IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特開2024-171884光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法
<>
  • 特開-光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法 図1
  • 特開-光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法 図2A
  • 特開-光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法 図2B
  • 特開-光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法 図3
  • 特開-光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法 図4
  • 特開-光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法 図5
  • 特開-光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171884
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20241205BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241205BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241205BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241205BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
B23K26/38 Z
G02B5/30
H10K50/10
H10K50/86
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089157
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 理
(72)【発明者】
【氏名】宗本 順二
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4E168
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB26
2H149BA02
2H149BA14
2H149BA24
2H149CA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA03
2H149EA05
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02Z
2H149FA08W
2H149FA08X
2H149FA12W
2H149FA12Z
2H149FA13W
2H149FA13Y
2H149FA21W
2H149FA61
2H149FB01
2H149FC02
2H149FC03
2H149FD46
2H149FD48
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF15
3K107GG28
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA26
4E168DA32
4E168DA40
4E168FC01
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】所望の形状を有する光学フィルム片を歩留まりよく提供すること。
【解決手段】光学フィルム片2の製造方法は、平面視にて矩形または正方形の光学フィルム本体1を準備することと、光学フィルム本体1にレーザ光を照射して光学フィルム本体1を切断し、複数の光学フィルム片2を得ることと、を含む。光学フィルム本体1の第1の辺に対し、切断予定の光学フィルム片2の長径2bは略平行に配置され、光学フィルム本体1の第1の辺に沿う線1b上に存在する切断予定の光学フィルム片2の長径2bの合計は、光学フィルム本体1の第1の辺の長さよりも長い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視にて矩形または正方形の光学フィルム本体を準備することと、
前記光学フィルム本体にレーザ光を照射して前記光学フィルム本体を切断し、複数の光学フィルム片を得ることと、を含み、
前記光学フィルム本体の第1の辺に対し、前記切断予定の光学フィルム片の長径は略平行に配置され、
前記光学フィルム本体の第1の辺に沿う線上に存在する前記切断予定の光学フィルム片の長径の合計は、前記光学フィルム本体の第1の辺の長さよりも長い、
光学フィルム片の製造方法。
【請求項2】
前記準備した光学フィルム本体を、保持板上に配置すること、を含み、
前記保持板には、前記光学フィルム本体の切断予定線に対応し、前記レーザ照射により生じる生成物を吸引可能とする貫通溝が形成されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記準備した光学フィルム本体の切断予定線は、前記保持板の前記貫通溝と平面視で重なる位置に配置される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記貫通溝の幅は0.1mm以上3mm以下である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記貫通溝の幅は、前記照射するレーザ光の径の1倍以上30倍以下である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記光学フィルム本体は、前記保持板に直に接して配置される犠牲部材を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記光学フィルム本体において、隣り合う切断予定線の間隔は3mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記光学フィルム本体において、隣り合う切断予定線の間隔は、前記照射するレーザ光の径の30倍以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記光学フィルム本体において、隣り合う切断予定線の間隔は0.3mm以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記光学フィルム本体において、隣り合う切断予定線の間隔は、前記照射するレーザ光の径の3倍以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記光学フィルム片は、平面視にて外周が部分的に切り欠かれた切り欠き部と、平面視にて外周が部分的に突出する突出部との少なくとも一方を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
平面視にて矩形または正方形の光学フィルム本体を準備することと、
前記光学フィルム本体にレーザ光を照射して前記光学フィルム本体を切断し、複数の光学フィルム片を得ることと、を含み、
前記光学フィルム本体の第1の辺に対し、前記切断予定の光学フィルム片の長径は略平行に配置され、
前記光学フィルム本体の第1の辺に沿う線上に存在する前記切断予定の光学フィルム片の長径の合計は、前記光学フィルム本体の第1の辺の長さよりも長い、
光学フィルムの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム片の製造方法および光学フィルムの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、位相差部材、偏光部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。画像表示装置の用途の広がりに伴い、上記光学部材を含む光学フィルムに対し、用途に応じた形状を有することが望まれている。例えば、所望の形状を有する光学フィルム片の製造が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-103286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、形状によっては、光学フィルム片の製造の歩留まりが著しく低下する場合がある。
【0006】
上記に鑑み、本発明は所望の形状を有する光学フィルム片を歩留まりよく提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法は、平面視にて矩形または正方形の光学フィルム本体を準備することと、前記光学フィルム本体にレーザ光を照射して前記光学フィルム本体を切断し、複数の光学フィルム片を得ることと、を含み、前記光学フィルム本体の第1の辺に対し、前記切断予定の光学フィルム片の長径は略平行に配置され、前記光学フィルム本体の第1の辺に沿う線上に存在する前記切断予定の光学フィルム片の長径の合計は、前記光学フィルム本体の第1の辺の長さよりも長い。
2.上記1に記載の製造方法は、上記準備した光学フィルム本体を、保持板上に配置すること、を含み、前記保持板には、上記光学フィルム本体の切断予定線に対応し、上記レーザ照射により生じる生成物を吸引可能とする貫通溝が形成されていてもよい。
3.上記2に記載の製造方法において、上記準備した光学フィルム本体の切断予定線は、上記保持板の上記貫通溝と平面視で重なる位置に配置されてもよい。
4.上記2または3に記載の製造方法において、上記貫通溝の幅は0.1mm以上3mm以下であってもよい。
5.上記2から4のいずれかに記載の製造方法において、上記貫通溝の幅は、上記照射するレーザ光の径の1倍以上30倍以下であってもよい。
6.上記2から5のいずれかに記載の製造方法において、上記光学フィルム本体は、上記保持板に直に接して配置される犠牲部材を含んでもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載の製造方法において、上記光学フィルム本体において、隣り合う切断予定線の間隔は3mm以下であってもよい。
8.上記1から7のいずれかに記載の製造方法において、上記光学フィルム本体における隣り合う切断予定線の間隔は、上記照射するレーザ光の径の30倍以下であってもよい。
9.上記1から8のいずれかに記載の製造方法において、上記光学フィルム本体における隣り合う切断予定線の間隔は0.3mm以上であってもよい。
10.上記1から9のいずれかに記載の製造方法において、上記光学フィルム本体における隣り合う切断予定線の間隔は、上記照射するレーザ光の径の3倍以上であってもよい。
11.上記1から10のいずれかに記載の製造方法において、上記光学フィルム片は、平面視にて外周が部分的に切り欠かれた切り欠き部と、平面視にて外周が部分的に突出する突出部との少なくとも一方を有してもよい。
【0008】
12.本発明の別の実施形態による光学フィルムの切断方法は、平面視にて矩形または正方形の光学フィルム本体を準備することと、前記光学フィルム本体にレーザ光を照射して前記光学フィルム本体を切断し、複数の光学フィルム片を得ることと、を含み、前記光学フィルム本体の第1の辺に対し、前記切断予定の光学フィルム片の長径は略平行に配置され、前記光学フィルム本体の第1の辺に沿う線上に存在する前記切断予定の光学フィルム片の長径の合計は、前記光学フィルム本体の第1の辺の長さよりも長い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、所望の形状を有する光学フィルム片を歩留まりよく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1つの実施形態に係る光学フィルム本体を上から見た図である。
図2A図1に示す光学フィルム本体を配置する保持板の一例を上から見た図である。
図2B図2Aに示す保持板のB-B断面図である。
図3】VRゴーグルの表示システムの一例の概略の構成を示す模式図である。
図4】光学フィルムの詳細の一例を示す模式的な断面図である。
図5】反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。
図6】比較例の光学フィルム本体を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0012】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0013】
本発明の実施形態による光学フィルムの切断方法は、準備した枚葉状の光学フィルム本体にレーザ光を照射し、光学フィルム本体を切断する工程、を含む。光学フィルム本体を切断することで、例えば、所望の形状を有する光学フィルム片を複数得ることができる。また、レーザを用いることにより、例えば、刃物による切断に比べ、得られる光学フィルム片の形状の自由度が格段に向上し得る。なお、本明細書において、「光学フィルム」は、枚葉状の光学フィルム本体、光学フィルム片および枚葉状の光学フィルム本体を得るための前駆体(例えば、長尺状の光学フィルム本体)の総称として用いる場合がある。ここで、「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状をいい、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状をいう。
【0014】
枚葉状の光学フィルム本体の平面視形状は、矩形または正方形とされ得る。図1は、本発明の1つの実施形態に係る光学フィルム本体を上から見た図である。光学フィルム本体1の平面視形状は、矩形とされている。図1中の破線1aは、切断予定線を示している。切断予定線1aにレーザ光を照射して光学フィルム本体1を切断することにより、複数の光学フィルム片2を得ることができる。図示例では、光学フィルム片2は、長径を有する略楕円形であるが、これに限定されない。例えば、光学フィルム片2は、略円形であってもよいし、角丸矩形状であってもよい。
【0015】
光学フィルム本体1の第1の辺(例えば、長辺)の方向に対し、切断予定の光学フィルム片2の長径は略平行に配置されている。ここで、長径は、切断予定線または外周上で最も離間した2点の距離である。そして、略平行は、0°±5°である場合を包含し、好ましくは0°±3°、より好ましくは0°±1°、さらに好ましくは0°±0.5°である。第1の辺は、例えば、上記長尺状の光学フィルム本体の幅方向に相当する。
【0016】
図示例では、光学フィルム本体1の第1の辺に沿う線1b上に6個の切断予定の光学フィルム片2が存在している。6個の切断予定の光学フィルム片2が、線1bと重なる位置に配置されている。線1b上に存在する切断予定の光学フィルム片2の長径2bの合計は、光学フィルム本体1の第1の辺(線1b)の長さよりも長い。このようにジグザグ状に切断予定の光学フィルム片2を配置することにより、光学フィルム片2を歩留まりよく得ることができる。
【0017】
光学フィルム本体1において、隣り合う切断予定線1aの間隔は、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2.5mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下である。隣り合う切断予定線1aの間隔は、例えば、照射するレーザ光の径の30倍以下であり、より好ましくは25倍以下であり、さらに好ましくは20倍以下である。一方で、隣り合う切断予定線1aの間隔は、例えば0.2mm以上であり、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上である。隣り合う切断予定線1aの間隔は、例えば、照射するレーザ光の径の2倍以上であり、好ましくは3倍以上であり、より好ましくは5倍以上である。このような間隔に設定することにより、例えば、後述する保持板において隣り合う貫通溝の間隔を確保することができ、得られる光学フィルム片2において所望の形状をより正確に実現することができる。また、切断して得られる光学フィルム片2への異物(例えば、レーザ照射により生じ得る生成物)の付着を防止することができる。異物は、主に、隣り合う切断予定線の切断の際に生じた生成物と考えられる。なお、隣り合う切断予定線の間隔は、隣り合う切断予定線と切断予定線との距離の最小値を意味する。
【0018】
切断して得られる得る光学フィルム片2は、平面視にて外周が部分的に切り欠かれた切り欠き部2a、2aが形成されている。切り欠き部2aは、例えば、他の部材に積層する際の位置決め部として機能し得る。図示例では、光学フィルム片に切り欠き部が形成されているが、これに限定されない。例えば、平面視にて外周が部分的に突出する突出部が形成されていてもよい。
【0019】
照射に用いるレーザとしては、光学フィルム本体1を切断し得る限り、任意の適切なレーザを採用し得る。好ましくは、少なくとも8.9μm~10.5μmの範囲内の波長の光を放射するレーザが用いられる。具体例としては、炭酸レーザ(COレーザ)等の気体レーザ、固体レーザ、半導体レーザが挙げられる。レーザ光の照射条件は、例えば、用いるレーザに応じて任意の適切な条件を採用し得る。炭酸レーザを用いる場合、周波数は、例えば1kHz~100kHzである。平均出力は、例えば2W~200Wである。移動速度は、例えば100mm/秒~1000mm/秒である。
【0020】
光学フィルム本体1に照射するレーザ光の径は、例えば10μm~300μmであり、好ましくは50μm~100μmである。
【0021】
レーザ照射の際、典型的には、光学フィルム本体1は保持板上に配置される。図2Aは、図1に示す光学フィルム本体を配置する保持板の一例を上から見た図であり、図2Bは、図2Aに示す保持板のB-B断面図である。保持板3は、略水平面で構成される配置面3aを有している。保持板3には、多数の貫通孔3bが形成されており、貫通孔3bを介して配置面3a上に配置された光学フィルム本体1を吸引することにより、保持板3上に光学フィルム本体1は保持され得る。貫通孔3bの直径は、例えば0.1mm~1.2mmである。
【0022】
保持板3には、貫通溝3cが形成されている。貫通溝3cは、配置される光学フィルム本体1の切断予定線1aに対応して形成されている。このような貫通溝3cが形成されていることにより、レーザ照射により生じ得る生成物(例えば、煙、焼けカス)を光学フィルム本体1のレーザ照射面の反対側から吸引することができる。図示するように、1つの光学フィルム片2に対し、1つの貫通溝3cが形成されていることが好ましい。レーザ照射により生じ得る生成物を効率的に除去する観点から、隣り合う貫通溝3c同士は連通していないことが好ましいが、貫通溝3cの一部は隣り合う貫通溝3cの一部と連通していてもよい。そして、光学フィルム本体1は、その切断予定線1aが保持板3の貫通溝3cと平面視で重なる位置に配置されることが好ましい。このような配置によれば、レーザ照射により生じ得る生成物を効率的に除去し得、例えば、得られる光学フィルム片2に付着する異物の数を低減することができる。図示例のように、光学フィルム片2が切り欠き部および/または突出部を有する場合、特に有用である。具体的には、切り欠き部および/または突出部は、異物が付着しやすい傾向にあることから、レーザ照射により生じ得る生成物を効率的に除去し得ることが好ましい。
【0023】
貫通溝3cの幅は、任意の適切な値に設定され得る。貫通溝3cの幅は、例えば、照射するレーザ光の径、光学フィルム片の形状等に応じて設定され得る。貫通溝3cの幅は、例えば0.1mm以上3mm以下である。貫通溝3cの幅は、例えば、照射するレーザ光の径の1倍以上30倍以下である。
【0024】
光学フィルム本体1に含まれ得る部材(例えば、位相差部材および/または偏光部材)は、光学軸を有し得る。例えば、光学フィルム本体1に含まれ得る部材の光学軸の状態によっては、切断予定線1a(光学フィルム片2)の位置を微調整する場合がある。具体的には、第1の辺(例えば、長辺)の方向に沿う線1bまたは第2の辺(例えば、短辺)の方向に沿う線1cに対する、光学フィルム片2の長径2bの方向のなす角度を微調整する場合がある。このような場合においても、光学フィルム本体1は、その切断予定線1aが保持板3の貫通溝3cと平面視で重なる位置に配置されることが好ましい。
【0025】
光学フィルムは、光学軸を有し得る。例えば、光学フィルムは、位相差部材を含んでもよく、遅相軸および進相軸を有し得る。また例えば、光学フィルムは、偏光部材を含んでもよく、吸収軸および/または反射軸を有し得る。光学フィルムは、任意の適切な画像表示装置に用いられ得る。光学フィルムは、例えば、VRゴーグルに用いられ得る。VRゴーグルにおいては、光学フィルムの光学軸(例えば、反射軸)の方向は極めて高い精度で制御され得る。したがって、切断対象の光学フィルム本体の状態によっては、上記微調整が必要となり得る。
【0026】
図3はVRゴーグルの表示システムの一例の概略の構成を示す模式図であり、表示システムの各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム10は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第1のλ/4部材20と、第2のλ/4部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第1のλ/4部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第2のλ/4部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。
【0027】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0028】
第1のλ/4部材20は、第1のλ/4部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る。第1のλ/4部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0029】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0030】
第2のλ/4部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る。第2のλ/4部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0031】
第1のλ/4部材20から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材22から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0032】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材22により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材22から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0033】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0034】
表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第1のλ/4部材20の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第2のλ/4部材22の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0035】
第1のλ/4部材20の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材20は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材20のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0036】
第2のλ/4部材22の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材22は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材22のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0037】
上記光学フィルムは、例えば、上記表示システムに備えられる部材を含むことができる。具体的には、光学フィルムは、λ/4部材等の位相差部材を含むことができる。また、光学フィルムは、反射型偏光部材、吸収型偏光部材等の偏光部材を含むことができる。さらに、光学フィルムは、保護部材、隣り合う部材を一体化するための接着層等の他の部材を含むことができる。光学フィルムの厚みは、例えば、含まれる部材の種類、数により異なるが、例えば50μm~400μmである。上記表示システムに適用される光学フィルムは、第一レンズ部または第二レンズ部の形状に対応する形状を有し得る。例えば、略楕円形、略円形等の形状に設計され得る。この場合、光学フィルムは第一レンズ部または第二レンズ部に一体に設けられ得る。
【0038】
図4は、光学フィルムの詳細の一例を示す模式的な断面図である。光学フィルム片2(光学フィルム本体1)は、反射型偏光部材14と、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に配置され得る接着層(例えば、粘着剤層)とを含んでいる。光学フィルム2は、例えば、視認性向上の観点から、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に配置され得る吸収型偏光部材28をさらに含んでいる。吸収型偏光部材28は、反射型偏光部材14の前方に接着層(例えば、粘着剤層)42を介して積層されている。吸収型偏光部材28は、少なくとも吸収型偏光膜を含む。図4に示すように、吸収型偏光部材28が吸収型偏光膜以外の部材(例えば、保護層)を含まない場合は、吸収型偏光部材28は吸収型偏光膜に相当し得る。そして、吸収型偏光膜は反射型偏光部材14に隣接して配置され得る。反射型偏光部材14の反射軸と吸収型偏光部材28に含まれる吸収型偏光膜の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材14の透過軸と吸収型偏光部材28に含まれる吸収型偏光膜の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。接着層を介して積層することにより、反射型偏光部材14と吸収型偏光部材28とが固定され、反射軸と吸収軸(透過軸と透過軸)との軸配置のズレを防止することができる。また、反射型偏光部材14と吸収型偏光部材28との間に形成され得る空気層による悪影響を抑制することができる。なお、本明細書において、隣接とは、直接隣り合っているだけでなく、接着層を介して隣り合っていることも包含する。
【0039】
光学フィルム2は、反射型偏光部材14の後方に配置され得る保護部材31をさらに含んでいる。保護部材31は、反射型偏光部材14に接着層(例えば、粘着剤層)41を介して積層されている。
【0040】
光学フィルム2は、図4に示すように、吸収型偏光部材28と第二レンズ部24との間に配置され得る第3のλ/4部材30をさらに含んでいてもよい。第3のλ/4部材30は、吸収型偏光部材28に接着層(例えば、粘着剤層)43を介して積層されている。吸収型偏光部材28の吸収軸と第3のλ/4部材30の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。このような部材を設けることにより、例えば、第二レンズ部24側からの外光の反射を防止することができる。第3のλ/4部材30の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第3のλ/4部材30は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第3のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0041】
図示例では、光学フィルム2は、保護部材31に対して剥離可能に貼り合わせられた表面保護フィルム51を含んでいる。表面保護フィルム51は、光学フィルム2が使用に供されるまで(例えば、第二レンズ部24に積層されるまで)に、もしくは、最終製品(例えば、VRゴーグル)の製造過程において剥離されてもよいし、最終製品にそのまま搭載されてもよい。光学フィルム2は、最も外側に配置される犠牲部材52を含んでいる。上記レーザ照射において、保持板の配置面に犠牲部材52が直に接するように光学フィルム本体1を配置することにより、吸引による吸引痕は犠牲部材52に発生し得る。図示例では、光学フィルム2は、被着体(例えば、第二レンズ部24)と一体化させるための、接着層(例えば、粘着剤層)44を含んでおり、接着層44の表面に、犠牲部材52が貼り合わせられている。犠牲部材52を、はく離ライナーとして機能させ得る。例えば、犠牲部材52により、接着層44を保護することができる。
【0042】
上記λ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。λ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0043】
λ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0044】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。λ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0045】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、λ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂およびλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0046】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されるλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0047】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。λ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物がλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0048】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0049】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0050】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0051】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0052】
液晶配向固化層で構成される第2のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0053】
上記反射型偏光部材は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光を反射し得る。反射型偏光部材としては、代表的には、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。この場合、反射型偏光部材の厚みは、例えば10μm~150μmであり、好ましくは20μm~100μmであり、さらに好ましくは30μm~60μmである。
【0054】
図5は、反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。多層構造14aは、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとを交互に有する。多層構造を構成する層の総数は、50~1000であってもよい。例えば、A層のx軸方向の屈折率nxはy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一であり、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となり得る。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2~0.3である。
【0055】
上記A層は、代表的には、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。上記B層は、代表的には、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。上記多層構造は、共押出と延伸とを組み合わせて形成され得る。例えば、A層を構成する材料とB層を構成する材料とを押し出した後、多層化する(例えば、マルチプライヤーを用いて)。次いで、得られた多層積層体を延伸する。図示例のx軸方向は、延伸方向に対応し得る。
【0056】
反射型偏光フィルムの市販品として、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0057】
反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の直交透過率(Tc)は、例えば0.001%~3%であり得る。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%であり、好ましくは45%~47%である。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。
【0058】
上記直交透過率、単体透過率および偏光度は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。偏光度Pは、紫外可視分光光度計を用いて、単体透過率Ts、平行透過率Tpおよび直交透過率Tcを測定し、得られたTpおよびTcから、下記式により求めることができる。なお、Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0059】
上記吸収型偏光部材は、吸収型偏光膜を含む。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.8%以上である。
【0060】
吸収型偏光膜は、代表的には、ヨウ素、有機染料等の二色性物質を含む膜から構成される。吸収型偏光膜の厚みは、例えば10μm以下であり、好ましくは9μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは7μm以下である。一方、吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上である。
【0061】
例えば、吸収型偏光膜は、液晶化合物から構成され得る。液晶化合物から構成される吸収型偏光膜の厚みは、例えば4μm以下とすることができ、3μm以下としてもよく、2μm以下としてもよい。
【0062】
上記液晶化合物としては、好ましくは、リオトロピック液晶性ポリマーが用いられる。液晶化合物は、典型的には、吸収型偏光膜において所定方向に配向しており、その配向状態が固定されている。具体的には、吸収型偏光膜は、液晶化合物の配向固化層であり得る。液晶化合物の液晶相の構成としては、例えば、ネマチック相、スメクチック相、および、カラムナー相のいずれであってもよい。
【0063】
上記リオトロピック液晶性ポリマーは、例えば、環構造と、連結基と、スルホ基および/またはスルホン酸塩基とを含む構成単位を有している。環構造は、代表的には、リオトロピック液晶性ポリマーの主鎖に含まれる。各構成単位に含まれる環構造の個数は、例えば1以上5以下である。環構造として、代表的には、芳香族環が挙げられる。環構造としては、例えば、ベンゼン環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、ビフェニル環、および、それらの縮合環が挙げられる。好ましくは、ベンゼン環が用いられる。連結基は、例えば、二つの環構造を連結している。連結基の両末端は、例えば、環構造に直接結合している。連結基としては、例えば、sp炭素含有連結基、アミド結合が挙げられる。好ましくは、sp炭素含有連結基が用いられる。sp炭素含有連結基の具体例としては、アルキレン基、オキシアルキレン基が挙げられる。好ましくは、炭素数1から8のアルキレン基が用いられ、より好ましくは、メチレン基、エチレン基が用いられる。
【0064】
スルホ基および/またはスルホン酸塩基は、リオトロピック液晶性ポリマーに水溶性およびリオトロピック液晶性を付与し得る。スルホ基および/またはスルホン酸塩基は、例えば、環構造に直接結合している。各構成単位に含まれるスルホ基および/またはスルホン酸塩基の個数は、例えば1以上5以下である。スルホン酸塩基のカウンターカチオンとしては、代表的には、アルカリ金属カチオンが挙げられ、好ましくは、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。スルホン酸塩基のカウンターカチオンを、より水溶性の低いカチオンに交換(いわゆる不溶化処理)することで、耐水性に優れた吸収型偏光膜が得られ得る。アルカリ金属カチオンよりも水溶性の低いカチオンとして、代表的には、アンモニウムイオン、多価金属カチオンが挙げられる。アンモニウムイオンは、代表的には、分子中に2個以上の窒素原子を有する有機窒素化合物のアンモニウムイオンが用いられる。有機窒素化合物に含まれる窒素原子の数は、特に限定されないが、好ましくは2個~5個であり、より好ましくは2個~3個であり、さらに好ましくは2個である。多価金属カチオンとしては、例えば、アルカリ土類金属カチオン(例えば、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+)、遷移金属カチオン(例えば、La3+、Fe3+、Cr3+、Mn2+、Cu2+、Ce3+)、貧金属カチオン(例えば、Al3+、Pb2+、Sn2+、Zn2+)が挙げられる。
【0065】
リオトロピック液晶性ポリマーの構成単位としては、例えば、下記式(1)から(23)に示す構造が挙げられる。ここで、式(1)、(3)~(10)は、アルキレン基(連結基)およびベンゼン環(環構造)を有する構成単位を示す。式(2)は、アミド結合(連結基)およびベンゼン環(環構造)を有する構成単位を示す。式(11)~(19)は、アルキレン基(連結基)および縮合環(環構造)を有する構成単位を示す。式(20)~(23)は、オキシアルキレン基(連結基)およびベンゼン環(環構造)を有する構成単位を示す。下記式(2)~(23)では、便宜上、スルホ基を含んでいるが、スルホン酸塩基であってもよい。
【0066】
【化1】
(式(1)中、Xは、水素原子、あるいは、アンモニウムイオン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオンまたは貧金属カチオンから選択されるカウンターカチオンを示す。)
【0067】
【化2】
【0068】
【化3】
【0069】
【化4】
【0070】
【化5】
【0071】
このような構成単位の中では、アルキレン基(連結基)およびベンゼン環(環構造)を有する構成単位(上記式(1)、(3)~(10))、アミド結合(連結基)およびベンゼン環(環構造)を有する構成単位(上記式(2))が好ましく用いられ、上記式(1)で示される構成単位がより好ましく用いられる。リオトロピック液晶性ポリマーは、例えば、上記構成単位のうち、1つの構成単位を単独で有していてもよく、複数の構成単位を組み合わせて有していてもよい。好ましくは、リオトロピック液晶性ポリマーは、上記構成単位のうち1つの構成単位を単独で有するホモポリマー(単独重合体)であり、より好ましくは、上記式(1)または(2)で示される構成単位のホモポリマーであり、さらに好ましくは、上記式(1)で示される構成単位のホモポリマーである。
【0072】
リオトロピック液晶性ポリマーにおいて、構成単位の繰り返し数は、例えば25以上1000以下である。リオトロピック液晶性ポリマー自体は、透明であり得、実質的に吸収二色性を示さない。リオトロピック液晶性ポリマーの単体透過率は、例えば85%以上100%以下である。
【0073】
1つの実施形態においては、液晶化合物から構成される吸収型偏光膜は、二色性物質として吸収二色性を付与し得る有機染料を含み得る。このような有機染料としては、例えば、下記式(24)~式(26)に示される有機染料が挙げられる。
【化6】
(式(24)において、Aはスルホ基またはスルホン酸塩基を示す。mは1以上4以下を示す。Bは塩素原子を示す。pは0以上2以下を示す。m+pは4以下である。Aがスルホン酸塩基である場合、そのカウンターカチオンは、Na、K、Cs、または、NH である。)
【化7】
(式(25)において、Aはスルホ基またはスルホン酸塩基を示す。mは1以上4以下を示す。Bは水酸基を示す。pは0以上4以下を示す。Cはスルホニル基を示す。nは0以上2以下を示す。Rは酸素原子を示す。qは0以上4以下を示す。m+p+qは6以下である。Aがスルホン酸塩基である場合、そのカウンターカチオンは、Na、K、Cs、または、NH である。)
【化8】
(式(26)において、Aはスルホ基またはスルホン酸塩基を示す。Aがスルホン酸塩基である場合、そのカウンターカチオンは、Na、K、Cs、または、NH である。)
【0074】
また、有機染料として、例えば、特表2004-528603号公報の段落[0035]~[0037]に記載されているアゾ染料、アゾキシ染料、アゾメチン染料、スチルベン染料、ポリメチン染料、陽イオン性染料、ナフタレン系染料、ペリレン系染料、アンスロン系染料;米国特許第5,007,942号または米国特許第5,340,504号に記載されているスチルベン染料;欧州特許第 0 530 106 号、欧州特許出願公開第 0 626 598 号または米国特許第5318856号に記載されているアゾおよび金属化染料が挙げられる。
【0075】
また、有機染料として、例えば、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトイエロー28,C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトイエロー142、C.I.ダイレクトオレンジ6、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトオレンジ39、C.I.ダイレクトオレンジ72、C.I.ダイレクトオレンジ107、C.I.ダイレクトレッド2、C.I.ダイレクトレッド31、C.I.ダイレクトレッド79、C.I.ダイレクトレッド81、C.I.ダイレクトレッド240、C.I.ダイレクトレッド247、C.I.ダイレクトバイオレット9、C.I.ダイレクトバイオレット48、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー15、C.I.ダイレクトブルー71、C.I.ダイレクトブルー78、C.I.ダイレクトブルー98、C.I.ダイレクトブルー168、C.I.ダイレクトブルー202、C.I.ダイレクトブラウン106、C.I.ダイレクトブラウン223、C.I.ダイレクトグリーン85などの直接染料;C.I.アクティブイエロー1、C.I.アクティブレッド1、C.I.アクティブレッド6、C.I.アクティブレッド14、C.I.アクティブレッド46、C.I.アクティブバイオレット1、C.I.アクティブブルー9、C.I.アクティブブルー10などの活性染料;C.I.アシッドオレンジ63、C.I.アシッドレッド85、C.I.アシッドレッド144、C.I.アシッドレッド152、C.I.アシッドブラウン32、C.I.アシッドバイオレット50、C.I.アシッドブルー18、C.I.アシッドブルー44、C.I.アシッドブルー61、C.I.アシッドブルー102、C.I.アシッドブラック21などの酸性染料;C.I.ベーシックレッド12、ベーシックブラウン(C.I.33500)、C.I.ベーシックブラックなどの陽イオン性染料が挙げられる。
【0076】
さらに、有機染料として、例えば、米国特許出願公開第2001/0029638号に記載の有機分子が挙げられる。具体例としては、ポリメチン染料(例えば、擬イソシアニン、ピアシアノール)、トリアリールメタン染料(例えば、Basic Turquose、Acid Light Blue 3)、ジアミノキサンテン染料(例えば、スルホローダミン)、アクリジン染料(例えば、ベーシック・イエローK)、スルホン化アクリジン染料(例えば、トランス-キナクリドン)、アントラキノン染料の水溶性誘導体(例えば、アクティバイト・ライト・ブルーKX)、スルホン化バット染料(例えば、フラバントロン、インダンスレン・イエロー、バット・イエロー4K、バット・ダーク・グリーンG、バット・バイオレットC、インダントロン、ペリレン・バイオレット、バット・スカーレット2G)、アゾ染料(例えば、ベンゾプルプリン4B、ダイレクト・ライトファースト・イエローO)、水溶性ジアジン染料(例えば、アシッド・ダーク・ブルー3)、スルホン化ジオキサジン染料(例えば、ピグメント・バイオレット・ジオキサジン)、可溶性チアジン染料(例えば、メチレンブルー)、水溶性フタロシアニン誘導体(例えば、銅オクタカルボキシフタロシアニン塩)、クロモグリカネート二ナトリウム、ペリレンテトラカルボン酸ジイミドレッド(PADR)、PADRのベンゾイミダゾール(すなわち紫)、ナフタレンテトラカルボン酸(すなわち黄、濃い赤紫)、フェナントロ-9´,10´:2,3‐キノキサリン、ベンゾイミダゾール類のスルホ誘導体が挙げられる。
【0077】
このような有機染料は、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましい実施形態においては、上記式(24)~(26)に示される有機染料を組み合わせて用いる。
【0078】
液晶化合物から構成される吸収型偏光膜は、例えば、水系溶媒に上記リオトロピック液晶性ポリマーを溶解させた液晶ポリマー溶液を基材に塗工・乾燥してリオトロピック液晶層を形成した後、リオトロピック液晶層を染色することにより得ることができる。染色後、過剰な染色液は除去され得る。
【0079】
上記水系溶媒として、例えば、水、水とアルコールとの混合溶媒が挙げられ、好ましくは水が用いられる。液晶ポリマー溶液における固形分濃度は、例えば5質量%以上30質量%以下であり、好ましくは10質量%以上20質量%以下である。液晶ポリマー溶液の塗工の際、基材の塗工面にはプライマー層(例えば、ポリエチレンイミンを含む)が形成されていてもよい。プライマー層の厚みは、例えば10nm以上50nm以下である。液晶ポリマー溶液は、せん断応力を付与し得る塗工方法により塗工され得る。塗工には、代表的にはワイヤーバーが用いられる。液晶ポリマー溶液の塗工膜を乾燥して、リオトロピック液晶層が形成され得る。乾燥温度は、例えば40℃以上80℃以下であり、好ましくは50℃以上70℃以下である。乾燥時間は、例えば10秒以上10分以下であり、好ましくは5分以下である。リオトロピック液晶性ポリマーは、塗工時のせん断応力により配向し得、リオトロピック液晶層には、塗工方向に遅相軸をもつ位相差が発現し得る。
【0080】
上記染色は、代表的には、リオトロピック液晶層を、二色性物質を含む染色液に浸漬することより行われ得る。染色時の染色液の温度は、例えば10℃以上50℃以下であり、好ましくは20℃以上40℃以下である。浸漬時間(染色時間)は、例えば5秒以上300秒以下であり、好ましくは30秒以上180秒以下である。
【0081】
二色性物質がヨウ素である場合、染色液は、好ましくはヨウ素化合物をさらに含み、より好ましくはヨウ素化合物および多価金属塩をさらに含む。ヨウ素化合物として、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。好ましくは、ヨウ化カリウムが用いられる。染色液におけるヨウ素とヨウ素化合物との質量比(ヨウ素:ヨウ素化合物)は、例えば1:5~1:30であり、好ましくは1:5~1:15である。染色液が多価金属塩を含むことにより、吸収型偏光膜に耐水性を付与され得る。多価金属塩としては、例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩が挙げられる。多価金属塩の対金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属が挙げられ、具体的には、バリウム、アルミニウム、鉛、クロム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、サマリウム、イットリウム、銅、鉄が挙げられる。好ましくは、塩化ストロンチウムが用いられる。染色液におけるヨウ素と多価金属塩との質量比(ヨウ素:多価金属塩)は、例えば1:5~1:30であり、好ましくは1:5~1:15である。
【0082】
二色性物質が有機染料である場合、染色液における有機染料の固形分濃度は、例えば0.1質量%以上3.0質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以上である。また、上記式(24)~(26)で示される有機染料が併用される場合、式(24):式(25):式(26)の質量比は、例えば、40~60:10~30:10~30である。
【0083】
上記保護部材は、代表的には、基材を含む。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~40μmである。
【0084】
保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する積層フィルムで構成される。積層フィルムの厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは15μm~60μmであり、さらに好ましくは20μm~45μmである。表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0085】
表面処理層は、代表的には、ハードコート層を含む。ハードコート層は、代表的には、基材にハードコート層形成材料を塗布し、塗布層を硬化させることにより形成される。ハードコート層形成材料は、代表的には、層形成成分としての硬化性化合物を含む。硬化性化合物の硬化メカニズムとしては、例えば、熱硬化型、光硬化型が挙げられる。硬化性化合物としては、例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマーが挙げられる。好ましくは、硬化性化合物として多官能モノマーまたはオリゴマーが用いられる。多官能モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーまたはオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー、エポキシ系モノマーまたはオリゴマー、シリコーン系モノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0086】
ハードコート層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0087】
表面処理層は、機能層を含むことが好ましい。機能層は、好ましくは、反射防止層として機能する。好ましい実施形態においては、表面処理層は、上記基材側から、上記ハードコート層と反射防止層とをこの順に含む。機能層の厚みは、好ましくは0.05μm~10μmであり、より好ましくは0.1μm~5μmであり、さらに好ましくは0.1μm~2μmである。
【0088】
上記表面保護フィルムとしては、代表的には、基材フィルムと粘着剤層との積層物が用いられる。基材フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系ポリマー;が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。基材フィルムの厚みは、好ましくは15μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmであり、さらに好ましくは25μm~50μmである。粘着剤層の厚みは、例えば5μm~15μmである。
【0089】
上記犠牲部材としては、代表的には、任意の適切なプラスチックフィルムで構成され得る。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。上述のとおり、犠牲部材は、はく離ライナーとして機能し得る。はく離ライナーとしては、表面が剥離剤でコートされたプラスチックフィルムが好ましく用いられる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。
【0090】
犠牲部材の厚みは、好ましくは36μm以上であり、より好ましくは48μm以上であり、さらに好ましくは58μm以上である。このような厚みによれば、例えば、犠牲部材に隣接して配置される部材または層にまで上記吸引痕が残ることを防止することができる。犠牲部材の厚みは、例えば100μm以下である。
【0091】
犠牲部材の弾性率は、好ましくは1×10Pa以上であり、より好ましくは1×10Pa以上であり、さらに好ましくは2×10Pa以上である。このような弾性率によれば、例えば、犠牲部材に隣接して配置される部材または層にまで上記吸引痕が残ることを防止することができる。犠牲部材の弾性率は、例えば1×1010Pa以下である。
【0092】
図示するように、光学フィルム2に含まれる各部材は、接着層を介して一体化され得る。また、光学フィルム2は、接着層(例えば、粘着剤層)により、上記表示システムのレンズ部に一体に設けられてもよい。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmであり、好ましくは3μm~20μmであり、さらに好ましくは5μm~15μmである。
【実施例0093】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚み、位相差値および弾性率は下記の測定方法により測定した値である。また、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<位相差値>
ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃における各波長での位相差値を測定した。
<弾性率>
測定対象を、JIS K 6734:2000に基づき、平行部幅10mm、長さ40mmの引張試験ダンベルに成形し、JIS K 7161:1994に準拠して引張試験を行い、引張弾性率を求めた。
【0094】
[実施例1]
(吸収型偏光膜の作製)
米国特許出願公開第2020/0110209号に準じて、プライマー組成物を調製した。得られたプライマー組成物をワイヤーバーにより、厚み25μmのTACフィルム(コニカミノルタ社製、「KC2UA」)に塗工し、塗工膜を60℃で3分乾燥して、30nmの厚みのプライマー層を形成した。
次いで、上記式(1)の構成単位からなるリオトロピック液晶性ポリマーを、14質量%の固形分濃度になるように水に溶解させた。リオトロピック液晶性ポリマーとして、米国特許出願公開第2020/0110209号のExample 17に準じて、Birefringent Aromatic Polymer (Structure P1)を作製した。リオトロピック液晶性ポリマーは、スルホン酸ナトリウム塩基を有していた。得られた液晶ポリマー水溶液をワイヤーバーで上記プライマー層上に塗工し、60℃で3分乾燥して、厚み2μmのリオトロピック液晶層を形成した。本材料は塗工時のせん断応力により分子配向するため、塗工方向に遅相軸をもつ位相差が発現していた。
次いで、上記式(24)~(26)に示す有機染料を米国特許出願公開第2020/0110209号に準じて調製した。その後、上記式(24)~(26)に示す有機染料を、式(24):式(25):式(26)=18:7:8の質量比で水に溶解させて、固形分濃度1.9質量%の染色液を調製した。
次いで、上記リオトロピック液晶層を上記染色液に90秒間浸漬して染色した後、10質量%のSrCl水溶液に3秒浸漬して不溶化処理を施した。その後、リオトロピック液晶層を純水に3秒間浸漬して洗浄した後、圧縮空気で過剰な水を吹き飛ばして風乾した。
こうして、TACフィルム上に、厚み2μmの吸収型偏光膜を形成した。
【0095】
(λ/4部材の作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0096】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み47μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムのRe(550)は143nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.12であった。
【0097】
(保護部材の作製)
ラクトン環構造を有するアクリルフィルム(厚み40μm)に、下記のハードコート層形成材料を塗布して90℃で1分間加熱し、加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚み4μmのハードコート層が形成されたアクリルフィルム(厚み44μm)を作製した。
次いで、上記ハードコート層上に、下記の反射防止層形成用塗工液Aをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み140nmの反射防止層Aを形成した。
続いて、反射防止層A上に、下記の反射防止層形成用塗工液Bをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み105nmの反射防止層Bを形成した。
こうして、保護部材(厚み44μm)を得た。
【0098】
(ハードコート層形成材料)
ウレタンアクリルオリゴマー(新中村化学社製、「NKオリゴ UA-53H」)50部、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)20部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)1部および光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、「イルガキュア907」)3部を混合し、固形分濃度が50%になるようにメチルイソブチルケトンで希釈して、ハードコート層形成材料を調製した。
【0099】
(反射防止層形成用塗工液A)
多官能アクリレート(荒川化学工業株式会社製、商品名「オプスターKZ6728」、固形分20重量%)100重量部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)3重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒として酢酸ブチルを用いて固形分が12重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Aを調製した。
【0100】
(反射防止層形成用塗工液B)
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)150重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)50重量部、フッ素元素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒としてTBA(ターシャリーブチルアルコール)、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加して全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Bを調製した。
【0101】
(光学フィルムの作製)
予め、厚み38μmのPET系フィルムに厚み15μmの粘着剤層が形成された表面保護フィルム(日東電工社製の「RP397CK」)が貼り合わせられた上記保護部材(ハードコート層および反射防止層が形成されたアクリルフィルム)に、厚み11μmの粘着剤層を介して、反射型偏光フィルム(日東電工社製の「APCF」)を貼り合わせた。ここで、保護部材のアクリルフィルムが反射型偏光フィルム側に位置するように貼り合わせた。
次いで、反射型偏光フィルムに、厚み11μmの粘着剤層を介して、吸収型偏光部材として上記吸収型偏光膜のみを、反射型偏光フィルムの反射軸と吸収型偏光膜の吸収軸とが互いに平行に配置されるように貼り合わせた。具体的には、貼り合わせ後、吸収型偏光膜からTACフィルム(プライマー層を含む)を剥離した。
次いで、吸収型偏光膜に、厚み5μmの粘着剤層を介して、上記λ/4部材を、吸収型偏光膜の吸収軸とλ/4部材の遅相軸とが45°の角度をなすように貼り合わせた。
次いで、λ/4部材に、厚み15μmの粘着剤層を形成し、この粘着剤層表面に、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm、弾性率3.5×10Pa、三菱ケミカル社製の「ダイアホイルMHE50」)を貼り合わせ、長尺状の光学フィルムを得た。
【0102】
(光学フィルム本体の作製)
長尺状の光学フィルムを切断し、図1に示すような枚葉状(矩形状)の光学フィルム本体を得た。得られた光学フィルム本体の長辺の長さは310mmであり、短辺の長さは230mmであった。なお、得られた光学フィルム本体の長辺は長尺状の光学フィルムの幅方向に対応し、得られた光学フィルム本体の短辺は長尺状の光学フィルムの長尺方向に対応する。
【0103】
(光学フィルム本体の切断)
図2に示すような、多数の貫通孔と幅が1mmの貫通溝が形成された保持板を準備し、保持板の上面(配置面)に光学フィルム本体を配置して保持板の下面側から光学フィルム本体を吸引し、保持板に光学フィルム本体を保持させた。この状態で、光学フィルム本体に対し、図1に示すような切断予定線を設定し、炭酸レーザ(武井電機工業株式会社製の「TLSM-401」、波長:9360nm、周波数:20kHz)により径が100μmのレーザ光を移動速度500mm/秒にて照射し、光学フィルム本体を切断して光学フィルム片を得た。レーザ照射の際、切断予定線が保持板の貫通溝に平面視で重なっていた。ここで、光学フィルム本体の長辺の長さ(310mm)に対し、長辺に沿う線1b上に存在する6個の光学フィルム片の長径の合計は320mmであった。また、隣り合う切断予定線の間隔は1.1mmとした。
【0104】
[実施例2]
隣り合う切断予定線の間隔を0.3mmとしたこと、これに伴い、図2に示すような、多数の貫通孔と幅が0.2mmの貫通溝が形成された保持板を準備したこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルム片を得た。
【0105】
[比較例1]
光学フィルム本体の長辺の長さを361mmとしたこと、および、図6に示すように、切断予定線(得られる光学フィルム片)をジグザグ状に配置せずに、隣り合う切断予定線の間隔を4mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルム片を得た。なお、切断予定線に対応させた貫通溝を有する保持板を別途用意した。
【0106】
実施例1および実施例2においては、比較例1に比べて、同じ数(24個)の光学フィルム片を得る上で、光学フィルム本体の長辺を14.1%小さくすることができ、歩留まりを向上させ得る。光学フィルム本体の長辺を小さくできたことにより、レーザ照射において、照射により発生する煙や焼けカス(Fume)を、照射雰囲気の気流により効率よく発散することができた。また、レーザヘッドの移動距離を短くすることができ、タクトタイムを削減することができた。このように、ESG(環境・社会・ガバナンス)評価や生産コストの観点からも実施例は優れ得る。
【0107】
得られた光学フィルム片を光学顕微鏡(オリンパス株式会社製の「MX61」)で観察したところ、実施例2では切り欠き部において異物(サイズ150μm未満の異物)の付着が確認されたのに対し、実施例1および比較例1では異物が確認されなかった。光学フィルム片の切り欠き部に異物が付着していると、被着体(例えば、レンズ部)に光学フィルム片を一体化する際に位置決め(例えば、光学軸の軸合わせ)が精度よく行えない可能性がある。そして、例えば、VRゴーグルにおいて、表示品位が損なわれる可能性がある。
【0108】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の実施形態に係る光学フィルム片は、例えば、VRゴーグル等の表示体に用いられ得る。
【符号の説明】
【0110】
1 光学フィルム本体、1a 切断予定線、2 光学フィルム片(光学フィルム)、2a 切り欠き部、3 保持板、3a 配置面、3b 貫通孔、3c 貫通溝、10 表示システム、12 表示素子、14 反射型偏光部材、16 第一レンズ部、18 ハーフミラー、20 第1のλ/4部材、22 第2のλ/4部材、24 第二レンズ部、26 ユーザの目、28 吸収型偏光部材、30 第3のλ/4部材、31 保護部材、41 接着層、42 接着層、43 接着層、44 接着層、51 表面保護フィルム、52 犠牲部材。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6