお、突出部27には後述する切欠き28が形成されており、長手軸方向xに畝状に延在する突出部27が切欠き28により途切れる場合もある。この場合であっても、長手軸方向xにおいて切欠き28の遠位側と近位側に突出部27が延在している場合は、1つの突出部27が長手軸方向xに延在していると言える。
【0029】
図2及び図3に示すように、突出部27は周方向zに複数設けられていてもよいし、或いは、図示していないが、突出部27は周方向zに1つだけ設けられていてもよい。突出部27の周方向zにおける数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上であってもよく、また、20以下、15以下、10以下であってもよい。突出部27が周方向zにおいて複数設けられる場合、複数の突出部27は周方向zに離隔していることが好ましく、周方向zに略等間隔に配されていることがより好ましい。離隔距離は、突出部27の周方向zの最大長さよりも長いことが好ましい。
【0030】
突出部27は、直管部23と遠位側テーパー部24に設けられることが好ましく、突出部27が長手軸方向xにおいて配される範囲は、直管部23の一部区間又は全区間であってよく、遠位側テーパー部24の一部区間又は全区間であってよい。突出部27は、近位側テーパー部22に配されていてもよく、突出部27が長手軸方向xにおいて配される範囲は、近位側テーパー部22の一部区間又は全区間であってよい。さらに、突出部27は、近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25に設けられていてもよく、突出部27が長手軸方向xにおいて配される範囲は、近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25の一部区間又は全区間であってよい。ここで、突出部27が長手軸方向xにおいて配される範囲は、後述する切欠き28により断裂する部分も含むものとする。切欠き28によりバルーン本体部26が露出する場合は、当該露出部の長手軸方向xの長さは後述する突出部セグメント27Sの長手軸方向xの最大長さよりも短いことが好ましい。この構成では、1つの突出部27が切欠き28を含んで長手軸方向xに延在している。或いは、突出部27は、長手軸方向xにおいて近位側テーパー部22や直管部23のそれぞれ一部に設けられていてもよく、当該露出部の長手軸方向xの長さが突出部セグメント27Sの長手軸方向xの長さよりも長いことにより長手軸方向xにおいて複数の突出部27が配されていてもよい。
【0031】
長手軸方向xに垂直な断面における突出部27の断面形状は任意であってよく、例えば、三角形、四角形、多角形、半円形、円形の一部、略円形、扇型、楔形、凸字形、紡錘形、及びそれらの組合せ等であってもよい。なお、三角形、四角形、及び多角形は、角部の頂点が明確であって辺部が直線であるものの他に、角部が丸みを帯びている所謂角丸多角形や、辺部の少なくとも一部が曲線となっているものも含むものとする。或いは、突出部27の断面形状は、凹凸や欠け等を有した不定形な形状であってもよい。例えば、切欠き28が設けられていない部分においては略三角形の断面形状を有する突出部27が、切欠き28が設けられている部分においては略台形の断面形状を有する等、突出部27は長手軸方向xの位置によって異なる断面形状を有していてもよい。
【0032】
図3に示すように、直管部23における突出部27はST部切欠き28STを有しており、遠位側テーパー部24における突出部27はDT部切欠き28DTを有している。ST部切欠き28STは直管部23に設けられた切欠きであり、DT部切欠き28DTは遠位側テーパー部24に設けられた切欠きであるが、以降、設けられた場所に関わらず切欠きを総称して切欠き28と呼ぶことがある。
【0033】
切欠き28は、長手軸方向xに延在する突出部27の頂部27tに凹みが形成されるように設けることができる。このとき、突出部27の頂部27tの一部が切除されることにより切欠き28が形成されてもよい。図4に示すように、切欠き28は、後述する切欠き28の深さ方向において最も深い位置に配された底部28bと、突出部27の頂部27tとの境界である頂部28tとを有している。切欠き28は突出部27の頂部27tに凹みが形成されるように設けられることから、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において、1つの切欠きは2つの頂部28tを有していることが好ましい。
【0034】
ST部切欠き28STの深さD3とDT部切欠き28DTの深さD4はともに50μm以上であることが好ましい。深さD3と深さD4は、70μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。切欠き28の深さの下限が上記以上であれば、長手軸方向xにおいて突出部27を複数の突出部セグメント27Sに区分することができる。即ち、直管部23にST部切欠き28STが設けられることにより、長手軸方向xにおいてST部切欠き28STの両端に突出部セグメント27Sが配され、遠位側テーパー部24にDT部切欠き28DTが設けられることにより、長手軸方向xにおいてDT部切欠き28DTの両端に突出部セグメント27Sが配されることができる。長手軸方向xにおいて、切欠き28の頂部28tは、突出部セグメント27Sの端部に位置する。
【0035】
切欠き28の深さの上限は、切欠き28が設けられる位置における突出部27の高さである。突出部27の高さを決定する方法については後述する。ST部切欠き28STの深さD3は、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。DT部切欠き28DTの深さD4は、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましいく、100μ以下が特に好ましい。
【0036】
図4に示すように、切欠き28の深さは、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において、切欠き28の2つの頂部28tを結ぶ仮想直線から切欠き28の底部28bに向かって垂線を引いたとき、該垂線が該仮想直線と交わる点と、該垂線が底部28bと交わる点との間の距離とすることができる。図4の例では、ST部切欠き28STの頂部28tを結ぶ仮想直線は長手軸方向xと平行であり、深さD3は径方向yにおける仮想直線とST部切欠き28STの底部28bとの距離として求められる。遠位側テーパー部24では、DT部切欠き28DTの頂部28tを結ぶ仮想直線は長手軸方向xと平行ではないが、仮想直線からDT部切欠き28DTの底部28bに向かって垂線を引くことにより深さD4を求めることができる。なお、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面は、長手軸方向xに垂直な断面におけるバルーン本体部26の図心、即ちバルーン本体部26の中心軸を通る断面である。本明細書において、「突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面」と記載している他の部分についても同様である。
【0037】
切欠き28の形状は特に限定されない。突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において、切欠き28の形状は、V字状、U字状、矩形の一辺を除いた形状、或いはこれらを組み合わせた形状等であってもよい。いずれの形状であっても、深さ方向に最も深い位置に配された底部28bは特定できるため、上記の定義により深さを定めることができる。切欠き28の底部28bは突出部27の基部27bに達していてもよいし達していなくてもよい。切欠き28の底部28bが突出部27の基部27bに達していることにより、バルーン本体部26が切欠き28の底に露出していてもよい。バルーン本体部26が切欠き28の底に露出している場合であっても、露出部の長手軸方向xの長さが突出部セグメント27Sの長手軸方向xの最大長さよりも短い場合は、当該露出部は突出部27の非存在部ではなく切欠き28の一部であると見なす。
【0038】
図3及び図4に示すように、ST部切欠き28STの深さD3とDT部切欠き28DTの深さD4は、D3>D4の関係を満たす。即ち、直管部23における突出部27に設けられたST部切欠き28STの深さD3は、遠位側テーパー部24における突出部27に設けられたDT部切欠き28DTの深さD4よりも深い。直管部23及び/又は遠位側テーパー部24に切欠き28がそれぞれ複数設けられている場合は、いずれか1つずつでもD3>D4の関係を満たせばよい。或いは、複数の切欠き28の全てがD3>D4の関係を満たしていてもよい。
【0039】
バルーン20の周方向zに複数の突出部27が設けられている場合は、各突出部27において、直管部23と遠位側テーパー部24の少なくとも1組の切欠き28がD3>D4の関係を満たしていることが好ましい。或いは、複数の突出部27の全てにおいて、D3>D4の関係を満たす切欠き28が1組以上あってもよい。
【0040】
ST部切欠き28STの底部28bが突出部27の基部27bに達しており、DT部切欠き28DTの底部28bが突出部27の基部27bに達していないことによりD3>D4の関係が満たされていてもよい。或いは、ST部切欠き28STの底部28bとDT部切欠き28DTの底部28bの両方が突出部27の基部27bに達していない状態で、D3>D4の関係が満たされていてもよい。また或いは、ST部切欠き28STの底部28bとDT部切欠き28DTの底部28bの両方が突出部27の基部27bに達している状態で、D3>D4の関係が満たされていてもよい。
【0041】
図5に示すように、バルーン20は内腔に流体が導入される前や一端導入された流体が排出された後に収縮状態を取ることができる。バルーン20が拡張状態のときは図2に示されるように直管部23におけるバルーン本体部26は円筒形状であるところ、バルーン20が収縮状態になると、図5図7に示すようにバルーン20には羽根29が形成され、羽根29が折り畳まれることによりバルーン本外部26の内腔壁がシャフト30に近接するようにバルーン20の外径を小さくすることができる。即ち、図2に示すように、拡張状態のバルーン20は羽根形成部29aを有しているということができ、羽根形成部29aの周方向zの長さが長いほど長い羽根29を形成することができる。図6に示すように、直管部23は拡張時に最大径を有する部分であることから直管部23における羽根29の長さは長く、直管部23における突出部27は収縮状態において羽根29に覆われることができる。
【0042】
これに対し、図7に示すように、バルーン本体部26の拡張時の外径が直管部23から漸減している遠位側テーパー部24では羽根29の長さが短いため、遠位側テーパー部24における突出部27の少なくとも一部、特に突出部27の頂部27tは収縮状態においても羽根29から露出することができる。図5に示すように、遠位側テーパー部24のより遠位側では、突出部27は殆ど羽根29の影響を受けることなく露出できる。これにより、遠位側テーパー部24における突出部27は、バルーン20の収縮時に羽根29が折り畳まれた状態で狭窄部の切開に寄与することができる。
【0043】
このとき、遠位側テーパー部24における突出部27が有するDT部切欠き28DTの深さD4が相対的に浅いことにより、遠位側テーパー部24における突出部27の剛性を高められるため、狭窄部を効率的に拡張することができる。
【0044】
また、直管部23における突出部27が有するST部切欠き28STの深さD3が相対的に深いことにより、直管部23においてST部切欠き28STにより区分される突出部セグメント27Sのそれぞれが狭窄部に作用してアンカーとして機能できる。これにより、バルーン20が拡張して直管部23における突出部27が羽根29から露出した状態において、バルーン20が滑りにくくすることができ、バルーン20が狭窄部からずれることを防止できる。
【0045】
長手軸方向xにおいて、1つの切欠き28の幅、即ち2つの頂部28t間の長さは、突出部セグメント27Sの長手軸方向xの最大長さよりも短いことが好ましい。突出部セグメント27Sの長手軸方向xの最大長さとは、切欠き28により区分されて形成された複数の突出部セグメント27Sのうち、長手軸方向xにおいて最も長いものの長さのことである。これにより、狭窄部の切開に寄与できる突出部セグメント27Sの長手軸方向xの長さを相対的に長くして狭窄部拡張機能を確保することができる。また、突出部27の剛性を所定以上にすることができる。
【0046】
図3に示すように、直管部23における最も遠位側の突出部セグメント27Sは、遠位側テーパー部24における最も近位側の突出部セグメント27Sと連続して配されていてもよい。これにより、突出部27を直管部23から遠位側テーパー部24に連続して形成することができ、突出部27の剛性を向上して狭窄部拡張機能を向上したりバルーン20の剛性を向上したりすることが容易になる。
【0047】
長手軸方向xにおいて、1つの切欠き28の幅、即ち2つの頂部28t間の長さは、切欠き28の深さに比べて長くてもよいし短くてもよい。例えば、図4に示すように、直管部23におけるST部切欠き28STの幅と深さD3との比(D3/ST部切欠き28STの幅)は、遠位側テーパー部24におけるDT部切欠き28DTの幅と深さD4の比(D4/DT部切欠き28DTの幅)よりも大きくてもよい。これにより、直管部23における突出部セグメント27Sの長手軸方向xの長さを長くすることができ、直管部23における突出部27の剛性を向上して狭窄部拡張機能を向上することができる。
【0048】
或いは、直管部23におけるST部切欠き28STの幅と深さD3との比(D3/ST部切欠き28STの幅)は、遠位側テーパー部24におけるDT部切欠き28DTの幅と深さD4の比(D4/DT部切欠き28DTの幅)よりも小さくてもよいし、同等であってもよい。
【0049】
(請求項2)
図3に示すように、直管部23のST部切欠き28STは複数のST部切欠き28STであり、ST部切欠き28STの深さD3は複数のST部切欠き28STの深さの平均であることが好ましい。直管部23に形成される複数のST部切欠き28STの深さはそれぞれ異なっていてもよく、それらの平均が相対的に深いことにより上記効果を奏することができる。
【0050】
(請求項3)
図3に示すように、遠位側テーパー部24のDT部切欠き28DTは複数のDT部切欠き28DTであり、DT部切欠き28DTの深さD4は複数のDT部切欠き28DTの深さの平均であることが好ましい。遠位側テーパー部24に形成される複数のDT部切欠き28DTの深さはそれぞれ異なっていてもよく、それらの平均が相対的に浅いことにより上記効果を奏することができる。
【0051】
図示していないが、バルーン20は、バルーン本体部26の内面に径方向yの内方に突出し長手軸方向xに延在している内側突出部を有していてもよい。内側突出部は、突出部27と長手軸方向xや周方向zにおいて同じ位置に配されていてもよい。内側突出部と突出部27は一体成形されていることが好ましく、これによりバルーン20の一部が肉厚に形成されていてもよい。
【0052】
遠位側スリーブ部25には、突出部27が設けられていてもよいし設けられていなくてもよい。遠位側スリーブ部25に突出部27が設けられる場合、当該突出部27の高さは直管部23における突出部27の高さと比べて高くても低くてもよいが、図3に示すように低い突出部27が設けられるのも好ましい態様である。遠位側スリーブ部25に突出部27が設けられないか、或いは設けられていても高さが低いことにより、バルーン20の挿通性を向上できる。この場合、近位側スリーブ部21において内側突出部が設けられていることが好ましい。
【0053】
バルーン20の近位側、即ち近位側テーパー部22及び近位側スリーブ部21には、突出部27が設けられていてもよいし設けられていなくてもよい。図3に示すように、近位側テーパー部22と近位側スリーブ部21には高さの低い突出部27が設けられていてもよい。これにより、バルーン20の挿通性を向上できる。
【0054】
近位側テーパー部22及び/又は近位側スリーブ部21において、突出部27が設けられていない場合、内側突出部が設けられていることが好ましい。或いは、近位側テーパー部22及び/又は近位側スリーブ部21において突出部27が設けられていても高さが低い場合、当該突出部27と長手軸方向xや周方向zにおいて同じ位置に内側突出部が設けられていることが好ましい。これにより、バルーン20の近位側の剛性を向上でき、キンクや加圧時の過拡張を抑制することができる。
【0055】
図8に示すように、近位側テーパー部22が所定以上の高さの突出部27を有しているのも好ましい態様である。このとき、近位側テーパー部22における突出部27はPT部切欠き28PTを有しており、PT部切欠き28PTの深さD2は50μm以上であり、直管部23におけるST部切欠き28STの深さD3とPT部切欠き28PTの深さD2は、D3>D2の関係を満たしていることが好ましい。近位側テーパー部22及び/又は直管部23に切欠き28がそれぞれ複数設けられている場合は、いずれか1つずつでもD3>D2の関係を満たせばよい。或いは、複数の切欠き28の全てがD3>D2の関係を満たしていてもよい。
【0056】
ST部切欠き28STの底部28bが突出部27の基部27bに達しており、PT部切欠き28PTの底部28bが突出部27の基部27bに達していないことによりD3>D2の関係が満たされていてもよい。或いは、ST部切欠き28STの底部28bとPT部切欠き28PTの底部28bの両方が突出部27の基部27bに達していない状態で、D3>D2の関係が満たされていてもよい。また或いは、ST部切欠き28STの底部28bとPT部切欠き28PTの底部28bの両方が突出部27の基部27bに達している状態で、D3>D2の関係が満たされていてもよい。
【0057】
図9及び図10に示すように、拡張時のバルーン本体部26の外径が直管部23から漸減している近位側テーパー部22では羽根29の長さが短いため、近位側テーパー部22における突出部27の少なくとも一部、特に突出部27の頂部27tは収縮状態においても羽根29から露出することができる。図9に示すように、近位側テーパー部22のより近位側では、突出部27は殆ど羽根29の影響を受けることなく露出できる。これにより、近位側テーパー部22における突出部27は、バルーン20の収縮時に羽根29が折り畳まれた状態で狭窄部の切開に寄与することができる。
【0058】
このとき、近位側テーパー部22における突出部27が有するPT部切欠き28PTの深さD2が相対的に浅いことにより、近位側テーパー部22における突出部27の剛性を高められるため、狭窄部を効率的に拡張することができる。
【0059】
図4に示すように、直管部23におけるST部切欠き28STの幅と深さD3との比(D3/ST部切欠き28STの幅)は、近位側テーパー部22におけるPT部切欠き28PTの幅と深さD2の比(D2/PT部切欠き28PTの幅)よりも大きくてもよい。これにより、直管部23における突出部セグメント27Sの長手軸方向xの長さを長くすることができ、直管部23における突出部27の剛性を向上して狭窄部拡張機能を向上することができる。
【0060】
或いは、直管部23におけるST部切欠き28STの幅と深さD3との比(D3/ST部切欠き28STの幅)は、近位側テーパー部22におけるPT部切欠き28PTの幅と深さD2の比(D2/PT部切欠き28PTの幅)よりも小さくてもよいし、同等であってもよい。
【0061】
図8に示すように、近位側テーパー部22のPT部切欠き28PTは複数のPT部切欠き28PTであり、PT部切欠き28PTの深さD2は複数のPT部切欠き28PTの深さの平均であることが好ましい。近位側テーパー部22に形成される複数のPT部切欠き28PTの深さはそれぞれ異なっていてもよく、それらの平均が相対的に浅いことにより上記効果を奏することができる。
【0062】
遠位側テーパー部24のDT部切欠き28DTの深さD4と近位側テーパー部22のPT部切欠き28PTの深さD2は同じでもよいし、遠位側テーパー部24のDT部切欠き28DTの深さD4が近位側テーパー部22のPT部切欠き28PTの深さD2よりも浅くてもよいし、遠位側テーパー部24のDT部切欠き28DTの深さD4が近位側テーパー部22のPT部切欠き28PTの深さD2よりも深くてもよい。
【0063】
直管部23におけるST部切欠き28STの数は、遠位側テーパー部24におけるDT部切欠き28DTの数よりも多いことが好ましい。これにより、直管部23における突出部セグメント27Sの数を増やして狭窄部拡張機能をより容易に向上できる。また、遠位側テーパー部24におけるDT部切欠き28DTの数が相対的に少ないことにより、遠位側テーパー部24における突出部27の剛性を向上してバルーン20の収縮時における狭窄部拡張機能を向上できる。
【0064】
近位側テーパー部22における突出部27がPT部切欠き28PTを有している場合、PT部切欠き28PTの深さD2は50μm以上であり、直管部23におけるST部切欠き28STの数は、近位側テーパー部22におけるPT部切欠き28PTの数よりも多いことが好ましい。直管部23はバルーン20の中でも長手軸方向xに占める長さが長い部分であることから、直管部23におけるST部切欠き28STの数が相対的に多いことにより、バルーン20の拡張時においてST部切欠き28STによる狭窄部拡張機能の確保が容易になる。また、近位側テーパー部22におけるPT部切欠き28PTの数が相対的に少ないことにより、近位側テーパー部22における突出部27の剛性を向上してバルーン20の収縮時における狭窄部拡張機能を向上できる。
【0065】
近位側テーパー部22におけるPT部切欠き28PTの数は、遠位側テーパー部24におけるDT部切欠き28DTの数と同じでもよいし異なっていてもよい。
【0066】
直管部23におけるST部切欠き28STの数は、1以上、3以上、5以上、また、20以下、16以下、12以下、8以下が好ましい。遠位側テーパー部24におけるDT部切欠き28DTの数は、1つであってもよく、2以上、3以上、また、10以下、7以下、5以下が好ましい。近位側テーパー部22におけるPT部切欠き28PTの数は、1つであってもよく、2以上、3以上、また、10以下、7以下、5以下が好ましい。
【0067】
図4に示すように、直管部23における突出部27の高さH3と遠位側テーパー部24における突出部27の高さH4は、H3≧H4の関係を満たすことが好ましい。直管部23における突出部27の高さH3と遠位側テーパー部24における突出部27の高さH4は同じ、即ちH3=H4であってもよいが、直管部23における突出部27の高さH3は遠位側テーパー部24における突出部27の高さH4よりも高い、即ちH3>H4であることが好ましい。これにより、直管部23におけるST部切欠き28STの深さD3を遠位側テーパー部24におけるDT部切欠き28DTの深さD4よりも深くすることが容易になる。また、直管部23における突出部27の高さH3が相対的に高いことにより、ST部切欠き28STにより区分された突出部セグメント27Sが狭窄部により容易に作用することができる。
【0068】
図4に示すように、直管部23の突出部27の高さH3は、切欠き28(ST部切欠き28ST)が設けられている部分で計測される。直管部23の突出部27の高さH3は、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において、切欠き28(ST部切欠き28ST)の2つの頂部28tを結ぶ仮想直線から切欠き28(ST部切欠き28ST)の底部28bに向かって垂線を引いたとき、該垂線が該仮想直線と交わる点と、該垂線が突出部27の基部27bと交わる点との間の距離とすることができる。遠位側テーパー部24の突出部27の高さH4も同様に、切欠き28(DT部切欠き28DT)が設けられている部分で計測される。遠位側テーパー部24の突出部27の高さH4は、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において、切欠き28(DT部切欠き28DT)の2つの頂部28tを結ぶ仮想直線から切欠き28(DT部切欠き28DT)の底部28bに向かって垂線を引いたとき、該垂線が該仮想直線と交わる点と、該垂線が突出部27の基部27bと交わる点との間の距離とすることができる。その他の部位、例えば近位側テーパー部22に突出部27が配されている場合であっても、切欠き28が設けられていれば同様の方法で突出部27の高さを求めることができる。
【0069】
例えば、近位側スリーブ部21や遠位側スリーブ部25等に突出27が設けられており切欠き28が設けられていない場合は、これらの部分における突出部27の高さは、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において、突出部27の頂部27tの当該部における近位端と遠位端を結ぶ仮想直線、例えば、近位側スリーブ部21の場合は突出部27の頂部27tの近位側スリーブ部21における近位端と遠位端を結ぶ仮想直線、遠位側スリーブ部25の場合は突出部27の頂部27tの遠位側スリーブ部25における近位端と遠位端を結ぶ仮想直線から垂線を引いたとき、該垂線が突出部27の頂部27tと交わる点と該垂線が突出部27の基部27bと交わる点との間の距離とすることができる。各部における突出部27の高さが長手軸方向xに沿って一定でない場合は、長手軸方向xに離隔した異なる3点、例えば各部の近位端、中点、遠位端の3点の突出部の高さの平均を当該部の突出部27の高さとすることができる。該垂線が突出部27の基部27bと交わらない場合には、後述するように、突出部27の基部27bを外挿し、該垂線が外挿線27beと交わる点を高さの基準とすることができる。
【0070】
図4において、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において突出部27の外縁は直線的に形成されているが、突出部27の形状はこれに限定されるものではなく、突出部27の頂部27tを通る長手軸方向xの断面において突出部27の外縁、即ち頂部27tが直管部23や遠位側テーパー部24の各部の近位端から遠位端まで曲線状、直線と曲線を組み合わせた形状等任意の形状を有していてもよい。
【0071】
直管部23や遠位側テーパー部24に切欠き28が複数設けられている場合は、各切欠き28が設けられている部分においてそれぞれ突出部27の高さを測定し、その平均を求める。例えば、直管部23に5つのST部切欠き28STが設けられている場合は、ST部切欠き28STが設けられている5箇所で突出部27の高さを測定し、得られた5つの高さの平均を直管部23の突出部27の高さH3とする。また例えば、遠位側テーパー部24に3つのDT部切欠き28DTが設けられている場合は、DT部切欠28DTが設けられている3箇所で突出部27の高さを測定し、得られた3つの高さの平均を遠位側テーパー部24の突出部27の高さH4とする。上記の例では、直管部23及び遠位側テーパー部24に設けられている突出部27の数をそれぞれ5つ及び3つとしたが、突出部27の数はこれらに限定されない。遠位側テーパー部24のように突出部27の高さが長手軸方向xに沿って一定でない場合は、突出部27の高さを求める際に、切欠き28の2つの頂部28tを結ぶ仮想直線から切欠き28の底部28bに向かって垂線を引いたとき、該垂線が突出部27の基部27bと交わらないことがある。このような場合は、突出部27の基部27bの遠位側テーパー部24における近位端と遠位端を結ぶ仮想直線を外挿し、該垂線が外挿線27beと交わる点を高さの基準とすることができる。遠位側テーパー部24以外においても、該垂線が突出部27の基部27bと交わらない場合には、突出部27の基部27bを外挿し、該垂線が外挿線27beと交わる点を高さの基準とすることができる。
【0072】
図4では、遠位側テーパー部24における突出部27の高さH4が長手軸方向xに沿って遠位側ほど低い態様を示しているが、遠位側テーパー部24における突出部27の高さH4は、長手軸方向xに沿って一定であってもよい。
【0073】
図3図5に示すように、遠位側テーパー部24における突出部27は、長手軸方向xにおいて近位側から遠位側にいくに従って高さが漸減していることが好ましい。これにより、バルーン20の挿通性を向上することが容易になる。このとき、遠位側テーパー部24における突出部27に複数のDT部切欠き28DTが設けられている場合は、近位側ほどD4が深く遠位側ほどD4が浅いことが好ましい。これにより、遠位側テーパー部24における突出部27の剛性を確保することが容易になる。またこの場合、遠位側テーパー部24に内側突出部が形成されているのも好ましい態様である。これによりバルーン20の遠位側の剛性を向上でき、キンクや加圧時の過拡張を抑制することができる。
【0074】
図4に示すように、直管部23における突出部27の高さH3と近位側テーパー部22における突出部27の高さH2がH3≧H2の関係を満たしていることが好ましい。直管部23における突出部27の高さH3と近位側テーパー部22における突出部27の高さH2は同じ、即ちH3=H2であってもよいが、直管部23における突出部27の高さH3は近位側テーパー部22における突出部27の高さH2よりも高い、即ちH3>H2であることが好ましい。これにより、近位部のバルーン20の外径を小さく抑えることができるため、バルーン20の挿通性を向上できる。
【0075】
図4図8、及び図9に示すように、近位側テーパー部22における突出部27は、長手軸方向xにおいて遠位側から近位側にいくに従って高さが漸減していることが好ましい。これにより、バルーン20の挿通性を向上することがより容易になる。このとき、近位側テーパー部22における突出部27に複数のPT部切欠き28PTが設けられている場合は、遠位側ほど深さD2が深く近位側ほど深さD2が浅いことが好ましい。これにより、近位側テーパー部22における突出部27の剛性を確保することが容易になる。またこの場合、近位側テーパー部22に内側突出部が形成されているのも好ましい態様である。これによりバルーン20の近位側の剛性をより向上でき、キンクや加圧時の過拡張を抑制することができる。
【0076】
直管部23において、ST部切欠きの深さD3と突出部27の高さH3は、D3≧H3×1/4の関係を満たすことが好ましい。これにより、直管部23において突出部27の高さH3に対するST部切欠き28STの深さD3の割合を所定以上とすることができるため、突出部セグメント27Sが狭窄部に作用することによる狭窄部拡張機能向上が容易になる。
【0077】
遠位側テーパー部24において、DT部切欠き28DTの深さD4と突出部27の高さH4は、D4≧H4×1/4の関係を満たすことが好ましい。これにより、遠位側テーパー部24において突出部27の高さH4に対するDT部切欠き28DTの深さD4の割合を所定以上とすることができるため、バルーン20の収縮状態においてDT部切欠き28DTにより区分された突出部セグメント27Sがより容易に血管壁に作用できるため、狭窄部拡張機能の向上が容易になる。
【0078】
近位側テーパー部22における突出部27がPT部切欠き28PTを有している場合、PT部切欠き28PTの深さD2は50μm以上であり、PT部切欠き28PTの深さD2と近位側テーパー部22における突出部27の高さH2は、D2≧H2×1/4の関係を満たすことが好ましい。これにより、近位側テーパー部22において突出部27の高さH2に対するPT部切欠き28PTの深さD2の割合を所定以上とすることができるため、PT部切欠き28PTにより区分された突出部セグメント27Sがより容易に血管壁に作用できるため、バルーン20の収縮時における狭窄部拡張機能の向上が容易になる。PT部切欠き28PTの深さD2は、70μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。PT部切欠き28PTの深さD2の下限が上記以上であれば、長手軸方向xにおいて突出部27を複数の突出部セグメント27Sに容易に区分することができる。また、PT部切欠き28DTの深さD2は、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましく、100μ以下が特に好ましい。
【0079】
バルーン本体部26は樹脂から構成されることが好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂から構成される。これにより、成形によってバルーン20を製造することが容易になる。バルーン本体部26を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ラテックスゴム等の天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。特に、バルーン10の薄膜化や柔軟性の点から、エラストマー樹脂を用いることが好ましい。例えばポリアミド系樹脂の中でバルーン20に好適な材料として、ナイロン12、ナイロン11等が挙げられ、ブロー成形する際に比較的容易に成形可能である点から、ナイロン12が好適に用いられる。また、バルーン20の薄膜化や柔軟性の点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリアミドエーテルエラストマー等のポリアミドエラストマーが好ましく用いられる。なかでも、降伏強度が高く、バルーン20の寸法安定性が良好な点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが好ましく用いられる。
【0080】
突出部27は、例えば樹脂から構成することができる。突出部27が樹脂から構成されている場合、突出部27とバルーン本体部26は同じ樹脂から構成されることが好ましく、突出部27とバルーン本体部26とは一体成形されていることが好ましい。即ち、突出部27がバルーン本体部26の外側面に取り付けられるのではなく、バルーン20の肉薄部がバルーン本体部26を、バルーン20の肉厚部が突出部27を形成していることが好ましい。バルーン本体部26は内層と外層を有していてもよく、この場合、突出部27はバルーン本体部26の外層と同じ樹脂から構成されていることが好ましい。このような構成により、突出部27が意図せずにバルーン本体部26から脱落することが起こりにくくなる。さらに、或いは、突出部27を構成する樹脂とバルーン本体部26を構成する樹脂とがある程度の相溶性を有していれば、突出部27とバルーン本体部26は異なる樹脂から構成されていてもよい。突出部27は、別部材としてバルーン本体部26の外側面に溶着、接着等の手段で取り付けられていてもよい。
【0081】
突出部27は、金属から構成されていてもよく、金属と樹脂の組合せから構成されていてもよい。突出部27は、別部材としてバルーン本体部26の外側面に溶着、接着等の手段で取り付けられていてもよい。
【0082】
2.バルーンカテーテル
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル10は、上記バルーンカテーテル用バルーン20を備える。上記「1.バルーンカテーテル用バルーン」の項にも記載したが、図1に示すように、バルーン20はシャフト30の遠位端部に接続されている。
【0083】
図1には、シャフト30の遠位側から近位側に至る途中にガイドワイヤポート31aを有し、ガイドワイヤポート31aからシャフト30の遠位側までガイドワイヤ挿通路として機能するインナーシャフト31を有する、所謂ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル10を示している。
【0084】
シャフト30は内部に流体の流路とガイドワイヤ挿通路を有していることが好ましい。シャフト30が内部に流体の流路及びガイドワイヤの挿通路を有する構成とするには、例えば、シャフト30がインナーシャフト31とインナーシャフト31の外側に配置されているアウターシャフト32とを有しており、インナーシャフト31がガイドワイヤ挿通路として機能し、アウターシャフト32とインナーシャフト31の間の空間が流体の流路として機能する構成とすることが挙げられる。このような構成の場合、インナーシャフト31がバルーン2を貫通するように遠位側まで延在してバルーン20の遠位側がインナーシャフト31と接続され、バルーン20の近位側がアウターシャフト32と接続されることが好ましい。
【0085】
バルーンカテーテル10は、遠位側アウターシャフト32dと近位側アウターシャフト32pを有していることが好ましく、遠位側アウターシャフト32dと近位側アウターシャフト32pは別部材であって、遠位側アウターシャフト32dの近位端部が近位側アウターシャフト32pの遠位端部に接続されることにより、バルーン20からバルーンカテーテル10の近位端部まで延在するアウターシャフト32が構成されていてもよい。或いは、1つのアウターシャフト32がバルーン20からバルーンカテーテル10の近位端部まで延在していてもよく、遠位側アウターシャフト32dや近位側アウターシャフト32pがさらに複数のチューブ部材から構成されていてもよい。
【0086】
シャフト30は、樹脂、金属、又は樹脂と金属の組合せから構成されていることが好ましい。シャフトの構成材料として樹脂を用いることにより、シャフト30に可撓性や弾性を付与し易くなる。また、シャフト30の構成材料として金属を用いることにより、バルーンカテーテル1の送達性を向上できる。
【0087】
シャフト30を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シャフト30を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、又はこれらの組合せが挙げられる。シャフト30が別部材の遠位側アウターシャフト32dと近位側アウターシャフト32pを含む場合、例えば、遠位側アウターシャフト32dは樹脂から形成され、近位側アウターシャフト32pは金属から形成される構成とすることができる。また、シャフト30は、異なる材料又は同じ材料による積層構造を有していてもよい。
【0088】
バルーン20とシャフト30との接合は、接着剤による接着、溶着、バルーン20の端部とシャフト30とが重なっている箇所にリング状部材を取り付けてかしめること等が挙げられる。中でも、バルーン20とシャフト30とは、溶着により接合されていることが好ましい。バルーン20とシャフト30とが溶着されていることにより、バルーン20を繰り返し拡張又は収縮させてもバルーン20とシャフト30との接合が解除されにくく接合強度を向上できる。
【0089】
バルーンカテーテル10の遠位端部には、先端部材60が設けられていることが好ましい。先端部材60は、インナーシャフト31とは別部材としてバルーン20の遠位端部に接続されることでバルーンカテーテル10の遠位端部に設けられてもよいし、バルーン20の遠位端よりも遠位側まで延在したインナーシャフト31が先端部材60として機能してもよい。
【0090】
シャフト30には、バルーン20の位置をX線透視下で確認することを可能とするために、長手軸方向xにおいてバルーン20が位置する部分にX線不透過マーカー70が配置されていてもよい。X線不透過マーカー70は、例えば、バルーン20の内部に配置されたインナーシャフト31上に配置することができ、バルーン20の直管部23の両端に相当する位置に配されることが好ましく、バルーン20の直管部23の中央に相当する位置に配されてもよい。
【0091】
シャフト30の近位側にはハブ40が設けられていてもよく、ハブ40にはバルーン20の内部に供給される流体の流路と連通した流体注入部50が設けられていることが好ましい。
【0092】
シャフト30とハブ40との接合は、例えば、接着剤による接着、溶着等が挙げられる。中でも、シャフト30とハブ40とは接着により接合されていることが好ましい。シャフト30とハブ40とが接着されていることにより、例えば、シャフト30は柔軟性の高い材料から構成され、ハブ40は剛性の高い材料から構成されている等、シャフト30を構成する材料とハブ40を構成する材料とが異なっている場合に、シャフト30とハブ40の接合強度を高めてバルーンカテーテル10の耐久性を向上できる。
【0093】
図示していないが、本発明は、シャフトの遠位側から近位側にわたってガイドワイヤ挿通路を有している、所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルにも適用できる。オーバーザワイヤ型の場合、インフレーションルーメン及びガイドワイヤルーメンが手元側に配置されるハブまで延在しており、各ルーメンの近位側開口が二又構造のハブに設けられていることが好ましい。
【0094】
ラピッドエクスチェンジ型のカテーテルの場合、遠位側アウターシャフト32d及び/又は近位側アウターシャフト32pの外壁に適宜コーティングが施されていることが好ましく、遠位側アウターシャフト32dと近位側アウターシャフト32pの両方にコーティングが施されていることがより好ましい。オーバーザワイヤ型のカテーテルの場合は、外側シャフトの外壁に適宜コーティングが施されていることが好ましい。
【0095】
コーティングは、目的に応じて親水性コーティング又は疎水性コーティングとすることができ、シャフト30を親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤に浸漬したり、シャフト30の外壁に親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤を塗布したり、シャフト30の外壁を親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤で被覆したりすることにより施すことができる。コーティング剤は、薬剤や添加剤を含んでいてもよい。
【0096】
親水性コーティング剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体などの親水性ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせで作られた親水性コーティング剤等が挙げられる。
【0097】
疎水性コーティング剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、シリコーンオイル、疎水性ウレタン樹脂、カーボンコート、ダイヤモンドコート、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コート、セラミックコート、アルキル基やパーフルオロアルキル基で終端された表面自由エネルギーが小さい物質等が挙げられる。
【0098】
バルーン20の直管部23の外面には、薬剤が保持されていてもよい。薬剤は、薬理活性物質であれば特に限定されず、例えば、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、小分子、細胞等の医薬として許容される薬剤が挙げられる。特に、カテーテルを血管形成術における治療後の血管の再狭窄を抑制する目的で使用する場合は、薬剤として抗増殖剤や免疫抑制剤などの抗再狭窄剤を好ましく用いることができる。このような薬剤としては、例えば、パクリタキセル、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、ゾタロリムス等が挙げられる。
【符号の説明】
【0099】
10:バルーンカテーテル
20:バルーンカテーテル用バルーン
21:近位側スリーブ部
22:近位側テーパー部
23:直管部
24:遠位側テーパー部
25:遠位側スリーブ部
26:バルーン本体部
27:突出部
27b:突出部の基部
27t:突出部の頂部
27S:突出部セグメント
28:切欠き
28b:切欠きの底部
28t:切欠きの頂部
28PT:PT部切欠き
28ST:ST部切欠き
28PS:PS部切欠き
29:羽根
29a:羽根形成部
30:シャフト
31:インナーシャフト
31a:ガイドワイヤポート
32:アウターシャフト
32d:遠位側アウターシャフト
32p:近位側アウターシャフト
40:ハブ
50:流体注入部
60:先端部材
70:マーカー
D2:近位側テーパー部の切欠きの深さ
D3:直管部の切欠きの深さ
D4:遠位側テーパー部の切欠きの深さ
H2:近位側テーパー部の突出部の高さ
H3:直管部の突出部の高さ
H4:遠位側テーパー部の突出部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10