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特開2024-171911中空糸膜モジュールの検査方法、製造方法、検査システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171911
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュールの検査方法、製造方法、検査システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20241205BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20241205BHJP
   G01N 21/95 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D65/10
G01N21/95 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089267
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】林 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】濱田 智幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠介
【テーマコード(参考)】
2G051
4D006
【Fターム(参考)】
2G051AA40
2G051AA90
2G051AB02
2G051BA20
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051EC01
2G051EC07
2G051ED01
4D006GA41
4D006HA02
4D006JA13C
4D006JB06
4D006LA06
4D006MA01
4D006MA31
4D006MA33
4D006MC28
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC65
4D006MC74
(57)【要約】
【課題】ポッティング端面における形状が扁平形状等の異常形状である中空糸膜を効率良く検出する中空糸膜モジュールの検査方法を提供すること。
【解決手段】中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を撮影により取得する工程と、前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜形状を含むテンプレート画像を取得する工程と、取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程とを含む、中空糸膜モジュールの検査方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を撮影により取得する工程と、
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜の画像を含むテンプレート画像を取得する工程と、
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、ポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程とを含む、中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項2】
前記ポッティング端面画像において、新たな類似形状が検出されない処理結果が複数回連続して発生するまで、前記テンプレート画像を取得する工程と、前記中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程とを繰り返す、請求項1に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項3】
前記テンプレート画像を取得する工程において、
前記ポッティング端面画像の任意の一点を指定し、当該一点から8方向以上の方向線上を外側に向けてサーチし、隣り合う画素と画素値の差が最大になる点を検出することで、正常形状として指定された中空糸膜画像を含むテンプレート画像を取得する工程を含む、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項4】
前記中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程において、
テンプレート画像との相違度が一定以下の画像を抽出し、抽出した画像を、機械学習による画像分類処理に供する、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項5】
前記中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程において、
ポッティング端面画像における縦方向及び横方向のそれぞれにおいて、テンプレート画像との照合位置を1画素以上ずつずらしながら、各位置での相違度を算出する、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の検査方法を用いる、中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法を用いて製造された中空糸膜モジュール。
【請求項8】
撮影により得られた中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を取得する手段と、
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜形状を含むテンプレート画像を取得する手段と、
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする手段とを含む、中空糸膜モジュールの検査システム。
【請求項9】
コンピューターを、
撮影により得られた中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を取得する手段、
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜形状を含むテンプレート画像を取得する手段、及び、
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする手段、として機能させる、中空糸膜モジュールの検査用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールの検査方法、中空糸膜モジュールの製造方法、中空糸膜モジュール検査システム、及び中空糸膜モジュールの検査用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールは、たとえば、両端または片端が開放された容器に両端が開放された中空糸膜(中空の半透膜)の多数(数千本~数万本)の糸束を収容し、糸束の両端部において容器と中空糸膜との隙間を樹脂で封止したものである。樹脂による封止は、容器と糸束との間の空間に樹脂を流し込み(ポッティング)、ポッティング樹脂をケース内における各中空糸膜の周りの空間に浸透させることによって行う。
【0003】
中空糸膜モジュールにおける中空糸膜に不良品があることは、中空糸膜モジュールの性能の低下につながる。一方で、多数本の中空糸膜を一つ一つ検査することには、時間と労力がかかる。このため、検査の効率化を図る提案が複数なされている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、不通糸を検出する方法として、中空糸膜モジュールのポッティング端面に光源による光を照射し、前記端面からの反射光を撮像し、前記撮像によって得られた画像と中空部分が空洞状態の中空糸膜によるモデル画像との相関をとって中空部分が空洞になっている中空糸膜を検出し、前記中空部分が空洞になっている中空糸膜をマスクする工程を有する中空糸膜モジュールの検査方法が記載されている。同文献では、同文献記載の光源・撮像システムにおいて、不通糸欠陥は高輝度に撮像され、閉塞していない部分が黒く撮像されることを利用し、全画素ごとに、各画素を中心とした画素群の輝度のモデル画素群の輝度との相関度を求めている。そして、当該相関度が一定以上である画素を抽出して、当該画素を一定の輝度に塗りつぶすことで、樹脂で閉塞されていないとみられる中空糸膜をマスクしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-32601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中空糸膜モジュールは、樹脂で封止された長手方向両端に位置するポッティング端面のうち少なくとも一方の端面において、当該端面を平面視したときに、中空糸膜端部が通常円形な形状であり且つ所定の内径を有して開口しており、これが正常な形状とされている。
ポッティング端面を平面視したときに、中空糸膜の端部形状が扁平形状であると、当該中空糸膜は、円形の端部形状を有する正常な中空糸膜に比して、ガスの流通速度が低下したり、ガスとの接触面積が低下したりするためにガス分離性能が低下しやすい問題がある。
また、内径が他の中空糸膜に比して小さすぎる膜があると、ガスの流通速度が低下したり、ガスとの接触面積が低下することで当該中空糸膜は他の中空糸膜に比して、ガス分離性能が低下しやすい。内径が他の中空糸膜に比して大きすぎる膜があると、この場合も他の膜とのガスの透過速度が異なることから、全体としてガス分離性能が低下しやすい。
これらの点に関し、特許文献1は、内部が樹脂で閉塞している糸を検出する方法を提供しているが、正常とは異なる形状でポッティング端面に開口する中空糸膜を検出する方法は検討していない。
【0007】
本発明の課題は上記従来技術が有する課題を解決することを目的とし、具体的には、ポッティング端面における形状が扁平形状や異常径等の異常形状である中空糸膜を効率良く検出できる中空糸膜モジュールの検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1]中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を撮影により」取得する工程と、
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜の画像を含むテンプレート画像を取得する工程と、
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、ポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程とを含む、中空糸膜モジュールの検査方法。
[2]前記ポッティング端面画像において、新たな類似形状が検出されない処理結果が複数回連続して発生するまで、前記テンプレート画像を取得する工程と、前記中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程とを繰り返す、[1]に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
[3]前記テンプレート画像を取得する工程において、前記ポッティング端面画像の任意の一点を指定し、当該一点から8方向以上の方向線上を外側に向けてサーチし、隣り合う画素と画素値の差が最大になる点を検出することで、正常形状として指定された中空糸膜画像を含むテンプレート画像を取得する工程を含む、[1]又は[2]に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
[4]前記中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程において、テンプレート画像との相違度が一定以下の画像を抽出し、抽出した画像を、機械学習による画像分類処理に供する、[1]~[3]のいずれかに記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
[5]前記中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程において、ポッティング端面画像における縦方向及び横方向のそれぞれにおいて、テンプレート画像との照合位置を1画素以上ずつずらしながら、各位置での相違度を算出する、[1]~[4]のいずれかに記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の検査方法を用いる、中空糸膜モジュールの製造方法。
[7][6]に記載の製造方法を用いて製造された中空糸膜モジュール。
[8]撮影により得られた中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を取得する手段と、
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜形状を含むテンプレート画像を取得する手段と、
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする手段とを含む、中空糸膜モジュールの検査システム。
[9]コンピューターを、
撮影により得られた中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を取得する手段、
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜形状を含むテンプレート画像を取得する手段、及び、
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする手段、として機能させる、中空糸膜モジュールの検査用プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポッティング端面に扁平な形状や異常径等の異常形状で開口する中空糸膜を効率良く検出できる中空糸膜モジュールの検査方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の一実施形態における検査システムの模式図である。
図2図2は、図1に示した検査システムにおける処理の流れである。
図3図3は、中空糸膜モジュールのポッティング端面を示す図である。
図4図4は、テンプレート画像に用いられる正常な中空糸膜形状の指定方法の一例を示す図である。
図5図5は、テンプレート画像に用いられる正常な中空糸膜形状の指定方法の別の例を示す図である。
図6図6は、画像分類処理における分類例を示す図である。
図7図7は、複数の類似形状の中空糸膜のマスキングがされた状態のポッティング端面画像の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態における中空糸膜モジュールの検査方法に用いる中空糸膜モジュール検査システムの全体構成を示している。
図1において、中空糸膜モジュール20は、モジュール支持及び移動装置22、22により一軸方向又は二軸方向に移動可能に配置されている。例えば、中空糸膜モジュール20は、前工程からモジュール支持及び移動装置22、22によって移送された後、中空糸膜モジュール20のポッティング端面21が撮像装置30のカメラレンズと相対する位置に配置される。中空糸膜モジュール20は1本ずつ検査されても良く、複数を同時に検査する構成であってもよい。
【0013】
中空糸膜モジュールのポッティング端面とは、中空糸膜モジュールの長手方向の端部であり、多数の中空糸膜が樹脂で固定された状態で開口している、モジュールの長手方向と直交する断面をいう。中空糸膜がポッティング端面において扁平形状を有するようになった例としては、中空糸膜束をポッティング樹脂で固定する時に中空糸膜が押しつぶされて起こる例が挙げられる。また、中空糸膜束を中空糸膜の長手方向に折り曲げてなる折り曲げ部をポッティング樹脂で固定し、前記長手方向と直交する断面でポッティング樹脂ごと中空糸膜束を切断して中空糸膜モジュールを製造する際に、折り曲げ部分のごく近くで切断された中空糸膜が存在すると、当該中空糸膜の前記端面上の形状が扁平形状となる場合がある。扁平形状とは、例えば、アスペクト比が2以上である形状が挙げられる。ここでアスペクト比とは、中空糸膜のポッティング端面における中空糸膜端部形状が、当該端面を平面視したときに、一方向Xに長い場合に、当該長手方向Xの長さLxとポッティング端面に含まれ当該方向Xと直交する方向Yの長さLyとの比率(Lx/Ly)で表される(図3参照)。
また、本発明では、ポッティング端面上の形状が円形形状であっても、円形形状の内径が正常と異なる場合には、異常形状として検出できる。確率はごく低いものの、このような場合としては、樹脂溶液を複数の孔を有する中空糸膜紡糸ノズルから吐き出して凝固液で凝固させて中空糸膜束を製造する際に、ノズル開口部の一部が閉塞ないし変形したり、或いは、ノズル孔に対し吐出圧力に僅かなムラが生じる等して、中空糸膜の吐出形状が均一にならなかった等の場合が挙げられる。
【0014】
中空糸膜としては、ガス分離可能なものであれば、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば高分子材料を用いることができる。特にポリイミド、ポリスルホンなどの常温(23℃)でガラス状の高分子材料からなる中空糸膜は、ガス分離性能が良好であるので好適に用いられる。また、シリコーンゴムなどの常温でゴム状の高分子材料からなる中空糸膜、パーフルオロスルホン酸などのイオン交換樹脂からなる中空糸膜などもガス分離性能が良好であるので、好適に用いられる。中空糸膜の膜厚は例えば10μm以上500μm以下であることが好ましく、外径は例えば50μm以上2000μm以下であることが好ましい。
またポッティング樹脂としては、当該技術分野においてこれまで用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えばポッティング樹脂として各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、及びポリアミドなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やウレタン樹脂などが挙げられる。
【0015】
図1に示す例では、中空糸膜モジュール20のポッティング端面21を光源装置25で照射することで、ポッティング端面21における中空糸膜の端部の輪郭を明確とする。光源装置25としては、ポッティング端面21全体を照明するものであることが好ましく、例えばリングライト等を用いることができる。光源装置25の光源としては、特に限定しないが、例えば、ハロゲンランプ、LED、白熱電球等が挙げられる。光源装置25は、後述する検査装置40による指令により操作するものであってもよく、手動で操作するものであってもよい。
【0016】
撮像装置30は、モジュール支持及び移動装置22、22上の中空糸膜モジュール20のポッティング端面21を撮像して画像を得るためのものである。撮像装置30の種類は、限定されず、CMOSカメラ、CCDカメラのいずれであってもよい。また撮像装置30は、エリアカメラ、ラインカメラのいずれであってもよい。検出精度の点から、撮像装置30の画素数は500万以上であることが好ましく、1,000万~10,000万であることが更に好ましい。撮像装置30及び光源装置25は、後述する検査装置40による指令により操作されるものであってもよく、手動で操作されるものであってもよい。
【0017】
撮像装置30が撮像したポッティング端面の画像の処理は、検査装置40及び表示装置50を用いて行うことができる。
本形態において、検査装置40は、下記の処理、例えば後述する処理S1~S6を行う装置であり、表示装置50上に、ポッティング端面画像100上で類似形状がマスクされた状態を表示させる。
【0018】
検査装置40は、例えば、CPU(CentralProcessingUnit)と、RAM(RandomAccessMemory)と、ROM(ReadOnlyMemory)と、補助記憶装置と、表示出力I/Fと、撮像I/Fと、入力I/Fを備えている。これらの各部は、バスラインを介して互いにデータ通信が可能となるように接続されている。
【0019】
CPUは、検査装置40全体の動作を制御する演算装置である。RAMは、CPUのワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。ROMは、IPL(InitialProgramLoader)のようなCPUが最初に実行するプログラム等を記憶する不揮発性記憶装置である。なお、CPU、RAMおよびROMは、例えば1つの基板に実装されたSoC(System on a Chip)として構成されていてもよい。
【0020】
補助記憶装置は、後述する画像処理プログラム及びこれらのプログラムで用いられる各種データ等を記憶するHDD(HardDiskDrive)、SSD(SolidStateDrive)、eMMC(embeddedMultiMediaCard)またはmicroSDカード等の補助記憶装置である。
【0021】
表示出力I/Fは、画像処理プログラムによる判定結果等の表示データを表示装置50へ送信するためのHDMI(登録商標)(High-DefinitionMultimediaInterface)等のインターフェースである。
【0022】
撮像I/Fは、撮像装置30から撮像画像を受信するためのUSB(UniversalSerialBus)等のインターフェースである。
【0023】
入力I/Fは、PCをはじめとするコンピュータシステムに情報を入力するために使用される仕組みの総称である。入力装置(デバイス)の種類や操作の方式など、システムの構成要素を広く含む。
【0024】
上記のCPU、RAM,ROM,補助記憶装置や上記各種のインターフェースを介して、検査装置40は、ポッティング端面画像100及びテンプレート画像を撮像装置30から取得する手段や、取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする手段、類似形状がマスキングされたポッティング端面画像100を表示装置50に表示させる手段として機能する。本発明の検査システムは、検査装置40で構成してもよく、或いは、検査装置40と、上記の表示装置50、光源装置25、撮像装置30、モジュール支持及び移動装置22、22を組み合わせた本形態の検査システムであってもよい。
【0025】
図1に示すシステムを用いた中空糸膜モジュールの検査方法を更に説明する。
本発明の中空糸膜モジュールの検査方法は、
中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を撮影により取得する工程と、
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜の画像を含むテンプレート画像を取得する工程と、
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、ポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程とを含む。
<中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を撮影により取得する工程>
図1に示す通り、まず、光源装置25、撮像装置30を用いて、中空糸膜モジュール20のポッティング端面21を撮像する。光源装置25、撮像装置30、中空糸膜モジュールのポッティング端面21の好ましい実施態様は前述の通りである。得られた画像を用いて以下の処理を行う。当該処理を以下、図2に基づき説明する。
【0026】
図2に示す通り、まず、撮像した画像100について、前処理(S1)を行う。
本実施形態では、前処理としては、検査対象であるポッティング端面画像を事前に2値化する。2値化は、黒白の2階調処理をしてもよく、グレースケール(例えば256段階の階調)処理をしてもよい。また、2値化には動的閾値処理を用いることが撮影した画像内のコントラスト変化を抑制できる点で好ましい。ポッティング端面画像を2値化することにより、後述するテンプレートの指定により、テンプレート画像も2値化を行う。
【0027】
動的閾値処理は、画素ごとに近傍の領域の平均値又は当該平均値に補正値を加えたものを閾値とする方法である。動的閾値処理は例えば、各画素の近傍の縦20画素、横20画素の分割画像の明るさを平均化し、当該分割画像において、ある閾値を超えるか超えないかで、2値化を行うものである。
【0028】
2値化は、画像全体で同一の閾値を使用する方法を採用してもよい。また、本発明では、2値化せずに元画像をそのまま使用する、あるいは、ガンマ補正やヒストグラム平坦化などの濃淡変換処理,エッジ抽出処理や平滑化処理などの前処理を適用することも可能である。
【0029】
前処理対象となるポッティング端面画像の例を図3に示す。図3に示すポッティング端面画像100では、ポッティング樹脂により固定された中空糸膜束の端部の周面が容器60で保護されている(図3参照)。画像100における、この容器60の内側に位置する中空糸膜存在部分70を抽出して、後述するテンプレートマッチング(S3)を行う対象を、中空糸膜存在部分70に限定することが、検査精度を高める点で好ましい。中空糸膜存在部分70の抽出は、Hough変換等を用いることができる。なお画像100における、中空糸膜存在部分70の抽出処理は、テンプレート指定(S2)と同時又は後に行ってもよい。
【0030】
<前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜の画像を含むテンプレート画像を取得する工程>
次に、前記工程で得られたポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜の画像を含むテンプレート画像を取得する。図2に示す通り、前処理(S1)の後に、テンプレート指定をする(S2)。テンプレートの指定は、前処理(S1)における2値化や中空糸膜存在部分70の抽出処理と同時又は前におこなってもよい。テンプレート指定をする(S2)工程では、上記の通りポッティング端面画像100において、正常な円形状の端部形状を示す中空糸膜を少なくとも一つ指定し、当該円形状の中空糸膜(画像100中の中空糸膜の円形状の開口端部)を一つ含む画像をテンプレート画像とする。テンプレート画像の指定自体は、手動で行い、指定されたテンプレート画像を検査装置40にて取得することが可能である。本発明では、一つのテンプレート画像における中空糸膜の数が一つであることで、類似形状を特定する精度を高めることができる。
【0031】
本実施形態では、検査対象となるポッティング端面画像100以外のポッティング端面画像から、正常な中空糸膜を含む画像をテンプレート画像として指定しておくのではなく、検査対象となるポッティング端面画像100において、正常な中空糸膜を含む画像をテンプレート画像として指定する。このようにすることで検査対象の直径や糸本数変化等による検査対象自体の変更や天候・時間帯等による撮影環境の変化等に適切なテンプレート画像を予め準備することなく、テンプレートマッチングの検出精度が維持できる等の利点がある。
なお本発明では、正常な中空糸膜の画像を、何らかの方法で補正して用いることは許容される。また後述する指定されたテンプレート画像の取得及びテンプレートマッチングの繰り返し処理中、検査対象となるポッティング端面画像100に由来するテンプレート画像を各回ごとに取得してテンプレートマッチングに供するのでもよい。しかし、検査対象となるポッティング端面画像100に由来するテンプレート画像を一回以上取得して当該テンプレート画像に基づきテンプレートマッチング処理を行えば、検査対象となるポッティング端面画像100以外の画像に由来するテンプレート画像をテンプレートマッチングに用いることは許容される。本発明では、後述する繰り返し処理の終了に検査対象となるポッティング端面画像100に含まれる糸本数に対し、テンプレートマッチングにて類似形状として検出された糸本数が90%以上であることが好ましく、95%以上がより好ましい。
【0032】
なお、以下では正常な円形状の端部形状を示す中空糸膜を単に「正常糸」ともいう。また正常な円形形状とは、完全な円形である必要はなく、略円形を指し、上述した扁平形状よりもアスペクト比が小さな楕円形を包含する。以下では、このような正常糸のポッティング端面の略円形形状を単に「円形」と記載する場合がある。また、正常糸とは、単に円形であることのみを意味するのではなく、内径の大きさが正常であることも意味する。更に、本発明によれば、正常糸は、中空糸膜の厚さについても厚すぎる、薄すぎるといった異常である場合は当該形状を排除するようにマスクすることが可能である。
【0033】
図4に示す通り、正常糸の円形を一つ囲む矩形画像を手動でテンプレート画像を取得してもよい。図4の例では、枠Tに囲まれた領域として当該手動の処理を行っている。或いは、図5(a)に示す通り、正常糸の円形の内側の一点Qを選択することで正常糸の画像一つを選択できるようにしてもよい。
また、前記ポッティング端面画像の任意の一点(1画素)を指定し、当該一点から8方向以上の方向線上を外側に向けてサーチし、隣り合う画素と画素値の差が最大になる点を検出することで糸の輪郭を抽出し、正常形状として指定された中空糸膜画像を含むテンプレート画像を取得することもできる。ここで、画素値とは、2値化処理をした際のグレースケールの階調(例えば、256段階の階調)を意味する。
図5(b)では、当該選択位置から、外側に放射状に360°を等分する複数方向(例えば8方向以上、図5(b)では16方向)における画素値をサーチし,隣り合う画素と画素値の差(グレースケールの明暗の差)が最大である位置を検出する。ここで隣り合う画素とは、一点Qからサーチ方向にサーチしていく場合における一つ前の画素とすることができる。図5(b)では360°を16個の角度に等分割する線上方向において、画素値をサーチし,画素値の差が最大である位置を検出している。前記の複数方向は例えば8方向以上128方向以下であってもよい。図5(c)のように、複数方向(例えば8~128方向)における画素値の差が最大となる複数の点(例えば8点以上)を内包する画像の全体を含む適度な画素数サイズの画像として、テンプレート画像を指定するように自動化することができる。例えば画素値の差に数値範囲の設定をしたり、複数の点(例えば8点以上)を直線で結んだ領域について面積と直径で求められる円形度(例えば4πS/L2(Sは面積、Lは直径)で計算される円形度)により、テンプレートの判定を行ってもよい。
なお、手動で正常糸を含む矩形のテンプレートを指定させるものであっても、ポッティング端面画像100上の一点を指定して自動的に正常糸の像を得る場合であっても、テンプレートの指定は2値化前のポッティング端面画像100、例えばグレースケール画像に対して行うことが好ましい。
【0034】
テンプレートの好適なサイズは解像度によって異なるが、例えば縦方向画素数×横方向画素数の乗数となる画素数で25画素以上となるサイズとすることが、精度の点で好ましく、100画素以上がより好ましい。また、テンプレートが矩形状の場合、正常糸の円形の全体が含まれ、且つ当該円形の外側部分が少ない画像であることが好ましい。
【0035】
<取得したテンプレート画像との相違度に基づき、ポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程>
取得したテンプレート画像との相違度に基づき、ポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程では、図2に示す通り、テンプレートマッチング(S3)、候補画像を抽出(S4)、画像分類処理(S5)、マスキング(S6)、残った(マスキングされなかった)糸膜から異常形状膜を検出(S7)の処理を含むことが好ましい。以下、各処理について説明をする。
まず、テンプレートマッチング(S3)を行う。テンプレートマッチングとは、テンプレート画像との相違度に基づいて候補画像の抽出(S4)を行う処理である。 テンプレートマッチング(S3)では、テンプレートの大きさ(縦方向画素数×横方向画素数、以下「W×H画素」とも言う。)にて、テンプレートマッチングを行う。
本処理では、ポッティング端面の画像における縦方向及び横方向のそれぞれにおいて、テンプレート画像との照合位置(評価対象領域)を1画素以上ずつずらしながら、各位置での相違度を算出することが好ましい。
例えばテンプレートとの相違度の例として、テンプレートとの照合位置を、1画素ずつずらして各位置でのテンプレートと評価対象領域とのSSD(Sum of Squared Difference)を算出する。ここでは、SSD以外の他の指標を用いても良い。
1画素ずつずらして各位置でのSSD算出済み画像を生成する。
例えば、検査画像:100画素×100画素に対して、テンプレート:10画素×10画素を1枚指定すると、SSDを91×91回算出したSSD算出済み画像が生成される。
この91×91個のSSDの値平均μと分散σを計算する。なお、後述する通り、このSSD算出済み画像には、図6に示すように、中空糸膜の環状形状全体を含む画像(図6(a))と、それを含まない画像や一部のみ含む画像(図6(b))が包含されている。
【0036】
例えば、Z=-3として閾値を設定する場合には,T=μ-3σをSSDの閾値として,SSDがT以下の値の位置(W×H画素の領域)を個別に候補領域として抽出する(S4)。SSDを横軸に、SSD算出済み画像の個数を縦軸にした分布が正規分布だったと仮定すると、T=μ-3σをSSDの閾値とした場合、SSD算出済み画像全体の0.3%程度が候補画像として抽出される。
【0037】
なお、SSDの閾値は、許容上限が大きすぎると、後述するマスキング(S6)で扁平形状や異常径等の異常形状をマスキング対象としてしまい、小さすぎると、候補領域として抽出されるものの数が少なすぎて、後述する繰り返し処理数の数が大きくなり、手間がかかる。この点を考慮して閾値は設定される。
【0038】
本発明では、1つのポッティング端面画像100の全体と、一つのテンプレート画像とを対比する処理を行うことが、正常糸の類似形状を精度よく検出することができる点で好ましい。ここでポッティング端面画像100の全体と対比するとは、ポッティング端面画像100の全画素が、所定のテンプレート画像と対比されるいずれかの画像(評価対象領域)に含まれることをいう。
例えば、本発明では、複数のテンプレート画像を同時に指定し、各テンプレート画像それぞれについて、ポッティング端面画像100全体と対比する処理を行ってもよい。そのような、複数のテンプレート画像それぞれに係る対比処理は、同時並行的に行うことができる。
【0039】
テンプレートマッチング(S3)で抽出された相違度が閾値以下の画像候補に対し、画像分類処理(S5)を行うことが、マスクの精度向上の点から好ましい。
本処理は、機械学習による画像分類処理であることが好ましい。本画像分類処理の例としては、候補領域群の各画像を,ポッティング端面上の中空糸膜の形状である環状形状を含む画像(例えば図6(a))と当該環状形状を含まない画像(例えば図6(b))に分類する処理が挙げられる。図6(b)に示すように、環状形状を含まない画像の例としては、例えば、中空糸膜の環状形状を全く含まない画像や、含んでいても環状形状の一部のみである画像等が挙げられる。
【0040】
画像分類処理(S5)は、特に限定されないが、機械学習による画像分類であることが好ましい。教師データである環状形状を含む画像(例えば図6(a))としては、正常糸の円形の画像であることが、扁平形状の中空糸膜を誤ってマスクすることを防止する点で好ましい。機械学習による画像分類は、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、SVM(サポートベクターマシン)等を用いて行うことができる。環状形状を含まない画像の教師データとしては、例えば図6(b)に示すものを用いることができる。
【0041】
画像分類処理(S5)により中空糸膜の環状形状を含む画像を抽出し、これを正常糸の類似形状を有する中空糸膜として、マスク(S6)する。ここで、マスキング(S6)は2値化していないポッティング端面画像100において行うことが好ましく、例えば当該画像100において、正常糸に類似する中空糸膜を特定の色や形状等で塗りつぶして表示装置50上に表示させる処理であることが好ましい。
【0042】
次に新たなテンプレートとして、画像100中の別の正常糸を指定し(S2)、当該別の正常糸の円形をテンプレートとして指定(S2)し、新たなテンプレートに基づき、テンプレートマッチング(S3)、それによる候補画像の抽出(S4)、得られた候補画像についての画像分類処理(S5)、画像分類処理(S5)により分類された正常糸類似画像のマスキング(S6)を繰り返す。図7に、S2からS6が、操作が繰り返されたことでマスクされたポッティング端面画像の例(端面画像の一部の例)を示す。S2からS6までの操作は、新たな類似形状が検出されない処理結果が複数回連続して発生するまで繰り返すことが好ましい。これにより、ポッティング端面画像の類似形状の見落としを防止し、類似形状を確実にマスクすることが可能である。
ここで、“複数回”とは例えば、テンプレート指定(S2)、テンプレートマッチング(S3)、及び、候補画像の抽出(S4)、並びに必要に応じて画像分類処理(S5)を1回の処理としてカウントした場合に、当該フローが複数回繰り返される場合が挙げられる。
【0043】
前記ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜形状を含むテンプレート画像を取得する工程と、取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする工程とは同時で行ってもよい。その様な場合としては、上述したような、複数のテンプレート画像について、それぞれポッティング端面画像との対比及びマスキング処理を同時並行的に行う場合が挙げられる。
【0044】
本発明では、画像中のマスクされていない中空糸膜から扁平形状等の異常形状を有する中空糸膜を検出する工程を更に含む。この工程は、マスキング済みの中空糸膜以外の中空糸膜を目視にて検査するものであってもよい。或いは、機械学習による画像分類処理により、異常な形状の端部を有する中空糸膜を検出するものであってもよい。
【0045】
以上の表示装置50に表示されたマスク済み画像に基づき、目視にてマスクされていない中空糸膜を確認することで、短時間で中空糸膜モジュールの検査が可能となる。これにより、モジュールが良品か否かを短時間で判定することができる。
【0046】
本発明における中空糸膜モジュールの製造方法は、上記検査システム10および方法を用いてポッティング端面の検査を行う工程を有するものであり、上記検査による不良品排除により、生産効率に優れたものである。また、本発明における中空糸膜モジュールは、かかる製造方法によって製造された、品質に優れたことを特徴とするものである。
【0047】
[本発明の他の態様例]
本発明の他の態様例としては、コンピューターを、撮影により得られた中空糸膜モジュールのポッティング端面画像を取得する手段、ポッティング端面画像において正常形状として指定された中空糸膜形状を含むテンプレート画像を取得する手段、及び、取得したテンプレート画像との相違度に基づき、取得したポッティング端面画像における、中空糸膜の類似形状を検出してマスクする手段、として機能させる、中空糸膜モジュールの検査用プログラムが挙げられる。本発明のプログラムは、コンピューターで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムを記録した記憶媒体は、図1に示された検査装置40のROM又は不揮発性メモリであってもよい。また、例えばCD-ROMドライブ等のプログラム読取装置に挿入されることによって読み取り可能なCD-ROM等であってもよい。さらに、記憶媒体は、磁気テープ、カセットテープ、フレキシブルディスク、MO/MD/DVD等であってもよいし、半導体メモリであってもよい。
【0048】
なお、本発明は上記態様に限定されない。
例えば、画像分類処理(S5)において、ポッティング端面画像100において正常糸の円形と、扁平形状とを分類する処理を設けてもよい。
【0049】
また、同一又は異なるテンプレートを利用したマッチングテンプレート処理において、画像100における同一の位置が複数のマッチングで検出される場合には,例えばSSDが最小の位置のみを検出することにより、同様のSSD算出済み画像が多重にカウントされることを抑制するようにしてもよい。
【0050】
また,閾値の異なる複数のテンプレートマッチング処理を併用し,信頼度に応じて出力を変えることにより,信頼度の低い再確認を要する領域を提示することも可能である。また、テンプレート違いによりマスク時の塗りつぶしの色を変えたり、出力の信頼度に応じて塗りつぶしの色を変えて表示することも可能である。
【0051】
更に、画像分類処理(S5)は必ずしも設けなくてもよい。例えば、テンプレートマッチングにおけるSSD(相違度)の閾値を小さくすることで、画像分類処理を行わなくても、マスク対象となる正常糸類似度の精度を高めることが可能である。或いは、画像分類処理(S5)をテンプレートマッチング(S3)よりも先に行い、テンプレートマッチング(S3)の処理対象を中空糸膜の環状形状を含む画像に限定してもよい。
【0052】
更に、テンプレートとなる正常糸の組み合わせなどを工夫することで、テンプレートマッチングからマスキング処理までの繰り返し数を低下させることができる。
【実施例0053】
上記検査システム及び検査方法を用い、中空糸膜本数が約13,000本のガス分離用中空糸膜モジュール(中空糸膜:ポリイミド製)を検査対象とした。撮像装置30に20M-CMOSカメラを用い、光源装置25にリングライト(光源LED)を用いて、縦4,000画素、横5,000画素の検査用画像を撮像した。当該画像は中空糸膜モジュールのポッティング端面全面を含むものであった。テンプレートの画像サイズは縦10画素、横10画素とした。SSDに関する閾値Zを以下の範囲に設定し、新たな類似形状のマスキングが発生しなくなるまで上記のS2~S6の処理を繰り返し、最後に目視にてマスク済み中空糸膜以外の中空糸膜を検査して、扁平形状や異常径等の異常形状の糸を特定した。
対照として、同じ中空糸膜モジュールのポッティング端面を目視にて検査し、異常形状を検査し、上記の処理によって誤って異常形状をマスクする確率である異常形状の過検出率(異常形状をマスキングした率)を求めた。異常形状の過検出率と、本発明の処理を用いた場合に検査に要する時間を表1に示す。なお、表1のケースはいずれもテンプレートを10回指定する結果となった。
対照である、目視による検査における検査所要時間は、中空糸膜モジュールのポッティング端面全体で60分であった。
【0054】
【表1】

表1に示す通り、本発明によれば、テンプレートマッチングにおける相違度の閾値を調整することにより、ポッティング端面において扁平形状等の異常形状で開口した中空糸膜を短時間で送率良く検出できる。
【符号の説明】
【0055】
10検査システム
30撮像装置
50表示装置
40検査装置
20中空糸膜モジュール
21ポッティング端面
25 光源
60 容器
70 中空糸膜存在部分
100ポッティング端面画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7