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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171907
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ターゲット付ネット
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20241205BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20241205BHJP
   D04C 1/02 20060101ALI20241205BHJP
   D04C 1/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01B11/24 Z
G02B5/08 Z
D04C1/02
D04C1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089192
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅史
【テーマコード(参考)】
2F065
2H042
4L046
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA21
2F065AA53
2F065BB27
2F065GG04
2F065LL18
2F065MM11
2H042DA20
4L046AA01
4L046AA15
4L046AA24
4L046AA25
4L046BA00
4L046BB00
(57)【要約】
【課題】3次元レーザースキャンを効率よく実施するのに適したターゲット付ネットを提供する。
【解決手段】本発明のターゲット付ネットXは、3次元レーザースキャン用であって、ネット材10と、複数の反射ターゲット20とを備える。ネット材10は、表面粘着性を有する網目状の線材11を有する。複数の反射ターゲット20は、ネット材10に取り付けられ、且つ互いに離れている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粘着性を有する網目状の線材を有するネット材と、
前記ネット材に取り付けられた複数の反射ターゲットであって、互いに離れている複数の反射ターゲットとを備える、3次元レーザースキャン用のターゲット付ネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元レーザースキャン用の反射ターゲットの供給材に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の立体形状を測定するための3次元レーザースキャンの技術が知られている。3次元レーザースキャンでは、レーザースキャナーと、複数の反射ターゲットが用いられる。反射ターゲットは、レーザースキャンにおける測定基準であり、反射ターゲットシールとして市販されている。従来の3次元レーザースキャンは、例えば次のようにして実施される。
【0003】
まず、測定対象物の表面に、複数の反射ターゲットシールを、互いに間隔を空けて一つひとつ貼り付ける。反射ターゲットシールの数および反射ターゲットシール間の間隔は、測定対象物の大きさ、および、要求される測定精度に応じて、決定される。次に、レーザースキャナーにより、反射ターゲット付きの測定対象物に測定レーザーを照射して、同対象物をスキャンする。スキャンにより、複数の反射ターゲットの3次元(3D)位置座標が得られ、これら位置座標を測定基準として、測定対象物表面の形状の情報(連続的な3D座標)が得られる。
【0004】
一方、下記の特許文献1には、ターゲット付シートが記載されている。ターゲット付シートは、布製のシートと、複数の反射ターゲットとを備える。布製シートは、表面と裏面とを有する。複数の反射ターゲットは、互いに所定の間隔を空けて、布製シートの表面に取り付けられている。ターゲット付シートの裏面を測定対象物の表面に貼り合わせることにより、測定対象物に対して複数の反射ターゲットを一括的に配置できる。このようなターゲット付シートによると、測定対象物に対して各反射ターゲットを貼り付ける作業が必要ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-159610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のターゲット付シートでは、複数の反射ターゲットは布製シートに取り付けられている。レーザースキャン用の測定レーザーは、布製シートを透過しない。そのため、ターゲット付シートを用いて3次元レーザースキャンを実施する場合、反射ターゲット間の領域については、測定対象物の表面をスキャンできない。これに対し、各反射ターゲット(布製シートの表面に配置されている)の3D位置座標は得られる。このようなターゲット付シートによると、測定対象物について、所定方向における最大寸法などの寸法を測定できるものの、表面の凹凸形状を測定できない。すなわち、特許文献1のターゲット付シートによると、3次元レーザースキャンによる測定が限定的な範囲での使用に制限される。
【0007】
本発明は、3次元レーザースキャンを効率よく実施するのに適したターゲット付ネットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面粘着性を有する網目状の線材を有するネット材と、前記ネット材に取り付けられた複数の反射ターゲットであって、互いに離れている複数の反射ターゲットとを備える、3次元レーザースキャン用のターゲット付ネットを含む。
【発明の効果】
【0009】
ターゲット付ネットは、上記のように、表面粘着性を有する網目状の線材を有するネット材と、当該ネット材に取り付けられた複数の反射ターゲットとを備える。このようなターゲット付ネットのネット材を、3次元レーザースキャンの測定対象物に対して貼り付けることにより、測定対象物に対して複数の反射ターゲットを一括的に配置できる。そのため、ターゲット付ネットによると、測定対象物に対して各反射ターゲットを一つひとつ貼り付ける作業が必要ない。このようなターゲット付ネットは、3次元レーザースキャンに要する労力および時間の削減に役立つ。また、ターゲット付ネットによると、測定対象物に対して配置された複数の反射ターゲットの間では、測定対象物の表面が露出している。そのため、ターゲット付ネットによると、測定対象物の表面の凹凸形状を3次元レーザースキャンによって適切に測定できる。以上のように、ターゲット付ネットは、3次元レーザースキャンを効率よく実施するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のターゲット付ネットの平面図である。
図2図1に示すターゲット付ネットの部分拡大平面図である。
図3図1に示すターゲット付ネットの部分拡大斜視図である。
図4図1に示すターゲット付ネットの製造方法の一例を表す。図4Aは、線材を用意する工程を表し、図4Bは、線材に台座を取り付ける工程を表し、図4Cは、台座に反射ターゲットを取り付ける工程を表す。
図5図1に示すターゲット付ネットの使用方法の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態のターゲット付ネットXは、図1および図2に示すように、ネット材10と、複数の反射ターゲット20とを備える。ターゲット付ネットXは、3次元レーザースキャンのための反射ターゲットの供給材である。すなわち、ターゲット付ネットXは、3次元レーザースキャン用のターゲット付ネットである。
【0012】
ネット材10は、ターゲット付ネットXの基材である。ネット材10は、本実施形態では、網目状の線材11と、複数の台座12とを有する。ネット材10は、全体が広げられた状態において、所定の平面視形状を有する。ネット材10の平面視形状としては、例えば、四角形、角丸四角形、および円形が挙げられる。四角形としては正方形および長方形が挙げられる。角丸四角形としては、角丸正方形および角丸長方形が挙げられる(図1では、広げられたネット材10の平面視形状が長方形である場合を例示的に示す)。ネット材10について図1に示す長さL1(ネット材10の長手方向の長さ)は、測定対象物のサイズに応じて、異なり、適宜に設定される。ネット材10について図1に示す幅L2(前記長手方向と直交する方向の長さ)は、測定対象物のサイズに応じて、異なり、適宜に設定される。
【0013】
網目状の線材11は、複数の直線状のライン部11aと、複数の連結部11bとを有する。複数のライン部11aの端部が、連結部を介して連結されている(二つのライン部11aの端部が連結されている場合を例示的に図示する)。複数のライン部11aおよび複数の連結部11bにより、網目構造が形成されている。二つの連結部11b間のライン部11aの長さは、当該ライン部11aの両端部に配置された連結部11b間の最大距離に相当する。
【0014】
線材11は、例えば、繊維材から形成されている。繊維材としては、例えば、グラスファイバー(ガラス繊維)、樹脂繊維、および金属線が挙げられる。グラスファイバーの材料としては、例えば、アルカリガラス、および無アルカリガラスが挙げられる。樹脂繊維の材料としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリアミドが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド46、およびポリアミド66が挙げられる。金属線の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、鉄、銅、および、これらの合金が挙げられる。連結部11bは、例えば、繊維材のノット(結び目)である。
【0015】
ライン部11aの線径(直径)は、3次元レーザースキャン時のノイズ抑制の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、一層好ましくは90μm以下である。線材11の線径は、ターゲット付ネットXの取り扱い性の観点から、好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上である。
【0016】
ライン部11aの長さは、ターゲット付ネットXの取り扱い性の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは70mm以下、更に好ましくは50mm以下であり、また、好ましくは10mm以上、より好ましくは30mm以上である。
【0017】
線材11は、表面粘着性を有する。表面粘着性とは、線材11が測定対象物に接触すると貼り付くことができ、且つ、測定対象物上の線材11が手作業によって剥離可能な程度の粘着力を有する性質をいうものとする。本実施形態では、線材11は、表面粘着性を有するように粘着剤によってコーティングされている。すなわち、線材11は、粘着剤のコーティング膜(図示略)を表面に有する。粘着剤としては、例えば、アクリル粘着剤、シリコーン粘着剤、天然ゴム粘着剤、および合成ゴム粘着剤が挙げられ、アクリル粘着剤が好ましい。コーティング膜の厚さは、ネット材10の表面粘着力を確保する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上である。コーティング膜の厚さは、ネット材10の過度のベタツキを抑制してターゲット付ネットXの取り扱い性を確保する観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
【0018】
台座12は、反射ターゲット20が配置されるプレート状の要素である。複数の台座12は、ターゲット付ネットXの全体が広げられた状態において、シート様の線材11に対して同じ側に配置されている。複数の台座12は、線材11上において互いに離れている。各台座12は、平面視において一の連結部11bを含むように配置されている。台座12は、線材11における一の連結部11bおよびその近傍(ライン部11aの一部)に固定されている。台座12は、例えば接着剤を介して、連結部11bおよびその近傍に固定されている。接着剤としては、例えば、エポキシ接着剤が挙げられる。エポキシ接着剤の市販品としては、例えば、チバガイギー社製の「アラルダイトEPN-1138」および「アラルダイトEPN-1139」が挙げられる。
【0019】
台座12の材料としては、樹脂および金属が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリアミドが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド46、およびポリアミド66が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、鉄、銅、および、これらの合金が挙げられる。
【0020】
台座12は、所定の平面視形状を有する。台座12の平面視形状としては、例えば、円形および正多角形が挙げられる(台座12の平面視形状が円形である場合を例示的に図示する)。台座12の平面視における最大長さ(円形の台座12では直径)は、反射ターゲット20のサイズに応じて、例えば6.0mm以上であり、また、例えば12mm以下である。反射ターゲット20の後記の面積に対する台座12の面積の割合は、3次元レーザースキャン時のノイズ抑制の観点から、好ましくは150%以下、より好ましくは120%以下、更に好ましくは110%以下である。同割合は、例えば100%以上である。台座12の厚さは、例えば1.0mm以上であり、また、例えば3.0mm以下である。
【0021】
ネット材10が広げられた状態において、隣り合う台座12の平面視における中心間距離は、後述のように配置される反射ターゲット20の配置密度を確保する観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは70mm以下、更に好ましくは50mm以下である。隣り合う台座12の平面視における中心間距離は、反射ターゲット20の過度の配置密度を回避する観点から、好ましくは10mm以上、より好ましくは30mm以上である。
【0022】
複数の反射ターゲット20は、ネット材10に取り付けられている。具体的には、各反射ターゲット20が、一の台座12における、線材11とは反対側の表面に、取り付けられている。複数の反射ターゲット20は、ネット材10上において互いに離れている。反射ターゲット20は、本実施形態では、表面20aと、当該表面20aとは反対側の粘着面とを有する。すなわち、反射ターゲット20は、反射ターゲットシールである。反射ターゲット20の粘着面が、台座12に貼り合わされている。
【0023】
反射ターゲット20は、表面20aに第1領域21と第2領域22とを有する。第1領域21は、3次元レーザースキャン用のレーザーの反射率T1が相対的に高い領域である。第1領域21は、例えば白色である。第2領域22は、3次元レーザースキャン用のレーザーの反射率T2が相対的に低い領域であり、第1領域21を囲む。第2領域22は、例えば黒色である。反射率T2に対する反射率T1の比率は、例えば5以上であり、また、例えば100以下である。
【0024】
第1領域21の形状は、例えば、円形または正多角形である(第1領域21の形状が円形である場合を例示的に図示する)。第1領域21の最大長さ(円形の第1領域21では直径)は、例えば6.0mm以上であり、また、例えば12mm以下である。表面20aにおける第1領域21の面積割合は、3次元レーザースキャンにおける測定基準としての反射ターゲット20の測定感度を確保する観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であり、また、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0025】
ターゲット付ネットXは、例えば次のようにして製造できる。
【0026】
まず、図4Aに示すように、線材11を用意する。線材11は、例えば、線状の樹脂材料を編み込むことによって製造できる。線材11は、樹脂シートの型抜き加工によっても製造できる。線材11は、金型に樹脂材料を流し込む金型成型によっても製造できる。
【0027】
次に、図4Bに示すように、線材11に台座12を取り付ける。具体的には、広げられた状態の線材11の一方面側において、線材11の連結部11bとその近傍(ライン部11aの一部)に対し、接着剤(図示略)を介して台座12を固定する。これにより、ネット材10が形成される。
【0028】
次に、図4Cに示すように、台座12に反射ターゲット20を取り付ける。具体的には、線材11上の台座12の、線材11とは反対側の表面に、反射ターゲット20の粘着面側を貼り合わせる。これにより、ネット材10に対して反射ターゲット20が取り付けられる。
【0029】
以上のようにして、ターゲット付ネットXを製造できる。
【0030】
ターゲット付ネットXは、上述のように、表面粘着性を有する網目状の線材11を有するネット材10と、ネット材10に取り付けられた複数の反射ターゲット20とを備える。このようなターゲット付ネットXは、線材11の表面粘着力により、図5に示すように、3次元レーザースキャンの測定対象物100に対して貼り付けることができる。測定対象物100としては、特に限定されないが、例えば車両が挙げられる(車両である場合を例示的に図示する)。すなわち、本実施形態のターゲット付ネットXは、例えば、車両用のターゲット付ネットである。また、測定対象物100の形状およびサイズに応じて、必要数のターゲット付ネットXが用いられる。ターゲット付ネットXは、所定の平面視形状に切断された後に測定対象物100に貼り付けられてもよい。
【0031】
このようなターゲット付ネットXによると、測定対象物100に対して複数の反射ターゲット20を一括的に配置できる。そのため、ターゲット付ネットXによると、測定対象物100に対して反射ターゲット20を一つひとつ貼り付ける作業が必要ない。したがって、ターゲット付ネットXは、3次元レーザースキャンに要する労力および時間の削減に役立つ。
【0032】
加えて、ターゲット付ネットXによると、測定対象物100に対して配置された複数の反射ターゲット20の間では、測定対象物100の表面101が露出している。そのため、ターゲット付ネットXによると、測定対象物100の表面101の凹凸形状を適切にレーザースキャンできる。レーザースキャンには、例えば、ハンディタイプの3次元レーザースキャナ(図示略)が用いられる。
【0033】
以上のように、ターゲット付ネットXは、3次元レーザースキャンを効率よく実施するのに適する。
【0034】
ターゲット付ネットXは、基材としてのネット材10がフレキシブルである。そのため、測定対象物100の表面101の凹凸形状に沿わせて、ターゲット付ネットXを貼り付けることができる。このことは、高精度の3次元レーザースキャンを実施するのに役立つ。また、ターゲット付ネットXは、巻取り可能である。そのため、ターゲット付ネットXは、コンパクトに収納できる。
【符号の説明】
【0035】
X ターゲット付ネット
10 ネット材
11 線材
11a ライン部
11b 連結部
12 台座
20 反射ターゲット
20a 表面
21 第1領域
22 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5