(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171908
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】センサコントローラ、電子機器、及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20241205BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G06F3/041 560
G06F3/041 430
G06F3/041 512
G06F3/044 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089193
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳生
(57)【要約】
【課題】アクティブペンの指示位置であるペン位置を検出する際に、予期しないペン位置の検出を抑制可能なセンサコントローラ、電子機器、及び位置検出方法を提供する。
【解決手段】センサコントローラ22は、第1スキャンにより得られる第1検出信号から、アクティブペン(14)の指示位置である第1ペン位置を算出する第1算出部50と、第2スキャンにより得られる第2検出信号から、パッシブポインタ(16)の指示位置であるタッチ位置及びアクティブペン(14)の指示位置である第2ペン位置を算出する第2算出部52と、第1ペン位置と第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力処理部46と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式のタッチセンサに接続されるセンサコントローラであって、
信号を送信するアクティブペンを検出するための第1スキャン及び前記信号を送信しないパッシブポインタを検出するための第2スキャンを前記タッチセンサに対して時分割で繰り返し実行するスキャン実行部と、
前記スキャン実行部が実行した前記第1スキャンにより得られる第1検出信号から、前記アクティブペンの指示位置である第1ペン位置を算出する第1算出部と、
前記スキャン実行部が実行した前記第2スキャンにより得られる第2検出信号から、前記パッシブポインタの指示位置であるタッチ位置及び前記アクティブペンの指示位置である第2ペン位置を算出する第2算出部と、
前記第1算出部により算出された前記第1ペン位置と、前記第2算出部により算出された前記第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力処理部と、
を備えるセンサコントローラ。
【請求項2】
前記出力処理部は、前記第1ペン位置が前記第2ペン位置に許容範囲内で一致する場合には前記第1ペン位置を有効化し、前記第1ペン位置が前記第2ペン位置に許容範囲内で一致しない場合には前記第1ペン位置を無効化する、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
【請求項3】
前記比較処理が行われずに前記ペン位置を出力する第1モードと、前記比較処理が行われて前記ペン位置を出力する第2モードと、を含む複数の検出モードを切り替えるモード制御部をさらに備える、
請求項2に記載のセンサコントローラ。
【請求項4】
前記モード制御部は、前記アクティブペンを用いたペンダウン操作を検出したことを契機として前記第2モードを開始する、
請求項3に記載のセンサコントローラ。
【請求項5】
前記モード制御部は、前記第2モードの開始時点から、予め定められた時間が経過した場合、又は予め定められた回数の信号を前記アクティブペンから受信した場合に、前記第2モードを終了する、
請求項4に記載のセンサコントローラ。
【請求項6】
前記第2算出部は、
前記第2検出信号が示す信号分布のうち、信号値が第1閾値を上回る位置を抽出する第1閾値処理を行い、前記第1閾値処理による抽出位置に基づいて前記タッチ位置を算出し、
前記第2検出信号が示す信号分布のうち、信号値が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を上回り、かつ前記第1閾値を上回らない位置を抽出する第2閾値処理を行い、前記第2閾値処理による抽出位置に基づいて前記第2ペン位置を算出する、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
【請求項7】
前記第1閾値及び前記第2閾値のうちの少なくとも一方は、前記アクティブペンの種別又は前記タッチセンサの種別に応じて異なるように設定される、
請求項6に記載のセンサコントローラ。
【請求項8】
前記比較処理は、前記第1算出部が前記第1ペン位置を算出できた場合に行われ、前記第1算出部が前記第1ペン位置を算出できなかった場合に行われない、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
【請求項9】
前記比較処理は、前記第2算出部が前記第2ペン位置を算出できた場合に行われ、前記第2算出部が前記第2ペン位置を算出できなかった場合に行われない、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
【請求項10】
前記タッチセンサは、
面状に配置されてセンサ領域を形成する複数のセンサ電極と、
前記センサ電極の端部から前記センサ領域の外周縁に沿って引き回される配線の集合体である引き回し配線群と、
を含んで構成される、請求項2に記載のセンサコントローラ。
【請求項11】
静電容量方式のタッチセンサと、
前記タッチセンサに接続されるセンサコントローラと、
を備え、
前記センサコントローラは、
信号を送信するアクティブペンを検出するための第1スキャン及び前記信号を送信しないパッシブポインタを検出するための第2スキャンを前記タッチセンサに対して時分割で繰り返し実行するスキャン実行部と、
前記スキャン実行部が実行した前記第1スキャンにより得られる第1検出信号から、前記アクティブペンの指示位置である第1ペン位置を算出する第1算出部と、
前記スキャン実行部が実行した前記第2スキャンにより得られる第2検出信号から、前記パッシブポインタの指示位置であるタッチ位置及び前記アクティブペンの指示位置である第2ペン位置を算出する第2算出部と、
前記第1算出部により算出された前記第1ペン位置と、前記第2算出部により算出された前記第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力処理部と、
を備える電子機器。
【請求項12】
静電容量方式のタッチセンサを用いた位置検出方法であって、
センサコントローラが、
信号を送信するアクティブペンを検出するための第1スキャン及び前記信号を送信しないパッシブポインタを検出するための第2スキャンを前記タッチセンサに対して時分割で繰り返し実行する実行ステップと、
前記第1スキャンにより得られる第1検出信号から、前記アクティブペンの指示位置である第1ペン位置を算出する第1算出ステップと、
前記第2スキャンにより得られる第2検出信号から、前記パッシブポインタの指示位置であるタッチ位置及び前記アクティブペンの指示位置である第2ペン位置を算出する第2算出ステップと、
算出された前記第1ペン位置と、算出された前記第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力ステップと、
を実行する位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサコントローラ、電子機器、及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子ペンや指などの指示体による指示位置を検出するための位置センサ(以下、「タッチセンサ」ともいう)を組み込んだ電子機器が知られている。タッチセンサの検出方式の一例として、指示体とセンサ電極の間に発生する静電容量の変化を示す信号分布から、当該指示体による指示位置を検出する「静電容量方式」が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、アクティブペンの位置を検出する「ペン検出処理」と、パッシブポインタの位置を検出する「タッチ検出処理」とを時分割で実行する位置検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/225204号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この類のタッチセンサは、センサ領域を形成する複数のセンサ電極と、センサ電極の端部からセンサ領域の外周縁に沿って引き回される配線の集合体である引き回し配線群と、を含んで構成される。以下、この引き回し配線群が設けられる額縁状の領域のことを「ベゼル部」ともいう。
【0006】
アクティブペンは、通常、センサ領域内でのみ検出されるが、センサ領域外で予期しない検出がなされる場合がある。例えば、アクティブペンがベゼル部の近くにある場合、アクティブペンから送信された信号を、引き回し配線群を介して受信することにより、センサ領域を介さずに検出信号が混入することがある。その結果、ユーザによる指示の意図がないにもかかわらず、センサ領域内にある無作為の位置が指示位置として検出されてしまう。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクティブペンの指示位置であるペン位置を検出する際に、予期しないペン位置の検出を抑制可能なセンサコントローラ、電子機器、及び位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様におけるセンサコントローラは、静電容量方式のタッチセンサに接続されるコントローラであって、信号を送信するアクティブペンを検出するための第1スキャン及び前記信号を送信しないパッシブポインタを検出するための第2スキャンを前記タッチセンサに対して時分割で繰り返し実行するスキャン実行部と、前記スキャン実行部が実行した前記第1スキャンにより得られる第1検出信号から、前記アクティブペンの指示位置である第1ペン位置を算出する第1算出部と、前記スキャン実行部が実行した前記第2スキャンにより得られる第2検出信号から、前記パッシブポインタの指示位置であるタッチ位置及び前記アクティブペンの指示位置である第2ペン位置を算出する第2算出部と、前記第1算出部により算出された前記第1ペン位置と、前記第2算出部により算出された前記第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力処理部と、を備える。
【0009】
本発明の第2態様における電子機器は、静電容量方式のタッチセンサと、前記タッチセンサに接続されるセンサコントローラと、を備え、前記センサコントローラは、信号を送信するアクティブペンを検出するための第1スキャン及び前記信号を送信しないパッシブポインタを検出するための第2スキャンを前記タッチセンサに対して時分割で繰り返し実行するスキャン実行部と、前記スキャン実行部が実行した前記第1スキャンにより得られる第1検出信号から、前記アクティブペンの指示位置である第1ペン位置を算出する第1算出部と、前記スキャン実行部が実行した前記第2スキャンにより得られる第2検出信号から、前記パッシブポインタの指示位置であるタッチ位置及び前記アクティブペンの指示位置である第2ペン位置を算出する第2算出部と、前記第1算出部により算出された前記第1ペン位置と、前記第2算出部により算出された前記第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力処理部と、を備える。
【0010】
本発明の第3態様における位置検出方法は、静電容量方式のタッチセンサを用いた方法であって、センサコントローラが、信号を送信するアクティブペンを検出するための第1スキャン及び前記信号を送信しないパッシブポインタを検出するための第2スキャンを前記タッチセンサに対して時分割で繰り返し実行する実行ステップと、前記第1スキャンにより得られる第1検出信号から、前記アクティブペンの指示位置である第1ペン位置を算出する第1算出ステップと、前記第2スキャンにより得られる第2検出信号から、前記パッシブポインタの指示位置であるタッチ位置及び前記アクティブペンの指示位置である第2ペン位置を算出する第2算出ステップと、算出された前記第1ペン位置と、算出された前記第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクティブペンの指示位置であるペン位置を検出する際に、予期しないペン位置の検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における電子機器としてのタブレット端末が組み込まれた入力システムの全体構成図である。
【
図2】
図1のタブレット端末の装置構成を示す図である。
【
図3】
図2に示すタッチICに関する機能ブロック図である。
【
図4】
図3のタッチICによる検出動作に関するフローチャートである。
【
図5】検出モードの切り替わり結果の一例を示す図である。
【
図6】
図4の第1モード(ステップSP16)に関する詳細フローチャートである。
【
図7】ゴーストが発生し得る状況下で第1モードを実行した結果の一例を示す図である。
【
図8】
図4の第2モード(ステップSP18)に関する詳細フローチャートである。
【
図9】第1検出信号が示す信号分布の形状を模式的に示す図である。
【
図10】第2検出信号が示す信号分布の第1例を示す図である。
【
図11】第2検出信号が示す信号分布の第2例を示す図である。
【
図12】閾値を設定するための規則の一例を示す図である。
【
図13】ゴーストが発生し得る状況下で第2モードを実行した結果の一例を示す図である。
【
図14】
図8のステップSP18における第2モードの第1変形例を示す詳細フローチャートである。
【
図15】
図8のステップSP18における第2モードの第2変形例を示す詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
[入力システム10の構成]
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態における電子機器としてのタブレット端末12が組み込まれた入力システム10の全体構成図である。この入力システム10は、タブレット端末12(「電子機器」に相当)と、電子ペン14(「アクティブペン」に相当)と、から基本的に構成される。
【0015】
タブレット端末12は、タッチパネルディスプレイを有する電子機器である。この電子機器は、タブレット端末の他に、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、又はウェアラブル端末であってもよい。タブレット端末12の正面には、ユーザによる入力操作を受け付けるタッチ面12sと、タッチ面12sの外周縁を取り囲むベゼル部12bと、が設けられている。
【0016】
ユーザは、電子ペン14を片手で把持し、タブレット端末12のタッチ面12sにペン先を押し当てながら移動させることで、タブレット端末12に絵や文字を書き込むことができる。また、ユーザは、自身の指16(「パッシブポインタ」に相当)でタッチ面12sに接触することで、表示中のユーザコントロールを介して所望の操作を行うことができる。
【0017】
電子ペン14は、アクティブ静電結合方式(AES)によって動作するペン型のポインティングデバイスである。電子ペン14は、少なくとも静電容量結合方式の通信により、タブレット端末12との間で通信可能に構成される。以下、タブレット端末12から電子ペン14に向けて送信される信号を「アップリンク信号」と称し、電子ペン14からタブレット端末12に向けて送信される信号を「ダウンリンク信号」と称する。
【0018】
<タブレット端末12の装置構成>
図2は、
図1のタブレット端末12の装置構成を示す図である。タブレット端末12は、タッチセンサ18と、センサコントローラ22と、ホストプロセッサ24と、を含んで構成される。
【0019】
タッチセンサ18は、複数のセンサ電極18x,18yが面状に配置されてなる、静電容量方式の位置センサである。具体的には、タッチセンサ18は、X軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18xと、Y軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18yと、を含む。本図に示すX方向,Y方向は、センサ領域内において定義される直交座標系のX軸,Y軸に相当する。センサ電極18x,18yは、ITO(Indium Tin Oxide)を含む透明導電性材料から構成されてもよいし、ワイヤメッシュから構成されてもよい。
【0020】
センサ電極18xは、Y方向に延びて設けられるとともに、X方向に沿って等間隔に配置されている。センサ電極18yは、X方向に延びて設けられるとともに、Y方向に沿って等間隔に配置されている。なお、タッチセンサ18は、上記した相互容量方式のセンサに代えて、ブロック状の電極を二次元格子状に配置した自己容量方式のセンサであってもよい。また、タッチセンサ18は、図示しない表示パネルに外側から取り付ける「外付け型」(あるいは、アウトセル型)のセンサであってもよいし、表示パネルと一体的に構成される「内蔵型」(さらに分類すると、オンセル型又はインセル型)のセンサであってもよい。
【0021】
タッチセンサ18は、センサ領域を形成するセンサ電極18x,18yの端部からセンサ領域の外周縁に沿って引き回される配線の集合体(以下、「引き回し配線群20」ともいう)をさらに含む。引き回し配線群20は、平面視にてベゼル部12b(
図1)の位置に配置されるとともに、センサコントローラ22に電気的に接続されている。
【0022】
センサコントローラ22は、タッチセンサ18の駆動制御を行うための少なくとも1枚の電子回路基板からなり、タッチ集積回路(IC:Integrated Circuit)(以下、「タッチIC26」という)を含んで構成される。
【0023】
タッチIC26は、ファームウェアを実行可能に構成された集積回路であり、引き回し配線群20を介してタッチセンサ18に接続されている。このファームウェアは、ユーザの指16又はタッチペンを含むパッシブポインタによるタッチを検出するタッチ検出部27と、アクティブポインタとしての電子ペン14を検出するペン検出部28と、を実現可能に構成される。
【0024】
タッチ検出部27は、例えば、タッチセンサ18のスキャン機能、タッチセンサ18上の信号分布(あるいは、ヒートマップ)の作成機能、信号分布上の領域分類機能(例えば、指16、手の平の分類)を含む。ペン検出部28は、例えば、タッチセンサ18のスキャン機能(グローバルスキャン又はセクタスキャン)、ダウンリンク信号の受信・解析機能、電子ペン14の状態(例えば、位置、傾き、筆圧など)の推定機能、電子ペン14に対する指令を含むアップリンク信号の生成・送信機能を含む。
【0025】
ホストプロセッサ24は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)からなる演算処理装置である。ホストプロセッサ24は、図示しないメモリからプログラムを読み出し実行することで、例えば、センサコントローラ22から供給されるデータを用いてデジタルインクを生成する処理、当該デジタルインクが示す描画内容を表示させるためのレンダリング処理などを行う。
【0026】
<機能ブロック>
図3は、
図2に示すタッチIC26に関する機能ブロック図である。タッチIC26は、スキャン実行部40と、信号取得部42と、位置算出部44と、出力処理部46と、モード制御部48と、を備える。
【0027】
スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して複数種類のスキャン処理を時分割で繰り返し実行する。複数種類のスキャン処理には、[1]ダウンリンク信号を送信する電子ペン14を検出するための「第1スキャン」(あるいは、ペンスキャン)及び[2]指16又はタッチペンを含むパッシブポインタを検出するための「第2スキャン」(あるいは、タッチスキャン)が含まれる。第1スキャン及び第2スキャンは、1:1の割合で実行されてもよいし、n:m(n≠m)の割合で実行されてもよい。
【0028】
なお、上記した第2スキャンは、センサ電極18x,18yにおける静電容量の変化を検出するために実行される。この第2スキャンは、例えば、[1]センサ電極18yから信号を送信し、当該信号をセンサ電極18xで受信することで、センサ電極18x,18y間の相互容量の変化を検出する「相互容量方式」に基づくスキャンであってもよいし、[2]センサ電極18x,18yそれぞれの静電容量の変化を検出する「自己容量方式」に基づくスキャンであってもよい。
【0029】
信号取得部42は、スキャン実行部40が実行したスキャン処理を通じて、タッチセンサ18から逐次出力される検出信号を取得する。以下、第1スキャンにより得られる検出信号を「第1検出信号」といい、第2スキャンにより得られる検出信号を「第2検出信号」という。第1検出信号における信号値は、例えば、ダウンリンク信号の受信レベルが高いほど値が大きくなり、ダウンリンク信号の受信レベルが低いほど値が小さくなるように定義される。第2検出信号における信号値は、例えば、静電容量の変化量が大きいほど値が大きくなり、静電容量の変化量が小さいほど値が小さくなるように定義される。
【0030】
位置算出部44は、信号取得部42により取得された検出信号を用いて、タッチセンサ18がなすセンサ領域内の指示位置を算出する。具体的には、位置算出部44は、第1算出部50と、第2算出部52と、から構成される。
【0031】
第1算出部50は、信号取得部42により取得された第1検出信号に様々な信号処理を施してアクティブペン(ここでは、電子ペン14)の指示位置(以下、ペン位置)を算出する。この信号処理には、[1]信号分布が示す位置毎の信号値と閾値の間の大小関係から、電子ペン14の有無を検出する「閾値処理」、又は[2]信号分布に対して補間演算又は近似演算を施してペン位置を算出する「位置算出処理」が含まれる。
【0032】
第1算出部50は、実行中の検出モードに応じて異なる算出動作を行う。検出モードが第1モードである場合、第1算出部50は、第1算出部50自身により算出されたペン位置をそのまま出力処理部46に供給する。検出モードが第2モードである場合、第1算出部50は、第1算出部50自身により算出されたペン位置P1(以下、「第1ペン位置」という)と、第2算出部52により算出されたペン位置P2(以下、「第2ペン位置」という)の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を供給する。
【0033】
ここで、「比較処理」とは、第1ペン位置と第2ペン位置の一致性を判定するための処理に相当する。「一致性」とは、具体的には、[1]位置の有無が一致すること、又は[2]2つの位置同士の距離が許容範囲内にあることを意味する。「許容範囲」の一例として、センサ電極18x,18yのピッチn個分(nは自然数、例えばn=1)などが挙げられる。
【0034】
「異なるペン位置」の一例として、[1]第1ペン位置、[2]第2ペン位置、[3]第1ペン位置及び第2ペン位置の合成位置、[4]第1ペン位置の「有効化」に対応するペン位置、又は[5]第1ペン位置の「無効化」に対応するペン位置などが挙げられる。「第1ペン位置の有効化」とは、第1算出部50により仮決定された第1ペン位置を「有効」であると確定することを意味する。有効化のためのデータ処理には、第1ペン位置を出力すること、又は第1ペン位置と併せて有効フラグを出力することが含まれる。「第1ペン位置の無効化」とは、第1算出部50により仮決定された第1ペン位置を「無効」であると確定することを意味する。無効化のためのデータ処理には、第1ペン位置を出力しないこと、又は第1ペン位置と併せて無効フラグを出力することが含まれる。例えば、第1算出部50は、第1ペン位置が第2ペン位置に許容範囲内で一致する場合には第1ペン位置を有効化する一方、第1ペン位置が第2ペン位置に許容範囲内で一致しない場合には第1ペン位置を無効化してもよい。
【0035】
第2算出部52は、信号取得部42により取得された第2検出信号に様々な信号処理を施してパッシブポインタ(ここでは、指16)の指示位置(以下、タッチ位置)を算出する。この信号処理には、[1]信号分布が示す位置毎の信号値と閾値の間の大小関係から、指16の有無を検出する「閾値処理」、[2]閾値処理により検出された領域のサイズ又は形状に基づいてタッチの種別(例えば、指16、パーム、電子ペン14、又は他の物体)を識別する「識別処理」、又は[3]信号分布に対して補間演算又は近似演算を施してタッチ位置を算出する「位置算出処理」が含まれる。
【0036】
第2算出部52は、実行中の検出モードに応じて異なる算出動作を行う。検出モードが第1モードである場合、第2算出部52は、第2検出信号からタッチ位置のみを算出し、出力処理部46に供給する。検出モードが第2モードである場合、第2算出部52は、第2検出信号からタッチ位置を算出して出力処理部46に供給するとともに、第2検出信号から電子ペン14のペン位置(つまり、第2ペン位置)を算出して第1算出部50に供給する。
【0037】
第2算出部52は、例えば、第2検出信号が示す信号分布のうち、信号値が第1閾値を上回る位置を抽出する閾値処理(以下、第1閾値処理)を行い、第1閾値処理による抽出位置に基づいてタッチ位置を算出する。第2算出部52は、例えば、第2検出信号が示す信号分布のうち、信号値が第1閾値よりも小さい第2閾値を上回り、かつ第1閾値を上回らない位置を抽出する閾値処理(以下、第2閾値処理)を行い、第2閾値処理による抽出位置に基づいて第2ペン位置を算出する。
【0038】
第1閾値及び第2閾値は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。可変値の場合、第1閾値及び第2閾値のうちの少なくとも一方は、電子ペン14の種別又はタッチセンサ18の種別に応じて異なるように設定されてもよい。この「種別」には、メーカ名、製品名、型名、規格名、仕様などが含まれる。
【0039】
出力処理部46は、位置算出部44により算出されたペン位置又はタッチ位置を含む位置情報を生成した後、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24(
図2)に出力する。出力処理部46は、予め定められた周期(例えば、100Hz)でデータを出力してもよい。
【0040】
出力処理部46は、位置算出部44と同様に、実行中の検出モードに応じて異なる出力動作を行う。検出モードが第1モードである場合、出力処理部46は、第1算出部50自身により算出されたペン位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。検出モードが第2モードである場合、出力処理部46は、第1ペン位置と第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。例えば、出力処理部46は、第1ペン位置が第2ペン位置に許容範囲内で一致する場合には第1ペン位置を有効化するためのデータを出力し、第1ペン位置が第2ペン位置に許容範囲内で一致しない場合には第1ペン位置を無効化するためのデータを出力する。
【0041】
モード制御部48は、複数の検出モード、例えば、第1モード及び第2モードのうちのいずれか一方の検出モードを切り替える。「第1モード」は、上記した比較処理が行われずにペン位置を出力する検出モードに相当する。「第2モード」は、上記した比較処理が行われてペン位置を出力する検出モードに相当する。なお、第2モードの実行中、比較処理が常に行われてもよいし、比較処理が断続的又は間欠的に行われてもよい。例えば、比較処理は、[1]第1算出部50が第1ペン位置を算出できなかった場合、又は[2]第2算出部52が第2ペン位置を算出できなかった場合に一時的に省略されてもよい。
【0042】
モード制御部48は、検出モードの切り替えに関する情報(以下、「モード情報」という)を用いて、第2モードの開始時点又は終了時点を決定する。モード情報には、[1]タブレット端末12又は電子ペン14の操作状態を示す「操作情報」又は[2]ダウンリンク信号の受信状態を示す「受信情報」などが含まれる。操作情報の一例として、電子ペン14の筆圧値、あるいは、タブレット端末12又は電子ペン14からの操作フラグなどが挙げられる。受信情報の一例として、基準時点からのダウンリンク信号の受信回数などが挙げられる。
【0043】
例えば、モード制御部48は、電子ペン14を用いたペンダウン操作を検出したことを契機として第2モードを開始してもよい。また、モード制御部48は、第2モードの開始時点から、予め定められた時間が経過した場合、又は予め定められた回数の信号を電子ペン14から受信した場合に第2モードを終了してもよい。
【0044】
[入力システム10の動作]
この実施形態における電子機器としてのタブレット端末12が組み込まれた入力システム10は、以上のように構成される。続いて、タブレット端末12による指示位置の検出動作について、
図4~
図15を参照しながら説明する。
【0045】
<全体動作>
まず、タブレット端末12が有するタッチIC26による検出動作について、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
図4のステップSP10において、タッチIC26は、検出タイミングが到来したか否かを確認する。検出タイミングにまだ達していない場合(ステップSP10:NO)、タッチIC26は、検出タイミングが到来するまでの間、ステップSP10に留まる。一方、検出タイミングが到来した場合(ステップSP10:YES)、タッチIC26は、次のステップSP12に進む。
【0047】
ステップSP12において、モード制御部48は、検出モードを選択するためのモード情報(例えば、電子ペン14の直近の筆圧値)を取得する。
【0048】
ステップSP14において、モード制御部48は、ステップSP12により取得されたモード情報を用いて、第1モード及び第2モードのうちのいずれかの検出モードを選択する。第1モードが選択された場合(ステップSP14:第1モード)、モード制御部48は、第1モードを示すモードフラグを位置算出部44に供給して、ステップSP16に進む。
【0049】
ステップSP16において、位置算出部44は、ステップSP14で選択された第1モードによる検出処理を行う。その後、タッチIC26は、ステップSP10に戻って、第1モードが継続して選択される間、ステップSP10,SP12,SP14,SP16を繰り返して実行する。
【0050】
ステップSP14に戻って、第2モードが選択された場合(ステップSP14:第2モード)、モード制御部48は、第2モードを示すモードフラグを位置算出部44に供給して、ステップSP18に進む。
【0051】
ステップSP18において、位置算出部44は、ステップSP14で選択された第2モードによる検出処理を行う。その後、タッチIC26は、ステップSP10に戻って、第2モードが継続して選択される間、ステップSP10,SP12,SP14,SP18を繰り返して実行する。
【0052】
このように、タッチIC26は、ステップSP10~SP18を繰り返し実行することにより、指示位置の検出動作をリアルタイムで行う。
【0053】
図5は、検出モードの切り替わり結果の一例を示す図である。左右方向に延びる軸は、時間t(単位:s)の経過を示している。例えば、ペンダウン操作の検出時点を契機として第1モードから第2モードに切り替わり、検出時点から予め定められた継続時間(ΔT)の経過を契機として第2モードから第1モードに切り替わる場合を想定する。
【0054】
まず、t<t1において、電子ペン14がホバー状態である場合、第1モードが実行される。その後、t=t1において、電子ペン14による1回目のペンダウン操作が検出されたことを契機として、第1モードから第2モードに切り替わる。その後、t=t2において、継続時間ΔTの経過を契機として、第2モードから第1モードに切り替わる。
【0055】
その後、電子ペン14によるペンムーブ操作が行われ(t2<t<t3)、ペンアップ操作が行われた後も(t3≦t<t4)、第1モードが実行される。その後、t=t4において、電子ペン14による2回目のペンダウン操作が検出されたことを契機として、第1モードから第2モードに切り替わる。その後、t=t5において、継続時間ΔTの経過を契機として、第2モードから第1モードに切り替わる。
【0056】
<第1モードの説明>
続いて、
図4の第1モード(ステップSP16)について、
図6のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
【0057】
図6のステップSP20において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第1スキャンを行う。
【0058】
ステップSP22において、信号取得部42は、ステップSP20で実行された第1スキャンに対応する第1検出信号を取得する。
【0059】
ステップSP24において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP22で取得された第1検出信号からペン位置を算出する。
【0060】
ステップSP26において、出力処理部46は、ステップSP24で算出されたペン位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に供給する。
【0061】
ステップSP28において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第2スキャンを行う。
【0062】
ステップSP30において、信号取得部42は、ステップSP26で実行された第2スキャンに対応する第2検出信号を取得する。
【0063】
ステップSP32において、位置算出部44(より詳しくは、第2算出部52)は、ステップSP42で取得された第2検出信号からタッチ位置を算出する。
【0064】
ステップSP34において、出力処理部46は、ステップSP32で算出されたタッチ位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に供給する。
【0065】
このようにして、タッチIC26は、第1モードによる検出処理(
図4のステップSP16)を終了する。
図6から理解されるように、この検出処理では、ペン位置の検出及びタッチ位置の検出がそれぞれ独立に行われる。
【0066】
ところで、通常、電子ペン14は、タッチ面12s(あるいは、センサ領域)内でのみ検出されるが、タッチ面12s外で予期しない検出がなされる場合がある。例えば、電子ペン14がベゼル部12bの近くにある場合、電子ペン14から送信された信号(つまり、ダウンリンク信号)を、引き回し配線群20を介して受信することにより、タッチ面12sを介さずに検出信号が混入することがある。その結果、タブレット端末12にゴースト(あるいは、残像)が表示される場合がある。
【0067】
図7は、ゴーストが発生し得る状況下で第1モードを実行した結果の一例を示す図である。ユーザが、電子ペン14のペン先をベゼル部12bにタッチさせる操作を行うことを想定する。そうすると、第1モードを通じて誤検出点62がペン位置から除外されないことにより、ユーザによる指示の意図がないにもかかわらず、誤検出点62を示すポインタ64が表示領域60内に表示される現象が起こり得る。特に、引き回し配線群20が細線化かつ高密度化されている場合、ベゼル部12bを介する検出信号の混入が起こりやすくなる。
【0068】
<第2モードの説明>
続いて、第2モードによる検出動作(
図4のステップSP18)について、
図8のフローチャート及び
図9~
図13を参照しながら詳しく説明する。この「第2モード」は、上記したゴーストの発生を抑制するために実行される。
【0069】
図8のステップSP40において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第1スキャンを行う。このスキャン処理は、ステップSP20(
図6)の場合と同様に行われる。
【0070】
ステップSP42において、信号取得部42は、ステップSP40で実行された第1スキャンに対応する第1検出信号を取得する。この取得処理は、ステップSP22(
図6)の場合と同様に行われる。
【0071】
ステップSP44において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP42で取得された第1検出信号から第1ペン位置を算出し、ペン位置の仮決定を行う。この算出処理は、ステップSP24(
図6)の場合と同様に行われる。
【0072】
図9は、第1検出信号が示す信号分布の形状を模式的に示す図である。
図9に例示する信号分布は、[1]センサ電極18x,18yからの受信に起因する第1ピーク部、及び[2]引き回し配線群20からの受信に起因する第2ピーク部を有している。第1ピーク部は、第1信号値S1の最大がS1pであり、位置Xpを頂点とする形状を有する。第2ピーク部は、第1信号値S1の最大がS1gであり、位置Xgを頂点とする形状を有する。説明の便宜上、2種類のピーク部(第1及び第2ピーク部)が同時に示されているが、電子ペン14が1本である場合、通常、いずれか1種類のピーク部が発生する。
【0073】
ステップSP46において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第2スキャンを行う。このスキャン処理は、ステップSP28(
図6)の場合と同様に行われる。
【0074】
ステップSP48において、信号取得部42は、ステップSP46で実行された第2スキャンに対応する第2検出信号を取得する。この取得処理は、ステップSP30(
図6)の場合と同様に行われる。
【0075】
図10は、第2検出信号が示す信号分布の第1例を示す図である。第1例の信号分布は、指F及び電子ペン14の両方がタッチ面12s上にある場合に得られる。この信号分布は、[1]指16によるタッチに起因する第3ピーク部、及び[2]電子ペン14によるタッチに起因する第4ピーク部を有している。第3ピーク部は、第2信号値S2の最大がS2tであり、位置X1を頂点とする形状を有する。第4ピーク部は、第2信号値S2の最大がS2pであり、位置X2を頂点とする形状を有する。
【0076】
図11は、第2検出信号が示す信号分布の第2例を示す図である。第2例の信号分布は、指Fがタッチ面12sにあり、電子ペン14がベゼル部12bの近くにある場合に得られる。この信号分布は、指16によるタッチに起因する第3ピーク部を有する一方、
図9におけるゴーストの発生位置(X3=Xg)に対応する第4ピークを有していない。
【0077】
図8のステップSP50において、位置算出部44(より詳しくは、第2算出部52)は、ステップSP48で取得された第2検出信号から第2ペン位置を算出する。
【0078】
図10の第1例では、第1閾値Th1及び第2閾値Th2は、0<Th2<S2p<Th1<S2tの大小関係を満たすようにそれぞれ設定されている。この場合、閾値処理を通じて、第2ペン位置としてX2が算出される。ところが、
図11の第2例では、閾値処理を通じて、第2ペン位置が1つも算出されない。
【0079】
図12は、閾値を設定するための規則の一例を示す図である。より詳しくは、
図12は、物品区分、種別、及び閾値の間の対応関係を示すテーブルを示している。「物品区分」には、装置名(例えば、電子ペン・タブレットなど)又は部品名(例えば、タッチセンサなど)が含まれる。「種別」には、メーカ名、製品名、型名、規格名、仕様などが含まれる。例えば、「種別X1である電子ペン」に適した閾値として、第1閾値Th11及び第2閾値Th21がそれぞれ設定される。この設定規則に従って閾値を定めることで、電子ペン14の種別又はタッチセンサ18の種別に応じて、引き回し配線群20から混入し得る信号のレベル又は形状が異なる点を考慮した検出を行うことができる。
【0080】
図8のステップSP52において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP44で算出された第1ペン位置が、ステップSP50で算出された第2ペン位置に一致するか否かを判定する。
図10に示す例では、第1ペン位置Xpと、第2ペン位置X2が一致するので(ステップSP52:YES)、位置算出部44は、ステップSP54に進む。
【0081】
ステップSP54において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP44で算出された第1ペン位置を有効化し、ペン位置を確定する。具体的には、第1算出部50は、検出されたペン位置として、第1ペン位置を出力処理部46に供給する。
【0082】
ステップSP52に戻って、
図11に示す例では、第1ペン位置Xg(つまり、ゴーストの発生位置)と一致する第2ペン位置が存在しないので(ステップSP52:NO)、位置算出部44は、ステップSP56に進む。
【0083】
ステップSP56において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP44で算出された第1ペン位置を無効化し、ペン位置を確定する。具体的には、第1算出部50は、ペン位置が検出されなかった旨を出力処理部46に供給する。
【0084】
ステップSP58において、出力処理部46は、ステップSP54又はステップSP56で供給されたペン位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。この出力処理は、ステップSP26(
図6)の場合と同様に行われる。
【0085】
ステップSP60において、位置算出部44(より詳しくは、第2算出部52)は、ステップSP48で取得された第2検出信号からタッチ位置を算出する。この算出処理は、ステップSP32(
図6)の場合と同様に行われる。
図10及び
図11の例では、タッチ位置としてX1がそれぞれ算出される。
【0086】
ステップSP62において、出力処理部46は、ステップSP60で算出されたタッチ位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。この出力処理は、ステップSP34(
図6)の場合と同様に行われる。
【0087】
このようにして、タッチIC26は、第2モードによる検出処理(
図4のステップSP18)を終了する。
図8から理解されるように、この検出処理では、ペン位置の検出が、及びタッチ位置の検出に依存して行われる。
【0088】
図13は、ゴーストが発生し得る状況下で第2モードを実行した結果の一例を示す図である。
図7の場合と同様に、ユーザが、電子ペン14のペン先をベゼル部12bにタッチさせる操作を行うことを想定する。そうすると、第2モードを通じて誤検出点62が指示位置から除外されることにより、表示領域60内にポインタが表示されなくなる。すなわち、ユーザの意図に合致した表示結果が得られる。
【0089】
<第2モードの変形例>
続いて、
図8のステップSP18における第2モードの第1変形例(ステップSP18A)について、
図14のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
【0090】
図14のステップSP70において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第1スキャンを行う。このスキャン処理は、ステップSP40(
図8)の場合と同様に行われる。
【0091】
ステップSP72において、信号取得部42は、ステップSP70で実行された第1スキャンに対応する第1検出信号を取得する。この取得処理は、ステップSP42(
図8)の場合と同様に行われる。
【0092】
ステップSP74において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP72で取得された第1検出信号から第1ペン位置を算出し、ペン位置の仮決定を行う。この算出処理は、ステップSP44(
図8)の場合と同様に行われる。
【0093】
ステップSP76において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、後述するステップSP90で前回に算出された第2ペン位置を取得する。
【0094】
ステップSP78において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP74で算出された第1ペン位置が、ステップSP76で取得された第2ペン位置に一致するか否かを判定する。両者の位置が一致する場合(ステップSP78:YES)、位置算出部44は、ステップSP84に進む。
【0095】
ステップSP80において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP74で算出された第1ペン位置を有効化し、ペン位置を確定する。具体的には、第1算出部50は、検出されたペン位置として、第1ペン位置を出力処理部46に供給する。
【0096】
ステップSP78に戻って、第1ペン位置が第2ペン位置に一致しない場合(ステップSP78:NO)、位置算出部44は、ステップSP82に進む。
【0097】
ステップSP82において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP74で算出された第1ペン位置を無効化し、ペン位置を確定する。具体的には、第1算出部50は、ペン位置が検出されなかった旨を出力処理部46に供給する。
【0098】
ステップSP84において、出力処理部46は、ステップSP80又はステップSP82で供給されたペン位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。この出力処理は、ステップSP58(
図8)の場合と同様に行われる。
【0099】
ステップSP86において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第2スキャンを行う。このスキャン処理は、ステップSP46(
図8)の場合と同様に行われる。
【0100】
ステップSP88において、信号取得部42は、ステップSP86で実行された第2スキャンに対応する第2検出信号を取得する。この取得処理は、ステップSP48(
図8)の場合と同様に行われる。
【0101】
ステップSP90において、位置算出部44(より詳しくは、第2算出部52)は、ステップSP88で取得された第2検出信号からタッチ位置及び第2ペン位置を算出する。タッチ位置の算出処理は、ステップSP60(
図8)の場合と同様に行われる。第2ペン位置の算出処理は、ステップSP50(
図8)の場合と同様に行われる。
【0102】
ステップSP92において、出力処理部46は、ステップSP60で算出されたタッチ位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。この出力処理は、ステップSP62(
図8)の場合と同様に行われる。
【0103】
このようにして、タッチIC26は、第2モードによる検出処理(
図4のステップSP18A)を終了する。
図14に示すように、第1ペン位置、第2ペン位置、及びタッチ位置の算出順番を変更しても、
図8に示すフローチャートの場合と同様の作用効果が得られる。特に、電子ペン14が動くことを考慮すると、第1ペン位置の算出時点と、第2ペン位置の算出時点の時間間隔が短いことが望ましい。
【0104】
続いて、
図8のステップSP18における第2モードの第2変形例(ステップSP18B)について、
図15のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
【0105】
図15のステップSP100において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第1スキャンを行う。このスキャン処理は、ステップSP40(
図8)の場合と同様に行われる。
【0106】
ステップSP102において、信号取得部42は、ステップSP100で実行された第1スキャンに対応する第1検出信号を取得する。この取得処理は、ステップSP42(
図8)の場合と同様に行われる。
【0107】
ステップSP104において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP102で取得された第1検出信号から第1ペン位置を算出し、ペン位置の仮決定を行う。この算出処理は、ステップSP44(
図8)の場合と同様に行われる。
【0108】
ステップSP106において、スキャン実行部40は、タッチセンサ18に対して第2スキャンを行う。このスキャン処理は、ステップSP46(
図8)の場合と同様に行われる。
【0109】
ステップSP108において、信号取得部42は、ステップSP106で実行された第2スキャンに対応する第2検出信号を取得する。この取得処理は、ステップSP48(
図8)の場合と同様に行われる。
【0110】
ステップSP110において、位置算出部44は、ステップSP104で算出された第1ペン位置の有無について確認する。算出された第1ペン位置がない場合(ステップSP110:NO)、位置算出部44は、後述するステップSP116に進む。反対に、算出された第1ペン位置がある場合(ステップSP110:YES)、位置算出部44は、次のステップSP112に進む。
【0111】
ステップSP112において、位置算出部44(より詳しくは、第2算出部52)は、ステップSP108で取得された第2検出信号から第2ペン位置を算出する。第2ペン位置の算出処理は、ステップSP50(
図8)の場合と同様に行われる。
【0112】
ステップSP114において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP104で算出された第1ペン位置が、ステップSP112で算出された第2ペン位置に一致するか否かを判定する。両者の位置が一致する場合(ステップSP116:YES)、位置算出部44は、次のステップSP116に順次進む。
【0113】
ステップSP116において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP104で算出された第1ペン位置を有効化し、ペン位置を確定する。具体的には、第1算出部50は、検出されたペン位置として、第1ペン位置を出力処理部46に供給するとともに、後述するステップSP120に進む。
【0114】
ステップSP114に戻って、第1ペン位置が第2ペン位置に一致しない場合(ステップSP114:NO)、位置算出部44は、ステップSP118に進む。
【0115】
ステップSP118において、位置算出部44(より詳しくは、第1算出部50)は、ステップSP104で算出された第1ペン位置を無効化し、ペン位置を確定する。具体的には、第1算出部50は、ペン位置が検出されなかった旨を出力処理部46に供給するとともに、次のステップSP120に進む。
【0116】
ステップSP120において、出力処理部46は、ステップSP116又はステップSP118で供給されたペン位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。この出力処理は、ステップSP58(
図8)の場合と同様に行われる。
【0117】
ステップSP122において、位置算出部44(より詳しくは、第2算出部52)は、ステップSP108で取得された第2検出信号からタッチ位置を算出する。タッチ位置の算出処理は、ステップSP60(
図8)の場合と同様に行われる。
【0118】
ステップSP124において、出力処理部46は、ステップSP122で算出されたタッチ位置を含む位置情報を生成し、当該位置情報を示すデータをホストプロセッサ24に出力する。この出力処理は、ステップSP62(
図8)の場合と同様に行われる。
【0119】
このようにして、タッチIC26は、第2モードによる検出処理(
図4のステップSP18B)を終了する。
図15に示すように、第1ペン位置の算出結果に応じて比較処理の有無を切り替えても、
図8に示すフローチャートの場合と同様の作用効果が得られる。
【0120】
[実施形態のまとめ]
以上のように、この実施形態における電子機器(ここでは、タブレット端末12)は、静電容量方式のタッチセンサ18と、タッチセンサ18に接続されるセンサコントローラ22と、を備える。センサコントローラ22は、信号を送信するアクティブペン(ここでは、電子ペン14)を検出するための第1スキャン及び信号を送信しないパッシブポインタ(ここでは、指16)を検出するための第2スキャンをタッチセンサ18に対して時分割で繰り返し実行するスキャン実行部40と、第1スキャンにより得られる第1検出信号から第1ペン位置を算出する第1算出部50と、第2スキャンにより得られる第2検出信号からタッチ位置及び第2ペン位置を算出する第2算出部52と、算出された第1ペン位置と、算出された第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力処理部46を備える。
【0121】
また、この実施形態における位置検出方法によれば、センサコントローラ22が、第1スキャン及び第2スキャンをタッチセンサ18に対して時分割で繰り返し実行する実行ステップ(SP40,SP46)と、第1スキャンにより得られる第1検出信号から第1ペン位置を算出する第1算出ステップ(SP44)と、第2スキャンにより得られる第2検出信号から、タッチ位置及び第2ペン位置を算出する第2算出ステップ(SP50,SP60)と、第1ペン位置と第2ペン位置の間の比較処理の結果に応じて異なるペン位置を出力する出力ステップ(SP52~SP58)を実行する。
【0122】
このように、2種類の異なる第1スキャン及び第2スキャンを通じて2つのペン位置を算出するとともに、2つのペン位置間の比較処理を行うことにより、予期しないペン位置の検出を抑制することができる。
【0123】
特に、タッチセンサ18は、面状に配置されてセンサ領域を形成する複数のセンサ電極18x,18yと、センサ電極18x,18yの端部からセンサ領域の外周縁に沿って引き回される配線の集合体である引き回し配線群20と、を含んで構成されてもよい。電子ペン14がセンサ領域の外周縁にある場合、電子ペン14から送信された信号を、引き回し配線群20を介して受信することにより、センサ領域を介さずに検出信号が混入することがあるので、誤検出の抑制効果がより顕著に現われる。
【0124】
また、出力処理部46は、第1ペン位置が第2ペン位置に許容範囲内で一致する場合には第1ペン位置を有効化し、第1ペン位置が第2ペン位置に許容範囲内で一致しない場合には第1ペン位置を無効化してもよい。これにより、第1スキャンを通じた電子ペン14の誤検出を抑制することができる。
【0125】
また、モード制御部48は、比較処理が行われずにペン位置を出力する第1モードと、比較処理が行われてペン位置を出力する第2モードと、を含む複数の検出モードを切り替えてもよい。第1モード及び第2モードの切り替えを通じて、状況に応じた検出処理を行うことができる。
【0126】
また、モード制御部48は、電子ペン14を用いたペンダウン操作を検出したことを契機として第2モードを開始してもよい。これにより、ペンダウン操作の時点で発生し得る誤検出を抑制することができる。
【0127】
また、モード制御部48は、第2モードの開始時点から、予め定められた時間が経過した場合、又は予め定められた回数の信号を電子ペン14から受信した場合に、第2モードを終了してもよい。これにより、ペンダウン操作後に比較処理を省略可能となり、その分だけ演算負荷を軽減することができる。
【0128】
また、第2算出部52は、第2検出信号が示す信号分布のうち、信号値が第1閾値Th1を上回る位置を抽出する第1閾値処理を行い、第1閾値処理による抽出位置に基づいてタッチ位置を算出し、第2検出信号が示す信号分布のうち、信号値が第2閾値Th2(ただし、Th2<Th1)を上回り、かつ第1閾値Th1を上回らない位置を抽出する第2閾値処理を行い、第2閾値処理による抽出位置に基づいて第2ペン位置を算出してもよい。
【0129】
また、第1閾値Th1及び第2閾値Th2のうちの少なくとも一方は、電子ペン14の種別又はタッチセンサ18の種別に応じて異なるように設定されてもよい。これにより、電子ペン14の種別又はタッチセンサ18の種別に応じて、引き回し配線群20から混入し得る信号のレベル又は形状が異なる点を考慮した検出を行うことができる。
【0130】
また、比較処理は、第1算出部50が第1ペン位置を算出できた場合に行われ、第1算出部50が第1ペン位置を算出できなかった場合に行われなくてもよい。これにより、第1ペン位置を算出できなかった場合に不必要な比較処理を省略可能となり、その分だけ演算負荷を軽減することができる。
【0131】
また、比較処理は、第2算出部52が第2ペン位置を算出できた場合に行われ、第2算出部52が第2ペン位置を算出できなかった場合に行われなくてもよい。これにより、第2ペン位置を算出できなかった場合に不必要な比較処理を省略可能となり、その分だけ演算負荷を軽減することができる。
【0132】
[変形例]
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲でフローチャートの各々のステップの実行順を任意に変更してもよい。
【0133】
上記した実施形態では、モード制御部48が複数の検出モードを切り替えて実行する場合を説明したが、この選択方法に限られない。例えば、タッチIC26は、第1モードを実行せずに第2モードのみを常に実行してもよい。
【0134】
上記した実施形態では、第1算出部50が第1ペン位置と第2ペン位置の間の比較処理を行っているが、この演算方法に限られない。例えば、出力処理部46が、位置算出部44から第1ペン位置及び第2ペン位置を取得した後、上記した比較処理を行ってもよい。あるいは、位置算出部44及び出力処理部46の代わりに、別の演算部が上記した比較処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0135】
10…入力システム、12…タブレット端末(電子機器)、14…電子ペン(アクティブペン)、16…指(パッシブポインタ)、18…タッチセンサ、18x,18y…センサ電極、20…引き回し配線群、22…タッチコントローラ、26…タッチIC、40…スキャン実行部、42…信号取得部、44…位置算出部、46…出力処理部、48…モード制御部、50…第1算出部、52…第2算出部