IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本絨氈株式会社の特許一覧

特開2024-171920カーペットの製造方法及びカーペット
<>
  • 特開-カーペットの製造方法及びカーペット 図1
  • 特開-カーペットの製造方法及びカーペット 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171920
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】カーペットの製造方法及びカーペット
(51)【国際特許分類】
   A47G 27/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A47G27/02 102
A47G27/02 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089282
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】301029252
【氏名又は名称】日本絨氈株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173277
【弁理士】
【氏名又は名称】紀田 馨
(72)【発明者】
【氏名】池崎 雄太
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 隆
【テーマコード(参考)】
3B120
【Fターム(参考)】
3B120AA16
3B120AA19
3B120AA24
3B120AB04
3B120AC10
3B120AD01Y
3B120AD11Y
3B120BA05
3B120CA05
3B120CA12
3B120CA13
3B120DB01
3B120EB30
(57)【要約】
【課題】デザインの自由度の高いカーペットが製造可能となるカーペットの製造方法を提供する。
【解決手段】カーペット1の製造方法は、200デニール以上のフィラメント4本からなる糸である第1糸、及び、25デニール以下のフィラメント40本からなる糸である第2糸を準備する準備する。セット工程では、準備した第1糸及び第2糸を隣り合うようにタフティングマシンにセットする。打込工程では、タフティングマシンを用いて第1糸及び第2糸のそれぞれをパイル2として基布3上に打ち込む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を材料とし、当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)である第1糸、
及び、25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を材料とし、当該25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を5本用いて作られた撚り糸(5プライ糸)である第2糸を準備する準備工程と、
準備した前記第1糸及び前記第2糸を隣り合うようにタフティングマシンにセットするセット工程と、
前記タフティングマシンを用いて前記第1糸及び前記第2糸のそれぞれをパイルとして基布上に打ち込む打込工程と、を含む、カーペットの製造方法。
【請求項2】
前記打込工程では、第1糸及び前記第2糸をシフトさせて基布に打ち込む工程が含まれる、請求項1に記載のカーペットの製造方法。
【請求項3】
200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を材料とし、当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)である第1パイルと、
25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を材料とし、当該25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を5本用いて作られた撚り糸(5プライ糸)である第2パイルと、を備え、
少なくとも前記第1パイルと前記第2パイルが隣接しており、
前記第1パイルの少なくとも一部、及び、前記第2パイルの少なくとも一部には、シフト部分が含まれる、カーペット。
【請求項4】
請求項3に記載のカーペットであって、
前記第1パイルを形成する撚り糸の本数と前記第2パイルを形成する撚り糸の本数の比率が1対1から1対5以内であることを特徴とするカーペット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の糸を用いるカーペットの製造方法、及び、2種類以上の糸を含むカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットは広く普及した敷物であり、近年ではカーペットとして様々な場所で用いられている。タイルカーペットは、通常のカーペットよりも小さい、正方形や矩形のタイルカーペットである。必要面積分だけ敷き詰めて用いられる点に最大の特徴がある。通常のカーペットは、設置される施設の大きさにあわせたサイズが必要となり、受注後生産となるビジネスモデルも多用される。
【0003】
だが、タイルカーペットは、大量生産した同一サイズのカーペット、あるいは複数サイズのカーペットを敷き詰める枚数を変化させることで施工現場のあらゆるサイズに対応可能であり、コスト面で有利である。
【0004】
タイルカーペットは主にオフィスや商業施設等で利用されてきたが、近年ではフローリングの床材を用いた際にハウスダストが減少する、利用者の膝や腰への衝撃が緩和されるといったメリットが知られつつあり、家庭用にも用いられつつある。
【0005】
カーペットには、様々な機能を付与させることが可能であり、非常に硬い糸のみで構成することで、靴の裏面につきささることで靴に付着した泥汚れなどを落とすダストコントロールマットと同じ効果を期待する商品や、カーペットの裏面に粘着物を塗布することで床面からズレを生じにくくするなど、様々な製品が開発されている。
【0006】
デザイン面でも様々な製品が開発されており、従来は灰色調の単調なデザインのものが好まれていたが、近年では柄物をはじめとしたデザイン性の高いものの引き合いも多くなってきている。
【0007】
カーペットにおけるデザインは、基布に糸(パイル)をタフティングしていく事で、基布上に模様を形成することによりなされる。具体的には、どのような糸を用いるのか、そしてどのようにタフティングしていくかを組み合わせることで模様を形成している。
【0008】
例えば、膨大な糸の中から、色、太さ、長さ、材質、撚り方などを選定し、選定した糸をまっすぐにタフティングすることで直線状のラインを表現することや、左右にスライディングしつつタフティングすることでジグザグなラインを表現すること等、様々な技法を駆使して柄を表現している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0009】
カーペットで用いられることの多い糸は、フィラメント(長繊維)を複数束ねたマルチフィラメント糸である。より正確には、フィラメントを複数束ねることで糸をつくり、その糸を複数本束ねることで撚糸をつくり、基布に撚糸を打ち込むことでパイルを形成するために用いられる。なお、糸を2本しっかり撚った2プライ糸、3本しっかり撚った3プライ糸といったツイストと呼ばれるタイプ、複数の糸に風をあててからませたインターミングル糸といった種類がある。これに対し、フィラメントを1つで構成された糸はモノフィラメントという。
【0010】
ここで、糸やフィラメントの太さを表す単位であるデニールについて説明する。デニールとは、繊維の太さを表す単位である、糸は細かく柔らかいためメートル法で太さを表現するのが困難であるため、9000メートルで1グラムの重さを持つ糸を1デニールとして、いわば一定の長さあたりの質量により太さを表現している。フィラメントの場合も同様にデニールで太さを表す。
【0011】
モノフィラメントの特徴は、繊維自体が太いため、強い強度があり切れにくい、繊維が絡み合わないため光が乱反射せず透明度が高い、光沢感がある、毛羽立たないといった特徴がある。特にフィラメント1本それ自体が太いため、ハリがでる、すなわち硬さのあるしっかりとした糸になるのがカーペットに用いた場合の最大の特徴である。
【0012】
この特徴を活かし、ダストコントロールマットのような効果をねらったカーペットでは、モノフィラメント、あるいはモノフィラメントとまではいかなくとも2本や4本程度の太いフィラメントを束ねたマルチフィラメント糸を用いて構成されている。履物の裏面にある凸凹の奥の方まで糸がはいりこんで泥などを掻き出す効果を十分発揮するよう硬さのある糸が求められるためである。
【0013】
モノフィラメントは、長所ばかりではない。風合いが硬い為、皮膚への刺激が強くなる点が課題としてあげられる。モノフィラメントは糸自体が太く硬くなるため、皮膚にあたるとチクチクしたりすることがある。特に直径が30マイクロメートルを超えると皮膚への刺激が強すぎることから避けたほうがよいとされる。
【0014】
これに対し、マルチフィラメント糸は、1本あたりの繊維が細いため、強度はモノフィラメントには劣るものの、柔らかく、しなる糸になる。フィラメント数が増大していく、換言するとフィラメントの太さが細くなると、どんどん繊維同士の隙間がうまり、透け感がなくなる。この特徴は、フィラメントの太さを細くすればするほど際立つ。逆にフィラメントを太くするとモノフィラメントの特徴に近づく。
【0015】
なお、カーペットは、カーペットであるからには足や靴、スリッパ等で踏まれることが想定されている。一般に足の裏は感覚が鈍いことが多く、表面のテクスチャについて感じ取れることは、通常はあまりないが、ふわふわする感じ、フローリングに近い感じといった大まかな感覚を感じとることは十分できる。
【0016】
糸の太さを一定とした場合において、一般的なフィラメント数、例えば80本以上のフィラメントを備えたマルチフィラメント糸と、12本以下のフィラメントしか備えていないモノフィラメント糸(正確にはモノフィラメントではないが、相対的にモノフィラメントに近いためこのように称呼する。)、すなわち太さが4倍程度異なるフィラメントで比較するとその違いは明確であり、足裏や靴、スリッパを通じても明確に硬さの違いを感じる。
【0017】
すべての領域を太いフィラメントで構成された糸やモノフィラメントで構成すると、これらの糸は高価であることからコスト高となるばかりか、硬すぎてダストコントロールマットとして用いる場合を除き、カーペットの用途には適さないとされている。しかしながら、デザイン上のアクセントとして、一部領域にだけ太いフィラメントで構成されたモノフィラメント糸を用いることは、十分可能であり、実際の商品としても上市されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2014-158663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、現在上市されているカーペットでは、太いフィラメントで構成されたマルチフィラメント糸は縦条のまっすぐなラインとしてのみ用いられている。複雑な形状で用いることや、ジグザグ状にしたもの等は存在していなかった。
【0020】
カーペットはタフティングマシンにより、糸を基布に打ち込み製造される。タフティングマシンでは、横に多数のニードルを並べ、当該ニードルに様々な糸が通されている状態で、一斉にニードルを基布に打ち込む。ニードルが備え付けられた部品自体を左右にスライディングすることが可能であり、このスライディング動作によりジグザグの模様に糸を打ち込むことが可能となる。
【0021】
ここで、スライディング動作を行うと、直前に打ち込んだ基布上の箇所から左右方向にニードルがずれることになるが、その際に糸は基布とニードルの間でつながったままである。糸がいずれも同じ種類であれば、その延び方も同じであるが、異なる糸を用いた場合、延び方が異なることとなる。
【0022】
モノフィラメントの場合、糸としては硬いことから延び方は少ない。これに対してマルチフィラメント糸の場合は、細い繊維を束ねたものであることから、糸としては柔らかくなり、延び方は大きくなる。特に撚りをかけた糸の場合もともと縮れた状態となっている。
【0023】
延び方が異なる糸が隣り合っている場合にスライディングを行うと、隣の糸に干渉しやすくなる。スライディング動作によって左右方向にタフティングマシンが動くと、柔らかい糸に接続されたニードルはタフティングマシンの動きに追従できるが、硬い糸に接続されたニードルは当該硬い糸にひっぱられて十分にタフティングマシンの動きに追従できない。
【0024】
その結果、隣の糸との距離が縮まり、結果として干渉、からまってしまい綺麗にタフティングすることができない。そのため、太いフィラメントで構成された糸を複雑な形状で用いることができずに、縦条の一直線で用いることしかできていなかった。
【0025】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、デザインの自由度の高いカーペットの製造が可能となるカーペットの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、デザインの自由度の高いカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(1)本発明に係るカーペットの製造方法は、準備工程と、セット工程と、打込工程と、を含む。準備工程では、200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を材料とし、当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)である第1糸、及び、25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を材料とし、当該25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を5本用いて作られた撚り糸(5プライ糸)である第2糸を準備する。セット工程では、準備した第1糸及び第2糸を隣り合うようにタフティングマシンにセットする。打込工程では、タフティングマシンを用いて第1糸及び第2糸のそれぞれをパイルとして基布上に打ち込む。
【0027】
このような方法によれば、硬い糸からなる第1パイルと、柔らかい糸からなる第2パイルとを含むカーペットを製造する際にスライディング動作をおこなった場合であっても、硬い第1糸と柔らかい第2糸とが干渉せずに綺麗にタフティングできる。そのため、硬い糸からなるパイルと、柔らかい糸からなるパイルとが混在する場合であっても、種々の柄を表すことができる。すなわち、デザインの自由度が高くなる。
【0028】
例えば、硬い糸を用いることで、手触りや足触りといった触覚上の効果を合わせ、デザインを触覚からも体感することが可能であり、かつ、硬いデザインが縦条に限定されずに用いることができるというこれまでにないカーペットを提供することができる。
【0029】
例えば、庭園を表現した図柄であって、石を表現した箇所の一部に苔を表現し、当該苔の部分を硬い糸で表現するといった斬新な表現も可能となる。
【0030】
このように、本発明に係るカーペットの製造方法によれば、デザインの自由度の高いカーペットの製造が可能となる。
【0031】
(2)また、打込工程では、第1糸及び第2糸をシフトさせて基布に打ち込む工程が含まれてもよい。
【0032】
このような方法によれば、第1糸及び第2糸をシフトさせる際においても、これらが干渉することなく基布上に打ち込まれる。
【0033】
(3)本発明に係るカーペットは、第1パイルと、第2パイルとを備える。第1パイルは、200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を材料とし、当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)である。第2パイルは、25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を材料とし、当該25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)、または当該25デニール以下のフィラメント4本からなる糸を5本用いて作られた撚り糸(5プライ糸)である。少なくとも前記第1パイルと前記第2パイルが隣接している。第1パイルの少なくとも一部、及び、第2パイルの少なくとも一部には、シフト部分が含まれる。
【0034】
このような構成によれば、硬さの異なる2種類の糸を含むカーペットであっても、カーペットを製造する際にこれらの糸が干渉しないため、柄表示等を自由に表すことができる。すなわち、デザインの自由度が高いカーペットとなる。
【0035】
(4)また、第1パイルを形成する撚り糸の本数と第2パイルを形成する撚り糸の本数の比率は、1対1から1対5以内であってもよい。
【0036】
このような構成によれば、カーペットとして適切な硬さを保つことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、デザインの自由度の高いカーペットが製造可能となる。また、デザインの自由度が高いカーペットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係るカーペットを示した断面図である。
図2】カーペットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.カーペット
図1は、本発明の一実施形態に係るカーペット1を示した断面図である。
【0040】
カーペット1は、パイル2と、基布3と、基材4と、粘着層5とを備えており、後述の製造方法により製造されるものである。パイル2は、基布3上に打ち込まれており、基材4は、基布3の下面に張り付けられている。粘着層5は、基材4の下面に接着剤を塗布することにより形成されている。
【0041】
パイル2は、硬さの異なる複数種類のパイルを含んでいる。具体的には、パイル2は、200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を用いて作られた撚り糸(第1糸)により構成されるパイル(第1パイル)と、25デニール以下のフィラメント40本以上からなる糸を用いて作られた撚り糸(第2糸)により構成されるパイル(第2パイル)とが混在している。これらの糸は、後述する製造方法において、タフティングマシンにセットされて用いられる。なお、この例では、後述するように硬さの異なる糸として3種類の糸を用いるが、硬さの異なる2種類の糸を用いてもよく、さらには硬さの異なる4種類以上の糸を用いてもよい。
【0042】
パイル2としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレンやナイロンを用いることができる。染色することや原着(原液着色繊維)の材料を用いてもよい。
【0043】
基布3としては、例えば、不織布や織布を用いることができる。
【0044】
基材4としては、例えば、塩化ビニルを用いることができる。より詳しく説明すると、塩化ビニルで形成された領域の内部の間にガラス不織布やガラスメッシュ4aを挟み込む形が好ましい。炭酸カルシウムを含ませるなど公知の様々な手法を用いることができる。
【0045】
粘着層5を構成する接着剤としては、例えば、アクリル発泡樹脂やウレタン樹脂接着剤を用いることができる。
【0046】
2.カーペットの製造
カーペット1を製造する際には、作業者は、まず、硬さの異なる3種類の糸(硬い糸1種類と柔らかい糸2種類)を準備する。なお、この例では、3種類の糸を準備するが、硬さの異なる2種類の糸(硬い糸と柔らかい糸)を準備してもよく、さらには硬さの異なる4種類以上の糸を準備してもよい。
【0047】
具体的には、硬い糸として、200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を材料とし、当該糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該4本からなる糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)である第1糸を準備する。
【0048】
第1糸についてさらに詳述すると、パイルを打ち込む密度が1インチあたり10本である場合(すなわち隣りの糸が2.54mmにある場合)は、200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を材料とし、当該糸の2プライ糸や3プライ糸が望ましい。パイルを打ち込む密度が1インチあたり8本である場合(すなわち隣りの糸が3.175mmにある場合)は、当該糸の3プライ糸や4プライ糸が望ましい。隣の糸までの距離が長くなるため、細いパイルでは基布が露出しやすいため、さらに太いパイルが好ましいためである。
【0049】
柔らかい糸として、25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を材料とし、当該糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)、または当該糸を5本用いて作られた撚り糸(5プライ糸)である第2糸を準備する。この例では、作業者は、第2糸を2種類準備する。
【0050】
第2糸についてさらに詳述すると、パイルを打ち込む密度が1インチあたり10本である場合(すなわち隣りの糸が2.54mmにある場合)は、25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を材料とし、当該糸の2プライ糸や3プライ糸や第4プライ糸が望ましい。パイルを打ち込む密度が1インチあたり8本である場合(すなわち隣りの糸が3.175mmにある場合)は、当該糸の3プライ糸や4プライ糸や5プライ糸が望ましい。隣の糸までの距離が長くなるため、細いパイルでは基布が露出しやすいため、さらに太いパイルが好ましいためである。
【0051】
このようにして硬さの異なる糸を準備した後、作業者は、これらの糸をタフティングマシンにセットする。このとき、作業者は、第1糸及び第2糸が隣り合うようにしてこれらをタフティングマシンにセットする(セット工程)。なお、第1糸の本数(撚り糸の本数)と第2糸の本数(撚糸の本数)は1対1の関係にかぎられず、第1糸の本数、第2糸の本数、第2糸の本数といった1対2や、1対5の関係まで実用可能であり、この比率を超えるとカーペットとしては硬すぎるものとなり不適である。換言すると、第1糸と第2糸によって形成されるパイルがカーペット上に占める面積の比率が、1対5以内(第2糸により形成されるパイルの面積が第1糸により形成されるパイルの領域の5倍を超えない)となるようにすればよい。
【0052】
その後、作業者は、タフティングマシンを用いて第1糸及び第2糸をパイルとして基布3上に打ち込む(打込工程)。このとき、作業者は、タフティングマシンにおいて、第1糸が取り付けられたニードル、及び、第2糸が取り付けられたニードルを、適宜シフト(スライディング)させて打ち込みを行う。シフトを行うと、ニードル全体が基布に対して左右方向へ移動する。タイルカーペットはニードルのある領域を上下方向に少しずつ移動させることで基布上にパイルを打ち込むことで製造されるため、大きくとらえると縦条であるパイルの列が基布上にならぶことになる。シフトを行うと、この縦条がそのまま右や左へずれることになり、ジグザグ状のデザインとなる。シフトした先ではニードルを打ち込まないようにすれば、さらに複雑なデザインも実現できる。このシフト動作自体は当業界では周知されているため、ここでは詳述しない。
【0053】
タフティングマシンにおいてニードルをシフトさせた場合であっても、第1糸及び第2糸が比較的同じ程度で伸びるため、これらの糸が干渉することが抑制される。そのため、種々の柄を表すことができる。すなわち、デザインの自由度が高くなる。
【0054】
打ち込み工程が終了すると、作業者は、基布の下面に基材4を張り付ける。その後、作業者は、基材4の下面に接着剤を塗布することにより粘着層5を形成させる。そして、作業者は、縁の部分をカットし、カーペットとして仕上げる。これらは公知の工程であり説明を省略する。
【0055】
上記のようにして、製造されたカーペットでは、第1糸により構成されたパイル(パイル2)が第1パイルとなり、第2糸により構成されたパイル(パイル2)が第2パイルとなる。カーペットにおいては、少なくとも第1パイルと第2パイルが隣接しており、第1パイルの少なくとも一部、及び、第2パイルの少なくとも一部には、それぞれシフト部分が含まれている。
【0056】
以下では、図面を用いて第1パイルと第2パイルの位置関係についてさらに詳述する。
図2は、カーペット1の平面図である。
この例では、カーペット1において、基布3に3種類のパイル2(パイル2a~2c)が打ち込まれている。
パイル2aは、第1糸により形成されたパイル、すなわち、第1パイルである。
パイル2b、2cのそれぞれは、第2糸により形成されたパイル、すなわち、第2パイルである。
【0057】
カーペット1を製造する際には、作業者は、タフティングマシンにおいて、パイル2aを構成する第1糸、パイル2bを構成する第2糸、パイル2cを構成する第2糸を、この順に並ぶようにセットする。また、これらの3種類の糸の並びを一つのまとまりとし、このまとまりが繰り返されるようにして、タフティングマシンに3種類の糸をセットする。
そして、作業者は、タフティングマシンにおいて基布3に対するニードルの打ち込み(縦方向への打ち込み)とシフト動作とを繰り返す。
【0058】
この例では、カーペット1においては、1段目(図における最下方の段)のパイル2が打ち込まれた後、2段目~4段目までは幅方向一方(図における右方)にシフトしており、5,6段目では、それぞれ幅方向他方(図における左方)にシフトしており、7段目~9段目までは幅方向一方(図における右方)にシフトしており、10~13段目までは、それぞれ幅方向他方(図における左方)にシフトしている。
【0059】
このカーペット1では、第1パイルであるパイル2aに対して、第2パイルであるパイル2b,2cのそれぞれが幅方向において隣接している。また、パイル2a~2cのそれぞれにはシフト部分が含まれている。
また、カーペット1において、第1パイルを形成する撚り糸の本数と第2パイルを形成する撚り糸の本数の比率は、1体1から1対5以内となっている。換言すれば、第1糸によって形成されるパイル2a(第1パイル)の面積と第2糸によって形成されるパイル2b,2c(第2パイル)の面積との比率は、1体1から1対5以内となっている。
【0060】
3.作用効果
(1)本実施形態によれば、カーペット1の製造方法は、準備工程と、セット工程と、打込工程と、を含む。準備工程では、200デニール以上のフィラメント4本からなる糸を材料とし、当該糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)である第1糸、及び、25デニール以下のフィラメント40本からなる糸を材料とし、当該糸を2本用いて作られた撚り糸(2プライ糸)、または当該糸を3本用いて作られた撚り糸(3プライ糸)、または当該糸を4本用いて作られた撚り糸(4プライ糸)、または当該糸を5本用いて作られた撚り糸(5プライ糸)である第2糸を準備する。セット工程では、準備した第1糸及び第2糸を隣り合うようにタフティングマシンにセットする。打込工程では、タフティングマシンを用いて第1糸及び第2糸のそれぞれをパイル2として基布3上に打ち込む。
【0061】
そのため、硬い糸からなる第1パイル(パイル2)と、柔らかい糸からなる第2パイル(パイル2)とを含むカーペット1を製造する際に、硬い糸と柔らかい糸とが干渉せずに綺麗にタフティングできる。その結果、硬い糸からなるパイルと、柔らかい糸からなるパイルとが混在する場合であっても、種々の柄を表すことができる。すなわち、デザインの自由度が高くなる。
【0062】
(2)また、打込工程では、第1糸及び第2糸をシフトさせて基布3に打ち込む工程が含まれる。
【0063】
そのため、第1糸及び第2糸をシフトさせる際においても、これらが干渉することなく基布3上に打ち込まれる。
【0064】
(3)また、本実施形態によれば、カーペット1において、第1糸により構成されたパイル(パイル2)の少なくとも一部、及び、第2糸により構成されたパイル(パイル2)の少なくとも一部には、シフト部分が含まれる。
【0065】
そのため、硬さの異なる2種類の糸を含むカーペット1を製造する際にこれらの糸が干渉しないため、柄表示等を自由に表すことができる。すなわち、カーペット1をデザインの自由度が高いカーペットとして構成できる。
(4)また、本実施形態によれば、第1パイルを形成する撚り糸の本数と第2パイルを形成する撚り糸の本数の比率は、1体1から1対5以内となっている。
【0066】
そのため、カーペット1として適切な硬さを保つことができる。
【符号の説明】
【0067】
1 カーペット
2 パイル
2a,2b,2c パイル
3 基布
4 基材
4a ガラス不織布又はガラスメッシュ
5 粘着層

図1
図2